特許第6575417号(P6575417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575417
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】車両用走行モータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/00 20060101AFI20190909BHJP
   H02P 7/29 20160101ALI20190909BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B60L7/00 102C
   H02P7/29 G
   B66F9/24 W
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-72540(P2016-72540)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-184574(P2017-184574A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】深津 利成
(72)【発明者】
【氏名】清水 賢典
(72)【発明者】
【氏名】西川原 雅
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−006502(JP,A)
【文献】 特開平07−046707(JP,A)
【文献】 特開平10−285714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 7/00
B66F 9/24
H02P 7/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行モータとして直流分巻モータを用い、前記直流分巻モータのアーマチャを通電する回路としてアーマチャ通電用スイッチング素子のブリッジ構成とするとともに、前記直流分巻モータのフィールドコイルを通電する回路としてフィールドコイル通電用スイッチング素子のブリッジ構成とした車両用走行モータの制御装置であって、
前記アーマチャ通電用スイッチング素子及び前記フィールドコイル通電用スイッチング素子をデューティ制御する制御部と、
前記アーマチャに流れる電流を検出する電流検出手段と、
を備え、
前記制御部は、前記電流検出手段によって検出された今回のアーマチャ電流から前回のアーマチャ電流を減算することにより前記アーマチャに流れる電流の変化量を経時的に算出し、
前記制御部は、回生制動モードプラギングモードとを切り替え可能に構成され、スイッチバック操作されることに基づいて回生制動モードを設定し、
前記制御部は、アーマチャ通電用デューティがゼロであり、かつ回生制動モードにおいて算出される前記アーマチャに流れる電流の変化量の絶対値が閾値以下であると、それまでの回生制動モードからプラギングモードに切り替える切替手段を有することを特徴とする車両用走行モータの制御装置。
【請求項2】
フォークリフトに搭載されるものであることを特徴とする請求項1に記載の車両用走行モータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用走行モータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バッテリフォークリフト等の車両において走行モータとして直流分巻モータを使用して回生制動する技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3626893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、直流分巻モータを回生制動する際に制動にてモータの回転数が低下してくると、回生制動ではトルクが保てなくなるので、プラギング(逆相制動)に切り替える必要がある。このとき、回転センサを用いてモータ回転数が閾値よりも小さくなると回生制動モードからプラギングモードに切り替えることになるが、走行モータに回転センサが付いていない車両においても回生制動モードからプラギングモードに切り替える必要がある。
【0005】
本発明の目的は、回転センサが付いていない走行モータに対し回生制動モードからプラギングモードに切り替えることができる車両用走行モータの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、走行モータとして直流分巻モータを用い、前記直流分巻モータのアーマチャを通電する回路としてアーマチャ通電用スイッチング素子のブリッジ構成とするとともに、前記直流分巻モータのフィールドコイルを通電する回路としてフィールドコイル通電用スイッチング素子のブリッジ構成とした車両用走行モータの制御装置であって、前記アーマチャ通電用スイッチング素子及び前記フィールドコイル通電用スイッチング素子をデューティ制御する制御部と、前記アーマチャに流れる電流を検出する電流検出手段と、を備え、前記制御部は、前記電流検出手段によって検出された今回のアーマチャ電流から前回のアーマチャ電流を減算することにより前記アーマチャに流れる電流の変化量を経時的に算出し、前記制御部は、回生制動モードプラギングモードとを切り替え可能に構成され、スイッチバック操作されることに基づいて回生制動モードを設定し、
前記制御部は、アーマチャ通電用デューティがゼロであり、かつ回生制動モードにおいて算出される前記アーマチャに流れる電流の変化量の絶対値が閾値以下であると、それまでの回生制動モードからプラギングモードに切り替える切替手段を有することを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、切替手段により、回生制動モードにおいて電流検出手段により検出されたアーマチャに流れる電流の変化量の絶対値が閾値以下であると、それまでの回生制動モードからプラギングモードに切り替えられる。このように、アーマチャに流れる電流の変化量を切替タイミングの検出要素として捉えることにより回転センサが付いていない走行モータに対し回生制動モードからプラギングモードに切り替えることができる。
【0008】
請求項2に記載のように、請求項1に記載の車両用走行モータの制御装置において、フォークリフトに搭載されるものであるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転センサが付いていない走行モータに対し回生制動モードからプラギングモードに切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】フォークリフトの概略側面図。
図2】フォークリフト用走行モータの制御装置の回路図。
図3】作用を説明するためのフローチャート。
図4】(a),(b)は作用を説明するためのタイムチャート。
図5】(a),(b)は作用を説明するためのタイムチャート。
図6】第2の実施形態を説明するためのフローチャート。
図7】(a),(b),(c)は第2の実施形態を説明するためのタイムチャート。
図8】比較のためのタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、フォークリフト10はバッテリフォークリフトであって、電動モータにて搬送・荷役作業を行うフォークリフトである。フォークリフト10の車体11の前側下部には駆動輪(前輪)12aが設けられ、車体11の後側下部には操舵輪(後輪)12bが設けられている。車体11の前部には荷役装置13が設けられている。
【0012】
荷役装置13を構成するマスト14は車体11の前部に立設されている。マスト14は車体11に対して前後に傾動可能に支持された左右一対のアウタマスト14aと、これにスライドして昇降するインナマスト14bとからなる。各アウタマスト14aの後部にはリフトシリンダ15が配設されている。インナマスト14bの内側にはフォーク16を備えたリフトブラケット17が昇降可能に支持されている。そして、リフトシリンダ15の伸縮作動によりフォーク16がリフトブラケット17とともに昇降される。
【0013】
左右一対のティルトシリンダ18は、その基端側が車体(車体フレーム)11に対して回動可能に連結されるとともに、先端側がアウタマスト14aの側面に回動可能に連結されている。マスト14はティルトシリンダ18が伸縮駆動されることで前後に傾動する。
【0014】
運転室19には運転者が着座可能な運転シート20が設けられている。運転シート20の前方には、ハンドルコラム21が設けられ、ハンドルコラム21には、操舵輪12bの舵角を変更するための操舵ハンドル22が装着されている。運転室19の前側にリフトレバー23およびティルトレバー24が装備されている。リフトレバー23はフォーク16を昇降させるためのレバーであり、ティルトレバー24はマスト14を前後方向に傾動させるためのレバーである。運転席の床面にはアクセルペダル25が設けられ、アクセルペダル25の操作量(アクセル開度)に応じた車速にされる。
【0015】
また、ハンドルコラム21の側面にはディレクションレバー(前後進レバー)26が設けられ、ディレクションレバー26は車両の走行方向(進行方向)を指示するためのものである。
【0016】
車体11にはバッテリ27、走行モータ(走行用電動モータ)28および荷役モータ(荷役用電動モータ)29が搭載されている。走行モータ28として直流分巻モータを用いている。バッテリ27により走行モータ28を駆動させ、駆動輪12aが駆動されるようになっている。詳しくは、走行モータ28の出力軸が駆動輪12aの回転軸と減速機を介して連結されており、走行モータ28の駆動により出力軸が回転するとその回転に伴って駆動輪12aの回転軸が回転して駆動輪12aが駆動される。
【0017】
また、バッテリ27により荷役モータ29が駆動され、この荷役モータ29の駆動により油圧ポンプ(図示略)が駆動される。この油圧ポンプの駆動に基づいてリフトシリンダ15やティルトシリンダ18を伸縮動作してフォーク16の上下動やティルト動作を行うことができるようになっている。
【0018】
図2に示すように、フォークリフト10には走行モータ28の制御装置30が搭載されている。直流分巻モータである走行モータ28は、アーマチャ(電機子)32とフィールドコイル(界磁コイル)33を有する。アーマチャ32はロータに設けられ、フィールドコイル33はステータに設けられる。
【0019】
制御装置30はブリッジ回路31を有する。ブリッジ回路31は6つのスイッチング素子Q1〜Q6を有する。走行モータ(直流分巻モータ)のアーマチャ32を通電する回路としてアーマチャ通電用スイッチング素子Q5,Q6のブリッジ構成としている。走行モータ(直流分巻モータ)のフィールドコイル33を通電する回路としてフィールドコイル通電用スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のブリッジ構成としている。
【0020】
詳しくは、直流電源としてのバッテリ27の正極に正極母線Lpが接続されるとともにバッテリ27の負極に負極母線Lnが接続されている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間にスイッチング素子Q1,Q2が直列接続されている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間にスイッチング素子Q3,Q4が直列接続されている。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2の間の中点とスイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4の間の中点との間にフィールドコイル33(ステータコイル)が接続されている。
【0021】
正極母線Lpと負極母線Lnとの間にスイッチング素子Q5,Q6が直列接続されている。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6の間の中点と負極母線Ln(グランド)との間にアーマチャ32(ロータコイル)が接続されている。即ち、スイッチング素子Q6に対し並列にアーマチャ32が接続されている。
【0022】
各スイッチング素子Q1〜Q6には、パワーMOSFETが使用されている。なお、スイッチング素子としてIGBT(絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ)を使用してもよい。各スイッチング素子Q1〜Q6には、それぞれ帰還ダイオードD1〜D6が逆並列接続されている。
【0023】
制御装置30は電流検出手段としての電流センサ34,35を備えている。アーマチャ32に対し直列に電流センサ34が設けられ、電流センサ34によりアーマチャ32に流れる電流(アーマチャ電流)Iaが検出される。フィールドコイル33に対し直列に電流センサ35が設けられ、電流センサ35によりフィールドコイル33に流れる電流(フィールド電流)Ifが検出される。
【0024】
正極母線Lpにおけるバッテリ27側には主回路コンタクタ36が設けられている。
制御装置30は、コントローラ37を備えている。コントローラ37はマイコンとメモリ等を有し、メモリには走行モータ28を駆動するのに必要な各種制御プログラムおよびその実行に必要な各種データやマップが記憶されている。制御プログラムには、走行モータ28を回転駆動させるための制御プログラム等が含まれ、回生制動やプラギングを実行することができる。
【0025】
図2においてコントローラ37は各スイッチング素子Q1〜Q6のゲートに接続されている。制御部としてのコントローラ37は、アーマチャ通電用スイッチング素子Q5,Q6及びフィールドコイル通電用スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4をデューティ制御する。
【0026】
コントローラ37には電流センサ34,35が接続されている。そして、コントローラ37は、各センサ34,35の検出信号に基づいて、走行モータ28を目標出力となるように制御するデューティ信号を各スイッチング素子Q1〜Q6に出力する。
【0027】
コントローラ37は、乗員(オペレータ)による操作に伴い操作センサから出力される操作信号を入力して車両動作を制御する。より具体的には、コントローラ37にはディレクションスイッチ38と、アクセルセンサ39が電気的に接続されている。ディレクションスイッチ38は、ハンドルコラム21に配設されており、ディレクションレバー26の操作位置(前進位置又は後進位置)を検出する。ディレクションスイッチ38は、ディレクションレバー26の操作位置に応じた検出信号をコントローラ37に出力する。そして、コントローラ37は、ディレクションスイッチ38からの検出信号を入力することによりディレクションレバー26の操作位置が前進位置又は後進位置であることを検知する。
【0028】
アクセルセンサ39はアクセルペダル25の操作量を検出する。コントローラ37はアクセルセンサ39からの信号を入力することによりアクセルペダル25の操作の有無および操作量(アクセル開度)を検知する。このアクセル開度に応じてトルクが決められ、アーマチャ32の回生電流を制御して回生トルクがアクセル開度に応じて決められる。即ち、アクセルペダル25を踏むとアーマチャ電流を多く流すようにしており、この電流を制御するためにデューティが決められる。
【0029】
コントローラ37は各種の操作を検知してアクセルペダル25の操作量に応じた走行モータ28の回転速度となるように走行モータ28を制御して車両速度を調整する。
また、コントローラ37は電流センサ34,35からの信号によりアーマチャ32に流れる電流(アーマチャ電流)Ia及びフィールドコイル33に流れる電流(フィールド電流)Ifを検知する。コントローラ37は、回生制動モードからプラギングモードに切り替え可能に構成されている。フォークリフト10においては走行モータ28に回転センサが付いていない。
【0030】
次に、フォークリフト10の走行モータ28の制御装置30の作用について説明する。
コントローラ37は、ディレクションレバー26がスイッチバック操作(前進から後進に操作、または、後進から前進に操作)されるとともにアクセルペダル25が踏み込まれていると回生制動モードを設定するとともに、その後に回生制動モードからプラギングモード(逆相制動モード)に移行する。以下の説明では前進から後進に切り替えた場合を想定している。コントローラ37は図3に示す処理を実行して回生制動モードからプラギングモードに切り替える。
【0031】
図3に示すように、コントローラ37はステップS100でディレクションレバー26の操作により車両の走行方向(進行方向)が変わるか否か判定する。コントローラ37は車両の走行方向(進行方向)が変わると、ステップS101に移行して回生制動モードを設定する。回生制動モードにおいては、コントローラ37は例えば図2のスイッチング素子Q1,Q4,Q5をデューティ制御して図2において破線で示す電流経路でフィールドコイル33とアーマチャ32を通電する。
【0032】
つまり、アーマチャ32に発生する逆起電力でアーマチャ32→スイッチング素子Q5→スイッチング素子Q1→フィールドコイル33→スイッチング素子Q4→アーマチャ32の経路でフィールドコイル33を通電する。また、アーマチャ32に発生する逆起電力による電流を、アーマチャ32→スイッチング素子Q5→バッテリ27→アーマチャ32の経路で流してアーマチャ32に発生する逆起電力をバッテリ27に戻す。
【0033】
コントローラ37は図3のステップS102でアクセル開度に応じて、実際のアーマチャ電流Iaが、目標のアーマチャ電流Iaとなるようにスイッチング素子Q5(Q6)のデューティ、即ち、アーマチャデューティを決定する。コントローラ37はステップS103でアーマチャデューティがゼロか否か判定して、アーマチャデューティがゼロでなければステップS105で何も処理せず(ノーオペレーション)、ステップS103でアーマチャデューティがゼロであれば(図4(a)のt1のタイミング及び図5(a)のt11のタイミング)、ステップS104に移行する。コントローラ37はステップS104でフィールド電流Ifとアーマチャ電流Iaを調整して実際のアーマチャ電流と目標のアーマチャ電流とを等しくすべくスイッチング素子Q5(Q6)のデューティを調整する。
【0034】
コントローラ37はステップS106において電流センサ34により検出されたアーマチャ32に流れる電流(アーマチャ電流)Iaの変化量(今回のアーマチャ電流Ia(n)から前回のアーマチャ電流Ia(n−1)を減算した値)の絶対値が第1の閾値X1以下か否か判定する。そして、コントローラ37はアーマチャ電流Iaの変化量の絶対値が第1の閾値X1以下でないとステップS108に移行して今回のアーマチャ電流Ia(n)の絶対値が第2の閾値X2以下か否か判定する。コントローラ37はアーマチャ電流Iaの変化量の絶対値が第1の閾値X1よりも大きく、かつ、アーマチャ電流Iaの絶対値が第2の閾値X2よりも大きいとステップS109で回生制動モードを継続する。
【0035】
一方、コントローラ37はアーマチャ電流Iaの変化量の絶対値が第1の閾値X1以下、もしくは、アーマチャ電流Iaの絶対値が第2の閾値X2以下の場合、ステップS107に移行してプラギングモードを設定する。
【0036】
プラギングモードにおいては、コントローラ37は例えば図2のスイッチング素子Q2,Q3,Q5をデューティ制御して図2において一点鎖線で示す電流経路でフィールドコイル33とアーマチャ32の通電経路を確保する。
【0037】
つまり、バッテリ27の正極→スイッチング素子Q3→フィールドコイル33→スイッチング素子Q2→バッテリ27の負極の経路でフィールドコイル33を通電する。また、アーマチャ32に対し、バッテリ27の正極→スイッチング素子Q5→アーマチャ32→バッテリ27の負極の経路で電流を流す。
【0038】
図4,5を用いて一般的な減速時におけるアーマチャ電流Ia、フィールド電流Ifの挙動について言及する。
図4(a)及び図5(a)には、車両減速時におけるフィールドコイル33に流れる電流(フィールド電流)If、アーマチャ32に流れる電流(アーマチャ電流)Ia、アーマチャ通電用デューティを示す。図4(b)及び図5(b)には、アーマチャ32に流れる電流(アーマチャ電流)Iaの変化量を示す。図4(a),(b)は平坦路での挙動を示し、図5(a),(b)は坂路での挙動を示す。
【0039】
図4(a)及び図5(a)において横軸に時間をとり、縦軸にフィールドコイル33に流れる電流(フィールド電流)If、アーマチャ32に流れる電流(アーマチャ電流)Ia、アーマチャ通電用デューティをとっている。コントローラ37は、アクセル開度に応じたアーマチャ電流Iaを流すべくアクセル開度に応じたアーマチャ通電用デューティを設定する。図4(b)及び図5(b)において横軸に時間をとり、縦軸にアーマチャ電流Iaの変化量をとっている。
【0040】
直流分巻モータの制御について、坂路でスイッチバック操作をした際、停止の際においては回生制動力より外力(路面の傾斜、荷重等に応じた力)が上回るため機台が停止せずに微速でずり下がる現象が発生する。そこで、回生制動からプラギングに切り替えて遷移させる必要があるが、平坦路と坂路ではアーマチャ電流Iaとフィールド電流Ifの振る舞いが異なるため、平坦路と坂路とでフィーリングを統一するのが困難である。つまり、平坦路でフィーリングを調整すると坂路において回生制動からプラギングに切替(遷移)できない現象が発生する。
【0041】
フォークリフト10での回生制動時におけるアーマチャ通電用デューティの変化量について、平坦路においては、図4(a)のT1の期間において機台停止際のアーマチャ電流Iaはモータ28の誘起電力の低下に伴い、0Aになる。よって、図4(b)に示すように、アーマチャ電流Iaの変化量はある程度大きな値となる。図4のt1のタイミングでアーマチャ電流Iaとフィールド電流Ifが分岐しており、フォークリフト10は減速している状態であり、回生トルクが目標値になるようにフィールド電流Ifを大きくすることによりフォークリフト10が停止する。
【0042】
一方、坂路においては、図5のt11のタイミングでアーマチャ電流Iaとフィールド電流Ifが分岐しており、アーマチャ電流Iaがゼロになるまでの期間T10が長くなる。特に、坂路の傾斜が大きくなると外力も大きくなるので制動力(回生力)と外力がつり合ってしまう。あるいは、外力が上回ってしまう。そのため、回生制動からプラギングに移行できない。図5(a)のT10の期間において機台に外力が働きタイヤが回ることによって生じる誘起電力によってアーマチャ電流Iaはゼロにならずに微速で坂路をずり落ちる虞がある。つまり、図4(b)に示すように、アーマチャ電流Iaの変化量が平坦路のときに比べて小さい。よって、回生制動からプラギングへの切替(遷移)の判定を電流の固定閾値のみで規定した場合、機台と外力の異なったつり合いを加味できずに、切替(遷移)誤判定につながる。
【0043】
そこで、図3のステップS106,S108の処理によりモータ28で発生する誘起電圧は回転数に比例するのでアーマチャ電流Iaの変化量が小さい、即ち、減速していないことを判別して回生制動からプラギングへ切り替えて遷移させる。
【0044】
図8は比較例であり、機台が停止するまで回生制動し続けた場合のフィールド電流Ifとアーマチャ電流Iaの挙動を示す。スイッチバック操作に伴う回生制動時に制動トルクを維持しようとしてフィールド電流Ifを大きくすると、フィールド電流Ifが、車両速度がゼロに向かうにつれて無限に大きくすることになり、フォークリフトの停止時に慣性力で動くような動作となり止まりにくくなり、回生制動からプラギングに切り替える必要がある。
【0045】
これに対し、本実施形態では、図3のステップS106においてアーマチャ電流Iaの変化量の絶対値が、閾値X1以下になったことを判定する、もしくはステップS108においてアーマチャ電流Iaの絶対値が閾値X2以下になったことを判定することにより、回生制動からプラギングに切り替えて遷移させるタイミングを検出することができる。
【0046】
また、回転センサを装着していないのでモータ回転数は検出できないのでアーマチャ電流Iaの絶対値が閾値よりも小さくなるとプラギングに切り替える方式を採ると、図4の平坦路ではよいが、図5の坂路ではトルクはアーマチャ電流Ta×フィールド電流Ifと係数Kの乗算値であるが、アーマチャ電流Iaが低下してこないので閾値に達しない。本実施形態置においては、アーマチャ電流Iaの変化量の絶対値が閾値より小さくなると切り替える。
【0047】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)車両用走行モータの制御装置の構成として、制御部としてのコントローラ37は、回生制動モードからプラギングモードに切り替え可能に構成されている。コントローラ37は、回生制動モードにおいて電流検出手段としての電流センサ34により検出されたアーマチャ32に流れる電流の変化量の絶対値が閾値以下であると、それまでの回生制動モードからプラギングモードに切り替える切替手段(切替機能)を有する。よって、アーマチャ32に流れる電流の変化量を切替タイミングの検出要素として捉えることにより回転センサが付いていない走行モータに対し回生制動モードからプラギングモードに切り替えることができる。特に、坂路等の外力が加わる状況においても回生制動モードからプラギングモードに切り替えることができる。
【0048】
(2)フォークリフトに搭載されるものであるので、実用的である。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0049】
第2の実施形態においては、図3に代わり、図6に示す構成としている。図3に対し図6ではステップS200の処理とステップS201の処理とステップS202の処理を追加している。
【0050】
コントローラ37は、回生制動モードからプラギングモードに切り替え可能に構成され、回生制動モードにおいて図6のステップS200でアーマチャ通電用スイッチング素子Q5,Q6のデューティがゼロ、かつ、アーマチャ32に流れる電流(アーマチャ電流)Iaの絶対値が閾値X3以下になると、それまでの回生制動モードからプラギングモードに切り替える。この回生制動モードからプラギングモードへの切り替えの際に、切替前において、図6のステップS201でアーマチャ通電用スイッチング素子Q5,Q6のデューティがゼロとなったらフィールドコイル33に流す電流(フィールド電流)Ifを増やし、切替後において、ステップS202でフィールドコイル33に流す電流Ifを、切替前のフィールドコイル33に流す電流Ifと同値かつ逆向きとするようにデューティ制御を行う。
【0051】
このように、本実施形態では、切替タイミングの検出について、モータが発生する誘起電圧が回転数に比例するので、アーマチャ通電用デューティ(アーマチャPWM出力デューティ)も回転数に依存する事を利用する。誘起電圧が低下すると、モータに流れるアーマチャ電流Iaも低下する。よって、アーマチャ通電用デューティ=0かつアーマチャ電流Iaの絶対値が閾値X3以下を切替検出条件とする。
【0052】
また、切替前後でのトルク変動抑制について、モータ発生トルクが、フィールド電流Ifとアーマチャ電流Iaとの乗算値に比例するので、切替前のステップS201においてはアーマチャ通電用デューティ=0になったら、フィールド電流Ifを増やして回生制動力を保持しつつトルク変動を抑制する。また、切替後のステップS202においてはフィールド電流If(切替後)を、切替前のフィールド電流Ifの(−1)倍したものとする。
【0053】
フォークリフト10における下り坂路においてスイッチバック操作に伴う回生制動からプラギングへの移行の際の挙動として、図7(c)に示すように制動にてモータ回転が低下してくると、回生制動では図7(b)に示すようにトルクが保てなくなるので、プラギングへ切り替える。その際、モータから発生する誘起電圧が回転数に比例するので、アーマチャ通電用デューティも回転数に依存する事を利用して、誘起電圧が低下すると、モータに流れるアーマチャ電流Iaも低下するため、なだらかにトルクが下がったタイミングt22で切り替える。
【0054】
また、切り替え前はアーマチャ通電用デューティ=0になったタイミングt21でフィールド電流Ifを大きくする(ステップS201)。モータトルクはフィールド電流If×アーマチャ電流Iaに比例するのでトルクをフィールド電流Ifの増加で保持する。切り替え後は、切替後のフィールド電流Ifを(−1)×切替前のフィールド電流Ifにすることでトルク変動を抑制する(ステップS202)。
【0055】
このようにして、回転センサなしでも回生制動からプラギングに切替できる。また、トルクを保持したまま回生制動からプラギングに切り替えることができる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0056】
(3)コントローラ37は、回生制動モードにおいてアーマチャ通電用スイッチング素子Q5,Q6のデューティがゼロ、かつ、電流検出手段としての電流センサ34により検出されたアーマチャ32に流れる電流(アーマチャ電流)Iaの絶対値が閾値X3以下になると、それまでの回生制動モードからプラギングモードに切り替える切替手段(切替機能)を有する。よって、回転センサが付いていない走行モータ28に対し回生制動モードからプラギングモードに切り替えることができる。
【0057】
(4)切替手段としてのコントローラ37は、トルク制御手段(トルク制御機能)を更に有する。トルク制御機能は、回生制動モードからプラギングモードへの切り替えの際に、切替前において、アーマチャ通電用スイッチング素子Q5,Q6のデューティがゼロとなったらフィールドコイル33に流す電流を増やし、切替後において、フィールドコイル33に流す電流を、切替前のフィールドコイル33に流す電流と同値かつ逆向きとするようにデューティ制御を行う。よって、回転センサが付いていない走行モータ28に対し回生制動モードからプラギングモードに切り替える際に、切替の前後でのトルク変動を抑制することができる。
【0058】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・フォークリフトに適用したが、これに限らない。例えば、フォークリフト以外の産業車両でもよいし、産業車両以外の車両であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…フォークリフト、28…走行モータ、30…制御装置、34…電流センサ、37…コントローラ、Q1,Q2,Q3,Q4…フィールドコイル通電用スイッチング素子、Q5,Q6…アーマチャ通電用スイッチング素子。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8