(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ローターと、該ローターに対向して配置されるステータとの間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周に向けて通過させることによって分散させる剪断式の分散装置であって、
分散後の混合物を受ける容器と、
該容器の上部開口を閉塞するカバーユニットと、
該カバーユニットの下側に固定されるステータと、
該ステータの下方側に対向するように設けられるローターと、
前記カバーユニットおよび前記ステータを貫通し、前記ローターを回転させる回転軸と、
前記カバーユニットに設けられるとともに、前記ステータの上方側に位置し、前記回転軸を回転可能に保持する軸受と、
前記カバーユニットと該カバーユニットを貫通する前記回転軸との間をパージするエアを供給するパージ用エア供給装置と、
前記パージ用エア供給装置で供給されるエアを冷却するクーラーを備える、
分散装置。
前記ステータには、回転軸を挿通する回転軸挿通孔が設けられ、前記ステータの前記回転軸挿通孔より外側の位置に前記ステータ及び前記ローターの間に混合物を導く貫通孔が設けられ、
前記ステータと前記ローターの隙間は、前記貫通孔より内側では、前記貫通孔より外側より狭く形成されている、
請求項1ないし3のいずれかに記載の分散装置。
前記ステータと前記ローターの隙間は、前記貫通孔の前記回転軸側の端部の内側で隙間が一定の第1部分と、該回転軸側の端部の外側で隙間が一定の第2部分とが形成され、
前記第1部分と前記第2部分との間で段差が形成される、
請求項4または5記載の分散装置。
前記ローターの前記ステータに対向する面が、前記貫通孔に対向する位置より内側で盛り上がることにより、前記ステータと前記ローターの隙間は、前記貫通孔の前記回転軸側の内側では、前記貫通孔の前記回転軸側の外側より狭く形成されている、
請求項4ないし6のいずれかに記載の分散装置。
ローターと、該ローターに対向して配置されるステータとの間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周に向けて通過させることによって分散させる剪断式の分散方法であって、
分散後の混合物を受ける容器と、
該容器の上部開口を閉塞するカバーユニットと、
該カバーユニットの下側に固定されるステータと、
該ステータの下方側に対向するように設けられるローターと、
前記カバーユニットおよび前記ステータを貫通し、前記ローターを回転させる回転軸と、
前記カバーユニットに設けられるとともに、前記ステータの上方側に位置し、前記回転軸を回転可能に保持する軸受とを備える分散装置を用い、
前記カバーユニットと該カバーユニットを貫通する前記回転軸との間に冷却したエアをパージすることにより分散される混合物の温度上昇を抑える工程を備える、
分散方法。
前記ステータと前記ローターの隙間は、前記混合物を該隙間に供給する貫通孔の内側では、該貫通孔の外側より狭く形成され、該貫通孔から前記ステータと前記ローターの隙間に供給された前記混合物を外側に流れるようにする工程をさらに備える、
請求項8または9に記載の分散方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した剪断式分散装置について、図面を参照して説明する。以下で説明する剪断式分散装置は、スラリー状の混合物を循環させながら分散(「固−液分散」又は「スラリー化」ともいう)させ、又は液体状の混合物を循環させながら分散(「液−液分散」又は「乳化」ともいう)させたりするものである。また、分散とは、該混合物内の物質を均一に存在させること若しくは微細化して均一に存在させること、すなわち、該混合物内の各物質が均一に存在するように混ぜることを意味する。
【0023】
まず、
図1〜
図3に示す剪断式分散装置(以下、「分散装置」という。)1について説明する。分散装置1は、ローター2と、該ローター2に対向して配置されるステータ3とを備え、ローター2及びステータ3の間に、スラリー状又は液体状の混合物4を遠心力によって外周に向けて通過させる(外周に向けた方向に通過させる)ことによって分散させる。
【0024】
分散装置1は、分散後の混合物4を受ける容器11と、容器11の上部開口11aを閉塞するカバーユニット12とを備える。例えば、カバーユニット12は、容器11の上部縁部11b及びカバーユニット12(後述のステータ保持部18)に形成されたボルト穴11c,18cにボルト11dが取り付けられることで、容器11に固定され、上部開口11aを閉塞する。
【0025】
ステータ3は、カバーユニット12の下側(下面)に固定される。例えば、ステータ3は、ステータ3及びカバーユニット12(ステータ保持部18)に形成されたボルト穴3b,18bにボルト3aが取り付けられることで、固定される。ローター2は、ステータ3の下方側に対向するように設けられる。
【0026】
また、分散装置1は、ローター2を回転させる回転軸13と、回転軸13を回転可能に保持する軸受14とを備える。軸受14は、カバーユニット12に設けられ固定されるとともに、ステータ3の上方側に位置する。
【0027】
回転軸13には、ローター2及びステータ3より上側に設けられたモーター16の回転軸16aが接合部16bを介して取り付けられる。回転軸13は、モーター16により回転され、モーター16の回転力をローター2に伝達する。
【0028】
また、分散装置1は、回転軸13とローター2との間に着脱可能に設けられるスペーサ部材15を備える(
図2(c)、
図2(e)等)。スペーサ部材15は、軸方向D1の長さ(厚さ)が異なる部品と交換されることで、ローター2及びステータ3の間の隙間を調整する。すなわち、厚さが異なるスペーサ部材15が複数準備されており、この中から選択されたスペーサ部材15を取り付けることによりローター2及びステータ3の間の隙間を調整する。
【0029】
ローター2は、スペーサ部材15が取り付けられた状態においては、ステータ3に対する軸方向の位置が固定されている。すなわち、例えばローター2及びステータ3間の隙間を調整する手段としてバネ、ネジ等を用いることも考えられるが、ここで説明するスペーサ部材15を用いた場合には、使用時にはローター2の軸方向の位置が固定されるので、バネの振動、ネジの隙間等を考慮する必要がない。また、バネ、ネジを用いた場合は、精密な平行移動が困難である。これに対し、スペーサ部材15を用いる場合は、微細な調整を可能とする。
【0030】
分散装置1は、上述の構成により高い精度の間隙の調整を実現する。また、分散装置1は、予定外の発熱で回転軸13が熱膨張した際にもローター2がステータ3から離れる方向に移動されるので、ローター2及びステータ3の接触を防止できる。また、接触しないまでも予定外に間隙が小さくなることによる過度な発熱を防止できる。さらに、軸受14がステータ3の上側にあるので、回転軸13をローター2の上側に配置させ、ローター2の下側に回転軸13を存在しなく(回転軸13がローター2から上側に向かって設けられるよう)できるので、分散処理後の混合物4が回転軸13や軸受14等に付着して、歩留まりが低下することを防止できる。すなわち、歩留まりを向上できる。
【0031】
カバーユニット12は、軸受14を保持する軸受保持部17と、該軸受保持部17の下方側に設けられ、ステータ3を保持するステータ保持部18とを有する。軸受保持部17は、第2のスペーサ部材20を介してステータ保持部18に当接することでステータ保持部18の軸方向の位置を規制する位置決め規制部21を有する。例えば、軸受保持部17は、軸受保持部17及びステータ保持部18に形成されたボルト穴17e,18eにボルト17aが取り付けられることで、第2のスペーサ部材20を挟んだ状態で、ステータ保持部18と一体化される(
図2(d)等)。第2のスペーサ部材20には、ボルト17aが挿通される挿通孔20aが設けられる。
【0032】
第2のスペーサ部材20は、軸受保持部17とステータ保持部18との間に着脱可能に設けられ、軸方向D1の長さ(厚み)が異なる部品と交換されることで軸受保持部17に対するステータ3の軸方向D1の位置を調整する。すなわち、厚さが異なる第2のスペーサ部材20が複数準備されており、この中から選択された第2のスペーサ部材20を取り付けることにより、ステータ3の軸方向D1の位置を調整できる。
【0033】
スペーサ部材(「第1のスペーサ部材」ともいう。)15と、第2のスペーサ部材20とをそれぞれの交換部品と交換することにより、ローター2及びステータ3の間隙のさらに微細な調整を実現する。すなわち、スペーサ部材15を厚みの大きなものに変更することでローター2及びステータ3間の間隙を大きくする方向に作用する。第2スペーサ部材20を厚みの大きなものに変更することでローター2及びステータ3間の間隙を小さくする方向に作用する。これらを組み合わせることにより、より微細な調整を実現する。尚、スペーサ部材15及び第2のスペーサ部材20は、それぞれ例えば、0.01mm〜0.50mm程度で、0.01mmずつ異なる厚みを有するものを複数用意しておき、混合物4の粘度や性質に合せて交換して取り付けることで、ローター2及びステータ3間の間隙を調整する。
【0034】
第2のスペーサ部材20は、軸受保持部17に対するステータ保持部18の位置を調整することで、軸受保持部17を基準としたステータ3の位置、すなわちステータ3下面の位置を調整することができる。これにより、ステータ3の状態によらずステータ3下面の位置を一定に保持することができる。例えば、ステータ3を交換した際にもステータ3下面の位置を一定に保持できる。これにより、例えばステータ3下面の位置を所定の位置に保持することで、スペーサ部材15の厚みをローター2及びステータ3間の間隙と一致させることができ、ユーザーにとって分かり易い構成にできる。すなわち、所望の間隙にするためには、それと同じ厚さのスペーサ部材15を選択すればよいようにすることができる。間隙を管理して分散処理を行うユーザーの利便性を向上できる。
【0035】
ローター2の上面には、回転軸13の下端13aを挿入するための凹部22が設けられる(
図2(c)、
図2(e)等)。凹部22には、貫通孔22aが形成される。回転軸13には、ローター2の凹部22に回転軸13の下端13aが挿入され、下端13aがスペーサ部材15を介して凹部22に当接した状態で、ローター2の下面側から締結部材23が取り付けられる。締結部材23は、例えば取付け用のボルトであり、回転軸13の下端13aには、この締結部材23に対応する締結部13bとして雌ネジ部が形成されている。
【0036】
締結部材23は、その一部がローター2の貫通孔22aを貫通して回転軸13に取り付けられることで、スペーサ部材15を挟んだ状態で回転軸13及びローター2を締結する。ローター2の凹部22及び回転軸13の下端13aには、回転軸13の回転力をローター2に伝達するための複数のピン24が設けられる。ローター2の凹部22及び回転軸13の下端13aには、このピン24を差し込むための孔が形成されている。
【0037】
複数のピン24は、円周方向に均等な間隔を有した位置に配置されており、回転軸13の回転力をローター2に伝達する機能を有する。スペーサ部材15には、締結部材23が挿通される第一挿通孔15aと、複数のピン24が挿通するため複数設けられる第二挿通孔15bとが形成されている。なお、ここでは、第二挿通孔15b及びピン24は、四個設けられている。
【0038】
スペーサ部材15を挟んだ状態で回転軸13及びローター2を締結部材23により締結していることから、ローター2のステータ3に対する軸方向の位置をより確実に固定できる。よって、ローター2及びステータ3間の間隙を適切な状態にすることを実現する。すなわち、上述したようなメリットを有するスペーサ部材15を適切に取り付けることを実現する。
【0039】
また、回転軸13からローター2に回転力を伝達するための機構として複数のピン24を用いていることから、キー溝及びキーなどからなる機構に比べて周方向のバランスをよくでき、すなわち、回転軸13及びローター2のバランスのよい回転を実現する。よって、ローター2及びステータ3間の分散力に部分による偏りが発生すること等を防止でき、すなわち、均一で適切な分散処理を実現する。また、偏りが発生することを防止できるので、間隙を小さくしても安定した分散処理を実現する。さらに、高速回転も可能になり適切な分散処理が実現する。
【0040】
ステータ3は、ローター2と対向する平面において、ローター2より大きな形状に形成される。すなわち、ステータ3は、D1方向に直交する平面内における形状が、ローター2より大きくなるように構成されている。ステータ3には、ローター2と対向する面(下面)と反対側の面(上面)に、冷却用の液体を流通させるための冷却用溝部26が形成される。冷却用溝部26は、ローター2より外側にも位置するよう形成されている。
【0041】
冷却用溝部26は、ローター2より外側に至る部分にまで形成されていることにより、ローター2の最も外周まで冷却することができる。すなわち、冷却用溝部26は、ローター2及びステータ3の分散領域全体を冷却することができる。よって、材料(分散する混合物4)の発熱を全体的に抑えることができる。尚、一般的に、ローター2及びステータ3は、対向する面内の大きさが同じ大きさに形成され、その場合には、最外周部の冷却が困難である。最外周部は、最も発熱量が多いため、ここで説明した冷却用溝部26は、優れた冷却効果を得ることができる。
【0042】
冷却用溝部26には、半径方向に沿って形成される壁部27が設けられる。また、冷却用溝部26には、壁部27を挟むような位置に冷却液供給口28及び冷却液排出口29が設けられる。冷却液供給口28から冷却用溝部26に供給された冷却用の液体が、冷却用溝部26において円周方向D2の一方向であって冷却用供給口28から壁部27が設けられていない方向D3に向けて流通される。そして、流通された冷却用の液体が冷却液排出口29から排出される。冷却用の液体は、例えば水である。
【0043】
冷却用溝部26において、冷却用供給口28から冷却用排出口29に向けて一方向に向くように冷却水が流通されるように構成されているので、換言すると、冷却水が一方方向に流れるよう壁部27に仕切られているので、冷却水は、順次排出される。すなわち、一方向に流れるように構成されていない場合には、部分的に冷却水が滞留してしまい、冷却用溝部内で冷却水が入れ替わらない部分が発生し、冷却機能が劣化する可能性がある。これに対し、冷却用溝部26は、冷却水が順次入れ替わるよう構成されているので、常に高い冷却機能を有している。
【0044】
尚、分散装置1を構成する冷却用溝部及びこれが設けられるステータ3は、上述した冷却用溝部26に限られるものではなく、例えば、
図4に示すような冷却用溝部71,72を有するステータ76,77であってもよい。
図4(a)は、ネジ部を避けて溝を可能な限り広く形成し、冷却効果を高める例である。
図4(b)は、形成した溝部の底面にさらに細かい溝を形成し、冷却水の接触表面積を増やして冷却効果を高める例である。ステータ76,77は、冷却用溝部の構造を除いて、ステータ3と同様の構造と機能を有するので、同様の部分については説明を省略する。
【0045】
図4に示すように、冷却用溝部71,72は、冷却用溝部26と同様に、ローター2より大きな形状に形成されたステータ76,77の上面側に形成され、ローター2より外側に位置するよう形成されている。冷却用溝部71,72にも、壁部27と同様の、壁部73,74が設けられる。冷却用溝部26と同様の構成については、冷却用溝部26と同様の効果を有する。
【0046】
次に、冷却用溝部26と異なる構成について説明する。冷却用溝部71は、ステータ76の外周ぎりぎりまで拡大して設けられており、ボルト穴3bが形成される部分には、突起部71aが形成されている。外周方向に拡大した分だけ冷却効果が高くなる。また、冷却用溝部72は、その底部に、円周方向に形成される凹部72aが複数形成されている。凹部72aが形成されていることから冷却水とステータ76との熱交換量が増え冷却効果が高くなる。冷却用溝部71、72は、冷却用溝部26の効果に加え、高い冷却効果を有する。以上のように、冷却用溝部26に代えて、冷却用溝部71,72を有するステータを用いた場合にも、高い冷却機能を有する。
【0047】
ところで、ステータ3には、回転軸13を挿通する回転軸挿通孔31が設けられ、ステータ3の回転軸挿通孔31より外側の位置からステータ3及びローター2の間に混合物4が導かれる。
【0048】
具体的に、ステータ3には、回転軸挿通孔31より外側の位置に設けられる混合物供給用の貫通孔32が設けられる。換言すると、貫通孔32は、回転軸挿通孔31に対して所定の距離を有した位置に設けられる。ステータ保持部18には、混合物供給口33と、該混合物供給口33からステータ3に設けられた混合物供給用の貫通孔32に連通する連通路34とが設けられる。混合物供給口33から供給される混合物4は、ステータ保持部18の連通路34及びステータ3の貫通孔32を介してステータ3及びローター2の間に導かれる。混合物供給口33の端部には、接合用のフランジ等が形成され、後述する配管(第一配管54)が接続される。
【0049】
この構成により、混合物供給の際にローター2を回転させれば、貫通孔32に供給された混合物4が遠心力により外側に導かれるので、回転中心付近に混合物4が到達しにくい。さらに、
図5に示すように、ステータ3とローター2の隙間は、貫通孔32より内側では、貫通孔32より外側より狭く形成されるのが好ましい。貫通孔32より内側の隙間が外側より狭く形成されると、貫通孔32から供給された混合物4は、内側には流れにくく外側へ流れるようになる。貫通孔32の径(
図1の左右方向)のどの位置から隙間が狭くされてもよい。しかし、
図5(a)に示すように、貫通孔32の回転軸13側の端部の内側で隙間が狭くされるのが好ましい。貫通孔32から隙間に流出する混合物4が流れる領域が広くなり、すなわち、回転軸13に直線的に向かう方向以外のいずれの方向へも流れることができ、混合物4の供給が妨げられることがない。
【0050】
ステータ3とローター2の隙間は、貫通孔32の回転軸13側の端部の内側で隙間が一定の第1部分202と、回転軸13側の端部の外側、すなわち、貫通孔32とその外側で隙間が一定の第2部分204とが形成され、第1部分202と第2部分204との間で段差206が形成されるのが好ましい。ここで、「段差」とは、回転軸13の中心線が通る面での断面、すなわち
図5(a)に示す断面での傾斜角度が30度以上、好ましくは45度以上の傾斜部を指し、傾斜部は直線でなく、滑らかに形成されても良い。滑らかに形成されたときの傾斜角度は、第1部分202と傾斜部の接点と第2部分204と傾斜部の接点とを直線で繋いだときの角度とする。このように構成すると、第1部分202には混合物4が流れず、第2部分204で混合物4の分散が行われる。
【0051】
典型的には、
図5に示すように、ローター2のステータ3に対向する面が、貫通孔32に対向する位置より内側202で盛り上がることにより、ステータ3とローター2の隙間が、貫通孔32の回転軸13側の内側で外側より狭く形成されている。このように構成すると、ローターの面を加工することだけで、ステータとローターの隙間を、貫通孔の回転軸側の内側では外側より狭く形成することができ、製造が容易である。なお、ステータ3のローター2と対向する面に盛り上がりまたは切り下がりを設けることにより、貫通孔32より内側のステータ3とローター2の隙間を、貫通孔32より外側の隙間より狭く形成してもよく、ステータ3とローター2との双方の面に盛り上がりまたは切り下がりを設けることにより、貫通孔32より内側のステータ3とローター2の隙間を、貫通孔32より外側の隙間より狭く形成してもよい。
【0052】
尚、ここで、混合物供給口33及び連通路34は、下側に行くにつれて半径方向の中心側に向けた方向D4に向くように形成されているが、例えば、下側に行くにつれて接線方向D5,D6に向くように形成されていてもよい。この場合、混合物供給口33及び連通路34は、連通路34がその下側において貫通孔32に接続される位置に形成される。これにより、貫通孔32をより回転軸挿通孔31に近づけることを可能とする。
【0053】
ステータ保持部18には、回転軸13を挿通する第2回転軸挿通孔36が設けられる。第2回転軸挿通孔36には、非接触シールであるラビリンス構造のシール部37が設けられる。ここでラビリンス構造とは、回転軸側(回転軸13)及び固定部側(ステータ保持部18)の一方若しくは両方に、一又は複数の凹部及び/又は凸部を形成することで、回転軸側と固定部側の間に凹凸の隙間を順次形成された構造であり、かかるラビリンス構造によりシール機能を発揮する。各凹部及び各凸部の寸法は、例えば、0.01〜3.00mm程度である。
【0054】
ステータ保持部18内で且つ第2回転軸挿通孔36の上側の空間38には、ステータ保持部18の外側からエアが供給されることによりエアパージシール機能を有するエアパージシール機構39が設けられる。エアパージシール機構39は、軸受保持部17及びステータ保持部18により形成された空間38と、軸受保持部17に設けられ、空間38及び外部を接続するパージ用通路39bと、パージ用通路39bの外部側に設けられパージ用の空気を供給するエア供給部39aとからなる。エアパージシール機構39は、矢印F1に示すように、エア供給部39aから供給した空気がパージ用通路39b、空間38を介して第2回転軸挿通孔36及び回転軸13の隙間部分に供給されることで、シール機能を発揮する。
【0055】
ここで、
図6および
図7に示すように、エア供給部39aには、パージ用エア398を供給する配管392が接続する。配管392は、エア供給源396からのパージ用エア398をエア供給部39aからエアパージシール機構39に供給する。エア供給源396と配管392でパージ用エア供給装置390を構成する。配管392には、配管中のエア398を冷却するクーラー394が設置される。クーラー394はエア398を冷却できればよく、電気式のクーラー、蒸発式のクーラー、外部から供給される冷媒を用いるクーラー等、いかなるタイプのクーラーであってもよい。
【0056】
パージ用エア398は、回転軸13と第2回転軸挿通孔36および回転挿通孔31との間を抜けつつ、混合物4が回転軸13と回転挿通孔31との間に入り込むのを防止する。すなわち、軸受14に入り込むのを防止する。パージ用エア398は、回転軸13と回転挿通孔31との間を抜け、ステータ3とローター2の隙間の混合物4に混入し、混合物4と共にステータ3とローター2を外側に通過して分散装置1から排出される。パージ用エア398は混合物4に混入するので、パージ用エア398を冷却することで、直接かつ均等に混合物4を冷却することできる。すなわち、混合物4の温度上昇を抑えることができる。パージ用エア398を冷却することで、均等に混合物4の温度上昇を抑えることができるので、温度上昇により変質しやすい混合物4などを分散する際には特に有利である。
【0057】
パージ用エア398は、機械の保護のために、ローター2の回転や、混合物4の分散装置1への供給前から供給される。また、パージ用エア398の供給停止、すなわち、エア供給源396の停止は、ローター2の回転や、混合物4の分散装置1への供給が停止された後である。よって、分散装置1で混合物4を分散している間は、常にパージ用エア398が供給されている。そこで、パージ用エア398をクーラー394で冷却することで、常に混合物4の温度上昇を抑えることができる。クーラー394は、エア供給源396と連動して起動・停止されるのがよいが、少なくとも分散装置1が混合物4を分散する間は運転される。
【0058】
パージ用エア398をクーラー394で冷却する温度は、低くした方が温度上昇を抑える効果が高まるが、温度を低くしすぎると配管392の結露の問題が生ずる。そこで、通常は5℃以上とする。しかし、混合物4と混合すれば温度も上昇し、結露の問題も生じないので、クーラー394からエア供給部39aまでの配管392を保温材で覆い、または、配管392を二重管にして、より低い温度に冷却してもよい。
【0059】
これまでの説明では、クーラー394は、配管392中のエア398を冷却するものとして説明した。しかし、クーラー394は他のタイプのクーラーであってもよい。例えば、クーラー394は、第1配管392でエア供給源396と連絡され、第2配管392でエア供給部39aと連絡され、クーラー394で第1配管392から供給されたエア398を冷却し、第2配管392を介してエアパージシール機構39に供給してもよい。このように、第1配管392と第2配管392との間にクーラー394を配置すると、クーラー394の取り付け、取り外しが容易になり、クーラー394の交換も容易になる。なお、クーラー394で配管392中のエア398を冷却するように構成すると、パージ用エア398がクーラー394と配管392との間でリークすることがない。
【0060】
このように、分散装置1では、貫通孔32より内側のステータ3とローター2の隙間を、貫通孔32より外側の隙間より狭く形成しているので、回転軸13側に混合物4が流れず、かつ、エア398で回転軸13と第2回転軸挿通孔36および回転軸挿通孔31との間をエアパージしているので、軸受14に混合物4が入り込まない。
【0061】
これまでの説明では、分散装置1では、貫通孔32より内側のステータ3とローター2の隙間を、貫通孔32より外側の隙間より狭く形成し、かつ、エア398で回転軸13と第2回転軸挿通孔36および回転軸挿通孔31との間をエアパージしているものとして説明した。しかし、貫通孔32より内側のステータ3とローター2の隙間を、貫通孔32より外側の隙間より狭く形成しているが、回転軸13と第2回転軸挿通孔36および回転軸挿通孔31との間をエアパージしない、あるいは、エアパージはするが、エアを冷却していない、分散装置であってもよい。また、冷却したエア398で回転軸13と第2回転軸挿通孔36および回転軸挿通孔31との間をパージするが、ステータ3とローター2の隙間が貫通孔32より内側が外側より狭く形成されていない、分散装置であってもよい。
【0062】
尚、
図2に示すようにステータ保持部18の第2回転軸挿通孔36の外側には、ステータ3をステータ保持部18に取り付けるためのボルト3a用の取付け用の凹部18fが形成されている。また、凹部18fを形成することにより、第2回転軸挿通孔36を形成する内周部18gは、突出するような形状とされている。回転軸13は、ステータ保持部18の内周部18gの上方に位置するように形成された突出部13gを有している。矢印F1で示すように供給された空気は、内周部18gと突出部13gとの間を通過して、第2回転軸挿通孔36及び回転軸13の隙間部分に供給される。
【0063】
シール部37のラビリンス構造は、第2回転軸挿通孔36の軸封効果を高めることを実現し、エアパージシール機構39のエアパージ機能は、回転軸挿通孔31及び第2回転軸挿通孔36の部分の軸封効果を高めることを実現する。上述のように、装置1では、混合物4を導く位置を工夫し、遠心力を利用していることから、ラビリンス構造及びエアパージ機能は、必ずしも設ける必要がない。しかし、少なくともいずれか一方を設けることで軸封効果の安全性を高めることを実現できるし、両方設けることでさらなる軸封効果を実現する。
【0064】
容器11には、冷却機能を有する冷却機構41が設けられている。容器11は、下方側に向かうにつれて断面積が小さくなる円錐状の壁面42と、この円錐状の壁面42の上に位置する円筒状の壁面43と、円錐状の壁面42の下部に設けられる排出口44とを有する。排出口44は、容器11の下方端に設けられ、分散処理済みの混合物4を排出する。排出口44の端部には、接合用のフランジ等が形成され、後述する配管(第二配管55)が接続される。分散処理後の混合物4が円錐状の壁面42を経由して排出されるため、内壁に付着して排出されにくい混合物4の量が激減する。よって歩留まりを向上して、適切な処理を実現する。尚、容器11には、真空ポンプを設けるようにしてもよく、真空ポンプにより容器11内を真空にすることで、最終的に混合物4への空気の混入を低減できる。
【0065】
冷却機構41は、例えば、容器11の外側面である壁面42及び壁面43と、この外側にこの外側面(壁面42及び壁面43)を覆うように形成される空間形成部材45と、冷却媒体供給口46と、冷却媒体排出口47とを有する。空間形成部材45は、例えばジャケットとも呼ばれる部材であり、壁面42、43との間に、例えば冷却水などの冷却媒体を充填可能な空間48を形成する。
【0066】
冷却媒体供給口46は、例えば空間形成部材45の側面下部に形成され、空間48に冷却水を供給する。冷却媒体排出口47は、例えば空間形成部材45の側面上部に形成され、空間48から冷却水を排出する。
【0067】
冷却機構41は、この構成により、壁面42,43を介して容器11内部を冷却する機能を有する。冷却機構41は、分散処理済みの混合物4を冷却することを可能とする。また、揮発しやすい材料を用いた場合には、揮発した材料が冷却されることにより液体に戻すことができる。
【0068】
尚、分散装置1を構成する容器は、上述した容器11に限られるものではなく、例えば
図8に示すような容器81,86であってもよい。まず、
図8(a)に示す容器81について説明する。容器81は、撹拌機構82を有することを除いて、上述した容器11と同様の構成と機能を有する。同様の部分については説明を省略する。
【0069】
図8(a)の容器81は、壁面42,43と、排出口44とを有する。容器81には、冷却機構41が設けられている。この容器81には、壁面42,43の内面に付着したスラリー状の混合物4を掻き取り排出口44から排出させる撹拌機構82が設けられている。撹拌機構82は、壁面42,43に沿った形状に形成される撹拌板82aと、これを回転駆動するモーター82bとを有する。また、撹拌機構82は、回転軸82c、軸受82dも有する。撹拌板82aと壁面42,43との隙間が0〜20mm程度となるように、撹拌板82aは形成されている。撹拌板82aとしては、金属又は金属に樹脂が取り付けられたものが使用される。ここで、撹拌板82aは、円周状の2箇所で掻き取るような形状とされる2箇所の撹拌部82eを有するように構成しているが、複数の板部材を組み合わせて撹拌部を3以上の複数個に増加させてもよいし、1個でもよい。
図8(a)の例では、回転軸82cを設ける必要性から排出口44には、接続用配管83が取り付けられ、これを介して配管(第二配管55)に接続される。分散処理後の混合物4が円錐状の壁面を経由して排出されるため、内壁に付着して排出されにくい混合物4の量が激減し、さらに、撹拌板により混合物4の排出が容易になるので、歩留まりが向上する。
【0070】
次に、分散装置1を構成する容器のさらに他の例として、
図8(b)に示す容器86について説明する。容器86は、当該分散装置1で分散処理された混合物4を貯留する処理後貯留タンクを兼ねている容器である。すなわち、容器86は、例えば、円筒形状の壁面86aを有するとともに、この下方に曲面状の底面部86bを有し、この底面部86bの下方端部に開閉弁86dを介して排出口86cが設けられている。
【0071】
図8(b)の容器86は、後述するような1パスで処理が完了する混合物4と相性がよい。すなわち、例えば、少量で且つ適切な分散処理が必要で且つ高価な混合物4を分散処理する場合には相性がよい。分散処理後に、ボルト11dを外すことにより、容器86をカバーユニット12やこれに取り付けられたローター2及びステータ3から外すことで、この容器86をそのまま搬送用の容器として、所望の場所まで搬送すればよい。これにより、他の構造の場合では分散装置の外壁に付着することになる混合物4も回収でき、歩留まりが向上する。尚、処理後貯留タンクを兼ねている容器86の形状は、これに限られるものではなく円錐状の壁面を有してもよく、また、大量の分散処理が可能なようにさらに大型のタンク形状であっても良く、さらに、大型で且つ例えば2分割できるような形状であってもよい。また、処理後貯留タンクを兼ねている容器に、冷却機構41を設けてもよい。
【0072】
また、分散装置1を構成するローター2及びステータ3の材質として、例えば、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS430等のステンレス鋼や、S45C、S55C等の炭素鋼を用いてもよい。また、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア、サイアロン、炭化ケイ素等のセラミクスや、SKD、SKH等の工具鋼を用いてもよい。ステンレス等の金属材料にセラミクスが溶射(例えばアルミナ溶射、ジルコニア溶射)されたものを用いるようにしてもよい。金属材料にセラミクス部材が溶射されたローター及びステータを使うことで、寿命が延び、金属コンタミネーションを防止できる。
【0073】
以上のような分散装置1を用いた分散方法では、この分散装置1のローター2及びステータ3の間に、混合物4を供給して遠心力によって外周に向けて通過させることにより分散する。該分散装置1及び分散方法は、歩留まりが良く、分散力が高く、混合物4の温度上昇を抑えて適切な温度範囲で分散処理を行うことを実現し、すなわち、適切な分散処理を実現する。また、この分散装置1及び方法は、分散処理後の清掃を行う際に、容器11とカバーユニット12とを分離すればよいだけなので、清掃が容易である。さらに、軸受14に混合物4が入り込まない。
【0074】
次に、上述した分散装置1を用いた分散処理システム51について説明する。
図3に示す分散処理システム51は、分散装置1と、処理前貯留タンク52と、処理後貯留タンク53と、第一配管54と、第二配管55とを備える。処理前貯留タンク52は、分散装置1に導く混合物4を貯留する。処理後貯留タンク53は、分散装置1で分散処理された混合物を貯留する。第一配管54は、分散装置1及び処理前貯留タンク52を接続する。第二配管55は、分散装置1及び処理後貯留タンク53を接続する。
【0075】
第一配管54には、ポンプ56が設けられる。このポンプ56は、処理前貯留タンク52内の混合物4を分散装置1(の混合物供給口33)に導く。第二配管55には、ポンプ57が設けられる。このポンプ57は、分散装置1の容器11内の混合物4を処理後貯留タンク53に導く。
【0076】
処理前貯留タンク52には、モーター52a及び撹拌板52bからなる撹拌機構52cが設けられている。この撹拌機構52cは、処理前の混合物4を撹拌することで予備分散を行う。例えば処理前貯留タンク52には、液体供給部と粉体供給部とを設けることも可能であり、それぞれから液体及び粉体を供給させて予備分散を行うことができる。分散処理システム51は、撹拌機構52cによる予備分散と、分散装置1による1パス分散処理とを行うシステムであり、分散効率が良い。また、処理後貯留タンク53には、モーター53a及び撹拌板53bからなる撹拌機構53cが設けられている。この撹拌機構53cは、処理後の混合物4の均質化を行う。尚、処理後貯留タンク53に、真空ポンプを設け、第二配管55に開閉弁を設けてもよい。真空ポンプと開閉弁と撹拌機構53cとで、処理後の混合物4の脱泡が可能になる。開閉弁に換えて分散装置1にリップシール等の接触シールを設ければ、分散処理をしながらの脱泡が可能になる。
【0077】
この分散処理システム51は、処理前貯留タンク52に貯留された混合物4を分散装置1で処理し、処理後の混合物を処理後貯留タンク53に導くことで混合物の分散処理を行う。分散処理システム51は、分散装置1のローター2及びステータ3間を混合物が1回だけ通過させる方式、すなわちいわゆる「1パス」の分散処理に適している。1パス分散処理は、ショートパスがないので分散の不均一がなく、シンプルなシステムで装置構成を安価にすることを可能とする。また、分散装置1を有しているので、歩留まりが良く、分散力が高く、混合物4の温度上昇を抑えて適切な温度範囲で分散処理を行うことを実現し、すなわち、適切な分散処理を実現する。さらに、軸受14に混合物4が入り込まない。
【0078】
尚、分散装置1を用いた分散処理システムは、
図3の分散処理システム51に限られるものではなく、例えば、
図9及び
図10に示す分散処理システム91,101でもよい。分散処理システム91は、複合パスできる構成であることを除いて、上述したシステム51と同様の構成と機能を有する。分散処理システム101は、圧縮力を用いて分散装置1に混合物4を導くことを除いて、上述したシステム51と同様の構成と機能を有する。同様の部分については説明を省略する。
【0079】
図9に示す分散処理システム91は、分散装置1と、第一タンク92と、第二タンク93と、第一配管94と、第二配管95とを備える。第一及び第二タンク92,93は、それぞれ、分散装置1に導く混合物4を貯留可能で且つ分散装置で分散処理された混合物4を貯留可能である。すなわち、第一及び第二タンク92,93は、それぞれ、上述した処理前貯留タンク52及び処理後貯留タンク53の両機能を有する。また、第一及び第二タンク92、93は、それぞれモーター92a、93a及び撹拌板92b、93bからなる撹拌機構92c、93cが設けられ、上述した撹拌機構52c,53cの両機能を有する。
【0080】
第一配管94は、第一タンク92の排出口92dと、第二タンク93の排出口93dとのそれぞれから混合物4を導く配管が途中で合流され、分散装置1の供給口33に混合物4を導く。第一配管94には、合流部分に第一切換弁98が設けられている。
【0081】
第二配管95は、分散装置1の排出口44から混合物4を導く配管が途中で分岐され、第一タンク92の入口(供給口)92eと、第二タンク93の入口(供給口)93eとのそれぞれに混合物4を導く。第二配管95には、分岐部分に第二切換弁99が設けられている。
【0082】
第一配管94には、ポンプ96が設けられる。このポンプ96は、第一及び第二タンク92、93のうち第一切換弁98で接続された処理前貯留タンクとして機能するタンク内の混合物4を分散装置1(の混合物供給口33)に導く。第二配管95には、ポンプ97が設けられる。このポンプ97は、分散装置1の容器11内の混合物4を第一及び第二タンク92、93のうち第二切換弁99で接続された処理後貯留タンクとして機能するタンクに導く。
【0083】
すなわち、この分散処理システム91は、第一及び第二切換弁98,99を切り換え、第一及び第二タンク92,93のいずれか一方から第一配管94を経由して分散装置1に導かれた混合物4を分散装置1で処理するとともに、処理後の混合物4を第一及び第二タンク92,93のいずれか他方に導く動作を複数回行うことで混合物4の分散処理を行う。この分散処理システム91は、分散装置1のローター2及びステータ3間に混合物4を複数回通過させる方式、すなわちいわゆる「複数パス」の分散処理を可能とする。
【0084】
図10に示す分散処理システム101は、分散処理システム51と同様に、分散装置1と、処理前貯留タンク52と、処理後貯留タンク53と、第一配管54と、第二配管55とを備える。第二配管55には、分散処理システム51と同様に、ポンプ57が設けられる。
【0085】
分散処理システム101の処理前貯留タンク52には、コンプレッサ102が、流量調整弁103及びフィルタ104を介して接続されている。すなわち、処理前貯留タンク52及びコンプレッサ102を接続する配管105に、流量調整弁103及びフィルタ104が設けられる。流量調整弁103は、コンプレッサ102から処理前貯留タンク52に導かれる圧縮空気の流量を調整する。フィルタ104は、コンプレッサ102から処理前貯留タンク52に導かれる圧縮空気中の不要物を取り除く。
【0086】
この分散処理システム101は、コンプレッサ102及び流量調整弁103により処理前貯留タンク52内の混合物4に付与した圧力により、処理前貯留タンク52から第一配管54を経由して分散装置1に混合物4を導く。
【0087】
この分散処理システム101は、処理前貯留タンク52に貯留された混合物4を分散装置1で処理し、処理後の混合物4を処理後貯留タンク53に導くことで混合物4の分散処理を行う。分散処理システム101は、「1パス」の分散処理に適している。
【0088】
以上のように、分散処理システム91,101は、いずれも、分散装置1を有しているので、歩留まりが良く、分散力が高く、混合物4の温度上昇を抑えて適切な温度範囲で分散処理を行うことを実現し、すなわち、適切な分散処理を実現する。さらに、軸受14に混合物4が入り込まない。尚、分散装置1は、循環用のポンプ、循環用の配管、配管内に設けられるタンク等とともに循環式分散処理システムを構成するようにしてもよい。
【0089】
次に、分散装置1を用いた分散処理システムの更に他の例として、
図11に示す分散処理システム111を説明する。分散処理システム111は、予備撹拌機能に優れた撹拌タンク112を有することに特徴があり、
図3の分散処理システム51の処理前貯留タンク52に換えて撹拌タンク112を備えることを除いて、分散処理システム51と同様の構成と機能を有する。同様の部分については説明を省略する。
【0090】
図11に示す分散処理システム111は、分散装置1と、撹拌タンク112と、処理後貯留タンク53と、第一配管114と、第二配管55と、投入機構116とを備える。第一配管114には、
図3の第一配管54と同様に、ポンプ56が設けられる。第二配管55には、ポンプ57が設けられる。
【0091】
撹拌タンク112は、分散装置1に導く混合物4を貯留するとともに撹拌(予備撹拌)する。投入機構116は、撹拌タンク112に混合物4を構成する粉状の添加物を供給する。第一配管114は、分散装置1及び撹拌タンク112を接続する。処理後貯留タンク53は、分散装置1で分散処理された混合物4を貯留する。第二配管55は、分散装置1及び処理後貯留タンク53を接続する。
【0092】
撹拌タンク112及び投入機構116は、予備撹拌装置117として機能する。すなわち、予備撹拌装置117は、スラリー状又は液体状の処理原料を貯蔵するとともに該処理原料に混合する粉状の添加物を供給し、処理原料及び添加物の予備的な撹拌(分散装置1による分散処理前の事前撹拌)を行う。
【0093】
撹拌タンク112は、回転軸122が撹拌タンク本体120から偏心させられ、傾斜渦を発生させる撹拌羽根121を有する。すなわち、撹拌タンク112は、撹拌タンク本体120と、撹拌羽根121と、モーター123とを有する。撹拌羽根121は、回転軸122を有する。モーター123、撹拌羽根121及び回転軸122は、撹拌機構124を構成する。回転軸122は、撹拌タンク本体120の中心から偏心させられ(中央からずらした位置に配置され)、傾斜渦が発生する。尚、撹拌タンク本体120は、例えば円筒状の側壁部と、湾曲形状の底面部とを有するが、これに限られるものではない。
【0094】
撹拌羽根121は、例えば、
図12(a)に示すような、ディスクタービン型(disk turbine type impeller)等のタービン型である。撹拌羽根121は、撹拌タンク本体120内のスラリー状若しくは液体状の混合物4(最初は処理原料)に傾斜渦を発生させる。尚、撹拌タンク112を構成する撹拌羽根は、これに限られるものではなく、傾斜渦を発生可能なものであればよく、例えば
図12(b)に示すディゾルバー型(dissolver type impeller)の撹拌羽根125や、
図12(c)に示すプロペラ型(propeller)の撹拌羽根126であってもよい。
【0095】
投入機構116は、粉状の添加物を撹拌羽根121により発生された傾斜渦に投入する。投入機構116は、例えば振動式定量フィーダである。ここで用いられる投入機構116としては、これに限られるものではなく、その他の振動式フィーダや、スクリュー式フィーダであってもよい。傾斜渦に投入された粉体は大きな塊になることが防止され、タンク本体120や配管で詰まることや付着する等の問題を防止でき、分散装置1による適切な分散処理を可能とする。また、撹拌羽根121を中央からずらした位置で回転させる構成とすることで、投入機構116からの投入するためのスペースに余裕ができ、すなわち、撹拌羽根121の回転軸122に付着する粉体量を減らすことができる。また、上述の効果は、混合物4の配合割合の精度を高めるという利点も得られる。
【0096】
分散処理システム111は、撹拌タンク112で撹拌された後の混合物4を分散装置1で処理し、処理後の混合物4を処理後貯留タンク53に導くことで混合物4の分散処理を行う。また、分散処理システム111を用いた分散方法は、撹拌タンク112で混合物4の撹拌を行い、撹拌タンク112で撹拌された後の混合物4を、分散装置1のローター2及びステータ3の間に供給して、遠心力によって外周に向けて通過させることにより分散する。分散処理された混合物4は、第二配管55を介して処理後貯留タンク53に導かれ、処理後貯留タンク53で、全体の不均一を防止するための撹拌がなされる。分散処理システム111及び分散方法は、歩留まりが良く、分散力が高く、混合物4の温度上昇を抑えて適切な温度範囲で分散処理を行うことを実現し、すなわち、適切な分散処理を実現する。さらに、軸受14に混合物4が入り込まない。
【0097】
以上のように構成された予備撹拌装置117及び分散処理システム111は、CMC(カルボキシメチルセルロース)等の粉末を水に溶解させる場合に適している。CMCは、例えば電池原料などのバインダ(結合剤)として利用され、使用の際には水溶液にする必要がある。CMCの粉は、水になじみにくく(濡れ性が悪く)、水溶液を作るのに時間がかかるという問題があった。その原因の一つとして、例えば、
図3に示すような処理前貯留タンク52のようなアンカー羽根を用いた撹拌方法では、粉が水面に浮き水になかなか溶けこんでいかないということがある。
【0098】
これに対し、上述したような撹拌タンク112及び投入機構116からなる予備撹拌装置117は、タンク内の液体又はスラリーに傾斜渦を発生させることができ、この傾斜溝の内部に向けて投入機構116が粉末を投入することにより、渦の巻き込み作用によって粉が強制的に液体(例えば水)又はスラリーに混ぜ込まれる。混ぜ込まれた粉は、撹拌羽根121の羽根部分に到達して凝集粒子が分解される。このように予備撹拌装置117は、例えばCMC等の濡れ性が悪い粉体の撹拌(予備撹拌)を短時間で適切に行うことができる。
【0099】
また、このような撹拌タンク112や予備撹拌装置117は、分散装置1と相性がよい。すなわち、撹拌タンク112(予備撹拌装置117)だけで、濡れ性の悪い粉体を液体等に溶け込ませようとすると、強い分散力を持った羽根を必要とし、処理に時間がかかり、有効な渦を形成するための諸条件(回転数、回転軸の偏心量、タンク内の液体又はスラリーの量、粉体の供給速度)を厳しく狭い範囲で決める必要がある。これに対し、
図11の分散処理システム111は、撹拌タンク112(予備撹拌装置117)及び分散装置1を併せ持つことにより、短時間で適切な分散処理を達成できる。
【0100】
すなわち、この分散処理システム111では、撹拌タンク112で数百μm〜数mm程度の凝集物が残っていても、分散装置1により強力な剪断力によって凝集物が破壊され均一な水溶液を得ることを可能とする。しかも、この分散処理は、1パスするのみで終了することも可能であり、全体としての水溶液作成時間を大幅に短縮できる。また、分散装置1を有するシステムという観点で考慮したとしても、予備撹拌装置117は、短時間で予備撹拌を行うことができるという利点があり、これらの予備撹拌装置117及び分散装置1を併せ持つことで濡れ性が悪い粉体を液体(例えば水)又はスラリーに混合(分散)する場合に、特に有効である。
【0101】
分散装置1を経た混合物4(例えば水溶液)は、処理後貯留タンク53にポンプ57で送られ、この混合物4の濃度の不均一を防止するための混合処理がなされる。処理後貯留タンク53での混合処理は、タンク内全体を撹拌する必要があるため、例えばCMC等の粘度が高い場合は、処理後貯留タンク53に示すようにアンカー形の羽根が適している。
【0102】
以上のように分散処理システム111は、撹拌タンク112、予備撹拌装置117を備えることにより、例えばCMC等の濡れ性の悪い粉体(添加物)を処理原料に混合する場合に、短時間で適切な分散処理を実現する。また、分散処理システム111は、分散装置1を有していることの効果、すなわち、
図3の分散処理システム51と同様の効果を有する。すなわち、例えば、歩留まりが良く、分散力が高く、混合物4の温度上昇を抑えて適切な温度範囲で分散処理を行うことを実現し、適切な分散処理を実現する。さらに、軸受14に混合物4が入り込まない。
【0103】
次に、
図11に示す分散処理システム111の変形例として、
図13に示す分散処理システム151を説明する。分散処理システム151は、分散装置1の容器部分が「処理後貯留タンク53に直接つながるとともに混合物4を処理後貯留タンク53に導くような形状」であることに特徴があり、第二配管55を取り除くとともに、容器11に換えて容器161を備えることを除いて、分散処理システム111と同様の構成と機能を有する。同様の部分については説明を省略する。また、以下では説明の便宜上分散装置1の容器11を容器161に交換したものを「分散装置160」と呼ぶ。分散装置160は、分散装置1の容器11に換えて、容器161を有することを除いて分散装置1と同様の構成及び効果を有する。この容器161は、
図3の分散処理システム111などでも採用可能であり、採用した場合は、分散処理システム151を用いて説明する以下の効果を有する。
【0104】
図13に示す分散処理システム151は、容器161を有する分散装置160と、撹拌タンク112と、投入機構116と、処理後貯留タンク53と、第一配管114とを備える。第一配管114には、ポンプ56が設けられる。
【0105】
この分散処理システム151を構成する分散装置160の容器161は、下方側に向かうにつれて断面積が小さくなる壁面を有するとともに、処理後貯留タンク53の上部側に接続される。尚、ここでは、処理後貯留タンク53の上面の蓋に一体化されているものとするがフランジ等の締結部材で結合(分解可能に結合)されるように構成しても良い。また、結合することなく処理後貯留タンク53に設けた穴に差し込むだけの構造としても良い。また、容器161は、例えば下方側に向かうにつれて断面積が一方の側に漸次寄せられるような形状の壁面を有して、処理後貯留タンク53に接続しやすいような形状としてもよいが、これに限られるものではない。また、容器161は、ローター2及びステータ3で分散処理された混合物4を処理後貯留タンク53に導く導入部として機能する。
【0106】
分散処理システム151は、撹拌タンク112で撹拌された後の混合物4を分散装置160で処理し、処理後の混合物4を容器161で直接的に処理後貯留タンク53に導くことで混合物4の分散処理を行う。また、分散処理システム161を用いた分散方法は、撹拌タンク112で混合物4の撹拌を行い、撹拌タンク112で撹拌された後の混合物4を、分散装置160のローター2及びステータ3に供給して、遠心力によって外周に向けて通過させることにより分散する。分散装置160で分散処理された混合物4は、導入部として機能する容器161で直接的に処理後貯留タンク53に導かれ、処理後貯留タンク53で、全体の不均一を防止するための撹拌がなされる。該分散処理システム151及び分散方法は、歩留まりが良く、分散力が高く、混合物4の温度上昇を抑えて適切な温度範囲で分散処理を行うことを実現し、すなわち、適切な分散処理を実現する。さらに、軸受14に混合物4が入り込まない。
【0107】
以上のように分散処理システム151は、分散処理システム111と同様に、撹拌タンク112を有する予備撹拌装置117を備えることにより、例えばCMC等の濡れ性の悪い粉体(添加物)を処理原料に混合する場合に短時間で適切な分散処理を実現する。また分散処理システム151は、分散処理システム111に比べて、第二配管55や配管中に設けられるポンプ57などの途中の機器を省略できるので、処理後に混合物4が装置内部に付着して残ってしまい、得られる処理済み混合物4が少なくなることを防止できる。すなわち、処理済み混合物4の回収率を大幅に向上できる。これは、分散装置1を用いて説明したように、分散装置160自体の処理済み混合物4の回収率の向上できるという機能と相性がよい。さらに、分散処理システム151は、分散装置160を有していることの効果(分散装置160は、分散装置1と同様の効果を有している)、すなわち、
図3の分散処理システム51と同様の効果を有する。すなわち、例えば、歩留まりが良く、分散力が高く、混合物4の温度上昇を抑えて適切な温度範囲で分散処理を行うことを実現し、適切な分散処理を実現する。さらに、軸受14に混合物4が入り込まない。