(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
展開膨張時に車両の窓を覆う構成とされて前記窓の車内側における上縁側に収納されるエアバッグと、展開膨張時の下縁側を上縁側に接近させるように折り畳んだ前記エアバッグの折り完了体を収納する合成樹脂製のケースと、を備える構成として、
前記ケースが、車両搭載時における少なくとも下方側となる位置に、前記エアバッグを突出させる突出用開口を有する構成とされて、前記折り完了体の長手方向に沿って複数配設される構成とされるとともに、曲げ可能な連結片部によって、相互に連結される構成とされ、
前記折り完了体が、前記ケース内に収納された状態で、前記連結片部を曲げることにより、車両搭載前に、折り曲げて運搬可能に構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記連結片部が、一方の前記ケース側の元部と他方の前記ケース側の先端部との間に、反転部を有するように湾曲して配置される湾曲部を、備える構成とされ、
該湾曲部が、前記連結片部により連結した二つの前記ケースにおける前記突出用開口側相互を対向させるように、前記折り完了体を折り曲げた状態で、前記連結片部の前記元部と前記先端部とを結ぶ基準線からの突出方向を、前記ケースの長手方向と前記突出用開口の重ね方向とに沿った面と交差する方向に配置させるように、形成されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
前記湾曲部が、前記連結片部の前記元部と前記先端部とを結ぶ基準線からの車両搭載状態においての突出方向を、前記折り完了体の上方側において車内側に向かって突出する方向として、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
前記湾曲部が、断面形状において、軸心から外表面までの離隔距離を略同等とした柱状として、構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、
図1に示すように、膨張完了時に車両Vの窓(サイドウィンド)W1,W2を覆い可能に、エアバッグ20を、窓W1,W2の上縁側の周縁、すなわち、フロントピラー部FPからルーフサイドレール部RRを経てリヤピラー部RPの上方付近までの範囲を収納部位Pとして、この収納部位Pに、折り畳んで収納させている。なお、実施形態の場合、車両Vは、フロントピラー部FPとリヤピラー部RPとの間に、略上下方向に沿うようにして1つの中間ピラー部CPを配設させる構成とされている。そして、膨張完了時のエアバッグ20は、
図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2とともに、中間ピラー部CPに配置される中間ピラーガーニッシュ7や、リヤピラー部RPに配置されるリヤピラーガーニッシュ8の一部の車内側も覆うように構成されている。
【0014】
頭部保護エアバッグ装置Mは、
図1に示すように、エアバッグ20、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するインフレーター12、取付ブラケット15,17、取付ボルト16,18、及び、エアバッグ20を折り畳んで形成される折り完了体35を収納するケース38F,38Rを、備えて構成されている。折り畳まれたエアバッグ20(折り完了体35)、インフレーター12、及び、ケース38F,38Rは、取付ブラケット15,17を含めて、車両Vへの搭載時に、車内側Iをエアバッグカバー10に覆われて、収納部位Pに収納されている(
図2,3参照)。エアバッグカバー10は、実施形態の場合、フロントピラー部FPの車内側を覆うフロントピラーガーニッシュ5の下縁5aと、ルーフサイドレール部RRの車内側を覆うルーフヘッドライニング6の下縁6aと、から構成されている。
【0015】
フロントピラーガーニッシュ5とルーフヘッドライニング6とは、中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8とともに、合成樹脂製として、図示しない取付手段によって、フロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRにおけるボディ1側の部材であるインナパネル2の車内側Iに、取り付けられている。そして、フロントピラーガーニッシュ5とルーフヘッドライニング6との下縁5a,6aから構成されるエアバッグカバー10は、展開膨張時のエアバッグ20を突出可能に、エアバッグ20に押されて、下縁5a,6aを車内側Iに開くように、構成されている(
図2の二点鎖線参照)。
【0016】
インフレーター12は、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するもので、
図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている。インフレーター12は、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ20の後述する接続口部23aに挿入させ、接続口部23aの外周側に配置されるクランプ13を用いて、エアバッグ20に対して連結されている。また、インフレーター12は、インフレーター12を保持する取付ブラケット15と、取付ブラケット15をボディ1側のインナパネル2に固定するためのボルト16と、を利用して、インナパネル2においてリヤピラー部RPの領域に、取り付けられている(
図1参照)。
【0017】
取付ブラケット17は、2枚の板金製のプレートから構成されるもので、
図2に示すように、エアバッグ20の後述する各取付部28を、表裏から挟むようにして、各取付部28に取り付けられ、ボルト18を利用して、各取付部28を、ボディ1側のインナパネル2に取付固定している(
図1,2参照)。
【0018】
エアバッグ20は、
図1の二点鎖線に示すように、インフレーター12からの膨張用ガスを内部に流入させて、折畳状態から展開して、窓W1,W2や、中間ピラー部CP及びリヤピラー部RPにおける中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8の車内側を覆うように、展開膨張する構成とされている。エアバッグ20は、
図4に示すように、膨張用ガスを流入させて車内側壁部21aと車外側壁部21bとを離すように膨張するガス流入部21と、車内側壁部21a,車外側壁部21b相互を結合させるように形成されて膨張用ガスを流入させない非流入部26と、を備えている。ガス流入部21は、実施形態の場合、保護膨張部22とガス案内流路23とを備え、非流入部26は、周縁部27、取付部28、板状部29,30、及び、閉じ部31を、備える構成とされている。
【0019】
ガス流入部21の保護膨張部22は、
図4のAに示すように、エアバッグ20の膨張完了時に、前席の側方の窓W1を覆う前保護部22aと、後席の側方の窓W2を覆う後保護部22bと、を備えている。前保護部22aと後保護部22bとは、エアバッグ20の膨張完了時に、平らに展開した状態からの前後方向側の幅寸法を縮められ、また、厚さを規制されて前後方向に延びる板形状を維持できるように、内部領域に、閉じ部31を配置させている。ガス案内流路23は、保護膨張部22内に膨張用ガスを案内するもので、エアバッグ20の上縁20a側において、前後方向に沿って配置されている。ガス案内流路23の後端側には、エアバッグ20の上縁20aの後端側から突出するように形成されて、インフレーター12と接続される接続口部23aが、形成されている。接続口部23aは、インフレーター12を挿入可能に、後端側を開口されている。
【0020】
非流入部26における周縁部27は、ガス流入部21の外周縁を、接続口部23aの後端側を除いて全域にわたって囲むように形成されている。板状部29は、前保護部22aと後保護部22bとの間に配置されるもので、略長方形板状とされている。板状部30は、略三角板状として、エアバッグ20の前端側に配置されている。
【0021】
取付部28は、板状部30を含めたエアバッグ20の上縁20a側において、上方に突出するように配設されるもので、エアバッグ20の上縁20a側を、車両Vのボディ1側のインナパネル2に取り付けるための部位である。各取付部28は、上述した如く、取付ブラケット17とボルト18とを利用して、ボディ1側のインナパネル2に取り付けられることとなる。
【0022】
そして、エアバッグ20は、車内側壁部21aと車外側壁部21bとを重ねるように平らに展開した状態から、下縁20b側を上縁20a側に接近させ、前後方向に沿った長尺状の折り完了体35を形成するように折り畳まれて、車両Vに搭載される。実施形態では、エアバッグ20は、前後方向に沿うような複数の折目を設けて、下縁20b側を上縁20a側に接近させるような蛇腹折りにより、折り畳まれている。折り完了体35において、取付部28は、
図4のBに示すように、折り完了体35の上面から上方に突出するように、配置されることとなる。
【0023】
折り畳まれたエアバッグ20(折り完了体35)を収納するケース38は、実施形態の場合、
図1,5に示すように、折り完了体35の長手方向に沿って、前保護部22aの領域を収納するケース38Fと、後保護部22bの領域を収納するケース38Rと、の2つ配設される構成とされている。各ケース38F,38Rは、実施形態の場合、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)から形成されている。各ケース38(38F,38R)は、
図2に示すように、折り完了体35の周囲を覆うカバー部39を備える構成とされて、連結片部43により、相互に連結される構成である。
【0024】
カバー部39は、
図2に示すように、折り完了体35の車内側Iから上面側を経て車外側Oにかけてを覆うように、断面略逆U字形状として構成されて、下方を開口させて構成されている。すなわち、各ケース38は、折り完了体35の上面側を覆う天井壁39aと、折り完了体35の車内側Iを覆う車内側壁39bと、折り完了体35の車外側Oを覆う車外側壁39cと、を備えて、車両搭載時における下方側となる位置に、エアバッグ20を突出させる突出用開口40を有する構成とされている。また、カバー部39において、取付部28の配置される領域には、取付ブラケット17を取り付けた状態の取付部28を突出可能とする開口39dが、形成されている(
図2参照)。
【0025】
ケース38F,38Rを連結する連結片部43は、
図10,11に示すように、前側のケース38Fの後端38a側から延びる湾曲部44と、湾曲部44の先端44b側に配設される雄型係合部46と、後側のケース38Rの前端38b側に配設される雌型係合部55と、を備える構成とされて、雄型係合部46を雌型係合部55に係合させることにより、ケース38F,38Rを連結させる構成である。
【0026】
湾曲部44は、
図7に示すように、ケース38Fの後端38a側において、カバー部39における天井壁39aから立ち上がるように形成される取付基部45から後方に延びるように、形成されるもので、ケース38F,38R内に収納される折り完了体35(エアバッグ20)との接触を抑制されるように、カバー部39における天井壁39aより上側にオフセットされて、天井壁39aに略沿って後方に延びるように、配置されている。この湾曲部44は、連結片部43において、ケース38Fの後端38a側となる元部43aと、ケース38Rの前端38b側となる先端部43b(実施形態の場合、ケース38Rの前端38b側の雌型係合部55に係合される雄型係合部46)と、の間において、反転するようにして湾曲して配置される。具体的には、実施形態の場合、湾曲部44は、
図6に示すように、断面を略円形として、連続して延びる円柱状として構成されるもので、ケース38Fにおけるカバー部39の天井壁39aから後方に延びる元部44aと、雄型係合部46側において前後方向に略沿うように配置される先端44bとの間に、カバー部39の天井壁39aに略沿いつつ、車内側Iに突出するように反転して湾曲して形成される反転部44cを、有する構成とされている。反転部44cは、
図6に示すように、前後方向側で並設されてそれぞれ車内外方向(左右方向)に略沿うように形成される前側横杆部44ca,後側横杆部44cbと、前側横杆部44caと後側横杆部44cbとの車内側の端部相互をそれぞれ屈曲部44cd,44ceを介して連結させるように前後方向に略沿って形成される連結部44ccと、を備えている。すなわち、反転部44cは、前後で略対称形となる略U字形状とされている。また、反転部44cにおける前側横杆部44ca,後側横杆部44cbの車外側の端部は、それぞれ、前後方向に略沿って配置される先端44b,元部44aに対して、屈曲部44d,44eを介して連結されている。すなわち、実施形態では、湾曲部44は、連結片部43の元部43aと先端部43bとを結ぶ基準線L(
図16参照)からの車両搭載状態においての突出方向を、折り完了体35の上方側において車内側Iに向かって突出する方向として、形成されている(
図3,16参照)
湾曲部44の先端44b側に配設される雄型係合部46は、湾曲部44の先端44b(後端)側においてカバー部39の天井壁39aに略沿うように形成される押え板部47と、湾曲部44から折り完了体35側(下方)に向かって延びる首部48と、首部48の先端部50側に配置される頭部51と、を備えている。頭部51は、首部48における先端部50の下端50a側において、先端部50の軸方向と直交方向となる車内外方向(左右方向)の両側へ突出するように、形成されている。実施形態の場合、首部48と頭部51とは、上方側から見て略T字形状とされている。
【0027】
押え板部47は、前端側に、湾曲部44の先端44bを連結させる縦壁部47cを有し、縦壁部47cの下端から後方に延びるようにして、湾曲部44より下方となる位置に、配設されている(
図7参照)。実施形態の場合、押え板部47は、カバー部39の天井壁39aより上側となる位置に配置されるもので、
図6に示すように、外形形状を、首部48の先端部50側となる後縁47aを左右の中央にかけて後方に突出させるような略五角形状として、構成されている。この押え板部47は、左右方向側の幅寸法WH1を、湾曲部44の外径寸法D1より大きくして、構成されている(
図6参照)。また、押え板部47は、雄型係合部46を雌型係合部55に係合させた状態で、雌型係合部55における後述する係止孔形成部56の上面側において、係止孔形成部56に近接して配置されるもので(
図12参照)、雄型係合部46を雌型係合部55に係合させる際や、雄型係合部46を雌型係合部55に係合させた状態において、下面47bを係止孔形成部56の上面(狭幅開口部58の周縁59)に当接させることにより、雄型係合部46の雌型係合部55に対する落ち込みを抑制するために、配置されている。
【0028】
首部48は、湾曲部44の先端44b(後端)から、折り完了体35側に向かって延びるように、後下方に向かって突出して形成されている。具体的には、首部48は、湾曲部44から連なるようにして押え板部47の上面側において後方に延びるように形成される元部49と、押え板部47から後下方に向かって突出して形成される先端部50と、を有する構成とされている。この首部48は、
図6に示すように、車内外方向側(左右方向側)の幅寸法WH2を、湾曲部44の外径寸法D1よりも小さく設定されている。また、首部48の先端部50は、高さ寸法H1(
図7参照)を、湾曲部44の外径寸法D1よりも大きくして、かつ、押え板部47より下方に突出するように、形成されている。さらに、首部48の先端部50は、頭部51を係止孔57の後述する狭幅開口部58の周縁59に係止させた際に、狭幅開口部58に嵌挿可能に構成されるもので、左右方向側の幅寸法WH2を、狭幅開口部58の開口幅寸法OW1(
図8参照)より若干小さく設定されている。また、首部48の先端部50における前後方向側の幅寸法は、先端部50における元部側面(前面50b)を狭幅開口部58の前縁58aに当接させた状態で、頭部51の後縁51aを広幅開口部60における前縁60aより僅かに前方に位置させるような寸法に、設定されている(
図10参照)。この首部48の先端部50は、断面形状を、長手方向を前後方向に略沿わせた略長方形状とされている(
図7参照)。
【0029】
頭部51は、首部48の先端部50から、先端部50の軸方向と直交方向となる車内外方向(左右方向)の両側へ突出するように、形成されるもので、詳細に説明すれば、先端部50における折り完了体35側の面(下端面)から、係止孔57の開口面(係止孔形成部56)に略沿って左右両側に膨出するように、形成されている。この頭部51は、外形形状を、左右に幅広とした略長方形板状として構成されるもので、左右方向側の幅寸法WH3(首部48の軸直交方向側の幅寸法、
図6参照)を、狭幅開口部58の開口幅寸法OW1より大きく、かつ、広幅開口部60の左右方向側の開口幅寸法OW2(
図8参照)より小さく設定されて、広幅開口部60のみに挿通可能に、構成されている。実施形態の場合、頭部51の左右方向側の幅寸法WH3は、押え板部47の左右方向側の幅寸法WH1と略一致した寸法として、湾曲部44の外径寸法D1より大きな寸法に設定されている。また、頭部51は、左右方側の幅寸法WH3を、雌型係合部55に形成される後述する押え片62の左右方向側の幅寸法WH5(
図8参照)より大きく設定されている。さらに、頭部51は、前後方向側の幅寸法WH4(
図6参照)を、広幅開口部60の前後方向側の開口幅寸法OW3(
図8参照)より小さく設定され、かつ、雄型係合部46を後方移動させて、首部48の先端部50における後面50cを押え片62の先端(前端62a)に当接させた状態においても、前端側部位51cを、狭幅開口部58の周縁59(係止孔形成部56)の下方の領域に位置させる構成として、この前端側部位51cを狭幅開口部58の周縁59に当接されて、係止孔57の周縁に係止可能な寸法に、設定されている。
【0030】
さらに、頭部51は、前後方向側の幅寸法WH4を、上述したごとく、首部48の先端部50における前面50bを狭幅開口部58における前縁58aに当接させた際に、後縁51aを、広幅開口部60の前縁60aよりも僅かに前方となる位置に配置させるような寸法に、設定されている。換言すれば、頭部51は、首部48の先端部50における前面50bを狭幅開口部58の前縁58aに当接させた状態では、
図10に示すように、広幅開口部60の領域内に突出せず、雌型係合部55に形成される後述する押え片62と、上下方向側で重ならないように、構成されている。また、雄型係合部46において、頭部51と押え板部47との間の隙間は、幅寸法OW4を、狭幅開口部58の周縁59(係止孔形成部56)を挿入可能な寸法に、設定されている(
図7参照)。
【0031】
雌型係合部55は、
図8,9に示すように、後側のケース38Rの前端側における天井壁39aの領域に、形成されている。雌型係合部55は、天井壁39aと段差状として、天井壁39aより一段上方に形成される係止孔形成部56と、係止孔形成部56に形成される係止孔57と、係止孔57の一部を塞ぐように形成される押え片62と、を備えている。係止孔形成部56は、天井壁39aと略平行として構成されるもので、天井壁39aと段差を設けることにより、係止孔57における狭幅開口部58の周縁59に係止される雄型係合部46の頭部51の下面が、周囲のカバー部39における天井壁39aの下面と略面一として、配置されることとなる(
図12参照)。
【0032】
係止孔57は、雄型係合部46の係合時に頭部51を周縁で係止可能に構成されるもので、雄型係合部46側となる前側に形成される狭幅開口部58と、雄型係合部46から離れた側となる後側に形成される広幅開口部60と、を、有し、狭幅開口部58と広幅開口部60とを相互に連通させて、構成されている。実施形態の場合、係止孔57は、上方側から見て略凸字形状に開口して、形成されている(
図8参照)。狭幅開口部58は、開口幅寸法OW1を、雄型係合部46における首部48の先端部50のみを挿通可能として、頭部51を挿通不能に設定されており、首部48の先端部50を挿通させた際に、頭部51の上面51b側を、狭幅開口部58の周縁59における下面59a側に当接させることにより、頭部51を狭幅開口部58の周縁59によって係止する構成である。広幅開口部60は、前後方向側と左右方向側との開口幅寸法OW2,OW3を、それぞれ、頭部51を挿通可能に設定されている。そして、実施形態では、この頭部51の狭幅開口部58の周縁59への係止時に、首部48の先端部50が、狭幅開口部58に嵌挿される構成である。また、実施形態では、狭幅開口部58における広幅開口部60との境界部位付近は、
図8に示すように、先端部50の後方への移動を抑制するために、開口幅寸法をさらに狭幅とした狭幅部58bとされている。さらに、実施形態では、前面50bを前縁58aに当接させるようにして、首部48の先端部50を、狭幅開口部58に嵌挿させた状態で、先端部50の外周面を係止可能に、狭幅開口部58における左右方向側で対向する側縁の前後方向の中間部位に、僅かに内方に向かって突出する突起58c,58cが、形成されている。
【0033】
押え片62は、
図8に示すように、広幅開口部60において、狭幅開口部58から離れた後縁60dから、狭幅開口部58側に向かって突出するように、形成されるもので、係止孔57の開口面に略沿うように、配置されている。この押え片62は、広幅開口部60を略全域にわたって塞ぐような略長方形板状として、広幅開口部60の前縁60aと、左右方向側で対向する各側縁60b,60cと、の間に、それぞれ、僅かな隙間を有するように、構成されている。この押え片62は、換言すれば、係止孔形成部56から前方に延びるように形成されるもので、係止孔形成部56側となる後端62b側を起点として、狭幅開口部58側となる先端(前端62a)側を、係止孔57の開口面と直交する上下方向側に撓み可能に、形成されている。そして、押え片62の前端62aと、広幅開口部60における狭幅開口部58側の縁部(前縁60a)と、の間の隙間は、前後方向側の開口幅寸法OW5(
図8参照)を、首部48における先端部50の前後方向側の幅寸法よりも、小さく設定されている。すなわち、首部48の先端部50は、この押え片62の前端62aと広幅開口部60の前縁60aとの間の隙間を、挿通不能に構成されており、さらに換言すれば、雄型係合部46全体が、狭幅開口部58から離れるように後方移動した場合にも、首部48の先端部50が、押え片62の前端62aと当接して、広幅開口部60の領域内に、全体を進入させることができない構成とされている(
図15参照)。
【0034】
次に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明すれば、まず、
図4のA,Bに示すように、エアバッグ20を、車内側壁部21aと車外側壁部21bとを重ねるように平らに展開した状態から、下縁20b側を上縁20a側に接近させるように、接続口部23aの部位を除いて蛇腹折りして、前後方向に沿うような長尺状の折り完了体35を形成する。その後、折り完了体35の周囲に、部分的に、破断可能な折り崩れ防止用のラッピング材70を巻き付ける(
図4のB参照)。次いで、折り完了体35から突出している取付部28に、取付ブラケット17を取り付け、取付ブラケット15を取付済みのインフレーター14を、クランプ13を利用して、エアバッグ20の接続口部23aと接続させる。その後、折り完了体35をケース38F,38R内に収納させ、ケース38Fに設けられた雄型係合部46を、ケース38Rに設けられた雌型係合部55に係合させて、ケース38F,38R間を連結片部43により連結させる。具体的には、
図13に示すように、雄型係合部46の頭部51を、雌型係合部55における広幅開口部60の領域に設けられた押え片62を撓ませつつ、広幅開口部60内に押し込み、首部48の先端部50を狭幅開口部58内に引き込むように、雄型係合部46全体をケース38F側に移動させれば、頭部51が、狭幅開口部58の周縁59に係止されることとなる。そして、このとき、押え片62が復元することから、頭部51は、この復元された押え片62により、広幅開口部60側への戻りを規制された状態で、上面51bを狭幅開口部58における周縁59の下面59aと当接させることとなって、頭部51を、狭幅開口部58の周縁59に係止させることができて、エアバッグ組付体AMを形成することができる(
図14参照)。
【0035】
実施形態では、このエアバッグ組付体AMを、
図14の二点鎖線から実線で示すように、ケース38F,38R間となる連結片部43の湾曲部44の部位で折り曲げれば、エアバッグ組付体AMをコンパクトにすることができる。具体的に説明すれば、実施形態の場合、エアバッグ組付体AM(折り完了体35)は、ケース38F,38Rにおける突出用開口40,40相互を対向させるように、換言すれば、折り完了体35相互を接触させるようにして、ケース38F,38R間の部位で、折り曲げられることとなる。このとき、実施形態では、湾曲部44は、連結片部43における元部43aと先端部43bとを結ぶ基準線L(
図16〜18参照)からの突出方向を、ケース38F,38Rの長手方向DL1(
図16,17参照)と突出用開口40,40の重ね方向DL2(
図17,18参照)とに沿った面F(
図16参照)と交差する方向に配置させるように、形成されている。詳細には、湾曲部44は、
図16,17に示すように、ケース38F,38Rの長手方向DL1を上下方向に略沿わせるように、折り完了体35を折り曲げた状態では、突出用開口40,40の重ね方向DL2(
図17参照)に沿って配置される元部43aと先端部43bとを結ぶ基準線Lに対して略直交しつつ、かつ、ケース38F,38Rの長手方向DL1に対して略直交して突出するように、配置される構成である。すなわち、湾曲部44は、折り完了体35の折り曲げ時に、
図16,17に示すように、折り完了体35の折り曲げられた領域(折曲領域35a)において、最外周側から外れた位置を通るように、配置されることとなる。具体的には、実施形態では、湾曲部44は、
図16,17に示すように、折り完了体35の折曲領域35aの外周側を通らず、所定箇所を捩られつつ、
図18に詳細に示すように、反転部44cの湾曲状態を伸ばすように(前側横杆部44ca及び後側横杆部44cbを、車外側の端部側を離隔させつつ連結部44ccに連ならせるように)して、この折曲領域35aの元部側の領域(ケース38F,38Rの対向する端部側)から突出するように、配置されることとなる。
【0036】
頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載時には、
図14の実線から二点鎖線に示すように、エアバッグ組付体AMを、折り曲げ状態から復元させる。そして、取付ブラケット15,17を、ボディ1側のインナパネル2の所定位置に配置させて、ボルト16,18止めし、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を、インフレーター12に結線させ、フロントピラーガーニッシュ5やルーフヘッドライニング6をボディ1側のインナパネル2に取り付け、さらに、ピラーガーニッシュ7,8をボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0037】
頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、制御装置からの作動信号を受けてインフレーター12が作動されれば、インフレーター12から吐出される膨張用ガスがエアバッグ20内に流入して、膨張するエアバッグ20が、ケース38F,38Rの突出用開口40から突出し、エアバッグカバー10を押し開いて下方へ突出しつつ展開し、
図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2や中間ピラー部CP及びリヤピラー部RPの車内側を覆うように、膨張を完了させることとなる。
【0038】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、ケース38F,38R間を連結させる連結片部43の湾曲部44が、ケース38F,38Rの突出用開口40側相互を対向させるように、折り完了体35を折り曲げた状態で、連結片部43の元部43aと先端部43bとを結ぶ基準線Lからの突出方向を、ケース38F,38Rの長手方向DL1と突出用開口40の重ね方向DL2とに沿った面(ケース重ね基準面)Fと交差する方向に配置させる構成である。すなわち、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、ケース38F,38Rの突出用開口40を相互に接近させるように折り完了体35を折り曲げる際に、湾曲部44が、
図16,17に示すように、折り完了体35の折り曲げられた領域(折曲領域35a)において、最外周側から外れた位置を通るように、配置される構成であるる。そのため、従来のごとく、湾曲部を、基準線からの突出方向をケースの長手方向と突出用開口の重ね方向とに沿った面に沿わせるように配置させる場合(湾曲部を折曲領域において最外周側を通るような構成とする場合)と相違して、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、湾曲部44は、折り完了体35を収納させたケース38F,38Rを車両Vに搭載させた状態で、ケース38F,38Rの直上に向って突出せず、上方への突出量を抑制されることとなる。そのため、
図3に示すように、収納部位Pにおける上側に車体側の部材であるインナパネル2が近接して配置されて上下に広い収納スペースを確保し難い場合にも、ケース38F,38Rに収納された状態の折り完了体35を、円滑に窓W1,W2の上縁側の収納部位Pに収納させることができる。
【0039】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、ケース38F,38R間を連結する連結片部43を備える構成であっても、周囲の車体側の部材との干渉を抑制して、円滑に車両Vに搭載することができる。
【0040】
具体的には、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、湾曲部44は、連結片部43の元部43aと先端部43bとを結ぶ基準線Lからの車両搭載状態においての突出方向を、折り完了体35の上方側において車内側Iに向かって突出する方向として、形成される構成である。そのため、収納スペースに比較的余裕のあるケース38F,38Rの車内側の領域に、湾曲部44を配置させることができて、ケース38F,38Rに収納された折り完了体35が、周囲の車体側の部材と干渉することを、一層的確に抑制できる。もちろん、このような点を考慮せず、また、車両搭載時の収納スペースを確保でき、かつ、折り完了体との干渉を抑制できる構成であれば、湾曲部は、車外側に突出させる構成としてもよく、さらには、車内側若しくは車外側の斜め上方、斜め下方等に向かって突出させる構成としてもよい。
【0041】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、湾曲部44が、略円形断面の円柱状として、構成されている。そのため、どの方向に曲げても、湾曲部44の断面係数が同一となって、均等な曲げやすさを確保できることから、折り完了体35を折り曲げる際のケース38F,38R相互を重ねる方向が、例えば、ケース38F,38Rの車内側壁39b相互を重ねるように折り曲げる場合や、車外側壁39c相互を重ねるように折り曲げる場合等、実施形態と、異なっていても、湾曲部44を容易に屈曲させることができ、円滑に折り完了体35を折り曲げることができる。特に、実施形態では、湾曲部44が略円形断面の円柱状として構成されていることから、全方位に円滑に屈曲させることができる。また、湾曲部44を円柱状とすれば、ケース38Fを形成する成形型を、中子を不要として2つの割型から構成することができ、ケースを簡便な型構成により安価に製造することができる。なお、このような点を考慮しなければ、湾曲部の形状はこれに限られるものではなく、断面形状において、軸心から外表面までの離隔距離を略同等とした柱状、換言すれば、断面形状を円形に近似した形状としてもよい。具体的には、湾曲部は、断面形状を、面取りされた四角形状や、面取りされた三角形状、五角形状、六角形状等の多角形状等から、構成してもよい。湾曲部をこのような構成とする場合にも、どの方向に曲げても湾曲部の断面係数が同等となって、同等の曲げやすさを確保できる。さらには、湾曲部の屈曲容易性を考慮しなければ、湾曲部を、帯状としてもよい。
【0042】
さらに、実施形態の頭部保護エアバッグ装置では、ケース38F,38R間を連結する連結片部43が、折り曲げ可能な湾曲部44を有していることから、折り完了体35(エアバッグ20)がケース38F,38R間で捩れた際に、この湾曲部44も折り完了体35とともに捩じれるような態様となって、折り完了体35の捩じれを容易に検知することができる。また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、雌型係合部55が、頭部51の係止孔57からの抜けを抑制する押え片62を有し、この押え片62は、広幅開口部60を略全域にわたって塞ぐように配設されていることから、折り完了体35の捩じれ時に、雄型係合部46における首部48の先端部50が、広幅開口部60側に向かって移動することとなっても、
図15に示すように、押え片62の前端62aに当接することとなり、また、このとき、頭部51は、前端側の部位において、狭幅開口部58の周縁59に重なって、狭幅開口部58の周縁59との係止状態を維持されることから、頭部51の広幅開口部60からの抜けを的確に防止することができる。そのため、折り完了体35の捩じれ時において、湾曲部44が捩じれることとなっても、ケース38F,38R間の連結片部43による連結を維持させることができる。
【0043】
なお、実施形態では、運搬時の折り完了体35(エアバッグ組付体AM)を、突出用開口40,40側相互を対向させるように折り曲げることを、例に採り説明しているが、折り完了体の折り曲げ形状は実施形態に限られるものではなく、例えば、ケースにおける車内側壁若しくは車外側壁を相互に対向させるように折り曲げたり、あるいは、天井壁相互を対向させるように、折り曲げて、運搬することもできる。実施形態では、ケース38F,38R相互を連結させている湾曲部44が、略円形断面の円柱状として構成され、全方位に円滑に屈曲させることができることから、折り曲げ時に、ケースをどのように重ねても容易に折り曲げることができて、作業性が良好である。