特許第6575440号(P6575440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575440
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20190909BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20190909BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   H04N1/00 C
   B41J29/38 D
   B41J29/38 Z
   G03G21/00 398
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-111753(P2016-111753)
(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公開番号】特開2017-220709(P2017-220709A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2018年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194146
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(72)【発明者】
【氏名】山口 博史
【審査官】 野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−228239(JP,A)
【文献】 特開2012−121194(JP,A)
【文献】 特開2006−221381(JP,A)
【文献】 特開2015−126445(JP,A)
【文献】 特開2006−4284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J 29/38
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常モードよりも消費電力を削減させた省エネモードを有する電子機器であって、
前記電子機器を動作させる複数のプログラムが記憶され、前記省エネモード時に読み書きが停止される不揮発性の第2記憶部と、
前記第2記憶部に比べると記憶容量は小さいがデータの読み書き速度は速く、前記省エネモード時にも動作する第1記憶部と、
使用する前記プログラムを前記第2記憶部から前記第1記憶部にロードし、前記第1記憶部上で実行する第1モジュールと、
前記通常モード時に、前記第2記憶部に記憶された複数のプログラムの内、前記省エネモードにおいて前記第1モジュールの使用が見込まれるプログラムを使用見込プログラムとして予測する予測部と、
前記通常モードから前記省エネモードへの移行時に、前記予測部により予測された前記使用見込プログラムを前記第2記憶部から前記第1記憶部にロードさせるロード部とを具備することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
ネットワークに接続された通信インターフェースを具備し、
前記予測部は、前記通常モード中に前記ネットワーク経由で受信されたネットワークパケットに基づいて前記使用見込プログラムを予測することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記予測部は、前記ネットワークパケットの単位時間当たりのパケット量と、前記ネットワークパケットの種類と、前記ネットワークパケットの応答処理に使用するプログラムとのいずれか1以上に基づいて前記使用見込プログラムを予測することを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記省エネモードは、前記第1記憶部及び前記第1モジュールが動作する第1スリープ状態と、前記第1記憶部及び前記第1モジュールが動作を停止させ、前記第1スリープ状態よりもさらに消費電力が削減される第2スリープ状態とからなり、
前記第2スリープ状態で動作し、前記ネットワーク経由で前記ネットワークパケットを代理受信する第2モジュールを具備し、
前記省エネモードでは、前記第1スリープ状態と前記第2スリープ状態との間で繰り返し移行され、
前記第1モジュールは、前記第1スリープ状態において、前記第2モジュールで対応できない前記ネットワークパケットへの対応を実行することを特徴とする請求項2又は3記載の電子機器
【請求項5】
前記予測部は、有効になっている機能と、接続されているデバイスの情報とのいずれか1以上に基づいて前記使用見込プログラムを予測することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記予測部は、所定時間毎に前記使用見込プログラムを予測し、
前記ロード部は、前記通常モードから前記省エネモードへの移行時に、前記予測部により直前に予測された前記使用見込プログラムを前記第2記憶部から前記第1記憶部にロードさせることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置(複写機、複合機)等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機や複合機等の画像形成装置では、一定期間以上操作がない場合に省エネモードに移行することにより、低消費電力化を図っている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、次に実行される可能性の高い印刷ジョブを予測し、当該印刷ジョブを予めHDDから省エネモード中に動作するメモリーに読み出し、HDDの起動回数を低減することにより、低消費電力化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−210222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置の制御を行うLSIは、複数の電源階層で構成されており、個別に電源のON/OFFを設定することができる。各電源階層は、複数のモジュールを備えている。LSIは、内部が4つの電源階層としてFP(フルパワー)階層、DRAM階層、メインCPU階層、DS(ディープスリープ)階層に分かれ、電源モードは、通常モードと、ライトスリープ状態及びディープスリープ状態の2つの省エネモードとからなる。通常モードでは、全ての階層への電源供給がオンされ、ライトスリープ状態の省エネモードでは、FP階層への電源供給がオフされ(DRAM階層、メインCPU階層、DS階層への電源供給はオン)、ディープスリープ状態の省エネモードでは、DS階層を除く他の階層への電源供給がオフされる。
【0005】
DS階層には、ネットワーク通信を制御するモジュールが存在する。そして、省エネモードでは、通常、DS階層への電源供給のみがオンされているディープスリープ状態であるが、ネットワーク応答の目的で、定期的(例えば、30秒毎)に一度ライトスリープ状態になる。そして、ライトスリープ状態でネットワーク処理(DS階層で対応できないネットワークパケットへの対応)を実行し終わると、再びディープスリープ状態になり、これを繰り返す。
【0006】
ここで、FP階層には、複数のモジュール(LCDC/VIDEO/NANDC/SPIB/USB−H/SDIF−CARD/KCD−FP/SCAN/IEPHT/GEU/GBCU/KCS/I2C/SSI/UART/CoreSight/CLKGEN−FP/その他GICL系等)が存在し、ライトスリープ状態ではこれらにアクセスできない。すなわち、FP階層への電源供給がオフ中であるため、FP階層にアクセスするとアボートされ、実行されているプログラムを中断される。
【0007】
FP階層の複数のモジュールの中で特に問題となるのが、NAND型フラッシュメモリー(以下、NANDメモリーと称す)へのアクセスを制御するNANDCである。NANDメモリーは、不揮発性記憶素子のフラッシュメモリーの一種であり、メインCPUが必要とするアプリケーションやライブラリのプログラムが格納されている。従って、メインCPUは、必要とするプログラムを逐次DRAMにロードして実行している。しかし、ライトスリープ状態では、NANDCが存在するFP階層への電源供給がオフであるため、メインCPUは、DRAM上に必要とするプログラムが無くなっても、NANDメモリーからリードできない。このため、従来では、ライトスリープ状態でネットワーク処理(DS階層で対応できないネットワークパケットへの対応)を実行する際に、DRAM上に必要とするプログラムが無くなったら、NANDメモリーからプログラムをロードするために、FP階層への電源供給がオンさせなければならなくなるという問題点があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、省エネモード中にプログラムをロードする回数を低減させることができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子機器は、通常モードよりも消費電力を削減させた省エネモードを有する電子機器であって、前記電子機器を動作させる複数のプログラムが記憶され、前記省エネモード時に読み書きが停止される不揮発性の第2記憶部と、前記第2記憶部に比べると記憶容量は小さいがデータの読み書き速度は速く、前記省エネモード時にも動作する第1記憶部と、使用する前記プログラムを前記第2記憶部から前記第1記憶部にロードし、前記第1記憶部上で実行する第1モジュールと、前記通常モード時に、前記第2記憶部に記憶された複数のプログラムの内、前記省エネモードにおいて前記第1モジュールの使用が見込まれるプログラムを使用見込プログラムとして予測する予測部と、前記通常モードから前記省エネモードへの移行時に、前記予測部により予測された前記使用見込プログラムを前記第2記憶部から前記第1記憶部にロードさせるロード部とを具備することを特徴とする。
さらに、本発明の電子機器は、ネットワークに接続された通信インターフェースを具備し、前記予測部は、前記通常モード中に前記ネットワーク経由で受信されたネットワークパケットに基づいて前記使用見込プログラムを予測しても良い。
さらに、本発明の電子機器は、前記予測部は、前記ネットワークパケットの単位時間当たりのパケット量と、前記ネットワークパケットの種類と、前記ネットワークパケットの応答処理に使用するプログラムとのいずれか1以上に基づいて前記使用見込プログラムを予測しても良い。
さらに、本発明の電子機器は、前記省エネモードは、前記第1記憶部及び前記第1モジュールが動作する第1スリープ状態と、前記第1記憶部及び前記第1モジュールが動作を停止させ、前記第1スリープ状態よりもさらに消費電力が削減される第2スリープ状態とからなり、前記第2スリープ状態で動作し、前記ネットワーク経由で前記ネットワークパケットを代理受信する第2モジュールを具備し、前記省エネモードでは、前記第1スリープ状態と前記第2スリープ状態との間で繰り返し移行され、前記第1モジュールは、前記第1スリープ状態において、前記第2モジュールで対応できない前記ネットワークパケットへの対応を実行しても良い。
さらに、本発明の電子機器は、前記予測部は、有効になっている機能と、接続されているデバイスの情報とのいずれか1以上に基づいて前記使用見込プログラムを予測しても良い。
さらに、本発明の電子機器は、前記予測部は、所定時間毎に前記使用見込プログラムを予測し、前記ロード部は、前記通常モードから前記省エネモードへの移行時に、前記予測部により直前に予測された前記使用見込プログラムを前記第2記憶部から前記第1記憶部にロードさせても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1記憶部には、予測部によって省エネモード中の使用が予測された使用見込プログラムが記憶された状態となり、省エネモード中にプログラムを第2記憶部から第1記憶部へロードする回数を低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る電子機器の実施の形態である画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示すネットワークCPU及びメインCPUの構成を示すブロック図である。
図3図1に示す主制御部の電源状態の遷移図である。
図4図1に示す主制御部の省エネモード移行動作を説明するフローチャートである。
図5図2に示す測定部によって蓄積されるパケット情報例を示す図である。
図6図2に示す省エネ制御部の動作を説明する説明図である。
図7図1に示す画像形成装置における省エネモード移動動作の他の例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
本発明の電子機器は、複写機や複合機等の画像形成装置1であり、図1を参照すると、原稿読取部2と、原稿給送部3と、記録部4と、操作部5と、パネルCPU6と、エンジンCPU7と、主制御部8と、通信インターフェース(I/F)9と、記憶部10とを備えている。操作部5は、液晶表示部、各種の操作ボタン等が設けられ、ユーザーは操作部5を操作して指示を入力することで、画像形成装置1の各種の設定を行い、画像形成等の各種機能を実行させる。
【0013】
原稿給送部3は、載置された原稿を1枚ずつ順に繰り出して原稿読取部2に給送し、原稿読取部2は、原稿給送部3による給送動作と同期して原稿を読み取って画像データを取得し、取得した画像データを記録部4に出力する。そして、記録部4は、感光体ドラム、帯電部、露光部、現像部、転写部、定着部等を備え、帯電、露光、現像、転写、定着からなる画像形成プロセスを実行することで、取得した画像データに基づくトナー像を記録紙Pに記録する。
【0014】
パネルCPU6は、主制御部8からの指示に基づいて操作部5における液晶表示部の表示制御を行う表示制御部として機能する。エンジンCPU7は、主制御部8から指示に基づいて原稿読取部2、原稿給送部3及び記録部4の動作制御を行う記録制御部として機能する。
【0015】
主制御部8は、画像形成装置の制御を行うLSI(大規模集積回路)であり、ネットワークCPU81と、メインCPU82と、DRAMC83と、NANDC84と、SDRAM85と、NANDメモリー86とを備えている。主制御部8は、内部が4つの電源階層としてFP(フルパワー)階層、DRAM階層、メインCPU階層、DS(ディープスリープ)階層に分かれ、電源モードは、通常モードと、ライトスリープ状態及びディープスリープ状態の2つの省エネモードとからなる。通常モードでは、全ての階層への電源供給がオンされ、ライトスリープ状態の省エネモードでは、FP階層への電源供給がオフされ(DRAM階層、メインCPU階層、DS階層への電源供給はオン)、ディープスリープ状態の省エネモードでは、DS階層を除く他の階層への電源供給がオフされる。
【0016】
DS階層には、ネットワークCPU81が存在する。ネットワークCPU81は、通信I/F9に接続されたLANやインターネット等のネットワーク経由で受信したネットワークパケットの最小限の応答処理(代理応答)を実行する。すなわち、ネットワークCPU81は、図2に示すように、代理通信部101として機能する。
【0017】
メインCPU階層には、メインCPU82が存在する。メインCPU82は、装置全体の制御を行うと共に、図2に示すように、ネットワーク通信を制御する通信部100や、省エネ制御部110としても機能する。
【0018】
DRAM階層には、SDRAM85へのデータの書き込み及びSDRAM85からのデータの読み出しを制御するコントローラーであるDRAMC83が存在する。SDRAM85は、揮発性メモリーであり、メインCPU82が使用するプログラムが一時的に記憶される。また、SDRAM85は、NANDメモリー86に比べると、記憶容量は小さいが、データの読み書き速度は速い。なお、SDRAM85のリフレッシュは、図示しないハードウェアによって実行され、DRAM階層への電源供給がオフされるディープスリープ状態の省エネモードにおいても記憶内容が保持される。
【0019】
FP階層には、NANDメモリー86へのデータの書き込み及びNANDメモリー86からのデータの読み出しを制御するコントローラーであるNANDC84が存在する。NANDメモリー86は不揮発性メモリーであり、装置全体を制御するための各種のプログラムが記憶されている。メインCPUは、使用するプログラムをNANDメモリー86からSDRAM85にロードさせ、SDRAM85上からプログラムを実行する。
【0020】
記憶部10は、半導体メモリーやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段であり、原稿読取部2によって取得された画像データ等が記憶される。
【0021】
図3には、主制御部8の電源状態の遷移図が示されている。主制御部8は、通常、通常モードで動作しており、キー押下等による省エネ移行命令もしくは、タイマーによって所定期間動作なしを検知した場合に、省エネモード(ディープスリープ状態)に移行する。
省エネモード(ディープスリープ状態)においては、ネットワークCPU81が動作しており、受信したネットワークパケットの最小限の応答処理(代理応答)を実行する。しかし、ネットワークCPU81だけでは処理しきれないネットワークパケットが存在し、これらの対応不可パケットを受信された場合は、メインCPU82を起動して処理を実行する必要がある。そこで、主制御部8は、定期的(例えば、30秒毎)に設定されている移行時間もしくは、対応不可パケットの受信時に省エネモード(ライトスリープ状態)へ移行し、メインCPU82およびDRAMC83を起動させ、受信したネットワークパケットの応答処理を実行する。そして、主制御部8は、省エネモード(ライトスリープ状態)でネットワーク処理(DS階層のネットワークCPU81で対応できない対応不可パケットの応答処理)を実行し終わると、再びディープスリープ状態になり、これを繰り返す。なお、省エネモード(ライトスリープ状態)において、メインCPU82はSDRAM85上に存在するプログラムを実行するが、使用するプログラムがSDRAM85上に存在しない場合は、一旦FP階層の電源供給をオンさせてNANDC83を起動させ、使用するプログラムをNANDメモリー86からSDRAM85へロードさせる。その後、メインCPU82は、FP階層の電源供給をオフさせた後、SDRAM85にロードしたプログラムを実行する。
【0022】
次に、主制御部8の省エネモード移行動作について図4乃至図6を参照して詳細に説明する。
図4を参照すると、主制御部8のメインCPU82は、通常モードにおいて、省エネ制御部110として機能し、通信I/F9に接続されたLANやインターネット等のネットワークからのネットワークパケットの受信を監視していると共に(ステップS11)、省エネモードへの移行トリガー(キー押下等による省エネ移行命令もしくは、タイマーによって所定期間動作なしの検知)を監視している(ステップS12)。
【0023】
ステップS11でネットワークパケットが受信されると、省エネ制御部110は測定部111として機能し、図5(a)に示すように、ネットワークパケットの受信時刻と、受信したネットワークパケットの種類と、受信したネットワークパケットの応答処理に使用するプログラムとをパケット情報としてSDRAM85に蓄積させ(ステップS13)、ステップS11に戻る。なお、パケット情報は、NANDメモリー86もしくは、記憶部10に蓄積するようにしても良い。
【0024】
ステップS12で省エネモードへの移行トリガーが検出されると、省エネ制御部110は予測部112として機能し、SDRAM85に蓄積されているパケット情報に基づき、省エネモード中に使用が見込まれるプログラムを予測する(ステップS14)。なお、SDRAM85にパケット情報を蓄積する蓄積時間Tが予め設定されており、図6(a)に示すように、時刻t1に省エネモードへの移行トリガーが検出されると、直前の時刻t1−Tから時刻t1がパケット情報蓄積期間となる。このパケット情報蓄積期間に蓄積されたパケット情報に基づき、予測部112は、省エネモード中に使用するプログラムを予測する。以下、予測部112によって予測されたプログラムを使用見込プログラムと称す。また、使用見込プログラムの数は、使用見込プログラムの大きさとSDRAM85の空き容量との兼ね合いで適宜決定される。なお、パケット情報を蓄積する蓄積時間Tの代わりに、パケット情報を蓄積する数を予め設定しておくようにしても良い。
【0025】
予測部112は、例えば、パケット情報蓄積期間に蓄積されたネットワークパケットの種類のカウント数に基づき、カウント数が多い順に、応答処理に使用するプログラムを使用見込プログラムとする。また、予測部112は、パケット情報蓄積期間に蓄積されたネットワークパケットの順番に基づき、直近の蓄積した種類から順に、応答処理に使用するプログラムを使用見込プログラムとする。さらに、予測部112は、単位時間当たりのパケット量、有効になっている機能、接続されているデバイスの情報に基づいて使用見込プログラムを予測するようにしても良い。
【0026】
次に、省エネ制御部110はロード部113として機能し、ステップS14で予測された使用見込プログラムをNANDメモリー86からSDRAM85へロードさせた後(ステップS15)、メインCPU階層(メインCPU82)、DRAM階層(DRAMC83)及びFP階層(NANDC84)への電源供給をオフさせて省エネモード(ディープスリープ状態)に移行する(ステップS16)。これにより、SDRAM85には、予測部112によって省エネモード中の使用が予測された使用見込プログラムが記憶された状態となる。従って、省エネモード(ライトスリープ状態)でのメインCPU82によるネットワーク処理で使用するプログラムが、使用見込プログラムとしてSDRAM85に記憶されている確率が高くなり、省エネモード中にFP階層(NANDC84)を起動させてプログラムをNANDメモリー86からSDRAM85へロードする回数を低減させることができる。これにより、省エネ効果を向上させることができる。
【0027】
本実施の形態では、省エネモードへの移行トリガーが検出された後に使用見込プログラムを予測するように構成したが、使用見込プログラムを定期的に予測するようにしても良い。以下、使用見込プログラムを定期的に予測する場合の主制御部8の省エネモード移行動作について図7を参照して詳細に説明する。
【0028】
図7を参照すると、主制御部8のメインCPU82は、通常モードにおいて、省エネ制御部110として機能し、時間計測を開始する(ステップS21)。そして、省エネ制御部110は、通信I/F9に接続されたLANやインターネット等のネットワークからのネットワークパケットの受信と(ステップS22)、ステップS21で開始した時間計測の予め設定された蓄積時間Tへの到達と(ステップS23)、省エネモードへの移行トリガー(キー押下等による省エネ移行命令もしくは、タイマーによって所定期間動作なしの検知)とを監視している(ステップS24)。
【0029】
ステップS22でネットワークパケットが受信されると、省エネ制御部110は測定部111として機能し、受信したネットワークパケットのパケット情報をSDRAM85に蓄積させ(ステップS25)、ステップS22に戻る。なお、パケット情報は、NANDメモリー86もしくは、記憶部10に蓄積するようにしても良い。また、図5(b)に示すように、パケット情報としてネットワークパケットの種類を予め設定しておき、それぞれ種類ごとのカウント値を構築するようにしても良い。
【0030】
ステップS23で時間計測の予め設定された蓄積時間Tに到達すると、省エネ制御部110は予測部112として機能し、SDRAM85に蓄積されているパケット情報に基づき、省エネモード中に使用が見込まれる使用見込プログラムを予測し(ステップS26)、予測した使用見込プログラムをSDRAM85に記憶させる(ステップS27)。なお、ステップS27でSDRAM85に記憶させる使用見込プログラムは、ロードに行う際に用いるインデックスである。また、使用見込プログラム(インデックス)は、NANDメモリー86もしくは、記憶部10に記憶させるようにしても良い。さらに、前回予測して使用見込プログラムが記憶されている場合には、新たに予測した使用見込プログラムに更新して記憶させる。次に、省エネ制御部110は測定部111として機能し、蓄積しているパケット情報を消去し(ステップS28)、ステップS21に戻る。これにより、図6(b)に示すように、蓄積時間Tがパケット情報蓄積期間となり、このパケット情報蓄積期間に蓄積されたパケット情報に基づき、予測部112によって、省エネモード中に使用するプログラムが蓄積時間T毎に予測されることになる。
【0031】
ステップS24で省エネモードへの移行トリガーが検出されると、省エネ制御部110はロード部113として機能し、ステップS27で記憶させた使用見込プログラムをNANDメモリー86からSDRAM85へロードさせた後(ステップS29)、メインCPU階層(メインCPU82)、DRAM階層(DRAMC83)及びFP階層(NANDC84)への電源供給をオフさせて省エネモード(ディープスリープ状態)に移行する(ステップS30)。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態によれば、通常モードよりも消費電力を削減させた省エネモードを有する画像形成装置1であって、省エネモード時に動作する第1記憶部であるSDRAM85と、省エネモード時にSDRAM85上のプログラムによって動作する第1モジュールであるメインCPU82と、メインCPU82を動作させる複数のプログラムが記憶され、省エネモード時に読み書きが停止される第2記憶部であるNANDメモリー86と、通常モード時に、NANDメモリー86に記憶された複数のプログラムの内、省エネモードにおいてメインCPU82の使用が見込まれるプログラムを使用見込プログラムとして予測する予測部112と、通常モードから省エネモードへの移行時に、予測部112により予測された使用見込プログラムをNANDメモリー86からSDRAM85にロードさせるロード部113とを備えている。
この構成により、SDRAM85には、予測部112によって省エネモード中の使用が予測された使用見込プログラムが記憶された状態となる。従って、省エネモードでのメインCPU82によるネットワーク処理で使用するプログラムが、使用見込プログラムとしてSDRAM85に記憶されている確率が高くなり、省エネモード中にプログラムをNANDメモリー86からSDRAM85へロードする回数を低減させることができる。
【0033】
さらに、本実施の形態によれば、ネットワークに接続された通信I/F9を具備し、予測部112は、通常モード中にネットワーク経由で受信されたネットワークパケットに基づいて使用見込プログラムを予測する。
この構成により、省エネモード中に受信されるネットワークパケットに対するネットワーク処理を、使用見込プログラムを用いて実行できる確率が高くなる。
【0034】
さらに、本実施の形態によれば、予測部112は、ネットワークパケットの単位時間当たりのパケット量と、ネットワークパケットの種類と、ネットワークパケットの応答処理に使用するプログラムとのいずれか1以上に基づいて使用見込プログラムを予測する。
【0035】
さらに、本実施の形態によれば、省エネモードは、SDRAM85及びメインCPU82が動作する第1スリープ状態であるライトスリープ状態と、SDRAM85及びメインCPU82が動作を停止させ、第1スリープ状態よりもさらに消費電力が削減される第2スリープ状態であるディープスリープ状態とからなり、ディープスリープ状態で動作し、ネットワーク経由でネットワークパケットを代理受信する第2モジュールであるネットワークCPU81とを具備し、省エネモードでは、ライトスリープ状態とディープスリープ状態との間で繰り返し移行され、メインCPU82は、ライトスリープ状態において、ネットワークCPU81で対応できないネットワークパケットへの対応を実行する。
【0036】
さらに、本実施の形態によれば、予測部112は、有効になっている機能と、接続されているデバイスの情報とのいずれか1以上に基づいて使用見込プログラムを予測する。
【0037】
さらに、本実施の形態によれば、予測部112は、所定時間毎に使用見込プログラムを予測し、ロード部113は、通常モードから省エネモードへの移行時に、予測部112により直前に予測された使用見込プログラムをNANDメモリー86からSDRAM85にロードさせる。
この構成により、通常モードから省エネモードへの移行時に、予測部112による予測動作を行う必要がないため、通常モードから省エネモードへ速やかに移行することができる。
【0038】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0039】
1 画像形成装置
2 原稿読取部
3 原稿給送部
4 記録部
5 操作部
6 パネルCPU
7 エンジンCPU
8 主制御部
9 通信インターフェース(I/F)
10 記憶部
81 ネットワークCPU
82 メインCPU
83 DRAMC
84 NANDC
85 SDRAM
86 NANDメモリー
100 通信部
101 代理通信部
110 省エネ制御部
111 測定部
112 予測部
113 ロード部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7