(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
座席に着座した乗員の前方に設けられる収納部位に収納されて、内部に膨張用ガスを流入させて車両後方側に向かって突出するように展開膨張し、前記乗員を保護可能に構成されるエアバッグを、備えるエアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、膨張完了時の後面の下部側を前記上半身拘束面とするエアバッグ本体と、膨張完了時に該エアバッグ本体の後面における上部側から部分的に突出して形成される頭部受け止め部と、を備える構成とされ、
前記エアバッグが、膨張完了時の後面を、前記乗員を保護可能な乗員保護部として構成され、
該乗員保護部が、
前記エアバッグの膨張完了時に前記乗員の前方に配置されて、前記乗員の上半身を受け止め可能な前記上半身拘束面と、
前記上半身拘束面の上方の領域であって、前記乗員保護部における左右方向の中央より左側の領域と右側の領域とにおいて、それぞれ、前記上半身拘束面から後方に突出するように形成されて、前記頭部の側面を受け止め可能に構成される左側拘束面と右側拘束面とを有した前記頭部受け止め部と、
を備える構成とされ、
前記頭部受け止め部が、膨張完了時における前記左側拘束面と前記右側拘束面との間の部位を、前記上半身拘束面から連ならせるように構成されるとともに、前記左側拘束面を有する左側拘束部と、前記右側拘束面を有する右側拘束部と、を備える構成とされ、
前記左側拘束部と前記右側拘束部とが、膨張完了時の前記エアバッグを上方から見た状態において、膨張完了時の元部側を前記エアバッグ本体の後面における左縁及び右縁よりも左右方向の中央側に位置させるようにして、前記上半身拘束面から後方に突出するように、構成され、
前記左側拘束面と前記右側拘束面とが、前記エアバッグの膨張完了時に、元部側を相互に接触させるように、構成されるとともに、先端側にかけて拡開されるように、前後方向に対して傾斜して配置されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のエアバッグ装置では、車両の斜め衝突時若しくはオフセット衝突時等によって、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、乗員保護部の凹部内に進入させるようにして、受け止める構成であるが、凹部と突出部とが、乗員保護部の上下の全域にわたって連続的に形成されていることから、凹部の凹みの深さ、換言すれば、突出部の突出量を十分に確保し難く、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、的確に保護する点に改善の余地が生じていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、膨張を完了させたエアバッグによって円滑に保護可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、座席に着座した乗員の前方に設けられる収納部位に収納されて、内部に膨張用ガスを流入させて車両後方側に向かって突出するように展開膨張し、乗員を保護可能に構成されるエアバッグを、備えるエアバッグ装置であって、
エアバッグが、膨張完了時の後面を、乗員を保護可能な乗員保護部として構成され、
乗員保護部が、
エアバッグの膨張完了時に乗員の前方に配置されて、乗員の上半身を受け止め可能な上半身拘束面と、
上半身拘束面の上方の領域であって、乗員保護部における左右方向の中央より左側の領域と右側の領域とにおいて、それぞれ、上半身拘束面から後方に突出するように形成されて、頭部の側面を受け止め可能に構成される左側拘束面と右側拘束面とを有した頭部受け止め部と、
を備える構成とされ、
頭部受け止め部が、膨張完了時における左側拘束面と右側拘束面との間の部位を、上半身拘束面から連ならせるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時に、乗員の頭部の左右の側方を覆って、頭部を受け止める頭部受け止め部が、上半身拘束面から後方に突出するように形成されており、この頭部受け止め部は、左側拘束面と右側拘束面とによって、頭部の左右の側面を受け止める構成である。すなわち、本発明のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時に、頭部受け止め部が、上半身拘束面から後方の乗員側に突出して配置される構成であり、換言すれば、この頭部受け止め部と、座席に着座している乗員の頭部と、の離隔距離を、比較的小さくすることができる。そのため、車両の斜め衝突時若しくはオフセット衝突時に、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、頭部受け止め部における左側拘束面若しくは右側拘束面によって、迅速かつ的確に受け止めることができる。また、本発明のエアバッグ装置では、頭部受け止め部は、エアバッグの膨張完了時において、上半身拘束面から後方に突出するように形成されていることから、凹部と突出部とを上下の全域にわたって形成する従来のエアバッグと比較して、容積の増大を抑制することができる。さらに、本発明のエアバッグ装置では、膨張を完了させたエアバッグにおいて、上半身拘束面は、頭部受け止め部よりも前方側となる位置に配置され、かつ、大きな凹凸を備えていないことから、エアバッグの膨張完了時に、前進移動する乗員の上半身を、上半身拘束面によって、広く的確に受け止めることができる。
【0008】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、膨張を完了させたエアバッグによって円滑に保護することができる。
【0009】
また、本発明のエアバッグ装置では、頭部受け止め部における左側拘束面及び右側拘束面は、それぞれ、乗員保護部における左右方向の中央より左側の領域と右側の領域とに配置される構成であり、また、頭部受け止め部は、左側拘束面と右側拘束面との間の部位を、上半身拘束面から連ならせるように構成され、換言すれば、上半身拘束面から凹むように構成されていないことから、車両の前面衝突時においても、前方移動する乗員の頭部を、左側拘束面と右側拘束面との間の隙間に進入させるようにして、支障なくかつ的確に保護することができる。
【0010】
さらに、本発明のエアバッグ装置において、エアバッグを、膨張完了時の後面の下部側を上半身拘束面とするエアバッグ本体と、膨張完了時にエアバッグ本体の後面における上部側から部分的に突出して形成される頭部受け止め部と、を備える構成とし、
頭部受け止め部を、左側拘束面を有する左側拘束部と、右側拘束面を有する右側拘束部と、を備える構成として、
左側拘束部と右側拘束部とを、膨張完了時のエアバッグを上方から見た状態において、膨張完了時の元部側をエアバッグ本体の後面における左縁及び右縁よりも左右方向の中央側に位置させるようにして、上半身拘束面から後方に突出するように、構成することが、好ましい。
【0011】
上記構成のエアバッグ装置では、頭部受け止め部における左側拘束部及び右側拘束部が、元部側を、エアバッグ本体の後面の左縁及び右縁よりも左右方向の中央側に位置させた構成とされており、換言すれば、左側拘束部及び右側拘束部の左右方向の外側の領域には、エアバッグ本体の後面における上部側の領域との間に、左右方向の内方に向かって凹むような凹部が、形成される構成である。そのため、エアバッグの展開膨張時に、左側拘束部及び右側拘束部が、一旦先端を左右の外方に向けるように展開した後に、エアバッグの外表面に発生する張力に伴って、先端相互を接近させるように、膨張することとなって、乗員の頭部を、左右両側から、左側拘束部と右側拘束部とによって円滑に挟むことができ、乗員の頭部を円滑に拘束することができる。
【0012】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、左側拘束面と右側拘束面とを、エアバッグの膨張完了時に、先端側にかけて拡開されるように、前後方向に対して傾斜させて配置させる構成とすれば、左側拘束面若しく右側拘束面が、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部と対向するように配置されることから、左側拘束面及び右側拘束面をエアバッグの膨張完了時に前後方向に略沿わせるように配置させる場合と比較して、左側拘束面若しく右側拘束面によって、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、広い面で、的確に拘束することができる。また、上記構成のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時において、左側拘束面若しくは右側拘束面が乗員の頭部と接触した際に、乗員の頭部を接触させている左側拘束部若しくは右側拘束部が、先端を他方の左側拘束部若しくは右側拘束部側に向けるように回転移動することとなり、左側拘束部と右側拘束部とによって、一層円滑に乗員の頭部を挟み込むことが可能となって、好ましい。
【0013】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、左側拘束面と右側拘束面とを、エアバッグの膨張完了時に、元部側を相互に接触させるように、構成すれば、頭部受け止め部による乗員の頭部の受止時に、乗員の頭部を、左側拘束面と右側拘束面との両方で受け止めるができて、左側拘束面と右側拘束面とによって、乗員の頭部をより一層円滑に拘束することが可能となって、好ましい。
【0014】
具体的には、エアバッグは、助手席に着座した乗員の前方に配置されたインストルメントパネルに設けられる収納部位に折り畳まれて収納させる構成としてもよく、また、運転席に着座した運転者の前方のステアリングホイールに設けられる収納部位に折り畳まれて収納させる構成としてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態では、エアバッグ装置として、助手席の前方に配置される助手席用エアバッグ装置M1を、例に採り、説明をする。第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1は、
図1に示すように、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面2の内部に配置されるトップマウントタイプとされている。なお、第1実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両の前後・上下・左右の方向と一致するものである。
【0017】
第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1は、
図1に示すように、折り畳まれたエアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ15及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース12と、エアバッグ15及びインフレーター8をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、折り畳まれたエアバッグ15を覆うエアバッグカバー6と、を備えて構成されている。
【0018】
エアバッグカバー6は、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ15の展開膨張時に、前後二枚の扉部6a,6bを、エアバッグ15に押されて開くように、構成されている。また、エアバッグカバー6における扉部6a,6bの周囲には、ケース12に連結される連結壁部6cが、形成されている。
【0019】
インフレーター8は、
図1に示すように、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース12に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えて構成されている。インフレーター8は、実施形態の場合、車両の前面衝突と、斜め衝突と、オフセット衝突と、の際に、作動するように構成されている。
【0020】
収納部位としてのケース12は、
図1に示すように、助手席PS(
図11参照)に着座した乗員MP1の前方に配置されたインパネ1の下面側に配置されるもので、上端側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成されて、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部12aと、底壁部12aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー6の連結壁部6cを係止する周壁部12bと、を備えて構成されている。実施形態の場合、エアバッグ15とインフレーター8とは、エアバッグ15内に配置させたリテーナ9の各ボルト9aを取付手段として、エアバッグ15におけるガス流入口19の周縁、ケース12の底壁部12a、及び、インフレーター8のフランジ部8cを、貫通させて、ナット10止めすることにより、ケース12の底壁部12aに取り付けられている。
【0021】
エアバッグ15は、実施形態の場合、
図2〜7に示すように、エアバッグ本体16と、膨張完了時にエアバッグ本体16から部分的に突出する頭部受け止め部26と、エアバッグ本体16内に配置されてエアバッグ本体16の膨張完了形状を規制する前後テザー37,左右テザー45,46と、を備える構成とされている。
【0022】
エアバッグ本体16は、
図1の二点鎖線に示すように、膨張完了時に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置可能な略袋状として構成されている。具体的には、エアバッグ本体16は、
図2〜4に示すように、膨張完了時の形状を、頂部を前端側に配設させた略四角錐形状とされるもので、膨張完了時に乗員MP1側となる後側に配置される後側壁部23と、後側壁部23の周縁から前方に延びるとともに前端側にかけて収束される先細り形状の周壁部17と、を備えている。
【0023】
周壁部17は、エアバッグ15の膨張完了時に、主にインパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置される部位であり、上下両側で略左右方向に沿って配置される上壁部17a,下壁部17bと、左右両側で略前後方向に沿って配置される左壁部17c,右壁部17dと、を備えている。エアバッグ本体16の膨張完了時の前端付近となる下壁部17bの前端近傍において、左右方向の略中央となる位置には、内部に膨張用ガスを流入可能に略円形に開口して、周縁をケース12の底壁部12aに取り付けられるガス流入口19が、形成されている。ガス流入口19の周縁には、リテーナ9のボルト9aを挿通させて、ガス流入口19の周縁をケース12の底壁部12aに取り付けるための複数(実施形態の場合、4個)の取付孔20が、形成されている。また、周壁部17における左壁部17cと右壁部17dとには、エアバッグ本体16内に流入した余剰の膨張用ガスを排気するためのベントホール21が、形成されている。
【0024】
後側壁部23は、
図10に示すように、エアバッグ本体16の膨張完了時に、乗員MP1側となるエアバッグ本体16の後端側において、略鉛直方向に沿って配設される。実施形態の場合、後側壁部23は、エアバッグ15の膨張完了時に、左右の中央を、上下の略全域にわたって僅かに前方に凹ませるように、構成されている。
【0025】
頭部受け止め部26は、膨張完了時のエアバッグ本体16における後側壁部23の上側の領域(上側部位23b)から、後方に突出するように配置されるもので、詳細には、エアバッグ15の膨張完了時において、後側壁部23の左右方向の略中央において、上下方向の中央より僅かに上側となる位置から、後方に突出するように、形成される。具体的には、頭部受け止め部26は、
図2〜6に示すように、エアバッグ15の膨張完了時に左後方に向かって突出するように配置される左側拘束部27Lと、右後方に向かって突出するように配置される右側拘束部27Rと、を有する構成とされている。左側拘束部27Lと右側拘束部27Rとは、ともに、外形形状を、膨張完了時の先端27b側にかけて僅かに先細りとされる略長方形板状として、左右方向の内側において対向するように配置される左内側壁部28L,右内側壁部28Rと、左右方向の外側に配置される左外側壁部29L,右外側壁部29Rと、を備える構成とされている。そして、左側拘束部27Lと右側拘束部27Rとは、左内側壁部28L,右内側壁部28Rの元部28a,28a相互を、後側壁部23の左右方向の略中央となる位置において、接触させつつ、先端27b,27b側を拡開させるように、上下方向側から見て略V字形状として、構成されている(
図4,6参照)。すなわち、実施形態では、左側拘束部27Lは、後側壁部23の左右方向の中央より左側の領域に配置され、右側拘束部27Rは、後側壁部23の左右方向の中央より右側の領域に配置される構成である。
【0026】
実施形態の場合、左側拘束部27Lと右側拘束部27Rとは、膨張完了時の外形形状を、略左右対称形とされており、詳細には、側方から見て、それぞれ、上下方向側の中央を、後側壁部23の上下方向側の中央より僅かに上方に位置させるように、配置されている(
図5参照)。この左側拘束部27L,右側拘束部27Rは、エアバッグ15の膨張完了時において、
図11に示すように、先端27bを、前進移動前の乗員MP1の頭部MH1に近接させて配置される構成である。また、左側拘束部27Lと右側拘束部27Rとは、平らに展開した状態においての元部27a側の部位の上下方向側の幅寸法T1(
図9参照)を、後側壁部23における左右方向の中央付近の領域の上下方向側の幅寸法T2(
図9参照)の2/7程度に設定されて、膨張完了時の上下方向側の幅寸法を、乗員MP1の頭部MH1の上下方向側の幅寸法より僅かに小さく設定されている(
図10参照)。また、左側拘束部27Lと右側拘束部27Rとの前後方向側の幅寸法T3(
図9参照)は、エアバッグ15の膨張完了時において、乗員MP1の頭部MH1を受け止めた際に、頭部MH1の左右の側方を、耳付近まで覆い可能な寸法に、設定されている(
図10参照)。
【0027】
そして、実施形態のエアバッグ15では、後側壁部23において、エアバッグ15の膨張完了時に頭部受け止め部26の下側に配置される下側部位23aが、乗員MP1の上半身UB1、実施形態の場合、頭部MH1の下方の領域(肩部から胸部にかけての領域)を、受け止め可能な上半身拘束面35を構成することとなり、この上半身拘束面35と、エアバッグ本体16の後面(後側壁部23)における上部側(上側部位23b)から部分的に突出して配置される頭部受け止め部26と、によって、膨張完了時の後面側に配置されて、乗員MP1を保護可能な乗員保護部34が、構成されることとなる。そして、頭部受け止め部26を構成する左側拘束部27Lと右側拘束部27Rとにおいて、左右方向の内側において対向するように配置される左内側壁部28L,右内側壁部28Rが、乗員MP1の頭部MH1の側面を受け止め可能な左側拘束面31Lと右側拘束面31Rとを構成することとなる。すなわち、実施形態のエアバッグ15では、左側拘束面31Lは、乗員保護部34における左右方向の中央より左側の領域において、上半身拘束面35(後側壁部23)から後方に突出するように形成され、右側拘束面31Rは、乗員保護部34における左右方向の中央より右側の領域において、上半身拘束面35(後側壁部23)から後方に突出するように形成されている。そして、この左側拘束面31Lと右側拘束面31Rとは、エアバッグ15の膨張完了時に、先端31b側にかけて拡開されるように、前後方向に対して傾斜して配置される構成である(
図6参照)。さらに、実施形態のエアバッグ15では、膨張完了形状を略板状とされる左側拘束部27Lと右側拘束部27Rとが、膨張完了時のエアバッグ15を上方から見た状態において、膨張完了時の元部27a側を後側壁部23の上側部位23bにおける左縁23c及び右縁23dよりも左右方向の中央側に位置させる構成とされ、換言すれば、エアバッグ15は、左側拘束部27L及び右側拘束部27Rの左右方向の外側の領域において、後側壁部23の上側部位23bとの間に、左右方向の内方に向かって凹むような凹部33L,33Rを有している構成である(
図4,6参照)。また、実施形態のエアバッグ15では、膨張完了時に、左内側壁部28Lと右内側壁部28Rとが、元部28a側を相互に接触させるように構成されており、換言すれば、左側拘束面31Lと右側拘束面31Rとは、エアバッグ15の膨張完了時に、元部31a側を相互に接触させる構成とされている(
図6参照)。そして、実施形態のエアバッグ15では、膨張完了時に、乗員MP1の頭部MH1を、頭部受け止め部26における左側拘束部27L,右側拘束部27R間の先細りの領域で構成される凹部32内に進入させつつ、左側拘束部27L若しくは右側拘束部27Rによって、乗員MP1の頭部MH1を受け止めるようにして、乗員MP1の頭部MH1を保護する構成である。
【0028】
エアバッグ本体16内に配置される前後テザー37は、ガス流入口19の周縁から延びる前側部位38と、後側壁部23側から延びる後側部位40L,40Rと、を連結させるようにして、構成されている(
図5〜7参照)。
【0029】
前側部位38は、ガス流入口19から延びるように配置されるとともに、実施形態の場合、
図8に示す前側部位用素材42を折って構成されるもので、左右対称形として、エアバッグ本体16の膨張完了時における外形形状を、前端側を略左右方向に沿わせ、後端側を略上下方向に沿わせるような略三角錐形状に近似した立体形状とされている。実施形態の場合、前側部位38は、
図5,6に示すように、前端側の領域を、エアバッグ本体16への連結部38aとして、この連結部38aにガス流入口19及び取付孔20に対応する開口(図符号省略)を配置させて、ガス流入口19の周縁部位で、全周にわたって、周壁部17の下壁部17bに連結されている。そして、前側部位38において、ガス流入口19から後方に延びる領域が、本体部38bを構成し、この本体部38bの外形形状を、略三角錐形状に近似した立体形状としている(
図5,6参照)。本体部38bは、後側部位40L,40Rの前端40a側に縫着される後端38c側の部位の上下の幅寸法を、後側部位40L,40Rにおける前端40a側の部位の上下の幅寸法と、略一致させるように構成されている。
【0030】
後側部位40L,40Rは、シート状として、外形形状を、前側部位38に連結される前端40a側を狭幅として、後端40b側にかけて上下に拡開されるような略台形状として、構成される。実施形態の場合、後側部位40L,40Rは、左右方向側で二枚並設されるもので、それぞれ、後端40b側を、後側壁部23における左縁23c側若しくは右縁23d側における上下の中央付近となる位置に縫着させ、前端40a,40a側を、ともに、前側部位38の後端38c側に縫着させて構成される(
図6参照)。実施形態の場合、後側部位40L,40Rの後端40bは、それぞれ、後左パネル52L,後右パネル52Rにおける外側部位56L,56Rの外縁56a,56aと、前左パネル50L,前右パネル50Rの後縁50e,50eと、の縫着時(縫合部位66L,66Rの形成時)に、共縫いされて、後側壁部23の左縁23c側若しくは右縁23d側に連結されている。すなわち、実施形態の前後テザー37では、後側部位40L,40Rは、後端40b側にかけて拡開するような二又状として、構成されている。この前後テザー37は、エアバッグ15の膨張完了時に、後側壁部23のガス流入口19の周縁部位からの離隔距離を規制するもので、詳細には、後側壁部23における左縁23c側と右縁23d側とにおけるガス流入口19の周縁部位からの離隔距離を、規制する構成とされている。
【0031】
左右テザー45,46は、エアバッグ本体16の膨張完了時において、左壁部17cと右壁部17dとを連結するように、左右方向に略沿って配置されるもので、実施形態の場合、
図5,7に示すように、前後テザー37の上方となる領域と下方となる領域との2箇所に、配置されている。
【0032】
各左右テザー45,46は、それぞれ、左壁部17cと右壁部17dとを連結するように、左右方向に略沿って配置される帯状とされるもので、実施形態の場合、前後テザー37の上側に配置される左右テザー45は、幅方向を前後方向側に略沿わせるように配置され、前後テザー37の下側に配置される左右テザー46は、幅方向を、左右テザー45と略直交させるように、上下方向に略沿わせるようにして、配置される(
図5,7参照)。また、各左右テザー45,46は、それぞれ、左右方向側で並設される2枚のテザー用基布45a,45b,46a,46bを結合させて、構成されている(
図7参照)。これらの左右テザー45,46は、エアバッグ本体16における左壁部17cと右壁部17dとの離隔距離を規制して、エアバッグ15の膨張初期に、エアバッグ本体16が、左壁部17cと右壁部17dとを大きく離隔させるように展開することを抑制するために、配置されている。
【0033】
エアバッグ本体16及び頭部受け止め部26は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、
図8に示すように、膨張完了時に前側に配置される前左パネル50L,前右パネル50Rと、膨張完了時に後側に配置される後左パネル52L,後右パネル52Rと、の4枚の基布から構成されている。
【0034】
前左パネル50L,前右パネル50Rは、左右対称形として、膨張完了時のエアバッグ本体16において、周壁部17の領域を構成するもので、この周壁部17の領域を、ガス流入口19の周縁となる部位を除いて、ガス流入口19の中央を通るとともに前後方向に沿うような分割面で、左右で分割するようにして、それぞれ、別体として構成されている。実施形態の場合、各前左パネル50L,前右パネル50Rは、
図8に示すように、ガス流入口19の周縁の部位を構成する突出部50aを、備えている。
【0035】
後左パネル52L,後右パネル52Rは、左右対称形として、膨張完了時のエアバッグ本体16における後側壁部23と、頭部受け止め部26と、の領域を構成するもので、これらの領域を、左右で分割するようにして、それぞれ、別体として構成されている。以下に、後左パネル52Lを例に採り、詳細に説明する。後右パネル52Rは、
図8に示すように、後左パネル52Lと外形形状を左右対称形とされていることから、詳細な説明を省略する。
【0036】
後左パネル52Lは、
図9のAに示すように、後側壁部23の左右方向の中央より左側の領域を構成する後壁用部位54Lと、頭部受け止め部26における左側拘束部27Lを構成する拘束部用部位58Lと、を備える構成とされるもので、後壁用部位54Lを、左右方向の中央側に配置される内側部位55Lと、左右方向の外側に配置される外側部位56Lと、に、左右方向側で、分割させ、この内側部位55Lと外側部位56Lとの間に、内側部位55Lと外側部位56Lとを連結させるようにして、拘束部用部位58Lを配置させて構成されている。内側部位55Lは、左右方向側の幅寸法を、外側部位56Lの左右方向側の幅寸法の1/3程度に設定されている。拘束部用部位58Lは、上下方向の中央を、後壁用部位54L(内側部位55L,外側部位56L)の上下方向の中央よりやや上方に位置させるように配置されるもので、左外側壁部29Lを構成する外側部位60Lと、左内側壁部28L(左側拘束面31L)を構成する内側部位59Lと、を有し、この外側部位60Lと内側部位59Lとを、膨張完了時の先端側で連結させて、構成されている。そして、実施形態では、後左パネル52Lは、後壁用部位54Lにおける外側部位56Lの上内縁56bから拘束部用部位58Lにおける外側部位60Lの上縁60aにかけてを、後壁用部位54Lにおける内側部位55Lの上外縁55dから拘束部用部位58Lにおける内側部位59Lの上縁59aにかけて、縫合部位64Lを形成するように縫合糸を用いて縫着させ、後壁用部位54Lにおける外側部位56Lの下内縁56cから拘束部用部位58Lにおける外側部位60Lの下縁60bにかけてを、後壁用部位54Lにおける内側部位55Lの下外縁55eから拘束部用部位58Lにおける内側部位59Lの下縁59bにかけて、縫合部位65Lを形成するように縫合糸を用いて縫着させることにより、
図9のBに示すように、後側壁部23の左側半分の領域と、後側壁部23から突出している左側拘束部27Lと、を、形成することができる。
【0037】
また、実施形態のエアバッグ15では、後左パネル52Lと同様にして右側拘束部27Rを形成した状態の後右パネル52Rにおける後壁用部位54Rの内側部位55Rの内縁55cと、後左パネル52Lにおける後壁用部位54Lの内側部位55Lの内縁55cと、を縫合部位63を形成するようにして、縫合糸を用いて縫着させれば、頭部受け止め部26と後側壁部23とを形成することができる。そして、実施形態のエアバッグ15では、エアバッグ15の膨張完了時において、頭部受け止め部26における左側拘束部27L,右側拘束部27Rの左内側壁部28L,右内側壁部28R(すなわち、左側拘束面31L,右側拘束面31R)は、拘束部用部位58L,58Rの内側部位59L,59Rと、この内側部位59L,59Rから連なっている後壁用部位54L,54Rの内側部位55L,55Rと、から構成されることとなり、左内側壁部28L,右内側壁部28R(すなわち、左側拘束面31L,右側拘束面31R)の元部28a(31a)側は、内側部位55L,55Rの内縁55c,55c相互を縫着させている縫合部位63によって、相互に接触するように、連結される構成である(
図6参照)。すなわち、実施形態のエアバッグ15では、頭部受け止め部26において、左側拘束面31Lと右側拘束面31Rとの間の部位(左側拘束面31L,右側拘束面31Rの元部31a)は、
図3,5に示すように、上半身拘束面35を構成している後側壁部23から連なるように、構成されている。
【0038】
実施形態では、エアバッグ本体16及び頭部受け止め部26を構成する前左パネル50L,前右パネル50R,後左パネル52L,後右パネル52R、前後テザー37を構成する前側部位用素材42,後側部位40L,40R、及び、左右テザー45,46を構成するテザー用基布45a,45b,46a,46bは、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0039】
そして、実施形態のエアバッグ本体16及び頭部受け止め部26は、
図5〜8に示すように、エアバッグ本体16及び頭部受け止め部26を構成する前左パネル50L,前右パネル50R,後左パネル52L,後右パネル52Rの対応する縁部相互を、縫合糸を用いて縫着(結合)させることにより、袋状とされている。具体的には、前左パネル50Lにおける上縁50cと下縁50dとは、それぞれ、前右パネル50Rにおける上縁50cと下縁50dとに、結合されている。前左パネル50Lにおける前縁50bは、相互に重ねられるようにして結合され、同様に、前右パネル50Rにおける前縁50bも、相互に重ねられるようにして結合される。前左パネル50Lにおける後縁50eは、縫合部位66Lを形成するようにして、後左パネル52Lの後壁用部位54Lにおける外側部位56Lの外縁56a,内側部位55Lの上縁55a及び下縁55bと、結合されている。この縫合部位66Lの形成時に、実施形態のエアバッグ15では、前後テザー37における後側部位40Lの後端40bが、共縫いされる。前右パネル50Rにおける後縁50eは、縫合部位66Rを形成するようにして、後右パネル52Rの後壁用部位54Rにおける外側部位56Rの外縁56a、内側部位55Rの上縁55a及び下縁55bと、結合されている。この縫合部位66Rの形成時に、前後テザー37における後側部位40Rの後端40bが、共縫いされる。
【0040】
後左パネル52Lにおいて、後壁用部位54Lにおける内側部位55Lの上外縁55dから拘束部用部位58Lにおける内側部位59Lの上縁59aにかけての部位は、縫合部位64Lを形成するようにして、後壁用部位54Lにおける外側部位56Lの上内縁56bから拘束部用部位58Lにおける外側部位60Lの上縁60aにかけての部位と、結合されている。後左パネル52Lにおいて、後壁用部位54Lにおける内側部位55Lの下外縁55eから拘束部用部位58Lにおける内側部位59Lの下縁59bにかけての部位は、縫合部位65Lを形成するようにして、後壁用部位54Lにおける外側部位56Lの下内縁56cから拘束部用部位58Lにおける外側部位60Lの下縁60bにかけての部位と、結合されている。同様に、後右パネル52Rにおいて、後壁用部位54Rにおける内側部位55Rの上外縁55dから拘束部用部位58Rにおける内側部位59Rの上縁59aにかけての部位は、縫合部位64Rを形成するようにして、後壁用部位54Rにおける外側部位56Rの上内縁56bから拘束部用部位58Rにおける外側部位60Rの上縁60aにかけての部位と、結合され、後右パネル52Rにおいて、後壁用部位54Rにおける内側部位55Rの下外縁55eから拘束部用部位58Rにおける内側部位59Rの下縁59bにかけての部位は、縫合部位65Rを形成するようにして、後壁用部位54Rにおける外側部位56Rの下内縁56cから拘束部用部位58Rにおける外側部位60Rの下縁60bにかけての部位と、結合されている.また、後左パネル52Lの後壁用部位54Lにおける内側部位55Lの内縁55cは、縫合部位63を形成するようにして、後右パネル52Rの後壁用部位54Rにおける内側部位55Rの内縁55cと、結合されている。
【0041】
次に、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1の車両への搭載について説明をする。まず、エアバッグ15を、リテーナ9を内部に収納させた状態で、ケース12内に収納可能に折り畳み、折り畳んだエアバッグ15の周囲を、折り崩れしないように、破断可能な図示しないラッピングシートによりくるむ。次いで、折り畳んだエアバッグ15をケース12の底壁部12aに載置させる。インフレーター8の本体部8aを、底壁部12aの下方から、ケース12内に挿入させるとともに、底壁部12aから下方に突出している各ボルト9aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させる。その後、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト9aにナット10を締結させれば、折り畳んだエアバッグ15とインフレーター8とを、ケース12に取り付けることができる。
【0042】
そして、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー6の連結壁部6cに、ケース12の周壁部12bを係止させ、ケース12の図示しないブラケットを、車両のボディ側に固定させれば、助手席用エアバッグ装置M1を車両に搭載することができる。
【0043】
第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、車両に搭載した状態で、車両の前面衝突時、斜め衝突時、若しくは、オフセット衝突時に、インフレーター8のガス吐出口8bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ15が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開かせることとなる。そして、エアバッグ15は、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開いて形成される開口を経て、ケース12から上方へ突出するとともに、車両後方側に向かって突出しつつ展開膨張して、
図1の二点鎖線、及び、
図10,11に示すように、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように、膨張を完了させることとなる。
【0044】
そして、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ15の膨張完了時に、乗員MP1の頭部MH1を受け止める頭部受け止め部26が、上半身拘束面35から後方に突出するように形成されており、この頭部受け止め部26は、乗員MP1の頭部MH1の左右の側方を覆う左側拘束面31Lと右側拘束面31Rとによって、頭部MH1の左右の側面を受け止める構成である。すなわち、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ15の膨張完了時に、頭部受け止め部26が、
図10に示すように、上半身拘束面35から後方の乗員MP1側に突出して配置される構成であり、換言すれば、この頭部受け止め部26と、助手席に着座している乗員MP1の頭部MH1と、の離隔距離を、比較的小さくすることができる。そのため、車両の斜め衝突時若しくはオフセット衝突時に、斜め前方に向かって移動する乗員MP1の頭部MH1を、頭部受け止め部26における左側拘束面31L若しくは右側拘束面31Rによって、迅速かつ的確に受け止めることができる。また、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、頭部受け止め部26は、エアバッグ15の膨張完了時において、上半身拘束面35から後方に突出するように形成されていることから、凹部と突出部とを上下の全域にわたって形成する従来のエアバッグと比較して、容積の増大を抑制することができる。さらに、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、膨張を完了させたエアバッグ15において、上半身拘束面35は、頭部受け止め部26よりも前方側となる位置に配置され、かつ、大きな凹凸を備えていないことから、エアバッグ15の膨張完了時に、前進移動する乗員MP1の上半身UB1(具体的には、頭部MH1の下方の領域)を、上半身拘束面35によって、広く的確に受け止めることができる。
【0045】
したがって、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、斜め前方に向かって移動する乗員MP1の頭部MH1を、膨張を完了させたエアバッグ15によって円滑に保護することができる。
【0046】
また、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、頭部受け止め部26における左側拘束面31L及び右側拘束面31Rは、それぞれ、乗員保護部34における左右方向の中央より左側の領域と右側の領域とに配置される構成であり、また、頭部受け止め部26は、左側拘束面31Lと右側拘束面31Rとの間の部位を、上半身拘束面35から連ならせるように構成され、換言すれば、上半身拘束面35から凹むように構成されていないことから、車両の前面衝突時においても、前方移動する乗員MP1の頭部MH1を、
図10の二点鎖線に示すようにして、左側拘束面31Lと右側拘束面31Rとの間の隙間(凹部32の部位)に進入させるようにして、支障なくかつ的確に保護することができる。
【0047】
さらに、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ15は、膨張完了時の後面(後側壁部23)の下部側(下側部位23a)を上半身拘束面35とするエアバッグ本体16と、膨張完了時にエアバッグ本体16の後面(後側壁部23)における上部側(上側部位23b)から部分的に突出する頭部受け止め部26と、を備える構成とされて、頭部受け止め部26は、左側拘束面31Lを有する左側拘束部27Lと、右側拘束面31Rを有する右側拘束部27Rと、を有する構成とされている。そして、この左側拘束部27Lと右側拘束部27Rとは、膨張完了時のエアバッグ15を上方から見た状態において、膨張完了時の元部27a側を、後側壁部23の上側部位23bにおける左縁23c及び右縁23dよりも左右方向の中央側に位置させるようにして、後側壁部23から後方に突出するように、構成されている。すなわち、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、左側拘束部27L及び右側拘束部27Rの左右方向の外側の領域には、後側壁部23の上側部位23bとの間に、左右方向の内方に向かって凹むような凹部33L,33Rが、形成される構成である(
図11参照)。そのため、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ15の展開膨張時に、左側拘束部27L及び右側拘束部27Rが、
図12のAに示すように、一旦先端27bを左右の外方に向けるように展開した後に、エアバッグ15の外表面に発生する張力Tに伴って、
図12のB,Cに示すように、先端27b相互を接近させるように、膨張することとなる。その結果、乗員MP1の頭部MH1を、左右両側から、左側拘束部27Lと右側拘束部27Rとによって円滑に挟むことができ、乗員MP1の頭部MH1を円滑に拘束することができる。なお、このような点を考慮しなければ、左側拘束部及び右側拘束部を、膨張完了時の元部側をエアバッグ本体の後面における左縁及び右縁よりも左右方向の中央側に位置させる構成としなくともよく、膨張完了時の左右方向の外方側に配置される壁部を、エアバッグ本体における左壁部,右壁部から連ならせるような構成としてもよい。
【0048】
さらにまた、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、左側拘束面31Lと右側拘束面31Rとが、エアバッグ15の膨張完了時に、先端31b側にかけて拡開されるように、前後方向に対して傾斜させて配置される構成である。すなわち、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、左側拘束面31L若しくは右側拘束面31Rが、斜め前方に向かって移動する乗員MP1の頭部MH1と対向するように配置されることから、左側拘束面及び右側拘束面をエアバッグの膨張完了時に前後方向に略沿わせるように配置させる場合と比較して、左側拘束面31L若しくは右側拘束面31Rによって、斜め前方に向かって移動する乗員MP1の頭部MH1を、広い面で、的確に拘束することができる。また、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ14の膨張完了時において、左側拘束面31L若しくは右側拘束面31Rが乗員MP1の頭部MH1と接触した際に、乗員MP1の頭部MH1を接触させている左側拘束部27L若しくは右側拘束部27Rが、先端27bを他方の左側拘束部27L若しくは右側拘束部27R側に向けるように回転移動することとなり、左側拘束部27Lと右側拘束部27Rとによって、乗員MP1の頭部MH1を一層円滑に挟み込むことが可能となる。具体的に説明すれば、
図13のA,Bに示すように、左斜め前方に向かって移動する乗員MP1の頭部MH1が、左側拘束部27Lにおける元部27a近傍の領域に接触すると、乗員MP1の頭部MH1を接触させる左側拘束面31L(左内側壁部28L)が、頭部MH1を受け止めて前方(左外側壁部29L側)に向かって凹むこととなり、左側拘束部27L全体が、乗員MP1の頭部MH1に押圧されて、
図13のCに示すように、先端27bを右側拘束部27R側に向けるように撓むような態様となって、左側拘束部27Lと右側拘束部27Rとによって、乗員MP1の頭部MH1を挟み込むことができる。なお、このような点を考慮しなければ、左側拘束面及び右側拘束面を、それぞれ、前後方向に略沿わせるように配置させる構成としてもよい。
【0049】
さらにまた、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、左側拘束面31Lと右側拘束面31Rとが、エアバッグ15の膨張完了時に、元部31a側を相互に接触させるように、構成されていることから、頭部受け止め部26による乗員MP1の頭部MH1の受止時に、乗員MP1の頭部MH1を、左側拘束面31Lと右側拘束面31Rとの両方で受け止めることとなり、左側拘束面31Lと右側拘束面31Rとによって、乗員MP1の頭部MH1をより一層円滑に拘束することができる。なお、このような点を考慮しなければ、エアバッグの膨張完了時に、左側拘束面と右側拘束面とを、元部側を左右方向側で離隔させるように、配置させる構成としてもよい。
【0050】
次に、第2実施形態として、運転席の前方に配置されるステアリングホイール用エアバッグ装置M2について、説明をする。第2実施形態のステアリングホイール用エアバッグ装置M2は、
図14に示すように、図示しない運転席に着座した運転者MP2の前方のステアリングホイールWにおけるボス部Bの部位に配置されるもので、折り畳まれたエアバッグ72と、エアバッグ72に膨張用ガスを供給するインフレーター8Aと、ボス部Bの部位に配置されてエアバッグ72及びインフレーター8Aを収納保持する収納部位としてのケース12Aと、エアバッグ72及びインフレーター8Aをケース12Aに取り付けるためのリテーナ9Aと、折り畳まれたエアバッグ72を覆うエアバッグカバー6Aと、を備えて構成されている。なお、この第2実施形態のステアリングホイール用エアバッグ装置M2においては、搭載位置が異なるものの、前述の助手席用エアバッグ装置M1に使用される部材と同様の部材が使用される構成であることから、エアバッグ72以外の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。この第2実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両に搭載されたステアリングホイールWの直進操舵時を基準とするものであり、ステアリングホイールWを組み付けるステアリングシャフトSS(
図14の二点鎖線参照)の軸方向に沿った上下を上下方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両の前後を前後方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両の左右を左右方向として、前後・上下・左右の方向を示すものである。
【0051】
エアバッグ72は、
図15に示すように、エアバッグ本体73と、膨張完了時にエアバッグ本体73から部分的に突出する頭部受け止め部26Aと、を備える構成とされている。
【0052】
エアバッグ本体73は、膨張完了形状を、
図18,19に示すように、ステアリングホイールWの上面側を略全面にわたって覆い可能とするとともに、中央付近を厚くして外周縁側にかけて薄くするような、外周縁を略円形状とした略凸レンズ形状として構成されるもので、外形形状を同一とした略円形状として、膨張完了時に乗員(運転者MP2)側に配置される乗員側壁部77と、膨張完了時にステアリングホイールW側に配置される車体側壁部74と、を備える構成とされている。詳細には、エアバッグ本体73は、膨張完了時の外径寸法を、ステアリングホイールWにおけるリング部Rの外径寸法より大きく設定されて、リング部Rの上面を全面にわたって広く覆うように、構成されている。車体側壁部74の略中央には、インフレーター8Aの本体部8aを下方から挿入させて、インフレーター8のガス吐出口8bから吐出される膨張用ガスを、エアバッグ本体73内に流入させるためのガス流入口75が、円形に開口して形成されている(
図15,16参照)。また、車体側壁部74におけるガス流入口75の周縁には、リテーナ9Aに形成されるボルトを挿通させるための取付孔(図符号省略)が、4個形成されている。
【0053】
乗員側壁部77は、エアバッグ本体73の膨張完了時において、運転席に着座している運転者(乗員)MP2の上半身UB2に対して、傾斜するように、ステアリングホイールWのリング面RFに略沿って(すなわち、前後方向に略沿って)配置される構成である(
図14,18参照)。
【0054】
第2実施形態のエアバッグ72における頭部受け止め部26Aは、上述の第1実施形態のエアバッグ15に配置される頭部受け止め部26と同様の構成であり、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。この頭部受け止め部26Aは、
図18,19に示すように、膨張完了時のエアバッグ本体73における乗員側壁部77の前側の領域(前側部位77b)から、上方(後上方)に向かって突出するように配設されるもので、エアバッグ72の膨張完了時において、乗員側壁部77の左右方向の略中央において、前後方向の中央よりも前側となる位置から、上方に突出するように、形成される。具体的には、この第2実施形態のエアバッグ72では、頭部受け止め部26Aは、
図15に示すように、後端を、乗員側壁部77(エアバッグ本体73)の前後方向の中央と略一致させるように、配置されており、エアバッグ本体73における前半分の領域に、配置される。
【0055】
そして、第2実施形態のエアバッグ72においても、乗員側壁部77において、エアバッグ72の膨張完了時に頭部受け止め部26Aの後側(車両搭載時における後下側)に配置される後側部位77aが、乗員としての運転者MP2の上半身UB2、具体的には、頭部MH2の下方の領域(肩部から胸部にかけての領域)を、受け止め可能な上半身拘束面80を構成することとなり、この上半身拘束面80と頭部受け止め部26Aとによって、エアバッグ72の膨張完了時における後面側(実施形態の場合、上面側)に配置されて、運転者MP2を保護可能な乗員保護部79が構成されることとなる。頭部受け止め部26Aを構成する左側拘束部27ALと右側拘束部27ARとにおいて、左右方向の内側において対向するように配置される左内側壁部28AL,右内側壁部28ARが、運転者MP2の頭部MH2の側面を受け止め可能な左側拘束面31ALと右側拘束面31ARとを構成することとなる。すなわち、第2実施形態のエアバッグ72においても、左側拘束面31ALは、乗員保護部79における左右方向の中央より左側の領域において、上半身拘束面80(乗員側壁部77)から後方に突出するように形成され、右側拘束面31ARは、乗員保護部79における左右方向の中央より右側の領域において、上半身拘束面80(乗員側壁部77)から後方に突出するように形成されている。そして、この左側拘束面31ALと右側拘束面31ARとは、エアバッグ72の膨張完了時に、先端31b側にかけて拡開されるように、前後方向に対して傾斜して配置される構成である。さらに、第2実施形態のエアバッグ72においても、膨張完了形状を略板状とされる左側拘束部27ALと右側拘束部27ARとが、膨張完了時のエアバッグ72を上方から見た状態において、膨張完了時の元部27a側を乗員側壁部77における前側部位77bの左縁77c及び右縁77dよりも左右方向の中央側に位置させる構成とされ、換言すれば、エアバッグ72は、左側拘束部27AL及び右側拘束部27ARの左右方向の外側の領域において、乗員側壁部77における前側部位77bとの間に、左右方向の内方に向かって凹むような凹部33AL,33ARを有している構成である(
図19参照)。また、第2実施形態のエアバッグ72においても、膨張完了時に、左内側壁部28ALと右内側壁部28ARとが、元部28a側を相互に接触させるように構成されており、換言すれば、左側拘束面31ALと右側拘束面31ARとは、エアバッグ72の膨張完了時に、元部31a側を相互に接触させる構成とされている。そして、第2実施形態のエアバッグ72では、膨張完了時に、運転者MP2の頭部MH2を、頭部受け止め部26Aにおける左側拘束部27AL,右側拘束部27AR間の先細りの領域で構成される凹部32A内に進入させつつ、左側拘束部27AL若しくは右側拘束部27ARによって、運転者MP2の頭部MH2を受け止めるようにして、運転者MP2の頭部MH2を保護する構成である。
【0056】
この第2実施形態のエアバッグ72は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、
図16に示すように、車体側壁部74を構成する車体側壁用パネル85と、乗員側壁部77及び頭部受け止め部26Aを構成する上側パネル87と、の2枚の基布から構成されている。車体側壁用パネル85と上側パネル87とは、前述のエアバッグ15と同様に、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0057】
車体側壁用パネル85は、膨張完了時のエアバッグ本体73における車体側壁部74の部位を構成するもので、外形形状を略円形とされている。
【0058】
上側パネル87は、膨張完了時のエアバッグ本体73における乗員側壁部77と、頭部受け止め部26Aと、の領域を構成するもので、
図16に示すように、乗員側壁部77を構成する乗員側壁用部位88と、頭部受け止め部26Aにおける左側拘束部27ALを構成する左側拘束部用部位92Lと、右側拘束部27ARを構成する右側拘束部用部位92Rと、を備える構成とされている。詳細に説明すれば、上側パネル87は、乗員側壁用部位88を、左右方向の中央側に配置される中央側部位89と、左右方向の外側に配置される左側部位90L,右側部位90Rと、に、左右方向側で、3分割させ、左側部位90Lと中央側部位89との間に、左側部位90Lと中央側部位89とを連結させるようにして左側拘束部用部位92Lを配置させ、中央側部位89と右側部位90Rとの間に、中央側部位89と右側部位90Rとを連結させるようにして右側拘束部用部位92Rを配置させて構成されている。乗員側壁用部位88における左側部位90L及び右側部位90Rは略半円形状として構成され、中央側部位89は、略帯状として構成されている。左側拘束部用部位92L,右側拘束部用部位92Rは、上側パネル87における前側半分程度の領域に配置されるもので、それぞれ、左外側壁部29AL,右外側壁部29ARを構成する外側部位94L,94Rと、左内側壁部28AL(左側拘束面31AL),右内側壁部28AR(右側拘束面31AR)を構成する内側部位93L,93Rと、を有し、これらの外側部位94L,94Rと内側部位93L,93Rとを、それぞれ、膨張完了時の先端側で連結させて、構成されている。実施形態の場合、上側パネル87は、平らに展開した状態の形状を略左右対称形として構成されている。
【0059】
そして、実施形態では、上側パネル87は、以下のように所定箇所を縫着(結合)させることにより、
図17に示すように、乗員側壁部77と、乗員側壁部77から突出している頭部受け止め部26Aとを、形成することとなる。乗員側壁用部位88における左側部位90Lの前内縁90bから左側拘束部用部位92Lにおける外側部位94Lの前縁94aにかけては、乗員側壁用部位88における中央側部位89の前左縁89cから左側拘束部用部位92Lにおける内側部位93Lの前縁93aにかけて、縫合部位96Lを形成するように縫合糸を用いて縫着される。同様にして、乗員側壁用部位88における右側部位90Rの前内縁90bから右側拘束部用部位92Rにおける外側部位94Rの前縁94aにかけては、乗員側壁用部位88における中央側部位89の前右縁89dから右側拘束部用部位92Rにおける内側部位93Rの前縁93aにかけて、縫合部位96Rを形成するように縫合糸を用いて縫着される。乗員側壁用部位88における左側部位90Lの後内縁90cから左側拘束部用部位92Lにおける外側部位94Lの後縁94bにかけては、乗員側壁用部位88における中央側部位89の後左縁89eから左側拘束部用部位92Lにおける内側部位93Lの後縁93bにかけて、縫合部位97Lを形成するように縫合糸を用いて縫着される。同様にして、乗員側壁用部位88における右側部位90Rの後内縁90cから右側拘束部用部位92Rにおける外側部位94Rの後縁94bにかけては、乗員側壁用部位88における中央側部位89の後右縁89fから右側拘束部用部位92Rにおける内側部位93Rの後縁93bにかけて、縫合部位97Rを形成するように縫合糸を用いて縫着される。
【0060】
この第2実施形態のエアバッグ72では、頭部受け止め部26Aを形成した状態の乗員側壁用部位88(左側部位90L,右側部位90R,中央側部位89)は、
図17に示すように、外形形状を、車体側壁用パネル85と略一致させた略円形とされることとなり、この乗員側壁用部位88における左側部位90L,右側部位90Rの外縁90aと、中央側部位89の前縁89a,後縁89bと、を、車体側壁用パネル85の外周縁85aに、縫合糸を用いて縫着させれば、袋状のエアバッグ72を製造することができる。
【0061】
この第2実施形態のエアバッグ72を使用したステアリングホイール用エアバッグ装置M2においても、エアバッグ72の膨張完了時に、運転者MP2の頭部MH2を受け止める頭部受け止め部26Aが、上半身拘束面80から後方に突出するように形成されており、この頭部受け止め部26Aは、運転者MP2の頭部MH2の左右の側方を覆う左側拘束面31ALと右側拘束面31ARとによって、頭部MH2の左右の側面を受け止める構成である。すなわち、第2実施形態のステアリングホイール用エアバッグ装置M2においても、エアバッグ72の膨張完了時に、頭部受け止め部26Aが、上半身拘束面80から後方の運転者MP2側に突出して配置される構成であり、換言すれば、この頭部受け止め部26Aと、運転席に着座している運転者MP2の頭部MH2と、の離隔距離を、比較的小さくすることができる。そのため、車両の斜め衝突時若しくはオフセット衝突時に、斜め前方に向かって移動する運転者MP2の頭部MH2を、頭部受け止め部26Aにおける左側拘束面31AL若しくは右側拘束面31ARによって、迅速かつ的確に受け止めることができる。また、第2実施形態のステアリングホイール用エアバッグ装置M2においても、膨張を完了させたエアバッグ72において、上半身拘束面80は、頭部受け止め部26Aよりも前方側となる位置に配置され、かつ、大きな凹凸を備えていないことから、エアバッグ72の膨張完了時に、前進移動する運転者MP2の上半身UB2(具体的には、頭部MH2の下方の領域)を、上半身拘束面80によって、広く的確に受け止めることができる。
【0062】
したがって、第2実施形態のステアリングホイール用エアバッグ装置M2においても、斜め前方に向かって移動す運転者MP2の頭部MH2を、膨張を完了させたエアバッグ72によって円滑に保護することができる。
【0063】
特にステアリングホイール用のエアバッグ装置は、助手席用のエアバッグ装置と比較して、乗員と車体側の部材との距離が小さく設定される。そのため、エアバッグ本体の実質的な厚さ寸法を小さくすることなく、膨張を完了させたエアバッグ本体によってクッション性よく乗員(運転者)の上半身を受け止め、かつ、エアバッグ本体から後方に突出するように膨張している頭部受け止め部によって、乗員の頭部を受け止める構成の本発明のエアバッグは、ステアリングホイール用のエアバッグ装置に、一層、好適であり、運転席に着座している乗員(運転者)の頭部を含めた上半身を、膨張を完了させたエアバッグによって、的確に保護することができる。