特許第6575176号(P6575176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575176
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】電源装置の制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20190909BHJP
【FI】
   H02M3/28 H
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-133461(P2015-133461)
(22)【出願日】2015年7月2日
(65)【公開番号】特開2017-17890(P2017-17890A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】竹上 栄治
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−189497(JP,A)
【文献】 特開2011−147230(JP,A)
【文献】 特開2003−289668(JP,A)
【文献】 特開2015−002579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02H 5/04,7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出部と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定部と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成部と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出部と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定部と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成部と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択部と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成部と、
前記電流差分値に所定の演算処理を施して調整電流差分値を生成するフィルタ部と、を備え、
前記フィルタ部は、前記電流差分値が小さい場合は低ゲインとし、且つ、前記電流差分値が大きい場合は高ゲインとして前記調整電流差分値を演算するゲイン調整器を有し、
前記差分値選択部は、前記電圧差分値と前記調整電流差分値を比較することを特徴とする、
電源装置の制御装置。
【請求項2】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出部と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定部と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成部と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出部と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定部と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成部と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択部と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成部と、
前記電流差分値に所定の演算処理を施して調整電流差分値を生成するフィルタ部と、を備え、
前記フィルタ部は、前記電流差分値が小さい場合は高ゲインとし、且つ、前記電流差分値が大きい場合は低ゲインとして前記調整電流差分値を演算するゲイン調整器を有し、
前記差分値選択部は、前記電圧差分値と前記調整電流差分値を比較することを特徴とする、
電源装置の制御装置。
【請求項3】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出部と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定部と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成部と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出部と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定部と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成部と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択部と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成部と、
前記電圧差分値に所定の演算処理を施して調整電圧差分値を生成するフィルタ部と、を備え、
前記フィルタ部は、前記電圧差分値が小さい場合は低ゲインとし、且つ、前記電圧差分値が大きい場合は高ゲインとして前記調整電圧差分値を演算するゲイン調整器を有し、
前記差分値選択部は、前記調整電圧差分値と前記電流差分値を比較することを特徴とする、
電源装置の制御装置。
【請求項4】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出部と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定部と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成部と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出部と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定部と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成部と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択部と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成部と、
前記電圧差分値に所定の演算処理を施して調整電圧差分値を生成するフィルタ部と、を備え、
前記フィルタ部は、前記電圧差分値が小さい場合は高ゲインとし、且つ、前記電圧差分値が大きい場合は低ゲインとして前記調整電圧差分値を演算するゲイン調整器を有し、
前記差分値選択部は、前記調整電圧差分値と前記電流差分値を比較することを特徴とする、
電源装置の制御装置。
【請求項5】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出部と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定部と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成部と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出部と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定部と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成部と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択部と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成部と、
前記電圧差分値および前記電流差分値に所定の演算処理を施して調整電圧差分値および調整電流差分値を生成するフィルタ部と、を備え、
前記フィルタ部は、
前記電圧差分値が小さい場合は低ゲインとし、且つ、前記電圧差分値が大きい場合は高ゲインとして前記調整電圧差分値を演算する、及び/又は、前記電差分値が小さい場合は低ゲインとし、且つ、前記電差分値が大きい場合は高ゲインとして前記調整電差分値を演算する、ゲイン調整器を有し、
前記差分値選択部は、前記調整電圧差分値と前記調整電流差分値を比較することを特徴とする、
電源装置の制御装置。
【請求項6】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出部と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定部と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成部と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出部と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定部と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成部と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択部と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成部と、
前記電圧差分値および前記電流差分値に所定の演算処理を施して調整電圧差分値および調整電流差分値を生成するフィルタ部と、を備え、
前記フィルタ部は、
前記電圧差分値が小さい場合は高ゲインとし、且つ、前記電圧差分値が大きい場合は低ゲインとして前記調整電圧差分値を演算する、及び/又は、前記電差分値が小さい場合は高ゲインとし、且つ、前記電差分値が大きい場合は低ゲインとして前記調整電差分値を演算する、ゲイン調整器を有し、
前記差分値選択部は、前記調整電圧差分値と前記調整電流差分値を比較することを特徴とする、
電源装置の制御装置。
【請求項7】
前記操作量生成部は、比例動作、積分動作および微分動作のうちの少なくとも1つの特性を有する制御方式によって前記操作量を生成するように構成されることを特徴とする、
請求項1乃至6のいずれかに記載の電源装置の制御装置。
【請求項8】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出処理と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定処理と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成処理と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出処理と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定処理と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成処理と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択処理と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成処理と、
前記電流差分値に所定の演算処理を施して調整電流差分値を生成するフィルタ処理と、を有し、
前記フィルタ処理では、前記電流差分値が小さい場合は低ゲインとし、且つ、前記電流差分値が大きい場合は高ゲインとして前記調整電流差分値を演算するゲイン調整処理を含み、
前記差分値選択処理は、前記電圧差分値と前記調整電流差分値を比較する
ことを特徴とする、
電源装置の制御方法。
【請求項9】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出処理と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定処理と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成処理と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出処理と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定処理と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成処理と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択処理と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成処理と、
前記電流差分値に所定の演算処理を施して調整電流差分値を生成するフィルタ処理と、を有し、
前記フィルタ処理では、前記電流差分値が小さい場合は高ゲインとし、且つ、前記電流差分値が大きい場合は低ゲインとして前記調整電流差分値を演算するゲイン調整処理を含み、
前記差分値選択処理は、前記電圧差分値と前記調整電流差分値を比較する
ことを特徴とする、
電源装置の制御方法。
【請求項10】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出処理と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定処理と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成処理と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出処理と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定処理と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成処理と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択処理と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成処理と、
前記電圧差分値に所定の演算処理を施して調整電圧差分値を生成するフィルタ処理と、を有し、
前記フィルタ処理では、前記電圧差分値が小さい場合は低ゲインとし、且つ、前記電圧差分値が大きい場合は高ゲインとして前記調整電圧差分値を演算するゲイン調整処理を含み、
前記差分値選択処理は、前記調整電圧差分値と前記電流差分値を比較する
ことを特徴とする、
電源装置の制御方法。
【請求項11】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出処理と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定処理と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成処理と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出処理と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定処理と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成処理と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択処理と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成処理と、
前記電圧差分値に所定の演算処理を施して調整電圧差分値を生成するフィルタ処理と、を有し、
前記フィルタ処理では、前記電圧差分値が小さい場合は高ゲインとし、且つ、前記電圧差分値が大きい場合は低ゲインとして前記調整電圧差分値を演算するゲイン調整処理を含み、
前記差分値選択処理は、前記調整電圧差分値と前記電流差分値を比較する
ことを特徴とする、
電源装置の制御方法。
【請求項12】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出処理と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定処理と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成処理と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出処理と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定処理と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成処理と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択処理と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成処理と、
前記電圧差分値および前記電流差分値に所定の演算処理を施して調整電圧差分値および調整電流差分値を生成するフィルタ処理と、を有し、
前記フィルタ処理では、
前記電流差分値が小さい場合は低ゲインとし、且つ、前記電流差分値が大きい場合は高ゲインとして前記調整電流差分値を演算する、及び/又は、前記電圧差分値が小さい場合は低ゲインとし、且つ、前記電圧差分値が大きい場合は高ゲインとして前記調整電圧差分値を演算する、ゲイン調整処理を含み、
前記差分値選択処理は、前記調整電圧差分値と前記調整電流差分値を比較する
ことを特徴とする、
電源装置の制御方法。
【請求項13】
電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出処理と、
前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定処理と、
前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成処理と、
前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出処理と、
前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定処理と、
前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成処理と、
前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択処理と、
前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成処理と、
前記電圧差分値および前記電流差分値に所定の演算処理を施して調整電圧差分値および調整電流差分値を生成するフィルタ処理と、を有し、
前記フィルタ処理では、
前記電流差分値が小さい場合は高ゲインとし、且つ、前記電流差分値が大きい場合は低ゲインとして前記調整電流差分値を演算する、及び/又は、前記電圧差分値が小さい場合は高ゲインとし、且つ、前記電圧差分値が大きい場合は低ゲインとして前記調整電圧差分値を演算する、ゲイン調整処理を含み、
前記差分値選択処理は、前記調整電圧差分値と前記調整電流差分値を比較する
ことを特徴とする、
電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータやAC/DCコンバータ等の電源装置の制御装置および制御方法に関し、特に定電圧定電流制御を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商用電源等の電力供給の分野においては、太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーの普及に伴い、二次電池の活用で需要と供給のミスマッチングを補う手段を整備した次世代電力インフラであるスマートグリッドが構築されつつある。また、自動車の分野においては、エンジンで二次電池を充電する従来のHV(ハイブリッド車)に加え、商用電源等によって二次電池を充電可能なPHEV(プラグインハイブリッド車)やEV(電気自動車)等も急激に市場を拡大しつつある。このため、近年では、電力を二次電池に蓄える技術の重要性が改めて見直され、電力の安定供給やCO2の排出削減という観点から盛んに研究開発が行われている。
【0003】
このような二次電池としては、従来の鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池およびニッケル水素電池等に代わり、エネルギー密度が高く、小型、軽量でありながらも高電圧でメモリ効果のないリチウムイオン電池が主力となりつつある。このリチウムイオン電池は、満充電状態を維持すると劣化しやすいという特性を有することから、トリクル充電に適しておらず、また、過充電による発熱、発火の危険性もあるため、充電に際しては、電圧と電流の双方を厳密に管理するCVCC制御、すなわち定電圧定電流制御が要求される。具体的には、例えば充電初期の低電圧状態では充電電流を略一定に保持し(定電流制御)、充電量が増加した後の高電圧状態では充電電圧を略一定に保持する(定電圧制御)ことで過充電を防止する制御等が行われている。
【0004】
CVCC制御では、電源からの出力電圧と出力電流の双方を略同時に検出してフィードバック制御する必要があり、制御方式としては、CC制御を行うCC制御部(定電流制御部)とCV制御を行うCV制御部(定電圧制御部)をシリーズに配置したカスケード方式と、CC制御部およびCV制御部を並列に配置した並列制御方式の2種類に大別される。また、カスケード方式には、CC制御→CV制御の順に制御を行うCV制御マイナーループ/CC制御メジャーループと、CV制御→CC制御の順に制御を行うCC制御マイナーループ/CV制御メジャーループの2種類がある。
【0005】
CV制御マイナーループ/CC制御メジャーループのカスケード方式は、主に外部からの信号により出力電圧を可変可能に構成された市販の定電圧電源装置に定電流制御機能を追加する際に用いられる(例えば、特許文献1参照)。市販の一般的な電源装置では、TRM機能、PV機能またはVR機能等の呼称で出力電圧の可変機能を付属機能として備えており、外部からの電圧調整信号の入力端子が設けられている。従って、この端子を利用して定電流機能を容易に追加することが可能であり、この方法はアプリケーションとしてカタログ等にも記載されている。
【0006】
図5は、CV制御マイナーループ/CC制御メジャーループのカスケード方式の構成の一例を示したブロック図である。なお、以下の説明では、既知の構成を備えた1石のフォワードコンバータ(DC/DCコンバータ)を電源装置100とした場合の例を示す。具体的に電源装置100は、一対の入力端子101と、一対の出力端子102と、トランス103と、スイッチ104と、ドライバ105と、整流回路106と、平滑回路107と、入力コンデンサ108と、を備え、入力電圧値Vinの直流電圧が一対の入力端子101に印加されると共に、二次電池等の負荷200が一対の出力端子102に接続されている。そして、制御装置110から送信された駆動パルスPに基づいて、ドライバ105がスイッチ104のON/OFFを切り替えることで、負荷200に出力される出力電圧値Voおよび出力電流値Ioが制御されるようになっている。
【0007】
CV制御マイナーループ/CC制御メジャーループのカスケード方式の制御装置110は、CC制御部111と、CV制御部112と、駆動パルス生成部113と、を備えている。CC制御部111は、目標値設定部114によって設定された電流目標値Irefと、出力電流検出部115が検出した出力電流値Ioを比較し、その差分である電流差分値ΔEiをゼロに近づけるように、PID制御等によって電圧目標値Vrefを生成する。なお、この電圧目標値Vrefは、目標値設定部114が設定した電圧目標上限値V0refを超えないよう、リミッタ116によって制限される。
【0008】
そして、CV制御部112は、CC制御部111によって生成された電圧目標値Vrefと、出力電圧検出部117が検出した出力電圧値Voを比較し、その差分である電圧差分値ΔEvをゼロに近づけるように、PID制御等によって操作量Uを生成する。また、駆動パルス生成部113は、この操作量Uに基づいてパルス幅を変調するPWM方式等によって駆動パルスPを生成し、ドライバ105に送信する。
【0009】
従って、この方式では、例えば充電初期の低電圧状態においては、出力電圧値Voが低いことから電圧目標値Vrefは電流差分値ΔEiをゼロに近づけるための値として生成され、この結果、制御装置110はCC制御を行うこととなる。そして、充電量の増加に伴って出力電圧値Voが上昇し、電流差分値ΔEiをゼロに近づけるために必要な電圧目標値Vrefが電圧目標上限値V0refを超えた後は、リミッタ116によって電圧目標値Vrefが電圧目標上限値V0refと同じ値に保持されるようになるため、結果的に制御装置110はCV制御を行うこととなる。
【0010】
CC制御マイナーループ/CV制御メジャーループのカスケード方式は、上述のCV制御マイナーループ/CC制御メジャーループのカスケード方式のCC制御部111とCV制御部112を入れ替えたものであり、二次電池の充放電を行う双方向性の電源装置等に適用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
図6は、CC制御マイナーループ/CV制御メジャーループのカスケード方式の構成の一例を示したブロック図である。この方式では、CV制御部112は、目標値設定部114によって設定された電圧目標値Vrefと、出力電圧検出部117が検出した出力電圧値Voを比較し、その差分である電圧差分値ΔEvをゼロに近づけるように、PID制御等によって電流目標値Irefを生成する。なお、この電流目標値Irefは、目標値設定部114が設定した電流目標上限値I0refを超えないよう、リミッタ116によって制限される。
【0012】
そして、CC制御部111は、CV制御部112によって生成された電流目標値Irefと、出力電流検出部115が検出した出力電流値Ioを比較し、その差分である電流差分値ΔEiをゼロに近づけるように、PID制御等によって操作量Uを生成する。また、駆動パルス生成部113は、この操作量Uに基づいてパルス幅を変調するPWM方式等によって駆動パルスPを生成し、ドライバ105に送信する。
【0013】
従って、この方式では、出力電流値Ioが小さい状態においては、電流目標値Irefは電圧差分値ΔEvをゼロに近づけるための値として生成され、その結果、制御装置110はCV制御を行うこととなる。そして、出力電流値Ioが上昇して電圧差分値ΔEvをゼロに近づけるために必要な電流目標値Irefが電流目標上限値I0refを超えた後は、リミッタ116によって電流目標値Irefが電流目標上限値I0refと同じ値に保持されるようになるため、制御装置110はCC制御を行うこととなる。
【0014】
並列制御方式は、CC制御部111およびCV制御部112を並列に配置し、CC制御およびCV制御のいずれかを選択して行うものである(例えば、特許文献3参照)。図7は、並列制御方式の構成の一例を示したブロック図である。この方式では、制御装置110は、CC制御部111、CV制御部112および駆動パルス生成部113に加え、目標値選択部118を備えている。CC制御部111は、目標値設定部114によって設定された電流目標値Irefと、出力電流検出部115が検出した出力電流値Ioを比較し、その差分である電流差分値ΔEiをゼロに近づけるように、PID制御等によってCC制御操作量Uiを生成する。同様に、CV制御部112は、目標値設定部114によって設定された電圧目標値Vrefと、出力電圧検出部117が検出した出力電圧値Voを比較し、その差分である電圧差分値ΔEvをゼロに近づけるように、PID制御等によってCV制御操作量Uvを生成する。
【0015】
そして、目標値選択部118は、CC制御操作量UiおよびCV制御操作量Uvのいずれかを操作量Uとして選択し、駆動パルス生成部113は、この選択された操作量Uに基づいてパルス幅を変調するPWM方式等によって駆動パルスPを生成し、ドライバ105に送信する。従って、制御装置110は、目標値選択部118がCC制御操作量Uiを選択した場合はCC制御を行い、CV制御操作量Uvを選択した場合はCV制御を行うこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平7−219652号公報
【特許文献2】特許第5185328号公報
【特許文献3】特許第4162546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、従来のカスケード方式では、マイナーループの目標値をメジャーループによって変動させることから、マイナーループの応答速度とメジャーループの応答速度が近い場合、マイナーループによる制御中にメジャーループによる目標値の変動が生じることで、マイナーループによる制御が不安定となる可能性がある。従って、カスケード方式では、マイナーループによる制御中に目標値の変動が生じないよう、メジャーループによる制御の応答速度をマイナーループと比較して十分に低くする必要があった。
【0018】
このため、応答性が負荷200のインピーダンス等に大きく依存するCC制御をメジャーループとした場合、応答速度の低下に起因する不具合が生じ、その不具合を解消するためには負荷200の状態に応じたチューニングが必要となる。その結果、CV制御マイナーループ/CC制御メジャーループのカスケード方式は、高コスト且つ汎用性に欠けるものとなっていた。また、CV制御をメジャーループとした場合には、電源装置において最も重要なCV制御の応答速度が大幅に低下することとなる。その結果、CC制御マイナーループ/CV制御メジャーループのカスケード方式は、高い応答速度の要求されない双方向性の電源装置や力率改善昇圧コンバータ等に用途が限定されるものとなっていた。
【0019】
一方、並列制御方式では、CC制御部111およびCV制御部112がそれぞれ独立してCC制御操作量UiおよびCV制御操作量Uvを生成するため、カスケード方式のような問題は生じず、CC制御およびCV制御のいずれにおいても適切な応答性を確保することができる。但し、並列制御方式では、操作量Uとして選択されるか否かに関わらず、CC制御部111およびCV制御部112が常にCC制御操作量UiおよびCV制御操作量Uvを生成するため、CC制御からCV制御、またはCV制御からCC制御に制御が切り替わる際の操作量Uの変更に起因して制御が不安定となるという問題があった。
【0020】
具体的には、例えばCC制御中には、出力電流値Ioは電流目標値Irefに近い値となるが、出力電圧値Voは電圧目標値Vrefから乖離した値となるため、CC制御中に生成されるCV制御操作量Uvは、主に積分動作の影響によってCC制御操作量Uiよりも大幅に大きくなっている。従って、CC制御からCV制御に切り替わる際にCV制御操作量Uvが操作量Uとして選択されると、出力電圧および出力電流が大きく変動することとなり、安定状態に収束するまでに時間を要するという問題が生じていた。
【0021】
このような問題に対し、上記特許文献3に記載の制御方法では、選択されていない制御における積分動作をキャンセルすることで、制御が切り替わる際の安定性を確保するようにしている。しかしながら、上記特許文献3の制御方法では、CC制御操作量UiおよびCV制御操作量Uvのいずれが選択されたかに基づいて、積分動作をキャンセルするか否かを判定する必要があるため、制御が複雑になるという問題があった。さらに、上記特許文献3の制御方法では、CC制御操作量Uiを生成する制御回路およびCV制御操作量Uvを生成する制御回路を個別に設けているため、制御装置110のコストが増大すると共に、設置スペースが拡大するという問題があった。
【0022】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡便な構成でありながらも高い応答性で安定的に定電圧低電流制御を行うことが可能な電源装置の制御装置および制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
(1)本発明は、電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出部と、前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定部と、前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成部と、前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出部と、前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定部と、前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成部と、前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択部と、前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成部と、を備えることを特徴とする、電源装置の制御装置である。
【0024】
(2)本発明はまた、前記電流差分値に所定の演算処理を施して調整電流差分値を生成するフィルタ部を備え、前記差分値選択部は、前記電圧差分値と前記調整電流差分値を比較することを特徴とする、上記(1)に記載の電源装置の制御装置である。
【0025】
(3)本発明はまた、前記電圧差分値に所定の演算処理を施して調整電圧差分値を生成するフィルタ部を備え、前記差分値選択部は、前記調整電圧差分値と前記電流差分値を比較することを特徴とする、上記(1)に記載の電源装置の制御装置である。
【0026】
(4)本発明はまた、前記電圧差分値および前記電流差分値に所定の演算処理を施して調整電圧差分値および調整電流差分値を生成するフィルタ部を備え、前記差分値選択部は、前記調整電圧差分値と前記調整電流差分値を比較することを特徴とする、上記(1)に記載の電源装置の制御装置である。
【0027】
(5)本発明はまた、前記フィルタ部は、所定のゲインを乗算するゲイン補償器、位相を補償する位相補償器、およびゲインを調整するゲイン調整器の少なくともいずれか1つを有することを特徴とする、上記(2)乃至(4)のいずれかに記載の電源装置の制御装置である。
【0028】
(6)本発明はまた、前記ゲイン調整器は、入力値の大きさに応じて異なるゲイン補償を行うように構成されることを特徴とする、上記(5)に記載の電源装置の制御装置である。
【0029】
(7)本発明はまた、前記差分値選択部は、前記電圧差分値と前記電流差分値を比較することを特徴とする、上記(1)に記載の電源装置の制御装置である。
【0030】
(8)本発明はまた、前記操作量生成部は、比例動作、積分動作および微分動作のうちの少なくとも1つの特性を有する制御方式によって前記操作量を生成するように構成されることを特徴とする、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の電源装置の制御装置である。
【0031】
(9)本発明はまた、電源装置の出力電圧値を検出する出力電圧検出処理と、前記出力電圧値の目標とする電圧目標値を設定する電圧目標値設定処理と、前記電圧目標値から前記出力電圧値を減算して電圧差分値を生成する電圧差分値生成処理と、前記電源装置の出力電流値を検出する出力電流検出処理と、前記出力電流値の目標とする電流目標値を設定する電流目標値設定処理と、前記電流目標値から前記出力電流値を減算して電流差分値を生成する電流差分値生成処理と、前記電圧差分値または前記電圧差分値に基づく値と、前記電流差分値または前記電流差分値に基づく値を比較して小さい方を制御用差分値として選択する差分値選択処理と、前記制御用差分値に基づいて前記電源装置を制御する操作量を生成する操作量生成処理と、を有することを特徴とする、電源装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る電源装置の制御装置および制御方法によれば、簡便な構成でありながらも高い応答性で安定的に定電圧低電流制御を行うことが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態に係る電源装置の制御装置の構成を示したブロック図である。
図2】フィルタ部の構成を示したブロック図である。
図3】同制御装置の制御動作を模式的に示した図である。
図4】(a)〜(c)同制御装置のその他の形態の例を示したブロック図である。
図5】従来のCV制御マイナーループ/CC制御メジャーループのカスケード方式の構成の一例を示したブロック図である。
図6】従来のCC制御マイナーループ/CV制御メジャーループのカスケード方式の構成の一例を示したブロック図である。
図7】従来の並列制御方式の構成の一例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0035】
図1は、本実施形態に係る電源装置の制御装置1(以下、単に制御装置1と呼ぶ)の構成を示したブロック図である。制御装置1は、例えばDC/DCコンバータ等の電源装置100において、出力のCVCC制御(定電圧低電流制御)を行うものである。
【0036】
本実施形態の電源装置100は、上述の従来例と同様に、既知の構成を備えた1石のフォワードコンバータである。具体的に電源装置100は、一対の入力端子101と、一対の出力端子102と、トランス103と、スイッチ104と、ドライバ105と、整流回路106と、平滑回路107と、入力コンデンサ108と、を備え、入力電圧値Vinの直流電圧が一対の入力端子101に印加されると共に、二次電池等の負荷200が一対の出力端子102に接続されている。そして、制御装置1から送信された駆動パルスPに基づいて、ドライバ105がスイッチ104のON/OFFを切り替えることで、負荷200に出力される出力電圧値Voおよび出力電流値Ioが制御されるようになっている。
【0037】
なお、電源装置100は、その他の構成のDC/DCコンバータやAC/DCコンバータであってもよいことはいうまでもない。例えば、電源装置100の絶縁は、絶縁および非絶縁のいずれであってもよい。また、電源装置100の電圧変換比は、降圧(バックコンバータ)、昇圧(ブーストコンバータ)および昇降圧(バックブーストコンバータ)のいずれであってもよい。また、電源装置100の発振方式は、自励方式、他励方式のいずれであってもよい。また、電源装置100の制御方式はPWM制御、PFM制御および位相シフト制御のいずれであってもよい。また、電源装置100の変換部の構成は、フライバック、フォワード、ハーフブリッジ、フルブリッジおよびプッシュプル等のいずれであってもよい。
【0038】
制御装置1は、適宜のMCU(マイクロコントローラ)等から構成され、図1に示されるように、出力電圧検出部10と、出力電流検出部20と、目標値設定部30と、電圧差分値生成部40と、電流差分値生成部50と、フィルタ部60と、差分値選択部70と、操作量生成部80と、駆動パルス生成部90と、を備えている。
【0039】
出力電圧検出部10は、電源装置100の出力電圧値Voを検出するものである。具体的に出力電圧検出部10は、レベル変換器およびADC(アナログデジタルコンバータ)を備えており、出力電圧値Voを電圧目標値Vrefと比較可能なレベルのデジタル信号に変換して電圧差分値生成部40に送信する。なお、ノイズによる誤動作等を防止するために、抵抗およびコンデンサからなるRC位相補償器を出力電圧検出部10に設けるようにしてもよい。
【0040】
出力電流検出部20は、電源装置100の出力電流値Ioを検出するものである。具体的に出力電流検出部20は、IVC(電流電圧コンバータ)、ならびにレベル変換器およびADCを備えており、出力電流値Ioを電流目標値Irefと比較可能なレベルのデジタル信号に変換して電流差分値生成部50に送信する。なお、IVCは、例えば出力端子102等の直流電流が流れる位置で電流を検出する場合には抵抗素子やホール素子等から構成され、交流電流が流れる位置または直流電流に交流電流が重畳されている位置で電流を検出する場合には抵抗素子やホール素子またはカレントトランス等から構成される。また、出力電圧検出部10と同様に、出力電流検出部20にRC位相補償器を設けるようにしてもよい。
【0041】
目標値設定部30は、出力電圧値Voの目標とする電圧目標値Vref、および出力電流値Ioの目標とする電流目標値Irefを設定するものである。目標値設定部30は、外部から信号を受信する端子32を備えており、この端子32を介して受信した信号に基づいて、出力電圧値Voと比較する電圧目標値Vref、および出力電流値Ioと比較する電流目標値Irefを生成する。また、目標値設定部30は、生成した電圧目標値Vrefおよび電流目標値Irefを電圧差分値生成部40および電流差分値生成部50に送信する。
【0042】
なお、ノイズによる誤動作や、電圧目標値Vrefまたは電流目標値Irefを変更した際のオーバーシュート等を防止するために、目標値設定部30にRC位相補償器を設けるようにしてもよい。また、目標値設定部30にROMやRAM等の記憶手段を設け、この記憶手段に記憶された情報に基づいて電圧目標値Vrefまたは電流目標値Irefを設定するようにしてもよい。また、目標値設定部30は、電圧目標値Vrefおよび電流目標値Irefごとに、個別に設けられるものであってもよい。
【0043】
電圧差分値生成部40は、電圧目標値Vrefと出力電圧値Voの差分である電圧差分値ΔEvを生成するものである。具体的に電圧差分値生成部40は、減算器等から構成され、電圧目標値Vrefから出力電圧値Voを減算して電圧差分値ΔEvを生成する。また、電圧差分値生成部40は、生成した電圧差分値ΔEvを差分値選択部70に送信する。なお、電圧差分値生成部40は、電圧目標値Vrefよりも出力電圧値Voが大きい場合には、負の値の電圧差分値ΔEvを生成する。
【0044】
電流差分値生成部50は、電流目標値Irefと出力電流値Ioの差分である電流差分値ΔEiを生成するものである。具体的に電流差分値生成部50は、減算器等から構成され、電流目標値Irefから出力電流値Ioを減算して電流差分値ΔEiを生成する。また、電流差分値生成部50は、生成した電流差分値ΔEiをフィルタ部60に送信する。なお、電流差分値生成部50は、電流目標値Irefよりも出力電流値Ioが大きい場合には、負の値の電流差分値ΔEiを生成する。
【0045】
フィルタ部60は、ゲイン補償および位相補償を行うことで、CC制御の応答性を調整するものである。具体的にフィルタ部60は、電流差分値ΔEiに所定の演算処理を施して調整電流差分値ΔEiaを生成し、この調整電流差分値ΔEiaを差分値選択部70に送信する。詳細は後述するが、制御装置1では、1つの操作量生成部80によってCV制御およびCC制御の双方を行うため、フィルタ部60を設けることで、出力電圧値Voと出力電流値Ioのレベル差が大きいような場合にもCV制御の応答性とCC制御の応答性のバランスを取ることを可能としている。また、フィルタ部60を設けることにより、差分値選択部70が比較する差分値の大きさを調整することができるため、CV制御とCC制御の間における相互干渉の発生を防止することが可能となる。
【0046】
図2は、フィルタ部60の構成を示したブロック図である。図2に示されるように、フィルタ部60は、ゲイン補償器62と、位相補償器64と、ゲイン調整器66と、から構成されている。
【0047】
ゲイン補償器62は、電流差分値ΔEiに所定のゲインK1を乗算することでゲイン補償を行うものであり、ゲイン補償後の一次調整電流差分値ΔEi1=K1ΔEiを位相補償器64に送信する。位相補償器64は、一次調整電流差分値ΔEi1に位相を補償する演算処理を施すことで位相補償を行うものであり、位相補償後の二次調整電流差分値ΔEi2をゲイン調整器66に送信する。なお、位相補償の演算式は、例えばΔEi2(n+1)=α{ΔEi1(n)−ΔEi2(n)}+ΔEi2(n)となる。ここで、ΔEi2(n+1)は、n+1回目のフィードバックにおけるΔEi2を意味し、ΔEi1(n)およびΔEi2(n)は、n回目のフィードバックにおけるΔEi1およびΔEi2をそれぞれ意味している。また、αは所定の定数である。ゲイン調整器66は、二次調整電流差分値ΔEi2の大きさに基づいて異なるゲイン補償を行うことで、ゲインを調整するものである。
【0048】
具体的にゲイン調整器66は、主経路66aと、分岐路66bと、主経路66aに設けられた不感帯66cおよび補助ゲイン補償器66dと、主経路66aと分岐路66bを繋ぐように設けられた加算器66eと、から構成されている。主経路66aは、二次調整電流差分値ΔEi2に不感帯66cおよび補助ゲイン補償器66dによる所定の演算処理を施した上で加算器66eに送信する経路である。分岐路66bは、二次調整電流差分値ΔEi2をそのまま加算器66eに送信する経路である。
【0049】
不感帯66cは、二次調整電流差分値ΔEi2が所定の閾値Vth以下の場合は信号を遮断し、閾値Vthより大きい場合には二次調整電流差分値ΔEi2から閾値Vthを減算した三次調整電流差分値ΔEi3=ΔEi2−Vthを補助ゲイン補償器66dに送信するように構成されている。補助ゲイン補償器66dは、三次調整電流差分値ΔEi3に所定のゲインK2を乗算した四次調整電流差分値ΔEi4=K2ΔEi3を加算器66eに送信する。加算器66eは、主経路66aの補助ゲイン補償器66dからの信号と分岐路66bからの信号を加算して差分値選択部70に送信するものである。
【0050】
従って、加算器66eは、二次調整電流差分値ΔEi2が所定の閾値Vthより大きい場合には、補助ゲイン補償器66dからの四次調整電流差分値ΔEi4に二次調整電流差分値ΔEi2を加算した結果を調整電流差分値ΔEiaとして差分値選択部70に送信する。また、加算器66eは、二次調整電流差分値ΔEi2が所定の閾値Vth以下の場合には、不感帯66cが信号を遮断するため、二次調整電流差分値ΔEi2を調整電流差分値ΔEiaとして差分値選択部70に送信する。
【0051】
なお、フィルタ部60におけるゲイン補償器62、位相補償器64およびゲイン調整器66の配置順は、図2に示す例に限定されるものではなく、その他の配置順であってもよい。また、不感帯66cは、二次調整電流差分値ΔEi2が所定の閾値Vth以上の場合は信号を遮断し、閾値Vth未満の場合には二次調整電流差分値ΔEi2から閾値Vthを減算した三次調整電流差分値ΔEi3を補助ゲイン補償器66dに送信するものであってもよい。また、不感帯66cの閾値Vthの設定はヒステリシスを有するものであってもよい。
【0052】
図1に戻って、差分値選択部70は、電圧差分値ΔEvおよび調整電流差分値ΔEiaのうち、いずれか小さい方を選択するものである。具体的に差分値選択部70は、適宜の選択器から構成され、電圧差分値ΔEvおよび調整電流差分値ΔEiaを比較して、いずれか小さい方を制御用差分値ΔEとして操作量生成部80に送信する。
【0053】
操作量生成部80は、制御用差分値ΔEに基づいて電源装置の出力を制御するための操作量Uを生成するものである。本実施形態では、制御装置1はPWM(パルス幅変調)方式によって電源装置100の備えるスイッチ104のON/OFFを制御するため、操作量生成部80はスイッチ104のON/OFFの時比率(Duty)を操作量Uとして生成する。具体的に操作量生成部80は、比例動作(P)、積分動作(I)および微分動作(D)を行うPID制御器から構成され、PID制御によって制御用差分値ΔEをゼロに近づけるように操作量Uを生成し、駆動パルス生成部90に送信する。
【0054】
従って、操作量生成部80は、制御用差分値ΔEとして電圧差分値ΔEvが選択された場合は、電圧差分値ΔEvをゼロに近づけるように操作量Uを生成し、制御用差分値ΔEとして調整電流差分値ΔEiaが選択された場合は、調整電流差分値ΔEiaをゼロに近づけるように操作量Uを生成することとなる。すなわち、制御装置1では、一般に応答特性の異なるCV制御およびCC制御の双方を1つの操作量生成部80で行うようになっている。
【0055】
このため、本実施形態では、上述のようにフィルタ部60を設け、フィルタ部60によってCC制御の応答性を調整することで、操作量生成部80をCV制御に特化して最適化することを可能としている。操作量生成部80をCV制御に最適化することで、電源装置100において最も重要なCV制御における適切な応答性の確保が容易となる。また、既存の一般的なCV制御用のPID制御器等を活用して制御装置1を実現することができるため、制御装置1のコストを低減することが可能となる。
【0056】
また、フィルタ部60による調整を可能とすることで、負荷200の状態に大きく依存するCC制御の応答性の調整を容易にすると共に、CC制御の応答性の調整がCV制御の応答性に影響しないようにすることができる。すなわち、本実施形態の制御装置1によれば、CV制御の応答性とCC制御の応答性を容易にバランスさせることが可能となっている。また、フィルタ部60を適宜に設定することで、CC制御におけるノイズによる誤動作や発信等の不具合も防止することが可能となっている。
【0057】
なお、操作量生成部80は、PID制御以外の各種制御方式によって操作量Uを生成するものであってもよい。但し、CV制御およびCC制御を簡便且つ安定的に行うためには、操作量生成部80は、比例動作、積分動作および微分動作のうちの少なくとも1つの特性を有する制御方式によって前記操作量を生成するものであることが好ましく、比例動作、積分動作および微分動作のうちの少なくとも2つの特性を有する制御方式によって前記操作量を生成するものであればより好ましく、比例動作、積分動作および微分動作の全ての特性を有する制御方式によって前記操作量を生成するものであることが最も好ましい。
【0058】
駆動パルス生成部90は、操作量Uに基づいて電源装置100の備えるスイッチ104のON/OFFを切り替える駆動パルスPを生成し、スイッチ104を駆動するドライバ105に送信するものである。具体的に駆動パルス生成部90は、PWM方式によって駆動パルスPを生成するPWMジェネレータから構成され、操作量Uに基づいてパルス幅を変調させた駆動パルスPを生成してドライバ105に送信する。ドライバ105は、駆動パルスPに従ってスイッチ104を駆動し、これにより操作量Uに基づく時比率でスイッチ104のON/OFFが切り替わることで、電源装置100の出力、すなわち出力電圧値Voおよび出力電流値Ioが制御される。
【0059】
なお、駆動パルス生成部90は、操作量Uに基づいて駆動パルスPの周期を変調するPFM(パルス周期変調)方式によって駆動パルスPを生成するものであってもよい。この場合、操作量生成部80は、スイッチ104のON/OFFの周期を操作量Uとして生成するように構成すればよい。また、駆動パルス生成部90は、PWM方式とPFM方式を適宜に切り替えて駆動パルスPを生成するものであってもよく、操作量生成部80の生成した操作量Uが時比率である場合にはPWM方式で駆動パルスPを生成し、周期である場合にはPFM方式で駆動パルスPを生成するものであってもよい。
【0060】
次に、制御装置1の制御動作について説明する。上述の構成により、制御装置1では、出力電圧値Voおよび出力電流値Ioを検出し、電圧目標値Vrefおよび電流目標値Irefから減算することで、電圧差分値ΔEvおよび電流差分値ΔEiを生成する。電流差分値ΔEiについては、さらにゲイン補償および位相補償を行うことで、調整電流差分値ΔEiaを生成する。そして、電圧差分値ΔEvが調整電流差分値ΔEiaよりも小さい場合には、操作量Uを生成するための制御用差分値ΔEとして電圧差分値ΔEvを選択する。また、調整電流差分値ΔEiaが電圧差分値ΔEvよりも小さい場合には、操作量Uを生成するための制御用差分値ΔEとして調整電流差分値ΔEiaを選択する。
【0061】
この結果、制御装置1は、電圧差分値ΔEvが調整電流差分値ΔEiaよりも小さい場合には、電圧差分値ΔEvをゼロに近づけるように操作量Uを生成し、この操作量Uに基づく時比率の駆動パルスPを電源装置100に送信する。すなわち、制御装置1は、電圧差分値ΔEvが調整電流差分値ΔEiaよりも小さい場合には、出力電圧値Voを電圧目標値Vrefに保持するように、CV制御を行う。
【0062】
また、調整電流差分値ΔEiaが電圧差分値ΔEvよりも小さい場合には、制御装置1は、調整電流差分値ΔEiaをゼロに近づけるように操作量Uを生成し、この操作量Uに基づく時比率の駆動パルスPを電源装置100に送信する。すなわち、制御装置1は、調整電流差分値ΔEiaが電圧差分値ΔEvよりも小さい場合には、出力電流値Ioを電流目標値Irefに保持するように、CC制御を行う。
【0063】
図3は、制御装置1の制御動作を模式的に示した図である。図3では、縦軸を電圧差分値ΔEv、横軸を調整電流差分値ΔEiaとした二次元空間を示しており、一点鎖線で示した直線Lは、ΔEv=ΔEiaとなる線を示している。
【0064】
電源装置100の出力状態が、直線Lよりも下の領域にある場合、具体的には、第1象限の領域A1a、第3象限の領域A3aまたは第4象限全体の領域A4にある場合は、電圧差分値ΔEvが調整電流差分値ΔEiaよりも小さいため、CV制御が行われる。従って、例えば制御開始時の電源装置100の出力状態が点P1にある場合、制御装置1はCV制御によって電圧差分値ΔEvがゼロに近づくように操作量Uを生成するため、電源装置100の出力状態は、実線の矢印で示すように横軸に向けて移動することとなる。そして、電源装置100の出力状態が略横軸の正の範囲上にある状態、すなわちΔEv≒0且つΔEia>0となる状態がCV制御における定常動作状態となる。
【0065】
一方、電源装置100の出力状態が、直線Lよりも上の領域にある場合、具体的には第1象限の領域A1b、第2象限全体の領域A2または第3象限の領域A3bにある場合は、調整電流差分値ΔEiaが電圧差分値ΔEvよりも小さいため、CC制御が行われる。従って、例えば制御開始時の電源装置100の出力状態が点P2にある場合、制御装置1はCC制御によって調整電流差分値ΔEiaがゼロに近づくように操作量Uを生成するため、電源装置100の出力状態は、実線の矢印で示すように縦軸に向けて移動することとなる。そして、電源装置100の出力状態が略縦軸の正の範囲上にある状態、すなわちΔEia≒0且つΔEv>0となる状態がCC制御における定常動作状態となる。
【0066】
なお、制御装置1は、電源装置100の出力状態が領域A3aもしくは領域A4、または領域A2もしくは領域A3bにある場合は、電圧差分値ΔEvまたは調整電流差分値ΔEiaが負の値となるため、操作量Uの値を減少させて駆動パルスPのパルス幅を縮小し、スイッチ104のON状態の時比率を減少させる。また、電源装置100の出力状態が領域A1aまたは領域A1bにある場合は、電圧差分値ΔEvまたは調整電流差分値ΔEiaが正の値となるため、制御装置1は、操作量Uの値を増加させて駆動パルスPのパルス幅を拡大し、スイッチ104のON状態の時比率を増加させる。
【0067】
CV制御における定常動作状態では、通常、出力電圧値Voは電圧目標値Vrefと略等しく、出力電流値Ioは電流目標値Irefから乖離しているため、電圧差分値ΔEvは調整電流差分値ΔEiaよりも小さくなる。また、CC制御における定常動作状態では、通常、出力電流値Ioは電流目標値Irefと略等しく、出力電圧値Voは電圧目標値Vrefから乖離しているため、調整電流差分値ΔEiaは電圧差分値ΔEvよりも小さくなる。
【0068】
従って、制御装置1では、原則としてCV制御における定常動作状態中は電圧差分値ΔEvが制御用差分値ΔEとして選択され、CC制御における定常動作状態中は調整電流差分値ΔEiaが制御用差分値ΔEとして選択されるようになっている。すなわち、制御装置1によれば、CV制御およびCC制御のいずれにおいても定常動作状態を安定的に維持することが可能となっている。
【0069】
但し、定常動作状態における電源装置100の出力状態が原点に近い位置にある場合、具体的にはCV制御における定常動作状態中に調整電流差分値ΔEiaが小さい場合、またはCC制御における定常動作状態中に電圧差分値ΔEvが小さい場合には、負荷200の状態の急変等によって出力状態が直線Lを超えるように移動する可能性が高くなる。例えば、CV制御の定常動作状態において電源装置100の出力状態が図3に示す点P3にある場合、直線Lまでの距離が近いことから、負荷200の状態の急変等で出力電圧値Voまたは出力電流値Ioが変動することにより、破線の矢印で示すように出力状態が直線Lを超えて移動することがある。
【0070】
このように、電源装置100の出力状態が直線Lを超えて移動した場合、本来CV制御を行うべき状況においてCC制御が行われ、CC制御の結果として電圧差分値ΔEvが調整電流差分値ΔEiaより小さくなるまでCV制御に復帰しないこととなる。すると、CC制御では、電圧差分値ΔEvの変化を無視して調整電流差分値ΔEiaをゼロに近づけるように制御することから、電圧差分値ΔEvの低下には遅れが生じ、CV制御の定常動作状態に復帰するまでに時間を要することとなる。すなわち、負荷200の状態の急変後の一定期間、出力電圧値Voを電圧目標値Vrefに保持できないこととなるため、CV制御の安定性が損なわれる結果となる。
【0071】
このような問題に対し、本実施形態では、フィルタ部60の設定によって調整電流差分値ΔEiaの大きさを調整することで、定常動作状態における電源装置100の出力状態を原点から適宜に離隔させることを可能としている。すなわち、本実施形態では、フィルタ部60の設定により、調整電流差分値ΔEiaと電圧差分値ΔEvの大きさのバランスを調整することができるため、CV制御の定常動作状態中における調整電流差分値ΔEiaの値、およびCC制御の定常動作状態中における電圧差分値ΔEvの値を適宜の大きさとし、出力状態が直線Lを超えにくいようにすることが可能となっている。
【0072】
これにより、本実施形態では、CV制御およびCC制御の安定性を容易に確保することが可能となっている。また、電源装置100の出力状態が直線Lを超えにくいようにすることで、CV制御とCC制御に切り替わりにおけるチャタリング等の不具合も防止することができる。なお、フィルタ部60の構成は、図2に示した構成に限定されるものではなく、電源装置100の仕様や用途等に応じた適宜の構成を採用することができる。例えば、フィルタ部60は、ゲイン補償器62、位相補償器64およびゲイン調整器66のいずれか1つまたはいずれか2つのみを備えるものであってもよいし、ゲイン補償および位相補償とは異なる演算処理を電流差分値ΔEiに施すものであってもよい。
【0073】
次に、制御装置1のその他の形態について説明する。図4(a)〜(c)は、制御装置1のその他の形態の例を示したブロック図である。なお、図4(a)〜(c)においては、電源装置100の記載を省略している。
【0074】
図4(a)は、フィルタ部60を電圧差分値生成部40と差分値選択部70の間に設けるようにした場合を示している。すなわち、この例では、フィルタ部60は電圧差分値ΔEvに所定の演算処理を施して調整電圧差分値ΔEvaを生成し、差分値選択部70は調整電圧差分値ΔEvaと電流差分値ΔEiを比較して、いずれか小さい方を制御用差分値ΔEとして選択する。この場合、操作量生成部80をCC制御に最適化することができるため、電源装置100の仕様や用途等によっては、より安定的な制御が可能となる。また、既存のCC制御用のPID制御器等を活用して制御装置1を実現することが可能となる。
【0075】
図4(b)は、フィルタ部60を電圧差分値生成部40と差分値選択部70の間、および電流差分値生成部50と差分値選択部70の間の双方に設けるようにした場合を示している。すなわち、この例では、2つのフィルタ部60は調整電圧差分値ΔEvaおよび調整電流差分値ΔEiaをそれぞれ生成し、差分値選択部70は調整電圧差分値ΔEvaと調整電流差分値ΔEiaを比較して、いずれか小さい方を制御用差分値ΔEとして選択する。この場合、CV制御およびCC制御におけるゲインおよび位相をより細かく調整することができるため、電源装置100の仕様や用途等によっては、より安定的な制御が可能となる。また、制御装置1の汎用性を高めることが可能となる。
【0076】
図4(c)は、フィルタ部60を省略するようにした場合を示している。すなわち、この例では、差分値選択部70は、電圧差分値ΔEvおよび電流差分値ΔEiをそのまま比較し、いずれか小さい方を制御用差分値ΔEとして選択する。電源装置100の仕様や用途等によっては、出力電圧検出部10または出力電流検出部20におけるレベル変換の調整やデジタル化の際の分解能の調整で、CV制御およびCC制御における応答性を調整可能な場合がある。このような場合には、フィルタ部60を省略することで制御装置1を簡素化し、コストを低減するようにしてもよい。
【0077】
なお、制御装置1では正負を含めて2つの差分値の大きさを比較しているため、CV制御中に電圧差分値ΔEvが負側に大きく変化したような場合、およびCC制御中に電流差分値ΔEiが負側に変化したような場合にも、制御が切り替わりにくいようになっている。すなわち、制御装置1は、フィルタ部60を省略した場合においても、従来以上の安定性を得ることが可能となっている。
【0078】
その他、図示は省略するが、制御装置1は、アナログ回路から構成されるものであってもよい。制御装置1をアナログ回路から構成する場合、電圧差分値生成部40および電流差分値生成部50は、例えば差動増幅回路等から構成することができる。また、フィルタ部60についても、差動増幅回路等によって同様の機能を奏することができる。また、差分値選択部70は、例えば2つのダイオードのカソード同士を接続した所謂ダイオードOR回路から構成することができる。この場合、2つのダイオードのアノードに電圧差分値ΔEvおよび調整電流差分値ΔEiaをそれぞれ入力し、カソードの接続端から制御用差分値ΔEを出力するようにすればよい。また、操作量生成部80は、例えば比例回路、積分回路および微分回路等、既知の各種演算回路またはこれらを組み合わせて構成することができる。また、駆動パルス生成部90は、例えば三角波発生回路およびコンパレータ等から構成することができる。
【0079】
また、制御装置1は、電源装置100と一体的に設けられるものであってもよいし、電源装置100とは別体的に設けられるものであってもよい。また、制御装置1における各部の配置構成が特に限定されないことはいうまでもない。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置1は、電源装置100の出力電圧値Voを検出する出力電圧検出部10と、出力電圧値Voの目標とする電圧目標値Vrefを設定する電圧目標値設定部(目標値設定部30)と、電圧目標値Vrefから出力電圧値Voを減算して電圧差分値ΔEvを生成する電圧差分値生成部40と、電源装置100の出力電流値Ioを検出する出力電流検出部20と、出力電流値Ioの目標とする電流目標値Irefを設定する電流目標値設定部(目標値設定部30)と、電流目標値Irefから出力電流値Ioを減算して電流差分値ΔEiを生成する電流差分値生成部50と、電圧差分値ΔEvまたは電圧差分値ΔEvに基づく値(調整電圧差分値ΔEva)と、電流差分値ΔEiまたは電流差分値ΔEiに基づく値(調整電流差分値ΔEia)を比較して小さい方を制御用差分値ΔEとして選択する差分値選択部70と、制御用差分値ΔEに基づいて電源装置100を制御する操作量Uを生成する操作量生成部80と、を備えている。
【0081】
また、本実施形態に係る制御方法は、電源装置100の出力電圧値Voを検出する出力電圧検出処理と、出力電圧値Voの目標とする電圧目標値Vrefを設定する電圧目標値設定処理と、電圧目標値Vrefから出力電圧値Voを減算して電圧差分値ΔEvを生成する電圧差分値生成処理と、電源装置100の出力電流値Ioを検出する出力電流検出処理と、出力電流値Ioの目標とする電流目標値Irefを設定する電流目標値設定処理と、電流目標値Irefから出力電流値Ioを減算して電流差分値ΔEiを生成する電流差分値生成処理と、電圧差分値ΔEvまたは電圧差分値ΔEvに基づく値(調整電圧差分値ΔEva)と、電流差分値ΔEiまたは電流差分値ΔEiに基づく値(調整電流差分値ΔEia)を比較して小さい方を制御用差分値ΔEとして選択する差分値選択処理と、制御用差分値ΔEに基づいて電源装置100を制御する操作量Uを生成する操作量生成処理と、を有している。
【0082】
このような構成とすることで、1つの操作量生成部80でCV制御およびCC制御を行うという簡便な構成でありながらも、適切な応答性で安定的にCVCC制御をおこなうことができる。
【0083】
また、制御装置1は、電流差分値ΔEiに所定の演算処理を施して調整電流差分値ΔEiaを生成するフィルタ部60を備え、差分値選択部70は、電圧差分値ΔEvと調整電流差分値ΔEiaを比較する。このようにすることで、1つの操作量生成部80でCV制御およびCC制御を行いながらも、CV制御およびCC制御において適切な応答性を確保しつつ、両制御間の相互干渉を防止して安定的にCVCC制御を行うことができる。また、既存のPID制御器等を活用して低コストで制御装置1を実現することができる。
【0084】
また、制御装置1は、電圧差分値ΔEvに所定の演算処理を施して調整電圧差分値ΔEvaを生成するフィルタ部60を備え、差分値選択部70は、調整電圧差分値ΔEvaと電流差分値ΔEiを比較するものであってもよい。この場合にも、簡便な構成でありながらも、適切な応答性を確保しつつ、安定的にCVCC制御を行うことができる。また、既存のPID制御器等を活用して低コストで制御装置1を実現することができる。
【0085】
また、制御装置1は、電圧差分値ΔEvおよび電流差分値ΔEiに所定の演算処理を施して調整電圧差分値ΔEvaおよび調整電流差分値ΔEiaを生成するフィルタ部60を備え、差分値選択部70は、調整電圧差分値ΔEvaと調整電流差分値ΔEiaを比較するものであってもよい。この場合にも、簡便な構成でありながらも、適切な応答性を確保しつつ、安定的にCVCC制御を行うことができる。
【0086】
また、フィルタ部60は、所定のゲインを乗算するゲイン補償器62、位相を補償する位相補償器64、およびゲインを調整するゲイン調整器66の少なくともいずれか1つを備えている。このようにすることで、CC制御またはCV制御におけるゲインおよび位相を適宜に調整して適切な応答性を確保することができる。また、電圧差分値ΔEvまたは調整電圧差分値ΔEvaと電流差分値ΔEiまたは調整電流差分値ΔEiaの大きさのバランスを適宜に調整することが可能となるため、CVCC制御の安定性を高めることができる。
【0087】
また、ゲイン調整器66は、入力値(二次調整電流差分値ΔEi2)の大きさに応じて異なるゲイン補償を行うように構成されている。このようにすることで、CC制御またはCV制御における応答性および差分値選択部70が比較する差分値のバランスをより適切に調整することができる。
【0088】
また、差分値選択部70は、電圧差分値ΔEvと電流差分値ΔEiを比較するものであってもよい。この場合、制御装置1の構成をさらに簡素化し、よりコストを低減することができる。
【0089】
また、操作量生成部80は、比例動作、積分動作および微分動作のうちの少なくとも1つの特性を有する制御方式によって操作量Uを生成するように構成されることが好ましい。このようにすることで、CVCC制御を簡便且つ安定的に行うことができる。
【0090】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明に係る電源装置の制御装置および制御方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る電源装置の制御装置および電源装置の制御方法は、各種電気・電子機器の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 制御装置
10 出力電圧検出部
20 出力電流検出部
30 目標値設定部
40 電圧差分値生成部
50 電流差分値生成部
60 フィルタ部
62 ゲイン補償器
64 位相補償器
66 ゲイン調整器
70 差分値選択部
80 操作量生成部
100 電源装置
Io 出力電流値
Iref 電流目標値
Vo 出力電圧値
Vref 電圧目標値
U 操作量
ΔE 制御用差分値
ΔEi 電流差分値
ΔEia 調整電流差分値
ΔEv 電圧差分値
ΔEva 調整電圧差分値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7