特許第6575237号(P6575237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575237
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】ゴム組成物および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20190909BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20190909BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20190909BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190909BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20190909BHJP
   C08C 19/28 20060101ALI20190909BHJP
   C08C 19/36 20060101ALI20190909BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   C08L15/00
   C08L21/00
   C08K5/17
   C08K3/36
   C08K3/013
   C08C19/28
   C08C19/36
   B60C1/00 Z
   B60C1/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-170867(P2015-170867)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2016-74881(P2016-74881A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2018年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-205527(P2014-205527)
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 秀一朗
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−177539(JP,A)
【文献】 特開2013−253139(JP,A)
【文献】 特表2012−532946(JP,A)
【文献】 米国特許第04616068(US,A)
【文献】 特開平04−011501(JP,A)
【文献】 国際公開第95/021202(WO,A1)
【文献】 特開2006−270100(JP,A)
【文献】 特開昭60−139633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C08C 19/00−19/44
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン化合物および芳香族ビニル化合物の重合体を、エステル基および/またはカルボキシル基を有する化合物で変性した重合体混合物と、テトラアミン類と、シリカとを含み、
前記重合体混合物の重量平均分子量が1.0×103〜1.0×105であり、
前記テトラアミン類が、下記式(I)
【化1】
(式中、RA、RB、RC、RD、RE、RF、RGおよびRHは、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し、ALKは、4価の脂肪族炭化水素基を表す。)
で示される化合物である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記重合体混合物が、主鎖が変性された変性重合体を含むものである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分100質量部に対して、前記重合体混合物の含有量が0.5〜100質量部であり、シリカの含有量が5〜150質量部である、請求項1または2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記重合体混合物が、下記式(1)で表される変性基を有する変性重合体を含むものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【化2】
(式中、Aは単結合手または2価の飽和若しくは不飽和炭化水素基を表す。R1はOR4または下記式(2)を表す。R4は水素原子または1価の飽和若しくは不飽和炭化水素基を表す。)
【化3】
(式中、Bは2価の飽和若しくは不飽和炭化水素基を表す。R5は水素原子または1価の飽和若しくは不飽和炭化水素基を表す。)
【請求項5】
前記Aが、下記式(3)
【化4】
(式中、mは0〜6の整数を表す。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜2の炭化水素基またはアリール基を表す。)で表され、前記Bが、下記式(4)〜(7)
【化5】
(式中、nは2〜3の整数を表す。R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基を表す。R8は、水素原子またはメチル基を表す。R9は、水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を表す。)のいずれかで表される、請求項4記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記重合体混合物が、該重合体混合物を構成する重合体1分子あたり、前記変性基を平均0.1個以上有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記重合体混合物を構成する重合体が、スチレンブタジエン重合体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記スチレンブタジエン重合体のスチレン含有量が、5〜45質量%である、請求項7記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のゴム組成物からなる、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて作製した、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年省資源、省エネルギー、加えて、環境保護の立場から、排出炭酸ガスの低減に対する社会的要求が強まっている。自動車に対しても排出炭酸ガスの低減を目的として、自動車の軽量化、電気エネルギーの利用などの様々な対応策が検討されている。
【0003】
自動車共通の課題として、タイヤの転がり抵抗改善による低燃費性の向上が必要とされ、更に走行時の安全性や耐久性向上の要求も強まっている。これらの特性はタイヤ性能に依存するところが大きいため、自動車用タイヤの低燃費性、ウェットグリップ性能、操縦安定性、耐久性(耐摩耗性など)の改善要求が強まっている。タイヤ性能は、タイヤの構造・使用材料など種々の要素に左右され、特に路面に接するトレッド部分のゴム組成物の性能に大きく左右されるため、トレッドなどのタイヤ用ゴム組成物の技術的改良が広く検討され、実用化されている。
【0004】
ゴム組成物の低燃費性やウェットグリップ性能を改善する目的で、補強用充填剤としてシリカが広く使用されているが、カーボンブラックに比べて補強性が低いため、耐摩耗性などの耐久性が悪化するという問題がある。このような問題に対し、例えば、特許文献1には、シリカ配合のゴム組成物において、ゴム成分として変性ブタジエンを使用する技術が、また特許文献2には、ゴム組成物を構成する成分として変性スチレンブタジエン共重合体を使用する技術が開示されているが、更なる性能の改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−344955号公報
【特許文献2】特開2013−177539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、補強用充填剤としてシリカを使用する場合において、低燃費性を損なうことなく耐摩耗性をより一層向上させることのできるゴム組成物、および、それを用いた空気入りタイヤを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物の重合体をエステル基および/またはカルボキシル基を有する化合物により変性して得られる所定の重合体混合物とシリカとを含むゴム組成物に、所定のテトラアミン類をさらに配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を重ねて、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物の重合体を、エステル基および/またはカルボキシル基を有する化合物で変性した重合体混合物と、テトラアミン類と、シリカとを含み、
前記重合体混合物の重量平均分子量が1.0×103〜1.0×105、好ましくは2.0×103〜1.0×104、より好ましくは4.0×103〜6.0×103であり、
前記テトラアミン類が、下記式(I)
【0009】
【化1】
(式中、RA、RB、RC、RD、RE、RF、RGおよびRHは、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し、ALKは、4価の脂肪族炭化水素基を表す。)
で示される化合物である、ゴム組成物、
[2]前記重合体混合物が、主鎖が変性された変性重合体を含むものである、上記[1]に記載のゴム組成物、
[3]ゴム成分100質量部に対して、前記重合体混合物の含有量が0.5〜100質量部、好ましくは3〜100質量部、より好ましくは10〜25質量部であり、シリカの含有量が5〜150質量部、好ましくは15〜100質量部、より好ましくは30〜75質量部である、上記[1]または[2]記載のゴム組成物、
[4]前記重合体混合物が、下記式(1)で表される変性基を有する変性重合体を含むものである、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のゴム組成物、
【0010】
【化2】
(式中、Aは単結合手または2価の飽和若しくは不飽和炭化水素基を表す。R1はOR4または下記式(2)を表す。R4は水素原子または1価の飽和若しくは不飽和炭化水素基を表す。)
【0011】
【化3】
(式中、Bは2価の飽和若しくは不飽和炭化水素基を表す。R5は水素原子または1価の飽和若しくは不飽和炭化水素基を表す。)
[5]前記Aが、下記式(3)
【0012】
【化4】
(式中、mは0〜6の整数を表す。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜2の炭化水素基またはアリール基を表す。)で表され、前記Bが、下記式(4)〜(7)
【0013】
【化5】
(式中、nは2〜3の整数を表す。R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基を表す。R8は、水素原子またはメチル基を表す。R9は、水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を表す。)のいずれかで表される、上記[4]記載のゴム組成物、
[6]前記重合体混合物が、該重合体混合物を構成する重合体1分子あたり、前記変性基を平均0.1個以上有する上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載のゴム組成物、
[7]前記重合体混合物を構成する重合体が、スチレン重合体、ブタジエン重合体またはスチレンブタジエン重合体である、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載のゴム組成物、
[8]前記スチレンブタジエン重合体のスチレン含有量が、5〜45質量%、好ましくは10〜35質量%である、上記[7]記載のゴム組成物、
[9]上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載のゴム組成物からなる、タイヤ用ゴム組成物、
[10]上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて作製した、空気入りタイヤ、に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、補強用充填剤としてシリカを使用する場合において、低燃費性を損なうことなく耐摩耗性をより一層向上させることのできるゴム組成物、とりわけタイヤ用ゴム組成物、および、それを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、
共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物の重合体を、エステル基および/またはカルボキシル基を有する化合物で変性した重合体混合物と、テトラアミン類と、シリカとを含み、
前記重合体混合物の重量平均分子量が1.0×103〜1.0×105であり、
前記テトラアミン類が、下記式(I)
【0016】
【化6】
(式中、RA、RB、RC、RD、RE、RF、RGおよびRHは、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し、ALKは、4価の脂肪族炭化水素基を表す。)
で示される化合物である、
ゴム組成物である。
【0017】
(重合体混合物)
上記重合体混合物は、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物の重合体の一部または全部に、エステル基および/またはカルボキシル基を有する化合物(変性剤)を反応させて得られるものであって、該変性剤との反応生成物である変性重合体と、任意に該変性剤と未反応の非変性重合体とを含む混合物であって、かつ、該重合体混合物は所定の重量平均分子量を有している。
【0018】
上記共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物の重合体としては、良好な低燃費性、耐摩耗性が得られるという理由から、共役ジエン化合物および芳香族ビニル化合物の共重合体が好ましい。
【0019】
共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用面の観点から1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
【0020】
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、モノマーの入手容易性など実用面の観点からスチレンが特に好ましい。
【0021】
上記重合体混合物は、例えば、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物を重合して得られた重合体の末端の一部若しくは全部または重合体の主鎖に対して、上記変性剤を反応させることで製造することができる。具体的な製造方法は、例えば、以下のとおりである。
【0022】
共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物を重合する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を使用できる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物を、有機リチウム化合物を重合開始剤として、必要に応じてランダマイザーの存在下でアニオン重合する方法などが挙げられる。
【0023】
炭化水素系溶剤は、特に限定されないが、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。
【0024】
有機リチウム化合物としては、炭素数2〜20のアルキル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられるが、これらの中で、入手容易性、安全性などの観点からn−ブチルリチウムまたはsec−ブチルリチウムが好ましい。
【0025】
また、上記ランダマイザーとは、共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御(例えば、ブタジエンにおける1,2−結合の増加など)や、共重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御(例えば、ブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化など)などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを用いることができる。例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類および第三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。
【0026】
ランダマイザーの使用量は、重合開始剤1モル当たり、0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましい。ランダマイザーの使用量が0.01モル当量未満では、添加効果が小さく、ランダム化しにくい傾向がある。また、ランダマイザーの使用量は、重合開始剤1モル当たり1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。ランダマイザーの使用量が1000モル当量を超えると、モノマーの反応速度が大きく変化してしまい、逆にランダム化しにくくなる傾向がある。
【0027】
重合の方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に重合体の設計の自由度、加工性などの観点から溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式および連続式のいずれであってもよい。
【0028】
溶液重合法を用いた場合には、溶液中のモノマー濃度(共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物などの合計)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。溶液中のモノマー濃度が5質量%未満では、得られる共重合体の量が少なく、高コストになる傾向がある。また、溶液中のモノマー濃度は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。溶液中のモノマー濃度が50質量%を超えると、溶液粘度が高くなりすぎて撹拌が困難となり、重合しにくくなる傾向がある。
【0029】
次いで、上記で得られた重合体を、エステル基および/またはカルボキシル基を有する化合物(変性剤)により変性することにより重合体混合物が得られる。
【0030】
エステル基および/またはカルボキシル基を有する化合物のエステル基は、−O−C(=O)−Rまたは−C(=O)−O−R(R:1価の飽和または不飽和炭化水素基)で表される基、カルボキシル基は−C(=O)−O−Hで表される基である。
【0031】
変性剤は、官能基として、エステル基および/またはカルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸i−プロピル、ブロモ酢酸t−ブチル、ブロモ酢酸ベンジル、2−メチルブロモ酢酸ブチル、2−メチルブロモ酢酸t−ブチル、2,2−ジメチルブロモ酢酸エチル、2,2−ジメチルブロモ酢酸t−ブチル、2−ジエチルブロモ酢酸エチル、2−フェニルブロモ酢酸メチル、3−ブロモプロパン酸メチル、3−ブロモプロパン酸エチル、2−メチル−3−ブロモプロパン酸メチル、4−ブロモブタン酸メチル、4−ブロモブタン酸エチル、2−メチル−4−タロローブタン酸メチル、6−ブロモヘキサン酸エチル、5−ブロモペンタン酸エチル、シアノギ酸メチル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸i−プロピル、クロロギ酸i−ブチル、クロロギ酸t−ブチル、クロロギ酸ペンチル、クロロギ酸ヘキシル、クロロギ酸ヘブチル、クロロギ酸オクチル、クロロギ酸デシル、クロロギ酸ドデシル、クロロギ酸ヘキサデシル、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸ベンジル、無水コハク酸、ブチルコハク酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、デシルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ヘキサデシルコハク酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、オクタデシルコハク酸無水物、n−オクチルコハク酸無水物、n−テトラデシルコハク酸無水物、グルタル酸無水物、1,1−シクロペンタン二酢酸無水物、3,3−ジメチルグルタル酸無水物、2,2−ジメチルグルタル酸無水物、3−メチルグルタル酸無水物、4−tert−ブチルフタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、3−メチルフタル酸無水物、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などが挙げられる。なかでもアクリル酸t−ブチル、シアノギ酸メチル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水マレイン酸が好ましい。
【0032】
上記化合物による変性方法としては特に限定されず、例えば、上記重合体と上記化合物とを接触させる方法などが挙げられる。例えば、前述のアニオン重合により作製された活性末端を有する重合体の溶液に、所定の変性剤を添加し、所定温度で所定時間攪拌することにより、重合体の末端の一部または全部を変性させることができる。あるいは、前述のアニオン重合により作製された活性末端を有する重合体の溶液に、所定の反応停止剤を添加して一度反応を停止させ重合体を得た後に、再びラジカル開始剤などの試薬で処理し、所定の変性剤を添加し、所定温度で所定時間撹拌することにより、重合体の主鎖の一部または全部を変性させることができる。こうして、変性重合体を含む重合体混合物を調製することができる。本発明においては、重合体の主鎖を変性することがより好ましい。
【0033】
上記変性反応において、変性剤の添加量は、良好に変性できるという点から、重合体100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0034】
上記変性反応の温度、時間は、適宜設定できるが、通常、0〜50℃(好ましくは20〜40℃)、5分〜6時間である。撹拌方法は特に限定されず、公知の方法で実施できる。なお、通常、変性後に重合反応を停止する目的で、水、アルコール、酸などを混合する。さらに必要に応じて公知の老化防止剤を混合してもよい。こうして得られる混合物を乾燥することにより、重合体混合物を得ることができる。
【0035】
上記により得られる重合体混合物としては、変性剤(エステル基および/またはカルボキシル基を有する化合物)に由来する下記式(1)で表される変性基を有する変性重合体、または該変性重合体の二量体や三量体などの多量体を含むものが挙げられる。
【0036】
【化7】
(式中、Aは単結合手または2価の飽和若しくは不飽和炭化水素基を表す。R1はOR4または下記式(2)を表す。R4は水素原子または1価の飽和または不飽和炭化水素基を表す。)
【0037】
【化8】
(式中、Bは2価の飽和若しくは不飽和炭化水素基を表す。R5は水素原子または1価の飽和または不飽和炭化水素基を表す。)
【0038】
Aは、単結合手または2価の飽和若しくは不飽和炭化水素基であれば特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基などが挙げられる。なかでも、優れた低燃費性、耐摩耗性が得られるという理由から、下記式(3)で表される基が好ましい。
【0039】
【化9】
(式中、mは0〜6の整数を表す。R2、R3は同一または異なって、水素原子、炭素数1〜2の炭化水素基またはアリール基を表す。)
【0040】
式中、mは0〜6の整数を表し、好ましくは0〜2である。
【0041】
2およびR3の炭素数1〜2の炭化水素基としては、メチル基、エチル基などが挙げられ、R2およびR3のアリール基としては、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。
【0042】
4の1価の飽和または不飽和炭化水素基は特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基などが挙げられる。なかでも、炭素数1〜16の炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などのアルキル基;フェニル基、ベンジル基などのアリール基;などが挙げられる。
【0043】
Bは、2価の飽和若しくは不飽和炭化水素基であれば特に限定されず、このような例としては、例えば、Aと同様のものが挙げられる。なかでも、下記式(4)〜(7)のいずれかで表される基が好ましく、(5)または(7)がより好ましく、(5)が更に好ましい。
【0044】
【化10】
(式中、nは2〜3の整数を表す。R6、R7は同一または異なって、水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基を表す。R8は水素原子またはメチル基を表す。R9は水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を表す。)
【0045】
6およびR7の炭素数1〜18の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などのアルキル基;フェニル基、ベンジル基などのアリール基;などが挙げられる。
【0046】
8としては、メチル基が好ましい。
【0047】
9の炭素数1〜4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
【0048】
5の1価の飽和または不飽和炭化水素基は特に限定されず、R4の炭化水素基と同様のものが挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素数1〜6の炭化水素基が列挙される。R5としては、水素原子が好ましい。
【0049】
例えば、変性剤(エステル基および/またはカルボキシル基を有する化合物)として、シアノギ酸メチルを用いると、下記式(8)で表される変性基を有する変性重合体を得ることができる。また、アクリル酸t−ブチルを用いると下記式(9)で表される変性基、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いると下記式(10)、(11)で表される変性基、無水マレイン酸用いると下記式(12)で表される変性基を有する変性重合体を得ることができる。なお、下記式においてEは前記変性重合体の残部を表し、変性基部分を除く共役ジエン化合物および/または芳香族ビニル化合物の重合体由来の部分である。
【0050】
【化11】
【0051】
上記で得られた重合体混合物は、該混合物を構成する重合体1分子あたり、前述の変性基を平均0.1個以上有すること、すなわち重合体混合物を構成する全重合体中の10%以上が前述の化合物により変性された変性重合体であることが好ましい。なお、本明細書において、重合体1分子あたりの上記変性基の平均個数(変性基含有量)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0052】
重合体混合物の重量平均分子量(Mw)は1.0×103以上、好ましくは2.0×103以上、より好ましくは4.0×103以上である。Mwが1.0×103未満では、ヒステリシスロスが大きく充分な低燃費性が得られにくいだけでなく、耐摩耗性も低下する上、ブリードアウトする傾向がある。該Mwは1.0×105以下、好ましくは1.0×104以下、より好ましくは6.0×103以下である。Mwが1.0×105を超えると、加工性の悪化が懸念される。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0053】
重合体混合物のスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。スチレン含有量が5質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。該スチレン含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。スチレン含有量が45質量%を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。なお、本明細書において、スチレン含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0054】
重合体混合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。重合体混合物の各含有量が0.5質量部未満であると、低燃費性、耐摩耗性を充分に改善できないおそれがある。100質量部を超えると、ブリードアウトする上にコストが高くなる傾向がある。
【0055】
(ゴム成分)
本発明で使用できるゴム成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)などのジエン系ゴムなどが挙げられる。なかでも、グリップ性能、耐摩耗性がバランスよく得られるという理由から、NR、BR、SBRが好ましく、SBRがより好ましい。なお、NR、SBRの併用、BR、SBRの併用、NR、BR、SBRの併用も好適である。
【0056】
SBRとしては、特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)などを使用できる。なかでも、低燃費性、耐摩耗性を良好に改善できるという点から、S−SBRが好ましい。
【0057】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、該スチレン含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。該スチレン含有量が上記範囲内であると、良好な低燃費性、耐摩耗性が得られる。なお、本明細書において、スチレン含有量は、後述の実施例記載の方法と同様にして測定される。
【0058】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、低燃費性、耐摩耗性がバランスよく得られるという理由から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0059】
(テトラアミン類)
テトラアミン類としては、下記式(I)
【0060】
【化12】
(式中、RA、RB、RC、RD、RE、RF、RGおよびRHは、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し、ALKは、4価の脂肪族炭化水素基を表す。)
で示される化合物を使用することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
上記において、アルキル基とは、直鎖または分岐鎖のいずれのものをも含む意味であり、炭素数1〜6のものが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のもの、さらに好ましくは炭素数1のものである。また、4価の脂肪族炭化水素基とは、鎖式または環式である、非芳香族性の炭化水素から水素原子が4つとれた基をいう。この場合において、鎖式炭化水素とは、直鎖若しくは分岐鎖および飽和もしくは不飽和のいずれのものも含む意味であり、環式炭化水素とは飽和若しくは不飽和のいずれのものも含む意味である。また、脂肪族炭化水素とは、鎖式炭化水素と環式炭化水素の組み合わせからなる炭化水素も含む意味である。脂肪族炭化水素を構成する炭素の数は、1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、さらに好ましくは1〜2であり、最も好ましくは2である。
【0062】
テトラアミン類(I)において、RA、RB、RC、RD、REまたはRFは、メチル基であることが好ましい。
【0063】
テトラアミン類(I)の具体例としては、
【0064】
【化13】
すなわち、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン;
【0065】
【化14】
すなわち、テトラキス(ジメチルアミノ)エタン;
【0066】
【化15】
すなわち、テトラアミノメタンなどが挙げられる。このうち、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレンが好ましい。
【0067】
テトラアミン類(I)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上が更に好ましい。0.1質量部未満では加硫速度が遅く、加硫工程における生産性が悪化する傾向がある。一方、該含有量は、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。20質量部を超えると加硫速度が速くなり過ぎて、押出し工程における生産性が悪化する傾向がある。
【0068】
(シリカ)
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0069】
シリカのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましく、150m2/g以上が更に好ましい。50m2/g未満では、補強効果が小さく、充分な耐摩耗性が得られない傾向がある。また、該N2SAは、300m2/g以下が好ましく、250m2/g以下がより好ましく、200m2/g以下が更に好ましい。300m2/gを超えると、シリカの分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し低燃費性が低下する傾向がある。なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
【0070】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。5質量部未満であると、補強性が小さいため十分な耐屈曲疲労性、耐摩耗性が得られにくい傾向がある。該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。150質量部を超えると、加工性や分散性が悪く、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0071】
(シランカップリング剤)
本発明のゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好ましい。シランカップリング剤の含有量はシリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは4質量部以上である。1質量部未満では、未加硫ゴム組成物の粘度が高く加工性が悪くなる傾向がある。該含有量は好ましくは20質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、配合量ほどのシランカップリング剤の配合効果が得られず、コストが高くなる傾向がある。
【0072】
(その他の配合剤)
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック、各種老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、加硫剤、加硫促進剤、オイルなどを適宜配合できる。
【0073】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、含まなくてもよい。
【0074】
(ゴム組成物の製造)
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造できる。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に好適に使用できるが、低燃費性に与える寄与率が大きいという理由から、トレッド、サイドウォールがより好適であり、耐摩耗性に与える寄与率も大きいとの理由から、トレッドが更に好適である。
【0075】
<空気入りタイヤ>
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。これに空気を入れて、空気入りタイヤを得ることができる。
【実施例】
【0076】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0077】
<製造例>
以下、合成、重合時に用いた各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は、必要に応じて、常法に従い精製を行った。
n−ヘキサン:関東化学(株)製
1,3−ブタジエン:高千穂化学工業(株)製
スチレン:関東化学(株)製
TMEDA:テトラメチルエチレンジアミン、関東化学(株)製
1.6M BuLi:1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液、関東化学(株)製
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製
AIBN:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)
変性剤(1):東京化成工業(株)製の無水マレイン酸
【0078】
製造例1(重合体(1)〜(4)の合成)
十分に窒素置換した撹拌翼つきの3Lオートクレーブに、表1の仕込み量にしたがい、n−ヘキサン、1,3−ブタジエン、スチレン、テトラメチルエチレンジアミンを投入し、オートクレーブ内の温度を25℃に調整した。次に、1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液を加えて昇温条件下(30℃)で60分間重合し、モノマーの転化率が99%であることを確認した後、得られた反応溶液をメタノールで処理し、老化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを1.5g加え、乾燥して、重合体(スチレンブタジエン共重合体)(1)〜(4)を得た。
【0079】
製造例2(重合体混合物(1)〜(12)の合成)
表2の仕込み量にしたがい、上記で得られた重合体(1)〜(4)、n−キサン、AIBNをフラスコに加え、フラスコ内の温度を60℃に調整した。次に、該フラスコに、変性剤(1)(無水マレイン酸)を加え、1時間撹拌した後、得られた反応溶液をメタノールで処理し、老化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを1.5g加え、乾燥して、重合体混合物(変性スチレンブタジエン共重合体)(1)〜(12)を得た。
【0080】
得られた重合体および重合体混合物について、下記の評価を行った。結果を表1〜2に示す。
【0081】
(スチレン含有量の測定)
25℃にてJEOL JNM−A 400NMR装置を用いて1H−NMRを測定し、そのスペクトルより求めた6.5〜7.2ppmのスチレン単位に基づくフェニルプロトンと4.9〜5.4ppmのブタジエン単位に基づくビニルプロトンの比からスチレン含有量を決定した。
【0082】
(重量平均分子量Mwの測定)
重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0083】
(変性基含有量の測定)
1分子あたりの変性基含有量の測定:滴定試験
試料:重合体混合物(1)〜(12)
KOH 0.1gを秤量し、100mLのメスフラスコに加え、標線までMeOHを注ぎ、KOH溶液を調製した。次いで、試料0.5gを量り取りトルエン30mLに溶解させて調製した試料溶液にフェノールフタレインを一滴加えた。この溶液に、先に調製したKOH溶液を滴下して、滴定試験を行った。計算によって導かれる酸濃度を変性基含有量とした。
【0084】
(製造例1)
【表1】
【0085】
(製造例2)
【表2】
【0086】
<実施例および比較例>
以下に、実施例および比較例で用いた各種薬品について説明する。
SBR:日本ゼオン(株)製のNS116(スチレン含有量:22質量%、ビニル含有量:65質%)
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
重合体(1)〜(3):製造例1で合成したもの
重合体混合物(1)〜(12):製造例2で合成したもの
テトラアミン類(1):テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン、東京化成(株)製
【0087】
表3に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の材料を混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫して加硫物を得た。また、上記未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫し、試験用タイヤ(サイズ195/65R15)を製造した。得られた加硫物、試験用タイヤを下記により評価し、結果を表3に示した。
【0088】
(耐摩耗性指数)
ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%および試験時間2分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。更に、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例1の容積損失量を100として、下記計算式により、各配合(加硫物)の容積損失量を指数表示した。なお、ランボーン摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(比較例1の容積損失量)/(各配合の容積損失量)×100
【0089】
(低燃費性指数(1))
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(加硫物)の損失正接(tanδ)を測定し、比較例1の低燃費性指数を100として、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど低燃費性に優れることを示す。
(低燃費性指数(1))=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0090】
(低燃費性指数(2))
転がり抵抗試験機を用いて、得られた試験用タイヤを、リム15×6JJ、タイヤ内圧230kPa、荷重3.43kNおよび速度80km/hの条件下で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1の低燃費性指数を100とし、下記計算式により、各配合の転がり抵抗を指数表示した。なお、指数大きいほど、転がり抵抗が低減され、低燃費性に優れることを示す。
(低燃費性指数(2))=(比較例1の転がり抵抗)/(各配合の転がり抵抗)×100
【0091】
【表3】
【0092】
表3に示されるとおり、重合体混合物(1)〜(12)と、テトラアミン類と、シリカとを用いた実施例1〜12では、耐摩耗性が著しく向上する上に、低燃費性も高いレベルで維持されている。一方、変性されていない重合体(1)〜(3)と、シリカとを用いた比較例1〜3(テトラアミン類を用いず)では、耐摩耗性は向上せず、低燃費性もそれ程向上しない。さらにこのような配合において、さらにテトラアミン類を加えてみても(比較例4)、耐摩耗性が多少に向上するだけで、逆に、低燃費性が大幅に悪化する。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、補強用充填剤としてシリカを使用する場合においても、低燃費性を損なうことなく耐摩耗性をより一層向上させることのできるゴム組成物、とりわけタイヤ用ゴム組成物、および、それを用いた空気入りタイヤを提供することができる。