(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可動電極を挟んで一対の固定電極が対向した差圧センサを用いて、前記可動電極と前記一対の固定電極の間の一対のキャパシタの差動的な容量変化から差圧を測定する差圧測定装置であって、
前記可動電極に作用する差圧値の正負を反転させた場合の一方のキャパシタの容量を算出する算出部と、
前記一方のキャパシタの容量の算出値と前記他方のキャパシタの容量の実測値とを比較して前記差圧センサの故障を診断する診断部とを備えることを特徴とする差圧測定装置。
前記診断部が、前記一方のキャパシタの容量の算出値と前記他方のキャパシタの容量の実測値との差分が許容範囲内か否かに応じて、前記差圧センサの故障を診断することを特徴とする請求項1に記載の差圧測定装置。
可動電極を挟んで一対の固定電極が対向した差圧センサを用いて、前記可動電極と前記一対の固定電極の間の一対のキャパシタの差動的な容量変化から差圧を測定する差圧測定方法であって、
前記可動電極に作用する差圧値の正負を反転させた場合の一方のキャパシタの容量を算出するステップと、
前記一方のキャパシタの容量の算出値と前記他方のキャパシタの容量の実測値とを比較して前記差圧センサの故障を診断するステップとを有することを特徴とする差圧測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態の差圧測定装置について説明する。
図1は、本実施の形態の差圧測定装置の模式図である。
図2は、本実施の形態の差圧センサの模式図である。なお、差圧測定装置は、
図1に示す構成に限定されず、差圧センサは、
図2に示す構成に限定されない。
図1に示す差圧測定装置及び
図2に示す差圧センサは一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0011】
図1に示すように、差圧測定装置1は、静電容量式の差圧センサ10の一対のキャパシタC1、C2の差動的な容量変化から差圧(圧力差)を測定するように構成されている。また、差圧測定装置1では、差圧センサ10がA/D変換器30を介してマイクロコントローラ(以下、マイコンと称する)20に接続されており、マイコン20がD/A変換器40を介して外部機器に接続されている。マイコン20には、各種パラメータが記憶されたEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)50が接続されると共に、マイコン20の出力信号をデジタル変調する通信モデム60が接続されている。
【0012】
差圧センサ10のキャパシタC1、C2からA/D変換器30に容量の実測値が出力され、A/D変換器30にてアナログ信号からデジタル信号に変換される。A/D変換器30からマイコン20にキャパシタC1、C2の容量の実測値が出力され、マイコン20にて容量の実測値に基づいて差圧センサ10に作用する差圧が算出される。この場合、マイコン20によってEEPROM50から差圧センサ10の寄生容量が読み出され、この差圧センサ10の寄生容量とA/D変換器30から入力されたキャパシタC1、C2の容量の実測値とに基づいて差圧が測定される。
【0013】
マイコン20から出力された差圧の測定値は、D/A変換器40に出力され、D/A変換器40にてデジタル信号からアナログ信号に変換される。そして、D/A変換器40から外部のシステム側の制御機器や監視機器(不図示)に差圧の測定値が通知され、差圧センサ10が取り付けられた流体配管系の制御や監視等が実施される。なお、本実施の形態では、差圧測定装置1が差圧センサ10を備える構成にしているが、差圧測定装置1が差圧センサ10とは別体で構成されてもよい。すなわち、差圧測定装置1に対して差圧センサ10が着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0014】
図2に示すように、差圧センサ10は、可動電極としてのダイヤフラム11を挟んで一対の固定電極12a、12bを対向させた、いわゆる平行平板型の静電容量式の圧力センサで構成されている。差圧センサ10には、ダイヤフラム11と固定電極12aによってキャパシタC1が形成され、ダイヤフラム11と固定電極12bによってキャパシタC2が形成されている。また、一対の固定電極12a、12bにはそれぞれ小孔13a、13bが形成されており、各固定電極12a、12bの小孔13a、13bを通じてダイヤフラム11の両面に圧力pl、phが作用している。
【0015】
ダイヤフラム11に対して固定電極12a、12b側から圧力pl、phが入力されると、差圧p(=ph−pl)に比例してダイヤフラム11がΔdだけ変位する。一対の固定電極12a、12bの間でダイヤフラム11が変位するため、一方の固定電極12a(固定電極12b)にダイヤフラム11が近付いた分だけ、他方の固定電極12b(固定電極12a)からダイヤフラム11が遠ざかっている。このように、ダイヤフラム11の変位量に応じて固定電極12a−ダイヤフラム11の間隔と固定電極12b−ダイヤフラム11の間隔とが可変され、キャパシタC1、C2の静電容量が差動的に変化される。
【0016】
このように構成された差圧測定装置1では、キャパシタC1の容量の実測値をC1(p)、キャパシタC2の容量の実測値をC2(p)、寄生容量をC
kにしたとき、式(1)の中辺の算出式に基づいて差圧pに比例した値F(p)が求められる。また、値F(p)は、ダイヤフラム11の変位量をΔd、差圧ゼロ時の固定電極12とダイヤフラム11の間隔をdにしたとき、式(1)の右辺のように表される。なお、寄生容量C
kは電極以外の部分の導体間で発生する容量であり、差圧pは差圧センサ10に加わる最大差圧を1とした場合の比率である。
【数1】
【0017】
このとき、キャパシタC1、C2の容量の実測値C1(p)、C2(p)は、寄生容量をC
k、ダイヤフラム11の変位量をΔd、差圧ゼロ時の固定電極12とダイヤフラム11の間隔をd、電極面積をS、真空の誘電率をε
0、封入圧力媒体の比誘電率をε
rにしたとき、式(2)、(3)のように表される。
【数2】
【数3】
【0018】
ところで、差圧測定装置1は、石油プラント、化学プラント等の重要設備の制御に使用されるため、差圧センサ10の故障等を検出して測定値の信頼性を確保しなければならない。差圧センサ10を二重に設置することによって測定値の信頼性を確保する方法も考えられるが、構成が複雑になると共にコストが増加するという問題がある。そこで、本実施の形態の差圧測定装置1では、差圧センサ10の一対のキャパシタC1、C2が差動的に容量変化することに着目して、キャパシタC1、C2の容量の対称性が失われているか否かに応じて差圧センサ10の故障を検出するようにしている。
【0019】
具体的には、一方のキャパシタC1(C2)が他方のキャパシタC2(C1)と同じ向きに容量変化した場合を想定する。差圧センサ10が正常であれば、差圧pに応じたキャパシタC2(C1)の容量の変化と、差圧値の正負を反転させた場合のキャパシタC1(C2)の容量の変化と同じになるはずである。すなわち、差圧−pが加えられた場合のC1(−p)、C2(−p)をそれぞれC1’(p)、C2’(p)とすると、以下の式(4)の関係のように対称性が保たれている。以下の説明ではC1’(p)、C2’(p)をC1(p)、C2(p)の圧力反転値と呼ぶこととする。
【数4】
【0020】
一方で、差圧センサ10が物理的に破損している場合には、キャパシタC1、C2の容量の対称性が失われていることが多い。このため、一対のキャパシタC1、C2のいずれか一方の圧力反転値C1’(p)、C2’(p)といずれか他方の実測値C2(p)、C1(p)を比較することで、差圧センサ10の故障を診断することが可能になっている。よって、差圧測定装置1に差圧センサ10を二重に設けることなく、圧力反転値を算出することで差圧センサ10の故障を検出でき、差圧センサ10から出力された測定値の信頼性を確保することができる。
【0021】
以下、
図3を参照して、差圧測定装置による故障診断処理について説明する。
図3は、本実施の形態の差圧測定装置の機能ブロック図である。なお、
図3の機能ブロック図は、一例を示しており、適宜変更が可能である。また、以下の説明では、キャパシタC1の圧力反転値とキャパシタC2の実測値を比較する構成を説明しているが、キャパシタC2の圧力反転値とキャパシタC1の実測値を比較する場合も同様である。
【0022】
図3に示すように、差圧測定装置1には、キャパシタC1の算出値として圧力反転値を算出する算出部21、圧力反転値を補正する補正部22、差圧センサ10の故障を診断する診断部23が設けられている。算出部21は、ダイヤフラム11に作用する差圧値の正負を反転させた場合のキャパシタC1の容量である圧力反転値(C1’(p))を算出する。この場合、圧力反転値は、上記の式(2)、式(3)、式(4)から式(5)のように表される。
【数5】
【0023】
差圧ゼロ状態を考えて、上記の式(2)の差圧をゼロにすると、式(6)に示すようにε
0ε
rS/dが求められる。
【数6】
【0024】
また、上記の式(2)が式(7)に示すように変形されてΔd/d*pが求められ、式(7)に対して上記の式(6)が代入されて、式(8)に示すようにε
0ε
rS/dが除去される。
【数7】
【数8】
【0025】
そして、上記圧力反転値の式(5)に対して上記の式(6)、式(8)が代入されて式(9)が求められる。このように、キャパシタC1の容量の実測値をC1(p)、差圧がゼロ状態のキャパシタC1の容量の実測値をC1(0)、寄生容量をC
kとしたとき、式(9)に基づいて、キャパシタC1の容量の算出値C1(−p)、すなわち圧力反転値C1’(p)が算出される。
【数9】
【0026】
ところで、差圧センサ10の実製品には、差圧ゼロ状態のキャパシタC1、C2の容量差が誤差として生じている。補正部22は、この差圧ゼロ状態のキャパシタC1、C2の容量差に基づいて圧力反転値C1’(p)を補正する。例えば、式(10)に示すように、上記の式(9)の圧力反転値C1’(p)から誤差(C1(0)−C2(0))が減算されることで、補正後の圧力反転値C1’’(p)が算出される。このように、差圧ゼロ状態のキャパシタの容量の実測値C1(0)、C2(0)、寄生容量C
kを予めメモリ等に格納しておけば補正後の圧力反転値C1’’(p)を算出することができる。
【数10】
【0027】
診断部23は、キャパシタC1の補正後の圧力反転値C1’’(p)とキャパシタC2の実測値C2(p)とを比較して差圧センサ10の故障を診断する。理想的な一対のキャパシタC1、C2が完全対称で形成されていると仮定すると、補正後の圧力反転値C1’’(p)と実測値C2(p)とが一致するはずである。しかしながら、実製品には電極面積や寄生容量等にわずかな差があるので完全に一致することはない。よって、診断部23は、補正後の圧力反転値C1’’(p)と実測値C2(p)との差分(C1’’(p)−C2(p))が許容範囲内か否かに応じて故障を診断している。
【0028】
診断時の許容範囲は、測定圧力範囲及び使用温度範囲の全般に亘り、差圧センサ10の正常時には誤判定にならないように設定される。補正後の圧力反転値C1’’(p)と実測値C2(p)との差分が許容範囲内の場合には、差圧センサ10が正常と診断される。一方、補正後の圧力反転値C1’’(p)と実測値C2(p)との差分が許容範囲から外れる場合には、差圧センサ10が故障と診断される。診断部23によって差圧センサ10が故障と診断された場合には、差圧測定装置1から外部のシステム側の制御機器や監視機器に故障警報がアナログ出力又はデジタル出力される。
【0029】
なお、算出部21、補正部22、診断部23は、マイコン20(
図1参照)のプロセッサやメモリ等により構成されている。メモリは、上記したEEPROM50(
図1参照)に限られず、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成されてもよい。また、メモリには、算出部21、補正部22、診断部23による算出ステップ、補正ステップ、診断ステップを含む差圧測定方法を差圧測定装置に実行させるプログラム等が記憶されている。
【0030】
図4から
図6を参照して、キャパシタ特性および診断処理の一例について説明する。
図4は、本実施の形態のキャパシタ特性の一例を示す図である。
図5は、本実施の形態の差圧センサの正常時の診断結果の一例を示す図である。
図6は、本実施の形態の差圧センサの故障時の診断結果の一例を示す図である。なお、
図4から
図6においては説明の便宜上、
図2及び
図3の符号を使用して説明する。
【0031】
図4に示すように、一対のキャパシタC1、C2はダイヤフラム11に作用する差圧に応じて差動的に容量が変化している。
【0032】
図5に示すように、キャパシタC1がキャパシタC2と同じ向きに容量変化した場合の補正後の圧力反転値C1’’を算出したところ、キャパシタC2の曲線に近い圧力反転値C1’’の曲線が得られている。キャパシタC1の圧力反転値C1’’とキャパシタC2の容量の実測値との差分(C1’’−C2)を調べたところ、最低差圧(p=−100%)で最も差分が大きくなっている。この差分は差圧センサ10の製造時に生じた誤差に過ぎず、許容範囲の上限値と下限値の間に収まっているため、差圧センサ10は正常であると診断される。
【0033】
これに対し、
図6に示す他の差圧センサ10では、キャパシタC2が特定差圧(p=50%)で容量が急峻に変化しているが、キャパシタC1にはこのような急峻な変化が見られない。キャパシタC1の補正後の圧力反転値C1’’の曲線を算出したところ、特定差圧(p=50%)でキャパシタC2の曲線と圧力反転値C1’’の曲線とが大きく異なって完全に対称性が失われている。キャパシタC1の圧力反転値C1’’とキャパシタC2の容量の実測値との差分(C1’’−C2)が特定差圧(p=50%)で許容範囲の下限値を下回るため、差圧センサ10は故障であると診断される。
【0034】
続いて、
図7を参照して、差圧測定装置による故障診断方法の流れについて説明する。
図7は、本実施の形態の差圧測定装置による故障診断方法のフローチャートである。なお、
図7の故障診断方法は一例に過ぎず、適宜変更が可能である。また、
図7においては説明の便宜上、
図1から
図3の符号を使用して説明する。
【0035】
図7に示すように、先ず差圧センサ10にてキャパシタC1、C2の実測値C1(p)、C2(p)が検出される(ステップS01)。ダイヤフラム11に差圧が加わった分だけ、キャパシタC1、C2の容量が差動的に変化している。次に、算出部21によってキャパシタC1の容量の実測値C1(p)から、上記の式(9)に基づいてダイヤフラム11に作用する差圧値の正負を反転させた場合の圧力反転値C1’(p)が算出される(ステップS02)。このとき、EEPROM50に記憶された寄生容量C
k、差圧ゼロ状態の実測値C1(0)、C2(0)が圧力反転値の算出に使用されている。
【0036】
なお、寄生容量C
k、差圧ゼロ状態の実測値C1(0)、C2(0)は、差圧測定用のパラメータとして事前にEEPROM50に登録されている。寄生容量C
kは上記の式(1)の項になっている。キャパシタC1、C2の3つ以上の実測値C1(p)、C2(p)について、上記の式(1)から差圧に比例した3点以上の値F(p)が求められ、これら3点以上の値F(p)が直線的に並ぶ関係になるように寄生容量C
kが設定される。また、差圧ゼロ状態の実測値C1(0)、C2(0)のデータは、差圧測定装置1の製造工程で取得されている。
【0037】
次に、補正部22によって差圧ゼロ状態の実測値C1(0)、C2(0)の容量差によって圧力反転値C1’(p)が補正され、上記の式(10)に示すように補正後の圧力反転値C1’’(p)が求められる(ステップS03)。補正値は、差圧ゼロ状態の実測値C1(0)、C2(0)と同様に事前にEEPROM50に登録されていている。次に、診断部23によってキャパシタC1の補正後の圧力反転値C1’’(p)とキャパシタC2の実測値C2(p)との差分が許容範囲か否かが判定される(ステップS04)。
【0038】
この場合、補正後の圧力反転値C1’’(p)と実測値C2(p)の差分が許容範囲内であれば(ステップS04でYes)、診断部23によって差圧センサ10が正常であると診断される(ステップS05)。一方で、補正後の圧力反転値C1’’(p)と実測値C2(p)の差分が許容範囲外であれば(ステップS04でNo)、診断部23によって差圧センサ10が故障していると診断される(ステップS06)。差圧センサ10が故障している場合には、外部のシステム側の制御機器等に故障警報が通知されて、差圧センサ10の修理又は交換がオペレータに促される。
【0039】
以上のように、本実施の形態の差圧測定装置1によれば、一方のキャパシタC1が他方のキャパシタC2と同じように容量変化したと仮定した場合の容量を算出することができる。キャパシタC1、C2が差動的に容量変化するため、キャパシタC1の容量の算出値(圧力反転値)とキャパシタC2の容量の実測値とを比較することで、キャパシタC1、C2の対称性を確認することができる。キャパシタC1、C2の対称性が失われた場合には、差圧センサ10が物理的に破損しているとして、差圧センサ10の故障と診断される。よって、安価かつ簡易な構成で差圧センサ10の故障を高精度に検出することができる。
【0040】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0041】
例えば、本実施の形態において、キャパシタC1、C2のいずれか一方の圧力反転値といずれか他方の実測値との差分が許容範囲内か否かに応じて差圧センサ10の故障が診断されたが、この構成に限定されない。差圧センサ10の故障診断は、一対のキャパシタC1、C2のいずれか一方の圧力反転値といずれか他方の実測値とを比較して、差圧センサ10の故障を診断する構成であればよく、他に適切な比較方法を採用することができる。
【0042】
また、本実施の形態において、差圧ゼロ状態のキャパシタC1、C2の容量差に基づいて圧力反転値を補正する構成にしたが、この構成に限定されない。キャパシタC1、C2の差圧ゼロ状態の誤差が小さければ、圧力反転値を補正しなくてもよいし、補正の代わりに故障判定時の許容範囲を広げるようにしてもよい。
【0043】
また、本実施の形態において、可動電極としてダイヤフラム11を例示したが、この構成に限定されない。可動電極は、一対の固定電極12a、12bの間で差圧によって変位可能に構成されていれば、どのように構成されてもよい。
【0044】
下記に、上記の実施形態における特徴点を整理する。
上記実施形態に記載の差圧測定装置は、可動電極を挟んで一対の固定電極が対向した差圧センサを用いて、前記可動電極と前記一対の固定電極の間の一対のキャパシタの差動的な容量変化から差圧を測定する差圧測定装置であって、前記可動電極に作用する差圧値の正負を反転させた場合の一方のキャパシタの容量を算出する算出部と、前記一方のキャパシタの容量の算出値と前記他方のキャパシタの容量の実測値とを比較して前記差圧センサの故障を診断する診断部とを備えることを特徴とする。
【0045】
また、上記実施形態に記載の差圧測定方法は、可動電極を挟んで一対の固定電極が対向した差圧センサを用いて、前記可動電極と前記一対の固定電極の間の一対のキャパシタの差動的な容量変化から差圧を測定する差圧測定方法であって、前記可動電極に作用する差圧値の正負を反転させた場合の一方のキャパシタの容量を算出するステップと、前記一方のキャパシタの容量の算出値と前記他方のキャパシタの容量の実測値とを比較して前記差圧センサの故障を診断するステップとを有することを特徴とする。
【0046】
これらの構成によれば、一方のキャパシタが他方のキャパシタと同じように容量変化したと仮定した場合の容量を算出することができる。一対のキャパシタが差動的に容量変化するため、一方のキャパシタの容量の算出値と他方のキャパシタの容量の実測値とを比較することで、一対のキャパシタの対称性を確認することができる。一対のキャパシタの対称性が失われた場合には、差圧センサが物理的に破損しているとして、差圧センサの故障と診断される。よって、安価かつ簡易な構成で差圧センサの故障を高精度に検出することができる。
【0047】
また、上記実施形態に記載の差圧測定装置において、前記診断部が、前記一方のキャパシタの容量の算出値と前記他方のキャパシタの容量の実測値との差分が許容範囲内か否かに応じて、前記差圧センサの故障を診断する。この構成によれば、簡易な算出処理によって差圧センサの故障を診断することができる。
【0048】
また、上記実施形態に記載の差圧測定装置において、差圧ゼロ状態の前記一対のキャパシタの容量差に基づいて前記一方のキャパシタの容量の算出値を補正する補正部を備え、前記診断部が、前記補正後の前記一方のキャパシタの容量の算出値と前記他方のキャパシタの容量の実測値とを比較して前記差圧センサの故障を診断する。この構成によれば、差圧センサの実製品の差圧ゼロ状態で、一対のキャパシタに生じる誤差を考慮して差圧センサの故障を診断することができる。
【0049】
また、上記実施形態に記載の差圧測定装置において、前記算出部が、前記一方のキャパシタの容量の実測値をC1(p)、差圧ゼロ状態の前記一方のキャパシタの容量の実測値をC1(0)、寄生容量をC
kとしたとき、式(11)に基づいて、前記一方のキャパシタの容量の算出値C1(−p)が算出される。
【数11】
【0050】
また、上記実施形態に記載の差圧測定装置において、前記一方のキャパシタの容量の実測値をC1(p)、前記他方のキャパシタの容量の実測値をC2(p)、寄生容量をC
kとしたとき、式(12)に基づいて差圧に応じた値F(p)が求められ、前記一対のキャパシタの3つ以上の実測値C1(p)、C2(p)に基づく3点の前記値F(p)が直線的に並ぶように、前記寄生容量C
kが設定される。
【数12】
【0051】
また、上記実施形態に記載のプログラムは、差圧測定装置に上記の差圧測定方法の各ステップを実行させる。この構成によれば、差圧測定装置にプログラムをインストールすることで、差圧測定装置に安価かつ簡易な構成で差圧センサの故障を高精度に検出させることができる。