(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575213
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】情報印刷物および読取方法ならびに認証方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/27 20140101AFI20190909BHJP
B42D 25/378 20140101ALI20190909BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20190909BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20190909BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20190909BHJP
G07F 7/12 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
B42D25/27
B42D25/378
G06K19/06 046
B41M3/14
G07G1/00 311E
G07F7/12 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-156892(P2015-156892)
(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公開番号】特開2017-35795(P2017-35795A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡部 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】青木 正幸
【審査官】
中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−246792(JP,A)
【文献】
特開2002−205474(JP,A)
【文献】
特開2001−005924(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3152458(JP,U)
【文献】
特開2000−296688(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3144174(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/27
B42D 25/378
B41M 3/14
G06K 19/06
G07F 7/12
G07G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、コード情報を設けてなる情報印刷物において、第1のコード情報を形成する印刷領域の一部に、硬質インキ層からなる付加情報を潜像画像として形成してなり、前記硬質インキ層が、金属物よりも硬度の高い素材を含み、金属物を擦ることで顕像化することにより、前記第1のコード情報と前記顕像化された付加情報とを合わせて、第2のコード情報を表示することを特徴とする情報印刷物。
【請求項2】
前記硬質インキ層が、前記基材の色相と同色であることを特徴とする請求項1に記載の情報印刷物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の前記情報印刷物を用いたコード情報読取方法において、読取装置にて前記第1のコード情報を読取るステップと、金属物を用いて擦ることにより前記硬質インキ層を顕像化させるステップと、読取装置にて顕像化した前記硬質インキ層からなる付加情報を含む第2のコード情報を読取るステップとからなることを特徴とするコード情報読取方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の前記情報印刷物を用いた認証方法であって、読取装置にて前記第1のコード情報を読取るステップと、金属物を用いて擦ることにより前記硬質インキ層を顕像化させるステップと、読取装置にて顕像化した前記硬質インキ層からなる付加情報を含む第2のコード情報を読取るステップとを有し、前記第1のコード情報及び顕像化した前記付加情報を含む第2のコード情報を用いて認証する認証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IDなどの個人認証媒体ならびに証書関連の認証媒体、抽選くじやチケット類といった認証を要する媒体及びその認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IDなどの個人認証媒体ならびに証書関連の認証媒体の領域では、ICチップを内蔵した認証技術などが普及し、抽選くじやチケット類といった認証を要する媒体分野においては個別番号を付与したナンバリング技術やその管理手法による認証手段が主に用いられている。しかし、より簡便かつ低コストでの認証を目指して、所謂バーコードやQRコード(登録商標)などに代表される二次元コードなどを媒体上に設け、認証を実施しようとする試みも、従来から検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1や特許文献2に見られるように、IDカードなどの分野においても、顔画像の画像データや指紋データなどを圧縮して、二次元コード化し、顔写真画像と共にカード上に設けるなどの手法が従来から検討されている。
【0004】
一方、インターネットによる情報提供の一般化に伴い、企業が自社の商品情報や関連情報などといったものをWebページを通じて消費者に向けて情報提供している。この際、カタログ上や商品そのものに、WebページのURLをQRコード(登録商標)などで表記し、これを読取ることにより、消費者を簡便にそのWebページに導こうとする手法なども、特許文献3や特許文献4などで提案されている。
【0005】
これらの手法においては、カメラ付き携帯端末の普及も大きな牽引となっている。
すなわち、携帯端末に二次元コードの読取ソフトを導入することにより、携帯端末の有する通信機能によって、簡単にインターネットに接続することが可能となり、Web情報へのアクセス・閲覧が容易となったためである。
【0006】
しかしながら、二次元コードを認証用の情報媒体として用いようとする場合、二次元コード自体には何らセキュリティ性はなく、カメラによる撮影やコピー機等により、簡単に複製を作ることが可能である。このため、二次元コードの活用方法が限定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−129634号公報
【特許文献2】特開平11−272816号公報
【特許文献3】特開2000−293455号公報
【特許文献4】特開2005−63151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、二次元コードとその読取技術が有する簡便な情報授受性を維持しつつ、カメラやコピー機等による不正コピーによって、不正に認証を実行しようとする場合や、不正に個人情報を入手しようとすることを防止しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものである。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基材上に、コード情報を設けてなる情報印刷物において、第1のコード情報を形成する印刷領域の一部に、硬質インキ層からなる付加情報を潜像画像として形成してなり、前記硬質インキ層が、
金属物よりも硬度の高い素材を含み、金属物を擦ることで顕像化することにより、前記第1のコード情報と前記顕像化された付加情報とを合わせて、第2のコード情報を表示することを特徴とする情報印刷物である。
【0010】
次に、請求項2に記載の発明は、前記硬質インキ層が、前記基材の色相と同色であることを特徴とする請求項1に記載の情報印刷物である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の前記情報印刷物を用いたコード情報読取方法において、読取装置にて前記第1のコード情報を読取るステップと、金属物を用いて擦ることにより前記硬質インキ層を顕像化させるステップと、読取装置にて顕像化した前記硬質インキ層からなる付加情報を含む第2のコード情報を読取るステップとからなることを特徴とするコード情報読取方法である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の前記情報印刷物を用いた認証方法であって、読取装置にて前記第1のコード情報を読取るステップと、金属物を用いて擦ることにより前記硬質インキ層を顕像化させるステップと、読取装置にて顕像化した前記硬質インキ層からなる付加情報を含む第2のコード情報を読取るステップとを有し、前記第1のコード情報及び顕像化した前記付加情報を含む第2のコード情報を用いて認証する認証方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次元コードを用いた認証方法において、カメラなどによってコード情報を撮影されてしまった場合や、コピー機等によって不正にコード情報を複製されてしまった場合であっても、不正使用することのできない情報印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一態様に係わる情報印刷物を概略的に示す平面図である。 (A)第1の情報コードを有する情報印刷物の例である。 (B)第2の付加情報を顕像化させた情報印刷物の例である。
【
図2】本発明の一態様に係わる情報印刷物の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一態様に係わる運用例を示す概念図である。
【
図4】本発明の認証方法の1例を示すフロー図である。
【
図5】本発明の認証方法の1例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する校正要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は本発明の一態様に係わる情報印刷物を概略的に示す平面図である。ここで、(A)は、第1のコード情報102を有する情報印刷物100の例を示しているが、コードの形式としては、QRコード(登録商標)に代表される二次元コードを使用することができる。これは、二次元コードが、一次元バーコードに比べて、そのデータ密度が格段に高く、用途に応じて扱う情報の自由度が増すためである。
【0017】
二次元コードは、QRコード(登録商標)以外にも使用することが可能であり、例えば、マトリックス式コードとしてSPコード、ベリコード、マキシコード、CPコード、DataMatrix、Code1、AztecCode、インタクタコードなどを挙げることができ、スタック式コードとして、PDF417、Code49、Code16K、Codablock、SuperCode、Ultra Code、RSS Composite、AztecMetaなどの各種コード(以上のコード名は登録商標を含む)が考えられるが、広く認知されているQRコード(登録商標)が好適であるといえる。
【0018】
前記第1のコード情報102は、それ自体をコード情報として読取ることが可能であり、前記第1のコード情報102のコード印刷領域の1部に、硬質インキを用いて付加情報103を潜像として設ける。
【0019】
すなわち、前記第1のコード情報102を読取る際には、付加情報103は目視で観察することができず、読取装置によっても検知不能である。
【0020】
前記第1のコード情報を読取装置によって読取った後、金属物で情報印刷物100の表面を擦ることにより、硬質インキ印刷部で金属が削り取られ、削り取られた金属によって、前記硬質インキ印刷部が着色されることで、
図1の(B)に示すように顕像化され、目視ならびに読取装置による観察が可能となる。これにより、前記第1のコード情報102と顕像化された前記付加情報103とを合わせて、新たな第2のコード情報104として読取装置による情報読取りが可能となる。
【0021】
金属物は、専用の金属片を設けても良いが、一般には硬貨を使用することができる。硬貨の材質としては、アルミニウム、黄銅(銅、亜鉛)、青銅(銅、亜鉛、錫)、白銅(銅、ニッケル)、ニッケル黄銅(銅、亜鉛、ニッケル)などが用いられており、素材中最も硬いニッケルのモース硬度はおよそ5である。
【0022】
ここで、
図2に本発明の一態様に係わる情報印刷物の構成を概略的に示す断面図を示しているが、基材101としては、紙の他に、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、などのプラスチックフィルムあるいはシート類、合成紙などを用途に応じて任意に選定することができる。これら基材の表面には、帯電防止処理、耐摩処理、易接着処理などの各種表面処理が施されていても良い。また情報印刷物は、コード情報の読取に影響しない範囲内で任意の画像を設けたり、基材上に着色層を設けたりすることができる。
【0023】
前記第1のコード情報102は、墨インキやイエロー、マゼンタ、シアンの各色インキやこれらの混色インキなどを用いて、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷などの各種印刷方式やインクジェット方式、転写方式など公知の方式によって設けることができる。また、前記第1のコード情報102は、前記付加情報103が貨幣などの金属物で擦ることによって顕像化された時の色を想定して類似の色相に色調整をしておいても良い。
【0024】
前記付加情報103の部分は、前記硬質インキを用いた印刷層からなり、金属物で表面を擦った際に、金属が削り取られ、削り取られた金属によって着色され、顕像化されることから、前記硬質インキは、前記金属物よりも硬度の高い素材を用いる必要がある。そのような素材としては、以下のようなものが挙げられる。ここで、( )内は、代表的なモース硬度の値を示している。硬質インキに用いられるインキ組成物としては、例えば、酸化チタン(6〜7)、酸化アルミニウム(9)、二酸化ケイ素(7)、酸化ジルコニウム(7)、酸化クロム(9)などを挙げることができ、いずれも硬貨などに使用される金属類よりも硬度の高い素材であり、これらを単独あるいは、2種以上の混合物として使用することができる。
【0025】
前記硬質インキは、各種色材などによって、前記情報印刷物100の基材101側の色
相に合わせて調色されており、これにより、金属物による擦りを実施する前の段階での前記付加情報103は、目視ならびに読取装置による観察では認識困難となる。
【0026】
なお、基材の色相と硬質インキとの色差は、ΔEが0.5以下であることが望ましく、更に望ましくはΔEが0.3以下であることが好ましい。なお、色差ΔEは、色彩色差計により測定することが可能である。
【0027】
また、前記硬質インキは各種バインダー類との組合せなどにより、オフセット印刷、UVオフセット印刷を始め、フレキソ印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷やこれら印刷法と紫外線や電子線などの放射線照射装置を組み合わせた印刷方法、あるいはインクジェット法などの各種手法によって、基材上に設けることができる。
【0028】
図3は、本発明の一態様に係わる運用例を示す概念図である。すなわち、読取装置として携帯端末200を用いた場合を示しており、本発明の情報印刷物100上に設けられた二次元コードを携帯端末によって読取を実施し、インターネットを通じてサーバーにアクセスすることを示している。ここで、携帯端末200による前記情報印刷物100上の二次元コード読取りは、まず第1のコード情報102の読取りを行い、読取り情報に基づき何らかの処理やサービスを行い、更に前記情報印刷物100の表面を硬貨などの金属物で擦り、前記付加情報103を顕像化させた後、前記第1のコード情報102と前記付加情報103とを組み合わせた第2のコード情報104を読取ることで、第2のコード情報104に基づく、新たな何らかの処理やサービス、あるいは前記第1のコード情報に基づいて実施されたことに対して、付加的な処理やサービスを実施することが可能となる。
【0029】
また、前記第1のコード情報と前記第2のコード情報を組み合わせることで、新たな認証方法を実施することが可能となる。すなわち、まず携帯端末200による前記第1のコード情報102を読取るステップと、前記第1のコード情報102を読取った後に、前記情報印刷物100の表面を硬貨などの金属物で擦り、前記付加情報103を顕像化させるステップと、前記第1のコード情報102と前記付加情報103とを組み合わせた第2のコード情報104を読取を実施するステップとからなり、これら2つのコード情報を読取ることにより、初めて認証が可能となることから、前記第1のコード情報102だけ、あるいは前記第2のコード情報104だけをカメラによる撮影やコピー機などによって複製を取られたとしても、その複製情報だけでは不正に認証を得ることが出来なくなる。
【0030】
ここで、読取装置は、カメラや受光部等によりコード情報を読取るコード読取部と、認証した結果を画面表示または音や光等で出力する出力部とを備えていればよく、具体的には、スマートフォンなどの携帯端末や、前述の機能を備える移動端末または固定端末などを挙げることができる。これらの読取装置は、POSシステムなどに接続/連動されていても良い。
【0031】
また、コード情報を読取った後の認証については、
図3に示すように読取装置に通信部を設け、認証部を備える外部サーバーにコード情報を記録しておき、読取ったコード情報と照合して認証を行っても良いが、読取装置そのものに認証部とコード情報記録部を設け、読取ったコード情報の認証を読取装置内で行っても良い。
【0032】
ここで、前記第1のコード情報102と前記第2のコード情報104を用いた認証手順の例を
図4、ならびに
図5に示した。
【0033】
図4で示す認証手順は、読取装置により、前記情報印刷物100上に設けられた前記第1のコード情報102を読取り、認証部にて予め記録されているコード情報との照合を実施し、認証に成功した場合に、前記第2のコード情報104の認証作業に進む。すなわち
硬貨などの金属物にて前記情報印刷物表面を擦り、前記付加情報を顕像化した後、前記第1のコード情報と前記顕像化された付加情報103を含む第2のコード情報104を読取り、最終的な照合を実施するというものである。
【0034】
この場合、前記第1のコード情報102の照合時に不具合が発生した場合には、前記第1のコード情報102の照合手続き時に、エラーとすることができる。
【0035】
また他にも、
図5で示すように、読取装置により、前記情報印刷物上に設けられた前記第1のコード情報102を読取り、続いて硬貨などの金属物により、前記情報印刷物100表面を擦り、前記付加情報103を顕像化した後、前記第1のコード情報102と前記顕像化された付加情報103を含む前記第2のコード情報104の読取りを実施する。その後、前記第1のコード情報と前記第2のコード情報について、照合を実施するという照合手段を用いても良い。
【符号の説明】
【0036】
100 … 情報印刷物
101 … 基材
102 … 第1のコード情報
103 … 付加情報
104 … 第2のコード情報
200 … 携帯端末
300 … インターネット
400 … サーバー