(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重力式基礎は、少なくとも上方が開口している内空部を有する前記連結用さや管を複数備えていて、かつ、前記ジャケットは前記レグを複数有しており、複数の前記レグのそれぞれの位置に複数の前記連結用さや管のうちの1つずつが対応するように、前記レグおよび前記連結用さや管は配置されており、複数の前記レグのそれぞれは対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込まれていることを特徴とする請求項1に記載の着床式基礎。
前記重力式基礎は、前記底版コンクリートの外周に沿うように前記底版コンクリートの上面に設けられた外周壁体を備え、前記外周壁体の長手方向の端部は前記連結用さや管の外周面と連結しており、
前記外周壁体、前記連結用さや管の外周面、および前記底版コンクリートで囲まれた空間は、投入された中詰め材を保持することができることを特徴とする請求項4に記載の着床式基礎。
前記サクション基礎は、少なくとも上方が開口している内空部を有する前記連結用さや管を複数備えていて、かつ、前記ジャケットは前記レグを複数有しており、複数の前記レグのそれぞれの位置に複数の前記連結用さや管のうちの1つずつが対応するように、前記レグおよび前記連結用さや管は配置されており、複数の前記レグのそれぞれは対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込まれていることを特徴とする請求項8に記載の着床式基礎。
前記連結用さや管と該連結用さや管に差し込まれた前記レグとの間隙には、グラウト材が充填されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の着床式基礎。
前記連結用さや管の前記内空部の下面と前記レグとの間には、前記ジャケットの位置を調整するためのライナー部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の着床式基礎。
前記一体化工程で、前記連結用さや管と該連結用さや管に差し込まれた前記レグとの間隙に、グラウト材を充填することを特徴とする請求項13〜22のいずれかに記載の着床式基礎の構築方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、非特許文献3に記載されたような、ジャケット構造にコンクリート製の重力式基礎を組み合わせたハイブリッド構造(以下、単に「ハイブリッド構造」と記すことがある。)について検討を進めた結果、非特許文献3に記載されたようなハイブリッド構造は、設置場所の条件等によっては、次のような点が問題となることもあり得ると判断した。
【0008】
(1)洋上風力発電設備の風車は大型化する方向に向かっているところ、重力式基礎の場合、それに対応するためには自身の重量を増加させることが必要となるが、重量が大きくなると、その重量に対応できる海上据え付けのための作業船が限られてしまい、施工上の制約となる。作業船には、自己昇降式作業台船(以下、SEP船と記載することがある。SEPは Self Elevating Platformの略である。)や起重機船等があり、SEP船は海象条件が厳しいときでも使用できるが、吊り能力は小さい。一方、起重機船は吊り能力は大きいが、使用可能な海象条件が限定される。
【0009】
吊り上げる対象物の重量が大きくなると、例えば起重機船を使用せざるを得なくなるが、前述したように、起重機船は使用可能な海象条件が限定されるため、施工を行うことができる日が凪の日に限定されてしまうこともあり、この点からも施工上の制約となる。
【0010】
(2)重力式基礎を安定させるためには重量を大きくすることが必要であるが、重力式基礎の重量を大きくすると地震荷重も増加する。また、重力式基礎の重量を大きくすると、当該重力式基礎の外形も大きくなる方向に向かうが、外形および重量が大きくなればそれに比例して波荷重も大きくなる。このため、重力式基礎の重量を大きくするだけでは重力式基礎を安定させるという課題を解決できない状況もあり得る。
【0011】
(3)洋上風力発電設備の基礎構造の据え付けに関しては、当該基礎構造に据え付ける風車の性能を確保する観点から、風車タワー(風車を所定の高さに維持する鉛直部材)と接合する基礎構造の上端の接合フランジ面の水平度について厳しい精度管理が求められる。一方、重力式基礎は、基礎捨石マウンド上に直接設置される構造であるため、この基礎捨石マウンドの水平度がそのまま接合フランジ面の水平度に影響する。このため、基礎捨石マウンドの均し作業により高さ、水平度を厳密に調整して管理する必要があるが、海象条件は一定ではなく、基礎捨石マウンドの水平度や高さの管理には限界がある。また、本格的に洋上風力発電を行うためには、風車設備の設置基数が多くなるが、風車設備の設置基数が多くなると、基礎捨石マウンドの水平度や高さの管理にきわめて多くの労力がかかることが想定される。
【0012】
また、前記(1)で述べた事項に関連することであるが、据え付け施工の際に吊り上げや移動が必要となる基礎構造用の部材の重量を軽減することが施工性の向上につながることは、重力式基礎だけでなく他の基礎形式(例えばサクション基礎)の場合でも同様である。さらに、風車タワー等の上部構造と接合する基礎構造の上端の部位の水平度の管理が重要なことは、重力式基礎だけでなく他の基礎形式(例えばサクション基礎)の場合でも同様である。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであって、据え付け施工の際に吊り上げや移動が必要となる基礎構造用の部材の重量を軽減することができ、かつ、所望の設置姿勢および高さ位置となるように据え付け施工しやすい着床式基礎および着床式基礎の構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の着床式基礎および着床式基礎の構築方法により、前記課題を解決したものである。
【0015】
即ち、本発明に係る着床式基礎の第1の態様は、捨石マウンド上に配置された重力式基礎と、前記重力式基礎に取り付けられたジャケットと、を有してなる着床式基礎であって、前記重力式基礎は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に備え、前記ジャケットは下方に延びるレグを有し、前記レグは前記連結用さや管に差し込まれていて、かつ、前記連結用さや管に差し込まれた前記レグは、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化していることを特徴とする着床式基礎である。
【0016】
ここで、本願において、ジャケットとは、鋼製部材を主体とした骨組構造の総称であり、ジャケットのレグの本数は特には限定されず、レグの本数が3本のトリポッドやレグの本数が1本のモノポールもジャケットに含まれる。また、ジャケットのレグの本数は4本以上であってもよい。
【0017】
また、「前記重力式基礎は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に備え」とは、前記重力式基礎は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を備え、かつ、該連結用さや管は前記重力式基礎と一体化しているという意味であり、本願の他の箇所においても、「一体的に備え」という文言は同様に解釈するものとする。
【0018】
着床式基礎の第1の態様において、前記重力式基礎は、少なくとも上方が開口している内空部を有する前記連結用さや管を複数備えていて、かつ、前記ジャケットは前記レグを複数有しており、複数の前記レグのそれぞれの位置に複数の前記連結用さや管のうちの1つずつが対応するように、前記レグおよび前記連結用さや管は配置されており、複数の前記レグのそれぞれは対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込まれているように構成してもよい。
【0019】
前記連結用さや管は、上端部および下端部にフランジが設けられていることが好ましい。
【0020】
前記重力式基礎は、底面を形成する底版コンクリートを備え、前記連結用さや管は、前記底版コンクリートの上面よりも上方に突出した部位を有する一方、下面よりも下方に突出した部位は有しないように構成してもよい。
【0021】
ここで、底版コンクリートは、コンクリートを主たる構成要素とする版状の部材のことであり、例えば、鉄筋コンクリートからなる版でもよいし、鋼とコンクリートとの合成版でもよい。本願の他の箇所においても、底版コンクリートは同様に解釈するものとする。
【0022】
前記重力式基礎は、底面を形成する底版コンクリートを備え、前記連結用さや管は、前記底版コンクリートの上面と下面との間に収まるように配置されているように構成してもよい。
【0023】
前記重力式基礎は、底面を形成する底版コンクリートと、前記底版コンクリートの外周に沿うように前記底版コンクリートの上面に設けられた外周壁体と、を備え、前記外周壁体および前記底版コンクリートで囲まれた空間は、投入された中詰め材を保持することができるように構成してもよい。
【0024】
ここで、「前記底版コンクリートの外周に沿うように」とは、上方から見たときに、前記底版コンクリートの外周に沿うように配置されていれば足り、高さ位置が同一であることまでは問わない概念であり、本願の他の箇所の記載においても同様である。
【0025】
前記重力式基礎は、前記底版コンクリートの外周に沿うように前記底版コンクリートの上面に設けられた外周壁体を備え、前記外周壁体の長手方向の端部は前記連結用さや管の外周面と連結しており、前記外周壁体、前記連結用さや管の外周面、および前記底版コンクリートで囲まれた空間は、投入された中詰め材を保持することができるように構成してもよい。
【0026】
本発明に係る着床式基礎の第2の態様は、水底に設置されたサクション基礎と、前記サクション基礎に取り付けられたジャケットと、を有してなる着床式基礎であって、前記サクション基礎は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に備え、前記ジャケットは下方に延びるレグを有し、前記レグは前記連結用さや管に差し込まれていて、かつ、前記連結用さや管に差し込まれた前記レグは、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化していることを特徴とする着床式基礎である。
【0027】
着床式基礎の第2の態様において、前記サクション基礎は、少なくとも上方が開口している内空部を有する前記連結用さや管を複数備えていて、かつ、前記ジャケットは前記レグを複数有しており、複数の前記レグのそれぞれの位置に複数の前記連結用さや管のうちの1つずつが対応するように、前記レグおよび前記連結用さや管は配置されており、複数の前記レグのそれぞれは対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込まれているように構成してもよい。
【0028】
本発明に係る着床式基礎の第3の態様は、水底に設置された複数のサクション基礎と、前記複数のサクション基礎に取り付けられたジャケットと、を有してなる着床式基礎であって、前記複数のサクション基礎は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的にそれぞれ備え、前記ジャケットは下方に延びるレグを複数有し、複数の前記レグのそれぞれの位置に複数の前記連結用さや管のうちの1つずつが対応するように、前記レグならびに前記サクション基礎および前記連結用さや管は配置されており、複数の前記レグのそれぞれは対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込まれていて、かつ、前記連結用さや管に差し込まれた前記レグは、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化していることを特徴とする着床式基礎である。
【0029】
前記連結用さや管と該連結用さや管に差し込まれた前記レグとの間隙には、グラウト材が充填されていてもよい。
【0030】
前記連結用さや管の前記内空部の下面と前記レグとの間には、前記ジャケットの位置を調整するためのライナー部材が配置されていてもよい。
【0031】
本発明に係る着床式基礎の構築方法の第1の態様は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に備える重力式基礎を、捨石マウンド上に沈設する基礎設置工程と、ジャケットのレグを、前記基礎設置工程で前記捨石マウンド上に沈設された前記重力式基礎の前記連結用さや管に差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程で前記連結用さや管に差し込まれた前記レグを、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化する一体化工程と、を備え、前記差し込み工程では、前記ジャケットが所定の姿勢で所定の高さ位置に配置されるように、前記レグを前記連結用さや管に差し込むことを特徴とする着床式基礎の構築方法である。
【0032】
本発明に係る着床式基礎の構築方法の第2の態様は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に複数備える重力式基礎を、捨石マウンド上に沈設する基礎設置工程と、ジャケットの複数のレグのそれぞれを、前記基礎設置工程で前記捨石マウンド上に沈設された前記重力式基礎の対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程で前記連結用さや管に差し込まれた前記レグを、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化する一体化工程と、を備え、前記差し込み工程では、前記ジャケットが所定の姿勢で所定の高さ位置に配置されるように、複数の前記レグのそれぞれを対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込むことを特徴とする着床式基礎の構築方法である。
【0033】
本発明に係る着床式基礎の構築方法の第3の態様は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に備えるサクション基礎を、水底に設置する基礎設置工程と、ジャケットのレグを、前記基礎設置工程で前記水底に設置された前記サクション基礎の前記連結用さや管に差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程で前記連結用さや管に差し込まれた前記レグを、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化する一体化工程と、を備え、前記差し込み工程では、前記ジャケットが所定の姿勢で所定の高さ位置に配置されるように、前記レグを前記連結用さや管に差し込むことを特徴とする着床式基礎の構築方法である。
【0034】
本発明に係る着床式基礎の構築方法の第4の態様は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に複数備えるサクション基礎を、水底に設置する基礎設置工程と、ジャケットの複数のレグのそれぞれを、前記基礎設置工程で前記水底に設置された前記サクション基礎の対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程で前記連結用さや管に差し込まれた前記レグを、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化する一体化工程と、を備え、前記差し込み工程では、前記ジャケットが所定の姿勢で所定の高さ位置に配置されるように、複数の前記レグのそれぞれを対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込むことを特徴とする着床式基礎の構築方法である。
【0035】
本発明に係る着床式基礎の構築方法の第5の態様は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的にそれぞれ備える複数のサクション基礎を、水底に設置する基礎設置工程と、ジャケットの複数のレグのそれぞれを、前記基礎設置工程で前記水底に設置された前記複数のサクション基礎の対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程で前記連結用さや管に差し込まれた前記レグを、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化する一体化工程と、を備え、前記差し込み工程では、前記ジャケットが所定の姿勢で所定の高さ位置に配置されるように、複数の前記レグのそれぞれを対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込むことを特徴とする着床式基礎の構築方法である。
【0036】
本発明に係る着床式基礎の構築方法の第6の態様は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に備える重力式基礎を、捨石マウンド上に沈設する基礎設置工程と、前記基礎設置工程で前記捨石マウンド上に沈設された前記重力式基礎の前記連結用さや管の高さ位置および傾きを計測する計測工程と、前記計測工程で計測した結果に基づき、必要に応じて、ジャケットのレグの下端、および、前記連結用さや管の前記内空部の下面のうちの一方または両方に、ライナー部材を設置するライナー部材設置工程と、前記ジャケットの前記レグを、前記基礎設置工程で前記捨石マウンド上に沈設された前記重力式基礎の前記連結用さや管に差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程で前記連結用さや管に差し込まれた前記レグを、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化する一体化工程と、を備えることを特徴とする着床式基礎の構築方法である。
【0037】
本発明に係る着床式基礎の構築方法の第7の態様は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に複数備える重力式基礎を、捨石マウンド上に沈設する基礎設置工程と、前記基礎設置工程で前記捨石マウンド上に沈設された前記重力式基礎の複数の前記連結用さや管の高さ位置および傾きをそれぞれ計測する計測工程と、前記計測工程で計測した結果に基づき、必要に応じて、レグを複数有するジャケットの前記レグの下端、および、前記連結用さや管の前記内空部の下面のうちの一方または両方に、ライナー部材を設置するライナー部材設置工程と、前記ジャケットの複数の前記レグのそれぞれを、前記基礎設置工程で前記捨石マウンド上に沈設された前記重力式基礎の対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程で前記連結用さや管に差し込まれた前記レグを、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化する一体化工程と、を備えることを特徴とする着床式基礎の構築方法である。
【0038】
本発明に係る着床式基礎の構築方法の第8の態様は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に備えるサクション基礎を、水底に設置する基礎設置工程と、前記基礎設置工程で前記水底に設置された前記サクション基礎の前記連結用さや管の高さ位置および傾きを計測する計測工程と、前記計測工程で計測した結果に基づき、必要に応じて、ジャケットのレグの下端、および、前記連結用さや管の前記内空部の下面のうちの一方または両方に、ライナー部材を設置するライナー部材設置工程と、前記ジャケットの前記レグを、前記基礎設置工程で前記水底に設置された前記サクション基礎の前記連結用さや管に差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程で前記連結用さや管に差し込まれた前記レグを、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化する一体化工程と、を備えることを特徴とする着床式基礎の構築方法である。
【0039】
本発明に係る着床式基礎の構築方法の第9の態様は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に複数備えるサクション基礎を、水底に設置する基礎設置工程と、前記基礎設置工程で前記水底に設置された前記サクション基礎の複数の前記連結用さや管の高さ位置および傾きをそれぞれ計測する計測工程と、前記計測工程で計測した結果に基づき、必要に応じて、レグを複数有するジャケットの前記レグの下端、および、前記連結用さや管の前記内空部の下面のうちの一方または両方に、ライナー部材を設置するライナー部材設置工程と、前記ジャケットの複数の前記レグのそれぞれを、前記基礎設置工程で前記水底に設置された前記サクション基礎の対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程で前記連結用さや管に差し込まれた前記レグを、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化する一体化工程と、を備えることを特徴とする着床式基礎の構築方法である。
【0040】
本発明に係る着床式基礎の構築方法の第10の態様は、少なくとも上方が開口している内空部を有する連結用さや管を一体的に備える複数のサクション基礎を、水底に設置する基礎設置工程と、前記基礎設置工程で前記水底に設置された複数の前記サクション基礎の前記連結用さや管の高さ位置および傾きをそれぞれ計測する計測工程と、前記計測工程で計測した結果に基づき、必要に応じて、レグを複数有するジャケットの前記レグの下端、および、前記連結用さや管の前記内空部の下面のうちの一方または両方に、ライナー部材を設置するライナー部材設置工程と、前記ジャケットの複数の前記レグのそれぞれを、前記基礎設置工程で前記水底に設置された前記サクション基礎の対応する前記連結用さや管にそれぞれ差し込む差し込み工程と、前記差し込み工程で前記連結用さや管に差し込まれた前記レグを、自身が差し込まれた前記連結用さや管と一体化する一体化工程と、を備えることを特徴とする着床式基礎の構築方法である。
【0041】
本発明に係る着床式基礎の構築方法の第1〜10の態様において、前記一体化工程で、前記連結用さや管と該連結用さや管に差し込まれた前記レグとの間隙に、グラウト材を充填してもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る着床式基礎および着床式基礎の構築方法によれば、据え付け施工の際に吊り上げや移動が必要となる基礎構造用の部材の重量を軽減することができ、かつ、所望の設置姿勢および高さ位置となるように着床式基礎を据え付け施工しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0045】
(1)第1実施形態
(1−1)第1実施形態の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る着床式基礎10を適用した風力発電用の洋上風車60の正面図であり、
図2は、洋上風車60の着床式基礎10の部位を拡大して示す正面図である。
【0046】
風力発電用の洋上風車60は、着床式基礎10と、風車本体部62とを有して構成されており、風車本体部62が着床式基礎10によって支持されて構成されている。風車本体部62は、風車タワー64と、ハブ66と、ブレード68とを有してなる。
【0047】
本発明の第1実施形態に係る着床式基礎10は、捨石マウンド90の上に配置されたケーソン(重力式基礎)12と、ケーソン(重力式基礎)12に支持されたジャケット14と、を有してなる。ケーソン12は、自身の重量によって設置位置を安定させ、上部構造である風車本体部62を安定的に支持する重力式基礎である。
【0048】
図3は
図2のIII−III線断面図であり、
図4は本第1実施形態に係る着床式基礎10のケーソン12の側面図であり、
図5は同じくケーソン12の外観を示す斜視図であり、
図6は底版コンクリート12Aに埋め込まれた部位も記載(実線で記載)した同じくケーソン12の斜視図である。
【0049】
ケーソン12は、
図3〜6に示すように、全体の形状は平板状であり、上方から見た形状は正方形状である。
図5および
図6に示すように、ケーソン12は、底版コンクリート12Aと、4つの連結用さや管12Bと、外周壁体12Cと、内部隔壁12Dと、を有してなり、
図1に示すように、底版コンクリート12Aの底面が捨石マウンド90の上部に接触するように配置されて、ケーソン12は捨石マウンド90の上に配置されている。
【0050】
正方形状の底版コンクリート12Aの4隅には、連結用さや管12Bが、底版コンクリート12Aの上面から上方に突出するように、かつ、底版コンクリート12Aの下面から下方には突出しないように、底版コンクリート12Aの上面に所定の深さまで埋め込まれている。連結用さや管12Bを底版コンクリート12Aの上面に埋め込む深さは、例えば、底版コンクリート12Aの版厚の半分程度の深さである。
【0051】
連結用さや管12Bは鋼製であり、少なくとも上方が開口している内空部を有する。連結用さや管12Bは、上端部には鋼製の上部フランジ12B1が設けられ、下端部には鋼製の下部フランジ12B2が設けられており、連結用さや管12Bの上端部および下端部は、上部フランジ12B1および下部フランジ12B2によって補強されている。上部フランジ12B1は、連結用さや管12Bの内空部に合わせた貫通孔が中央部に設けられている。一方、下部フランジ12B2は貫通孔を有していない。
【0052】
また、連結用さや管12Bの外周面ならびに上部フランジ12B1および下部フランジ12B2には、I形断面の鋼材である外周壁体12Cの両端部が溶接で一体的に取り付けられている。連結用さや管12Bの上部フランジ12B1および下部フランジ12B2は、連結用さや管12Bの上端部および下端部を補強する役割だけでなく、外周壁体12Cとの連結を強化する役割も有している。また、連結用さや管12Bの下部フランジ12B2は、底版コンクリート12Aから連結用さや管12Bが引き抜かれにくくする役割も有する。
【0053】
底版コンクリート12Aの上面に埋め込まれた連結用さや管12Bの内空部には、上方からジャケット14のレグ14Aが差し込まれ、連結用さや管12Bの内面とレグ14Aとの間隙にはグラウト材が充填されていて一体化されている。したがって、連結用さや管12Bは、ジャケット14をケーソン12と連結する役割を有する。
【0054】
ジャケット14のレグ14Aの下端部(鉛直部14A1)のレグ底板14Eの下面にライナー部材16(
図8および
図9参照)を取り付けて、レグ14Aを連結用さや管12Bの内空部に差し込む差し込み量を調整することにより、ジャケット14を所定の姿勢で所定の高さ位置に配置することができる。
【0055】
なお、連結用さや管12Bならびに上部フランジ12B1および下部フランジ12B2の材質は鋼製でなくてもよく、例えばコンクリート製であってもよい。連結用さや管12Bならびに上部フランジ12B1および下部フランジ12B2として用いることが可能な材質は特には限定されない。
【0056】
また、連結用さや管12Bの下部は円板状の下部フランジ12B2によって塞がれており、連結用さや管12Bの内空部は下方に開口していないが、差し込まれるレグ14Aを十分に支持できるのであれば、下方に開口する所定の大きさの開口を円板状の下部フランジ12B2に設けてもよい。例えば、ジャケット14の製作後で沈設前の保管中に連結用さや管12Bの内空部に水が溜まることを防ぐための水抜きの開口を、円板状の下部フランジ12B2に設けてもよい。
【0057】
外周壁体12CはI形断面の鋼材であり、
図3、
図5および
図6に示すように、底版コンクリート12Aの外周に沿って4つ設けられている。4つの外周壁体12Cは、正方形状の底版コンクリート12Aの4辺とそれぞれ略平行となるように配置されており、底版コンクリート12Aの上面に所定の深さまで埋め込まれて設けられている(
図6参照)。また、前述したように、外周壁体12Cの両端部は、連結用さや管12Bの外周面ならびに上部フランジ12B1および下部フランジ12B2に溶接で一体的に取り付けられている。
【0058】
また、内部隔壁12DはI形断面の鋼材であり、外周壁体12Cに溶接で一体的に取り付けられている。内部隔壁12Dは、外周壁体12Cと同様に、底版コンクリート12Aの上面に所定の深さまで埋め込まれている(
図6参照)。内部隔壁12Dは、その両端部が4つの外周壁体12Cに側方から接して連結するように縦横に配置されている。したがって、4つの外周壁体12Cおよび底版コンクリート12Aの上面で囲まれた空間は、縦横に配置された内部隔壁12Dによって碁盤の目状に区切られて形成された多数の内部区画12Eとなっている。
【0059】
碁盤の目状に区切られて形成された内部区画12Eには、底版コンクリート12Aを捨石マウンド90上に配置した後、中詰め材を投入することができ、ケーソン12の重量を増大させて、着床式基礎10の安定性を向上させることができる。このように、本第1実施形態に係る着床式基礎10のケーソン12は、捨石マウンド90上に配置した後に中詰め材を投入することができる内部区画12Eを有しているので、沈設する前のケーソン12の重量(据え付け施工を行う際のケーソン12の重量)を小さくすることができる。
【0060】
また、ケーソンの据え付け施工における吊り上げや移動に際して、重量の点で問題がなければ、底版コンクリート12Aを厚くして、底版コンクリート12Aの上面が連結用さや管12Bの上部フランジ12B1と同程度の高さ位置になるようにして、内部区画12Eを有さないケーソンにしてもよい。このようにすることで、ケーソンの据え付け施工に際して、ケーソンに中詰め材の投入をしなくてもよくなり、海象条件に大きな影響を受ける海上作業を軽減することができる。
【0061】
外周壁体12Cおよび内部隔壁12Dの材質は鋼製でなくてもよく、例えばコンクリート製であってもよい。外周壁体12Cおよび内部隔壁12Dとして用いることができる材質は特には限定されない。
図5および
図6では、I形断面の鋼材を外周壁体12Cおよび内部隔壁12Dに用いた場合を描いている。
【0062】
なお、
図4において、符号12Dが指す一点鎖線は、内部隔壁12Dの壁厚方向における中心位置を示す一点鎖線である。
【0063】
図7は、本第1実施形態に係る着床式基礎10のジャケット14の側面図である。
【0064】
ジャケット14は、4本のレグ14Aと、ブレース14Bと、補強水平部材14Cと、接合部14Dと、を有してなり、ジャケット14の上方に設置される上部構造(風車本体部62)の自重や上部構造(風車本体部62)に加わる外力(風荷重や地震荷重等)をケーソン12に伝達して、上部構造を安定的に支持する役割を有する。
【0065】
レグ14Aは、円柱状の鋼管であり、ジャケット14が前記役割を果たす上で中心的に働く部材である。ジャケット14にレグ14Aは4本備えられており、上方から見ると、4本のレグ14Aは下方にいくに従って、正方形の対角線方向に広がるように傾斜して配置されている。レグ14Aの鉛直方向に対する傾斜角度は、安全が確認できれば特には限定されないが、本第1実施形態では20°程度にしている。
【0066】
レグ14Aの下端部は鉛直部14A1となっており、鉛直部14A1は長手方向が略鉛直方向となっている。4本のレグ14Aの鉛直部14A1の位置に合わせて、4つの連結用さや管12Bが底版コンクリート12Aに配置されており、4本のレグ14Aの鉛直部14A1は、連結用さや管12Bの内空部にそれぞれ差し込まれている。したがって、レグ14Aと連結用さや管12Bとの連結部は、二重管構造となっている。連結用さや管12Bと該連結用さや管12Bに差し込まれたレグ14Aの鉛直部14A1との間隙にはグラウト材が充填されていて一体化されている。
【0067】
隣り合うレグ14Aの間には、
図7に示すように、ブレース14Bが斜めに交差するように配置されており、ブレース14Bの端部はレグ14Aの外周面に連結されている。ブレース14Bは円柱状の鋼管である。
【0068】
また、隣り合うレグ14Aの間には、
図7に示すように、補強水平部材14Cが水平方向に配置されており、補強水平部材14Cの端部はレグ14Aの外周面(鉛直部14A1よりもやや上方の地点の外周面)に連結されている。補強水平部材14Cは円柱状の鋼管である。
【0069】
ブレース14Bおよび補強水平部材14Cは、ジャケット14が安定的に形状を保つために設けられている補強部材である。
【0070】
本第1実施形態に係る着床式基礎10のジャケット14では、レグ14A、ブレース14Bおよび補強水平部材14Cに円柱状の鋼管を用いたが、レグ14A、ブレース14Bおよび補強水平部材14Cに用いることができる鋼管は円柱状の鋼管に限定されるわけではなく、断面形状が多角形の鋼管を用いることも可能である。
【0071】
接合部14Dは、ジャケット14の上端部に設けられた部位であり、上部構造(風車本体部62)をジャケット14に安定的に連結するための部位である。
【0072】
接合部14Dは、連結用鋼管14D1と、上フランジ14D2と、下フランジ14D3と、ウェブ14D4と、を有してなる。
【0073】
連結用鋼管14D1の上端部には上フランジ14D2が取り付けられており、連結用鋼管14D1の下端部には下フランジ14D3が取り付けられている。連結用鋼管14D1の上フランジ14D2は、上部構造の下端部(風車タワー64の下端部)の同規格のフランジ(図示せず)と、ボルトによるフランジ継手を形成しており、このフランジ継手によって、風車タワー64はジャケット14に連結している。
【0074】
また、上フランジ14D2および下フランジ14D3はレグ14Aとも連結されており、上部構造(風車本体部62)に加わる転倒モーメントは、上フランジ14D2および下フランジ14D3で偶力に変換されてジャケット14へと伝達される。
【0075】
また、ウェブ14D4は、その外周が、連結用鋼管14D1の外周面、上フランジ14D2の下面、下フランジ14D3の上面、およびレグ14Aの外周面に取り付けられており、上部構造(風車本体部62)の自重による鉛直力は、ウェブ14D4でせん断力に変換されてジャケット14へと伝達される。
【0076】
レグ14Aの鉛直部14A1の下端部には、レグ14Aの水平断面の外形に対応する形状の鋼板が溶接により取り付けられていて、レグ底板14Eが形成されている。レグ底板14Eの下面には、
図8(レグ14Aの鉛直部14A1の拡大鉛直断面図)に示すように、ライナー部材16が取り付けられている。レグ底板14Eの下面に所望の厚さのライナー部材16を取り付けることで、レグ14Aの連結用さや管12Bへの差し込み量を調整することができる。レグ底板14Eの上面には補強用の鋼材(図示せず)が十字状に配置されていて、レグ底板14Eは補強されている。
【0077】
図9は、ライナー部材16の分解鉛直断面図であるが、図示の都合上、ボルト18については鉛直断面ではなく、側方から見た側面を描いている。
【0078】
図9に示すように、ライナー部材16は、ベース部材16Aと、ライナー16Bと、押え部材16Cとを有してなる。
【0079】
ベース部材16Aは厚さ方向にネジ孔16A1が設けられた鋼板であり、レグ底板14Eの下面に溶接により取り付けられている。ただし、レグ底板14Eの下面へのベース部材16Aの取り付け方法は溶接に限定されるわけではなく、例えばボルトによって機械的に連結してもよい。
【0080】
ライナー16Bは、厚さの異なる複数種類の鋼板であり、ベース部材16Aのネジ孔16A1の位置に対応するように貫通孔16B1がそれぞれ設けられている。レグ底板14Eの下方に取り付けるライナー16Bの厚さおよび枚数を調整することで、レグ底板14Eの下面に取り付けるライナー部材16のトータルの厚さを調整することができ、レグ14Aの連結用さや管12Bへの差し込み量を調整することができ、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置を適切な状態に調整することができる。
【0081】
ライナー16Bの形状は平板状であればよく、上方より平面視した形状は、多角形状でも円形状でもよい。
【0082】
また、ライナー16Bの貫通孔16B1に替えて、スリットにしてもよい。ライナー16Bの具体的な形状としては、例えば、スリット16D1を有する正方形状のライナー16D(
図10参照)にしてもよく、スリット16E1を有する円形状のライナー16E(
図11参照)にしてもよい。
【0083】
貫通孔16B1に替えて、スリット16D1、16E1にすることにより、ボルト18を完全に外さなくても、緩めることにより、ライナー16D、16Eをベース部材16Aと押え部材16Cとの間に差し込むことができるようになる。このため、水中作業であったとしても、スリット16D1を有するライナー16Dまたはスリット16E1を有するライナー16Eを用いることにより、作業性が向上する。
【0084】
なお、
図10はライナー16Dを上方から見た平面図であり、
図11はライナー16Eを上方から見た平面図であるが、ライナー16D、16Eをそれぞれ固定するボルト18もそれぞれ点線で描いている。
図10および
図11では、ライナー16D、16Eをそれぞれ4本のボルト18で固定しているが、ライナー16D、16Eを固定するボルトの数は4本に限定されるわけではない。
【0085】
押え部材16Cは、ライナー16Bを下方から押える鋼板であり、ボルト18の形状に合わせた貫通孔16C1が、ベース部材16Aのネジ孔16A1の位置に対応するように設けられている。
【0086】
ライナー部材16のトータルの厚さが必要な厚さとなるように、ライナー16Bをベース部材16Aの下面に配置し、ライナー16Bの下面を押え部材16Cによって上方に押える。その状態において、ボルト18を貫通孔16C1、16B1および16A1に挿通させて、ベース部材16Aのネジ孔16A1に螺合することにより、ライナー16Bおよび押え部材16Cをベース部材16Aに取り付けることができる。
【0087】
ライナー部材16の水平断面の外形は、レグ14Aの水平断面の外形と同一形状か、あるいはレグ14Aの水平断面の外形よりも小さい形状になっている。
【0088】
(1−2)第1実施形態に係る着床式基礎の効果
「(1−1)第1実施形態の構成」で説明したように、本発明の第1実施形態に係る着床式基礎10は、ケーソン12と、ジャケット14と、を有してなり、ケーソン12の連結用さや管12Bにジャケット14のレグ14Aの鉛直部14A1を差し込んで連結している。
【0089】
したがって、本第1実施形態に係る着床式基礎10を設置する地点まで、ケーソン12とジャケット14とを別々の部材として運搬することができ、ケーソン12とジャケット14とを別々の部材として据え付けることができる。
【0090】
このため、据え付け施工の際、ケーソン12とジャケット14とを別々に吊り上げて据え付けることができるので、吊り上げる基礎構造用の部材の重量を軽減することができ、吊り上げる作業船に要求される吊り上げ能力を軽減することができる。また、吊り上げて据え付ける対象物の重量が小さくなれば、吊り能力は小さいが海象条件が厳しいときでも使用できるSEP船を用いることができるようになるため、ある程度海象条件が厳しい時(例えば、ある程度風がある日)であっても施工が可能となる。
【0091】
また、運搬の際もケーソン12とジャケット14とを別々の運搬船で運搬できるので、運搬船への負荷も小さくすることができる。
【0092】
また、本第1実施形態に係る着床式基礎10のケーソン12は、捨石マウンド90上に配置した後に中詰め材を投入できる内部区画12Eを有しているので、沈設する前のケーソン12の重量(据え付け施工を行う際のケーソン12の重量)を小さくすることができる。
【0093】
また、ケーソンの据え付け施工における吊り上げや移動に際して、重量の点で問題がなければ、底版コンクリート12Aを厚くして、底版コンクリート12Aの上面が連結用さや管12Bの上部フランジ12B1と同程度の高さ位置になるようにして、内部区画12Eを有さないケーソンにしてもよい。このようにすることで、ケーソンの据え付け施工に際して、ケーソンに中詰め材の投入をしなくてもよくなり、海象条件に大きな影響を受ける海上作業を軽減することができる。
【0094】
また、重力式基礎だけで着床式基礎を構成する場合、着床式基礎を安定させるためには、重力式基礎の重量を大きくするより他には有効な手段を見出すことは困難であるが、本第1実施形態に係る着床式基礎10は、重力式基礎であるケーソン12にジャケット14を組み合わせたハイブリッド構造であるので、重力式基礎だけで着床式基礎を構成する場合よりも設計の自由度が大きくなり、着床式基礎を安定させるための方策の選択肢が多くなる。
【0095】
また、本第1実施形態に係る着床式基礎10を設置する地点にまずケーソン12を設置し、その後にジャケット14を取り付けるので、ケーソン12を設置する捨石マウンド90の状態があまり良くなくても、ジャケット14をケーソン12に取り付ける際に、ジャケット14の設置姿勢が良好となるように調整して取り付けることにより、ジャケット14の設置姿勢を良好にしてジャケット14をケーソン12に取り付けることができる。具体的には、ケーソン12の連結用さや管12Bの高さ位置および傾きを計測して、その計測結果に基づき、トータルの厚さを調整したライナー部材16を、ジャケット14のレグ14Aのレグ底板14Eの下面に陸上で予め取り付ける。これにより、各レグ14Aの連結用さや管12Bへの差し込み量を調整することができ、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置を適切な状態に調整することができる。差し込み量(鉛直部14A1の連結用さや管12Bへの差し込み量)をレグ14Aごとに調整することで、ジャケット14の設置姿勢を良好にして(接合部14Dの上フランジ14D2および下フランジ14D3を水平な状態にして)、かつ、所望の高さ位置となるようにして、ジャケット14をケーソン12に取り付けることができる。
【0096】
したがって、本第1実施形態に係る着床式基礎10を用いることにより、所望の設置姿勢および高さ位置となるように着床式基礎を据え付け施工しやすく、捨石マウンドの水平度や高さの管理負担も大幅に低減させることができる。
【0097】
(1−3)第1実施形態に係る着床式基礎の構築方法
図12〜
図15は、本発明の第1実施形態に係る着床式基礎10を設置する各工程を模式的に示す側面図である。
【0098】
まず据え付け地点の海域までケーソン12を運搬し、
図12に示すように、据え付け地点の捨石マウンド90の上にケーソン12を沈設する。
【0099】
捨石マウンド90の上に沈設したケーソン12の内部区画12Eに中詰め材12Fを投入する。
図13は、ケーソン12の内部区画12Eに中詰め材12Fを投入し終えた後の状態を模式的に示す側面図である。
【0100】
捨石マウンド90の上に沈設したケーソン12の内部区画12Eに中詰め材12Fを投入した後、ジャケット14の据え付け前に、ケーソン12の連結用さや管12Bの高さ位置および傾きを計測して、計測した結果に基づき、必要に応じて、ジャケット14のレグ14Aのレグ底板14Eの下面にライナー部材16を取り付けて、レグ14Aの連結用さや管12Bへの差し込み量を調整して、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置が適正になるようにする。
【0101】
レグ14Aのレグ底板14Eの下面にライナー部材16を取り付けることに替えて、あるいは、レグ14Aのレグ底板14Eの下面にライナー部材16を取り付けるとともに、連結用さや管12Bの内空部の下部にライナー部材を配置して、レグ14Aの連結用さや管12Bへの差し込み量を調整するようにしてもよいが、連結用さや管12Bの内空部の下部にライナー部材を配置するためには水中作業が必要になる。連結用さや管12Bの内空部の下部にライナー部材を配置せず、レグ14Aのレグ底板14Eの下面のみにライナー部材を配置した場合には、水中作業を軽減することができ作業性が向上する。
【0102】
次に、
図14に示すように、4本のレグ14Aの鉛直部14A1がケーソン12の4つの連結用さや管12Bに差し込まれるように、クレーン等で吊り上げつつジャケット14を沈降させる。
【0103】
ジャケット14の沈降終了後、連結用さや管12Bと該連結用さや管12Bに差し込まれたレグ14Aの鉛直部14A1との間にグラウト材を充填して、連結用さや管12Bとレグ14Aの鉛直部14A1とを一体化する。連結用さや管12Bとレグ14Aの鉛直部14A1との一体化が完了すれば、着床式基礎10の設置は完了である。
図15は、着床式基礎10の設置が完了した状態を模式的に示す側面図である。
【0104】
なお、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置を適切な状態に保持するために用いる部材はライナー部材16に限定されるわけではなく、安全が確認できれば、ライナー部材16以外の部材を用いてもよい。
【0105】
また、ジャケット14のケーソン12への据え付け完了後、ライナー部材16は、連結用さや管12Bの内空部に設置されていることになるが、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置を適切な状態に保持するために用いる部材は、連結用さや管12Bの内空部に設置する部材でなくてもよく、連結用さや管32Aの内空部の外に設置する部材でもよい。後述する第2実施形態は、そのような部材を用いた例の1つである。
【0106】
また、連結用さや管12Bとレグ14Aの鉛直部14A1との一体化は、グラウト材の充填以外の方法で行ってもよく、十分に一体化できるのであれば、例えば、溶接でも機械的な連結でもよい。
【0107】
(1−4)第1実施形態に係る着床式基礎の変形例
以上説明した第1実施形態に係る着床式基礎10においては、連結用さや管12Bは、底版コンクリート12Aの上面から上方に突出する一方、下面よりも下方には突出しないように、底版コンクリート12Aの上面に埋め込んだが、連結用さや管12Bが底版コンクリート12Aの上面から上方に突出しないように、即ち、連結用さや管12Bの上端部が底版コンクリート12Aの上面と同じ高さ位置か、あるいは底版コンクリート12Aの上面よりも低い高さ位置となるようにしてもよい。このような配置状態は、連結用さや管12Bが、底版コンクリート12Aの上面と下面との間に収まるように配置されている配置状態である。
【0108】
(2)第2実施形態
図16は、本発明の第2実施形態に係る着床式基礎20の正面図であり、
図17は
図16のXVII部拡大図であり、
図18は
図17のXVIII−XVIII線断面図であり、
図19は
図17のXIX−XIX線断面図である。第1実施形態の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して説明は省略する。
【0109】
第1実施形態に係る着床式基礎10のジャケット14の設置姿勢および高さ位置の調整は、レグ14Aのレグ底板14Eの下面にライナー部材16を取り付けて行ったが、本第2実施形態に係る着床式基礎20は、ジャッキ機構21を備えており、ジャッキ機構21でジャケット14の設置姿勢および高さ位置の調整を行う。
【0110】
ジャッキ機構21は、ジャッキ22と、仮受工23と、仮受部材24と、ライナー部材25とを有してなり、
図16に示すように、ジャケット14の補強水平部材14Cとケーソン12の外周壁体12Cとの間に配置されている。
【0111】
ジャッキ22は、補強水平部材14Cに設けられた仮受工23とケーソン12の外周壁体12Cとの間に配置されていて、上下方向に伸縮して、補強水平部材14Cと外周壁体12Cとの間の距離を調整して、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置の調整を行う。
【0112】
仮受工23は、
図18および
図19に示すように、補強水平部材14Cの下部に取り付けられており、ジャッキ22からの上方向の力を受け止めて、ジャッキ22からの上方向の力をジャケット14の補強水平部材14Cに伝達する。
【0113】
仮受工23は、水平板状体23Aと、第1鉛直板状体23Bと、第2鉛直板状体23Cとを有してなり、水平板状体23Aの上面と補強水平部材14Cの外周面との間に第1鉛直板状体23Bおよび第2鉛直板状体23Cが配置されている。第1鉛直板状体23Bの水平面内における向きは補強水平部材14Cと直交する方向であり、第2鉛直板状体23Cの水平面内における向きは補強水平部材14Cと平行な方向である。水平板状体23Aがジャッキ22から受けた上方向の力は第1鉛直板状体23Bおよび第2鉛直板状体23Cを介してジャケット14の補強水平部材14Cに伝達され、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置を調整する。
【0114】
仮受部材24は、鋼管24Aの上端部に上フランジ24Bが設けられ、下端部に下フランジ24Cが設けられて形成されている。上フランジ24Bには、ベース部材25Aの貫通孔25A1の位置に対応するように貫通孔24B1が設けられている。仮受部材24は、補強水平部材14Cに設けられた仮受工23とケーソン12の外周壁体12Cとの間に配置されていて、かつ、ジャッキ22を水平方向に挟むように配置されている。ジャッキ22が伸長してジャケット14の補強水平部材14Cに上向きの力を加える前の状態において、仮受部材24は、ジャケット14の重量をケーソン12の外周壁体12Cに伝達して、ジャケット14の位置を保持する。この状態において、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置が適正であれば、ジャッキ22を省略することができる。
【0115】
なお、本第2実施形態においては、
図16および
図17に示すように、1つのジャッキ22に対して水平方向に挟むように仮受部材24を2つ配置したが、ジャケット14を安全に支持することができるのであれば、仮受部材24は、1つのジャッキ22に対して水平方向に挟むように2つ配置する必要はなく、1つのジャッキ22に対して水平方向に隣り合うようにどちらか1つを配置するだけでもよい。
【0116】
図20は、ライナー部材25およびそれと関係する部材の分解鉛直断面図であるが、図示の都合上、ボルト26およびナット27については鉛直断面ではなく、側方から見た側面を描いている。
【0117】
図20に示すように、ライナー部材25は、ベース部材25Aと、ライナー25Bとを有してなり、仮受工23の水平板状体23Aと仮受部材24の上フランジ24Bとの間に配置されており、仮受工23の水平板状体23Aと仮受部材24の上フランジ24Bとの間の距離を調整して、ジャケット14の補強水平部材14Cとケーソン12の外周壁体12Cとの間の距離を調整する。
【0118】
ベース部材25Aは、仮受工23の水平板状体23Aの貫通孔23A1の位置に合わせて、厚さ方向に貫通孔25A1が設けられた鋼板であり、仮受工23の水平板状体23Aの下面に、貫通孔23A1、25A1、25B1、24B1を挿通するボルト26およびナット27によって取り付けられている。ただし、水平板状体23Aの下面へのベース部材25Aの取り付け方法はボルト26およびナット27による機械的な取り付けに限定されるわけではなく、例えば溶接によって取り付けてもよい。
【0119】
ライナー25Bは、厚さの異なる複数種類の鋼板であり、ベース部材25Aの貫通孔25A1の位置に対応するように貫通孔25B1がそれぞれ設けられている。ライナー25Bの厚さおよび枚数を調整することで、ライナー部材25のトータルの厚さを調整することができ、仮受工23の水平板状体23Aとケーソン12の外周壁体12Cとの間の距離を調整することができる。そして、それによって、レグ14Aの連結用さや管12Bへの差し込み量を調整することができ、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置を適切な状態に調整することができる。
【0120】
ライナー25Bの形状は平板状であればよく、上方より平面視した形状は、多角形状でも円形状でもよい。
【0121】
また、ライナー25Bの貫通孔25B1に替えて、スリットにしてもよい。ライナー25Bの具体的な形状としては、例えば、スリット25C1を有する正方形状のライナー25C(
図21参照)にしてもよく、スリット25D1を有する円形状のライナー25D(
図22参照)にしてもよい。
【0122】
貫通孔25B1に替えて、スリット25C1、25D1にすることにより、ボルト26を完全に外さなくても、緩めることにより、ライナー25C、25Dをベース部材25Aと仮受部材24の上フランジ24Bとの間に差し込むことができるようになる。このため、水中作業であったとしても、スリット25C1を有するライナー25Cまたはスリット25D1を有するライナー25Dを用いることにより、作業性が向上する。
【0123】
なお、
図21はライナー25Cを下方から見た平面図であり、
図22はライナー25Dを下方から見た平面図であるが、ライナー25C、25Dをそれぞれ固定するボルト26もそれぞれ点線で描いている。
図21および
図22では、ライナー25C、25Dをそれぞれ4本のボルト26で固定しているが、ライナー25C、25Dを固定するボルトの数は4本に限定されるわけではない。
【0124】
ジャッキ機構21を用いてレグ14Aの連結用さや管12Bへの差し込み量を調整する際には、まずジャッキ22を用いて仮受工23の水平板状体23Aとケーソン12の外周壁体12Cとの間の距離を調整し、その状態においてライナー25Bをベース部材25Aと仮受部材24の上フランジ24Bとの間に挿入する。そして、貫通孔23A1、25A1、25B1、24B1を挿通するボルト26およびナット27によって、仮受部材24の上フランジ24B、ライナー25B、ベース部材25Aおよび仮受工23の水平板状体23Aを固定する。その後、ジャッキ22は撤去してもよい。
【0125】
なお、ジャッキ22を撤去して着床式基礎の構築を完了させた状態において、仮受部材24を残置させることにより、ジャケット14やケーソン12の部材強度(特に疲労)に問題が生じるような場合には、仮受部材24も撤去することが望ましい。仮受部材24を撤去する場合は、ジャケット14のレグ14Aの鉛直部14A1とケーソン12の連結用さや管12Bとの一体化が完了した後に行う。
【0126】
本第2実施形態に係る着床式基礎20は、ジャッキ機構21を備えているので、ジャケット14をケーソン12上に配置した後でも、ジャッキ機構21を用いることにより、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置の調整を行うことができる。
【0127】
(3)第3実施形態
(3−1)第3実施形態の構成
図23は、本発明の第3実施形態に係る着床式基礎30を適用した風力発電用の洋上風車80の正面図であり、
図24は、洋上風車80の着床式基礎30の部位を拡大して示す正面図であり、
図25は
図24のXXV−XXV線断面図である。
【0128】
第1および第2実施形態に係る着床式基礎10、20のケーソン12は、重力式基礎であったが、本第3実施形態に係る着床式基礎30では、重力式基礎に替えてサクション基礎を用いた点が、本第3実施形態に係る着床式基礎30の第1および第2実施形態に係る着床式基礎10、20との構造上の大きな相違点となっている。
【0129】
風力発電用の洋上風車80は、着床式基礎30と、風車本体部62とを有して構成されており、風車本体部62が着床式基礎30によって支持されて構成されている。風車本体部62は、風車タワー64と、ハブ66と、ブレード68とを有してなる。
【0130】
本発明の第3実施形態に係る着床式基礎30は、水底92に設置されたサクション基礎32と、サクション基礎32に支持されたジャケット14と、を有してなる。サクション基礎32は、自身の重量およびバラストの重量に加えてサクションによる圧力によって設置位置を安定させて、上部構造である風車本体部62を安定的に支持する基礎である。
【0131】
図26は、本第3実施形態に係る着床式基礎30のサクション基礎32の側面図である。
【0132】
サクション基礎32は、
図24〜
図26に示すように、全体の形状は円柱状であり、上方から見た形状は円である。
図24〜
図26に示すように、着床式基礎30は4つのサクション基礎32を有しており、上方から見ると、4つのサクション基礎32はほぼ正方形の頂点上にそれぞれ配置されている。4つのサクション基礎32は、その上面にそれぞれ1つの連結用さや管32Aを一体的に備えており、着床式基礎30は合計で4つの連結用さや管32Aを備えている。上方から見ると、4つの連結用さや管32Aはほぼ正方形の頂点上にそれぞれ配置されている。
【0133】
サクション基礎32の材質は特には限定されず、例えば鋼製でもコンクリート製でもよい。
【0134】
連結用さや管32Aの形状、材質および機能は、第1実施形態に係る着床式基礎10の連結用さや管12Bと同様であるので説明は省略する。
【0135】
図27は、本第3実施形態に係る着床式基礎30のジャケット14の側面図である。本第3実施形態に係る着床式基礎30で用いるジャケット14およびライナー部材16は、第1実施形態に係る着床式基礎10で用いるジャケット14およびライナー部材16と同様であるので、各構成部材および各部位には同一の符号を付して説明は省略する。
【0136】
(3−2)第3実施形態に係る着床式基礎の効果
本発明の第3実施形態に係る着床式基礎30は、サクション基礎32と、ジャケット14と、を有してなり、サクション基礎32に一体的に取り付けられた連結用さや管32Aにジャケット14のレグ14Aの鉛直部14A1を差し込んで連結している。
【0137】
したがって、本第3実施形態に係る着床式基礎30を設置する地点まで、サクション基礎32とジャケット14とを別々の部材として運搬することができ、サクション基礎32とジャケット14とを別々の部材として据え付けることができる。
【0138】
このため、据え付け施工の際、サクション基礎32とジャケット14とを別々に吊り上げて据え付けることができるので、吊り上げる基礎構造用の部材の重量を軽減することができ、吊り上げる作業船に要求される吊り上げ能力を軽減することができる。また、吊り上げて据え付ける対象物の重量が小さくなれば、吊り能力は小さいが海象条件が厳しいときでも使用できるSEP船を用いることができるようになるため、ある程度海象条件が厳しい時(例えば、ある程度風がある日)であっても施工が可能となる。
【0139】
また、運搬の際もサクション基礎32とジャケット14とを別々の運搬船で運搬できるので、運搬船への負荷も小さくすることができる。
【0140】
また、本第3実施形態に係る着床式基礎30を設置する地点にまずサクション基礎32を設置し、その後にジャケット14を取り付けるので、水底92に設置したサクション基礎32の設置姿勢および高さ位置が設計で見込んだ設置姿勢および高さ位置から少しずれていても、ジャケット14をサクション基礎32に取り付ける際に、ジャケット14の設置姿勢が良好となるように調整して取り付けることにより、ジャケット14の設置姿勢を良好にしてジャケット14をサクション基礎32に取り付けることができる。具体的には、サクション基礎32に取り付けられて一体化された連結用さや管32Aの高さ位置および傾きを計測して、その計測結果に基づき、トータルの厚さを調整したライナー部材16を、ジャケット14のレグ14Aのレグ底板14Eの下面に予め取り付ける。これにより、各レグ14Aの連結用さや管12Bへの差し込み量を調整することができ、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置を適切な状態に調整することができる。差し込み量(鉛直部14A1の連結用さや管12Bへの差し込み量)をレグ14Aごとに調整することで、ジャケット14の設置姿勢を良好にして(接合部14Dの上フランジ14D2および下フランジ14D3を水平な状態にして)、かつ、所望の高さ位置となるようにして、ジャケット14をサクション基礎32に取り付けることができる。
【0141】
したがって、本第3実施形態に係る着床式基礎30を用いることにより、所望の設置姿勢および高さ位置となるように着床式基礎を据え付け施工しやすく、サクション基礎32の水平度や高さの管理負担も大幅に低減させることができる。
【0142】
(3−3)第3実施形態に係る着床式基礎の構築方法
図28〜
図31は、本発明の第3実施形態に係る着床式基礎30を設置する各工程を模式的に示す側面図である。
【0143】
まず据え付け地点の海域までサクション基礎32を運搬し、
図28に示すように、据え付け地点の水域においてサクション基礎32を沈降させ、
図29に示すように、据え付け地点の水底92にサクション基礎32を設置する。
【0144】
据え付け地点の水底92にサクション基礎32を設置した後、ジャケット14の据え付け前に、サクション基礎32の連結用さや管32Aの高さ位置および傾きを計測して、計測した結果に基づき、必要に応じて、ジャケット14のレグ14Aのレグ底板14Eの下面にライナー部材16を取り付けて、レグ14Aの連結用さや管32Aへの差し込み量を調整して、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置が適正になるようにする。
【0145】
レグ14Aのレグ底板14Eの下面にライナー部材16を取り付けることに替えて、あるいは、レグ14Aのレグ底板14Eの下面にライナー部材16を取り付けるとともに、連結用さや管32Aの内空部の下部にライナー部材を配置して、レグ14Aの連結用さや管32Aへの差し込み量を調整するようにしてもよいが、連結用さや管32Aの内空部の下部にライナー部材を配置するためには水中作業が必要になる。連結用さや管32Aの内空部の下部にライナー部材を配置せず、レグ14Aのレグ底板14Eの下面のみにライナー部材を配置した場合には、水中作業を軽減することができ作業性が向上する。
【0146】
次に、
図30に示すように、4本のレグ14Aの鉛直部14A1がサクション基礎32の4つの連結用さや管32Aに差し込まれるように、クレーン等で吊り上げつつジャケット14を沈降させる。
【0147】
ジャケット14の沈降完了後、連結用さや管32Aと該連結用さや管32Aに差し込まれたレグ14Aの鉛直部14A1との間にグラウト材を充填して、連結用さや管32Aとレグ14Aの鉛直部14A1とを一体化する。連結用さや管32Aとレグ14Aの鉛直部14A1との一体化が完了すれば、着床式基礎30の設置は完了である。
図31は、着床式基礎30の設置が完了した状態を模式的に示す側面図である。
【0148】
なお、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置を適切な状態に保持するために用いる部材はライナー部材16に限定されるわけではなく、安全が確認できれば、ライナー部材16以外の部材を用いてもよい。
【0149】
また、ジャケット14のサクション基礎32への据え付け完了後、ライナー部材16は、連結用さや管32Aの内空部に設置されていることになるが、ジャケット14の設置姿勢および高さ位置を適切な状態に保持するために用いる部材は、連結用さや管32Aの内空部に設置する部材でなくてもよく、連結用さや管32Aの内空部の外に設置する部材でもよい。前述した第2実施形態は、そのような部材を用いた例の1つである。
【0150】
また、連結用さや管32Aとレグ14Aの鉛直部14A1との一体化は、グラウト材の充填以外の方法で行ってもよく、十分に一体化できるのであれば、例えば、溶接でも機械的な連結でもよい。
【0151】
(3−4)第3実施形態に係る着床式基礎の変形例
以上説明した第3実施形態に係る着床式基礎30においては、4つのサクション基礎32を有しており、4つのサクション基礎32は、その上面にそれぞれ1つの連結用さや管32Aを一体的に備えており、着床式基礎30は合計で4つの連結用さや管32Aを備えているが、1つのサクション基礎32に4つの連結用さや管32Aを一体的に備えさせるように構成してもよい。
【0152】
(4)連結用さや管の数
第1および第2実施形態に係る着床式基礎10は4つの連結用さや管12Bを備え、第3実施形態に係る着床式基礎30も4つの連結用さや管32Aを備えているが、本発明に係る着床式基礎が備える連結用さや管の数は4つに限定されるわけではなく、安全性が確保できる範囲内で任意の数を選択可能である。