(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加熱温度に応じて複数の異なる発色をする印刷媒体と、前記印刷媒体を移動しながら所定の温度を印加して発色させ印刷するサーマルヘッドと、を有する印刷装置において、
前記異なる発色の内の一方の発色による印刷を、前記印刷媒体を第1の印刷方向に移動する際に行う第1の印刷手段と、
前記異なる発色の内の他方の発色による印刷を、前記印刷媒体を前記第1の印刷方向とは逆方向である第2の印刷方向に移動する際に行う印刷又は前記第2の印刷方向に移動した後で再度前記第1の印刷方向に移動する際に行う第2の印刷手段と、
前記印刷媒体の幅方向同列に異なる発色による印刷を行う混在領域が存在する場合、前記第1の印刷手段と前記第2の印刷手段により、前記一方の発色による印刷と、前記他方の発色による印刷とを別々のタイミングで行うように、前記サーマルヘッドを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記印刷媒体へ印刷すべき情報がデータ化された印刷データに基づいて印刷処理を制御し、前記印刷データ内に、一切の印刷を行わない無印刷領域があると判断した場合、少なくとも、前記無印刷領域を搬送するのに要する時間を前記印刷データに基づいて算出し、前記第2の印刷方向への移動回数を制御することを特徴とする印刷装置。
前記制御手段は、前記第1の印刷方向に移動する際の印刷が、前記第2の印刷方向に移動する際の印刷又は前記再度第1の印刷方向に移動する際の印刷よりも、前記サーマルヘッドによる印加温度を高く制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サーマルヘッドの複数併設した発熱体の発熱温度を各部で異ならせてラベルに異なる発色を行わせるような場合は、サーマルヘッドの発熱体の異なる発熱温度となる境界の部分において、前記異なる発熱温度の中間温度が生じてしまい、その部分の発色が不十分で見栄えの悪い状態になることがあった。例えば後述する
図8に示すラベルにおいて、中間付近の列R4中の「消費期限」と「加工日時」が黒色、「15 9.8 03時」と「15 9.7 03時」が赤色であるとした場合、隣接している「限」と「1」の部分や、「時」と「1」の部分で、黒色でも赤色でもない中間色の不鮮明な発色が生じる恐れがあった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、印刷媒体に異なる色の印刷を行う場合であっても、各色の発色が良く、見栄えの良い印刷を行うことができ、また異なる色の印刷をスムーズに効率よく行うことができる印刷装置及び印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、加熱温度に応じて複数の異なる発色をする印刷媒体と、前記印刷媒体を移動しながら所定の温度を印加して発色させ印刷するサーマルヘッドと、を有する印刷装置において、
前記異なる発色の内の一方の発色による印刷を、前記印刷媒体を第1の印刷方向に移動する際に行う第1の印刷手段と、前記異なる発色の内の他方の発色による印刷を、前記印刷媒体を前記第1の印刷方向とは逆方向である第2の印刷方向に移動する際に行う印刷又は前記第2の印刷方向に移動した後で再度前記第1の印刷方向に移動する際に行う第2の印刷手段と、前記印刷媒体の幅方向同列に異なる発色による印刷を行う混在領域
が存在する場合、前記第1の印刷手段と前記第2の印刷手段により、前記一方の発色による印刷と、
前記他方の発色による印刷とを別々のタイミングで行うように、前記サーマルヘッドを制御する制御手段
とを備え、前記制御手段は、前記印刷媒体へ印刷すべき情報がデータ化された印刷データに基づいて印刷処理を制御し、前記印刷データ内に、一切の印刷を行わない無印刷領域があると判断した場合、少なくとも、前記無印刷領域を搬送するのに要する時間を前記印刷データに基づいて算出し、前記第2の印刷方向への移動回数を制御することを特徴としている。
本発明によれば、異なる発色による印刷を別々のタイミングで行うので、サーマルヘッドの発熱体の発熱温度を各部によって異ならせる必要がなくなり、つまり同時に複数温度帯を混在させないので、異なる発熱温度間の干渉を防止でき、これによって各色の発色が良くなり、見栄えの良い印刷媒体を発行することができる。この効果は特に、異なる色を隣り合うように印刷する場合等に用いて効果的である。
【0007】
また本発明によれば、確実に、異なる発色による印刷を別々のタイミングで行うことができる。前記第1の印刷方向による印刷と、前記第2の印刷方向による印刷又は再度の第1の印刷方向による印刷とは、一行毎に行っても良いし、複数行毎にまとめながら行っても良い。
また本発明によれば、第1の印刷方向による印刷と、第2の印刷方向による印刷又は再度の第1の印刷方向による印刷とを、複数行まとめて行う際に、その複数行中に無印刷領域が存在する場合、無印刷領域を越えて印刷するのと、無印刷領域を越えないで印刷するのと、どちらがより効率的であるかを判断でき、効率的な方の印刷を行うことができる。
【0009】
また本発明において、前記制御手段は、前記第1の印刷方向に移動する際の印刷が、前記第2の印刷方向に移動する際の印刷又は前記再度第1の印刷方向に移動する際の印刷よりも、前記サーマルヘッドによる印加温度を高く制御することを特徴としている。
一般に、印加温度が高い方が、黒色等の最も使用される発色なので、そのような印刷を優先して行うことで、効率的な印刷を行うことができる。
【0010】
また本発明において、前記第1の印刷方向は、前記印刷媒体が前記印刷装置の内部から外部へ向かう方向であり、前記第2の印刷方向は、前記印刷媒体が前記印刷装置の外部から内部へ向かう方向であることを特徴としている。
【0012】
また本発明は、加熱温度に応じて複数の異なる発色をする印刷媒体と、前記印刷媒体に所定の温度を印加して発色させ印刷するサーマルヘッドと、を用意し、
前記異なる発色の内の一方の発色による印刷を、前記印刷媒体を第1の印刷方向に移動する際に行う第1の印刷工程と、前記異なる発色の内の他方の発色による印刷を、前記印刷媒体を前記第1の印刷方向とは逆方向である第2の印刷方向に移動する際に行う印刷又は前記第2の印刷方向に移動した後で再度前記第1の印刷方向に移動する際に行う第2の印刷工程と、前記印刷媒体の幅方向同列に異なる発色による印刷を行う
混在領域が存在する場合、前記第1の印刷工程と前記第2の印刷工程により、前記一方の発色による印刷と、
前記他方の発色による印刷とを別々のタイミングで行う
ように、前記サーマルヘッドを制御する制御工程
とを備え、前記制御工程では、前記印刷媒体へ印刷すべき情報がデータ化された印刷データに基づいて印刷処理を制御し、前記印刷データ内に、一切の印刷を行わない無印刷領域があると判断した場合、少なくとも、前記無印刷領域を搬送するのに要する時間を前記印刷データに基づいて算出し、前記第2の印刷方向への移動回数を制御することを特徴としている。
本発明によれば、異なる発色による印刷を別々のタイミングで行うので、サーマルヘッドの発熱体の発熱温度を各部によって異ならせる必要がなくなり、つまり同時に複数温度帯を混在させないので、異なる発熱温度間の干渉を防止でき、これによって各色の発色が良くなり、見栄えの良い印刷媒体を発行することができる。この効果は特に、異なる色を隣り合うように印刷する場合等に用いて効果的である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷媒体に異なる色の印刷を行う場合であっても、サーマルヘッドに対し異なる2種類の発熱温度を同時に印加せず、それぞれの発熱温度を個別のタイミングで制御するので、確実に各色の発色を実現でき、品質の良い多色印刷を行うことができる。また多色印刷をスムーズに効率よく行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる印刷装置10を具備するラベルプリンタ(計量値付機、商品データ処理装置)1の斜視図である。このラベルプリンタ1は、計量値付けラベルプリンタであり、例えば販売店のバックヤードに設置され、各種商品又は商品容器に貼付するラベルを発行する装置である。同図に示すように、ラベルプリンタ1は、基台部3の上面に表示部5と操作部7とを設置し、また基台部3の前面に印刷装置10を配置し、さらに商品計量用の計量部9をケーブル(無線でも良い)で接続して構成されている。そして表示部5と操作部7とを用いて所望の設定(例えば加工日時や消費期限等の設定)を行った後、計量部9に加工・盛り付け・包装が終わった商品を載せて計量を行い、値段等を算出し、内容量や値段等を表示部5に表示する。そしてこの計量が完了すると、操作部7の印字キーを押圧する等により、印刷装置10のラベル発行口11から、所望の印刷が行われ且つ所定の長さに切断されたラベル(この例の場合は台紙レスラベル)が発行される。
【0016】
図2はラベルプリンタ1の機能ブロックの一例を示す図である。同図に示すように、ラベルプリンタ1は、CPU15と、ROM17と、RAM19と、前記操作部7と、前記表示部5と、前記計量部9と、通信部21と、インターフェース24とを互いにバス29を介して接続し、またインターフェース24にサーマルヘッド23と、ステッピングモータ25と、切断機構(以下「カッター」という)27とを接続して構成されている。
【0017】
CPU15は、ROM17上の制御プログラムを実行することにより、ラベルプリンタ1の動作を制御する制御手段である。ROM17は、前記制御プログラム等の各種情報を記憶する。RAM19は、商品ファイルや、ラベル印字のフォーマットが設定された印字フォーマットファイル(印刷データ)や、フォントファイル等の各種情報を記憶する。操作部7は、操作者が各種入力を行う入力装置であり、この例ではキー入力を行う。表示部5は、種々の情報(印刷する商品名称や日時等)を表示する液晶ディスプレイである。この液晶ディスプレイはタッチパネルとなっており、上記操作部7に兼用して用いられる。計量部9は、その計量皿に載置した商品の重量を測定する装置であり、測定結果はRAM19に記憶される。通信部21は、図示しない管理装置等の他の装置と通信するためのものである。サーマルヘッド23は、CPU15の指令に基づいて駆動され、印刷用の用紙を加熱して印刷する。サーマルヘッド23は、横方向(下記するラベル用紙33の進行方向に交差する方向、以下同様)に一列、下記する複数の発熱部23aを併設して構成されている。ステッピングモータ25は、CPU15の指令に基づいて駆動され、下記するプラテンローラ39や逆搬送用ローラ43を駆動することで印刷用の用紙の紙送りを行う。カッター27は、CPU15の指令に基づいて印刷後の用紙を枚葉状に切断(カット)する。ラベルには、商品名称、値段、原材料、添加物、バーコード等が印字される。サーマルヘッド23とステッピングモータ25とカッター27は、印刷装置10の駆動系を構成する部品である。
【0018】
図3は、本発明の一実施形態を用いて構成された印刷装置10の概略構成図である。同図に示すように、印刷装置10は、帯状の用紙(以下「ラベル用紙」という)33を巻き回した用紙ロール(以下「ラベルロール」という)31と、ラベルロール31を回転可能に収納するロール装填部35と、ラベルロール31から繰り出したラベル用紙33を送りながら印字を行うサーマルヘッド23及びプラテンローラ39からなる印字部41と、印字部41の下流側に設置されるカッター27と、ロール装填部35と印字部41の間に設置される逆搬送用ローラ43と、を具備して構成されている。
【0019】
ラベル用紙33は、長尺帯状であって、一方の面が印刷面33a、他方の面が粘着剤を塗布した粘着面33bとなっている台紙レスラベル用紙である。このラベル用紙33は加熱温度に応じて異なる複数の発色をする感熱紙で構成され、印刷面33aの表面に剥離剤を塗布することで、台紙(剥離紙)を用いずに直接これをロール状に巻き回してラベルロール31としている。このラベル用紙33の場合、これを発色させる加熱温度の内、低い側の加熱温度では赤色に発色し、高い側の加熱温度では黒色に発色する感熱紙を用いている。
【0020】
サーマルヘッド23は、横方向に複数の発熱部23aを一列併設して構成されており、これら発熱部23aを選択的に発熱させることで、発熱部23a上を移送されるラベル用紙33の印刷面33aに印刷を行なう。各発熱部23aの発熱温度は2種類あり、ラベル用紙33を黒色に発色させる高温側の発熱温度と、ラベル用紙33を赤色に発色させる低温側の発熱温度とに、各発熱部23a単位で切り替えることができる。プラテンローラ39は繰出手段であり、前記サーマルヘッド23と協働して前記ラベル用紙33を挟持すると共に、ステッピングモータ25によって回転駆動されることで、繰り出し方向(第1の印刷方向)にラベル用紙33を紙送りする。プラテンローラ39の外周表面には、離型剤がコーティングされており、ラベル用紙33の粘着面33bの粘着剤が付着しないようにしている。なお、プラテンローラ39にラベル用紙33を貼り付かせない別の方法として、プラテンローラ39自体又はその最外層部分を易剥離性の部材で構成しても良い。
【0021】
カッター27は、上下一対の帯状の刃体27a,27bを具備して構成されており、印刷後のラベル用紙33を枚葉状にカットする。具体的には、直線状に繰り出されるラベル用紙33の下側に配置される固定刃27bと、ラベル用紙33の上側に配置され、前記固定刃27bに向けて上下動する可動刃27aとを具備して構成されている。可動刃27aは、例えばモータ(ステッピングモータ)等の駆動手段によって駆動される。
【0022】
逆搬送用ローラ43は、プラテンローラ39によって通常搬送方向に繰り出されたラベル用紙33を逆方向に引き戻す(バックフィードする)ための一対のローラ43a,43bによって構成されており、ステッピングモータ25によって回転駆動され、両ローラ43a,43bによって挟持されたラベル用紙33を繰り出し方向とは逆方向に移動するのに用いられる。サーマルヘッド23の発熱部23aとカッター27との間には距離があり、この部分にあるラベル用紙33は印刷できないデッドスペースとなる。そこで逆搬送用ローラ43を駆動してラベル用紙33の先端辺(カット辺)をカッター27の位置から発熱部23a近傍位置まで戻して、この位置から印刷を行うようにすれば、ラベル用紙33の無駄をなくすことができる。
【0023】
図4は、印刷装置10の動作の一例を示すフロー図である。この動作フロー図では、1枚のラベルを印刷すると共に、さらに次のラベルの印刷のためにバックフィードするまでの動作を示している。
【0024】
CPU15は、予め、これから印刷しようとするラベルの印刷データを読み込んでおき、プラテンローラ39とサーマルヘッド23を用いて、ラベル用紙33の最先の列から印刷を開始する。そして印刷しようとする最初の列への印刷が、1つの色での印刷である場合(例えばその列全てが黒色又は赤色のみでの印刷であった場合)は、プラテンローラ39によってラベル用紙33を第1の印刷方向(印刷装置10の内部から外部へ向かう方向、ラベル発行口11から排出される方向)に移動しながら、サーマルヘッド23の発熱部23aの必要な部分を所定の温度に加熱してラベル用紙33に黒色または赤色で印刷する(ステップ1,4)。発熱された部分の発熱部23aの温度は何れも同一温度なので、確実に何れか一方の色に印刷される。
【0025】
次に、このときまだ1枚のラベル全体の印刷が終了していないので、ステップST5からステップST1に戻り、次に印刷しようとする列への印刷が、2つの色での印刷である場合(例えばその列の右側部分が黒色、左側部分が赤色での印刷であった場合)は、ステップST2に移行して、プラテンローラ39によってラベル用紙33を第1の印刷方向に移動しながら、サーマルヘッド23の発熱部23aの一方の色(例えば黒色)となる部分のみをその色に必要な温度に加熱してラベル用紙33に一方の色(黒色)で印刷する。発熱された発熱部23aの温度は何れも同一温度なので、確実に前記一方の色に印刷される。次に、ステップST3に移行して、逆搬送用ローラ43によってラベル用紙33を、前記第1の方向とは逆方向である第2の印刷方向(印刷装置10の外部から内部へ向かう方向)に移動しながら、サーマルヘッド23の発熱部23aの他方の色(例えば赤色)となる部分のみをその色に必要な温度に加熱してラベル用紙33に他方の色(赤色)で印刷する。発熱された部分の発熱部23aの温度は何れも同一温度なので、確実に前記他方の色に印刷される。
【0026】
以上のように、第1の印刷方向と第2の印刷方向(通常搬送とバックフィード)のそれぞれにおいて、サーマルヘッド23の印加エネルギーを変え、同時に2色を発色させる印刷は行わない。つまり、一方の発色による印刷と、他方の発色による印刷とを別々のタイミングで行うので、サーマルヘッド23において、同時に複数温度帯を混在させることがなく、従って、各色が隣り合っていても、発色良く、見栄えの良い印刷を実現できる。
【0027】
そして上記ステップST1〜ステップST5の動作を繰り返し行い、1枚のラベルの印字が終了すると、ステップST6に移行して、
図3に示すカッター27により、ラベルLをカットする。ラベルLのカットは、サーマルヘッド23によって最後に印字した列がカッター27の外側まで移動するようにラベル用紙33をフィードした後に行う。
【0028】
これによって1枚のラベルLの印刷動作は終了する。そして次のラベルの印刷のために、ラベル用紙33をその先端の切断辺がサーマルヘッド23近傍位置に位置するようにバックフィードするが、このときにも本発明を適用することができ、その一例をステップST7〜ステップST10に示している。即ち、CPU15は、次に印刷しようとするラベルの印刷データを読み込み、その印刷データから、バックフィード前のラベル用紙33のラベルカット位置とサーマルヘッド23の位置との間に印刷があるか否かを判断し(ステップST7)、印刷がある場合はステップST8に移行し、さらに印刷しようとする列に複数の色があるか否かを判断する。そして複数の色がある場合は、ラベル用紙33を第2の印刷方向にバックフィードさせながら、同時に他方の色(例えば赤色)の発色印刷を行う(ステップST9)。
【0029】
一方、ステップST7において、前記ラベルカット位置とサーマルヘッド23の位置との間に印刷がない場合、又はステップST8において、印刷しようとする列に複数の色がない場合は、ステップST10に移行し、何ら印刷を行うことなく、第2の印刷方向にバックフィードする。なお、図示はしていないが、ラベル用紙33のラベルカット位置とサーマルヘッド23の位置との間の印刷が複数列であった場合は、上記ステップST8とステップST9、ステップST10の動作をその列の数だけ繰り返せばよい。
【0030】
なお、ステップST9又はステップST10によってバックフィードした後であって、次のラベルを印刷する場合は、前記ステップST1に戻るが、前記バックフィード時に印刷を行っている列については、複数の色の印刷の必要は無くなっているので、その場合はステップST1からステップST4に移行する。
【0031】
図5は、主として上記ステップST1〜ステップST3を行った際の印刷の状態を示す概略説明図である。同図に示すように、印刷しようとする列R1に2色の印刷(混在領域の印刷)を行う場合は、
図5(a)に示すように、まず、通常の印刷方向である第1の印刷方向H1にラベル用紙33をフィードしながら、一方の色(この例では黒色)となる部分を印刷する(ステップST2)。次に前記一方の色の印刷が終了した段階で、
図5(b)に示すように、ラベル用紙33を第2の印刷方向H2にバックフィードしながら、他方の色(この例では赤色)となる部分を印刷する(ステップST3)。なお、黒色での印刷部分と赤色での印刷部分が1列の中で相互に入り混じっているような場合でも、本発明を適用できることは言うまでもない(以下の例でも同様)。
【0032】
図6は、主として上記ステップST7〜ステップST9(さらにステップST1、ステップST4)を行った際の印刷の状態を示す概略説明図である。即ち、
図6(a)に示すように、ラベルカット位置(カット線kの位置)とサーマルヘッド23の位置との間のスペースS1に印刷の必要があり、且つその印刷の列R2に2色の印刷を行う場合は、まず、ラベル用紙33をカットした
図6(a)の状態から、
図6(b)に示すように、ラベル用紙33を第2の印刷方向H2にバックフィードしながら、サーマルヘッド23によって他方の色(この例では赤色)となる部分を印刷する(ステップST9)。次に前記他方の色の印刷が終了した段階で、ラベル用紙33を第1の印刷方向にフィードしながら、
図6(c)に示すように、一方の色(この例では黒色)となる部分を印刷する(ステップST1、ステップST4)。
【0033】
一般に、印刷装置10には、ラベル用紙33の無駄をなくす等のため、上記のようなバックフィード機構が設けられているが、上記印刷装置10では、このバックフィードの際に、前記他方の発色による印刷を行うので、従来単にバックフィードしていた動作に印字動作を兼用させることができ、これによって煩雑な制御を必要とせず、前記異なる色の印刷をスムーズに効率よく行うことができる。特にこの例のように、ラベルカット位置とサーマルヘッド23の位置との間のスペースS1に印刷の必要がある場合は、その印刷が単色である場合でも、必ずラベル用紙33をバックフィードさせなければならないので、本発明を用いる効果は大きい。
【0034】
図7は、前記
図5に示す印刷方法とは異なる印刷方法を示す概略説明図である。印刷しようとする列R3に2色の印刷を行う場合は、
図7(a)に示すように、まず、通常の印刷方向である第1の印刷方向H1にラベル用紙33をフィードしながら、一方の色(この例では黒色)となる部分を印刷する。次に前記一方の色の印刷が終了した段階で、ラベル用紙33を第2の印刷方向H2にバックフィードし、
図7(b)に示すように、印刷する列R3をサーマルヘッド23の内側に移動する。次に
図7(c)に示すように、ラベル用紙33を第1の印刷方向H1にフィードしながら、他方の色(この例では赤色)となる部分を印刷する。つまりこの例の場合、バックフィード時は印刷を行わず、再度第1の印刷方向にフィードする時に他方の色を印刷している。
【0035】
図8は、以上のようにして印刷が完了し、カットされたラベルLの一例を示す図である。同図において、中間付近の列R4中の「消費期限」と「加工日時」が黒色、「15 9.8 03時」と「15 9.7 03時」が赤色であり、また最先端側(印字開始側)の列R5中の「○○弁当」が赤色、「製造番号20320057」が黒色であり、また中間付近の「添加物 ○○× △△△ ・・・」の列R6全体が赤色であり、その他の全ての印刷が黒色である。また、上記列R5は、ラベルカット位置とサーマルヘッド23の位置との間にある。
【0036】
そして列R4の印刷には前記
図5(又は
図7)に示す印刷方法が用いられ、列R5の印刷には前記
図6に示す印刷方法が用いられ、列R6の印刷には列全体が黒色の印刷の場合と同じ通常の通常搬送のみによる印刷方法が用いられる。このように本発明にかかる印刷方法を用いれば、異なる色を同時に印刷した場合に生じる恐れのある、例えば
図8に示す列R4の隣接する「限」と「1」の部分(即ち異なる発色による印刷を行っている隣接した位置)での中間色(黒でも赤でもない不鮮明な色、以下同様)の発色や、隣接する「時」と「1」の部分での中間色の発色や、列R5の隣接する「当」と「製」の部分での中間色の発色が全く生じなくなる。
【0037】
上記説明では、印刷媒体の幅方向同列に異なる発色による印刷を行う混在領域において、第1の印刷方向による印刷と、第2の印刷方向による印刷又は再度の第1の印刷方向による印刷とを、一行毎に行う場合について説明したが、これらの印刷は、複数行まとめながら行っても良い。1行毎に異なる発色による印刷を行う場合と、複数行まとめながら異なる発色による印刷を行う場合とでは、ラベル用紙33の搬送距離に違いはないが、行毎に順・逆フィード(搬送方向)を切り替えるよりも、複数行まとめながら順・逆フィード(搬送方向)を切り替える方が停止の回数(搬送方向の切替回数)が少なくなり、より効率的な印刷を行うことができる。
【0038】
図9は前記
図4に示すステップST1の部分をより詳細に示す動作フロー図である。その他の部分は前記
図4に示す各ステップと同一なので、その記載及び説明は省略する。この動作フローは、印刷媒体の幅方向同列に異なる発色による印刷を行う混在領域において、第1の印刷方向による印刷と、第2の印刷方向による印刷又は再度の第1の印刷方向による印刷とを、複数行まとめながら行う場合について用いる動作フローの一例を示している。以下説明する。
【0039】
即ち印刷しようとする列への印刷が、2つの色での印刷である場合(即ち混在領域である場合)は、ステップST1−1からステップST1−2に移行し、その次の列への印刷が混在領域であるか否かを判断し、このステップ1−2の判断を、混在領域の列が続く限り行う。そして次の列が一色のみの列、または無印刷(無印刷領域)の列、または印刷終了の場合は、ステップST1−3に移行し、その列が無印刷領域の列であった場合は、ステップST1−2に戻って、さらに次の列が混在領域であるか、無印刷領域であるか等をステップST1−2、ST1−3によって判断する。一方、その列が一色のみの列、または印刷終了の場合は、ステップ1−4に移行し、上記各列の状態をRAM19に記憶しておく。
【0040】
次に、ステップST1−5において、上記RAM19に記憶した各列の中に、無印刷領域があったか否かを判断し、無印刷領域がなかった場合は、前記ステップST2に移行して印刷を開始する。即ち、
図4に示すステップ2に移行した場合は、プラテンローラ39によってラベル用紙33を第1の印刷方向に移動しながら、サーマルヘッド23の発熱部23aの一方の色(例えば黒色)となる部分のみをその色に必要な温度に加熱してラベル用紙33に一方の色(黒色)で印刷する。このとき、混在領域が1列だけだった場合は、上記
図5で説明したのと同一の制御を行うが、複数列であった場合は、第1の印刷方向に移動しながら各列全ての印刷を一度に行う。次に、ステップST3に移行して、逆搬送用ローラ43によってラベル用紙33を、前記第1の方向とは逆方向である第2の印刷方向に移動しながら、サーマルヘッド23の発熱部23aの他方の色(例えば赤色)となる部分のみをその色に必要な温度に加熱してラベル用紙33に他方の色(赤色)で印刷する。このとき、混在領域が1列だけだった場合は、上記
図5で説明したのと同一の制御を行うが、複数列であった場合は、第2の印刷方向に移動しながら各列全ての印刷を一度に行う。
【0041】
一方、ステップST1−5において、上記RAM19に記憶した各列の中に、無印刷領域があったか否かを判断し、無印刷領域があった場合は、ステップST1−6に移行し、上記無印刷領域を越えて一度に複数列全部の印刷(搬送)を行うのに要する時間と、上記無印刷領域までの印刷と無印刷領域以降の列の印刷とを別々に複数のステップに分けて行うのに要する時間とを算出し、何れの方がより効率的な印刷(より短時間での印刷)ができるかを求め、第1,第2の印刷方向への移動回数を求める。即ち、どちらの制御を優先するかは、無印刷領域の搬送に要する時間と、搬送方向の切替に要する時間から判断する。このように、無印刷領域を越えてラベル用紙33を搬送するか否かを決定する。
【0042】
次に、
図4に示すステップ2に移行し、プラテンローラ39によってラベル用紙33を第1の印刷方向に移動しながら、サーマルヘッド23の発熱部23aの一方の色(例えば黒色)となる部分のみをその色に必要な温度に加熱してラベル用紙33に一方の色(黒色)で印刷する。このとき、無印刷領域を越えて一度に複数行全部の印刷を行う場合は、第1の印刷方向に移動しながら無印刷領域を越えて各列全ての印刷を一度に行い、次に、ステップST3に移行して、逆搬送用ローラ43によってラベル用紙33を第2の印刷方向に移動しながら、サーマルヘッド23の発熱部23aの他方の色(例えば赤色)となる部分のみをその色に必要な温度に加熱してラベル用紙33に他方の色(赤色)で一度に各列全ての印刷を行う。一方、無印刷領域までの列の印刷と無印刷領域以降の列の印刷とを別々に行う場合は、第1の印刷方向に移動しながら無印刷領域の手前の列までの各列の印刷を一度に行い、次に、ステップST3に移行して、逆搬送用ローラ43によってラベル用紙33を第2の印刷方向に移動しながら、サーマルヘッド23の発熱部23aの他方の色(例えば赤色)となる部分のみをその色に必要な温度に加熱してラベル用紙33に他方の色(赤色)で前記無印刷領域の手前の列までの各列の印刷を一度に行う。次に、
図4には示していないが直接ステップST2に戻って、ステップST2とステップST3とを、前記無印刷領域以降の各列についても同様に行って印刷する。(またはステップST5からステップST1−1に戻って、改めて無印刷領域以降の列の制御を行って印刷しても良い)。
【0043】
図10は無印刷領域を有さない場合の印刷例を示す図、
図11は
図10に示す印刷を行う場合の印刷手順を示す図である。
図10に示すように、この印刷例の場合、無印刷領域はなく、列r1,r3〜r5が混在領域、列r2に単一色領域である。このため
図11(a)に示すように、まず、第1の印刷方向H1にラベル用紙33をフィードしながら、一方の色(この例では黒色)となる部分を列r1分印刷する。次に前記一方の色の印刷が終了した段階で、
図11(b)に示すように、ラベル用紙33を第2の印刷方向H2にバックフィードしながら、他方の色(この例では赤色)となる部分を列r1分印刷する。次に、
図11(c)に示すように、第1の印刷方向H1にラベル用紙33をフィードしながら、単一色領域(この例では黒色)となる部分を列r2分印刷する。引き続き、第1の印刷方向H1にラベル用紙33をフィードしながら、一方の色(この例では黒色)となる部分を列r3〜r5分印刷する。次に、
図11(d)に示すように、ラベル用紙33を第2の印刷方向H2にバックフィードしながら、他方の色(この例では赤色)となる部分を列r5〜r3分印刷する。
【0044】
図12は無印刷領域を有する場合の印刷例を示す図、
図13と
図14は
図12に示す印刷を行う場合の印刷手順を示す図である。
図12に示すように、この印刷例の場合、列の途中(列r5)に無印刷領域があり、列r1,r3,r4,r6が混在領域、列r2が単一色領域である。そして前記
図9のステップST1−6において、無印刷領域を越えて一度に複数列全部の印刷(搬送)を行うことを決定した場合は、
図13(a),(b)に示すように、まず、列r1の2色の印刷を第1,第2の印刷方向H1,H2にラベル用紙33を往復フィードすることによって行う。次に、
図13(c)に示すように、第1の印刷方向H1にラベル用紙33をフィードしながら、単一色領域(この例では黒色)となる部分を列r2分印刷する。引き続き、第1の印刷方向H1にラベル用紙33をフィードしながら、一方の色(この例では黒色)となる部分を列r3,r4,r6分、列r5を越えて同時に印刷する。次に、
図13(d)に示すように、ラベル用紙33を第2の印刷方向H2にバックフィードしながら、他方の色(この例では赤色)となる部分を列r6,r4,r3分、列r5を越えて同時に印刷する。一方前記
図9のステップST1−6において、無印刷領域までの列の印刷と無印刷領域以降の列の印刷とを別々に複数のステップに分けて行うことを決定した場合は、
図14(a),(b)に示すように、まず、列r1の2色の印刷を第1,第2の印刷方向H1,H2にラベル用紙33を往復フィードすることによって行う。次に、
図14(c)に示すように、第1の印刷方向H1にラベル用紙33をフィードしながら、単一色領域(この例では黒色)となる部分を列r2分印刷する。引き続き、第1の印刷方向H1にラベル用紙33をフィードしながら、一方の色(この例では黒色)となる部分を列r3,r4分、同時に印刷する。次に、
図14(d)に示すように、ラベル用紙33を第2の印刷方向H2にバックフィードしながら、他方の色(この例では赤色)となる部分を列r4,r3分、同時に印刷する。次に、
図14(e)に示すように、第1の印刷方向H1にラベル用紙33を列r5を越えてフィードしながら、一方の色(この例では黒色)となる部分を列r6分、印刷する。次に、
図14(f)に示すように、ラベル用紙33を第2の印刷方向H2にバックフィードしながら、他方の色(この例では赤色)となる部分を列r6分、印刷する。
【0045】
以上説明したように、印刷装置10によれば、異なる発色による印刷を行う場合、一方の発色による印刷と、他方の発色による印刷とを別々のタイミングで行うように、サーマルヘッド23を制御する制御手段(CPU15)を備えるので、サーマルヘッド23の発熱体23aの発熱温度を各部によって同時に異ならせる必要がなくなり、つまり同時に複数発熱温度帯を混在させないので、異なる発熱温度間の干渉を防止でき、これによって各色の発色が良くなり、見栄えの良いラベルを発行することができる。この効果は特に、異なる色を隣り合うように印刷する場合等に用いて効果的である。
【0046】
ここで別々のタイミングは、例えば一方の発色による印刷を、ラベル用紙33を第1の印刷方向H1に移動する際に行い、他方の発色による印刷を、ラベル用紙33を第1の印刷方向H1とは逆方向である第2の印刷方向H2に移動する際に行う、又は前記第2の印刷方向H2に移動した後で再度前記第1の印刷方向H1に移動する際に行うことで実現できる。
【0047】
また第2の印刷方向H2に移動する際に行う印刷(又は再度第1の印刷方向H1に移動する際に行う印刷)は、前記
図4のステップST1に示すように、印刷しようとする列に複数の色があるか否かの判断に基づいて、即ち、ラベル用紙33に印刷する印刷内容に基づいて、必要な場合だけ、これを行うように構成しているので、ラベル用紙33に印刷する印刷内容に応じた効率的な印刷を行うことができる。
【0048】
また上記印刷装置10においては、第1の印刷方向H1に移動する際に行う印刷の印加温度を、第2の印刷方向H2に移動する際に行う印刷の印加温度よりも高くなるように制御しているが、これは一般に、印加温度が高い方が、通常最も使用される頻度の高い黒色等の発色なので、そのような印刷を優先して行うことで、効率的な印刷を図るためである。もちろん、逆に、第1の印刷方向H1に移動する際に行う印刷の印加温度を、第2の印刷方向H2に移動する際に行う印刷の印加温度よりも低くなるように制御しても良い。この場合、上記例では、通常搬送時に赤色の印刷を行い、バックフィード時に黒色の印刷を行うことになる。
【0049】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの構成であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、本発明を、ラベルを印刷し発行するラベル印刷装置に用いた例を示したが、本発明はこれに限られず、ラベル印刷以外の用途に用いる印刷装置でも同様に本発明を適用できる。また上記実施形態では、サーマルヘッドの加熱温度を2種類としたが、3種類以上であっても良い。例えば3種類の場合、その内の1種類と他の2種類間の印刷タイミングを異ならせても良いし、3種類全ての印刷タイミングを異ならせても良い。また発色する色は黒、赤に限られず、青色等、他の各種色彩であっても良い。また上記実施形態では、印刷媒体として台紙レスのラベル用紙を用いたが、台紙付きのラベル用紙でも良く、さらにはラベル以外の各種用途に用いる用紙等からなる印刷媒体であっても良い。また、上記各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、各図の記載内容は、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。