特許第6575211号(P6575211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575211
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】テーブル装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 27/32 20060101AFI20190909BHJP
   B65G 27/24 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B65G27/32
   B65G27/24
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-156636(P2015-156636)
(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公開番号】特開2017-36103(P2017-36103A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】村岸 恭次
【審査官】 松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−229117(JP,A)
【文献】 特開平11−194066(JP,A)
【文献】 特開平03−124645(JP,A)
【文献】 特開2013−193813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 27/00−27/34
B65G 47/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に弾性支持手段を介してテーブルを支持し、当該テーブルを振動させることで当該テーブル上に載せられた物品を移動させるテーブル装置であって、
前記テーブルを水平方向に振動させるための周期的加振力を入力する水平加振手段と、前記テーブルの少なくとも2箇所を垂直方向に振動させるための周期的加振力を入力する第1、第2の垂直加振手段と、前記水平加振手段及び前記第1、第2の垂直加振手段による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ前記テーブルの少なくとも2箇所に位相の異なる二次元の振動軌跡を生じさせるように前記水平加振手段及び前記第1、第2の垂直加振手段を制御する振動制御部とを備え、この振動制御部の制御を通じて前記テーブルに前記水平方向に沿った所定位置を節とするピッチング様の振動を生じさせることを特徴とするテーブル装置。
【請求項2】
テーブル上の物品が前記節に向かって移動するように前記水平加振手段及び前記第1、第2の垂直加振手段の振幅および位相差を設定している請求項1に記載のテーブル装置。
【請求項3】
前記第1、第2の垂直加振手段を通じて前記テーブルの2箇所に生成する振動が互いに逆相の関係となり、振動の節がこれらテーブルの2箇所の間に生じるように前記振動制御部による制御系を構成している請求項1又は2に記載のテーブル装置。
【請求項4】
前記水平加振手段が、第1の水平方向にテーブルを振動させるための周期的加振力を入力する第1の水平加振手段及び前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向にテーブルを振動させるための周期的加振力を入力する第2の水平加振手段を含み、各々の水平方向に対してテーブルの少なくとも2箇所を垂直方向に振動させるための周期的加振力を入力する第1、第2の垂直加振手段をそれぞれ設けて、前記振動制御手段が、前記第1の水平方向に沿った所定位置を振動の節とするピッチング様の振動と、前記第2の水平方向に沿った所定位置を振動の節とするピッチング様の振動とを生じさせるように構成している請求項1〜3の何れかに記載のテーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動により物品を搬送することが可能なテーブル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テーブル上で物品を搬送させる装置として、例えば特許文献1に示すものが知られている。このものは、板バネに支持されたテーブルが水平な姿勢を保ったまま、上下方向および水平方向に対して圧電アクチュエータや電磁石を通じて同一周波数で異なる位相下に振動を与えられることで、テーブルの各部に一様な楕円振動を発生し、これにより搬送方向を任意の方向に変更したり、任意の奇跡を辿って物品を搬送させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−229117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような搬送装置は、特に摩擦係数等に関して方向性のない物品であれば、物品は分散した状態で一様に同じ方向に向かって移動する。
【0005】
しかしながら、テーブル上にある物品をピックアップして後工程に移すようなハンドリング装置を併用しようとした場合、物品は分散したまま存在するので、カメラで物品を検知してハンドリング部を移動させながらピックアップを行なければならない。このため、ハンドリング効率が悪いという問題がある。テーブルの端部に突条(仕切り)を設けて物品を突条に向けて移動させれば物品をある程度集合した状態にすることができるが、テーブルの端部では突条とハンドリング部が緩衝するため、端部直近の物品をハンドリングすることができなくなる。
【0006】
また、物品をハンドリングするためのハンドリング装置の軌道を、突条を避けるように設定する必要があり、搬送経路が長くなることから、搬送時間も余計に必要となる。さらに、端部を避けるための軌道を間違えて設定すると、ハンドリング部と突条が衝突し、破損させる可能性もある。
【0007】
このような不具合は、物品の落下防止のために突条を設けている場合も同様である。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、テーブル上で物品を所要の場所に適切に集合させること等に好適に利用できるテーブル装置を新たに提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明のテーブル装置は、基体上に弾性支持手段を介してテーブルを支持し、当該テーブルを振動させることで当該テーブル上に載せられた物品を移動させるテーブル装置であって、前記テーブルを水平方向に振動させるための周期的加振力を入力する水平加振手段と、前記テーブルの少なくとも2箇所を垂直方向に振動させるための周期的加振力を入力する第1、第2の垂直加振手段と、前記水平加振手段及び前記第1、第2の垂直加振手段による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ前記テーブルの少なくとも2箇所に位相の異なる二次元の振動軌跡を生じさせるように前記水平加振手段及び前記第1、第2の垂直加振手段を制御する振動制御部とを備え、この振動制御部の制御を通じて前記テーブルに前記水平方向に沿った所定位置を節とするピッチング様の振動を生じさせることを特徴とするテーブル装置。
【0011】
ここで、ピッチング様とはいわゆる前後揺れ、若しくは前後揺れに似た状態を指す。
【0012】
このように構成すると、振動の節では振動が略ゼロになり、節の両側では物品の搬送方向が逆になるので、従来の搬送装置のように一様に物品を搬送するものとは異なり、物品を特定の位置に集め、あるいは特定の位置から遠ざける用途に有効利用することができる。
【0013】
分散した物品を集合させるためには、テーブル上の物品が前記節に向かって移動するように前記水平加振手段及び前記第1、第2の垂直加振手段の振幅および位相差を設定していることが好ましい。
【0014】
制御系を簡素なものとするためには、前記第1、第2の垂直加振手段を通じて前記テーブルの2箇所に生成する振動が互いに逆相の関係となり、振動の節がこれらテーブルの2箇所の間に生じるように前記振動制御部による制御系を構成していることが望ましい。
【0015】
水平2方向に物品を集合させる必要がある場合には、前記水平加振手段が、第1の水平方向にテーブルを振動させるための周期的加振力を入力する第1の水平加振手段及び前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向にテーブルを振動させるための周期的加振力を入力する第2の水平加振手段を含み、各々の水平方向に対してテーブルの少なくとも2箇所を垂直方向に振動させるための周期的加振力を入力する第1、第2の垂直加振手段をそれぞれ設けて、前記振動制御手段が、前記第1の水平方向に沿った所定位置を振動の節とするピッチング様の振動と、前記第2の水平方向に沿った所定位置を振動の節とするピッチング様の振動とを生じさせるように構成していることが有効である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、テーブル上で物品を所要の場所に適切に集合させ、或いは所定の場所から遠ざけること等に好適に利用できる、新規有用なテーブル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るテーブル装置のシステム構成図。
図2】同テーブル装置を構成する機械装置部の斜視図。
図3】同機械装置部の分解斜視図。
図4】同機械装置部の加振原理を説明するための図。
図5】同テーブル装置の水平方向への加振機能を示す正面図。
図6】同テーブル装置の垂直方向への加振機能を示す正面図。
図7】同テーブル装置の加振状態を示す概念図。
図8】同テーブル装置を構成する振動制御部の説明図。
図9】同テーブル装置における位相差と物品の搬送速度との関係を示す図。
図10】同テーブル装置において節の位置を移動させた状態を示す図。
図11】同テーブル装置において落下防止用の突条が不要となることを説明するための図。
図12】本発明の変形例を示す図。
図13】本発明の他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
この実施形態のテーブル装置1は、図1に示すように、機械装置部2と振動制御部3とから構成される。この振動制御部3は、後述するように機械装置部2に組み込まれた圧電アクチュエータ71、72、73の制御を行うことで、機械装置部2にX、Zの各方向の周期的加振力を与えてテーブル6にX方向の中心Mを基点とするピッチング様の振動を生じさせることができるものである。
【0020】
なお、X、Zの各方向は図中右下に示した座標軸に沿って定義することとし、以下においても適宜この座標軸に沿って説明を進める。
【0021】
機械装置部2は、図1および図2に示すように、床面に固定した基体4と、基体4に対して振動することで上面に載置した物品Wを搬送するテーブル6と、テーブル6を基体4に対して弾性的に支持する弾性支持手段5とを具備する。基体4はX方向に長辺を向けた長方形の平板形状をしており、その上面4aに直方体状の取付ブロック41が固定してある。基体4の下に図示しない防振ゴム等のバネ定数の小さい弾性体を取り付ければ、設置する床に対する反力を低減させることができて好適である。
【0022】
弾性支持手段5は、図1図3に示すように、前記取付ブロック41に連結される2枚の板状をなす水平加振バネ部材52と、当該水平加振バネ部材52に上側ブロック51aを介し支持されて垂直方向に弾性変形可能な各一対の板状をなす垂直加振バネ部材53a、53bとを備え、垂直加振バネ部材53a、53b間に中間台62が架け渡される。
【0023】
X方向に対峙するように平行に配置された一対の水平加振バネ部材52は、それぞれ下端部52bを上記取付ブロック41のX軸と直交する側面41aに連結されており、当該下端部52bより鉛直上方(Z方向)に向かって起立している。そして、上端部52aにおけるY方向へ離間した位置にそれぞれ対をなして上側ブロック51aを取り付けている。
【0024】
中間台62は、直方体状の基部62aを有するもので、この基部62aの両端部が、上下に対をなす垂直加振バネ部材53a、53a(53b、53b)の長手方向中間部間に上下から挟み込まれた状態で固定されており、これら対をなす垂直加振バネ部材53a、53a(54a、54a)は、両端で前記上側ブロック51aを上下から挟み込んだ状態下に固定されている。すなわち中間台62は、これら垂直加振バネ部材53a、54aによって空中に吊り下げた状態で支持されている。中間台62の基部62aには上面側に取付部62bが設けてあり、この取付部62bに支持ブロック62cを介してテーブル6のX方向およびY方向の中心部が取り付けてある。
【0025】
テーブル6の上面61は平面状に構成してあり、物品Wを積載することが可能とされている。上述したように中間台62は、基体4に対して2枚の水平加振バネ部材52によって水平方向に弾性支持され、さらに4枚の垂直加振バネ部材53a、53bによって垂直方向に弾性支持されている。その結果、可動台6は、基体4に対してX、Zの各方向に弾性的に支持された状態となっている。
【0026】
そして、このテーブル6をX、Zの各方向に振動させるための加振手段として、以下のようにアクチュエータ71、72、73を設けている。
【0027】
まず、X方向の振動を付与する水平加振手段として、水平加振バネ部材52の長手方向(上下方向)中央部を避けた下側の側面でX軸と直交する面の表裏に、扁平直方体状の圧電素子71a、71bを取り付けて水平加振アクチュエータ71を構成している。これらの圧電素子71a、71bは電圧を印加することによりZ方向の伸縮を生じさせるように構成されているもので、表裏を背反的に(あるいは逆相となるように)駆動することによって相対的に表裏何れか一方の面を伸張状態、他方の面を縮退状態とすることで水平加振バネ部材52を湾曲させることができる。
【0028】
次に、Z方向の振動を付与する垂直加振手段として、図3に示すように、垂直加振バネ部材53a(53b)のX方向に沿った長手方向一端部近傍(一方の上側ブロック51aの近傍)の裏表に第1の圧電素子72a、72bを貼り付け、他端部近傍(他方の上側ブロック51aの近傍)の表裏に第2の圧電素子73a、73bを貼りつけて、それぞれ第1の垂直加振アクチュエータ72および第2の垂直加振アクチュエータ73を構成している。これらの圧電素子72a、72b(73a、73b)は電圧を印加することによりX方向の伸縮を生じさせるように構成されているもので、表裏を背反的に(あるいは逆相となるように)駆動することによって相対的に表裏何れか一方の面を伸張状態、他方の面を縮退状態とすることで垂直加振バネ部材53a、53bを湾曲させることができる。なお、図中では上下一対の垂直加振バネ部材53a、53bのうち上段の垂直加振バネ部材53a、53bに垂直加振アクチュエータ72、73を構成しているが、これに代わって下段の垂直加振バネ部材53a、53bに垂直加振アクチュエータ72、73を構成しても良いし、上下両段に垂直加振アクチュエータ72、73を構成してもよい。
【0029】
本実施形態においては、水平加振アクチュエータ71、第1の垂直加振アクチュエータ72および第2の垂直加振アクチュエータ73を各々独立して駆動できるように、図1に示すようにそれぞれがアンプAx、Az1、Az2を介してコントローラCに接続されている。コントローラCからアンプAx、Az1、Az2に出力する指令に係るいずれかの周波数は、電源周波数と共振状態とすることで、振動を増幅して省電力化が図られている。なお、全ての方向の振動系の振動が干渉することを避けるためには、各方向の固有振動数に開きがあるように構成してもよい。この時、各方向の固有振動数は例えば−10%〜+10%程度離間させることが好適である。
【0030】
コントローラCは、図8に示すように、アンプAx、Az1、Az2への制御電圧の振幅を生成する振幅設定回路31aを有するとともに、アンプAxへの制御電圧の位相を基準としてアンプAz1、Az2への制御電圧の位相を設定する位相設定回路31bを有する。
【0031】
そして、水平加振アクチュエータ71、第1の垂直加振アクチュエータ72および第2の垂直加振アクチュエータ73に各々正弦波状の制御電圧を付与することによって、図4に示すように、機械装置部2の一部に、X方向およびZ1、Z2方向の周期的加振力Fx、Fz1、Fz1を入力するようにしている。
【0032】
具体的には、X方向に関しては、一対の水平加振アクチュエータ71、71に振幅および位相の等しい電圧を印加することにより、各々の水平加振バネ部材52を図5に示すように同期してX方向に周期的に撓ませる。また、Z方向に関しては、一対の垂直加振アクチュエータ72、73に振幅が等しく位相が逆相となる電圧を印加することにより、垂直加振バネ部材53a、53bを図7に示すように中間台62の左右でZ方向に逆相で周期的に撓ませる。そして、これらX方向、Z1方向およびZ2方向の加振を通じて、テーブル6に図4に示すようにX方向中心点を節するピッチング様の振動を惹き起こすようにしている。
【0033】
ここで、2次元の周期的振動と物品の搬送方向の関係について説明する。
【0034】
図1においてX方向の振動を生成する水平加振アクチュエータ71にX=A×sinωtで表される周期的な振動変位を与えるものとする。ここで、AはX方向の振幅を、ωは角周波数を、tは時間を示す。さらに、垂直加振アクチュエータ72、73にもそれぞれX方向と同一周波数で所定振幅、所定位相の振動を、Z1=B1×sin(ωt+φ1)、Z2=B2×sin(ωt+φ2)のように与えるものとする。ここで、B1、B2はそれぞれ垂直加振アクチュエータ72、73が設けられた位置でのZ1方向、Z2方向の振幅であり、φ1、φ2はそれぞれX方向の振動を基準としてZ1方向、Z2方向の振動の位相差を示す。
【0035】
このように、X、Y、Zの各方向に正弦波状の周期的な振動変位を加えることにより、テーブル6に図7に示すようにこれらが合成された二次元的な楕円振動を生じさせることができる。
【0036】
図9(a)は位相差と搬送速度の関係を表したもので、X方向の振動を基準にしてZ方向の振動の位相φが90°遅れれば、物品Wに対する搬送速度は+X方向、位相φが90°進めば、物品Wに対する搬送速度は−X方向となることを示している。
【0037】
原理的には、この図9(a)の上部に示している楕円軌道のうち、矢印に沿って楕円の短軸の上端から長軸の一端に向かう領域、すなわち楕円振動においてうちZ方向の動きがプラスからマイナスに転じた直後の領域はテーブル6が斜め下方に落下している状態であり、楕円の短軸の下端から長軸の他端に向かう領域、すなわち楕円振動においてうちZ方向の動きがマイナスからプラスに転じた直後の領域はテーブル6が斜め上方に上昇している状態であり、後者のときにテーブル6上の物品Wとの摩擦力によって物品を斜め上方に放り出す。
【0038】
すなわち、楕円振動において例えばZ方向の位相が0°→90°のときに搬送力が与えると考えると、この間、X方向に対し90°→180°に向かって90°の進み位相で振動している左上の楕円振動は物品WをX方向に搬送し、X方向に対し−90°→0°に向かって遅れ位相で振動している右上の楕円振動は物品Wを−X方向に搬送する。これをX方向の振動を基準にすれば、前者はZ方向に−90°遅れ位相とすることで物品をX方向に搬送し、後者はZ方向に90°進み位相とすることで物品を−X方向に搬送する。
【0039】
したがって、X方向の振動を基準として、図7(a)に示す左側の第1参照点R1に90°の遅れ位相が現れるように振動を与えることで物品Wは+X方向へ、また右側の第2参照点R2に90°の進み位相を与えることで物品Wは−X方向へ、各々節Kに向かって移動することになる。節Kの位置では振動は理想的には0であり、物品Wは静止する。
【0040】
逆に、図9(b)に破線で示すように、右上の楕円振動は物品を+X方向に、また左下の楕円振動は物品を−X方向に搬送するので、図7(b)に示す左側の第1参照点R1に90°の進み位相が現れるように振動を与えることで物品Wは−X方向へ、また右側の第2参照点R2に90°の遅れ位相を与えることで物品Wは+X方向へ、各々節Kから遠ざかる方向に移動することになる。この場合も節Kの位置では振動は理想的には0であり、物品Wは静止する。
【0041】
また、同9図(a)に示すように、搬送速度は振幅によっても変化する。なわち、同図において移送差±90°の点に着目すれば、位相差が同じでも振幅が1/2になれば速度は1/2になる。そして、図7に示すテーブル6上で第1参照点R1から節Kまでの各点における振動は第1参照点R1の振動と位相が同じで振幅が節Kまでの距離に比例して徐々に小さくなり、第2参照点R2から節Kまでの各点における振動は第2参照点R2の振動と位相が同じで振幅が節Kまでの距離に比例して徐々に小さくなる。
【0042】
このようにテーブル6上で参照点R1、R2が−90°、+90°の逆送で振れるとき、連続するテール面の各部位は節Kに向かって振幅が徐々に小さくなる結果、テーブル6上の物品は節Kに向かいながら徐々に速度が小さくなり、逆に節Kから遠ざかるにつれ徐々に速度が大きくなるように駆動される。
【0043】
この実施形態では、第1、第2の垂直加振アクチュエータ72、73からテーブル6の各参照点R1、R2までの間にバネ系を含む機械的な伝達系が介在しているため、垂直加振アクチュエータ72、73の変位がそのままテーブル6の各参照点R1、R2における変位となるわけではない。
【0044】
そこで、図1に示すように、テーブル6のX方向の変位、および各参照点R1、R2付近におけるZ1、Z2方向の変位を検出する位置にそれぞれ水平変位センサSxおよび垂直変位センサSz1、Sz2を設けて、検出値をコントローラCに入力し、X方向の変位およびZ1、Z2方向の変位が図7(a)あるいは図7(b)に示す振幅および位相を満たす楕円軌道を描くように、水平加振アクチュエータ71および垂直加振アクチュエータ72、73をフィードバック制御している。変位センサSx1、Sz1、Sz2の好適な一例としては渦電流式センサが挙げられる。
【0045】
図7の例は、参照点R1、R2における振動の振幅が等しく位相が逆相(180°差)となるように設定して、振動の節Kがテーブル6のX方向中心点に現れるようにした例であることは叙述した通りである。
【0046】
この状態から、相対的に、第1参照点R1における振動の振幅を大きくし第2参照点R2における振動の振幅を小さくすると、図10に示すように振動の節Kは第2参照点R2側に移動し、逆に第1参照点R1における振動の振幅を小さくし第2参照点R2における振動の振幅を大きくすると、図10とは逆に振動の節Kは第1参照点R1側に移動する(図示省略)。したがって、振幅設定を通じて、振動の節Kの位置をX方向に沿った自由な位置に設定することもできる。
【0047】
このために、図8に示すようにコントローラCに設定部Sを接続して、節Kの位置を設定したり、各参照点R1、R2における振幅や位相を入力するように構成してもよい。
【0048】
勿論、変位センサを設けずとも、各アクチュエータ71、72、73の振幅および位相と、テーブル6上の各参照点R1、R2における振幅および位相との関係を表す伝達関数を規定することによって、各参照点R1、R2に所望の振動を生成するための加振力(駆動力)を逆伝達関数により割り出してコントローラCから各アクチュエータ71、72、73に指令をなすことで、センサを省略したオープン制御系を構成することも可能である。
【0049】
なお、この装置で各参照点R1、R2における振動の振幅および位相を等しく設定した場合には、特に摩擦係数等に関して方向性のない物品であれば、物品は分散した状態で一様に同じ方向に向かって移動する。
【0050】
そこで、テーブル6上にある物品Wをピックアップして後工程に移すような図11に示す如きハンドリング装置Hを併用しようとした場合、物品Wは分散したまま存在し移動するので、カメラで物品Wを検知してハンドリング部hを移動させながらピックアップを行なければならない。このため、ハンドリング効率が悪いうえに、テーブル6の端部に物品Wを集めるための落下防止壁を兼ねる突条6xを設けるとハンドリング部hが緩衝するため、端部直近の物品をハンドリングすることができなくなる。また、物品Wをハンドリングするためのハンドリング装置Hの軌道を、突条6xを避けるように設定する必要があり、搬送経路が長くなることから、搬送時間も余計に必要となる。さらに、端部を避けるための軌道を間違えて設定すると、ハンドリング部hと突条が衝突し、破損させる可能性もある。
【0051】
これに対して、本実施形態を通じて図7(a)や図10に示すようなピッチング様の振動をテーブル6に与えれば、物品Wはピッチング振動の節Kの位置で速度がゼロとなり、慣性で節Kを越えても速度が逆向きとなって再び節Kに向かうので、テーブル6上から突条6xを撤去しても、物品Wの落下を有効に防ぐことができる。
【0052】
以上のように、本実施形態のテーブル装置1は、基体4上に弾性支持手段5を介してテーブル6を支持し、テーブル6を振動させることでテーブル6上に載せられた物品Wを移動させるものである。そしてそのために、テーブル6を水平方向(X方向)に振動させるための周期的加振力を入力する水平加振手段たる水平加振アクチュエータ71と、テーブル6の少なくとも2箇所(適宜設定した参照点R1、R2)を垂直方向(Z1、Z2方向)に振動させるための周期的加振力を入力する第1、第2の垂直加振手段たるアクチュエータ72、73と、各アクチュエータ71、72、73による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させテーブル6の少なくとも2箇所に位相の異なる二次元の振動軌跡を生じさせるように各アクチュエータ71、72、73を制御する振動制御部3とを備え、この振動制御部3の制御を通じてテーブル6に水平方向(X方向)に沿った所定位置を節Kとするピッチング様の振動を生じさせるようにしたものである。
【0053】
このように構成することで、振動の節Kでは振動が略ゼロになり、節Kの両側では物品Wの搬送方向が逆になるので、従来の搬送装置のように一様に物品を搬送するものとは異なり、物品を特定の位置に集め、あるいは特定の位置から遠ざける用途に好適に適合したテーブル装置1を提供することができる。
【0054】
特に本実施形態では、テーブル6上の物品Wが節Kに向かって移動するように各加振アクチュエータ71、72、73の振幅および位相差を設定しており、分散した状態にある物品Wを節Kに向かって集合させることができるので、例えばハンドリング装置Hを併用した場合等にハンドリング効率を有効に向上させることが可能となる。
【0055】
そして、テーブル6を、縁辺部における上面に突条6xを有しない平坦な形状のものにしても、テーブル6上の物品Wをハンドリングするためのハンドリング装置Hの軌道が突条を避けるための余分な経路を辿る必要がなく、ハンドリングのための経路を短縮して、高速化を図ることが可能となるとともに、ハンドリング装置Hの経路設定が容易となり、さらに突条6xとハンドリング部hの衝突などの発生がなくなるため、装置・物品の破損を防止して信頼性や耐久性を向上させることにも資するものとなる。
【0056】
具体的には、第1、第2の垂直加振アクチュエータ72、73を通じてテーブル6の2箇所に設定した参照点R1、R2に生成する振動が互いに逆相の関係となり、振動の節Kがこれらテーブルの2箇所の参照点R1、R2間に生じるように振動制御部3による制御系を構成するようにしているので、当該振動制御系3における振幅や位相の設定を簡易なものとすることができる。
【0057】
また、テーブル6の1箇所に対して水平方向の振幅を検出する水平変位センサSx1を設けるとともに、テーブル6の2箇所である参照点R1、R2に上下方向の振幅を検出する垂直変位センサSz1、Sz2を設け、これらの変位センサSx1、Sz1、Sz2による検出値に基づき、テーブル6の2箇所に設定した参照点R1、R2が所定の振幅および位相となるように振動制御部3によるフィードバック制御系を構成しているので、バネ系を含んだ支持構造であっても、テーブル6の2箇所の参照点R1、R2に適切な振動を付与することができる。
【0058】
この場合、テーブル6の水平方向・垂直方向の変位検出の代わりに、それぞれ水平加振バネ部材52、垂直加振バネ部材53a、53bの変位を検出しても良い。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0060】
例えば、上記実施形態においては、加振力を圧電素子を用いたアクチュエータによって与えるようにしたが、電磁石によって与えるように構成してもよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、第1、第2の垂直加振手段を通じてテーブルの2箇所に生成する振動が互いに逆相の関係となり、振動の節がこれらテーブルの2箇所の間に生じるように構成したが、図12に示すように、テーブル6の2箇所(参照点R1、R2)に生成する振動が互いに同相かつ振幅が異なる関係とし、振動の節KがこれらテーブルTの2箇所R1、R2を結ぶ領域の外に生じるように構成することもできる。
【0062】
さらに、上記実施例における図7(a)においては、テーブル上の物品が前記節に向かって移動するように前記各加振手段の振幅および位相差を設定したが、同図(b)に示したようにテーブル上の物品が節から遠ざかる方向に移動するように各加振手段の振幅および位相差を設定すれば、特定の位置に物品を到来させたくない用途等に好適に用いることができる。
【0063】
また、図13に示すように、水平加振手段が、第1の水平方向(X方向)にテーブルを振動させるための周期的加振力Fxを入力する第1の水平加振手段及び前記第1の方向と直交する第2の方向(Y方向)にテーブルを振動させるための周期的加振力Fyを入力する第2の水平加振手段を含み、各々の水平方向に対してテーブルの少なくとも2箇所を垂直方向に振動させるための周期的加振力Fz1、Fz2(Fz1´、Fz2´)を入力する第1、第2の垂直加振手段をそれぞれ設けて、振動制御手段が、第1の水平方向(X方向)に沿った所定位置を振動の節K1とするピッチング様の振動と、第2の水平方向(Y方向)に沿った所定位置を振動の節K2とするピッチング様の振動とを生じさせるように構成することもできる。
【0064】
このように構成すれば、X方向に沿った所定の位置を節K1とする振動によってその節K1上に物品Wを集めた後、Y方向に沿った所定の位置を節K2とする振動によってY方向に分散している物品Wをその節K2上に集め、結果的にX、Y方向の1点に向かって物品を集合させることができるので、このような必要のある用途に適用して有用なものとなる。
【0065】
さらにまた、制御系は同じでも図1に示すセンサSz1、Sz2の位置を変えれば節Kの位置をX方向に移動させることも可能である。
【0066】
その他、本発明を平面搬送テーブルやパーツフィーダに組み込んで、或いは平面搬送テーブルやパーツフィーダ等として利用するなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…テーブル装置
3…振動制御部
4…基体
5…弾性支持手段
6…テーブル
71…水平加振手段(水平加振アクチュエータ)
72…第1の垂直加振手段(第1の垂直加振アクチュエータ)
73…第2の垂直加振手段(第2の垂直加振アクチュエータ)
Fx…水平方向の周期的加振力
Fz1…第1の垂直方向の周期的加振力
Fz2…第2の垂直方向の周期的加振力
K、K1、K2…節
R1、R2…テーブルの2箇所(参照点)
Sx…水平変位センサ
Sz1、Sz2…垂直変位センサ
W…物品
X…水平方向(第1の水平方向)
Y…水平方向(第2の水平方向)
Z1、Z2…垂直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図12
図13