特許第6575268号(P6575268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575268
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20190909BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20190909BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20190909BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20190909BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   H01L29/80 F
   H01L29/80 H
   H01L29/50 J
   H01L29/44 P
   H01L29/44 S
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-189293(P2015-189293)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-69235(P2017-69235A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩上 信一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕規
【審査官】 柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−033837(JP,A)
【文献】 特開2000−134041(JP,A)
【文献】 特開2012−38885(JP,A)
【文献】 特表2008−518462(JP,A)
【文献】 特開2011−204984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 29/41
H01L 29/417
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体層が積層されたヘテロ構造を有する半導体基体と、
前記半導体基体の上に互いに離間して配置されたソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体基体の上に配置されたゲート電極と
を備え、
絶縁膜を介して配置された複数の電極層からなる多層電極構造を有し、前記ソース電極及び前記ドレイン電極が前記複数の電極層にそれぞれ形成され、
前記複数の電極層のそれぞれにおいて、前記ソース電極と前記ドレイン電極が対向して前記ゲート電極と平行に延伸する方向と垂直な方向の幅が、前記ソース電極が前記ドレイン電極の1.5倍以上である
ことを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極が、前記半導体基体の上部の一部に形成されたゲートリセスに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記ソース電極のインダクタンスに起因して前記ソース電極に生じる電位の変動によってオン状態になることが抑制されるように、前記ドレイン電極の前記幅に対する前記ソース電極の前記幅が設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ構造を有する窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスなどに、窒化物半導体層を積層したヘテロ構造を有する電界効果トランジスタ(FET)が使用されている。代表的な窒化物半導体は、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表され、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)等である。例えば、窒化物半導体からなるキャリア走行層及びキャリア供給層を積層して、高電子移動度トランジスタ(HEMT)が形成される。
【0003】
通常、HEMTはノーマリオン特性を有する。このため、オフ状態にするためにはゲート電位を負電位にする必要がある。この場合、ゲート電極に印加する負電圧を供給する電源が必要であり、電気回路が高価になる。このため、ノーマリオフ特性を有するHEMTを実現するために種々の方法が提案されており、例えばゲートリセスが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−207287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゲートリセスを形成したHEMTなどでは、しきい値電圧が1V程度と低い。このため、大電流のスイッチング素子として用いた場合に、ソース電極のインダクタンス(ソースインダクタンス)によりソース電位が変動し、予期しないタイミングでHEMTがオン動作してしまうなど、動作が不安定であるという問題があった。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、しきい値電圧が低い素子においても安定に動作するヘテロ構造を有する窒化物半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、窒化物半導体層が積層されたヘテロ構造を有する半導体基体と、半導体基体の上に互いに離間して配置されたソース電極及びドレイン電極と、ソース電極とドレイン電極との間で半導体基体の上に配置されたゲート電極とを備え、絶縁膜を介して配置された複数の電極層からなる多層電極構造を有し、ソース電極及びドレイン電極が複数の電極層にそれぞれ形成され、複数の電極層のそれぞれにおいて、ソース電極とドレイン電極が対向してゲート電極と平行に延伸する方向と垂直な方向の幅が、ソース電極がドレイン電極の1.5倍以上である窒化物半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、しきい値電圧が低い素子においても安定に動作するヘテロ構造を有する窒化物半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
図2】比Ws/Wdとソース電位の変動量の関係を示すグラフである。
図3図1に示した窒化物半導体装置の第1電極層の構成を示す模式的な平面図である。
図4図1に示した窒化物半導体装置の第2電極層の構成を示す模式的な平面図である。
図5図1に示した窒化物半導体装置の第3電極層の構成を示す模式的な平面図である。
図6図1に示した窒化物半導体装置の第4電極層の構成を示す模式的な平面図である。
図7図6のVII−VII方向に沿った模式的な断面図である。
図8】比較例の窒化物半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る窒化物半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体装置1は、図1に示すように、半導体基体2と、半導体基体2の上に互いに離間して配置されたソース電極3及びドレイン電極4と、ソース電極3とドレイン電極4との間で半導体基体2の上部の一部に形成されたゲートリセスに配置されたゲート電極5を備える。半導体基体2は、基板10にバッファ層11と窒化物半導体層20を積層した構造である。窒化物半導体層20は、窒化物半導体層が積層されたヘテロ構造を有する。また、窒化物半導体層20上に、層間絶縁膜6が形成されている。
【0013】
図1に示した窒化物半導体装置1は、バンドギャップエネルギーが互いに異なる窒化物半導体からなるキャリア走行層21とキャリア供給層22とを積層した窒化物半導体層20を有するHEMTである。キャリア走行層21とキャリア供給層22間の界面にヘテロ接合面が形成され、ヘテロ接合面近傍のキャリア走行層21に電流通路(チャネル)としての二次元キャリアガス層23が形成される。
【0014】
ゲートリセスは、キャリア供給層22の上部に凹部として形成されている。窒化物半導体装置1は、ゲートリセス構造を採用したことによりノーマリオフ特性を有する。
【0015】
図1に示す窒化物半導体装置1は、ソース電極3及びドレイン電極4のそれぞれが複数の電極層に形成された多層電極構造である。即ち、第1電極層M1、第2電極層M2及び第3電極層M3が、層間絶縁膜6を介して半導体基体2上に積層されている。そして、層間絶縁膜6に形成されたビアを介して、各電極層のソース電極3が互いに電気的に接続され、各電極層のドレイン電極4が互いに電気的に接続されている。第3電極層M3の上方には、第4電極層M4が更に配置されている。
【0016】
より具体的には、窒化物半導体層20に接して第1電極層M1に形成されたソース電極31が、第2電極層M2に形成されたソース電極32とビア71sを介して電気的に接続され、ソース電極32は第3電極層M3に形成されたソース電極33とビア72sを介して電気的に接続されている。ソース電極3は、ソース電極31、ソース電極32及びソース電極33の総称である。
【0017】
また、窒化物半導体層20に接して第1電極層M1に形成されたドレイン電極41が、第2電極層M2に形成されたドレイン電極42とビア71dを介して電気的に接続され、ドレイン電極42は第3電極層M3に形成されたドレイン電極43とビア72dを介して電気的に接続されている。ドレイン電極4は、ドレイン電極41、ドレイン電極42及びドレイン電極43の総称である。
【0018】
窒化物半導体装置1では、ソース電極3とドレイン電極4とが対向してゲート電極5と平行に延伸する方向と垂直な方向の幅(以下において、単に「幅」という。)が、ソース電極3がドレイン電極4の1.5倍以上である。ここで、ソース電極3の幅及びドレイン電極4の幅は、図1に示した切断面における幅である。
【0019】
一般的に、半導体装置のサイズを抑制するために、電極の幅は必要最小限であることが好ましい。このため、オン状態のときにドレイン電極からソース電極に流れるドレイン電流の大きさに基づき、ドレイン電極やソース電極の幅が設定される。即ち、発熱などによる半導体装置の破壊や暴走が生じないように設定された所定の電流密度(以下において「許容電流密度」という。)以下にドレイン電流の電流密度がなるように、ドレイン電極やソース電極の幅が設定される。図1に示した窒化物半導体装置1においても、許容電流密度に基づきドレイン電極4の幅は最小限に設定される。このとき、ソース電極3の幅を広くすることによって、ソースインダクタンスが減少する。その結果、ソース電位の変動が抑制される。
【0020】
つまり、ソースインダクタンスを小さくすることによって、ゲートリセス構造を採用したHEMTのようにしきい値電圧が低い場合にも、ソースインダクタンスに起因する誤動作が抑制される。
【0021】
本発明者らは、ソースインダクタンスに起因するソース電位の変動による窒化物半導体装置1の誤動作が抑制される条件について検討を重ねた。その結果、ドレイン電極4の幅Wdに対するソース電極3の幅Wsの比Ws/Wdが1.5以上である場合に、ソースインダクタンスが最適化され、ソース電位の変動を効率的に抑制できることを見出した。即ち、比Ws/Wdを1.5以上にすることによって、ソース電極3の幅にドレイン電流の大きさに対する余裕が生じ、ソース電位の変動が減少する。このため、ソースインダクタンスに起因してソース電位に生じる変動によって窒化物半導体装置1が予期していないタイミングでオン状態になることを抑制するように、窒化物半導体装置1の比Ws/Wdが1.5以上に設定されている。これにより、ソースインダクタンスに起因する誤動作が抑制され、窒化物半導体装置1が安定して動作する。例えば5A以上の大電流をスイッチングする用途などにおいても、窒化物半導体装置1の動作は安定である。
【0022】
図2に示すように、比Ws/Wdが大きいほどソース電位の変動量ΔVsが減少する。比Ws/Wdが1.5より大きい場合にソース電位の変動量ΔVsが0.05V以下程度になり、窒化物半導体装置1の予期しないスイッチングが抑制される。なお、図2に示したグラフは、ドレイン電流が5A、1MHz動作の場合のデータである。
【0023】
図3に、第1電極層M1の平面図を示す。図1は、図3のI−I方向に沿った断面図である。ソース電極3及びドレイン電極4の幅は、櫛型電極構造であるソース電極31とドレイン電極41の延伸方向(長手方向)と垂直な方向(短手方向)の長さである。例えば、ソース電極31の櫛歯部の幅は8μm、ドレイン電極41の櫛歯部の幅は5μmである。また、ソース電極31とドレイン電極41との間隔は10μmである。
【0024】
図4に、第2電極層M2の平面図を示す。例えば、ソース電極32の幅W32は11μm、ドレイン電極42の幅W42は7μmである。図5に、第3電極層M3の平面図を示す。例えば、ソース電極33の幅W33は15μm、ドレイン電極43の幅W43は9μmである。このように、窒化物半導体装置1では、第1電極層M1〜第3電極層M3のそれぞれにおいて、ソース電極3の幅がドレイン電極4の幅よりも広く設定されている。
【0025】
上記例においては、各電極層においてドレイン電極4の幅に対するソース電極の幅の比が1.5以上であるが、各電極層のいずれかにおいて幅の比が1.5以上であればよい。また、各電極層の幅の合計の比が1.5以上であってもよい。なお、上記例の場合、ソース電極3の幅Wsは8μm+11μm+15μm=34μmであり、ドレイン電極4の幅Wdは5μm+7μm+9μm=21μmである。したがって、比Ws/Wdは1.62である。
【0026】
また、図1に示した窒化物半導体装置1では、第1電極層M1〜第3電極層M3におけるそれぞれ幅が、ソース電極3の方がドレイン電極4よりも広いように形成されている。即ち、第1電極層M1ではソース電極31の方がドレイン電極41よりも幅が広い。そして、第2電極層M2ではソース電極32の方がドレイン電極42よりも幅が広く、第3電極層M3ではソース電極33の方がドレイン電極43よりも幅が広い。しかし、必ずしもすべての電極層においてソース電極3の方がドレイン電極4よりも幅が広くなくてもよい。例えば、第1電極層M1においてソース電極31とドレイン電極41の幅が同等であってもよい。
【0027】
図6に、第4電極層M4の構成例を示す。図6に示すように、第4電極層M4では、対向するソース電極34とドレイン電極44が櫛型電極の長手方向と垂直な方向に沿って延在している。ソース電極34はソース電極33とビア73sを介して電気的に接続されている。また、ドレイン電極44はドレイン電極43とビア73dを介して電気的に接続されている。図6のVII−VII方向に沿った断面図を図7に示す。ソース電極34やドレイン電極44は、ボンディングパッドなどとして使用可能である。
【0028】
なお、窒化物半導体装置1の基板10には、シリコン(Si)基板、シリコンカーバイト(SiC)基板、GaN基板などの半導体基板や、サファイア基板、セラミック基板などの絶縁体基板を採用可能である。バッファ層11は、有機金属気相成長(MOCVD)法などのエピタキシャル成長法で形成できる。バッファ層11はHEMTの動作に直接には関係しないため、バッファ層11を省いてもよい。バッファ層11の構造や配置の有無は、基板10や窒化物半導体層20の材料や膜厚などに応じて決定される。
【0029】
キャリア走行層21は、例えば不純物が添加されていないノンドープGaNを、MOCVD法などによりエピタキシャル成長させて形成する。ここでノンドープとは、不純物が意図的に添加されていないことを意味する。キャリア走行層21上に配置されたキャリア供給層22は、キャリア走行層21よりもバンドギャップが大きく、且つキャリア走行層21より格子定数の小さい窒化物半導体からなる。キャリア供給層22としてノンドープのAlxGa1-xNが採用可能である。キャリア供給層22は、MOCVD法などによるエピタキシャル成長によってキャリア走行層21上に形成される。キャリア供給層22とキャリア走行層21は格子定数が異なるため、格子歪みによるピエゾ分極が生じる。このピエゾ分極とキャリア供給層22の結晶が有する自発分極により、ヘテロ接合付近のキャリア走行層21に高密度のキャリアが生じ、二次元キャリアガス層23が形成される。
【0030】
ソース電極31及びドレイン電極41は、窒化物半導体層20と低抵抗接触(オーミック接触)可能な金属により形成される。例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)などがソース電極31及びドレイン電極41に採用可能である。或いはTiとAlの積層体として、ソース電極31及びドレイン電極41は形成される。ソース電極32〜ソース電極34、ドレイン電極42〜ドレイン電極44には、例えばAlや金(Au)、銅(Cu)などが採用可能である。ゲート電極5には、例えばニッケル金(NiAu)などが採用可能である。
【0031】
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体装置1では、ソース電極3の幅がドレイン電極の幅の1.5倍以上であるように、ドレイン電極4よりもソース電極3の幅が広く設定されている。これにより、ソースインダクタンスが減少し、窒化物半導体装置1によればソース電位の変動が抑制される。したがって、しきい値電圧が低い素子においても安定に動作するヘテロ構造を有する窒化物半導体装置1を提供することができる。
【0032】
一方、ソース電極3の幅とドレイン電極4の幅が同等である図8に示す比較例の窒化物半導体装置1Aでは、ソースインダクタンスによるソース電位の変動が生じる結果、動作が不安定である。例えば、窒化物半導体装置1Aのソース電極3の幅とドレイン電極4の幅が5μm程度で同等であり、ソース電極3とドレイン電極4の間隔が10μm、ドレイン電流が5A程度とする。ゲートリセス構造を採用したHEMTである窒化物半導体装置1Aでは、しきい値電圧は1V程度である。本発明者らの検討によれば、ソースインダクタンスによって窒化物半導体装置1Aのソース電位が1MHz動作で0.3V程度変動するため、窒化物半導体装置1Aが予期せずオン状態になるおそれがある。
【0033】
これに対して、ソース電極3のインダクタンスに起因してソース電極3に生じる電位の変動によってオン状態になることが抑制されるように、窒化物半導体装置1ではドレイン電極4の幅に対するソース電極3の幅が1.5以上に設定されているのである。
【0034】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る窒化物半導体装置1は、図9に示すように、ソース電極3及びドレイン電極4が単層構造である。その他の構成については、図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0035】
図9に示す窒化物半導体装置1においても、ソース電極3の幅をドレイン電極の幅の1.5倍以上であるようにソース電極3の幅を広く設定することによって、ソースインダクタンスが減少する。これにより、ソース電位の変動が抑制され、窒化物半導体装置1の動作が安定する。例えば、ソース電極3の幅を8μm、ドレイン電極4の幅を5μmとする。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0036】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0037】
例えば、以上の説明では窒化物半導体装置1がHEMTである例を示したが、窒化物半導体装置1が窒化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(FET)などの他の構造のトランジスタであってもよい。また、ゲートリセス構造のトランジスタを例示したが、ゲートリセス構造でなく且つしきい値電圧が低いトランジスタの場合にも本発明は適用可能である。例えば、ノーマリオフ特性を有する窒化物半導体系のFETには、ゲートリセス構造だけではなく、p型GaN系のトランジスタなどがある。p型GaN系のトランジスタのしきい値電圧は1V程度と低いため、これらの半導体装置の安定した動作のためにも本発明は好適に適用される。
【0038】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことはもちろんである。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0039】
1…窒化物半導体装置
2…半導体基体
3…ソース電極
4…ドレイン電極
5…ゲート電極
6…層間絶縁膜
10…基板
11…バッファ層
20…窒化物半導体層
21…キャリア走行層
22…キャリア供給層
23…二次元キャリアガス層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9