特許第6575188号(P6575188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575188
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】保護容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 25/04 20060101AFI20190909BHJP
   G11B 33/08 20060101ALI20190909BHJP
   G11B 33/14 20060101ALI20190909BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   G11B25/04 101L
   G11B33/08 Z
   G11B33/14 501W
   H05K5/02 L
   H05K5/02 J
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-138710(P2015-138710)
(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-21875(P2017-21875A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040187
【氏名又は名称】株式会社バッファロー
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(72)【発明者】
【氏名】尾関 強
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−146399(JP,A)
【文献】 特開2005−222585(JP,A)
【文献】 特開2008−027562(JP,A)
【文献】 特開2003−045168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 25/00−25/10
G11B 33/00−33/08
G11B 33/12−33/14
F16F 7/00−7/14
F16F 15/00−15/36
F16J 15/00−15/14
H05K 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内方にディスクドライブが収納される筐体を備える保護容器において、
前記筐体には、その外面から内面に至る切欠部が少なくとも一つ設けられ、
前記筐体の前記外面のうち少なくとも一つの前記切欠部に対応する部分に設けられ、少なくとも各切欠部の周囲を覆う第1の緩衝部材と、
一端が前記第1の緩衝部材に接し、他端が前記筐体の内方に位置して前記ディスクドライブに接触するよう配され、前記ディスクドライブを、前記筐体内面に接することなく支持する第2の緩衝部材と
を備えることを特徴とする保護容器。
【請求項2】
前記第2の緩衝部材は複数設けられ、
前記ディスクドライブが前記筐体内に収納されると、これら前記第2の緩衝部材の前記他端が前記ディスクドライブに接することで、このディスクドライブが支持される
ことを特徴とする請求項1記載の保護容器。
【請求項3】
前記第2の緩衝部材のうち少なくとも一つの前記第2の緩衝部材は他の前記第2の緩衝部材と異なる形状を有することを特徴とする請求項2記載の保護容器。
【請求項4】
前記第2の緩衝部材のうち少なくとも一つの前記第2の緩衝部材は中空に形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の保護容器。
【請求項5】
前記第1の緩衝部材と前記第2の緩衝部材とは一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の保護容器。
【請求項6】
前記第2の緩衝部材と前記切欠部との間には空隙が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の保護容器。
【請求項7】
前記第1の緩衝部材は前記筐体の外面の略全体を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の保護容器。
【請求項8】
前記第1の緩衝部材の外面を覆うコーティング部材を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の保護容器。
【請求項9】
前記筐体、第1の緩衝部材及び第2の緩衝部材は溶融成型可能な材質からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の保護容器。
【請求項10】
前記筐体は、外方に位置する外筐体と内方に位置する内筐体とを備え、前記外筐体と前記内筐体との少なくとも一方は金属から形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の保護容器。
【請求項11】
前記切欠部は、筐体の第1の面の辺縁を超えて、当該第1の面に隣接する第2の面から前記第1の面に至る状態にある、請求項1から10のいずれかに記載の保護容器。
【請求項12】
前記第2の緩衝部材の少なくとも一つは円筒形状を有し、前記切欠部内に位置する部分の外径が、切欠部の内径より小さく形成される請求項1から11のいずれかに記載の保護容器。
【請求項13】
前記筐体は中空箱型に形成され、前記第2の緩衝部材は、その前記他端が前記ディスクドライブの側面に接する位置と、前記他端が前記ディスクドライブの上面に接する位置と、前記他端が前記ディスクドライブの下面に接する位置とにそれぞれ配される、請求項1から12のいずれかに記載の保護容器。
【請求項14】
内方にディスクドライブが収納される筐体を備える保護容器において、
前記筐体には、その外面から内面に至る切欠部が少なくとも一つ設けられ、
前記筐体の前記外面のうち少なくとも一つの前記切欠部に対応する部分に設けられた第1の緩衝部材と、
一端が前記第1の緩衝部材に接し、他端が前記筐体の内方に位置する第2の緩衝部材と
を備え、
前記第2の緩衝部材は複数設けられ、
前記ディスクドライブが前記筐体内に収納されると、これら前記第2の緩衝部材の前記他端が前記ディスクドライブに接することで、このディスクドライブが支持され、
前記第2の緩衝部材のうち少なくとも一つの前記第2の緩衝部材は中空に形成されている保護容器。
【請求項15】
内方にディスクドライブが収納される筐体を備える保護容器において、
前記筐体には、その外面から内面に至る切欠部が少なくとも一つ設けられ、
前記筐体の前記外面のうち少なくとも一つの前記切欠部に対応する部分に設けられた第1の緩衝部材と、
一端が前記第1の緩衝部材に接し、他端が前記筐体の内方に位置する第2の緩衝部材と
を備え、
前記第1の緩衝部材は前記筐体の外面の略全体を覆うように設けられている保護容器。
【請求項16】
ディスクドライブが収納される筐体を備える保護容器の製造方法であって、
前記筐体を形成するとともに、この筐体の外面から内面に至る切欠部を形成する工程と、
前記筐体の外面のうち少なくとも前記切欠部に対応する部分に、少なくとも各切欠部の周囲を覆う第1の緩衝部材を形成するとともに、一端が前記第1の緩衝部材に接し、他端が前記筐体の内方に至って前記ディスクドライブに接触するよう配され、前記ディスクドライブを、前記筐体内面に接することなく支持する第2の緩衝部材を前記第1の緩衝部材と一体に形成する工程と
を備えることを特徴とする保護容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器が収納される筐体を備える電子機器の保護容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の一例であるHDD(Hard Disc Drive)は精密機器であるので、このHDDを収納しうる中空箱状のケース(筐体)内に収められて提供されることが多い。加えて、HDDは外部からの衝撃への耐性が低いため、PC(Personal Computer)等にUSB(Universal Serial Bus)等の汎用インタフェースを用いて接続される、いわゆる外付けのHDD装置の場合、筐体の外部にシリコンゴム等の緩衝部材からなるカバーを被せたり、あるいは、HDDと筐体との間の間隙に緩衝材を配置したりすることで、耐衝撃性を持たせることがある。
【0003】
図9は、従来の耐衝撃性を有するHDD装置を示す図であり、図9(a)は分解図、図9(b)は図9(a)の一部拡大図である。図9において、100は従来のHDD装置であり、このHDD装置100は、略直方体状に形成されたHDD101と、このHDD101を内部に収納する中空箱状のケース102とを備える。図9に示す例では、ケース102は上部ケース102aと下部ケース102bとを備え、これらが嵌め合わされることでケース102内部が密閉状態にされる。
【0004】
図9(b)に詳細を示すように、HDD101のそれぞれの側面に2つ衝撃吸収クッション103bが、上下面にそれぞれ4つ(図9では上面のみ図示している)衝撃吸収クッション103aが貼付されており、これら衝撃吸収クッション103b、103aによりHDD101がケース102内面に接触することなくこのケース102内に支持されている。図9に示す例では、ケース102の内面とHDD101との間隙の大きさに合わせて、衝撃吸収クッション103b、103aの形状、大きさが定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−161942号公報
【特許文献2】特開2014−146399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した衝撃吸収クッション103b、103aは、HDD装置100の製造時に、HDD101の上下面及び側面の所定位置にそれぞれ人手で位置決めされ貼付されていた。このため、HDD装置100の組立工程の工数増を招いていた。また、HDD101の上下面及び側面に貼付する衝撃吸収クッション103b、103aは、ケース102の内面とHDD101との間隙の大きさに合わせてその形状、大きさが定められていたので、ケースを小型化したためにこの間隙が狭い場合に、所望の耐衝撃性を得るための工夫が必要であった。
【0007】
また、同様の課題は、HDDのみならず、DVD(Digital Versatile Drive)ドライブ等の他の本体部にも存在しうるものであった。
【0008】
なお、HDDを収容する容器を二部材で構成した際にこの二部材の間に介在されるガスケットと容器の外部に位置する緩衝体とを一体に設けた構成(特許文献1参照)や、PC等の電子機器内部に搭載される記憶装置に対する衝撃を軽減する緩衝部材を、記憶装置を囲うように設けられた板状の枠体と、この枠体から内方に突出して記憶装置の係合穴に係合可能な弾性体のピンとから構成した例(特許文献2参照)が知られているが、これら公知例であっても、作業性を向上し、かつ、小型でありながら耐衝撃性を確保しうるという課題を解決するには至っていなかった。
【0009】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、作業性を向上し、かつ、小型でありながら耐衝撃性を確保しうる電子機器の保護容器及びその製造方法の提供を、その目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は内方にディスクドライブが収納される筐体を備える保護容器に適用され、そして、筐体に、その外面から内面に至る切欠部を少なくとも一つ設け、筐体の外面のうち少なくとも一つの切欠部に対応する部分に設けられた第1の緩衝部材と、一端が第1の緩衝部材に接し、他端が筐体の内方に位置する第2の緩衝部材とを設けることにより、上述の課題の少なくとも一つを解決している。
【0011】
保護容器1に外部から振動が加えられると、筐体の外面に設けられた第1の緩衝部材が、自身の緩衝性能に基づいて振動を吸収し、次いで、振動によりディスクドライブが筐体内で移動した場合、ディスクドライブが第2の緩衝部材に当接することでこの第2の緩衝部材が弾性変形し、自身の緩衝性能に基づいてディスクドライブの移動を抑制して振動を吸収する。
【0012】
ここで、第2の緩衝部材を複数設け、ディスクドライブを筐体内に収納した際に、これら第2の緩衝部材の他端がディスクドライブに接することで、このディスクドライブを支持することが好ましい。
【0013】
また、第2の緩衝部材のうち少なくとも一つの第2の緩衝部材は、他の第2の緩衝部材と異なる形状を有することが好ましい。さらに、第2の緩衝部材のうち少なくとも一つの第2の緩衝部材を中空に形成することが好ましい。さらに、第1の緩衝部材と第2の緩衝部材とを一体に形成することが好ましい。
【0014】
さらに、第2の緩衝部材と切欠部との間に空隙を設けることが好ましい。また、筐体の外面の略全体を覆うように第1の緩衝部材を設けることが好ましい。
【0015】
さらに、第1の緩衝部材の外面を覆うコーティング部材を設けることが好ましい。さらに、筐体、第1の緩衝部材及び第2の緩衝部材を溶融成型可能な材質から形成することが好ましい。そして、筐体が、外方に位置する外筐体と内方に位置する内筐体とを備え、外筐体と内筐体との少なくとも一方を金属から形成することが好ましい。
【0016】
また、本発明は、ディスクドライブが収納される筐体を備える保護容器の製造方法に適用され、そして、筐体を形成するとともに、この筐体の外面から内面に至る切欠部を形成する工程と、筐体の外面のうち少なくとも切欠部に対応する部分に第1の緩衝部材を形成するとともに、一端が第1の緩衝部材に接し、他端が筐体の内方に至る第2の緩衝部材を第1の緩衝部材と一体に形成する工程とを設けることにより、上述の課題の少なくとも一つを解決している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業性を向上し、かつ、小型でありながら耐衝撃性を確保しうる、ディスクドライブの保護容器及びその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態である電子機器の保護容器を示す斜視図である。
図2】一実施形態の電子機器の保護容器の内部を示す斜視図である。
図3】一実施形態の電子機器の保護容器のうち筐体のみを取り出して示した斜視図である。
図4】一実施形態の電子機器の保護容器のうち緩衝部材のみを取り出して示した斜視図である。
図5図1のV−V矢視断面図である。
図6図1のVI−VI矢視断面図である。
図7図1のVII−VII矢視断面図である。
図8】本発明の電子機器の保護容器における第1の緩衝部材と第2の緩衝部材との関係の例を示す断面図である。
図9】従来の電子機器の一例を示す分解斜視図及び一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(一実施形態)
以下、図1図8を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態である電子機器の保護容器の外観を示す斜視図、図5図1のV−V矢視断面図、図6図1のVI−VI矢視断面図、図7図1のVII−VII矢視断面図である。なお、以下の説明において、上下方向及び左右方向は図1における上下方向及び左右方向を基準に説明する。
【0020】
これら図において、1は電子機器の一例であるHDD4を収納する保護容器であり、この保護容器1は、内部にHDD4が収納される筐体であるケース2と、HDD4へ耐衝撃性を付与する緩衝部材3とを備える。
【0021】
ケース2は、図5及び図6に示すように、全体として直方体状の中空箱体に形成され、この箱体であるケース2は、ケース2を側面において略2等分に分割した、それぞれ略同一形状の上ケース5と下ケース6とにより構成されている。
【0022】
図3は、下ケース6のみを取り出して図示した斜視図である。下ケース6は、略矩形状の底面部6aと、この底面部6aの4つの辺縁6cから上方に立ち上がって形成される略矩形状の4つの側面部6bとを備えている。
【0023】
下ケース6には、その底面部6aに4箇所、それぞれの側面部6bに2箇所、合計12箇所の切欠部7が形成されている。図3に示すように、側面部6bに形成された切欠部7は、底面部6aの辺縁6cを超えてその一部が底面部6aにまで至っている。
【0024】
緩衝部材3は、図5図7に示すように、上ケース5及び下ケース6の外面を覆う第1の緩衝部材8と、一端9aがこの第1の緩衝部材8に接し、他端9bが上ケース5及び下ケース6の内方に至ってHDD4に接する複数の(本実施形態では12個の)第2の緩衝部材9とを備える。
【0025】
第1の緩衝部材8は、図5図7にもっとも詳しく示されるように、上ケース5及び下ケース6の外面を全て覆う形状に形成され、これら上ケース5及び下ケース6の外面に密着して形成されている。この第1の緩衝部材8は、ほぼ均一な所定の厚さに形成されている。
【0026】
第2の緩衝部材9について、図2及び図4を参照してより詳細に説明する。図2は、保護容器1のうち上ケース5及びこの上ケース5の外面に設けられた第1の緩衝部材8及び第2の緩衝部材9を取り除いた状態を図示した斜視図、図4は第1及び第2の緩衝部材8、9のみを取り出して図示した斜視図である。これら図に示すように、下ケース6に対応する第1の緩衝部材8に連なって設けられた第2の緩衝部材9は、下ケース6に設けられた切欠部7を貫通して設けられ、その一端9aは、切欠部7に相対する部分の第1の緩衝部材8に接し、その他端9bは下ケース6の内方に至るまで延出されている。
【0027】
図2及び図4に詳細を示すように、第2の緩衝部材9のうち、下ケース6の側面部6bに形成された切欠部7に対応する第2の緩衝部材9は長円筒形に形成され、一方、下ケース6の底面部6aに形成された切欠部7に対応する第2の緩衝部材9は円筒形に形成されている。図2及び図3に示すように、切欠部7も第2の緩衝部材9に応じた形状に形成されている。
【0028】
そして、第2の緩衝部材9の他端9bには凹部9cが形成されている。より詳細には、円筒形または長円筒形に形成された第2の緩衝部材9の中空部分が凹部9cとされている。このように、第2の緩衝部材9の他端9bに凹部9c、本実施形態では中空部分たる凹部9cを形成することで、この第2の緩衝部材9の他端9bがHDD4に接し、その後、HDD4がケース2内で振動、移動することにより第2の緩衝部材9が弾性変形した際に、凹部9cがあることにより第2の緩衝部材9の他端9bが変形しやすくなり、結果的に第2の緩衝部材9の弾性変形の変形量(変形しろ)を確保できて、第2の緩衝部材9による緩衝効果をより確保することができる。
【0029】
なお、図5及び図6に示すように、下ケース6と同様に上ケース5にも切欠部(図示略)が形成され、第2の緩衝部材9も、上ケース5に設けられた切欠部を貫通して設けられ、その一端9aは、切欠部に相対する部分の第1の緩衝部材8に接し、その他端9bは上ケース5の内方に至るまで延出されている。これら図に示すように、下ケース6の底面部6aから突出する第2の緩衝部材9と上ケース5から突出する第2の緩衝部材9とは、HDD4を挾んで上下対称の位置に設けられている。
【0030】
図5及び図6にもっとも詳しく示されるように、保護容器1に収納されるHDD4は、第2の緩衝部材9の他端9bがHDD4に接するように収納され、これにより、HDD4は第2の緩衝部材9によりケース2の内面に接することなく支持されている。このため、第2の緩衝部材9は、HDD4の形状及び重量、好ましくはHDD4の重量配分に基づいて、その個数、位置、長さ、形状等が定められている。そして、下ケース6に形成されている切欠部7も、上述の観点から位置等が定められた第2の緩衝部材9が貫通するように、その個数、位置、形状等が定められている。
【0031】
好ましくは、図2及び図5図6に示すように、第2の緩衝部材9と切欠部7との間には間隙が形成される。つまり、第2の緩衝部材9の切欠部7内に位置する部分の外径は切欠部7の内径よりも小さく設定されている。これにより、HDD4が振動等することで第2の緩衝部材9が弾性変形して切欠部7内に位置する部分の外径がやや大きくなっても、この間隙により第2の緩衝部材9の弾性変形の変形量(変形しろ)を十分確保することができる。
【0032】
第1及び第2の緩衝部材8、9は、溶融成型可能な材質からなり、一例として、熱可塑性樹脂からなる。第1及び第2の緩衝部材8、9を形成する熱可塑性樹脂の一例としては、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。好ましくは、第1及び第2の緩衝部材8、9を形成する熱可塑性樹脂は、弾性変形に基づく緩衝性能の高さから、熱可塑性エラストマーであることが好ましい。好ましくは、第1及び第2の緩衝部材8、9は同一の材質から形成される。
【0033】
さらに、熱可塑性ポリウレタン(TPU:Thermoplastic Polyurethane)のような熱可塑性エラストマー、特にメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体からなるアクリル系エラストマー(商品名クラリティ(株式会社クラレ製、登録商標))のように、共重合体の配合比を変更することで硬度及び弾性率を調整できる材質であれば、第1及び第2の緩衝部材8、9のみならず上ケース5及び下ケース6も同一の素材により形成することができる。特に、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体からなるアクリル系エラストマーは透明度が高い材質であるので、保護容器1全体の透明度を高めることができ、いわゆるスケルトン構造にすることが可能である。
【0034】
上ケース5及び下ケース6は、一例として熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂からなる。上ケース5及び下ケース6を形成する樹脂の一例としては、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。上ケース5及び下ケース6を熱可塑性樹脂で形成する場合、先に上ケース5及び下ケース6を形成した後に第1及び第2の緩衝部材8、9を形成する工程を取るならば、上ケース5及び下ケース6を形成する熱可塑性樹脂の融点またはガラス転移温度が、第1及び第2の緩衝部材8、9を形成する熱可塑性樹脂の融点またはガラス転移温度よりも高いことが好ましい。
【0035】
このような電子機器の保護容器1は、周知の製法により製造することが可能である。一例として、上ケース5及び下ケース6を射出成型等により形成した後、上ケース5及び下ケース6の外面に第1の緩衝部材8を射出成型等により形成し、さらに、第1の緩衝部材8に一端9aが接し、さらに他端が上ケース5及び下ケース6の内方に至るように第2の緩衝部材9を射出成型等により形成する。そして、下ケース6内にHDD4を収納した後、下ケース6の開口部を上ケース5により閉じることで保護容器1を形成する。
【0036】
好ましくは、上ケース5及び下ケース6に設けられた第1及び第2の緩衝部材8、9は、それぞれ一体成型して形成されることが好ましい。さらに好ましくは、第1及び第2の緩衝部材8、9は、同一の材質により一体成型されることが好ましい。一体成型により第1、第2の緩衝部材8、9を形成することにより、保護容器1製造の工程の簡略化を図ることができる。
【0037】
第1及び第2の緩衝部材8、9を同一の材質により一体成型する場合、上ケース5及び下ケース6を射出成型等により形成した後、第1及び第2の緩衝部材8、9を形成する材質を、上ケース5及び下ケース6の外面に沿って射出成型等で流し込み、そして切欠部7を通ってこの材質を上ケース5及び下ケース6の内方にまで流し込むことで第1及び第2の緩衝部材8、9を形成すればよい。さらに、上ケース5及び下ケース6と第1及び第2の緩衝部材8、9とを同時に射出成型してもよい。
【0038】
このような構成の保護容器1において、外部から振動が加えられると、ケース2の外面に設けられた第1の緩衝部材8が、自身の緩衝性能に基づいて主に高周波成分を吸収し、次いで、振動によりHDD4がケース2内で移動した場合、第2の緩衝部材9によりHDD4が支持されているので、この第2の緩衝部材9が弾性変形することで、自身の緩衝性能に基づいてHDD4の移動を抑制して振動を吸収する。これにより、HDD4に対する耐衝撃性を十分確保することができる。
【0039】
加えて、本実施形態の保護容器1では、第2の緩衝部材9を、下ケース6に設けられた切欠部7を貫通して設け、その一端9aが切欠部7に相対する部分の第1の緩衝部材8に接し、その他端9bが下ケース6の内方に至るまで延出されているので、上述した従来の衝撃吸収クッション103a、103bのようにHDD4の上面及び側面に緩衝部材を貼付する構成に比較して、第2の緩衝部材9が弾性変形するストローク(変形量)を大きく確保することができる。加えて、第2の緩衝部材9は射出成型等により形成することが可能であるので、従来の衝撃吸収クッション103a、103bのように手作業で配置する必要がない。従って、本実施形態によれば、作業性を向上し、かつ、小型でありながら耐衝撃性を確保しうる電子機器の保護容器及びその製造方法を実現することができる。
【0040】
また、HDD4が動作する際にその内部に設けられたモータ等の可動部が駆動されることによる微振動についても、上述のように主に第2の緩衝部材9が弾性変形することにより有効に減衰させることができ、これにより、動作時の静粛性を十分に確保することができる。
【0041】
(変形例)
なお、本発明の電子機器の保護容器は、その細部が上述の一実施形態に限定されず、種々の変形例が可能である。
【0042】
一例として、上述の一実施形態では、図8(a)に示すように、第1の緩衝部材8が上ケース5及び下ケース6の外面をほぼ均一な厚さで覆い、第2の緩衝部材9は、その一端9aが切欠部7に相対する部分の第1の緩衝部材8に接し、その他端9bは上ケース5及び下ケース6の内方に至るまで延出され、好ましくは、これら第1及び第2の緩衝部材8、9が一体成型されていたが、第1及び第2の緩衝部材8、9の形状は一実施形態のそれに限定されず、種々の変形例が可能である。
【0043】
例えば、図8(b)に示すように、第1の緩衝部材8の一部8aが下ケース6の切欠部7を通ってその先端8bが下ケース6の内面6dにまで至り、第2の緩衝部材9はこの第1の緩衝部材8の先端8bの図中上部に形成されてもよい。また、図8(c)に示すように、第1の緩衝部材8の先端8bが切欠部7内部にまで延出し、第2の緩衝部材9はこの第1の緩衝部材8の先端8bの図中上部に形成されてもよい。さらに、図8(d)に示すように、第1の緩衝部材8と第2の緩衝部材9とを別体に形成してもよい。
【0044】
加えて、第1の緩衝部材8は上ケース5及び下ケース6の外面の全てを覆う必要はなく、必要とされる耐衝撃性に応じてその大きさ、厚さ等が設定されればよく、少なくとも切欠部7の周囲を覆う程度の大きさがあればよい。
【0045】
また、上述の一実施形態では、ケース2に複数の切欠部7を設け、この切欠部7の全てに第2の緩衝部材9を設けていたが、全ての切欠部7に第2の緩衝部材9を設ける必要はない。一例として、ケース2に収納すべきHDD4に複数のサイズが存在した場合、各々のサイズに応じた位置に複数の切欠部7を形成し、収納すべきHDD4のサイズに応じて、このHDD4を支持しうる位置に第2の緩衝部材9を形成してもよい。これにより、ケース2を共通にしながら複数のサイズのHDD4に対応可能にすることができる。
【0046】
また、上述の一実施形態では、第2の緩衝部材9の他端9bがHDD4に接するように第2の緩衝部材9が形成されていたが、第2の緩衝部材9の他端9bの全てがHDD4に常時接している必要はなく、複数の第2の緩衝部材9の他端9bのうち少なくとも3つの他端9bがHDD4に接することでこのHDD4が支持されていればよい。加えて、複数の第2の緩衝部材9のうち一部の他端9bは常時HDD4に接しており、第2の緩衝部材9自体の長さを調整することで残りの他端9bは通常接していないように形成してもよい。この場合、通常他端9bがHDD4に接していない第2の緩衝部材9は、保護容器1に大きな外力が作用した際にHDD4に接し、これにより、HDD4がケース2の内面に当接することを防いで保護容器1の緩衝効果をより高めることができる。この際、通常他端9bがHDD4に接していない第2の緩衝部材9の径を、常時他端9bがHDD4に接している第2の緩衝部材9の径より太く設定する等、大きな外力に対する緩衝性能を高めることも可能である。
【0047】
また、上述の一実施形態では、上ケース5及び下ケース6はそれぞれ単一の材質により形成されていたが、上ケース5及び下ケース6の材質及び構造は上述の一実施形態に限定されず、種々の変形例が可能である。一例として、樹脂等からなるケースの外面または内面を金属製の別のケースで覆うことで上ケース5及び下ケース6を形成してもよい。ケースの外面を金属製のケースで覆うことにより、ケース2に収納されるHDD4等からの発熱をより速やかに保護容器1の外方に放散できるとともに、HDD4等が発するノイズを遮断することができる、という利点がある。一方、ケースの内面を金属製のケースで覆えば、ケースに収納される電子機器が部分的に発熱した場合でも、この電子機器からの熱を速やかに分散することができ、電子機器が部分的に過熱することを防ぐことができる。
【0048】
さらに、上述の一実施形態では、ケース2を略同一形状の上ケース5及び下ケース6に2等分していたが、これら上ケース5及び下ケース6は同一形状である必要はない。
【0049】
さらに、上述の一実施形態において、第1の緩衝部材8の外面、つまり表面をコーティング部材で覆ってもよい。このコーティング部材により第1の緩衝部材8の緩衝性能を維持することができるとともに、コーティング部材の外面、つまり表面に滑り止め加工を施す、あるいはコーティング部材自身が滑り止め性能を発揮する材質からなる場合は、保護容器1全体の滑り止め効果をもたらすことができる。
【0050】
さらに、上述の一実施形態においては、第2の緩衝部材9は、下ケース6の底面部6a及び側面部6bに形成されたものはそれぞれ同一形状の円筒形または長円筒形に形成されていたが、少なくとも一つの第2の緩衝部材9を他の第2の緩衝部材9とは異なる形状に形成することも可能である。このような構成により、第2の緩衝部材9の共振周波数を複数に設定し、HDD4の耐衝撃性をより確保することができる。
【0051】
さらに、本発明の電子機器の保護容器は、上述の一実施形態のようにHDD4を収納する保護容器に限らず、DVDドライブ等、耐衝撃性を確保すべき電子機器に好適に適用可能である。すなわち、上述の一実施形態では、図5及び図6に示すように、保護容器1のケース2には外形が略直方体状に形成されたHDD4が収納されていたが、HDD4の形状等にも限定はなく、さらに、収納されるべき電子機器にも限定はない。一例として、HDD4を金属のハウジングで覆ったものや、HDD4に制御基板が固定されたもの等、電子機器の形状や種類に特段の限定はない。
【符号の説明】
【0052】
1 保護容器
2 ケース
3 緩衝部材
4 HDD
5 上ケース
6 下ケース
7 切欠部
8 第1の緩衝部材
9 第2の緩衝部材
9a 一端
9b 他端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9