(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のハイブリッド車両の発進制御方法および発進制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施の形態1に基づいて説明する。
まず、実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法を実施する発進制御装置の構成を説明する。
図1は、実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御装置を適用した後輪駆動によるハイブリッド車両のパワートレイン系構成図である。
図1に示すように、ハイブリッド車両は、動力源としてエンジン1とモータジェネレータ2とを備えており、エンジン1とモータジェネレータ2との駆動力は、自動変速機3を介して駆動輪7に伝達される。なお、エンジン1は、いわゆるターボチャージャと称する排気による過給機1aを備えている。
【0010】
そして、エンジン1の出力軸1bとモータジェネレータ2の入力軸2aとが、トルク容量可変の第1クラッチ4を介して、動力伝達の断接を可能に連結されている。
また、モータジェネレータ2の出力軸2bと自動変速機3の入力軸3aとが連結されている。さらに、自動変速機3の出力軸3bは、ディファレンシャルギア6を介して駆動輪7が連結されている。これにより自動変速機3は、第1クラッチ4を介して入力されるエンジン1の動力と、モータジェネレータ2から入力される動力と、を合成して駆動輪7へ出力する。
【0011】
なお、第1クラッチ4と第2クラッチ5とには、例えば比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多版クラッチを用いればよい。
また、実施の形態1では、自動変速機3において、シフト状態に応じて動力伝達を切り替えるトルク容量可変のクラッチのうち1つを第2クラッチ(発進クラッチ)5として用いる。
【0012】
上述したパワートレイン系は、第1クラッチ4の接続状態に応じて2つの運転モードを備える。すなわち、第1クラッチ4を切断状態としてモータジェネレータ2の動力のみで走行するEVモードと、第1クラッチ4を接続状態としてエンジン1とモータジェネレータ2との動力で走行するHEVモードと、を備える。
【0013】
また、パワートレイン系は、エンジン回転数センサ10とモータ回転数センサ11とAT入力回転数センサ12とAT出力回転数センサ13とを備える。
エンジン回転数センサ10は、エンジン1の回転数を検出する。
モータ回転数センサ11は、モータジェネレータ2の回転数を検出する。
AT入力回転数センサ12は、自動変速機3の入力軸回転数を検出する。
AT出力回転数センサ13は、自動変速機3の出力軸回転数を検出する。
【0014】
さらに、パワートレイン系は、
図2に示すように、第1ソレノイドバルブ14と、第2ソレノイドバルブ15とを備える。
第1ソレノイドバルブ14は、第1クラッチ4の油圧を調圧する。
第2ソレノイドバルブ15は、第2クラッチ5の油圧を調圧する。
【0015】
次に、ハイブリッド車両の制御系の構成を説明する。
ハイブリッド車両の制御系は、
図2に示すように、統合コントローラ20とエンジンコントローラ21とモータコントローラ22とを備える。
統合コントローラ20は、パワートレイン系の動作点を統合制御する。
エンジンコントローラ21は、エンジン1の駆動を制御する。
モータコントローラ22は、モータジェネレータ2を駆動するインバータ8の制御に基づいてモータジェネレータ2の駆動を制御する。
なお、インバータ8は、電気エネルギを蓄える強電バッテリ9に接続されている。
【0016】
さらに、統合コントローラ20には、SOCセンサ16とアクセル開度センサ17とブレーキ開度センサ23とバッテリ温度センサ24とモータ温度センサ25と第2クラッチ温度センサ26と変速機温度センサ27とエンジン温度センサ28とが接続されている。
SOCセンサ16は、バッテリの充電状態(バッテリSOC)を検出する。
【0017】
アクセル開度センサは、アクセル開度(APO)を検出する。
ブレーキ開度センサ23は、制動操作を検出する検出装置として設けられ図示を省略したブレーキ油圧を発生させるスプールの開度(ブレーキ開度)を検出する。なお、このブレーキ開度は、ブレーキ油圧に応じるものであり、ブレーキ開度センサに代えてブレーキ油圧センサによりブレーキ油圧を検出したり、図示を省略したブレーキペダルのストロークを検出したりしてもよい。
【0018】
バッテリ温度センサ24は、強電バッテリ9の温度を検出する。
モータ温度センサ25は、モータジェネレータ2の温度を検出する。
第2クラッチ温度センサ26は、第2クラッチ(発進クラッチ)5の温度を検出する。
変速機温度センサ27は、自動変速機3の温度を検出する。
エンジン温度センサ28は、エンジン1の温度を検出する。
【0019】
そして、統合コントローラ20は、アクセル開度APOとバッテリSOCと車速VSP(AT出力軸回転数に比例)とに応じて、運転者が望む駆動力(ドライバ要求駆動力)を実現できる運転モードを選択する。さらに、統合コントローラ20は、モータコントローラ22に目標モータトルクもしくは目標モータ回転数を出力し、エンジンコントローラ21に、目標エンジントルクを、各ソレノイドバルブ14,15に駆動信号を出力する。
【0020】
次に、
図3に示すブロック図に基づいて、統合コントローラ20において実行される制御を説明する。
統合コントローラ20は、目標駆動トルク演算部100、モード選択部200、目標発電出力演算部300、動作点指令部400、変速制御部500を備える。
【0021】
目標駆動トルク演算部100は、
図4(a)(b)に示す目標定常駆動トルクマップとモータ(MG)アシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPとから、目標定常駆動トルクとモータアシストトルクを算出する。
【0022】
モード選択部200は、
図5に示す、バッテリSOCの高低に応じ、車速VSPとアクセル開度APOに基づいて設定されているエンジン始動線停止線マップを用いて、運転モード(HEVモード、EVモード)を演算する。エンジン始動線およびエンジン停止線はバッテリSOCが低くなるにつれて、アクセル開度APOが小さくなる方向に低下する。
【0023】
目標発電出力演算部300は、
図6に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリSOCから目標発電出力を演算する。また、現在の動作点から
図7に示す最適燃費線までエンジントルクを上げるために必要な発電出力を演算し、目標発電出力と比較して少ない発電出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。
【0024】
動作点指令部400は、動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標モータトルクと目標CL2トルク(第2クラッチ5の目標伝達トルク)と目標変速比と第1ソレノイドバルブ14に対する指令値(CL1クラッチソレノイド電流指令)を演算する。また、動作点到達目標は、アクセル開度APOと目標定常駆動トルク、モータアシストトルクと目標モードと車速VSPと要求発電出力とから求める。なお、目標CL2トルク(第2クラッチ5の目標伝達トルク)は、目標駆動トルクに予め設定されたロックアップ分のマージンを加算して求める。
変速制御部500は、目標CL2トルクと目標変速比とから、これらを達成するように自動変速機3内のソレノイドバルブを駆動制御する。
【0025】
次に、統合コントローラ20において実行するエンジン1の始動処理について説明する。
この始動処理は、以下のように行う。
EVモード走行時に、
図5に示すエンジン始動線を車速VSPに応じたアクセル開度APOが越えた時点で、第2クラッチ5を半クラッチ状態としてスリップさせるように第2クラッチトルク(容量)を制御する。
そして、第2クラッチ5がスリップを開始したと判断した後に、第1クラッチ4の締結を開始してエンジン回転数を上昇させる。
さらに、エンジン回転数が初爆可能な回転数に達成したら、エンジン1を作動させてモータ回転数とエンジン回転数とが近くなったところで第1クラッチ4を完全に締結し、その後、第2クラッチ5をロックアップさせてHEVモードに遷移させる。
【0026】
次に、自動変速機3の変速制御について簡単に説明する。
自動変速機3は、例えば、前進5速/後退1速などの有段階の変速段を備え、変速段を自動的に切り換える有段変速機である。
この自動変速機3の変速制御は、
図8に示す変速線に基づいて行う。
すなわち、車速VSPとアクセル開度APOとに基づく車両状態が、また、
図8の変速線において現在の変速段から他の変速段へ横切る変速要求が生じれば、自動変速機3に内蔵された変速クラッチを切替制御して変速させる。
【0027】
なお、第2クラッチ5は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機3の各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、トルク伝達経路に配置される最適なクラッチやブレーキを選択する。
【0028】
次に、統合コントローラ20において実行するストール発進制御について説明する。
このストール発進制御は、ストール発進制御許可判定がなされた場合に実行する。そして、ストール発進制御許可は、基本的には、停車状態で、図示を省略したブレーキペダルが踏み込まれる制動操作(ブレーキON)が行われ、かつ、図示を省略したアクセルペダルが踏み込まれる(アクセルON)加速操作が行われると許可と判定する。
【0029】
そして、ストール発進制御許可の後、アクセルペダル(図示省略)の踏み込みが解除されて加速操作を終了するか、ストール発進制御許可と判定の開始からの経過時間が所定時間を超えると、ストール発進制御禁止と判定する。
【0030】
また、ストール発進制御時には、目標モータ回転数、目標発電トルク、発電時モータ下限トルク、第2クラッチ5の目標伝達トルク、エンジン目標トルクを、通常発進時よりも大きく制御する。なお、発電時モータ下限トルクについては、絶対値を大きく制御する。 また、ストール発進制御は、ストール発進制御許可判定がなされた場合に実行する。そして、ストール発進制御許可は、
【0031】
以下に、このストール発進制御およびストール発進制御の許可、禁止の判定の処理の流れを、
図9、
図10のフローチャートに基づいて説明する。
図9はストール発進制御の処理の流れを示す。
まず、ステップS1では、アクセル開度APO、ブレーキ開度、車速VSP、エンジン回転数、バッテリSOC、強電バッテリ9の入力制限、バッテリ温度、モータ温度、第2クラッチ温度、変速機温度、エンジン温度を入力し、ステップS2に進む。
【0032】
ステップS2では、要求駆動トルクを算出する。この要求駆動トルクは、
図8に示すマップに基づいて、エンジン回転数とアクセル開度APOとに応じて算出し、ステップS3に進む。
【0033】
ステップS3では、
図9の処理に並行して実施する
図10に示すストール発進制御許可判定処理による判定結果が、ストール発進制御許可であるか否か判定し、ストール発進制御許可の場合はステップS4に進み、ストール発進制御禁止の場合はステップS7に進む。
【0034】
ストール発進制御許可との判定時に進むステップS4は、ストール発進制御時のモータ目標回転数、目標発電トルク、発電時のモータ下限トルクを算出し、その算出値を指令出力する。ここで、モータ目標回転数、目標発電トルクは、通常発進時よりも大きな値とし、モータ下限トルクは、通常発進時よりも負側(発電)に拡大する。
【0035】
具体的には、モータ目標回転数は、第2クラッチ5の目標伝達トルクと目標発電トルクとの絶対値の和が最大となる回転とする。そして、統合コントローラ20は、そのモータ目標回転となるようモータジェネレータ2の回転数をフィードバック制御することで、エンジン1の回転数を目標回転数に維持させる。
【0036】
目標発電トルクは、ストール発進制御許可時は、通常発進時の目標発電トルク(ストール発進制御禁止時であって
図6に示す量)よりも所定量だけ発電量を拡大する。この所定量は、一定量としてもよいし、充電許可電力(満充電時のバッテリSOCから現在のバッテリSOCを差し引いた値)に応じて、充電許可電力に応じ、充電許可電力が多くなるほど所定量を大きくするよう可変としてもよい。
【0037】
モータ下限トルクは、モータ回転数と、強電バッテリ9の充電許可電力とのマップから求めることができる。そして、充電許可電力が大きいほど、モータ回転数が低いほど、モータ下限トルクは小さな値(絶対値は大きく)とする。そして、モータ下限トルクは、ストール発進制御許可の場合は、通常発進時よりも小さな値(負側に絶対値を大きく)に設定し、その負側の拡大量は、一定値としてもよいし、充電許可電力に応じ、充電許可電力が大きくなるほど、拡大量を大きくしてもよい。
【0038】
ステップS4に続くステップS5では、ストール発進制御時の発進クラッチ目標伝達トルクとしての第2クラッチ5の目標伝達トルクを算出(予め設定された値とする)し、その算出値を指令出力した後、ステップS6に進む。なお、ステップS4、S5,S6は、図示上、独立して記載しているが、これらは、時間的には、同時、あるいは図示とは異なる順番に処理を実行してよい。
【0039】
ステップS5に続くステップS6では、エンジン目標トルクを算出し、その算出値を指令出力した後、ステップS1に戻る。
ここで、エンジン目標トルクは、目標伝達トルクと目標発電トルクとに応じて算出する。すなわち、目標伝達トルクと目標発電トルクとを足し合わせた値をエンジン目標トルクとする。そして、エンジン回転数は、このエンジン目標トルクに応じた回転数とする。
ここで、エンジン目標トルクを、より大きな値とするためには、目標発電トルクと目標伝達トルクの和を、前述のように最大の値とする。目標発電トルクは、バッテリSOCが許す範囲で、極力モータ下限トルクに近付ける。目標伝達トルクは、第2クラッチ5の発熱量を予め設定された許容量に抑え、かつ、停車状態を維持する範囲での最大値とする。
【0040】
一方、ステップS3において、ストール発進禁止の場合に進むステップS7では、通常発進時(ストール発進制御禁止時)のモータ目標回転数と、モータ下限トルクを演算する。
ステップS7に続くステップS8では、第2クラッチ5の目標伝達トルク=0を指令し、ステップS9に進む。
【0041】
ステップS9では、アクセルON(アクセル開度APO>0)かつブレーキOFF(ブレーキ開度=0)であるか否か判定する。そして、アクセルONかつブレーキOFFの場合は、ステップS11に進み、それ以外(アクセルONかつブレーキON)の場合は、ステップS10に進む。
ステップS11では、通常発進時の発電トルク(
図6)を算出した後、ステップS12に進む。
【0042】
一方、ステップS10では、ストール発進制御用の発電トルクを算出した後、ステップS12に進む。ここで、ストール発進制御用の発電トルクは、通常発進時のモータ下限トルクとする。
【0043】
ステップS10とステップS11のいずれかにおいて、目標発電トルクを算出した後に進むステップS12では、エンジン目標トルクを算出し、その算出値を指令出力した後、ステップS1に戻る。
このエンジン目標トルクは、
図4(a)のマップに基づいて得られたエンジン目標トルクに、目標発電トルクを加算する。したがって、ステップS10により目標発電トルクを算出した場合のエンジン目標トルクは、ステップS11により通常発進時の目標発電トルクを算出した場合のエンジン目標トルクよりも大きな値となる。
【0044】
次に、ステップS3におけるストール発進制御許可判定の処理の流れを、
図10のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS21では、現在、ストール発進制御許可が成立しているか否か判定し、ストール発進制御許可が成立している場合はステップS22に進み、ストール発進制御許可が成立していない場合は、ステップS32に進む。
【0045】
ストール発進制御許可である場合に進むステップS22では、アクセルON(アクセル開度APO>0)であるか否か判定し、アクセルONではステップS23に進み、アクセルOFFでステップS30に進む。
【0046】
ステップS22においてアクセルONの場合に進むステップS23では、タイマのカウント時間が予め設定された所定時間(ストール発進制御の最大実行時間であって数秒)以下であるか否か判定する。そして、カウント時間が所定時間以下の場合はステップS24に進み、所定時間を越えている場合はステップS30に進む。なお、タイマは、後述のストール発進制御許可がなされた時点からカウントを開始する。
すなわち、アクセルOFFか、ストール発進制御許可からの経過時間が所定時間を越えるかした場合、ステップS30に進む。そして、ステップS30では、ストール発進制御禁止とするとともに、後述するステップS31においてカウントを開始するタイマをリセットする(カウント=0とする)。
【0047】
一方、ステップS21においてストール発進制御許可ではない場合(ストール発進制御禁止の場合)に進むステップS32およびステップS33では、ストール発進制御許可の判定を行う。
すなわち、ステップS32では、ブレーキON(ブレーキ開度>0であって、制動操作を行っている)かつアクセルON(アクセル開度APO>0であって加速操作を行っている)か否か判定する。
そして、制動操作と加速操作を同時に行って、ブレーキONかつアクセルONの場合はステップS33に進み、ブレーキONかつアクセルONではない場合は、ステップS34に進む。
【0048】
ブレーキONかつアクセルONの場合に進むステップS33では、車速VSPが0以下であるか否か、すなわち、停車中か否か判定し、車速VSPが0以下の停車中はステップS24に進み、車速VSPが0よりも大きい場合は、ステップS34に進む。
【0049】
ブレーキONかつアクセルONであり、さらに、車速VSPが0以下の場合に進むステップS24以下では、ストール発進制御許可に向けて、さらなるストール発進制御許可条件が成立しているか否かを判定する。
一方、ブレーキON、アクセルON、車速VSP≦0のいずれかの条件も成立しない場合は、ストール発進条件不成立としてステップS34に進む。
このステップS34では、ストール発進制御禁止とするとともに、後述するステップS31においてカウントを開始するタイマをリセットする(カウント=0とする)。
【0050】
ブレーキON、アクセルON、車速VSP≦0の場合に進むステップS24では、バッテリSOCがストール発進制御許可SOC以下であるか否か判定する。そして、バッテリSOCがストール発進制御許可SOC以下の場合はステップS25に進み、バッテリSOCがストール発進制御許可SOCよりも大きい場合はステップS30に進む。
すなわち、ステップS24では、強電バッテリ9の充電状態が、ストール発進時に伴う充電を許容するバッテリSOCであるか否かを判定し、充電を許容する場合は、ステップS25以下のさらなるストール発進条件の判定を行う。
一方、強電バッテリ9が充電を許容しない場合は、ステップS30に進んで、ストール発進制御禁止とするとともに、前述のタイマをリセットする。
【0051】
ステップS24において強電バッテリ9が充電を許容する場合に進むステップS25では、バッテリ温度がストール発進制御許可温度未満であるか否か判定する。そして、バッテリ温度が、ストール発進制御許可温度未満の場合はステップS26に進み、ストール発進制御許可温度以上の場合はステップS30に進む。
すなわち、強電バッテリ9のバッテリ温度がストール発進制御許可温度よりも高温で、充放電を行うのが好ましくない状況では、ストール発進制御を禁止する。
【0052】
バッテリ温度がストール発進制御許可温度未満の場合に進むステップS26では、モータジェネレータ温度(MG温度)が、ストール発進制御許可温度未満であるか否か判定する。そして、モータジェネレータ温度が、ストール発進制御許可温度未満の場合はステップS27に進み、ストール発進制御許可温度以上の場合はステップS30に進む。
すなわち、モータジェネレータ2の温度が発電可能な温度よりも高温で、発電を行うのが好ましくない状況では、ストール発進制御を禁止する。
【0053】
モータジェネレータ温度がストール発進制御許可温度未満の場合に進むステップS27では、第2クラッチ温度(CL2温度)が、ストール発進制御許可温度未満であるか否か判定する。そして、第2クラッチ温度が、ストール発進制御許可温度未満の場合はステップS28に進み、ストール発進制御許可温度以上の場合はステップS30に進む。
すなわち、第2クラッチ5の温度がスリップ締結を行うのが好ましくない高温下では、ストール発進制御を禁止する。
【0054】
第2クラッチ温度がストール発進制御許可温度未満の場合に進むステップS28では、自動変速機3を含む動力伝達系温度がストール発進制御許可温度未満であるか否か判定する。そして、動力伝達系温度がストール発進制御許可温度未満の場合は、ステップS29に進み、ストール発進制御許可温度以上の場合はステップS30に進む。
【0055】
動力伝達系温度がストール発進制御許可温度未満の場合に進むステップS29では、エンジン温度がストール発進制御許可温度未満であるか否か判定する。そして、エンジン温度がストール発進制御許可温度未満の場合は、ステップS31に進み、ストール発進制御許可温度以上の場合はステップS30に進む。すなわち、エンジン1の温度が所定以上の高温下では、ストール発進制御を禁止する。
【0056】
ステップS24〜ステップS29の条件を満足する場合に進むステップS31では、ストール発進制御許可とし、タイマのカウントを開始する。なお、このタイマは、ストール発進制御の実行時間を所定時間以内に制限するためのもので、数秒程度の時間をカウントする。
【0057】
したがって、このストール発進制御許可の開始から、所定時間以内にブレーキOFFとなったら、アクセル開度に応じたエンジン目標トルク、モータ目標回転数、モータ目標トルク、目標伝達トルクとなるように制御する。ただし、エンジン目標トルクとモータ目標トルクと目標伝達トルクには、それぞれ、所定の変化率制限を与えるもので、後述する
図11におけるエンジン目標トルク、モータ目標トルク、目標伝達トルクの傾きがその変化率制限に応じた傾きである。
【0058】
また、ストール発進制御禁止と判定した場合、モータ目標回転、目標伝達トルク、発電時のモータ下限トルクを通常発進時の値に戻す。
しかし、ストール発進制御許可となって所定時間経過してもブレーキOFFしない場合、ストール発進制御許可が禁止となるが、その場合でもアクセルOFFとされなければ、目標発電トルクは通常の発電時のモータ下限トルクで発電を継続する(ステップS10)。一方、アクセルOFFとされた場合は、目標発電トルクも通常の値(通常発進時の値)に戻す(ステップS11)。
【0059】
(実施の形態1の作用)
次に、実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法および発進制御装置の作用を、
図11、
図12のタイムチャートに基づいて説明する。
ここで、
図11の動作例は、停車状態で運転者が加速操作を行ったのに応じてエンジン1を始動させつつ、同時に制動操作を行って、ストール発進制御を開始した後、制動操作を解除してストール発進を行った場合の動作例を示すタイムチャートである。
一方、
図12は、運転者が
図11と同様の加速操作および制動操作を行って、ストール発進制御許可とした後、所定時間が経過してストール発進許可を解除(禁止)した状態から制動操作を解除して、ストール発進を行った場合の動作例を示すタイムチャートである。
【0060】
まず、
図11に示すストール発進制御許可状態でのストール発進時の動作を説明する。
運転者は、t10の時点で、加速操作(アクセルON)を開始し、さらに、t11の時点で、制動操作(ブレーキON)を行い、t12の時点以降、加速操作(アクセルON)と制動操作(ブレーキON)とを同時に実行している。
【0061】
加速操作と制動操作とが同時に実行され、かつ、このt12の時点で、車速VSP≦0であることから、統合コントローラ20は、ストール発進制御許可と判定する。
なお、t12の時点で、同時に、バッテリSOC、バッテリ温度、モータジェネレータ温度、第2クラッチ温度、変速機温度、エンジン温度も所定の許可条件を満足しているものとする。以上、ステップS21→S32→S33→S24〜S29→S31の流れ。
【0062】
このストール発進制御許可との判定により、モータ目標回転数、目標発電トルク、モータ下限トルクを算出し(ステップS4)、この場合、モータ下限トルクは、
図11に示すように通常発進時のモータ下限トルクよりも絶対値を大きな値に設定する。また、目標発電トルクは、モータ下限トルクとする。
【0063】
さらに、第2クラッチ5の目標伝達トルクを、通常発進時よりも大きく設定する(ステップS5)。すなわち、第2クラッチ5を滑り締結させて、
図11に示すように、伝達トルクを生じさせる。このとき制動操作が行われており、車両は停車状態を維持し、また、この時の目標伝達トルクは、第2クラッチ5が過加熱されることのない値に設定する。
【0064】
したがって、エンジン目標トルクを、最大限得られる値である目標発電トルクと目標伝達トルクとの和に設定し(ステップS6)、このエンジン目標トルクが得られるエンジン目標回転数に設定する。この場合、
図11に示すように、エンジン目標トルクは、点線により示す通常発進時のエンジン目標トルク(エンジントルク指令)よりも高く設定するとともに、エンジン回転数も、点線により示す通常発進時のエンジン回転数よりも高く設定する。また、この時の目標エンジン回転数は、アクセル開度APOに応じた回転数ではなく、上述の目標発電トルクと目標伝達トルクとの和に応じたエンジン目標トルクが得られる回転数であり、例えば、1000〜2000rpmの範囲内程度の回転数である。
【0065】
その後、運転者は、t13の時点で、制動操作を解除(ブレーキOFF)し、ストール発進を行う。
この時、t13の時点以前に、エンジン回転数およびエンジントルクを立ち上げており、通常発進時よりも、エンジン1のスロットルが開いた状態となり、エンジン1内に多く空気を流入させることができる。
したがって、t13の時点で、ブレーキOFFとして加速する際に、エンジン1への吸入空気の応答性を高めることができ、エンジン1のトルク応答性が向上する。特に、本実施の形態1のエンジン1は排気による過給機(ターボチャージャ)1aを備えているため、過給機1aを備えないものよりも、よりトルク応答性を向上効果が一層期待できる。
【0066】
よって、
図11において実線により示すストール発進制御実行時の実エンジントルクが、図において点線により示す通常発進時の実エンジントルクよりも向上する。
この結果、車両の加速応答性が向上(例えば、20%程度)し、全開加速時間も向上(例えば、5%程度)することができる。すなわち、
図11に示すように、ストール発進制御実行時の加速度(実線により示す)は、点線により示す通常発進時の加速度よりも高くなる。
【0067】
一方、t12〜t13の時点では、エンジン回転数は、目標発電トルクと目標伝達トルクとの和に設定したエンジン目標トルクに応じた値としているため、第2クラッチ5における回転数差は、アクセルペダルを大きく踏み込んだ場合の回転数よりも低い。また、目標伝達トルクは、第2クラッチ5において、過剰な加熱が生じないトルクに設定している。
したがって、第2クラッチ5の発熱を、抑えることができる。
【0068】
さらに、t13の時点以前に第2クラッチ5は、伝達トルクを発生しているため、駆動輪7における駆動トルクである、第2クラッチ5の伝達トルクの応答性も向上でき、これにより、加速応答性をさらに向上可能である。すなわち、
図11に示すように、第2クラッチ5(発進クラッチ)の伝達トルク指令値(目標伝達トルク)を、通常発進時の伝達トルク指令値よりも高くすることができる。
【0069】
加えて、t13の時点で、第1クラッチ4を完全締結して発電を行うとともに、上述のように、第2クラッチ5において、トルク伝達を行っている。このため、エンジン1のトルク応答を、即座にモータジェネレータ2のトルク応答に切り替えることも可能であり、駆動トルクの応答性をさらに向上させ、加速応答性の向上を図ることができる。
なお、t14の時点で、予め設定された所定時間(数秒)が経過して、ストール発進制御は禁止判定する。
【0070】
次に、
図12に基づいて、ストール発進制御許可判定開始から、所定時間が経過してストール発進許可禁止判定とした後、ストール発進を行った場合の動作例について説明する。
【0071】
図11の動作例と同様に、t20の時点で、加速操作を開始すると共に、t21の時点で制動操作を開始し、t22の時点で、ストール発進制御許可と判定する。
この動作例では、その後、t22のストール発進制御許可との判定開始から、その継続時間(タイマのカウント値)が所定時間に達したt23の時点で、ストール発進制御禁止と判定し、タイマをリセットする(ステップS22→S30)の処理。
【0072】
このストール発進制御禁止判定に切り替わったt23の時点で、発電モータ下限トルクを、ストール発進制御時の値から通常発進時の値に戻し、目標発電トルクを発電モータ下限トルクとする(ステップS7)。
また、クラッチ目標伝達トルク=0に設定する(ステップS8)。
【0073】
さらに、このt23の時点では、加速操作および制動操作を行っている(アクセルONかつブレーキON)ことから、目標発電トルクを、ストール発進用発電トルクとしての通常発進時モータ下限トルクに設定する(ステップS10)。
【0074】
この場合、エンジン目標トルクは、目標発電トルクと目標伝達トルクとの和に設定するため、目標伝達トルクを通常発進時の値に低下した分だけ、エンジン目標トルクは低下する。しかしながら、目標発電トルクを、通常発進時の値とするよりも絶対値を大きく設定している分だけ、エンジン目標トルクは、
図12において点線により示す通常発進時の値よりも大きく設定し、その分、目標エンジン回転数も高く設定する。
【0075】
その後、運転者は、t24の時点で、制動操作を解除してストール発進を行う。
この場合、t24の時点以前に、目標エンジン回転数およびエンジン目標トルクを、通常発進時の値よりも大きく設定していることから、通常発進時よりも、エンジン1のスロットルが開いた状態となり、エンジン1内に多く空気を流入させることができる。
よって、エンジン1への吸入空気の応答を高めることができ、エンジン1のトルク応答が向上する。特に、本実施の形態1のエンジン1は過給機(ターボチャージャ)1aを備えているため、過給機1aを備えないものよりも、よりトルク応答性を向上できる。
また、この場合も、アクセル操作に応じた高回転としないため、クラッチ焼けが生じない。
【0076】
(実施の形態1の効果)
以下に、実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法および発進制御装置の効果を列挙する。
1)実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法は、
車両の動力源としてのエンジン1およびモータジェネレータ2と、
動力源と駆動輪7との間に設けられて、動力伝達を断接可能な発進クラッチとしての第2クラッチ5と、
を備えたハイブリッド車両において、
車両の停止時に、加速操作と制動操作とが同時に行われたストール発進操作を検出したら、第2クラッチ5の伝達トルクとモータジェネレータ2の発電トルクとの少なくとも一方を、制動操作を伴わずに発進する通常発進時よりも大きくし(ステップS4,S5)、エンジン1の目標回転数を、第2クラッチ5の伝達トルクとモータジェネレータ2の発電トルクとに応じたエンジントルクが得られる回転数とする(ステップS6)ことを特徴とする。
したがって、エンジン回転数を抑えつつ、エンジントルクは、通常発進時よりも大きくして、エンジン1への吸入空気の応答性を高めることができる。これにより、第2クラッチ5の発熱を抑えつつ、加速応答性を向上することが可能となる。
さらに、エンジン1は、排気により過給を行う過給機1aを備える。
このため、上記のエンジン1への吸入空気の応答性が、さらに高まり、加速応答性をさらに向上できる。
【0077】
2)実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法は、
エンジン1の目標回転数は、第2クラッチ5の伝達トルクとモータジェネレータ2の発電トルクとを足し合わせた値のエンジントルクが得られる回転数とすることを特徴とする。
したがって、第2クラッチ5において許容される伝達トルクと、モータジェネレータ2において許容される発電トルクの範囲内で、最大のエンジントルクを得ることができる。これにより、エンジン1への吸入空気の応答性をいっそう高め、エンジン1のトルク応答性をいっそう向上することができる。
また、
【0078】
3)実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法は、
発電トルクを通常発進時よりも大きくするのにあたり、発電トルクの下限値(モータ下限トルク)を通常発進時よりも引き下げる(ステップS4)ことを特徴とする。
発電トルクの下限値を引き下げることにより、過剰な発電を抑えることができる。
【0079】
4)実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法は、
ストール発進操作の検出に応じた、伝達トルクと発電トルクとの少なくとも一方、および目標回転数の制御は、
ストール発進操作の検出後、所定のストール発進制御許可条件が成立した場合に行う(
図10の処理)ことを特徴とする。
よって、ストール発進操作の検出時に、常に、伝達トルク、発電トルク、目標回転数を大きくする制御を行うものと比較して、これらを大きくする場合に不具合が生じることを抑制することができる。
【0080】
5)実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法は、
所定のストール発進制御許可条件には、モータジェネレータ2の電源である強電バッテリ9の残容量、強電バッテリ9の入力制限、強電バッテリ9の温度、モータジェネレータ2の温度、第2クラッチ5を有する自動変速機3を含む動力伝達系の温度、エンジン1の温度の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
したがって、上記条件のいずれかが、目標回転数と伝達トルクと発電トルクとのいずれかあるいは全てを大きくすると不具合が生じる場合に、これを回避することが可能となる。
【0081】
6)実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法は、
ストール発進制御許可条件が成立してからの経過時間が所定時間を越えた場合には、ストール発進制御を禁止する(ステップS23→S30))ことを特徴とする。
モータジェネレータ2を、高トルクで動作させるとコイル温度等の温度が上昇し、許容温度を超えてしまう。
ストール発進制御許可条件が成立し、所定時間を越えるとストール発進制御を禁止することにより、モータジェネレータ2の高トルク動作時間を制限し、ストール発進制御を行ってもモータジェネレータ2の温度上昇を抑えることができ、モータジェネレータ2の耐久性向上と加速応答性向上とを両立することができる。
また、発進クラッチとしての第2クラッチ5の発熱はクラッチ前後の差回転とクラッチ伝達トルクとの掛け算で決まる。このため、クラッチ伝達トルクを有る程度大きくした状態を長時間継続すると第2クラッチ5の発熱が大きくなるが、これを所定時間に制限することで、クラッチ温度の発熱を抑え、第2クラッチ5の耐久力向上と加速応答性向上とを両立することができる。
【0082】
7)実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法は、
ストール発進制御許可条件が成立後、加速操作が終了した際にはストール発進制御を禁止する(ステップS32→S34)ことを特徴とする。
したがって、ストール発進制御を加速操作終了後も継続することによるモータジェネレータ2の耐久力低下や、第2クラッチ5の耐久性低下を抑制でき、上記6)と同様の効果を奏する。
【0083】
8)実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法は、
ストール発進制御許可条件が満たされない場合であって、通常発進の操作が検出されない場合、目標回転数、伝達トルク、モータ下限トルクを通常発進時の所定の値としつつ、発電トルクを加速操作が終了するまでモータ下限トルクとする(ステップS9→S10)ことを特徴とする。
したがって、ストール発進制御禁止となった際に、モータジェネレータ2によりモータ下限トルクまでの発電を許可することで、その分、エンジントルクを確保し、上記1)の効果を得ることができる。
【0084】
9)実施の形態1のハイブリッド車両の発進制御方法は、
動力源としてのエンジン1およびモータジェネレータ2と、
動力源と駆動輪7との間に設けられて、動力伝達を断接可能な発進クラッチとしての第2クラッチ5と、
運転者による加速操作および制動操作を検出する検出装置としてのアクセル開度センサ17、ブレーキ開度センサ23と、
この検出に基づいて、エンジン1、モータジェネレータ2、第2クラッチ5の作動を制御する統合コントローラ20と、
を備えたハイブリッド車両の発進制御装置において、
統合コントローラ20は、加速操作と制動操作とが同時に行われた停車状態から発進するストール発進操作が検出されたら、第2クラッチ5の伝達トルクとモータジェネレータ2の発電トルクとの少なくとも一方を、制動操作を伴わずに発進する通常発進時よりも大きくし、エンジン1の目標回転数を、伝達トルクと発電トルクとに応じたエンジントルクが得られる回転数とする処理を実行することを特徴とする。
したがって、上記1)と同様の効果を奏する。
【0085】
以上、本発明のハイブリッド車両の発進制御方法および発進制御装置を実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0086】
例えば、実施の形態では、本発明のハイブリッド車両の発進制御方法および発進制御装置を、後輪駆動のハイブリッド車両への適用した例を示した。しかし、本発明のハイブリッド車両の発進制御方法および発進制御装置は、前輪駆動や4輪駆動のハイブリッド車両にも適用することができる。
また、実施の形態では、エンジンとモータジェネレータとの間に第1クラッチを備える例を示したが、これに限定されず、第1クラッチを省略して、エンジンとモータジェネレータとを直結してもよい。
【0087】
また、実施の形態では、ストール発進制御時のエンジン目標回転数を、エンジン目標トルクが、目標伝達トルクと目標発電トルクとの和が最大となる値に設定した例を示したが、これに限定されない。例えば、エンジントルクは、目標伝達トルクと目標発電トルクとの和の範囲内であれば、前記和が最大となる値よりも小さな値としてもよい。この場合、発進クラッチ(第2クラッチ)の発熱をより抑えることができる。あるいは、エンジントルクは、発進クラッチが過加熱となることを防止できる範囲で、前記和よりも多少大きな値としてもよい。この場合、加速応答性がより向上する。
また、実施の形態では、ストール発進制御時には、発進クラッチ(第2クラッチ)の伝達トルクと、モータジェネレータの発電トルクとの両方を通常発進時よりも大きくするようにしたが、これに限定されず、いずれか一方のみを大きくしてもよい。