特許第6575152号(P6575152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575152
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】ゴルフスイング装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/40 20060101AFI20190909BHJP
   A63B 69/36 20060101ALI20190909BHJP
   A63B 53/00 20150101ALI20190909BHJP
【FI】
   A63B69/40 501Z
   A63B69/36 541Z
   A63B53/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-115996(P2015-115996)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-323(P2017-323A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】五十川 一彦
【審査官】 松下 公一
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭50−037887(JP,Y1)
【文献】 米国特許第05255994(US,A)
【文献】 特開平11−169501(JP,A)
【文献】 特開昭55−113468(JP,A)
【文献】 特開平01−022275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00 − A63B 69/40
A63B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボールを打球するためのゴルフスイング装置であって、
脚部とスイング軸とを有する本体部、
前記スイング軸に回転自在に支持され、かつ、ゴルフクラブを固定するためのクラブ保持具が設けられたスイング体、
前記クラブ保持具に固定された前記ゴルフクラブがテイクバックされた第1状態で、前記スイング体を保持でき、かつ、操作によって前記保持を解除しうるアーム保持手段、及び、
前記スイング体が第1状態とされたときに弾性エネルギーを蓄えるとともに、前記アーム保持手段の前記解除により、前記弾性エネルギーを前記スイング体に伝えて前記スイング軸周りの回転力を与える弾性駆動手段を含み、
前記弾性駆動手段は、バネを用いた第2の弾性体を含み、
前記第2の弾性体は、一端が前記本体部及び前記スイング体の一方に固着されており、かつ、他端が、前記第1状態において前記本体部及び前記スイング体の他方と当接することにより、圧縮弾性変形することを特徴とするゴルフスイング装置。
【請求項2】
前記弾性駆動手段は、紐状のゴム弾性体を用いた第1の弾性体を含む請求項1記載のゴルフスイング装置。
【請求項3】
前記第1の弾性体は、一端が前記脚部に、かつ、他端が前記スイング体にそれぞれ連結されることにより、前記第1状態において引張弾性変形する請求項2記載のゴルフスイング装置。
【請求項4】
前記弾性駆動手段は、前記第1の弾性体の前記第1状態での引張弾性変形量を調整する第1の調整機構を具える請求項2又は3の何れかに記載のゴルフスイング装置。
【請求項5】
前記スイング体は、前記ゴルフクラブに過度の力が作用したとき、前記スイング体に対して前記ゴルフクラブを相対的に移動させる保護手段を具えることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のゴルフスイング装置。
【請求項6】
前記保護手段は、前記スイング体と前記クラブ保持具とを前記スイング軸と平行な軸心廻りで相対回転可能に連結する枢支軸、及び、前記スイング体と前記クラブ保持具との間の相対回転を阻止するボールプランジャを含む請求項記載のゴルフスイング装置。
【請求項7】
前記脚部は、複数の脚片を含み、各脚片は、長さ調整可能である請求項1乃至6の何れかに記載のゴルフスイング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬性を有し、ゴルフ場のプレイ・シーンに応じた種々の場所でスイングしうるとともに、ティーアップをすることなく地面に直接置いたゴルフボールも打球可能としたゴルフスイング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールやゴルフクラブの開発のために、プレーヤーに代わってゴルフボールを打球するゴルフスイング装置が提案されている(例えば特許文献1、2参照。)。しかしこれら提案された従来の装置では、ゴルフクラブをスイングするための駆動手段としてモータが搭載されており、またモータを駆動するための電気源も必要となる。
【0003】
そのため装置が大型で高重量となる。その結果、可搬性が損なわれ、所望の場所まで移動させ、その場所でスイングさせることが困難であった。またスイング中もモータと接続され動力が伝えられる。そのため、例えばティーアップしないで地面に直接置いたボールを打つと、ゴルフクラブが地面に接したときに受ける衝撃などの大きな力が動力系(駆動手段)に伝わり、故障を招いてしまう。従って、従来の装置では、地面に直接置いたボールを打つことができず、実際のプレイ・シーンに即した環境下での評価をすることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−280852号公報
【特許文献2】特開2011−62430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで発明は、可搬性を高めて、例えばゴルフ場の種々の場所まで移動を容易とするとともに、地面に直接置いたボールへの打球を可能とし、実際のプレイ・シーンに即した環境下においてゴルフボールやゴルフクラブの評価を行いうるゴルフスイング装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゴルフボールを打球するためのゴルフスイング装置であって、
脚部とスイング軸とを有する本体部、
前記スイング軸に回転自在に支持され、かつ、ゴルフクラブを固定するためのクラブ保持具が設けられたスイング体、
前記クラブ保持具に固定された前記ゴルフクラブがテイクバックされた第1状態で、前記スイング体を保持でき、かつ、操作によって前記保持を解除しうるアーム保持手段、及び、
前記スイング体が第1状態とされたときに弾性エネルギーを蓄えるとともに、前記アーム保持手段の前記解除により、前記弾性エネルギーを前記スイング体に伝えて前記スイング軸周りの回転力を与える弾性駆動手段を含むことを特徴としている。
【0007】
本発明に係る前記ゴルフスイング装置では、前記弾性駆動手段は、紐状のゴム弾性体を用いた第1の弾性体を含むことが好ましい。
【0008】
本発明に係る前記ゴルフスイング装置では、前記第1の弾性体は、一端が前記脚部に、かつ、他端が前記スイング体にそれぞれ連結されることにより、前記第1状態において引張弾性変形することが好ましい。
【0009】
本発明に係る前記ゴルフスイング装置では、前記弾性駆動手段は、前記第1の弾性体の前記第1状態での引張弾性変形量を調整する第1の調整機構を具えることが好ましい。
【0010】
本発明に係る前記ゴルフスイング装置では、前記弾性駆動手段は、バネを用いた第2の弾性体を含むことが好ましい。
【0011】
本発明に係る前記ゴルフスイング装置では、前記第2の弾性体は、一端が前記本体部及び前記スイング体の一方に固着されており、かつ、他端が、前記第1状態において前記本体部及び前記スイング体の他方と当接することが好ましい。
【0012】
本発明に係る前記ゴルフスイング装置では、前記スイング体は、前記ゴルフクラブに過度の力が作用したとき、前記スイング体に対して前記ゴルフクラブを相対的に移動させる保護手段を具えることが好ましい。
【0013】
本発明に係る前記ゴルフスイング装置では、前記保護手段は、前記スイング体と前記クラブ保持具とを前記スイング軸と平行な軸心廻りで相対回転可能に連結する枢支軸、及び、前記スイング体と前記クラブ保持具との間の相対回転を阻止するボールプランジャを含むことが好ましい。
【0014】
本発明に係る前記ゴルフスイング装置では、前記脚部は、複数の脚片を含み、各脚片は、長さ調整可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は叙上の如く、弾性エネルギーを利用した弾性駆動手段により、スイング体に回転力を与えている。そのためモータやその電力源が不要となり、装置を小型軽量化して可搬性を高めることができ、例えば、ゴルフ場におけるラフ、バンカーなどの種々な場所への移動、設置を容易に行うことができる。
【0016】
また前記弾性駆動手段では、スイング体がテイクバックされた第1状態のときに弾性エネルギーを蓄えるとともに、前記第1状態からの解放により、蓄えた前記弾性エネルギーをスイング体に伝えてスイング軸周りの回転力を与えている。即ち、弾性駆動手段では、スイングの初期にだけ動力が働き、インパクトの付近では動力が働かない。従って、インパクト時にゴルフクラブに衝撃などの大きな力が加わった場合にも、この力が動力系である弾性駆動手段に伝達するのを断つことができ、故障の発生を抑制しうる。そのため、地面に直接置いたボールを打つことができ、実際のプレイ・シーンに即した環境下においてゴルフボールやゴルフクラブの評価を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)、(B)は本発明のゴルフスイング装置の一実施例を示す正面図及び側面図である。
図2】第1状態におけるゴルフスイング装置を示す斜視図である。
図3】インパクト状態におけるゴルフスイング装置を示す斜視図である。
図4】基台とアーム取付け台との取り付き状態を示す分解斜視図である。
図5】脚部を拡大して示す斜視図である。
図6】(A)、(B)は保護手段を示す断面図、及び斜視図である。
図7】補助手段における固定状態をボールプランジャとともに示す断面図である。
図8】アーム保持手段を示す斜視図である。
図9】第2の弾性体を示す断面図である。
図10】アーム保持手段の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1、2に示すように、本実施形態のゴルフスイング装置1は、ゴルフクラブGによってゴルフボール(図示しない)を打球するための装置であって、本体部2と、スイング体5と、アーム保持手段6と、弾性駆動手段7とを具える。
【0019】
図3に示すように、本体部2は、脚部8とスイング軸16とを有する。本例では、本体部2が、脚部8を有する基台3と、スイング軸16有するアーム取付け台4とから構成される場合が示される。
【0020】
基台3は、主部9の下端に脚部8を具える。脚部8は、複数(本例では3つ)の脚片8Aを含み、各脚片8Aは、長さ調整可能に構成される。これにより凹凸状の地面への設置を可能としている。図5に示すように、本例の脚片8Aは、筒状の脚片本体8A1と、その内孔内にスライド可能に配される接地部8A2とを有する。接地部8A2は、脚片本体8A1の下端に設けるストッパー10のネジ10Aにより、脚片本体8A1からの突出長さを自在に設定できる。また接地部8A2は、先端鋭利に形成されるとともに、地面内への埋入深さを規制するための停止片11を突設している。
【0021】
図4に示すように、主部9は、例えば底板部9Aの両側に側板部9Bを立ち上げたコ字状をなす。各側板部9Bには、ライ角調整軸13が通る挿通孔12が形成される。
【0022】
アーム取付け台4は、本例では矩形ブロック状の胴部4Aを有する。この胴部4Aの両側面には、ゴルフボールの打出し方向X(「X方向」という場合がある。)にのびる突起状の軸部13Aが互いに同心に突設される。本例では、この一対の軸部13A、13Aによって前記ライ角調整軸13を構成している。各軸部13Aは、前記挿通孔12に回転可能に枢支され、これにより、アーム取付け台4は、ライ角調整軸13の軸心j1廻りで傾動可能に支持される。これ以外にも、例えば側板部9B、9B間に1本のライ角調整軸13を架け渡すとともに、胴部4Aに、ライ角調整軸13を枢支する挿通孔を設けるなど、種々な構造を採用しうる。
【0023】
胴部4Aには、ライ角調整軸13と直交する向きであるY方向にのびる前記スイング軸16が配される。このスイング軸16は、軸受けによって回転自在に支持される。本例のスイング軸16は、その先端部に、スイング体5を固定する例えば円盤状のフランジ部16Aを具える。
【0024】
また主部9には、アーム取付け台4を所定の傾動姿勢で固定する固定具15が設けられる。これにより、図1(B)に示すように、スイング軸16を、ゴルフクラブGのライ角度αに適した前傾姿勢に調整することができる。例えば地面が水平な場合、垂線に対するスイング軸16の軸心j2の角度βが、ライ角度αにほぼ一致する前傾姿勢で、アーム取付け台4が固定される。図4に示すように、本例の固定具15は、側板部9Bに取り付くネジ金具15Aであって、例えば、側板部9Bを貫通して内向きに螺進するネジ先端が、胴部4Aに圧接することで、所定の前傾姿勢で固定しうる。
【0025】
次に、スイング体5は、長尺板状をなし、その長さ方向の一端部が、スイング軸16のフランジ部16Aに固定される。またスイング体5の他端部には、ゴルフクラブGのグリップ部分Gaを固定するためのクラブ保持具18が設けられる。
【0026】
図6(A)、(B)に示すように、本例のクラブ保持具18は、スイング体5に、保護手段20を介して取り付くベース部18Aと、このベース部18Aの上向き面に取り付く複数(本例では3つ)のクラブ把持部18Bとを具える。本例のベース部18Aは、スイング体5と略同幅の板状をなす。またクラブ把持部18Bは、上下に2分割された例えばブロック状の一対の把持片21を有する。各把持片21には、その分割面に、グリップ部分Gaを受ける半円弧の凹溝21Aが形成される。一方の把持片21は、スイング体5に固定される。また他方の把持片21は、一方の把持片21にネジ金具22を介して取り外し可能に取り付き、向き合う凹溝21A、21A間でグリップ部分Gaを圧接状態で把持しうる。
【0027】
保護手段20は、ゴルフクラブに過度の力が作用したとき、スイング体5に対してゴルフクラブを相対的に移動させ、前記過度の力がスイング体5に作用するのを緩和させる。本例の保護手段20は、スイング軸16と平行な枢支軸24、およびボールプランジャ25を含む。枢支軸24は、スイング体5とベース部18Aとを貫通してのび、両者をその軸心j3廻りで相対回転可能に連結する。ボールプランジャ25は、スイング体5及びベース部18Aの一方、本例ではスイング体5に取り付き、前記相対回転を阻止する。図7に示すように、ボールプランジャ25は、周知構造をなし、ネジ軸状の胴部25Aと、その中心孔25B内に配されるボール25Cと、中心孔25B内に配されかつ前記ボール25Cを先端側に向かって付勢するバネ25Dとを含んで構成させる。またベース部18Aの下向き面には、前記ボール25Cが填り合う係合凹部26が形成される。
【0028】
この保護手段20は、常時は、ボール25Cと係合凹部26とが填り合い、スイング体5とベース部18Aとが一直線状となる状態(図6(B)に一点鎖線で示す)で、両者を一体連結する。これに対して、打球時にゴルフクラブGに過度の力が作用したとき、軸心j3廻りのモーメントにより、ボール25Cが係合凹部26から外れて、一体連結が解除される。その結果、図6(B)に実線で示すように、スイング体5に対してゴルフクラブGを打出し方向後方側に逃がすことができ、過度の力が、スイング体5、アーム取付け台4、ライ角調整軸13、及び基台3に伝達されるのを防止することができる。
【0029】
次に、アーム保持手段6は、図1(B)、図2に示すように、ゴルフクラブGがテイクバックされた第1状態Q1にて、スイング体5を保持でき、かつ操作によって前記保持を解除する。本例では、第1状態Q1として、ゴルフクラブGがインパクト状態Q2から軸心j2を中心として略180°回転した状態が示される。しかしこれに限定されるものではなく、種々な回転角度の状態が採用しうる。
【0030】
図8に示すように、本例のアーム保持手段6は、停止具29と、この停止具29に例えばブレーキケーブルなどのシース付きワイヤ28を介して接続される解除具30とを含んで構成される。
【0031】
停止具29は、アーム取付け台4に形成される張り出し片17に、例えば固定板31を介して取り付けられる。本例の張り出し片17は、胴部4Aの側面から、第1状態Q1におけるスイング体5と平行なZ方向かつスイング軸16から離れる向きにのびる。便宜上、Z方向において、スイング軸16から離れる向きを後方側、近づく向きを前方側という場合がある。
【0032】
本例の停止具29は、図10に示すように、ケース32と、移動片33と、バネ片34とを具える。移動片33は、ケース32内をZ方向にスライド移動可能に配される本体部33Aと、この本体部33Aに連なりケース32の外側で本体部33Aと一体移動しうるストッパー部33Bとを有する。ストッパー部33Bは、そのZ方向後端部33Beがケース32のZ方向後端面32Sから最も後方側にはみ出す係止位置R1と、係止位置R1よりもZ方向前側の解除位置R2との間を、Z方向に移動しうる。
【0033】
またバネ片34は、ケース32内に収納され、移動片33をZ方向後方側に付勢する。
【0034】
本例のスイング体5の内向き面5Sには、係止突部35が突設される。そしてこの係止突部35が、係止位置R1のストッパー部33Bと係合することで、前記第1状態Q1のスイング体5を保持する。なおストッパー部33Bの後端部33Beには傾斜面29Sが形成される。この傾斜面29Sは、スイング体5を第1状態Q1までテイクバックさせるとき、係止突部35と当接して、ストッパー部33BをZ方向前方向側に移動させることができる。即ち、停止具29は、テイクバックする方向には係止突部35を通過させることができ、かつクラブをスイングする方向には通過を阻止して停止させうる。
【0035】
図8に示すように、解除具30は、本例ではアーム取付け台4に、固定板36を介して取り付けられる。本例の解除具30は、固定板36に取り付くブロック状のホルダー37と、一端側が軸心j4の廻りで傾動可能にホルダー37に枢支される解除レバー38とを有する。この解除レバー38の他端側には、手操作用の取手部38Aが設けられる。
【0036】
またシース付きワイヤ28は、ワイヤ28Aの周囲をチューブ状のシース28Bで被覆保護した周知構造をなし、その一端は、解除レバー38に接続される。詳しくは、シース28Bの一端部は、例えばホルダー37上に設ける取付け板部40に固定される。またワイヤ28Aの一端部は、取手部38Aと枢支部との中間位置で解除レバー38に連結される。シース28Bの他端部は、固定板31上に設ける取付け板部41に固定される。またワイヤ28Aの他端部は、移動片33のZ方向前端部に連結される。
【0037】
従って、解除レバー38への手動による傾動操作により、ワイヤ28Aを介して移動片33をZ方向前方側に引っ張ることができる。これにより、ストッパー部33Bを係止位置R1から解除位置R2まで移動でき、アーム保持手段6によるスイング体5の保持を解除させることができる。
【0038】
なお停止具29及び解除具30としては、これに限定されるものではなく種々な構造を採用できる。
【0039】
図2に示すように、前記弾性駆動手段7は、弾性体からなり、スイング体5が第1状態Q1のときに弾性エネルギーを蓄える。そして、アーム保持手段6の前記解除により、弾性エネルギーをスイング体5に伝えて軸心j2廻りの回転力を与える。
【0040】
本例の弾性駆動手段7は、紐状のゴム弾性体43Aを用いた第1の弾性体43を少なくとも含む。本例では、バネ44Aを用いた第2の弾性体44をさらに含む場合が示される。前記「紐状」には、ベルト状、チューブ状なども含まれる。第1の弾性体43は、一端が脚部8に、かつ他端がスイング体5にそれぞれ連結される。この第1の弾性体43は、第1状態Q1において引張弾性変形し、その引張弾性力により、スイング体5をインパクト側に引っ張る。なおインパクト状態Q2(図3に示す)では、第1の弾性体43の引張弾性変形量はゼロであり、第1の弾性体43は、弛んだ状態にある。
【0041】
本例の弾性駆動手段7は、図5に示すように、第1の弾性体43の第1状態Q1での引張弾性変形量を調整する第1の調整機構47を具える。第1の調整機構47は、脚片8Aに、その長さ方向に位置替え可能に取り付くホルダー47Aと、このホルダー47Aを自在な位置で固定するネジ金具47Bとを有する。ホルダー47Aには、第1の弾性体43の一端が取り付くフック金具46が配される。なお脚片8Aには、ホルダー47Aの移動位置を表示するための目盛り部47Cが形成される。
【0042】
また図8、9に示すように、第2の弾性体44のバネ44Aとして、本例では圧縮バネが採用される。
【0043】
第2の弾性体44は、その一端が本体部2及びスイング体5の一方に固着される。また第2の弾性体44の他端は、第1状態Q1において本体部2及びスイング体5の他方と当接して圧縮弾性変形する。本例では、第2の弾性体44の一端がアーム取付け台4に固着され、また第2の弾性体44の他端が、第1状態Q1のスイング体5と当接する。そして、アーム保持手段6を解除させたとき、バネの圧縮弾性力により、スイング体5を第1状態Q1からZ方向と略直交する向きに押し出す。
【0044】
本例の第2の弾性体44は、図9に示すように、張り出し片17の上縁に固定のブロック状のホルダー50を介して保持される。ホルダー50は、Z方向と略直交する向きにのびる孔部50Aを有し、この孔部50A内に第2の弾性体44の一端側が収容保持される。本例では、孔部50Aにはネジ孔50Bが同心に連なるとともに、このネジ孔50Bには調整ネジ51が進退自在に螺合する。なお調整ネジ51の先端に、保持金具52を介して第2の弾性体44の一端部が取り付く。
【0045】
第2の弾性体44は、スイング体5の側端面と調整ネジ51との間で圧縮されるとともに、その圧縮弾性変形量は、調整ネジ51の螺進退によって調整しうる。即ち、本例では調整ネジ51により、第2の弾性体44の圧縮弾性変形量を調整しうる第2の調整機構53を形成している。
【0046】
図1(A)に示すように、インパクト状態Q2からのゴルフクラブGの回転角度が180°に近い第1状態Q1の場合、第1の弾性体43の引張弾性力Fの向きと、スイング体5の長さ方向との間の角度θが小さくなる。そのため、スイング開始時、軸心j2廻りのモーメントが十分発生しない。そこで、本例では、第2の弾性体44によって押出し力を与え、これにより第1状態Q1からのスイング開始を円滑に行っている。
【0047】
なお第1状態Q1におけるゴルフクラブGの回転角度に応じて、第2の弾性体44を排除することもできる。また要求により、第2の弾性体44のみによって弾性駆動手段7を構成することもできる。
【0048】
このように、ゴルフスイング装置1では、第1の弾性体43及び/又は第2の弾性体44の弾性エネルギーを利用してスイング体5に回転力を与えている。そのためモータやその電力源が不要となり、装置を小型軽量化して可搬性を高めることができる。その結果、例えば、ゴルフ場におけるラフ、バンカーなどの種々な場所への移動、設置が容易となる。
【0049】
また弾性駆動手段7では、スイングの初期にだけ動力が働き、インパクトの付近では動力が働かない。従って、打球時に受ける衝撃などの大きな力が、弾性駆動手段7に伝達するのを断つことができ、駆動系における故障の発生を抑制しうる。そのため、地面に直接置いたボールを打つことも可能となる。
【0050】
特に本例では、スイング体5に保護手段20を設けているため、衝撃などの大きな力が作用したとき、スイング体5に対してゴルフクラブGを打出し方向後方側に逃がすことができる。従って、ゴルフクラブGが地面に接した場合にも、その衝撃がスイング体5、アーム取付け台4、ライ角調整軸13、及び基台3に伝達されるのを防止でき、構造系における故障の発生を抑制しうる。
【0051】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0052】
1 ゴルフスイング装置
2 本体部
5 スイング体
6 アーム保持手段
7 弾性駆動手段
8 脚部
8A 脚片
16 スイング軸
18 クラブ保持具
20 保護手段
24 枢支軸
25 ボールプランジャ
43 第1の弾性体
44 第2の弾性体
47 第1の調整機構
G ゴルフクラブ
Q1 第1状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10