(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基材フィルムにハードコート層、指滑り層がこの順で積層されており、前記指滑り層は、請求項1に記載の指滑り層形成用樹脂組成物を硬化させてなり、前記指滑り層の膜厚tと前記透光性有機微粒子の平均粒子径Pdiaの比t/Pdiaが0.1≦t/Pdia≦0.9であることを特徴とする指滑りフィルム。
表面形状において、JIS B0601−1994に定義される算術平均粗さRa及び凹凸の平均間隔Smが下式(I)及び(II)を満足することを特徴とする請求項2に記載の指滑りフィルム。
0.06≦Ra≦0.13・・・式(I)
0.02≦Sm≦0.05・・・式(II)
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪指滑り層形成用樹脂組成物≫
指滑り層形成用樹脂組成物は、タッチパネル等の画像表示装置の表面に設けられる指滑りフィルムの表面に形成される指滑り層を形成するための樹脂組成物であり、(a)シリカ微粒子、(b)透光性有機微粒子、(c)紫外線硬化型樹脂、(d)フッ素含有紫外線硬化型樹脂、(e)アクリル基を有するポリジメチルシロキサン及び(f)光重合開始剤を含む。
【0014】
<(a)シリカ微粒子>
(a)シリカ微粒子は、平均粒子径が0.01μm以上0.10μm以下である。シリカ微粒子は、典型的には球形である。シリカ微粒子の平均粒子径が0.01μm未満の場合、粒子が凝集しやすく、均一な指滑り性を発現しにくいことがある。一方、平均粒子径が0.10μmを越えると可視光が散乱しやすいため、ヘイズが上昇することがある。
【0015】
シリカ微粒子の粒子径は、粒子の平均粒径を測定する方法であれば、任意の測定方法が適用できるが、好ましくは、透過型電子顕微鏡(倍率2万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって(平均)粒子径とする。
【0016】
指滑り層形成用樹脂組成物において、(a)〜(f)の合計100質量%中(a)シリカ微粒子の割合は、8.0〜74.0質量%である。平均粒子径が0.01μm以上0.10μm以下であるシリカ微粒子の質量の割合が8.0質量%未満であると、表面の凹凸間隔(≒Sm)が大きくなり、指の滑り易さが悪化する(摩擦係数が高くなる)。一方、平均粒子径が0.01μm以上0.10μm以下であるシリカ微粒子の質量の割合が74.0質量%を越えると、相対的にバインダーとしての(c)紫外線硬化型樹脂の含有量が少なくなり、指滑りフィルムの表面硬度が低下する傾向がある。
【0017】
<(b)透光性有機微粒子>
(b)透光性有機微粒子は、平均粒子径が0.5μm以上1.3μm以下である。透光性有機微粒子は、球形であり、平均粒子径が0.01μm以上0.10μm以下である(a)シリカ微粒子に比べて粒子径が大きい。平均粒子径が0.5μm以上1.3μm以下である透光性有機微粒子により指滑りフィルムの表面に凹凸形状が形成される。平均粒子径Pdiaが0.5μm未満の場合、表面凹凸(≒Ra)が小さくなりすぎるため、指滑り性が悪化する。一方、平均粒子径Pdiaが1.3μmを超えると、表面の凹凸間隔(≒Sm)が大きくなるため、指との接触面積が大きくなるので指滑り性が低下する。0.5μm≦Pdia≦1.3μmに制御すると、表面凹凸(≒Ra)の大きさと表面の凹凸間隔(≒Sm)を適度に調整することができる。
【0018】
透光性有機微粒子の平均粒子径Pdiaは、粒子の平均粒径を測定する方法であれば、任意の測定方法が適用できるが、好ましくは、透過型電子顕微鏡(倍率2万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって(平均)粒子径とする。
【0019】
透光性有機微粒子は、シリカ微粒子よりも比重が小さいものであると、指滑り層の上層部へ透光性有機微粒子が偏析して凹凸を形成しやすく、目安として、比重Pdenが、Pden≦1.6であるものを選択することができる。そのような材料として、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリメタクリルスチレン、架橋アクリル−スチレン共重合樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等が挙げられる。なかでも、アクリル、ポリスチレン、架橋アクリルースチレン共重合樹脂は、比重が軽く指滑り性を発現しやすいため好ましい。透光性有機微粒子は、一種のみを用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、より小径な微粒子(シリカ微粒子)の比重に対して透光性有機微粒子の比重が小さく、シリカ微粒子の比重が透光性有機微粒子の比重に比べて3倍を超えると、指滑りフィルムにおいて、互いにトレードオフ関係にある防眩性とクリア感のバランスが崩れて防眩性が発現してクリア感が損なわれる傾向があり好ましくない。指滑りフィルムに防眩性が発現すると、指滑りフィルムを画像表示装置の表面に設けた際に、ぎらつきが生じやすいため好ましくない。
【0020】
指滑り層形成用樹脂組成物において、(a)〜(f)の合計100質量%中(b)透光性有機微粒子の割合は、1.0〜9.0質量%である。透光性有機微粒子の質量の割合が1.0質量%未満であると、凹凸の間隔(≒Sm)が大きくなり、指滑り性が悪くなる。一方、透光性有機微粒子の質量の割合が9.0質量%を超えると、表面の凹凸(≒Ra)が大きくなりすぎるためクリア感が損なわれる。
【0021】
<(c)紫外線硬化型樹脂>
(c)紫外線硬化型樹脂としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のラジカル重合性官能基や、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを単独で、または適宜混合した組成物が用いられる。モノマーの例としては、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を挙げることができる。オリゴマー、プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、多官能ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アルキットアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート等のアクリレート化合物、不飽和ポリエステル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を挙げることができる。これらは単独、もしくは複数混合して使用することができる。
【0022】
指滑り層形成用樹脂組成物において、(a)〜(f)の合計100質量%中(c)紫外線硬化型樹脂の質量の割合は、8.0〜74.0質量%である。74.0質量%を超えると、平均粒子径が0.5μm以上1.3μm以下である(b)透光性有機微粒子及び平均粒子径が0.01μm以上0.10μm以下である(a)シリカ微粒子の含有量が少なくなるため、凹凸の間隔(≒Sm)が大きくなり、指滑り性が悪くなる。また、(c)紫外線硬化型樹脂の割合が8.0質量%未満であると、膜中に空隙が発生し、強度が低下する。
【0023】
<(d)フッ素含有紫外線硬化型樹脂>
(d)フッ素含有紫外線硬化型樹脂は、防汚性機能を発現するためのものであり、指滑り層表面を触った際に付着する指紋の付着性を弱めることができる。(d)フッ素含有紫外線硬化型樹脂の例としては、具体的には、下記化学式(1)で示されるものや下記化学式(2)に示されるものが挙げられる。
【0024】
【化1】
( 式中、n は0 〜 1 0 0 の整数である。また、X はHまたはCH
3である。)
【0025】
【化2】
( 式中、X はパーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテルを表す。)
【0026】
指滑り層形成用樹脂組成物において、(a)〜(f)の合計100質量%中(d)フッ素含有紫外線硬化型樹脂の割合は、1.5〜15.0質量%である。含有量が1.5質量%未満では、指滑り層表面を触った際の指紋の付着性を効果的に弱めることが出来ない。一方、15.0質量%を超えると、指紋の拭取り性が悪化する。
【0027】
<(e)アクリル基を有するポリジメチルシロキサン>
(e)アクリル基を有するポリジメチルシロキサンは、指滑り層表面に付着した指紋の拭取り性を向上するためのものである。
【0028】
(e)アクリル基を有するポリジメチルシロキサンの基本骨格(ポリジオルガノシロキサン)は、下記に示す一般式(3)で表され、重合性反応基を1分子中に少なくとも2つ、好ましくは2〜8つ有する化合物である。
【化3】
【0029】
一般式(3)中のA及びBは、直鎖状又は分岐状の有機基であり、アルキル鎖(炭素数1〜30)、パーフルオロアルキル鎖(炭素数1〜10)、アリールアルキル鎖、脂肪族乃至芳香族(ポリ)エステル鎖(該有機鎖の部分的な分子量100〜3000)、脂肪族乃至芳香族(ポリ)エーテル鎖(該有機鎖の部分的な分子量100〜3000)及び脂肪族乃至芳香族(ポリ)ウレタン鎖(該有機鎖の部分的な分子量100〜3000)からなる群より選ばれる少なくとも1種の骨格を有しており、該有機基中には重合性反応基が導入されており、分子内においてAとBは同一でも異なっていてもよく、A同士又はB同士においても同一でも異なっていてもよい。但し、A及びBに導入されている重合性反応基の数は、1分子当り2つ、好ましくは2〜8つ有する化合物である。さらに、重合性反応基は、合成の簡便さからBに導入されている方がより好ましい。一般式(3)中のcは、ポリシロキサン骨格の長さをc+1の形で表すものであり、好ましくは3〜250、より好ましくは6〜100の整数である。
【0030】
重合性反応基としては、少なくともアクリル基が導入される。導入されるアクリル基としては、反応性に優れる点でアクリロイルオキシ基が好ましい。また、アクリロイルオキシ基と共に、(メタ)アクリロイルオキシ基やα−フルオロアクリロイルオキシ基等を導入することもできる。重合性反応基とポリシロキサン骨格との間の結合方式としては、従来公知の結合方式、例えば(ポリ)エーテル型、(ポリ)エステル型、(ポリ)エステル型と(ポリ)ウレタン型とを組み合わせた結合方式、(ポリ)エーテル型と(ポリ)ウレタン型とを組み合わせた結合方式、(ポリ)エステル型と(ポリ)エーテル型とを組み合わせた結合方式等の全てを採用することができる。
【0031】
例えば、ポリエステル型とポリウレタン型とを組み合わせた結合方式の場合、ポリジオルガノシロキサン分子の構造は、下記の一般式(4)に示されているような基本骨格を有し、ポリシロキサン部位から延びる側鎖のうち、3つ以上の側鎖の末端には、重合性反応基が結合している。
【0033】
一般式(4)中のXは3〜250の整数、好ましくは6〜100の整数であり、Y及びZはY+Zが3以上、好ましくは4〜20であることを満たすような整数であり、m及びnはいずれも1〜10の整数である。mとnは同じでも異なっていてもよいが、同じである方がアクリル基を有するポリジメチルシロキサンを簡便に調製できる点で好ましい。
【0034】
一般式(4)中のR1は、直鎖状アルキル基(炭素数1〜30)、パーフルオロアルキル基(炭素数1〜10)、アリールアルキル基、ポリエステル基(該側鎖の部分的な分子量200〜2000であり、Si原子にはアルキル鎖を介して結合している)、ポリエーテル基(該側鎖の部分的な分子量200〜2000であり、Si原子にアルキル鎖を介して結合している)のいずれかである。分子内においてR1は同一でも異なっていてもよいが、アクリル基を有するポリジメチルシロキサンの調製が簡便であることから同一である方がより好ましい。また、使用時における樹脂との相溶性等の観点から、R1はメチル基である場合が最も汎用的で好ましい。
【0035】
一般式(4)中のR2は炭素数3〜30、好ましくは3〜15の直鎖又は分岐鎖であり、該鎖上にはウレタン結合を少なくとも2つ有し、該ウレタン結合を介してポリシロキサン骨格及びR3と結合されている(但し、R3はポリジオルガノシロキサン1分子中に3つ以上含まれるように結合している)。分子内においてR2は同一でも異なっていてもよいが、アクリル基を有するポリジメチルシロキサンの調製が簡便であることから同一である方がより好ましい。
【0036】
一般式(4)中のR3は、ポリエステル骨格、好ましくは3つ以上のエステル結合を含むポリエステル骨格を有する部位であり、末端には前述のような重合性反応基、好ましくは(メタ)アクリロイル基が結合されている。分子内においてR3は同一でも異なっていてもよいがアクリル基を有するポリジメチルシロキサンの調製が簡便であることから同一である方がより好ましい。また、使用時における樹脂との相溶性等の観点から、R3は3以上のカプロラクトンからなるポリカプロラクトン骨格を有する場合が最も汎用的で好ましい。
【0037】
一般式(4)中のR4は、水素、フッ素及びメチル基のいずれかであり、分子内においてR4は同一でも異なっていてもよいが、アクリル基を有するポリジメチルシロキサンの調製が簡便であることから同一である方がより好ましい。
【0038】
次に、上記のようなポリエステル型とポリウレタン型とを組み合わせた結合方式を用いた場合のより具体的な例を、その製造方法の一例と共にいくつか記載する。但し、下記の製造方法についての例は、アクリル基を有するポリジメチルシロキサンが下記の例に限定されることを意味するものではない。
【0039】
例えば、従来公知の方法により得られる平均式(5)で表されるポリジメチルシロキサン、一般式(6)で表されるトリイソシアネート、及びエチレングリコールモノメタクリレートを用いたε−カプロラクトンの開環重合により調製される、一般式(7)で表される重合性反応基含有ポリエステルを1:2:4のモル比で用い、従来公知のウレタン結合形成反応により、平均式(8)で表されるポリジメチルシロキサン化合物が得られる。このとき、トリイソシアネート(6)中へポリジメチルシロキサン(5)を加えていきポリジメチルシロキサン(5)の両末端にウレタン結合を形成させた後に、重合性反応基含有ポリエステル(7)とのウレタン結合形成を行なうことで、副生成物〔例えばポリジメチルシロキサン(5)とトリイソシアネート(6)のみからなる副生成物や、重合性反応基含有ポリエステル(7)とトリイソシアネート(6)のみからなる副生成物等〕の生成を抑え、高収率で目的とするポリジメチルシロキサン(8)を得ることができる。
【0040】
ここで、平均式(5)・(8)中のdは15〜20の整数、eは1〜5の整数、一般式(6)中のfは4〜8の整数、一般式(7)及び平均式(8)中のgは3〜5の整数である。また、平均式(5)・(8)において、Meはメチル基を表す。
【0045】
この他にも、例えば従来公知の方法により得られた平均式(9)で表されるポリジメチルシロキサン、一般式(10)で表されるジイソシアネート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートを用いたε−カプロラクトンの開環重合により調製される、一般式(11)で表される重合性反応基含有ポリエステルを1:2:2のモル比で用いて、従来公知のウレタン結合形成反応により、平均式(12)で表されるポリジメチルシロキサン化合物が得られる。このとき、ジイソシアネート(10)中へポリジメチルシロキサン(9)を加えていきポリジメチルシロキサン(9)の両末端にウレタン結合を形成させた後に、重合性反応基含有ポリエステル(11)とのウレタン結合形成を行なうことで、副生成物〔例えばポリジメチルシロキサン(9)とジイソシアネート(10)のみからなる副生成物や、重合性反応基含有ポリエステル(11)とジイソシアネート(10)のみからなる副生成物等〕の生成を抑え、高収率で目的とするポリジメチルシロキサン(12)を得ることができる。
【0046】
ここで、平均式(9)中のhは25〜35の整数、iは1〜5の整数、一般式(10)中のjは5〜10の整数、及び一般式(11)中のkは3〜5の整数である。なお、平均式(12)において、hは29、iは5、jは6、及びkは5である。
【0051】
さらに、例えば上記の2例を組み合わせて平均式(9)で表されるポリジメチルシロキサン、トリイソシアネート(6)、及び重合性反応基含有ポリエステル(11)を1:2:4のモル比で反応させ、(12)のアクリロイロキシ基を有するポリジメチルシロキサンを得ることもできる。
【0052】
なお、この他にも、重合性反応基を有するポリエステル部分とポリウレタン部分を結合させた後にシロキサン骨格へ導入する方法や、重合性反応基の導入を最後に行なう方法等によりポリジメチルシロキサンを合成することも可能である。通常、一般式(3)で表される化合物は、単独乃至2種以上組み合わせで使用することができる。
【0053】
また、重合性反応基を1分子中に1つ有するオルガノポリシロキサン、例えば、片末端(メタ)アクリロイロキシ変性ポリジメチルシロキサン、前記の特定構造を有するポリジオルガノシロキサン(アクリル基を有するポリジメチルシロキサン)とを組み合わせて使用することもできる。
【0054】
指滑り層形成用樹脂組成物において、(a)〜(f)の合計100質量%中(e)アクリル基を有するポリジメチルシロキサンは、0.8〜11.0質量%含まれる。含有量が0.8質量%未満では、指滑り層表面に付着した指紋の拭取り性が向上しない。一方、11.0質量%を越えると、指滑り層表面を触った際の指紋の付着性を弱めることが出来ない。
【0055】
<(f)光重合開始剤>
(f)光重合開始剤は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線により指滑り層形成用樹脂組成物を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。(f)光重合開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。
【0056】
指滑り層形成用樹脂組成物において、(a)〜(f)の合計100質量%中(f)光重合開始剤の割合は、0.1〜12.0質量%である。光重合開始剤が前記範囲より少ないと、重合が不充分となり、密着性を発揮できなくなる。一方、前記範囲より多いと、膜の架橋密度が低くなるため、強度が弱くなる。
【0057】
指滑り層形成用樹脂組成物は、必要に応じて、表面調製剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤等の従来公知の添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していても良い。
【0058】
≪指滑りフィルム≫
指滑りフィルムは、透明基材フィルムをベースとし、その少なくとも一方の面にハードコート層及び指滑り層がこの順で積層されている。
【0059】
<透明基材フィルム>
透明基材フィルムは、無色透明であれば特に制限されない。そのような透明基材フィルムを形成する材料としては、例えばトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート樹脂、又はポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォンなどがある。これらのうち、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレートが、汎用性が高い点で好ましい。これらの透明基材フィルムの589nmの光に対する屈折率は、概ね1.47〜1.70である。
【0060】
透明基材フィルムの厚みは、好ましくは25〜400μm程度、より好ましくは50〜200μm程度である。透明基材フィルムの厚みが25μmより薄い場合や400μmより厚い場合には、指滑りフィルムの製造時及び使用時における取り扱い性が低下する。
【0061】
<ハードコート層>
透明基材フィルムと指滑り層の間には、指すべりフィルムの表面硬度を高めるために、ハードコート層が設けられる。
【0062】
ハードコート層の膜厚は、1μm以上が好ましい。膜厚が1μm未満の場合は、表面硬度を効果的に高めることができないため好ましくない。また、ハードコート層の膜厚は、3μm以上が好ましい。20μmを超える場合は、耐屈曲性の低下等の問題が生じるから好ましくない。
【0063】
ハードコート層の材料としては、従来よりディスプレイの表面に設けられるフィルムに用いられている公知のものであれば、特に制限されない。例えば、テトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物や、活性エネルギー線硬化型樹脂を用いることができ、これらを混合してもよい。そして、これらに光重合開始剤を加えて調製したハードコート層用塗液に紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射して硬化させてハードコート層を形成することができる。
【0064】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとして具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール基含有(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。多官能(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン変性アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。
【0065】
これらのうち生産性及び硬度を両立させる観点より、鉛筆硬度(評価法:JIS−K5600−5−4)がH以上となる活性エネルギー線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物であることが好ましい。そのような活性エネルギー線硬化型樹脂を含む組成物としては特に限定されるものではないが、例えば、公知の活性エネルギー線硬化型樹脂、又は公知の活性エネルギー線硬化型樹脂を2種類以上混合して調製したもの、紫外線硬化性ハードコート材として市販されているものを用いることができる。
【0066】
光重合開始剤は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線によりハードコート層用塗液を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。光重合開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。
【0067】
塗液の溶媒は、この種の反射防止フィルム等において各層形成用の塗液に従来から使用されている公知のものであれば特に制限は無く、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系の溶媒が適時選択できる。
【0068】
更に、ハードコート層は、その他添加剤を含有していても良い。その他の添加剤としては、屈折率調整用の無機粒子、帯電防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、表面調整剤等が挙げられる。帯電防止剤としては、ATO微粒子、ITO微粒子などのような導電性金属酸化物微粒子や、PEDOTのような導電性ポリマーや、4級アンモニウム塩などの界面活性剤を使用することができる。表面調整剤としては、ポリジメチルシロキサンなどのシリコン系レベリング剤や、アクリル系レベリング剤を使用することができる。
【0069】
≪指滑り層≫
指滑り層は、指滑り層形成用樹脂組成物を紫外線によって硬化させて形成されたものである。指すべり層は、表面に微細な凹凸を有し、その凹凸により指の接触面積を低下させて摩擦力を低減するとともに、指滑り性を高める。また、指滑り層は、表面自由エネルギーが低く設計されているため、付着した指紋が拭取りやすいという機能も有している。
【0070】
指滑り層の膜厚tは、平均粒子径が0.5μm以上1.3μm以下である(b)透光性有機微粒子の平均粒子径Pdiaとの比t/Pdiaが、0.1≦t/Pdia≦0.9を満たすように形成される。ここで、指滑り層の膜厚tとは、指滑り層において、粒子よる突出(凸)のない部分の厚さのことである。指滑り層の膜厚tは、膜厚を測定する方法であれば、任意の測定方法が適用できるが、好ましくは、分光膜厚計によって粒子よる突出(凸)のない部分の反射スペクトルを測定し、得られた反射スペクトルからピークバレイ法によって算出される。t/Pdia>0.9であると、膜厚tに対して(b)透光性有機微粒子の平均粒子径Pdiaが小さく表面凹凸(≒Ra)の大きさが小さくなるので、指のすべり性が低下する。0.1≦t/Pdia≦0.9であると、指滑り性が良好となる。0.1μm>tであると、指滑り層の強度が低下する傾向がある。t>1.3μmであると、表面凹凸の間隔(≒Sm)が大きくなる傾向があり、指滑り性が悪化する傾向がある。
【0071】
指滑り層は、表面形状において、JIS B 0601−1994に定義される算術平均粗さRa(平均線から絶対値偏差の平均値)及び凹凸の平均間隔Sm(粗さ曲線が平均線と交差する交点から求めた山谷-周期の間隔の平均値)が下式(I)及び(II)を満足することで、良好な指滑り性とクリア感とを両立しやすい。
0.06≦Ra≦0.13・・・式(I)
0.02≦Sm≦0.05・・・式(II)
Ra<0.06の場合、指の接触面積が高くなるため、指滑り性が悪くなる。Ra>0.13の場合、クリア感が無くなる傾向が見られる。Sm<0.02の場合、ヘイズが高くなるため、クリア感がなくなる傾向が見られる。Sm>0.05の場合、指の接触面積が高くなるため、指滑り性が悪くなる。
【0072】
指滑り層は、必要に応じて、表面調製剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤等の従来公知の添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していても良い。
【0073】
≪各層の形成≫
指滑り層及びハードコート層の形成方法は特に制限されず、例えば、ウェットコーティング法の塗布方法により、各層形成用樹脂組成物を適宜溶剤で希釈して調整した各塗液を透明基材フィルムに、塗布し、硬化させる方法を採用することができる。塗布方法としては、生産性や生産コストの面より、特にウェットコーティング法が好ましい。ウェットコーティング法は公知の方法でよく、例えばロールコート法、ダイコート法、スピンコート法、そしてディップコート法等が代表的なものとして挙げられる。これらの中では、ロールコート法等、連続的に塗膜を形成できる方法が生産性の点より好ましい。形成された塗膜は、加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射によって硬化反応を行うことにより硬化被膜を形成することができる。
【0074】
<指滑りフィルムを表面に備えた画像表示装置>
上記指滑りフィルムを画面の表面に備える画像表示装置は、画面にてクリア感を保ちつつフリック時の指の滑り易さを良好にすることができ、また、付着した指紋を拭取りやすくすることができる。画像表示装置としては、例えば、カーナビ、スマートフォン、モバイルPC、電子黒板のディスプレイなどが挙げられる。指滑りフィルムは、OCA(optical clear adhesive)を介して画像表示装置の観察側の表面に貼り合わせたり、偏光フィルムとして観察側の表面に装着される。指滑りフィルムを偏光フィルムとして使用する場合の形態について説明すると、偏光フィルムは一般に、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の少なくとも片面に、保護フィルムが積層された形のものが多いが、このような偏光フィルムの一方の面に、上記指滑りフィルムを貼合すれば、指滑り効果のある偏光フィルムとなる。また、上記指滑りフィルムを保護フィルムと兼用し、その指滑り層が積層された一方の面が外側となるよう偏光子の片面に貼合することによっても、指滑り効果のある偏光フィルムとすることができる。
【実施例】
【0075】
(実施例1−1〜実施例1−13、比較例1−1〜1−11)
〔指滑り層形成用樹脂組成物〕
指滑り層形成用樹脂組成物として次の原料を使用し、各原料を下記表1及び表2に記載した組成にて、(a)シリカ微粒子、(b)透光性有機微粒子、(c)紫外線硬化型樹脂、(d)フッ素含有紫外線硬化型樹脂、(e)アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、(f)光重合開始剤、とを混合し、実施例と、比較例の指滑り層形成用樹脂組成物を調製した。尚、各材料の配合量は、固形分の質量%を記載している。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
指滑り層形成用樹脂組成物の各原料としては、以下の通りである。
(a)シリカ微粒子
シリカ超微粒子(粒子径100nm)CIKナノテック(株)製「SIMIBK15WT%-H58」
シリカ超微粒子(粒子径15nm)日産化学工業(株)製「MIBK-ST」
比較例1−1では、シリカ微粒子に替えてジルコニア微粒子(粒子径15nm)CIKナノテック(株)製「ZRMEK25wt%−F47」
(b)透光性有機微粒子
架橋アクリル重合樹脂の微粒子〔綜研化学(株)製、MX80H3wT、粒子径の揃った単分散な微粒子、平均粒子径は0.8μm〕
アクリル重合樹脂の微粒子〔日本ペイント(株)製、FS-501、平均粒子径は0.5μm〕
架橋アクリル重合樹脂の微粒子〔積水化学工業(株)製、SSX-101、粒子径の揃った単分散な微粒子、平均粒子径は1.0μm〕
ポリスチレンの微粒子〔綜研化学(株)製、SX-130H、粒子径の揃った単分散な微粒子、平均粒子径は1.3μm〕
架橋アクリル重合樹脂の微粒子〔綜研化学(株)製、MX-150、粒子径の揃った単分散な微粒子、平均粒子径は1.5μm〕
(c)紫外線硬化型樹脂
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬(株)製「KAYARAD DPHA」
多官能ウレタンアクリレート 日本合成化学工業(株)製「紫光UV−7600B」
(d)フッ素含有紫外線硬化型樹脂
ダイキン工業(株)製「オプツールDAC−HP」
DIC(株)製「メガファックRS−75」
(e)アクリル基を有するポリジメチルシロキサン
ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK−UV 3570」アクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン
ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK−UV 3500」アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン
(f)光重合開始剤
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「IRGACURE907(I−907)」
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「IRGACURE2959(I−2959)」
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「IRGACURE184(I−184)」
【0079】
[指滑りフィルムの作製]
〔透明基材フィルム〕
各実施例及び比較例において、透明基材フィルムとしては、以下のものを使用した。
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET):
東レ(株)製「U403」 厚み100μm
【0080】
〔ハードコート層形成用樹脂組成物〕
HC−1:アクリル基を有する紫外線硬化型ハードコート剤「アイカアイトロンZ735HSL」(アイカ工業(株)製)
HC−2:アクリル基を有する紫外線硬化型ハードコート剤ハードコート剤「オプスターZ7503」(JSR(株)製)
HC−3:4級アンモニウム塩及びアクリル基を有する紫外線硬化型ハードコート剤「リオデュラスLAS1303NL」(東洋インキ(株)製)
【0081】
(実施例2−1)
東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム「U403、100μm」の一面に、アクリル基を有するアイカ工業(株)製ハードコート剤「アイカアイトロンZ735HSL」(HC−1)をバーコーターにて塗布、乾燥、硬化し、硬化後の膜厚(粒子を避けて測定した膜厚)が4μmとなるように塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させ、表面抵抗率が1E+9Ωとなるハードコート層をポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成した。
【0082】
さらに、ハードコート層上に実施例1−1の指滑り層形成用樹脂組成物及び溶媒(メチルイソブチルケトン)を1:1の割合で混合した塗液をバーコーターにて塗布、乾燥、硬化し、硬化後の膜厚(粒子を避けて測定した膜厚)が0.4μmとなるように塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより指滑り層を形成し指滑りフィルムを作製した。
【0083】
(実施例2−2〜実施例2−17、比較例2−1〜比較例2−13)
指滑り層形成用樹脂組成物として表3及び表4に記載した組成、及び構成にて実施例2−1と同様に、ハードコート層及び指滑り層を形成し指滑りフィルムを作製した。
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
得られた各実施例及び比較例の指滑りフィルムについて、各種特性を下記方法にて測定し評価した。
【0087】
<指滑り層の膜厚(t)>
(1)反射分光膜厚計〔FE3000,大塚電子(株)製〕によって、粒子による突出(凸)のない部分の反射スペクトルを測定し、下記<硬化後の各層組成物屈折率>に記載の手順にて求めたハードコート層の硬化後の膜の屈折率を基に、得られた反射スペクトルからピークバレイ法によってハードコート層及び指滑り層の合計膜厚(ii)を算出し、下式(A)にて指滑り層の膜厚を算出した。
指滑り層の膜厚(iii)=(ハードコート層及び指滑り層の合計膜厚(ii)−ハードコート層の膜厚(i))× ハードコート層の屈折率/指滑り層の屈折率 (式A)
【0088】
<硬化後の各層組成物屈折率>
(1)PETフィルム〔商品名「A4100」、東洋紡(株)製〕の易接着層が無い面上に、バーコーターにより、各層用塗液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜1000nmになるように層の厚さを調整して塗布した。乾燥後、紫外線照射装置〔岩崎電気(株)製〕により窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯を用いて、400mJの紫外線を照射して硬化し、屈折率測定用フィルムを作製した。
(2)作製したフィルムの裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計〔FE3000、大塚電子(株)製〕により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn-Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長589nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ4+b/λ2+c (式1)
なお、指滑り層の屈折率は、指滑り層を構成する組成物のうち、大径粒子を除く組成物を硬化して硬化膜を形成し、その硬化膜の反射スペクトルを測定することで算出した。
【0089】
<ハードコート層の膜厚(i)>
反射分光膜厚計(FE3000、大塚電子製)によって、粒子による突出(凸)のない部分の反射スペクトルを測定し、<硬化後の各層組成物屈折率>に記載の手順にて求めたハードコート層の硬化後の膜の屈折率を基に、得られた反射スペクトルからピークバレイ法によって算出した。
【0090】
<表面粗さ>
(株)小坂研究所製、表面粗さ測定機、サーフコーダSE500を使用し、走査範囲4mm、走査速度0.2mm/sの条件で、JIS B 0601−1994の規定に準拠して算術平均粗さRa(μm)、凹凸の平均間隔Sm(mm)を測定した。
【0091】
<指滑り性>
JISK7125−1999に準拠した測定方法にてウレタンエラストマー素材の人工皮膚モデル(商品名:バイオスキンプレート プレート#BSカラー1、ビューラックス株式会社製)に対する動摩擦係数を測定した。
【0092】
本評価方法にて評価した摩擦係数は、人の指でフリックする際の滑り性と相関しており、摩擦係数が小さいほど指が滑り易く、摩擦係数が大きいほど、指が滑りにくいと官能的に評価された。また、摩擦係数が摩擦係数≦0.5となる場合、評価者(N=30)の90%以上がフリック時に指が滑りやすいと判定した。
【0093】
<クリア感>
(1)<透過像鮮明度、45°反射像鮮明度>
JIS K 7105−1981に基づく像鮮明度測定装置〔スガ試験機(株)製の写像性測定器、ICM−1T〕を用いて1mmの幅を有する光学くしを通して像鮮明度の値(透過像鮮明度)(%)及び45°反射で測定される像鮮明度の値(45°反射像鮮明度)(%)を測定した。透過像鮮明度及び45°反射像鮮明度は、数値が大きいほどクリア感に優れる。
【0094】
(2)<ヘイズ>
ヘイズメーター〔日本電色工業(株)製、NDH2000〕を使用し、光学特性としてのヘイズ値(%)を測定した。
【0095】
<指紋拭取り性>
付着した指紋に対して、東レ製トレシーにより200gf/cm
2の荷重にて空拭きを実施し、指紋が目視にて見えなくなるのに必要な空拭き回数をカウントした。
○:20往復以下、×:21往復以上 として判定した。
【0096】
<表面硬度>
荷重は750gとし、JIS K 5600に準拠し評価した。
【0097】
各実施例の結果より、(a)平均粒子径が0.01〜0.10μmであるシリカ微粒子8.0〜74.0質量%、(b)平均粒子径(Pdia)が0.5〜1.3μmである透光性有機微粒子1.0〜9.0質量%、(c)紫外線硬化型樹脂8.0〜74.0質量%、(d)フッ素含有紫外線硬化型樹脂1.5〜15.0質量%、(e)アクリル基を有するポリジメチルシロキサン0.8〜15.0質量%、(f)光重合開始剤0.1〜12.0質量%(但し、(a)(b)(c)(d)(e)(f)の合計は、100質量%である。)を含み、(e)の質量%が(d)の質量%より少ない指滑り層形成用樹脂組成物を用い、指滑り層の膜厚tと透光性有機微粒子の平均粒子径Pdiaの比t/Pdiaが0.10≦t/Pdia≦0.90である指滑りフィルムによれば、クリア感が高く、フリック時の指の滑り易さが良好で、かつ、指紋の拭取り性が良好であることがわかる。
【0098】
一方、比較例2−1より、(a)シリカ微粒子に替えてジルコニア微粒子を用いると、透過像線明度及び45°反射像鮮明度が小さくなり、クリア感が低くなることがわかる。比較例2−2では、(a)シリカ微粒子が少なすぎ(c)紫外線硬化型樹脂が多すぎるため、表面の凹凸間隔(≒Sm)が大きくなり指滑り性が劣る。比較例2−3では、(a)シリカ微粒子が多すぎ(c)紫外線硬化型樹脂が少なすぎるため指紋拭取り性が悪い。比較例2−4では、(b)透光性有機微粒子が少なすぎるため、表面の凹凸間隔(≒Sm)が大きくなり指滑り性が劣る。比較例2−5では、(b)透光性有機微粒子が多すぎるため、透過像線明度及び45°反射像鮮明度が小さく、またヘイズが高いためクリア感が低い。比較例2−6では、(b)透光性有機微粒子の平均粒子径が大きすぎるため、透過像線明度及び45°反射像鮮明度が小さくクリア感が低く、表面の凹凸間隔(≒Sm)が大きくなり指滑り性がやや劣る。比較例2−7では、指滑り層の膜厚tと(b)透光性有機微粒子の平均粒子径Pdiaの比t/Pdiaが小さすぎるため表面硬度が低い。比較例2−8では、t/Pdiaが大きすぎ、表面凹凸(≒Ra)が小さく且つ表面の凹凸間隔(≒Sm)が大きくなるため、指滑り性が劣る。比較例2−9と比較例2−10では、(d)フッ素含有紫外線硬化型樹脂が少なすぎる又は多すぎるため、指紋拭取り性が悪い。比較例2−11では、(e)アクリル基を有するポリジメチルシロキサンが少なすぎるため指紋拭取り性が悪い。比較例2−12と比較例2−13では、(e)アクリル基を有するポリジメチルシロキサンの質量%が(d)フッ素含有紫外線硬化型樹脂の質量%より多いため指紋拭取り性が悪い。