特許第6575345号(P6575345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575345
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】双方向コンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20190909BHJP
【FI】
   H02M3/155 H
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-246103(P2015-246103)
(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2017-112761(P2017-112761A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】工藤 将史
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−304644(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/055963(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0049820(US,A1)
【文献】 特開2010−206883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00−3/44
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの負極が同じ基準電位に接続された第1直流電源および第2直流電源の各正極間に配設されて、前記第1直流電源の第1直流電圧を降圧して前記第2直流電源に供給する降圧動作と、前記第2直流電源の第2直流電圧を昇圧して前記第1直流電源に供給する昇圧動作とを実行する双方向コンバータであって、
前記第2直流電源の前記正極に一端が接続されたコイルと、
前記コイルの他端にカソード端子が接続された第1ダイオード、当該第1ダイオードのアノード端子にカソード端子が接続されると共にアノード端子が前記基準電位に接続された第2ダイオード、および当該第2ダイオードの前記カソード端子と前記第1直流電源の前記正極との間にボディダイオードのカソードが当該正極側となる向きで配設された第1MOSFETを含み、前記コイルと相俟って前記降圧動作を実行する降圧回路と、
前記コイルの前記他端にアノード端子が接続された第3ダイオード、当該第3ダイオードのカソード端子にアノード端子が接続されると共にカソード端子が前記第1直流電源の前記正極に接続された第4ダイオード、および当該第4ダイオードの前記アノード端子と前記基準電位との間にボディダイオードのカソードが当該アノード端子側となる向きで配設された第2MOSFETを含み、前記コイルと相俟って前記昇圧動作を実行する昇圧回路とを備えている双方向コンバータ。
【請求項2】
前記第1ダイオードおよび前記第3ダイオードは、それぞれディスクリート部品としてのダイオードで構成されている請求項1記載の双方向コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非絶縁型の双方向コンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の非絶縁型の双方向コンバータとして、下記の特許文献1に開示された種々の双方向コンバータが知られている。そのうちの1つは、図2に示すように、直流電源部PS1との間でバッテリPS2の充電および放電を制御する双方向コンバータ(双方向DC−DCコンバータ)51であって、直流電源部PS1の正極とバッテリPS2の正極との間に直列的に接続された第1スイッチング素子SW1およびチョークコイルL1と、バッテリPS2から直流電源部PS1の方向を順方向として第1スイッチング素子SW1と並列に接続された第1ダイオードD1と、直流電源部PS1と並列的に接続された第1コンデンサC1と、バッテリPS2と並列的に接続された第2コンデンサC2と、第1スイッチング素子SW1とチョークコイルL1との接続点と直流電源部PS1,バッテリPS2の各負極との間に接続された第2スイッチング素子SW2と、バッテリPS2の電圧に対して逆方向を順方向として第2スイッチング素子SW2と並列に接続された第2ダイオードD2とを備えている。
【0003】
この双方向コンバータ51は、第2スイッチング素子SW2がオフ状態のときに第1スイッチング素子SW1がオン・オフを交互に繰り返すように制御されることにより、直流電源部PS1の電圧を降圧してバッテリPS2に供給する。また、この双方向コンバータ51は、第1スイッチング素子SW1がオフ状態のときに第2スイッチング素子SW2がオン・オフを交互に繰り返すように制御されることにより、バッテリPS2の電圧を昇圧して直流電源部PS1に供給する。
【0004】
また、この双方向コンバータ51では、チョークコイルL1を1つだけ用いて構成することができ、また第1スイッチング素子SW1にMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor-Field-Effect-Transistor )を使用することで、このMOSFETに内蔵されているボディダイオードで第1ダイオードD1を代用することができ、また第2スイッチング素子SW2についてもMOSFETを使用することで、このMOSFETのボディダイオードで第2ダイオードD2を代用することができることから、極めて簡易な構成で安価に双方向コンバータを構成することが可能となっている。
【0005】
また、特許文献1に開示された他の双方向コンバータ61は、図3に示すように、直流電源部PS1とバッテリPS2との間に、直流電源部PS1の電圧を降圧してバッテリPS2に供給する降圧コンバータ(ダウンコンバータ)62と、バッテリPS2の電圧を昇圧して直流電源部PS1に供給する昇圧コンバータ(アップコンバータ)63とを並列に接続して構成された双方向コンバータである。なお、降圧コンバータ62および昇圧コンバータ63は、公知のコンバータであるため、構成および動作の説明を省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−206883号公報(第2−3頁、第4−5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記の2つの双方向コンバータ51,61には下のような解決すべき課題がそれぞれ存在している。すなわち、各スイッチング素子SW1,SW2としてMOSFETを使用する構成を採用した双方向コンバータ51では、上記したようにその構成を極めて簡易なものとすることができるものの、MOSFETに内蔵のボディダイオードのリカバリ特性(リカバリ時間)は、ディスクリート部品としてのダイオード単体のリカバリ特性と比較して一般的に悪い(リカバリ時間が遅い)。このため、この双方向コンバータ51には、スイッチング素子SW1,SW2として使用されているMOSFETに内蔵のボディダイオードのリカバリ特性に起因する悪影響(例えば、リカバリ損失、サージ電圧およびノイズの増大など)が生じることがあるという課題が存在している。
【0008】
一方、降圧コンバータ62および昇圧コンバータ63を並列に接続して構成された双方向コンバータ61では、降圧コンバータ62および昇圧コンバータ63のそれぞれが主要部品としてのスイッチング素子、ダイオードおよびチョークコイルを別々に備える構成のため、上記した双方向コンバータ51のスイッチング素子SW1に対応する位置にディスクリート部品としてのダイオードが単体で配置されていると共にスイッチング素子SW2に対応する位置にもディスクリート部品としてのダイオードが単体で配置されている。このため、この双方向コンバータ61では、上記のようなボディダイオードのリカバリ特性に起因する悪影響については生じない。しかしながら、この双方向コンバータ61には、小型化や軽量化が難しいチョークコイルが2つ存在していることに起因して、コンバータ自体の小型化や軽量化が困難であるという別の課題が存在している。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、チョークコイルの個数を最小限の1つとし、かつボディダイオードのリカバリ特性に起因する悪影響の発生を回避可能な双方向コンバータを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明に係る双方向コンバータは、互いの負極が同じ基準電位に接続された第1直流電源および第2直流電源の各正極間に配設されて、前記第1直流電源の第1直流電圧を降圧して前記第2直流電源に供給する降圧動作と、前記第2直流電源の第2直流電圧を昇圧して前記第1直流電源に供給する昇圧動作とを実行する双方向コンバータであって、前記第2直流電源の前記正極に一端が接続されたコイルと、前記コイルの他端にカソード端子が接続された第1ダイオード、当該第1ダイオードのアノード端子にカソード端子が接続されると共にアノード端子が前記基準電位に接続された第2ダイオード、および当該第2ダイオードの前記カソード端子と前記第1直流電源の前記正極との間にボディダイオードのカソードが当該正極側となる向きで配設された第1MOSFETを含み、前記コイルと相俟って前記降圧動作を実行する降圧回路と、前記コイルの前記他端にアノード端子が接続された第3ダイオード、当該第3ダイオードのカソード端子にアノード端子が接続されると共にカソード端子が前記第1直流電源の前記正極に接続された第4ダイオード、および当該第4ダイオードの前記アノード端子と前記基準電位との間にボディダイオードのカソードが当該アノード端子側となる向きで配設された第2MOSFETを含み、前記コイルと相俟って前記昇圧動作を実行する昇圧回路とを備えている。
【0011】
また、本発明に係る双方向コンバータは、前記第1ダイオードおよび前記第3ダイオードは、それぞれディスクリート部品としてのダイオードで構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の双方向コンバータでは、降圧回路と昇圧回路とで1つのコイルを共有し、かつ降圧回路での降圧動作中にリカバリ特性が問題となる可能性のある第2ダイオードとして、MOSFETのボディダイオードではなく、ディスクリート部品としてのダイオード(例えばシリコンファーストリカバリダイオード)が配置されていると共に、昇圧回路での昇圧動作中にリカバリ特性が問題となる可能性のある第4ダイオードとして、MOSFETのボディダイオードではなく、ディスクリート部品としてのダイオード(例えばシリコンファーストリカバリダイオード)が配置されている。
【0013】
したがって、この双方向コンバータによれば、チョークコイルの個数を最小限の1つとすることができるため、コンバータ自体の小型化や軽量化を図ることができると共に、MOSFETのボディダイオードのリカバリ特性に起因する悪影響の発生を回避することができる。
【0014】
また、本発明の双方向コンバータによれば、降圧コンバータおよび昇圧コンバータを並列に接続する構成の双方向コンバータに対して、第1ダイオードおよび第3ダイオードが追加されることになるものの、これらのダイオードは安価な一般的なダイオード(シリコンダイオードなど)で構成することができるため、部品点数の増加に伴いコンバータ自体のコストが大幅に上昇するという事態の発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】双方向コンバータ1の回路図である。
図2】双方向コンバータ51の回路図である。
図3】双方向コンバータ61の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、双方向コンバータの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
双方向コンバータの一例としての双方向コンバータ1は、図1に示すように、コイル2と、コイル2と相俟って後述する降圧動作を実行する降圧回路3と、コイル2と相俟って後述する昇圧動作を実行する昇圧回路4と、降圧回路3および昇圧回路4に含まれる後述のスイッチ素子(MOSFET13,23)を駆動するための駆動信号Sd1,Sd2を生成する駆動信号生成回路5とを備え、互いの負極が同じ基準電位(グランドG)に接続された第1直流電源PS1および第2直流電源PS2の各正極間に配設されて、第1直流電源PS1の第1直流電圧V1を降圧して第2直流電源PS2に供給する降圧動作と、第2直流電源PS2の第2直流電圧V2(<V1)を昇圧して第1直流電源PS1に供給する昇圧動作とを実行する。
【0018】
コイル2は、一端が第2直流電源PS2の正極に接続されている。
【0019】
降圧回路3は、第1ダイオード11、第2ダイオード12および第1MOSFET13を備え、コイル2と相俟って上記の降圧動作を実行する。この場合、第1ダイオード11は、コイル2の他端P1にカソード端子が接続されている。第2ダイオード12は、第1ダイオード11のアノード端子にカソード端子が接続されると共に、アノード端子がグランドGに接続されている。各ダイオード11,12は、本例では一例としてディスクリート部品としてのシリコンファーストリカバリダイオードで構成されている。なお、第2ダイオード12については、後述するように、リカバリ特性に起因する悪影響の発生を回避するためにシリコンファーストリカバリダイオードで構成する必要があるが、第1ダイオード11についてはシリコンファーストリカバリダイオードよりも安価な一般的なダイオード(シリコンダイオードなど)で構成することもできる。
【0020】
第1MOSFET13は、本例では一例として、nチャネルMOSFETで構成されている。また、第1MOSFET13は、第2ダイオード12のカソード端子(各ダイオード11,12の接続点P2)と第1直流電源PS1の正極との間に、ボディダイオード13aのカソードが第1直流電源PS1の正極側となる向きで配設されている。具体的には、第1MOSFET13は、ボディダイオード13aのカソードでもあるドレイン端子が第1直流電源PS1の正極に接続され、かつボディダイオード13aのアノードでもあるソース端子が接続点P2に接続されている。
【0021】
昇圧回路4は、第3ダイオード21、第4ダイオード22および第2MOSFET23を備え、コイル2と相俟って上記の昇圧動作を実行する。この場合、第3ダイオード21は、コイルの他端P1(上記したように第1ダイオード11のカソード端子との接続点でもある。以下では、接続点P1ともいう)にアノード端子が接続されている。第4ダイオード22は、第3ダイオード21のカソード端子にアノード端子が接続されると共に、カソード端子が第1直流電源PS1の正極に接続されている。各ダイオード21,22は、本例では一例としてシリコンファーストリカバリダイオードで構成されている。なお、第4ダイオード22については、後述するように、リカバリ特性に起因する悪影響の発生を回避するためにシリコンファーストリカバリダイオードで構成する必要があるが、第3ダイオード21についてはシリコンファーストリカバリダイオードよりも安価な一般的なダイオード(シリコンダイオードなど)で構成することもできる。
【0022】
第2MOSFET23は、本例では一例として、nチャネルMOSFETで構成されている。また、第2MOSFET23は、第4ダイオード22のアノード端子(各ダイオード21,22の接続点P3)とグランドGとの間に、ボディダイオード23aのカソードが第4ダイオード22のアノード端子側となる向きで配設されている。具体的には、第2MOSFET23は、ボディダイオード23aのカソードでもあるドレイン端子が接続点P3に接続され、かつボディダイオード23aのアノードでもあるソース端子がグランドGに接続されている。
【0023】
また、本例では一例として、第1MOSFET13のドレイン端子(第4ダイオード22のカソード端子)とグランドGとの間にコンデンサC1(第1直流電源PS1に並列に接続されるコンデンサ)が接続され、またコイル2の一端とグランドGとの間にコンデンサC2(第2直流電源PS2に並列に接続されるコンデンサ)が接続されているが、このコンデンサC1,C2の配置は任意であり、配置を省略する構成を採用することもできる。
【0024】
駆動信号生成回路5は、例えば、第1直流電源PS1の第1直流電圧V1の電圧値、第2直流電源PS2の第2直流電圧V2、コイル2に流れる電流の電流値、およびコイル2に流れる電流の方向などの種々のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータを検出しつつ、検出したパラメータの内容に基づいて、降圧回路3および昇圧回路4のうちのいずれを動作させるかを決定して、降圧回路3を動作させるときには駆動信号Sd1を生成して出力し、昇圧回路4を動作させるときには駆動信号Sd2を生成して出力する。また、駆動信号生成回路5は、検出したパラメータの内容に基づいて、生成する駆動信号Sd1,Sd2のデューティ比についても決定する。
【0025】
続いて、双方向コンバータ1の動作について、蓄電池としての第2直流電源PS2を第1直流電源PS1で充電したり、第2直流電源PS2から第1直流電源PS1に電力を戻したりする例を挙げて説明する。
【0026】
例えば、駆動信号生成回路5は、第2直流電源PS2の第2直流電圧V2(蓄電池の充電電圧)を検出しつつ、予め規定された指令値(目標電圧値)と比較して、第2直流電圧V2の電圧値が指令値未満のときには、第1直流電源PS1から第2直流電源PS2に直流電力を供給すべく降圧回路3を作動させると決定して、駆動信号Sd1を生成して出力する。この場合、駆動信号生成回路5は、駆動信号Sd2については生成を停止する。
【0027】
これにより、この双方向コンバータ1では、降圧回路3の第1MOSFET13が駆動信号Sd1で駆動されて、オン状態とオフ状態とを繰り返す(つまり、降圧回路3が降圧動作を実行する)。一方、駆動信号Sd2の生成は停止されているため、第2MOSFET23はオフ状態に維持されている。この場合、第1MOSFET13がオン状態のときには、第1直流電源PS1の正極から、オン状態の第1MOSFET13、第1ダイオード11、接続点P1、コイル2を経由して第2直流電源PS2の正極に至り、さらには第2直流電源PS2の負極からグランドGに至る経路に電流(充電電流)が流れることで、第1直流電源PS1から第2直流電源PS2に直流電力が供給される(つまり、蓄電池が充電される)。
【0028】
また、第1MOSFET13がオン状態からオフ状態に駆動されたときには、コイル2に蓄積されていた電力により、コイル2の一端から、第2直流電源PS2の正極、第2直流電源PS2の負極、グランドG、第2ダイオード12および第1ダイオード11を経由して接続点P1(コイル2の他端)に至る経路に電流(充電電流)が流れることで、第2直流電源PS2への直流電力の供給が継続される(つまり、蓄電池の充電が継続される)。
【0029】
このようにして、降圧回路3が降圧動作を実行している状態において、第1MOSFET13がオフ状態からオン状態に切り替わるときに、第2ダイオード12のカソード端子の電圧(接続点P2の電圧)は、ほぼゼロボルト(グランドGの電圧)に近い電圧から第1直流電源PS1の第1直流電圧V1に急激に移行し、第2ダイオード12はオン状態からオフ状態に移行する。また、昇圧回路4が昇圧動作を実行している状態においては、第2MOSFET23がオフ状態からオン状態に切り替わるときに、第4ダイオード22のアノード端子の電圧(接続点P3の電圧)は、第1直流電源PS1の第1直流電圧V1に近い電圧からほぼゼロボルト(グランドGの電圧)に近い電圧に急激に移行し、第4ダイオード22はオン状態からオフ状態に移行する。
【0030】
ここで、第2ダイオード12および第4ダイオード22が、仮に、MOSFET13,23に内蔵のボディダイオード13a,23aのリカバリ特性と同等のリカバリ特性(リカバリ時間がシリコンファーストリカバリダイオードなどのリカバリ時間よりも長いという特性)を有するものであるときには、この長いリカバリ時間に起因して、カソード端子からアノード端子に向けて流れる電流の電流値が増大し、上記したようなリカバリ特性に起因する悪影響(例えば、リカバリ損失、サージ電圧およびノイズの増大など)が生じることがある。しかしながら、この双方向コンバータ1では、第2ダイオード12および第4ダイオード22が、ボディダイオード13a,23aのリカバリ特性よりも良好なリカバリ特性(リカバリ時間が短いという特性)を有するシリコンファーストリカバリダイオードで構成されているため、カソード端子からアノード端子に向けて流れる電流の電流値を大幅に低減することができる結果、リカバリ特性に起因する上記のような悪影響の発生が回避されている。
【0031】
また、例えば、駆動信号生成回路5は、第2直流電源PS2の第2直流電圧V2(蓄電池の充電電圧)を検出しつつ、予め規定された指令値(目標電圧値)と比較して、第2直流電圧V2の電圧値が指令値以上のときには、第2直流電源PS2から第1直流電源PS1に直流電力を戻すべく昇圧回路4を作動させると決定して、駆動信号Sd2を生成して出力する。この場合、駆動信号生成回路5は、駆動信号Sd1については生成を停止する。
【0032】
これにより、この双方向コンバータ1では、昇圧回路4の第2MOSFET23が駆動信号Sd2で駆動されて、オン状態とオフ状態とを繰り返す(つまり、昇圧回路4が昇圧動作を実行する)。一方、駆動信号Sd1の生成は停止されているため、第1MOSFET13はオフ状態に維持されている。この場合、第2MOSFET23がオン状態のときには、第2直流電源PS2の正極から、コイル2、第3ダイオード21、オン状態の第2MOSFET23、およびグランドGを経由して第2直流電源PS2の負極に至る経路に電流(放電電流)が流れることで、コイル2に電力が蓄積される。
【0033】
また、第2MOSFET23がオン状態からオフ状態に駆動されたときには、第2直流電源PS2の第2直流電圧V2に対してコイル2に誘起される起電力が加算された直流電圧が接続点P1に発生する。このため、接続点P1から、第3ダイオード21および第4ダイオード22を経由して第1直流電源PS1の正極に至り、さらには第1直流電源PS1の負極およびグランドGを経由して第2直流電源PS2の負極に至る経路に電流(放電電流)が流れることで、第2直流電源PS2から第1直流電源PS1に直流電力が戻される。この場合、この双方向コンバータ1において、蓄電池としての第2直流電源PS2を第1直流電源PS1で充電する動作と、第2直流電源PS2から第1直流電源PS1に電力を戻す動作との切り替わりの際に、この2つの動作が交互に繰り返されるという不安定な動作状態に陥ることを防止するため、この2つの動作を共に停止する停止領域(停止期間)を設定する構成を採用することもできる。
【0034】
このように、この双方向コンバータ1では、降圧回路3と昇圧回路4とで1つのコイル2を共有し、かつ降圧回路3での降圧動作中にリカバリ特性が問題となる可能性のある第2ダイオード12として、MOSFETのボディダイオードではなく、ディスクリート部品としてのシリコンファーストリカバリダイオードが接続点P2とグランドGとの間に配置されていると共に、昇圧回路4での昇圧動作中にリカバリ特性が問題となる可能性のある第4ダイオード22として、MOSFETのボディダイオードではなく、ディスクリート部品としてのシリコンファーストリカバリダイオードが接続点P3と第1直流電源PS1の正極との間に配置されている。
【0035】
したがって、この双方向コンバータ1によれば、チョークコイルの個数を最小限の1つ(コイル2だけ)とすることができるため、コンバータ自体の小型化や軽量化を図ることができると共に、上記したリカバリ特性に起因する悪影響の発生を回避することができる。
【0036】
また、この双方向コンバータ1によれば、背景技術において説明した双方向コンバータ61の構成に対して、第1ダイオード11および第3ダイオード21が追加されることになるものの、これらのダイオード11,21は安価な一般的なダイオード(シリコンダイオードなど)で構成することができるため、部品点数の増加に伴いコンバータ自体のコストが大幅に上昇するという事態の発生を回避することができる。
【0037】
なお、上記の双方向コンバータ1では、第1MOSFET13および第2MOSFET23をnチャネルMOSFETで構成しているが、pチャネルMOSFETで構成することもできる。この場合には、図示はしないが、pチャネルMOSFETのボディダイオードの向きが図1中のnチャネルMOSFETのボディダイオード13aやボディダイオード23aの向きと同じになるように、pチャネルMOSFETをnチャネルMOSFETに代えて配置する。
【0038】
また、上記の双方向コンバータ1では、第2ダイオード12および第4ダイオード22にリカバリ特性の良好なシリコンファーストリカバリダイオードを使用しているが、印加される電圧によっては、シリコンファーストリカバリダイオードよりは特性は落ちるものの一般的には十分なリカバリ特性を有するショットキーバリアダイオードを使用することもできる。また、第1ダイオード11および第3ダイオード21としてディスクリート部品としてのダイオードを使用しているが、図示はしないが、MOSFETに内蔵のボディダイオードを使用することもできる。この場合、第1ダイオード11としてボディダイオードを使用したときには、降圧回路3の降圧動作中は、このボディダイオードを内蔵するMOSFETについては常時オン状態となるように駆動する。また、第3ダイオード21としてボディダイオードを使用したときには、昇圧回路4の昇圧動作中は、このボディダイオードを内蔵するMOSFETについては常時オン状態となるように駆動する。
【符号の説明】
【0039】
1 双方向コンバータ
2 コイル
3 降圧回路
4 昇圧回路
11 第1ダイオード
12 第2ダイオード
13 第1MOSFET
21 第3ダイオード
22 第4ダイオード
23 第2MOSFET
PS1 第1直流電源
PS2 第2直流電源
V1 第1直流電圧
V2 第2直流電圧
図1
図2
図3