特許第6575296号(P6575296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6575296シールドケーブルおよびシールドケーブルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575296
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】シールドケーブルおよびシールドケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/06 20060101AFI20190909BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20190909BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20190909BHJP
   H01B 13/26 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   H01B11/06
   H01B7/18 D
   H01B13/00 551Z
   H01B13/26 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-210104(P2015-210104)
(22)【出願日】2015年10月26日
(65)【公開番号】特開2017-84530(P2017-84530A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】黄 得天
(72)【発明者】
【氏名】秋山 理沙
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−192318(JP,U)
【文献】 特開2011−222262(JP,A)
【文献】 特開2012−133991(JP,A)
【文献】 特開2013−258009(JP,A)
【文献】 実公昭59−18580(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/06
H01B 7/18
H01B 13/00
H01B 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の電線と、前記二本の電線の双方に接触するように配置されたドレイン線と、
前記二本の電線および前記ドレイン線の周囲に螺旋状に重ね巻きされたシールドテープと、を備え、
前記シールドテープは、金属層を有する帯状体が帯幅方向に二つ折りにされて構成されており、前記二つ折りの折り目部が前記帯状体同士の重なり部分の外周側に位置し、かつ、前記重なり部分で前記金属層が四重となるように重ね巻きされており、ケーブル全長に渡って前記金属層が前記二本の電線および前記ドレイン線に接触している
シールドケーブル。
【請求項2】
前記帯状体は、前記金属層のみから構成されている
請求項1に記載のシールドケーブル。
【請求項3】
前記帯状体は、前記金属層と絶縁層との積層体によって構成されているとともに、前記絶縁層が前記二つ折りの内側に位置するように構成されている
請求項1に記載のシールドケーブル。
【請求項4】
前記シールドテープは、前記二つ折りによって対向する面同士が接着されている
請求項1から3のいずれかに記載のシールドケーブル。
【請求項5】
二本の電線および前記二本の電線の双方に接触するように配置されたドレイン線の周囲にシールドテープが螺旋状に重ね巻きされてなるシールドケーブルの製造方法であって、
前記シールドテープとして金属層を有する帯状体が帯幅方向に二つ折りにされて構成されたものを用意し、
前記シールドテープにおける前記二つ折りの折り目部の側に張力を与えつつ、前記折り目部が前記帯状体同士の重なり部分の外周側に位置し、かつ、前記重なり部分で前記金属層が四重となり、ケーブル全長に渡って前記金属層が前記二本の電線および前記ドレイン線に接触するように、前記シールドテープを前記二本の電線および前記ドレイン線の周囲に螺旋状に重ね巻きする
シールドケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドケーブルおよびシールドケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理機器の高性能化に伴って、機器間配線の大容量・高速化が欠かせないものとなっている。大容量・高速化に対応するものとしては、例えば、差動信号伝送用のシールドケーブルがある。
【0003】
差動信号伝送用のシールドケーブルとしては、差動信号を伝送するために並列配置された二本の絶縁電線(信号線)と、二本の絶縁電線の双方に接触するように配置されたドレイン線とを備え、これらの周囲にシールドテープが螺旋状に巻き付けられて構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、シールドケーブルを構成するシールドテープとしては、金属(例えば銅箔)からなる層と樹脂からなる層が積層された金属箔樹脂テープが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−130707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、情報処理機器の信号周波数が増加しつつあり、一部の情報処理機器では20〜25GHzまでの帯域での安定した信号伝送が要求されている。しかしながら、上述した従来のシールドケーブルでは、例えば13GHz以上の高周波帯域に現れる急激な減衰域である「サックアウト現象」が生じてしまい、高周波帯域での安定した信号伝送が行えないおそれがある。
【0006】
サックアウト現象を抑制するためには、シールドテープ(金属箔樹脂テープ)の表面で導通不良(電気的な分断)を生じさせないことが有効と考えられる。ただし、そのために、シールドテープの巻き付けが良好に行えなかったり、テープ巻き付け後のシールドケーブルの柔軟性(可撓性)が失われたりすることは、避けるべきである。
【0007】
本発明は、高周波帯域でのサックアウト現象を抑制するとともに、シールドテープの巻き付けを良好に行うことを可能にするシールドケーブルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
二本の電線と、前記二本の電線の双方に接触するように配置されたドレイン線と、
前記二本の電線および前記ドレイン線の周囲に螺旋状に重ね巻きされたシールドテープと、を備え、
前記シールドテープは、金属層を有する帯状体が帯幅方向に二つ折りにされて構成されており、前記二つ折りの折り目部が前記帯状体同士の重なり部分の外周側に位置し、かつ、前記重なり部分で前記金属層が四重となるように重ね巻きされており、ケーブル全長に渡って前記金属層が前記二本の電線および前記ドレイン線に接触している
シールドケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シールドケーブルについて、高周波帯域でのサックアウト現象を抑制するとともに、シールドテープの巻き付けを良好に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係るシールドケーブルの概略構成例を示す断面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るシールドテープの構成例を示す説明図である。
図3】本発明の第一実施形態に係るシールドテープの巻き付け態様の一例を示す説明図である。
図4】本発明の第一実施形態に係るシールドケーブルの製造方法の一工程の例を示す説明図である。
図5】本発明の第二実施形態に係るシールドテープの構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
<本発明の第一実施形態>
先ず、本発明の第一実施形態について説明する。ここでは、シールドケーブルとしてLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ケーブルを例に挙げる。LVDSケーブルは、差動信号伝送用のシールドケーブルとして用いられるものである。
【0013】
(1)シールドケーブルの構成
図1は、第一実施形態に係るシールドケーブルの概略構成例を示す断面図である。
図例のように、シールドケーブル1は、複数本の電線を備えている。複数本の電線としては、差動信号を伝送するために並列配置された二本の絶縁電線(信号線)10と、二本の絶縁電線10の双方に接触するように配置されたドレイン線20と、がある。さらに、シールドケーブル1は、絶縁電線10およびドレイン線20の周囲に巻き付けられたシールドテープ30を備えている。
【0014】
(絶縁電線)
絶縁電線10は、信号線導体11と、信号線導体11の周囲に形成された充実絶縁層12と、を有している。
【0015】
信号線導体11は、例えば、7本の信号線素線が撚り合わされて形成された撚線からなる。これにより、信号線導体11が単線からなる場合と比較して、耐屈曲性を向上させることができ、また表面積を増加させて高周波信号の伝送による表皮効果の影響を軽減することが可能となる。
【0016】
充実絶縁層12の材料としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が挙げられる。
【0017】
なお、発泡絶縁層は、ドレイン線20に押し潰されて変形し易いことから、絶縁電線10の絶縁層としては、変形し難い充実絶縁層を採用するほうが好ましい。
【0018】
(ドレイン線)
ドレイン線20は、複数(例えば、七本)のグランド線素線が撚り合わさって形成されてなることが好ましい。これにより、ドレイン線20と絶縁電線10との間の摩擦力を増加させることができ、ドレイン線20が所定の位置からズレることを防止することが可能となる。
【0019】
(シールドテープ)
シールドテープ30は、絶縁電線10およびドレイン線20を電気的に遮蔽するために、これらの周囲に巻き付けられたものである。つまり、絶縁電線10およびドレイン線20は、シールド用導体であるシールドテープ30によって囲われている。
【0020】
シールドテープ30は、シールド用導体として機能するために、金属層を有して構成されている。具体的には、シールドテープ30は、例えば、金属層を形成する銅圧延箔を用いて構成されている。銅圧延箔を用いるのは、銅が電気伝導度および展延性が高い金属だからである。ただし、金属層は、必ずしも銅圧延箔に限られることはなく、アルミニウム、ニッケル、銅等の金属材料またはこれらを含む合金材料によって形成されたものであってもよい。また、必ずしも単層である必要はなく、複数の金属材料が積層されたものであってもよい。
【0021】
本実施形態において、シールドテープ30は、銅圧延箔のみを用いて構成されている。つまり、本実施形態におけるシールドテープ30は、金属層のみから構成されているのである。
【0022】
ここで、シールドテープ30の構成について、さらに詳しく説明する。
図2は、第一実施形態に係るシールドテープの構成例を示す説明図である。
【0023】
図2(a)に示すように、シールドテープ30は、例えば、銅圧延箔からなる帯状体31を用いて構成されている。そして、シールドテープ30は、図2(b)および(c)に示すように、かかる帯状体31を帯幅方向に二つ折りにして構成されている。
【0024】
「帯幅方向に二つ折り」とは、折り目部32が帯状体31の帯幅方向の略中央付近に位置するように、すなわち折り目部32が帯状体31の長手方向(帯幅方向と直交する方向)に延びるように、帯状体31を二つに折り曲げた状態にすることをいう。
【0025】
したがって、帯状体31を帯幅方向に二つ折りにした後においては、図2(c)に示すように、その長手方向に沿って延びる両端縁のうち、一方の側に二つ折りの折り目部32が位置するとともに、他方の側に帯状体端縁33が位置することになる。なお、帯状体端縁33は、二つ折りにする前の帯状体31の端縁によって形成されるものであってもよいし、二つ折りにした後に銅圧延箔の切断によって形成されたものであってもよい。
【0026】
このように、銅圧延箔からなる帯状体31を帯幅方向に二つ折りにして構成されたシールドテープ30については、その二つ折りによって対向する面同士が接着されていることが好ましい。なお、面同士の接着手法については、特に限定されるものではなく、公知の手法を用いて行えばよい。
【0027】
また、以上のような構成のシールドテープ30は、絶縁電線10およびドレイン線20の周囲に螺旋状に重ね巻きされて、シールドケーブル1を構成する。
【0028】
「螺旋状に重ね巻き」とは、帯状体31によって構成されたシールドテープ30同士が互いに重なり合う部分を有するように、当該シールドテープ30を螺旋状に巻き付けた状態にすることをいう。
【0029】
ここで、シールドテープ30を巻き付けた状態について、さらに詳しく説明する。
図3は、第一実施形態に係るシールドテープの巻き付け態様の一例を示す説明図である。
【0030】
図例のように、シールドテープ30は、そのシールドテープ30を構成する帯状体31同士の重なり部分34を有し、かつ、その重なり部分34では二つ折りの折り目部32が外周側に位置するように、絶縁電線10およびドレイン線20の周囲に巻き付けられている。したがって、重なり部分34では、帯状体31を形成する銅圧延箔(すなわち金属層)が四重となるように重なり合うことになる。このように、重なり部分34で金属層同士が重なり合えば、互いの間の導通が確保されることになるので、サックアウトの発生周波数帯域を高周波数側にずらすことが可能になる。
【0031】
なお、シールドテープ30を重ね巻きした際の巻き付けピッチ、重なり部分34の幅方向寸法、シールドテープ30自体の幅方向寸法、シールドテープ30を構成する帯状体31の厚さ(銅圧延箔の厚さ)等については、特に限定されるものではなく、シールドケーブル1のケーブル長、ケーブル径、可撓性(柔軟性)等を考慮して適宜設定されたものであればよい。
【0032】
(2)シールドケーブルの製造方法
上述した構成のシールドケーブル1は、以下に述べる手順で製造される。
図4は、第一実施形態に係るシールドケーブルの製造方法の一工程の例を示す説明図である。
【0033】
シールドケーブル1の製造にあたっては、シールドテープ30として、銅圧延箔からなる帯状体31が帯幅方向に二つ折りにされて構成されたものを用意する。このように、帯状体31を二つ折りにしてシールドテープ30を構成すれば、折り目部32がない場合(単層構造の場合)に比べて強度向上が図れる。また、帯状体31を二つ折りにすればよいので、帯幅方向の一部分のみを折り返す場合とは異なり、帯状体31が薄い銅圧延箔からなる場合であっても容易に構成し得るようになる。なお、帯状体31を二つ折りにする手法については、特に限定されるものではなく、公知の手法を利用して行えばよい。
【0034】
その後は、二本の絶縁電線10を並列配置するとともに、これらの双方に接触するようにドレイン線20を配置した状態で、これらの周囲にシールドテープ30を螺旋状に重ね巻きする。このとき、シールドテープ30の巻き付けは、そのシールドテープ30における二つ折りの折り目部32の側に張力を与えつつ(図中矢印参照)、その折り目部32がシールドテープ30を構成する帯状体31同士の重なり部分34の外周側に位置するようにして行う。つまり、シールドテープ30の長手方向に沿って延びる両端縁のうち、帯状体端縁33が位置することになる側ではなく、二つ折りの折り目部32が位置する側に張力を与えつつ、シールドテープ30の巻き付けを行うようにする。
【0035】
帯状体端縁33は、当該端縁を形成する際の切断処理等の影響により微小クラックが存在している場合がある。そのため、帯状体端縁33の側に張力を与えると、当該張力に起因して微小クラックから亀裂が生じ、シールドテープ30が破損してしまうおそれがある。これに対して、二つ折りの折り目部32の側に張力を与えた場合であれば、微小クラックから亀裂が生じてしまうおそれがなく、しかも折り目部32による強度向上が図れているので、シールドテープ30の巻き付けを良好に行い得るようになる。
【0036】
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0037】
(a)本実施形態においては、銅圧延箔(金属層)を有する帯状体31によってシールドテープ30を構成している。そのため、シールドテープ30を絶縁電線10およびドレイン線20の周囲に螺旋状に重ね巻きした際に、金属層同士が重なり合うようにすることが可能となり、サックアウトの発生周波数帯域を高周波数側にずらすことができる。
【0038】
(b)また、本実施形態においては、帯状体31を二つ折りにしてシールドテープ30を構成している。そのため、折り目部32がない場合(単層構造の場合)に比べて、シールドテープ30の強度向上が図れる。さらには、帯状体31を二つ折りにすればよいので、帯幅方向の一部分のみを折り返す場合とは異なり、例えば帯状体31が薄い銅圧延箔からなる場合であっても、シールドテープ30を容易に構成することができる。
【0039】
(c)また、本実施形態においては、二つ折りの折り目部32が重なり部分34の外周側に位置するので、主として帯状体端縁33の側ではなく折り目部32の側に張力を与えつつシールドテープ30を巻き付けることになる。しかも、重なり部分34では帯状体31を形成する銅圧延箔(すなわち金属層)が四重であることから、シールドテープ30の幅方向の全域にわたって金属層が二重となった状態(すなわち帯状体を二つ折りにして構成された状態)にてシールドテープ30を巻き付けることになる。したがって、シールドテープ30を巻き付ける際に、例えば帯状体端縁33の側に張力を与える場合のように当該張力に起因して当該シールドテープ30が破損してしまうといったことがなく、また折り目部32がない場合(単層構造の場合)や一部分のみを折り返す場合等に比べて強度向上が図れるので、シールドテープ30の巻き付けを良好に行うことができる。
【0040】
(d)また、本実施形態においては、シールドテープ30を構成する帯状体31が銅圧延箔(金属層)のみから構成されている。そのため、帯状体31を二つ折りにしても、帯状体31同士を重ね合わせるようにしても、確実に導通が確保されることになり、サックアウトの発生周波数帯域を後述するように例えば25GHz以上にずらすことができる。
【0041】
(e)また、本実施形態で説明したように、シールドテープ30の二つ折りによって対向する面同士を接着した場合には、面同士がずれてしまうことがなくなるので、シールドテープ30の巻き付けを良好に行い得るようになる。
【0042】
<本発明の第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について説明する。ここでは、主として上述した第一実施形態との相違点を説明し、第一実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
【0043】
(4)シールドテープの構成
本実施形態では、シールドテープ30の構成が上述した第一実施形態の場合とは異なる。
図5は、第二実施形態に係るシールドテープの構成例を示す説明図である。
【0044】
本実施形態におけるシールドテープ30は、シールド用導体として機能するために金属層を有して構成されたものであるが、第一実施形態のような金属層のみから構成されたものではなく、図5(a)に示すような積層体35を用いて構成されている。積層体35は、金属層35aと絶縁層35bとが積層されて帯状体を構成する。
【0045】
金属層35aは、例えば、銅圧延箔によって形成され、その銅圧延箔が絶縁層35bに貼り付けられたものである。ただし、金属層35aは、必ずしも銅圧延箔に限られることはなく、アルミニウム、ニッケル、銅等の金属材料またはこれらを含む合金材料によって形成されたものであってもよい。また、必ずしも箔状のものが貼り付けられたものである必要はなく、蒸着層やめっき層等によって形成されたものであってもよい。また、必ずしも単層である必要はなく、複数の金属材料が積層されたものであってもよい。
【0046】
絶縁層35bは、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状樹脂材料を基材として形成されたものである。
【0047】
このような積層体35による帯状体は、図5(b)および(c)に示すように、帯幅方向に二つ折りにされてシールドテープ30を構成する。このとき、積層体35による帯状体は、絶縁層35bが内側に位置するように二つ折りにされる。これにより、積層体35による帯状体を二つ折りにした後においては、図5(c)に示すように、金属層35aが表面に露出することになる。
【0048】
以上のように構成されたシールドテープ30を絶縁電線10およびドレイン線20の周囲に螺旋状に重ね巻きすると、その重ね巻きの重なり部分34では、金属層35a同士が接するように積層体(帯状体)35が重なり合うとともに、絶縁層35bを間に挟んで金属層35aが四重となるように重なり合うことになる。
【0049】
(5)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、上述した第一実施形態における効果に加えて、以下に示す効果を奏する。
【0050】
(f)本実施形態においては、積層体(帯状体)35が金属層35aに加えて絶縁層35bを有しているので、その積層体(帯状体)35を用いて構成されたシールドテープ30の強度向上が図れ、シールドテープ30の巻き付けを良好に行うことができる。しかも、絶縁層35bが二つ折りの内側に位置するので、金属層35aが二つ折りの外側(表面側)に位置することになり、シールドテープ30を螺旋状に重ね巻きした場合に、金属層35a同士が重なり合うことになる。そのため、帯状体31を二つ折りにしても、帯状体31同士を重ね合わせるようにしても、確実に導通が確保されることになり、サックアウトの発生周波数帯域を後述するように例えば20GHz以上にずらすことができる。
【実施例】
【0051】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例の内容に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
先ず、上述した第一実施形態に対応する実施例1について説明する。
実施例1では、厚さ0.005〜0.008mmの銅圧延箔を帯幅方向に二つ折りにして、幅方向寸法が5〜10mmのシールドテープを形成した。つまり、100%金属からなるシールドテープを形成した。このように、銅圧延箔を二つ折りにしてシールドテープを形成することで、テープ自体の柔軟性(可撓性)を損なうことなく強度向上が図れ、しかも帯幅方向の一部分のみを折り返す場合に比べて容易に形成し得ることを確認した。
【0053】
そして、ドレインワイヤを有するツイナックスケーブル(すなわち第一実施形態における二本の絶縁電線10およびドレイン線20)の周囲に、形成したシールドテープを螺旋状に重ね巻きして、LVDSケーブルを構成した。このとき、二つ折りの折り目部の側に張力を与えつつ、その折り目部の側が重なり部分の外周側に位置するように巻き付けることで、シールドテープの巻き付けを良好に行えることを確認した。
【0054】
このように構成したLVDSケーブルは、ケーブル全長に渡って100%金属からなるシールドテープ同士が重なり合っており、かつ、シールドテープがドレインワイヤと接触している。このような構成により、サックアウトの発生周波数帯域を25GHz以上にずらせることを確認した。つまり、25GHzまでの高周波数帯域でサックアウトが生じないLVDSケーブルが得られることを確認した。
【0055】
(実施例2)
続いて、上述した第二実施形態に対応する実施例2について説明する。
実施例2では、厚さ0.002〜0.005mmのフィルム状PET材の一面に厚さ0.001〜0.008mmの銅薄膜を形成してなる帯状積層体を、帯幅方向に二つ折りにして、幅方向寸法が5〜10mmのシールドテープを形成した。このとき、フィルム状PET材が内側に位置するように帯状積層体を二つ折りにすることで、全表面が銅薄膜によって構成されるシールドテープを形成した。このように、フィルム状PET材を含む帯状積層体を用いてシールドテープを形成することで、100%金属からなる場合に比べて、引っ張り強さ等の強度を向上させ得ることを確認した。また、帯状積層体を二つ折りにしてシールドテープを形成することで、テープ自体の柔軟性(可撓性)を損なうことなく強度向上が図れ、しかも帯幅方向の一部分のみを折り返す場合に比べて容易に形成し得ることを確認した。
【0056】
そして、形成したシールドテープを、実施例1の場合と同様に、ドレインワイヤを有するツイナックスケーブルの周囲に螺旋状に重ね巻きして、LVDSケーブルを構成した。このとき、二つ折りの折り目部の側に張力を与えつつ、その折り目部の側が重なり部分の外周側に位置するように巻き付けることで、シールドテープの巻き付けを良好に行えることを確認した。
【0057】
このように構成したLVDSケーブルは、ケーブル全長に渡ってテープ表面に露出したが銅薄膜同士が重なり合っており、かつ、銅薄膜がドレインワイヤと接触している。このような構成により、サックアウトの発生周波数帯域を20GHz以上にずらせることを確認した。つまり、20GHzまでの高周波数帯域でサックアウトが生じないLVDSケーブルが得られることを確認した。
【0058】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0059】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
複数本の電線と、
前記複数本の電線の周囲に螺旋状に重ね巻きされたシールドテープと、を備え、
前記シールドテープは、金属層を有する帯状体が帯幅方向に二つ折りにされて構成されており、前記二つ折りの折り目部が前記帯状体同士の重なり部分の外周側に位置し、かつ、前記重なり部分で前記金属層が四重となるように重ね巻きされている
シールドケーブルが提供される。
【0060】
[付記2]
付記1のシールドケーブルであって、好ましくは、
前記帯状体は、前記金属層のみから構成されている。
【0061】
[付記3]
付記1のシールドケーブルであって、好ましくは、
前記帯状体は、前記金属層と絶縁層との積層体によって構成されているとともに、前記絶縁層が前記二つ折りの内側に位置するように構成されている。
【0062】
[付記4]
付記1から3のいずれかのシールドケーブルであって、好ましくは、
前記シールドテープは、前記二つ折りによって対向する面同士が接着されている。
【0063】
[付記5]
本発明の他の一態様によれば、
複数本の電線の周囲にシールドテープが螺旋状に重ね巻きされてなるシールドケーブルの製造方法であって、
前記シールドテープとして金属層を有する帯状体が帯幅方向に二つ折りにされて構成されたものを用意し、
前記シールドテープにおける前記二つ折りの折り目側の端縁の側に張力を与えつつ、前記二つ折りの折り目側の端縁が前記帯状体同士の重なり部分の外周側に位置するように、前記シールドテープを前記複数本の電線の周囲に螺旋状に重ね巻きする
シールドケーブルの製造方法が提供される。
【0064】
[付記6]
付記5に記載のシールドケーブルの製造方法であって、好ましくは、
前記帯状体は、前記金属層のみから構成されている。
【0065】
[付記7]
付記5に記載のシールドケーブルの製造方法であって、好ましくは、
前記帯状体は、前記金属層と絶縁層との積層体によって構成されているとともに、前記絶縁層が前記二つ折りの内側に位置するように構成されている。
【符号の説明】
【0066】
1…シールドケーブル、10…絶縁電線(信号線)、20…ドレイン線、30…シールドテープ、31…帯状体、32…折り目部、33…帯状体端縁、34…重なり部分、35…積層体(帯状体)、35a…金属層、35b…絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5