(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の密着付与剤、及び、本発明の硬化性樹脂組成物について説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、オルガノポリシロキサンを単に「ポリシロキサン」とも言う。
【0011】
[密着付与剤]
本発明の密着付与剤は、後述する平均単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(以下、「特定ポリシロキサン」とも言う)である。本発明の密着付与剤はこのような構成をとるため、硬化性樹脂組成物に用いた場合に優れた密着性を示すものと考えられる。その理由は明らかではないが、後述する平均単位式(1)から分かるように、特定ポリシロキサンは、いわゆるT単位としてエポキシ基含有基又はオキセタニル基含有基を有するシロキサン単位を有するとともに、適量のアルコキシ基又はヒドロキシ基を有するため、硬化させたときに強固なポリシロキサンのネットワークを形成するものと考えらえる。結果として、硬化性樹脂組成物に用いた場合に優れた密着性を示すものと考えられる。
【0012】
〔平均単位式(1)〕
上述のとおり、本発明の密着付与剤は、下記平均単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(特定ポリシロキサン)である。
【0013】
(R
11R
12SiO
2/2)
a(R
2SiO
3/2)
b(R
3SiO
3/2)
c(R
4O
1/2)
d…(1)
【0014】
上記平均単位式(1)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に炭素数6〜20のアリール基又は炭素数1〜20のアルキル基、R
2はアルケニル基、R
3はエポキシ基含有基又はオキセタニル基含有基、R
4は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。a、b、c及びdは、いずれも正数であり、0.80≦a+b+c+d≦1.00、c/(a+b+c)>0.01、d/(a+b+c)>0.02、及び、d/(2a+b+c+d)<0.05の関係式を満たす。
【0015】
平均単位式(1)は、特定ポリシロキサンを構成する全シロキサン単位を1モルとした場合の各シロキサン単位のモル数を表したものである。
すなわち、特定ポリシロキサンは、下記シロキサン単位(a)〜(d)を有する。ここで、カッコ内は、特定ポリシロキサンを構成する全シロキサン単位を1モルとした場合の各シロキサン単位のモル数である。
(a)R
11R
12SiO
2/2(aモル)
(b)R
2SiO
3/2(bモル)
(c)R
3SiO
3/2(cモル)
(d)R
4O
1/2(dモル)
【0016】
なお、後述のとおり、R
4O
1/2はケイ素原子に結合するヒドロキシ基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を表すが、本明細書においては、R
4O
1/2をシロキサン単位の1種とする。
また、後述のとおり、特定ポリシロキサンは上記シロキサン単位以外のシロキサン単位を有していても良い。
【0017】
<シロキサン単位(a)>
上述のとおり、上記平均単位式(1)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に炭素数6〜20(好ましくは、6〜10)のアリール基又は炭素数1〜20(好ましくは、1〜10)のアルキル基を表す。炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基(以下、「Ph」で示すことがある)、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、フェニル基が好ましい。また、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基(以下、「Me」で示すことがある)、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、メチル基が好ましい。
R
11及びR
12は、本発明の効果がより優れる理由から、いずれも炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0018】
本発明の密着付与剤は、本発明の効果がより優れる理由から、シロキサン単位(a)として、R
11及びR
12がいずれも炭素数6〜20のアリール基(好ましくは、フェニル基)であるシロキサン単位と、R
11及びR
12がいずれも炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは、メチル基)であるシロキサン単位とを有するのが好ましい。
【0019】
<シロキサン単位(b)>
上述のとおり、上記平均単位式(1)中、R
2はアルケニル基を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数2〜10であることが好ましい。R
2の具体例としては、ビニル基(CH
2=CH−)(以下、「Vi」で示すことがある)、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などが挙げられ、なかでも、ビニル基が好ましい。
【0020】
<シロキサン単位(c)>
上述のとおり、上記平均単位式(1)中、R
3はエポキシ基含有基又はオキセタニル基含有基を表す。
R
3は、エポキシ基又はオキセタニル基を含有する基であれば特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、グリシドキシアルキル基、エポキシシクロアルキル基又はオキセタニルアルキル基含有基であることが好ましい。
【0021】
グリシドキシアルキル基は下記式(R3a)で表される基であることが好ましい。
【0023】
式(R3a)中、Lはアルキレン基(好ましくは、炭素数1〜10)を表す。
グリシドキシアルキル基は、本発明の効果がより優れる理由から、3−グリシドキシプロピル基(以下、「Ep」で示すことがある)であることが好ましい。
【0024】
エポキシシクロアルキル基はエポキシシクロヘキシル基であることが好ましい。
【0025】
オキセタニルアルキル基含有基は下記式(3)で表される基であることが好ましい。
【0027】
式(3)中、R
3は水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜6)、R
4はアルキレン基(好ましくは炭素数1〜6)を表す。
【0028】
<シロキサン単位(d)>
上述のとおり、上記平均単位式(1)中、R
4は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、水素原子又は炭素数1〜10(好ましくは、炭素数1〜5)のアルキル基であることが好ましい。
【0029】
<a、b、c及びd>
上述のとおり、上記平均単位式(1)中、a、b、c及びdは、いずれも正数である。すなわち、特定ポリシロキサンは上述したシロキサン単位(a)〜(d)全てを有する。
【0030】
上述のとおり、上記平均単位式(1)中、a、b、c及びdは、0.80≦a+b+c+d≦1.00の関係式を満たす。すなわち、特定ポリシロキサンは、特定ポリシロキサンを構成する全シロキサン単位のうち80モル%以上が上述したシロキサン単位(a)〜(d)であれば、上述したシロキサン単位(a)〜(d)以外のシロキサン単位を有していてもよい。
a+b+c+dは、本発明の効果がより優れる理由から、0.85以上であることが好ましく、0.90以上であることがより好ましく、0.95以上であることがさらに好ましく、1.00であることが特に好ましい。a+b+c+d=1.00である場合、特定ポリシロキサンは上述したシロキサン単位(a)〜(d)のみからなる。
上述したシロキサン単位(a)〜(d)以外のシロキサン単位としては、例えば、後述するシロキサン単位(M)、(D)、(T)及び(Q)が挙げられる。
【0031】
上述のとおり、上記平均単位式(1)中、a、b、c及びdは、c/(a+b+c)>0.01の関係式を満たす。すなわち、c/(a+b+c)は0.01よりも大きい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、0.05以上であることが好ましい。また、c/(a+b+c)は0.50以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましい。
【0032】
上述のとおり、上記平均単位式(1)中、a、b、c及びdは、d/(a+b+c)>0.02の関係式を満たす。すなわち、d/(a+b+c)は0.02よりも大きい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、0.30以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましい。
【0033】
上述のとおり、上記平均単位式(1)中、a、b、c及びdは、d/(2a+b+c+d)<0.05の関係式を満たす。すなわち、d/(2a+b+c+d)は0.05未満である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、0.01〜0.04であることが好ましく、0.02〜0.03であることがより好ましい。
【0034】
上記平均単位式(1)中、aは、本発明の効果がより優れる理由から、0.10〜0.90であることが好ましく、0.50〜0.80であることがより好ましい。
上記平均単位式(1)中、bは、本発明の効果がより優れる理由から、0.010〜0.30であることが好ましく、0.05〜0.20であることがより好ましい。
上記平均単位式(1)中、cは、本発明の効果がより優れる理由から、0.010〜0.50であることが好ましく、0.050〜0.30であることがより好ましい。
上記平均単位式(1)中、dは、本発明の効果がより優れる理由から、0.020〜0.20であることが好ましい。
【0035】
<割合(B)>
ケイ素原子に結合した全ての基のうち、アリール基が占める割合(以下、「割合B」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、5.0モル%以上であることが好ましい。ここで、「ケイ素原子に結合した全ての基」とは、各シロキサン単位のケイ素原子に結合した全ての基(置換基)を意図し、水素原子も含む。
割合Bは、本発明の効果がより優れる理由から、10.0〜90.0モル%であることが好ましく、20.0〜50.0モル%であることがより好ましい。
【0036】
〔好適な態様〕
特定ポリシロキサンの好適な態様としては、例えば、下記式(1a)で表されるオルガノポリシロキサン(以下、「特定ポリシロキサン1」とも言う)が挙げられる。
【0037】
(R
11R
12SiO
2/2)
a(R
2SiO
3/2)
b(R
3SiO
3/2)
c(R
4O
1/2)
d(R
M3SiO
1/2)
M(R
D2SiO
2/2)
D(R
TSiO
3/2)
T(SiO
4/2)
Q…(1a)
【0038】
上記平均単位式(1a)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に炭素数6〜20のアリール基又は炭素数1〜20のアルキル基、R
2はアルケニル基、R
3はエポキシ基含有基又はオキセタニル基含有基、R
4は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。R
Mは水素原子又は有機基、R
Dは水素原子又は有機基(ただし、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数1〜20のアルキル基を除く)、R
Tは水素原子又は有機基(ただし、アルケニル基、エポキシ基含有基及びオキセタニル基含有基を除く)を表す。a、b、c及びdは、いずれも正数であり、0.80≦a+b+c+d≦1.00、c/a+b+c>0.01、及び、d/a+b+c>0.02の関係式を満たす。M、D、T及びQは、いずれも0以上0.1以下である。a、b、c、d、M、D、T及びQは、a+b+c+d+M+D+T+Q=1の関係式を満たす。ただし、ケイ素原子に結合した全ての基のうち、R
4O−が占める割合は5.0モル%以下である。
【0039】
特定ポリシロキサン1は、下記シロキサン単位(a)〜(d)、(M)、(D)、(T)及び(Q)を有する。ここで、カッコ内は、特定ポリシロキサン1を構成する全シロキサン単位を1モルとした場合の各シロキサン単位のモル数である。
(a)R
11R
12SiO
2/2(aモル)
(b)R
2SiO
3/2(bモル)
(c)R
3SiO
3/2(cモル)
(d)R
4O
1/2(dモル)
(M)R
M3SiO
1/2(Mモル)
(D)R
D2SiO
2/2(Dモル)
(T)R
TSiO
3/2(Tモル)
(Q)SiO
4/2(Qモル)
【0040】
なお、上記シロキサン単位(M)はいわゆるM単位であり、上記シロキサン単位(a)及び(D)はいわゆるD単位であり、上記シロキサン単位(b)、(c)及び(T)はいわゆるT単位であり、上記シロキサン単位(Q)はいわゆるQ単位である。
【0041】
シロキサン単位(a)〜(d)、a、b、c及びd、並びに割合(B)については上述のとおりであり、具体例及び好適な態様も同じである。
【0042】
上述のとおり、上記平均単位式(1a)中、R
Mは水素原子又は有機基を表す。有機基としては特に制限されないが、例えば、上述した平均単位式(1)中のR
11、R
12、R
2、R
3又はR
4で示される基などが挙げられる。
上述のとおり、上記平均単位式(1a)中、R
Dは水素原子又は有機基(ただし、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数1〜20のアルキル基を除く)を表す。有機基としては、例えば、上述した平均単位式(1)中のR
2又はR
3で示される基などが挙げられる。
上述のとおり、上記平均単位式(1a)中、R
Tは水素原子又は有機基(ただし、アルケニル基、エポキシ基含有基及びオキセタニル基含有基を除く)を表す。有機基としては特に制限されないが、例えば、上述した平均単位式(1)中のR
11、R
12又はR
4で示される基などが挙げられる。
【0043】
上述のとおり、上記平均単位式(1a)中、M、D、T及びQは、いずれも0以上0.1以下である。すなわち、特定ポリシロキサン1は、シロキサン単位(M)、(D)、(T)及び(Q)を有していても有していなくてもよい。
【0044】
上述のとおり、上記平均単位式(1a)中、a、b、c、d、M、D、T及びQは、a+b+c+d+M+D+T+Q=1の関係式を満たす。すなわち、特定ポリシロキサン1はシロキサン単位(a)〜(d)、(M)、(D)、(T)及び(Q)のみからなるオルガノポリシロキサンである。
【0045】
上記平均単位式(1a)中、M、D、T及びQは、それぞれ独立に、本発明の効果がより優れる理由から、0.050以下であることが好ましく、0.010以下であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
【0046】
〔分子量〕
特定ポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1,000〜300,000であるのが好ましく、1,000〜100,000であるのがより好ましい。
なお、本発明において、重量平均分子量とは、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であるものとする。
【0047】
〔合成方法〕
特定ポリシロキサンの合成方法は特に制限されないが、例えば、各種シラン(モノマー)を加水分解縮合させることで合成することができる。
c/(a+b+c)を所望の範囲に調整する方法としては、例えば、合成に使用される、エポキシ基含有基又はオキセタニル基含有基を有するシランの量を調整する方法などが挙げられる。
d/(a+b+c)及びd/(2a+b+c+d)を所望の範囲に調整する方法としては、例えば、合成時に使用する水の量、反応温度、反応時間を調整する方法などが挙げられる。
【0048】
<好適な態様>
特定ポリシロキサンは、本発明の効果がより優れる理由から、出発物質(原料となるモノマー)として、ジフェニルシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジアルコキシシラン又はジフェニルジシラノール(ジフェニルシランジオール)を用いたものであることが好ましく、ジフェニルジシラノールを用いたものであることがより好ましい。
【0049】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも言う)は、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基、及び、ケイ素原子に結合したアリール基を有するオルガノポリシロキサンA(以下、「ポリシロキサンA」とも言う)と、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子、及び、ケイ素原子に結合したアリール基を有するオルガノポリシロキサンB(以下、「ポリシロキサンB」とも言う)と、
(C)上述した密着付与剤と、
(D)ヒドロシリル化反応触媒とを含有する。
ここで、上記密着付与剤の含有量は、ポリシロキサンA及びポリシロキサンBの合計100質量部に対して、0.01〜10質量部である。
なお、ヒドロシリル化反応触媒によって、ポリシロキサンAとポリシロキサンBと密着付与剤とが付加反応(ヒドロシリル化反応)し得るため、本発明の組成物は硬化性を示すものと考えられる。
以下、各成分について詳述する。
【0050】
〔(A)ポリシロキサンA〕
本発明の組成物に含有されるポリシロキサンAは、ケイ素原子に結合したアルケニル基、及び、ケイ素原子に結合したアリール基を有するオルガノポリシロキサンであれば特に制限されない。ここでケイ素原子はシロキサンのケイ素原子を意図する。
【0051】
なお、ポリシロキサンは上述した特定ポリシロキサン以外のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なかでも、上述したシロキサン単位(c)のような「エポキシ基含有基又はオキセタニル基含有基を有するT単位」を有さないオルガノポリシロキサンであることがより好ましい。
【0052】
<アルケニル基>
上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などの炭素数2〜18のアルケニル基が挙げられ、ビニル基であるのが好ましい。
1分子中のアルケニル基は、2〜12質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
【0053】
<アリール基>
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などの炭素数6〜18のアリール基が挙げられ、フェニル基であるのが好ましい。
ケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%はアリール基であるのが好ましく、少なくとも40モル%はアリール基であるのがより好ましい。
これにより、得られる硬化物の光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さくなるうえ、後述するポリシロキサンBとの相溶性に優れ、濁り等が抑えられ、硬化物の透明性に優れる。
【0054】
<その他の基>
ポリシロキサンAのケイ素原子に結合するその他の基としては、例えば、アルケニル基およびアリール基を除く置換または非置換の一価炭化水素基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数1〜18のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基などの炭素数7〜18のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基などの炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基;等が挙げられ、その他少量の基として、ケイ素原子結合水酸基やケイ素原子結合アルコキシ基を有してもよい。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
【0055】
<好適な態様>
ポリシロキサンAの好適な態様としては、例えば、下記平均単位式(A)で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。ここで、平均単位式(A)は、ポリシロキサンAを構成する全シロキサン単位を1モルとした場合の各シロキサン単位のモル数を表したものである。
【0056】
(R
3SiO
3/2)
a(R
32SiO
2/2)
b(R
33SiO
1/2)
c(SiO
4/2)
d(X
1O
1/2)
e ・・・(A)
【0057】
上記式(A)中、各R
3は独立に、水素原子又は置換若しくは非置換の一価炭化水素基である。この一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数1〜18のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などの炭素数2〜18のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などの炭素数6〜18のアリール基;ベンジル基、フェネチル基などの炭素数7〜18のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基などの炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基;等が挙げられる。
ただし、1分子中、R
3の少なくとも1個(好ましくは2個以上)はアルケニル基であり、アルケニル基であるR
3が2〜12質量%となる量が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
また、1分子中、R
3の少なくとも1個はアリール基であり、全R
3の少なくとも30モル%はアリール基であるのが好ましく、少なくとも40モル%はアリール基であるのがより好ましい。
【0058】
上記式(A)中、X
1は水素原子またはアルキル基である。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数1〜18のアルキル基が挙げられ、メチル基であるのが好ましい。
【0059】
式(A)中、aは0または正数であり、bは0または正数であり、cは0または正数であり、dは0または正数であり、eは0または正数である。a+b+c+d+eは1以下である。b/aは0〜10の範囲内の数であることが好ましく、c/aは0〜5の範囲内の数であることが好ましく、d/(a+b+c+d)は0〜0.3の範囲内の数であることが好ましく、e/(a+b+c+d)は0〜0.4の範囲内の数であることが好ましい。
【0060】
<分子量>
ポリシロキサンAの重量平均分子量(Mw)は、1,000〜300,000であるのが好ましく、1,000〜100,000であるのがより好ましい。
【0061】
<含有量>
本発明の組成物において、ポリシロキサンAの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、組成物全体に対して、10〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。
【0062】
〔(B)ポリシロキサンB〕
本発明の組成物に含有されるポリシロキサンBは、ケイ素原子に結合した水素原子、及び、ケイ素原子に結合したアリール基を有するオルガノポリシロキサンであれば特に制限されない。ここでケイ素原子はシロキサンのケイ素原子を意図する。
アリールの具体例及び好適な態様は上述したポリシロキサンAと同じである。
また、ポリシロキサンBのケイ素原子に結合するその他の基の具体例及び好適な態様も上述したポリシロキサンAと同じである。
また、ポリシロキサンBの分子量の好適な態様も上述したポリシロキサンAと同じである。
【0063】
<好適な態様>
ポリシロキサンBの好適な態様としては、例えば、下記平均単位式(B)で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。ここで、平均単位式(B)は、ポリシロキサンBを構成する全シロキサン単位を1モルとした場合の各シロキサン単位のモル数を表したものである。
【0064】
(R
3SiO
3/2)
a(R
32SiO
2/2)
b(R
33SiO
1/2)
c(SiO
4/2)
d(X
1O
1/2)
e ・・・(B)
【0065】
上記式(B)中、各R
3は独立に、水素原子又は置換若しくは非置換の一価炭化水素基である。一価炭化水素基の具体例は上述した式(A)中のR
3と同じである。
ただし、1分子中、R
3の少なくとも1個(好ましくは2個以上)は水素原子であるのが好ましい。
また、1分子中、R
3の少なくとも1個はアリール基であり、全R
3の少なくとも30モル%はアリール基であるのが好ましく、少なくとも40モル%はアリール基であるのがより好ましい。
【0066】
式(B)中、aは0または正数であり、bは0または正数であり、cは0または正数であり、dは0または正数であり、eは0または正数である。a+b+c+d+eは1以下である。a、b、c、d及びeの好適な態様は上述した式(A)中のa、b、c、d及びeと同じである。
【0067】
<Si−H/Si−Viモル比>
ポリシロキサンBのケイ素原子に結合した水素原子と、上述したポリシロキサンAのケイ素原子に結合したアルケニル基とのモル比(以下、便宜的に「Si−H/Si−Viモル比」ともいう)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.05〜5.00であるのが好ましく、0.10〜2.00であるのがより好ましく、0.50〜1.50であるのがさらに好ましく、0.70〜1.10であるのが特に好ましい。
【0068】
〔(C)密着付与剤〕
密着付与剤については上述のとおりである。
本発明の組成物において、密着付与剤の含有量は、ポリシロキサンA及びポリシロキサンBの合計100質量部に対して、0.01〜10質量部である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、0.1〜8質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。
【0069】
〔(D)ヒドロシリル化反応触媒〕
本発明の組成物に含有されるヒドロシリル化反応触媒は、ポリシロキサンAとポリシロキサンBと密着付与剤との付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進する触媒として機能する。
ヒドロシリル化反応触媒としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等が挙げられ、白金系触媒であることが好ましい。白金系触媒の具体例としては、塩化白金酸、塩化白金酸−オレフィン錯体、塩化白金酸−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、塩化白金酸−アルコール配位化合物、白金のジケトン錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
ヒドロシリル化反応触媒の含有量は特に制限されないが、本発明の組成物の硬化性が優れるという理由から、ポリシロキサンA及びポリシロキサンBの合計100質量部に対して、0.0000001〜0.1質量部であるのが好ましく、0.000001〜0.01質量部であるのがより好ましい。
ヒドロシリル化反応触媒が白金系触媒である場合、ヒドロシリル化反応触媒の含有量は、組成物全体の質量に対してヒドロシリル化反応触媒に含まれる白金原子の質量が0.1〜100ppmになるような量であることが好ましく、1〜10ppmになるような量であることがより好ましい。
【0071】
〔任意成分〕
本発明の組成物は、さらに、上述した成分以外の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、以下の成分が挙げられる。
【0072】
<硬化遅延剤>
本発明の組成物は、さらに、硬化遅延剤を含有していてもよい。硬化遅延剤は、本発明の組成物の硬化速度や作業可使時間を調整するための成分であり、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどの炭素−炭素三重結合を有するアルコール誘導体;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インなどのエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサンなどのアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル−トリス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、ビニル−トリス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シランなどのアルキン含有シラン;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物において、硬化遅延剤の含有量は特に制限されないが、組成物全体に対して、100〜10000ppmであることが好ましく、300〜800ppmであることがより好ましい。
【0073】
<添加剤>
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、紫外線吸収剤、充填剤(特にシリカ)、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、艶消し剤、光安定剤、染料、顔料、有機蛍光体、無機蛍光体のような添加剤を更に含有することができる。
これらの添加剤のうち、充填剤としてシリカを用いるのが好ましい。
なお、上記シリカの種類としては、特に限定されず、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等を挙げられる。
【0074】
〔硬化性樹脂組成物の製造方法〕
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上述した必須成分および任意成分を混合することによって製造する方法が挙げられる。
【0075】
〔用途〕
本発明の組成物は、例えば、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の分野において、例えば、接着剤、プライマー、封止材等として使用できる。
【0076】
とりわけ、本発明の組成物は、LEDパッケージの封止材に好適に用いられる。なかでも、パッケージの材料にPCT(PolyCyclohexylene−dimethylene Terephthalate)やEMC(Epoxy Molding Compound)を用いたLEDパッケージに好適に用いられる。
本発明の組成物の使用方法としては、例えば、LEDパッケージに本発明の組成物を付与し、本発明の組成物が付与されたLEDパッケージを加熱して本発明の組成物を硬化させる方法が挙げられる。このときシート状に硬化させてもよい。
また、本発明の組成物を硬化させる方法は特に制限されないが、例えば、本発明の組成物を、80〜200℃、10分〜720分加熱する方法が挙げられる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
〔密着付与剤の合成〕
下記のとおり、密着付与剤C1〜C6(実施例)及びX7〜X11(比較例)を合成した。
【0079】
<合成例1>
温度計、スターラー、還流冷却管を備えた500mlのフラスコ中で、ジフェニルジメトキシシラン97.7g(0.30mol)、ジメチルジメトキシシラン48.1g(0.50mol)、トリメトキシビニルシラン14.8g(0.10mol)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン23.6g(0.10mol)、蒸留水39.6g(2.2mol)、水酸化ナトリウム0.6gを混合した。その後、50℃で6hr(時間)撹拌し、次いで、トルエン184gを添加し撹拌した後静置した。静置後分液し有機層を取り出しKW700(協和化学社製)を中性になるまで添加した。中和した後脱トルエンを行い、下記平均単位式の密着付与剤を得た。得られた密着付与剤を密着付与剤C1とする。
(Ph
2SiO
2/2)
0.29(Me
2SiO
2/2)
0.49(ViSiO
3/2)
0.09(EpSiO
3/2)
0.09(RO
1/2)
0.04
(ここでRは水素原子又はメチル基を表す)
【0080】
<合成例2>
ジフェニルジメトキシシランをジフェニルシランに変更した以外は、合成例1と同様の手順に従って下記平均単位式の密着付与剤を得た。得られた密着付与剤を密着付与剤C2とする。
(Ph
2SiO
2/2)
0.29(Me
2SiO
2/2)
0.49(ViSiO
3/2)
0.09(EpSiO
3/2)
0.09(RO
1/2)
0.04
(ここでRは水素原子又はメチル基を表す)
【0081】
<合成例3>
ジフェニルジメトキシシランをジフェニルジクロロシランに変更した以外は、合成例1と同様の手順に従って下記平均単位式の密着付与剤を得た。得られた密着付与剤を密着付与剤C3とする。
(Ph
2SiO
2/2)
0.29(Me
2SiO
2/2)
0.49(ViSiO
3/2)
0.09(EpSiO
3/2)
0.09(RO
1/2)
0.04
(ここでRは水素原子又はメチル基を表す)
【0082】
<合成例4>
ジフェニルジメトキシシランをジフェニルシランジオールに変更した以外は、合成例1と同様の手順に従って下記平均単位式の密着付与剤を得た。得られた密着付与剤を密着付与剤C4とする。
(Ph
2SiO
2/2)
0.29(Me
2SiO
2/2)
0.49(ViSiO
3/2)
0.09(EpSiO
3/2)
0.09(RO
1/2)
0.04
(ここでRは水素原子又はメチル基を表す)
【0083】
<合成例5>
温度計、スターラー、還流冷却管を備えた500mlのフラスコにジメトキシフェニルメチルシラン145.8g(0.80mol)、トリメトキシビニルシラン14.8g(0.10mol)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン23.6g(0.10mol)、蒸留水39.6g(2.2mol)、水酸化ナトリウム0.6gを混合した後50℃で6hr撹拌し、次いで、トルエン184gを添加し撹拌した後静置した。静置後分液し有機層を取り出しKW700(協和化学社製)で中性になるまで添加した。中和した後脱トルエンを行い、下記平均単位式の密着付与剤を得た。得られた密着付与剤を密着付与剤C5とする。
(PhMeSiO
2/2)
0.78(ViSiO
3/2)
0.09(EpSiO
3/2)
0.09(RO
1/2)
0.04
(ここでRは水素原子又はメチル基を表す)
【0084】
<合成例6>
温度計、スターラー、還流冷却管を備えた500mlのフラスコにジフェニルジメトキシシラン48.8g(0.20mol)、ジメチルジメトキシシラン36.0g(0.30mol)、トリメトキシビニルシラン29.6g(0.20mol)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン70.9g(0.30mol)、蒸留水45g(2.5mol)、水酸化ナトリウム0.6gを混合した後50℃で6hr撹拌し、次いで、トルエン184gを添加し撹拌した後静置した。静置後分液し有機層を取り出しKW700(協和化学社製)で中性になるまで添加した。中和した後脱トルエンを行い、下記平均単位式の密着付与剤を得た。得られた密着付与剤を密着付与剤C6とする。
(Ph
2SiO
2/2)
0.19(Me
2SiO
2/2)
0.29(ViSiO
3/2)
0.19(EpSiO
3/2)
0.29(RO
1/2)
0.04
(ここでRは水素原子又はメチル基を表す)
【0085】
<合成例7>
温度計、スターラー、還流冷却管を備えた500mlのフラスコにジフェニルジメトキシシラン97.7g(0.30mol)、ジメチルジメトキシシラン48.1g(0.50mol)、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン9.3g、(0.05mol)、トリフルオロメタンスルホン酸0.2g、蒸留水28.8g(1.6mol)を混合した後70℃で3hr撹拌し、次いで、KOH0.2g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン23.6g(0.10mol)を添加しさらに50℃で6hr反応させた。その後静置し水層/有機層を分離し、有機層にKW700(協和化学社製)を中性になるまで添加した。中和した後脱トルエンを行い、下記平均単位式の密着付与剤を得た。得られた密着付与剤を密着付与剤X7とする。
(Ph
2SiO
2/2)
0.29(Me
2SiO
2/2)
0.49(EpSiO
3/2)
0.09(RO
1/2)
0.04(ViMe
2SiO
1/2)
0.09
(ここでRは水素原子又はメチル基を表す)
【0086】
<合成例8>
温度計、スターラー、還流冷却管を備えた500mlのフラスコにジフェニルジメトキシシラン97.7g(0.50mol)、ジメチルジメトキシシラン48.1g(0.30mol)、トリメトキシビニルシラン28.9g(0.195mol)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.18g(0.005mol)、蒸留水39.6g(2.2mol)、水酸化ナトリウム0.6gを混合した後50℃で6hr撹拌し、次いで、トルエン184gを添加し撹拌した後静置した。静置後分液し有機層を取り出しKW700(協和化学社製)で中性になるまで添加した。中和した後脱トルエンを行い、下記平均単位式の密着付与剤を得た。得られた密着付与剤を密着付与剤X8とする。
(Ph
2SiO
2/2)
0.48(Me
2SiO
2/2)
0.28(ViSiO
3/2)
0.195(EpSiO
3/2)
0.005(RO
1/2)
0.04
(ここでRは水素原子又はメチル基を表す)
【0087】
<合成例9>
温度計、スターラー、還流冷却管を備えた500mlのフラスコにジフェニルジメトキシシラン97.7g(0.50mol)、ジメチルジメトキシシラン48.1g(0.30mol)、トリメトキシビニルシラン14.8g(0.10mol)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン23.6g(0.10mol)、蒸留水39.6g(2.2mol)、水酸化ナトリウム0.6gを混合した後50℃で6hr撹拌し、次いで、トルエン184gを添加し撹拌した後140℃まで加温し、水が出なくなるまで反応を続けた。室温まで放冷し、KW700(協和化学社製)で中性になるまで中和した。中和した後脱トルエンを行い、下記平均単位式の密着付与剤を得た。得られた密着付与剤を密着付与剤X9とする。
(Ph
2SiO
2/2)
0.50(Me
2SiO
2/2)
0.30(ViSiO
3/2)
0.10(EpSiO
3/2)
0.10
【0088】
<合成例10>
温度計、スターラー、還流冷却管を備えた500mlのフラスコにジフェニルジメトキシシラン97.7g(0.50mol)、ジメチルジメトキシシラン48.1g(0.30mol)、トリメトキシビニルシラン14.8g(0.10mol)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン23.6g(0.10mol)、蒸留水39.6g(2.2mol)、水酸化ナトリウム0.6gを混合した後50℃で1hr撹拌し、次いで、トルエン184gを添加し撹拌した後静置した。静置後分液し有機層を取り出しKW700(協和化学社製)で中性になるまで添加した。中和した後脱トルエンを行い、下記平均単位式の密着付与剤を得た。得られた密着付与剤を密着付与剤X10とする。
(Ph
2SiO
2/2)
0.40(Me
2SiO
2/2)
0.24(ViSiO
3/2)
0.08(EpSiO
3/2)
0.08(RO
1/2)
0.20
(ここでRは水素原子又はメチル基を表す)
【0089】
<合成例11>
温度計、スターラー、還流冷却管を備えた500mlのフラスコ中で、ジフェニルジメトキシシラン97.7g(0.30mol)、ジメチルジメトキシシラン48.1g(0.50mol)、トリメトキシビニルシラン14.8g(0.10mol)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン22.0g(0.10mol)、蒸留水39.6g(2.2mol)、水酸化ナトリウム0.6gを混合した。その後、50℃で6hr撹拌し、次いで、トルエン184gを添加し撹拌した後静置した。静置後分液し有機層を取り出しKW700(協和化学社製)を中性になるまで添加した。中和した後脱トルエンを行い、下記平均単位式の密着付与剤を得た。得られた密着付与剤を密着付与剤X11とする。
(Ph
2SiO
2/2)
0.29(Me
2SiO
2/2)
0.49(ViSiO
3/2)
0.09(RO
1/2)
0.04(EpMeSiO
2/2)
0.09
(ここでRは水素原子又はメチル基を表す)
【0090】
下記表1に各密着付与剤について、各シロキサン単位のモル数(全シロキサン単位を1モルとした場合のモル数)等をまとめて示す。
【0091】
【表1】
【0092】
〔硬化性樹脂組成物の調製〕
下記表2に示される成分を同表に示される割合(数値は質量部)(D1及びE1の割合は表2に記載のとおり)で混合することで各硬化性樹脂組成物を調製した。
【0093】
〔評価〕
得られた硬化性樹脂組成物について以下の評価を行った。
【0094】
<赤インク試験>
得られた硬化性樹脂組成物をLEDパッケージ(パッケージ材料:EMC(Epoxy Molding Compound))に充填し、硬化させた(100℃1時間、その後、150℃2時間)。得られた硬化物(封止体)をLEDパッケージごと赤インク(エタノール:水=1:1)に浸漬し、24時間後に引き上げ、顕微鏡で観察した。そして、封止体に赤インクが浸透しているものを不合格とし、赤インクが浸透していないものを合格とした。上記試験を100個のサンプルについて行い、下記の基準で評価した。結果を表2に示す。密着性の観点から、◎又は〇であることが好ましく、◎であることがより好ましい。
◎:合格が91〜100個
〇:合格が81〜90個
△:合格が71〜80個
×:合格が70個以下
【0095】
<ヒートショック試験>
上述した赤インク試験と同様の手順に従って硬化物を得た。得られた硬化物(封止体)を−40℃の環境に曝し(30分時間)、その後、125℃の環境に曝し(30分時間)、これを500サイクル繰り返した。そして、封止体の剥がれが見られるものを不合格とし、封止体の剥がれが見られないものを合格とした。上記試験を100個のサンプルについて行い、下記の基準で評価した。結果を表2に示す。密着性の観点から、◎又は〇であることが好ましく、◎であることがより好ましい。
◎:合格が91〜100個
〇:合格が81〜90個
△:合格が71〜80個
×:合格が70個以下
【0096】
【表2】
【0097】
表2中のA1〜A3、B1〜B4、C1〜C6、X7〜X11、D1及びE1はそれぞれ以下を表す。
・A1:両末端ビニルメチルフェニルポリシロキサン(PMV−9225、アヅマックス社製)
・A2:平均単位式(PhSiO
3/2)
0.75(ViMe
2SiO
1/2)
0.25で表されるポリシロキサン(横浜ゴム社製)
・A3:平均単位式(PhSiO
3/2)
0.60(ViMe
2SiO
1/2)
0.40で表されるポリシロキサン(横浜ゴム社製)
・B1:平均単位式(Ph
2SiO
2/2)
0.33(HMe
2SiO
1/2)
0.67で表されるポリシロキサン(横浜ゴム社製)
・B2:平均単位式(Ph
2SiO
2/2)
0.50(HMe
2SiO
1/2)
0.50で表されるポリシロキサン(横浜ゴム社製)
・B3:平均単位式(PhMeSiO
2/2)
0.60(HMe
2SiO
1/2)
0.40で表されるポリシロキサン(横浜ゴム社製)
・B4:平均単位式(PhMeSiO
2/2)
0.99(HMe
2SiO
1/2)
0.01で表されるポリシロキサン(横浜ゴム社製)
・C1〜C6:上述した密着付与剤C1〜C6
・X7〜X11:上述した密着付与剤X7〜X11
・D1:Pt1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(ユミコア社製)
・E1:エチニルシクロヘキサノール(東京化成工業社製)
【0098】
表2から分かるように、特定ポリシロキサンである密着付与剤を含有する硬化性樹脂組成物(実施例1〜13)は優れた密着性を示した。
実施例1〜4の対比から、出発物質としてジフェニルジメトキシシランを用いた実施例1、出発物質としてジフェニルシランを用いた実施例2、及び、出発物質としてジフェニルジシラノールを用いた実施例4は、より優れた密着性を示した。なかでも、出発物質としてジフェニルジシラノールを用いた実施例4は、さらに優れた密着性を示した。
実施例1と5との対比から、特定ポリシロキサンがシロキサン単位(a)として、上述した平均単位式(1)中のR
11及びR
12がいずれも炭素数6〜20のアリール基(好ましくは、フェニル基)であるシロキサン単位と、上述した平均単位式(1)中のR
11及びR
12がいずれも炭素数1〜20のアルキル基であるシロキサン単位とを有する実施例1は、より優れた密着性を示した。
実施例1と6との対比から、平均単位式(1)中、aが0.60以上である実施例1は、より優れた密着性を示した。
実施例1及び8〜13の対比から、Si−H/Si−Viモル比が0.98以上である実施例1及び8〜12は、より優れた密着性を示した。
【0099】
一方、特定ポリシロキサンを含有しない比較例1〜5は密着性が不十分であった。