特許第6575278号(P6575278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6575278-バルブ固定装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575278
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】バルブ固定装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 13/10 20060101AFI20190909BHJP
   B60R 16/08 20060101ALI20190909BHJP
   B60T 15/36 20060101ALI20190909BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B60G13/10
   B60R16/08 D
   B60T15/36 Z
   B60R16/08 Z
   B60T7/12 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-196134(P2015-196134)
(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公開番号】特開2017-65612(P2017-65612A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月29日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)車両のデモ走行 開催日:平成27年7月31日〜同年8月2日 開催者:いすゞ自動車株式会社及び、いすゞ自動車販売株式会社 場所:株式会社ワーカム北海道 試験場内 (2)カタログの発行 カタログ名:ERGA 大型 路線バス LV ノンステップ 発行日:平成27年8月18日 発行者:いすゞ自動車株式会社及び、いすゞ自動車販売株式会社 (3)自社ウェブサイトへの掲載 掲載日:平成27年8月18日 掲載者:いすゞ自動車株式会社 ウェブサイトのアドレス: http://www.isuzu.co.jp/press/2015/8_18erga.html http://www.isuzu.co.jp/product/bus/erga_rt/index.html
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】沼垂 能永
(72)【発明者】
【氏名】松原 一行
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−131745(JP,A)
【文献】 特開2012−192763(JP,A)
【文献】 実開昭61−027713(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 13/10
B60R 16/08
B60T 7/12
B60T 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バルブと、第2バルブとを車両のフレーム部材に固定するためのバルブ固定装置であって、
前記フレーム部材に取り付け可能であり、前記フレーム部材の面に対して所定の距離を隔てて対向し、前記第1バルブと前記第2バルブとが取り付けられる平面部を有するブラケットを有し、
前記第1バルブは、バルブ本体部と、前記バルブ本体部からの排気時の排気音を消音するサイレンサとを有し、前記バルブ本体部の前記平面部へ設置する面に垂直な方向の幅よりも、前記サイレンサの前記垂直な方向の幅の方が長く、
前記平面部には、前記第1バルブが取り付けられた際に、前記サイレンサとの接触を防止するための開孔が形成されている
バルブ固定装置。
【請求項2】
前記所定の距離は、前記サイレンサと前記フレーム部材とが接触せず、前記第1バルブ及び前記第2バルブを固定するための固定部材と前記フレーム部材とが接触しない距離が確保されている
請求項1に記載のバルブ固定装置。
【請求項3】
前記第1バルブの前記バルブ本体部は、チューブを取り付けるためのチューブ取付部を有し、
前記開孔は、前記第1バルブの前記チューブ取付部を、前記第2バルブが取り付けられる側に向けて取り付けた際における前記サイレンサの位置を含む領域に形成されている
請求項1又は請求項2に記載のバルブ固定装置。
【請求項4】
前記第1バルブは、前記車両のエアサスペンションの空気圧を調整するためのバルブであり、前記第2バルブは、坂道発進補助におけるブレーキを動作させるためのバルブである
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のバルブ固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバルブを車両のフレーム部材に固定するバルブ固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バスやトラック等の車両においては、空気や油等の流体を制御するための種々のバルブが固定されている。このようなバルブとしては、例えば、坂道発進を補助するためのHSA(ヒルスタートアシストシステム)バルブや、エアサスペンションの空気圧を調整するためのECAS(電子制御式エアサスペンション)バルブ等が知られている。
【0003】
例えば、ABSシステム(アンチロックブレーキシステム)において油圧を制御するためのABSアクチュエータと、HSAシステムに用いられるHSAバルブとを同一のブラケットにより車体に取り付ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−57189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両において、バルブを取り付ける場合には、各バルブをフレーム等に直接固定することがある。このように、各バルブを個別にフレーム等に固定する場合には、各バルブごとにフレームの取付位置でバルブを取り付けなければならず、作業の手間がかかるという問題がある。
【0006】
また、ECASバルブには、排気音を消音するためのサイレンサが備えられているが、消音効果を向上させるためには、サイレンサのサイズを大きくすることが考えられる。例えば、フレーム部材等にECASバルブを直接固定するようにした場合には、取り付けられるECASバルブのサイレンサのサイズが限られてしまうという問題や、或いは、フレーム部材等の構成自体を取り付けるECASバルブのサイレンサを考慮した形状にしておかなくてはならないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、複数のバルブを容易かつ適切に固定することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明の一観点に係るバルブ固定装置は、第1バルブと、第2バルブとを車両のフレーム部材に固定するためのバルブ固定装置であって、フレームに取り付け可能であり、フレーム部材の面に対して所定の距離を隔てて対向し、第1バルブと第2バルブとが取り付けられる平面部を有するブラケットを有し、第1バルブは、バルブ本体部と、バルブ本体部からの排気時の排気音を消音するサイレンサとを有し、バルブ本体部の平面部へ設置する面に垂直な方向の幅よりも、サイレンサの垂直な方向の幅の方が長く、平面部には、第1バルブが取り付けられた際に、サイレンサとの接触を防止するための開孔が形成されている。
【0009】
上記バルブ固定装置において、所定の距離は、サイレンサとフレーム部材とが接触せず、第1バルブ及び第2バルブを固定するための固定部材とフレーム部材とが接触しない距離が確保されていてもよい。
【0010】
また、上記バルブ固定装置において、第1バルブのバルブ本体部は、チューブを取り付けるためのチューブ取付部を有し、第1バルブのチューブ取付部を、第2バルブが取り付けられる側に向けて取り付けた際におけるサイレンサの位置を含む領域に形成されていてもよい。
【0011】
また、上記バルブ固定装置において、第1バルブは、車両のエアサスペンションの空気圧を調整するためのバルブであり、第2バルブは、坂道発進補助におけるブレーキを動作させるためのバルブであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のバルブを車両に容易かつ適切に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るバルブ固定装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係るバルブ固定装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るバルブ固定装置の全体構成図である。
【0016】
バルブ固定装置10は、例えば、バス等の車両の先頭側のクロスメンバ(フレーム部材の一例)11に配置される。バルブ固定装置10は、ブラケット20と、第1バルブの一例としてのECASバルブ30と、第2バルブの一例としてのHSAバルブ40とを有する。
【0017】
ブラケット20は、クロスメンバ11の取付面11aに固定するための、略平行に間隔をあけて配置された1対の固定部21(一方は、図示せず)と、各固定部21に接続され、取付面11aに対して略垂直な方向に延びて形成された1対の側面部22(一方は、図示せず)と、1対の側面部22に接続され、取付面11aと所定の間隔をあけて対向する平面部23とを有する。
【0018】
各固定部21は、例えば、2本のボルト25により取付面11aに固定される。なお、クロスメンバ11の取付面11aの裏面側のボルト25が挿入される部位には、例えば、ボルト25に対応する図示しない固定ナットが設けられている。
【0019】
平面部23には、ECASバルブ30が上方に複数のボルト33により固定され、HSAバルブ40がECASバルブ30の下方に複数のボルト41により固定される。
【0020】
平面部23には、ECASバルブ30を固定した場合に、ECASバルブ30の後述するサイレンサ32が位置する部分を含む領域に、ECASバルブ30のサイレンサ32との接触(干渉)を防止するための開孔24が形成されている。なお、ECASバルブ30として使用される可能性のあるバルブが複数種類ある場合においては、複数の種類のECASバルブ30のサイレンサ32との接触を防止するための大きさの開孔24としてもよい。このようにすると、ECASバルブ30の種類によらず、ブラケット20を共通化することができる。
【0021】
取付面11aと、平面部23との間隔は、ECASバルブ30及びHSAバルブ40を平面部23に固定した際に、固定に使用するボルト33,41の先端が取付面11aに接触せず、また、ECASバルブ30のサイレンサ32が取付面11aに接触しない間隔となっている。ここで、ECASバルブ30及びHSAバルブ40の固定に使用するボルト33,41の先端部は、取付面11aと、平面部23と、側面部22とに囲まれた空間内に、位置することとなるので、ボルト33,41の先端部が、周囲のチューブや配線と接触してしまうことを適切に防止できる。
【0022】
ECASバルブ30は、車両の図示しないエアサスペンションの空気圧を調整するためのバルブであり、外形が略直方体のバルブ本体部31と、バルブ本体部31による排気時の排気音を消音するサイレンサ32とを有する。
【0023】
ECASバルブ30は、ブラケット20の平面部23に設置させる面(バルブ本体部31の最も面積の大きい面の一方の面(設置面))がブラケット20の平面部23に設置された状態で、ボルト33により固定される。なお、平面部23の裏面側には、例えば、ボルト33に対応する図示しない固定ナットが設けられている。
【0024】
サイレンサ32は、略円柱形状をしており、径方向の幅は、バルブ本体部31の設置面に垂直な方向の幅よりも長くなっている。したがって、バルブ本体部31の設置面がブラケット20の平面部23に設置された状態では、サイレンサ32の端部が平面部23の平面を超えた位置まで到達してしまう。本実施形態では、平面部23に開孔24を設けるようにしているので、サイレンサ32が平面部23に接触することを防止できる。
【0025】
バルブ本体部31は、複数のチューブが接続されるチューブ取付部31aを有する。チューブ取付部31aは、バルブ本体部31の設置面を平面部23に設置させて、サイレンサ32を図面左側に向けた場合に、図面下側、すなわち、HSAバルブ40が固定される側に配置されている。本実施形態では、チューブ取付部31aがHSAバルブ40側に配置されているので、チューブ取付部31aに取り付けられるチューブと、HSAバルブ40に取り付けられるチューブとを集約して配置することができる。
【0026】
HSAバルブ40は、坂道発進補助におけるブレーキを動作させるためのバルブである。HSAバルブ40は、複数のボルト41により平面部23に固定される。なお、平面部23の裏面側には、例えば、ボルト41に対応する図示しない固定ナットが設けられている。
【0027】
次に、バルブ固定装置10による車両へのECASバルブ30及びHSAバルブ40の固定を行うバルブ固定工程の一例を説明する。
【0028】
まず、ブラケット20と、ECASバルブ30と、HSAバルブ40とを用意する。
【0029】
次いで、ブラケット20に、ECASバルブ30とHSAバルブ40とをサブアセンブリする。すなわち、ブラケット20の平面部23の所定の位置にECASバルブ30を配置し、ボルト33により固定し、また、ブラケット20の平面部23の所定の位置に、HSAバルブ40を配置し、ボルト41により固定する。
【0030】
その後、ECASバルブ30及びHSAバルブ40が固定されたブラケット20を、クロスメンバ11の取付面11aに重ね合わせ、ボルト25により、固定する。
【0031】
このバルブ固定工程によると、クロスメンバ11に対しては、サブアセンブリしたブラケット20を固定すれば済むので、組み付け作業が容易になる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係るバルブ固定装置10によると、クロスメンバ11の取付面11aに対して所定の距離を隔てて対向する平面部23を有するブラケット20において、平面部23に開孔24を形成し、平面部23にECASバルブ30と、HSAバルブ40とを固定するようにしたので、複数のバルブを容易にクロスメンバ11に取り付けることができる。
【0033】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態においては、ECASバルブ30と、HSAバルブ40とをブラケット20に固定するようにしていたが、ブラケット20に固定するバルブとしては、これに限られず、例えば、サイレンサを有するバルブと、別のバルブとを固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 バルブ固定装置
11 クロスメンバ
11a 取付面
20 ブラケット
21 固定部
22 側面部
23 平面部
24 開孔
25 ボルト
30 ECASバルブ
31 バルブ本体部
31a チューブ取付部
32 サイレンサ
33 ボルト
40 HSAバルブ
41 ボルト
図1