(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575209
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20190909BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20190909BHJP
B60R 22/26 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/90
B60R22/26
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-154473(P2015-154473)
(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-30640(P2017-30640A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】馬場 広
(72)【発明者】
【氏名】新妻 健一
(72)【発明者】
【氏名】本田 亘
(72)【発明者】
【氏名】細川 祐貴
【審査官】
須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−142660(JP,U)
【文献】
特開2004−330938(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102010055245(DE,A1)
【文献】
国際公開第2014/045423(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
B60R 22/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを備える乗物用シートであって、
前記シートクッションは、
乗員が着座する着座部と、
該着座部の側部に設けられ、シートベルト装置を構成するバックル又はアンカーを取り付けるためのバックル等取付部を有する側部フレームと、
該側部フレームに取り付けられて、前記側部フレームを補強する補強ブラケットと、を備え、
該補強ブラケットには、前記バックル等取付部を覆う立ち壁部と、該立ち壁部に交差する方向に延在し前記側部フレームの下面の一部を覆って前記側部フレームを補強する底板部と、が一体的に形成されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記シートクッションは、前記側部フレームの下方に設けられ、前記乗物用シートを前後方向にスライド可能にするスライドレールを有し、
前記側部フレームの前記スライドレール側に取り付けられる被取付部材を備え、
前記側部フレームは、前記バックル等取付部であるバックル等取付孔と、前記被取付部材を取り付ける被取付部材取付孔とを有し、
前記補強ブラケットには、前記側部フレームの前記バックル等取付孔に対向する位置に第1の孔と、前記被取付部材取付孔に対向する位置に第2の孔と、が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記被取付部材はウエイトセンサであり、
該ウエイトセンサは、前記補強ブラケットよりも前記スライドレール側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記第1の孔と前記第2の孔とは、前記乗物用シートの前後方向に離れて形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記側部フレームにおける前記補強ブラケットが取り付けられる部位には第1の屈曲部が形成されており、
前記補強ブラケットには、前記側部フレームへの取付位置を決めるための第3の孔が形成され、
前記補強ブラケットにおける前記第1の孔と前記第3の孔との間には、前記第1の屈曲部に沿う形状で形成された第2の屈曲部が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記補強ブラケットは、前記側部フレームに溶接されており、
前記立ち壁部は、前記第2の孔よりもシート幅方向外側に形成されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記ウエイトセンサは、前記底板部に設けられ、
前記補強ブラケットの前記立ち壁部は、前記側部フレームに溶接されていることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記補強ブラケットの前記底板部は、前記側部フレームにおける前記バックル等取付部の後方の下面に溶接されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記底板部には、前記ウエイトセンサとの干渉を抑制するように形成された逃げ形状が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に、バックル等取付部の剛性が高められた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のシート等の乗物用シートのコンパクト化のため、乗物用シートを構成するシートクッションフレームのサイドフレームは、凹凸形状が有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
より詳細には、特許文献1に記載されたシートクッションフレームのサイドフレームの側面には、例えば、シート高さ調整のため操作ノブが取り付けられている。この操作ノブのシート幅方向への突出を抑制するために、サイドフレームにおける操作ノブが取り付けられる部位には、他の部位よりもシート幅方向内側に窪んで形成された凹部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−35520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のシートクッションフレームは、凹部が形成されることで、操作ノブの突出を抑制できコンパクトにすることができるが、薄くなる部位が生じることで剛性が低くなることがあった。
特に、シートクッションフレームにおけるシートベルト装置を構成するバックル又はアンカーが取り付けられる部位には、シートベルトを安定して機能させるための剛性が必要となっていた。
【0005】
また、シートベルト装置として3点固定式のものは、一般的に、シートベルトの一端がリトラクタから引き出し可能に構成されており、シートベルトの他端がアンカーによりシート又は車体フレームのピラー等に固定されている。着座者は、これらの間に設けられたタングを引っ張り、シートに固定されたバックルにタングを取り付けて、シートベルトを装着する。
そして、着座者がシートベルトを装着すると、リトラクタによる引込みにより、アンカーとバックルの間にあるウェビングから着座者を介してシートに下向きの荷重が生じる。この場合に、シートクッションフレームの下方にウエイトセンサが設けられているときには、ウエイトセンサにその荷重が入力されることによって、ウエイトセンサに誤検出が生じることがあった。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートクッションの側部フレームに設けられたバックル等取付部の剛性が高められた乗物用シートを提供することにある。
【0007】
また、乗物用シートにウエイトセンサが設けられている場合に、シートベルトの装着によるウエイトセンサへの誤検出を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートクッションを備える乗物用シートであって、前記シートクッションは、乗員が着座する着座部と、該着座部の側部に設けられ、シートベルト装置を構成するバックル又はアンカーを取り付けるためのバックル等取付部を有する側部フレームと、該側部フレームに取り付けられて、前記側部フレームを補強する補強ブラケットと、を備え、該補強ブラケットには、前記バックル等取付部を覆う立ち壁部と、該立ち壁部に交差する方向に延在し前記側部フレームの下面の一部を覆って前記側部フレームを補強する底板部と、が一体的に形成されていることにより解決される。
【0009】
上記構成によれば、側部フレームに取り付けられる補強ブラケットに、立ち壁部と立ち壁部に交差して延在する底板部とが設けられていることで、側部フレームに設けられたバックル等取付部の剛性を高めることができる。
【0010】
また、前記シートクッションは、前記側部フレームの下方に設けられ、前記乗物用シートを前後方向にスライド可能にするスライドレールを有し、前記側部フレームの前記スライドレール側に取り付けられる被取付部材を備え、前記側部フレームは、前記バックル等取付部であるバックル等取付孔と、前記被取付部材を取り付ける被取付部材取付孔とを有し、前記補強ブラケットには、前記側部フレームの前記バックル等取付孔に対向する位置に第1の孔と、前記被取付部材取付孔に対向する位置に第2の孔と、が形成されていると好ましい。
上記構成によれば、補強ブラケットの第1の孔と第2の孔が形成されていることで、被取付部材及びバックル又はアンカーの側部フレームへの取り付けに補強ブラケットが干渉しない。さらに、バックル又はアンカーをバックル等取付孔に取り付け可能な位置に、第1の孔と第2の孔によって補強ブラケットを好適に位置決めすることができ、シート製造の作業性が向上する。
【0011】
また、前記被取付部材はウエイトセンサであり、該ウエイトセンサは、前記補強ブラケットよりも前記スライドレール側に設けられていると好ましい。
上記構成によれば、ウエイトセンサが補強ブラケットよりもスライドレール側に設けられていることで、着座者がシートベルトを装着したときに加わる荷重がウエイトセンサに入力されることを抑制できる。
【0012】
また、前記第1の孔と前記第2の孔とは、前記乗物用シートの前後方向に離れて形成されていると好ましい。
上記構成によれば、第1の孔と第2の孔が前後に離れて形成されていることで、第1の孔と第2の孔を用いた補強ブラケットの位置決めを正確にできる。
【0013】
また、前記側部フレームにおける前記補強ブラケットが取り付けられる部位には第1の屈曲部が形成されており、
前記補強ブラケットには、前記側部フレームへの取付位置を決めるための第3の孔が形成され、前記補強ブラケットにおける前記第1の孔と前記
第3の孔との間には、前記第1の屈曲部に沿う形状で形成された第2の屈曲部が設けられていると好ましい。
上記構成によれば、側部フレームに補強ブラケットを取り付ける際に、第1の屈曲部に第2の屈曲部を沿わせて取り付けることで、補強ブラケットの位置決めが容易となり、シート製造の作業性が向上する。
【0014】
また、前記補強ブラケットは、前記側部フレームに溶接されており、前記立ち壁部は、前記第2の孔よりもシート幅方向外側に形成されていると好ましい。
上記構成によれば、立ち壁部が第2の孔よりもシート幅方向外側に形成されていることで、立ち壁部を側部フレームに溶接するときに生じる溶接ビードによって、第2の孔を通るウエイトセンサの取り付けが阻害されることを回避でき、乗物用シートを小型にすることができる。
【0015】
また、
前記ウエイトセンサは、前記底板部に設けられ、前記補強ブラケット
の前記立ち壁部は、前記側部フレームに溶接されていると好ましい。
上記構成によれば、補強ブラケットと側部フレームとの溶接により生じる溶接ビードが、ウエイトセンサの取り付けの邪魔にならず、補強ブラケットをコンパクトに取り付けることができる。
【0016】
また、前記補強ブラケット
の前記底板部は、前記側部フレームにおける前記バックル等取付部の後方の下面に溶接されていると好ましい。
上記構成によれば、補強ブラケットと側部フレームとが、補強ブラケットのバックル等取付部の後方の下面で溶接されていることで、この溶接により生じる溶接ビードが、バックル等取付部に取り付けられるバックル又はアンカーの邪魔にならない。このため、溶接ビードを避けるようにバックル又はアンカーを取り付ける必要がなく、乗物用シートを小型にすることができる。
【0017】
さらに、前記底板部には、前記ウエイトセンサとの干渉を抑制するように形成された逃げ形状が設けられていると好ましい。
上記構成によれば、底板部に逃げ形状が形成されていることで、補強ブラケットとウエイトセンサとの干渉を抑制できることができ、乗物用シートを小型にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、側部フレームに設けられたバックル等取付部の剛性を高めることができる。
また、本発明によれば、被取付部材及びバックル又はアンカーの側部フレームへの取り付けに補強ブラケットが干渉することを避けることができ、また、補強ブラケットを好適に位置決め可能となり、シート製造の作業性が向上する。
また、本発明によれば、着座者がシートベルトを装着したときに加わる荷重がウエイトセンサに入力されることを抑制できる。
また、本発明によれば、補強ブラケットの位置決めを正確にできる。
さらに、本発明によれば、補強ブラケットの位置決めが容易となり、シート製造の作業性が向上する。
また、本発明によれば、ウエイトセンサの取り付けが阻害されることを回避でき、乗物用シートを小型にすることができる。
また、本発明によれば、補強ブラケットをコンパクトに取り付けることができる。
また、本発明によれば、補強ブラケットの側部ブラケットに接合する際に生じる溶接ビードが、側部フレームとスライドレールとの間に設けられるウエイトセンサの邪魔にならず、乗物用シートを小型にすることができる。
また、本発明によれば、補強ブラケットの側部ブラケットに接合する際に生じる溶接ビードが、バックル等取付部に取り付けられるバックル又はアンカーの邪魔にならず、乗物用シートを小型にすることができる。
さらに、本発明によれば、補強ブラケットとウエイトセンサとの干渉を抑制できることができ、乗物用シートを小型にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの模式的な斜視図である。
【
図3】
図2のIII部の拡大図であり、側部フレームに取り付けられた補強ブラケットを示す側面図である。
【
図5】補強ブラケットを側部フレームに取り付けた状態を示す模式的な底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の乗物用シートの実施形態に係る車両用シートについて、図面を参照しながら説明する。特に、本実施形態に係る車両用シートは、シートクッションフレームにあるバックル等取付部の剛性を高めるための補強ブラケットを備えることを特徴とする。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0021】
なお、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートSの前後方向に相当し、車両の走行方向と一致する方向である。また、「幅方向」とは、車両用シートSの幅方向(横幅)に相当する。
【0022】
<車両用シート及びシートフレームの全体的な構成について>
本発明の実施形態に係る車両用シートS及びシートフレームFの全体的な構成について、
図1〜
図3を主に参照して説明する。
ここで、
図1は、本発明の実施形態に係る車両用シートSの模式的な斜視図、
図2は、シートフレームFを示す斜視図、
図3は、
図2のIII部の拡大図であり、側部フレーム4に取り付けられた補強ブラケット5を示す側面図である。
【0023】
車両用シートSは、本発明に係る乗物用シートに相当し、
図1に示すように、シートバックS1と、シートクッションS2と、車両内のフロアに対して車両用シートSを前後方向に摺動可能に取り付けるためのスライドレール6と、を備える。
シートクッションS2は、
図2に示すシートクッションフレーム2と、シートクッションフレーム2上に配されたクッションパッド2aと、これらを被覆する表皮材2bと、から構成されており、シートバックS1も同様の構成から成る。
【0024】
図2に示すように、シートフレームFは、シートバックフレーム1とシートクッションフレーム2とを備える。
特に、シートクッションフレーム2は、シート幅方向中央にある着座部3と、その両側にある側部フレーム4とを備える。
【0025】
図3に示すように、側部フレーム4の後ろ側にある幅方向外側の側面の一部には、シート幅方向内側に窪む凹部4cが形成されている。この凹部4cは、車両の事故等により、側部フレーム4に強い衝撃力がシートバックフレーム1から加わったときに、衝撃力を吸収するため、及び取り付けられる図示せぬバックルのシート幅方向の突出を抑制するために形成されているものである。
凹部4cには、図示せぬバックルを取り付けるためのバックル等取付部及びバックル等取付孔としてのバックル取付孔4bがシート幅方向延びて貫通して形成されている。
また、凹部4cの周縁には、他の部位と連続するようになだらかに屈曲する第1の屈曲部としての屈曲部4aが形成されている。
また、側部フレーム4の下面には、後述するウエイトセンサ7を取り付けるための被取付部材取付孔としてのセンサ取付孔4d(
図5参照)が形成されている。
【0026】
側部フレーム4とスライドレール6との間には被取付部材としてのウエイトセンサ7が配設されている。
ウエイトセンサ7は、シートの重量・重心等を検出する機能を有する。車両に設けられた図示せぬECU(Electronic Control Unit)は、ウエイトセンサ7から検出される信号を用いることによってシート積載物の有無を判断し、エアバッグの展開出力を調整する。
ウエイトセンサ7は、ボルト・ナットによりスライドレール6に固定されるシート前後方向両側に設けられた固定部7aと、荷重を検出するシート前後方向中央に設けられたロードセル7bと、から主に構成されている。
【0027】
側部フレーム4は、バックル取付孔4bが側部フレーム4の特に凹部4cに形成されているために、図示せぬバックルを取り付けるための剛性の確保が困難な場合がある。そこで、側部フレーム4の剛性を確保するために、次に説明する補強ブラケット5が側部フレーム4に接合されている。
【0028】
<補強ブラケットについて>
次に、補強ブラケット5について、
図3に加えて
図4及び
図5を参照して説明する。なお、
図4は、補強ブラケット5を示す斜視図、
図5は、補強ブラケット5を側部フレーム4に取り付けた状態を示す模式的な底面図である。
【0029】
補強ブラケット5は、側部フレーム4に取り付けた状態において、側部フレーム4の側面に沿って配置される立ち壁部5aと、立ち壁部5aの下端からシート幅方向内側に延在し、側部フレーム4の下面に沿って配置される底板部5bと、から構成される。
補強ブラケット5は、側部フレーム4に密着するように取り付けられることにより、ウエイトセンサ7は、補強ブラケット5よりもスライドレール6側に位置することとなる。
このように、ウエイトセンサ7が補強ブラケット5よりもスライドレール6側に形成されていることにより、着座者が図示せぬシートベルトを装着したときに、図示せぬバックルからバックル取付孔4b及び側部フレーム4を介して補強ブラケット5に加わる荷重が、ウエイトセンサ7に入力されることを抑制することができる。
【0030】
立ち壁部5aは、凹部4cを有する側部フレーム4の側面に沿うように形成されており、具体的には、前側部50と前側部50よりもシート幅方向内側に配置された後側部51とを有する。
前側部50には、上方に半円状の突出片5fが形成されており、突出片5fの中心付近に、側部フレーム4への取付位置を決めるための
第3の孔としての位置決め孔5gが形成されている。
【0031】
後側部51には、バックル取付孔4bよりも大径の第1の孔としての通し孔5eが厚さ方向に形成されている。補強ブラケット5は、通し孔5eがバックル取付孔4bを露出させる位置となるように側部フレーム4に取り付けられる。
つまり、通し孔5eは、バックルを側部フレーム4のバックル取付孔4bに取り付ける際に補強ブラケット5が障害とならないように形成されているのに加えて、補強ブラケット5の側部フレーム4への取り付けの位置決めのためにも用いられる。特に、通し孔5eは、位置決め孔5gと前後方向に離れて形成されていることで、補強ブラケット5の前後における上下の傾きについて正確な位置決めが可能となる。
【0032】
立ち壁部5aにおける前側部50と後側部51との境界には、後側部51と比較して前側部50がシート幅方向に広がるように屈曲して形成された第2の屈曲部としての屈曲部5hが形成されている。屈曲部5hは、側部フレーム4のシート幅方向外側の側面に形成された屈曲部4aの曲率と略一致する曲率で形成されている。
【0033】
このように、屈曲部4aと略一致する曲率の屈曲部5hが形成され、屈曲部4aと屈曲部5hを重ね合わせるようにすることで、凹部4cを有する側部フレーム4に補強ブラケット5を密着させることができるため、取付安定性を高めることができる。
さらに、屈曲部4aと屈曲部5hとを重ね合わさる位置は、これらの略一致する形状により必然的に決定されるため、屈曲部5hは、補強ブラケット5の側部フレーム4への取り付けの位置決めとしても機能することとなる。
【0034】
底板部5bは、立ち壁部5aに直交(交差)する方向に延在している。底板部5bには、ウエイトセンサ7の固定部7aとの干渉を避けるために形成された逃げ孔5cと、逃げ孔5cの前方に形成され、ウエイトセンサ7のロードセル7bが通される第2の孔としての通し孔5dとが、それぞれ底板部5bの厚さ方向に貫通して形成されている。
逃げ孔5cは、逃げ形状として固定部7aよりも大径に形成され、通し孔5dは、他の逃げ形状としてロードセル7bよりも大径に形成されている。このように、補強ブラケット5に逃げ孔5c及び通し孔5dが形成されていることで、補強ブラケット5がウエイトセンサ7の取り付け及び荷重の検出を阻害することを回避できる。
【0035】
さらに、通し孔5dがセンサ取付孔4dに合わさる位置である対向する位置、つまり略同心上に位置に、補強ブラケット5を配置して、その側部フレーム4への取付位置を決定できるため、通し孔5dは位置決めとして機能することができる。特に、通し孔5dは、通し孔5eと前後方向に離れて形成されていることで、前後方向の位置が同じであるものよりも、補強ブラケット5の前後における上下の傾きについて正確な位置決めが可能となる。
【0036】
また、立ち壁部5aに通し孔5eが形成され、底板部5bに通し孔5dが形成されていることで、側部フレーム4に補強ブラケット5を介して図示せぬバックルを取り付ける方向が、側部フレーム4に補強ブラケット5を介してウエイトセンサ7を取り付ける方向と異なる方向となる。このため、バックル及びウエイトセンサ7を取り付ける際の位置ずれを抑制できるため、位置決めが容易となり作業性が向上する。
【0037】
上記のようにして、補強ブラケット5の取付位置を決定し、側部フレーム4に補強ブラケット5を重ね合わせた上で溶接することにより、補強ブラケット5は、側部フレーム4に強固に接合されることとなる。
特に、
図3及び
図5に示すように、立ち壁部5aの前側部50の前縁と側部フレーム4の側面との間に溶接ビード8が形成され、底板部5bの後縁と側部フレーム4の下面との間に溶接ビード8が形成されている。このように、側部フレーム4と補強ブラケット5との間に溶接ビード8が形成されていることで、各種方向の荷重に対する剛性を高めることができる。
【0038】
また、立ち壁部5aの前側部50の前縁に溶接ビード8が形成されているが、前側部50は、通し孔5dからシート幅方向外側に離れた底板部5bの外端から連続して形成されている。つまり、ウエイトセンサ7に対向しない面で立ち壁部5aが溶接されていることにより、溶接ビード8によってウエイトセンサ7の取り付けが阻害されることがない。
さらに底板部5bの後縁は、
図3に示すようにウエイトセンサ7及びバックル取付孔4bよりも後方にずれて配置されている。つまり、ウエイトセンサ7に対向しない面で底板部5bが溶接されていることにより、底板部5bの後縁に溶接ビード8が形成されていても、溶接ビード8によってウエイトセンサ7やバックル取付孔4bに取り付けられる図示せぬバックルの取り付けが阻害されることがない。
したがって、ウエイトセンサ7と溶接ビード8との位置関係によって、補強ブラケット5を不必要に大きくする必要がない。
【0039】
上記実施形態においては、補強ブラケット5の側部フレーム4への取付位置の位置決めとして機能するものとして、通し孔5e、屈曲部5h、位置決め孔5g及び通し孔5dを例に挙げたが、いずれを位置決め部として機能させるかは任意に選択可能である。
【0040】
例えば、側部フレーム4のバックル取付孔4bの近傍に屈曲部4aが形成されているのであれば、バックル取付孔4b近傍を補強する補強ブラケット5の屈曲部5hのみを位置決め部として機能させるようにしてもよい。
この構成によれば、屈曲部4aと屈曲部5hとを重なり合わせる際に得られる触感によって前後方向の位置決めが可能となるため、視覚によることなく作業が容易でなる。なお、シートの左右方向及び上下方向における補強ブラケット5の位置決めについては、側部フレーム4の側面及び下面に補強ブラケット5の立ち壁部5a及び底板部5bを突き当てることで位置決めをすることができる。
【0041】
また、上記実施形態においては、補強ブラケットは、シートクッションフレームの側部フレームにおけるシートベルト装置を構成するブラケットが取り付けられる部位を補強するものとして説明したが、補強対象としては、ブラケットが取り付けられる部位に限られない。
例えば、シートベルト装置を構成するアンカーがシートフレームの側部フレームに固定される場合には、シートベルトを着座者が装着したときに、ブラケットからの荷重が側部フレームに加わるのと同様に、アンカーからの荷重が側部フレームに加わることとなる。
このため、側部フレームにおけるアンカーが取り付けられる部位に補強ブラケットを取り付けて、アンカーからの荷重が加わる当該部位を補強するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートバック
S2 シートクッション
F シートフレーム
1 シートバックフレーム
2 シートクッションフレーム
2a クッションパッド
2b 表皮材
3 着座部
4 側部フレーム
4a 屈曲部(第1の屈曲部)
4b バックル取付孔(バックル等取付部、バックル等取付孔)
4c 凹部
4d センサ取付孔(被取付部材取付孔)
5 補強ブラケット
5a 立ち壁部
5b 底板部
5c 逃げ孔(逃げ形状)
5d 通し孔(第2の孔、逃げ形状)
5e 通し孔(第1の孔)
5f 突出片
5g 位置決め孔(
第3の孔)
5h 屈曲部(第2の屈曲部)
50 前側部
51 後側部
6 スライドレール
7 ウエイトセンサ(被取付部材)
7a 固定部
7b ロードセル
8 溶接ビード