(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非水溶媒が、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、環状エーテル類、鎖状エーテル類及びこれらのフッ化誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の有機溶媒であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の二次電池用電解液。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1]非水系電解液
本発明の二次電池用電解液は、非水溶媒と、一般式(1)で表される化合物および一般式(2)で表される化合物のうち少なくとも一種とを含み、さらに電解質が非水溶媒に溶解されていることが好ましい。なお、本明細書において、一般式(1)で表される化合物のことを、単に、化合物(1)、または、環状ジカルボン酸エステル化合物(1)と記載することがあり、一般式(2)で表される化合物のことを、単に、化合物(2)、または、環状ジカルボン酸エステル化合物(2)と記載することがある。
【0016】
【化3】
(式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、単結合、または、分岐を有していてもよい置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基を示す。ただし、R
1およびR
2が両方とも単結合であることはなく、R
1およびR
2に含まれる炭素原子のうち、環を構成するすべての炭素原子が、それぞれ、少なくとも1つの水素原子と結合している。)、
【0017】
【化4】
(式(2)中、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、単結合、または分岐を有していてもよい置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基を示す。ただし、R
3およびR
4が両方とも単結合であることはなく、かつ、R
3とR
4は異なる基である。)
【0018】
非水電解液に含まれる環状ジカルボン酸エステル(−C(=O)O−結合を2つ有する環状化合物)は、充放電反応時の電気化学的酸化還元反応により分解して、電極活物質表面に被膜を形成し、電解液や支持塩の分解を抑制することができる。これにより、二次電池の長寿命化に効果があると考えられる。本発明者らは、ジカルボン酸エステルを含む非水電解液を備えたリチウムイオン二次電池についてより詳細に鋭意検討した。その結果、式(1)または式(2)で表される環状ジカルボン酸エステルを含む非水電解液を用いると、リチウムイオン二次電池の特性が格段に向上することを見出し、本発明に至った。
【0019】
上述のとおり、本実施形態においては、電解液中に、分子内に−C(=O)O−結合を2つ有する環状ジカルボン酸エステル化合物を添加剤として含む。環状ジカルボン酸エステル化合物は分子内に−C(=O)O−結合を2つ有することにより、負極への親和性が向上し、吸着しやすくなると考えられる。また、分解して皮膜を形成した際、皮膜のイオン導電性が高く低抵抗な皮膜となる。さらに、環構造を有しているため、分解時に開環して負極上で重合できるため、充放電に伴う活物質の膨張収縮が生じても、活物質表面から剥離しにくくなり、安定な皮膜を形成できると考えられる。
【0020】
以下、式(1)で表される化合物について説明する。
【0021】
【化5】
(式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、単結合、または、分岐を有していてもよい置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基を示す。ただし、R
1およびR
2が両方とも単結合であることはなく、R
1およびR
2に含まれる炭素原子のうち、環を構成するすべての炭素原子が、それぞれ、少なくとも1つの水素原子と結合している。)
【0022】
式(1)において、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、単結合、または、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基を示す。ただし、R
1およびR
2が両方とも単結合であることはなく、かつ、R
1およびR
2に含まれる炭素原子のうち、環を構成するすべての炭素原子が、それぞれ、少なくとも1つの水素原子と結合している。
【0023】
式(1)において、アルキレン基は直鎖であっても分岐鎖を有していてもよい。直鎖の場合、アルキレン基は−(CH
2)
n−(nは、1〜5の整数)で表され、−(CH
2)
n−(nは、1〜3の整数)であることが好ましい。
【0024】
分岐鎖を有するアルキレン基は、−(CH
2)
n−(nは、1〜4の整数)で表されるアルキレン基の少なくともひとつの水素原子がアルキル基で置換されており、かつ、R
1およびR
2に含まれる炭素原子のうち、化合物(1)の環を構成するすべての炭素原子が、それぞれ、少なくとも1つの水素原子と結合している(すなわち第四級炭素原子を含まない)。本発明者は、R
1およびR
2に含まれる炭素原子のうち、環を構成するすべての炭素原子が、それぞれ、少なくとも1つの水素原子と結合している化合物を用いると、二次電池のサイクル特性が向上することを見出した。この理由として、R
1およびR
2に含まれる炭素原子のうち、環を構成する炭素原子のすべてが、それぞれ、1つ以上の水素原子と結合していることにより、水素原子と結合していない炭素原子を含む(すなわち、第四級炭素原子を含む)場合に比べて、電極活物質表面における皮膜形成能が向上し、リチウムイオン二次電池の長寿命化の効果が高まるからであると考えられる。
【0025】
式(1)における分岐鎖を有するアルキレン基としては、例えば、−CH(C
mH
2m+1)−(mは1〜4の整数)、−CH
2−CH(CH
3)−、−CH
2−CH(C
2H
5)−、−CH
2−CH(C
3H
7)−、−CH(CH
3)−CH(CH
3)−、−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH〔CH(CH
3)
2〕−および−CH〔C(CH
3)
3〕−等が挙げられ、−CH(C
mH
2m+1)−(mは1〜4の整数)、−CH
2−CH(CH
3)−、−CH(CH
3)−CH(CH
3)−、−CH(CH
3)CH
2CH
2−、および−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−が好ましい。
【0026】
また、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよく、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を挙げることができ、フッ素原子が好ましい。R
1またはR
2が、例えば、フッ素原子を有するフルオロアルキレン基である場合、フルオロアルキレン基は、上記アルキレン基が有する水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていることを意味し、全ての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、フッ素の置換位置および置換数は任意である。
【0027】
式(1)において、R
1は単結合または直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、単結合、メチレン基またはエチレン基であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。R
2は、直鎖アルキレン基または分岐アルキレン基であることが好ましく、直鎖アルキレン基の場合は、−(CH
2)
n−(nは、1〜3の整数)であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。分岐アルキレン基の場合は、分岐鎖としてメチル基を有することが好ましく、例えば、−CH(CH
3)−、−CH
2−CH(CH
3)−、−CH(CH
3)−CH(CH
3)−であることが好ましい。
【0028】
また、式(1)において、R
1およびR
2は、互いに異なる基である方が、化合物(1)が分解しやすく、電極表面に皮膜を形成しやすくなるため好ましい。
【0029】
式(1)で表される化合物の一態様として、下記一般式(4)で表される化合物が好ましく、一般式(6)で表される六員環化合物がより好ましく、式(7)で表される化合物がさらに好ましい。
【0030】
【化6】
(式(4)中、R
6は、分岐を有していてもよい置換または無置換の炭素数1〜5のアルキレン基を示す。ただし、R
6に含まれる炭素原子のうち、環を構成するすべての炭素原子が、それぞれ、少なくとも1つの水素原子と結合している。)
【0031】
式(4)中、R
6は、分岐を有していてもよい無置換の炭素数1〜5のアルキレン基を示すのが好ましい。ただし、R
6に含まれる炭素原子のうち、環を構成するすべての炭素原子が、それぞれ、少なくとも1つの水素原子と結合している。
【0032】
【化7】
(式(6)中、R
7は水素原子、または、分岐を有していてもよい置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
【0034】
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0035】
【化9】
(式(2)中、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、単結合、または、分岐を有していてもよい置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基を示す。ただし、R
3およびR
4が両方とも単結合であることはなく、かつ、R
3とR
4は異なる基である。)
【0036】
式(2)において、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、単結合、または、分岐を有していてもよい置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基を示す。ただし、R
3およびR
4が両方とも単結合であることはなく、かつ、R
3とR
4は異なる基である。
【0037】
R
3およびR
4が異なる基であることにより、R
3およびR
4が同一の基である場合に比べて、化合物が分解しやすく、電極表面に皮膜を形成しやすくなる。
【0038】
式(2)において、アルキレン基は直鎖であっても分岐鎖を有していてもよい。直鎖の場合、アルキレン基は−(CH
2)
n−(nは、1〜5の整数)で表され、−(CH
2)
n−(nは、1〜3の整数)であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。分岐鎖を有するアルキレン基の場合は、−(CH
2)
n−(nは、1〜4の整数)で表されるアルキレン基の少なくともひとつの水素原子がアルキル基で置換されている。分岐鎖を有するアルキレン基としては、例えば、例えば、−CH(C
mH
2m+1)−(mは1〜4の整数)、−CH
2−CH(CH
3)−、−CH
2−CH(C
2H
5)−、−CH
2−CH(C
3H
7)−、−CH(CH
3)−CH(CH
3)−、−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH〔CH(CH
3)
2〕−および−CH〔C(CH
3)
3〕−等が挙げられ、−CH(C
mH
2m+1)−(mは1〜3の整数)が好ましい。
【0039】
式(2)の化合物において、R
3およびR
4に含まれる炭素原子のうち、環を構成するすべての炭素原子が、それぞれ、少なくとも1つの水素原子と結合していることが好ましい。R
3およびR
4に含まれる炭素原子のうち環を構成するすべての炭素原子が、それぞれ、少なくとも1つの水素原子と結合している化合物を用いると、二次電池のサイクル特性が向上しやすい。この理由として、R
3およびR
4に含まれる炭素原子のうち、環を構成する炭素原子のすべてが、それぞれ、1つ以上の水素原子と結合していることにより、水素原子と結合していない炭素原子を含む(すなわち、第四級炭素原子を含む)場合に比べて、電極活物質表面における皮膜形成能が向上し、リチウムイオン二次電池の長寿命化の効果が高まるからであると考えられる。
【0040】
また、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよく、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を挙げることができ、フッ素原子であることが好ましい。R
3またはR
4が、例えば、フッ素原子を有するフルオロアルキレン基である場合、フルオロアルキレン基は、上記アルキレン基が有する水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていることを意味し、全ての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、フッ素の置換位置および置換数は任意である。
【0041】
式(2)において、R
3およびR
4は、一方が単結合または直鎖アルキレン基であり、他方が分岐アルキレン基であることが好ましく、一方が単結合であり、他方が分岐アルキレン基であることがより好ましい。
【0042】
式(2)で表される化合物として、下記一般式(3)で表される化合物が好ましく、下記式(5)で表される化合物がより好ましい。
【0043】
【化10】
(式(3)中、R
5は水素原子、または、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
【0044】
式(3)中、R
5は水素原子、または、無置換の炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
【0046】
一般式(1)または一般式(2)で表される環状ジカルボン酸エステル化合物としては、例えば表1に示す化合物などが挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。なお、本明細書において、表1に記載のNo.11〜No.18の化合物のことを、それぞれ、単に、化合物No.11〜化合物No.18と記載することもある。
【0048】
本実施形態においては、電解液が化合物No.11および/または化合物No.12を含むことが好ましい。
【0049】
なお、化合物No.11および化合物No.12は、新規化合物である。これら化合物の合成方法は後述する。
【0050】
本実施形態においては、非水電解液は、一般式(1)で表される化合物および一般式(2)で表される化合物のうち、一種を単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
【0051】
本実施形態の一般式(1)または一般式(2)で表されるジカルボン酸エステル化合物の電解液中の含有量は、特に制限されるものではないが、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.3〜8.0質量%であることがより好ましく、0.5〜5.0質量%であることがさらに好ましい。本実施形態の化合物の含有量が0.1質量%以上である場合、電極に皮膜を効果的に形成することができ、結果として、非水溶媒の分解を効果的に抑制することができる。また、本実施形態の化合物の含有量が10質量%以下である場合、SEI皮膜の過剰な成長による電池の内部抵抗の上昇を効果的に抑えることができる。
【0052】
電解質として用いられる支持塩としては、特に制限されるものではないが、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、LiBF
4、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、Li(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2等のリチウム塩が挙げられる。支持塩は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
支持塩の電解液中の濃度は、0.5〜1.5mol/lであることが好ましい。支持塩の濃度をこの範囲とすることにより、密度や粘度、電気伝導率等を適切な範囲に調整し易くなる。
【0054】
非水溶媒としては、特に本願発明が制限されるものではないが、非プロトン性溶媒が好ましく、例えば、環状カーボネート類及び鎖状カーボネート類等のカーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、並びにそれらのフッ素誘導体等が挙げられる。これらは、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書において、化合物(1)および化合物(2)に含まれる化合物は、非水溶媒とは異なるものとする。
【0055】
環状カーボネート類としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等が挙げられる。
【0056】
鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等が挙げられる。
【0057】
鎖状の脂肪族モノカルボン酸エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等が挙げられる。
【0058】
γ−ラクトン類としては、例えば、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0059】
環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0060】
鎖状エーテル類としては、例えば、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等が挙げられる。
【0061】
非水溶媒としては、その他にも、例えば、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステル、メチル−2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート、メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、モノフルオロメチルエチレンカーボネート、ジフルオロメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、モノフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。これらは、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
非水溶媒は、カーボネート類を含むことが好ましい。カーボネート類は、環状カーボネート類又は鎖状カーボネート類を含む。カーボネート類は、比誘電率が大きいため電解液のイオン解離性が向上し、さらに、電解液の粘度が下がるのでイオン移動度が向上するという利点を有する。しかし、カーボネート構造を有するカーボネート類を電解液の非水溶媒として用いると、カーボネート類が分解してCO
2を含むガスが発生する傾向がある。とくに積層ラミネート型の二次電池の場合、電池内部でガスが生じると膨れの問題が顕著に現れ、性能低下に繋がりやすい。そこで、本実施形態では、カーボネート類を含む非水溶媒に本実施形態の化合物を添加しておくことにより、本実施形態の化合物により形成されるSEI皮膜がカーボネート類の分解を抑制し、ガスの発生を抑制することができる。したがって、本実施形態において、電解液は本実施形態の化合物に加え、カーボネート類を非水溶媒として含むことが好ましい。このような構成とすることにより、カーボネート類を非水溶媒として用いてもガス発生を低減でき、高い性能を有する二次電池を提供することができる。カーボネート類の電解液中の含有量は、例えば、30体積%以上であり、50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましい。
【0063】
[2]負極
本実施形態の二次電池は、負極活物質を有する負極を備える。負極活物質は負極結着剤によって負極集電体上に結着することができる。
【0064】
例えば、本実施形態の負極は、金属箔で形成される負極集電体と、負極集電体の片面又は両面に塗工された負極活物質層とを有する構成とすることができる。負極活物質層は負極用結着剤によって負極集電体を覆うように形成される。負極集電体は、負極端子と接続する延長部を有するように構成され、この延長部には負極活物質層は塗工されない。
【0065】
負極活物質としては、特に本願発明が制限されるものではないが、例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属(a)、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属酸化物(b)、又はリチウムイオンを吸蔵、放出し得る炭素材料(c)等が挙げられる。負極活物質は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
金属(a)としては、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La、またはこれらの2種以上の合金等が挙げられる。また、これらの金属又は合金は2種以上混合して用いてもよい。また、これらの金属又は合金は1種以上の非金属元素を含んでもよい。これらの中でも、負極活物質としてシリコン、スズ、又はこれらの合金を用いることが好ましい。シリコン又はスズを負極活物質として用いることにより、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
【0067】
金属酸化物(b)としては、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはこれらの複合物等が挙げられる。これらの中でも、負極活物質として酸化シリコンを用いることが好ましい。また、金属酸化物(b)は、窒素、ホウ素およびイオウの中から選ばれる一種または二種以上の元素を、例えば0.1〜5質量%含有することができる。
【0068】
炭素材料(c)としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、またはこれらの複合物等が挙げられる。
【0069】
負極結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの中でも、結着性が強いことから、ポリフッ化ビニリデンまたはスチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。負極結着剤の量は、負極活物質100質量部に対して、0.5〜25質量部であることが好ましく、1〜8質量部であることがより好ましく、また、1〜5質量部であることも好ましい。
【0070】
負極集電体としては、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、クロム、銅、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、例えば、箔、平板状、メッシュ状等が挙げられる。
【0071】
負極は、負極集電体上に、負極活物質と負極結着剤を含む負極活物質層を形成することにより作製することができる。負極活物質層の形成方法としては、例えば、ドクターブレード法、ダイコーター法、CVD法、スパッタリング法等が挙げられる。予め負極活物質層を形成した後に、該負極活物質層の上に、蒸着、スパッタ等の方法でアルミニウム、ニッケルまたはそれらの合金の薄膜を形成し、負極を作製してもよい。
【0072】
[3]正極
本実施形態の二次電池は、正極活物質を有する正極を備える。正極活物質は正極結着剤によって正極集電体上に結着することができる。
【0073】
例えば、本実施形態の正極は、金属箔で形成される正極集電体と、正極集電体の片面又は両面に塗工された正極活物質層とを有する構成とすることができる。正極活物質層は正極用結着剤によって正極集電体を覆うように形成される。正極集電体は、正極端子と接続する延長部を有するように構成され、この延長部には正極活物質層は塗工されない。
【0074】
正極活物質としては、特に本願発明が制限されるものではないが、リチウムを吸蔵、放出できるリチウム含有複合酸化物が好ましく、例えば、LiMnO
2、Li
xMn
2O
4(0<x<2)等の層状構造を持つマンガン酸リチウムまたはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム、またはこれらのマンガン酸リチウムのMnの一部をLi、Mg、Al、Co、B、Ti、Znからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素で置き換えたもの;LiCoO
2等のコバルト酸リチウム、またはコバルト酸リチウムのCoの一部をNi、Al、Mn、Mg、Zr、Ti、Znからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素で置き換えたもの;LiNiO
2等のニッケル酸リチウム、またはニッケル酸リチウムのNiの一部をCo、Al、Mn、Mg、Zr、Ti、Znからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素で置き換えたもの;LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2などの特定の遷移金属が半数を超えないリチウム遷移金属酸化物、または該リチウム遷移金属酸化物の遷移金属の一部をCo、Al、Mn、Mg、Zrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素で置き換えたもの;これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの等が挙げられる。特に、リチウム複合酸化物としては、Li
αNi
βCo
γAl
δO
2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)、またはLi
αNi
βCo
γMn
δO
2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.5、γ≦0.4)、またはこれらの複合酸化物の遷移金属の一部をAl、Mg、Zrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素で置き換えたものが好ましい。これらのリチウム複合酸化物は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
中でも、高エネルギー密度化の観点からは、高容量の化合物を含むことが好ましい。高容量の化合物としては、リチウム酸ニッケル(LiNiO
2)またはリチウム酸ニッケルのNiの一部を他の金属元素で置換したリチウムニッケル複合酸化物が挙げられ、下式(A)で表される層状リチウムニッケル複合酸化物が好ましい。
【0076】
Li
yNi
(1−x)M
xO
2 (A)
(但し、0≦x<1、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)
【0077】
熱安定性の観点では、Niの含有量が0.5を超えないこと、即ち、式(A)において、xが0.5以上であることも好ましい。また特定の遷移金属が半数を超えないことも好ましい。このような化合物としては、Li
αNi
βCo
γMn
δO
2(0<α≦1.2、好ましくは1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、0.2≦β≦0.5、0.1≦γ≦0.4、0.1≦δ≦0.4)が挙げられる。より具体的には、LiNi
0.4Co
0.3Mn
0.3O
2(NCM433と略記)、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2(NCM523と略記)、LiNi
0.5Co
0.3Mn
0.2O
2(NCM532と略記)など(但し、これらの化合物においてそれぞれの遷移金属の含有量が10%程度変動したものも含む)を挙げることができる。
【0078】
また、高容量の観点では、Niの含有量が高いこと、即ち式(A)において、xが0.5未満が好ましく、さらに0.4以下が好ましい。このような化合物としては、例えば、Li
αNi
βCo
γMn
δO
2(0<α≦1.2、好ましくは1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)、Li
αNi
βCo
γAl
δO
2(0<α≦1.2、好ましくは1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)などが挙げられ、特に、LiNi
βCo
γMn
δO
2(0.75≦β≦0.85、0.05≦γ≦0.15、0.10≦δ≦0.20)が挙げられる。より具体的には、例えば、LiNi
0.8Co
0.05Mn
0.15O
2、LiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、LiNi
0.8Co
0.1Al
0.1O
2等を好ましく用いることができる。
【0079】
また、式(A)で表される化合物を2種以上混合して使用してもよく、例えば、NCM532またはNCM523とNCM433とを9:1〜1:9の範囲(典型的な例として、2:1)で混合して使用することも好ましい。さらに、式(A)においてNiの含有量が高い材料(xが0.4以下)と、Niの含有量が0.5を超えない材料(xが0.5以上、例えばNCM433)とを混合することで、高容量で熱安定性の高い電池を構成することもできる。
【0080】
また、正極活物質としては、高電圧が得られるという観点から、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質(以下、5V級活物質とも称す)を用いることができる。
【0081】
5V級活物質としては、例えば、下記式(A)で表されるリチウムマンガン複合酸化物を用いることができる。
【0082】
Li
a(M
xMn
2−x−yY
y)(O
4−wZ
w) (A)
(式(A)中、0.4≦x≦1.2、0≦y、x+y<2、0≦a≦1.2、0≦w≦1である。MはCo、Ni、Fe、Cr及びCuからなる群より選ばれる少なくとも一種である。Yは、Li、B、Na、Mg、Al、Ti、Si、K及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種である。Zは、F及びClからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)
【0083】
また、5V級活物質としては、十分な容量を得ることと高寿命化との観点から、このような金属複合酸化物の中でも、下記式(B)で表されるスピネル型化合物が好ましく用いられる。
【0084】
LiNi
xMn
2−x−yA
yO
4 (B)
(式(B)中、0.4<x<0.6、0≦y<0.3、Aは、Li、B、Na、Mg、Al、Ti及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)
【0085】
式(B)中、0≦y<0.2であることがより好ましい。
【0086】
このような化合物の例としては、例えば、Li
xMn
1.5Ni
0.5O
4(0<x<2)等が挙げられる。
【0087】
また、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質としては、Si複合酸化物が挙げられる。このようなSi複合酸化物としては、例えば、下記式(C)で示される化合物が挙げられる。
【0088】
Li
2MSiO
4 (C)
(式(C)中、Mは、Mn、Fe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)
【0089】
また、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質は、層状構造を有していてもよい。層状構造を含む5V級活物質としては、例えば、下記式(D)で示される化合物が挙げられる。
【0090】
Li(M1
xM2
yMn
1−x−y)O
2 (D)
(式(D)中、M1は、Ni、Co及びFeからなる群より選ばれる少なくとも一種である。M2は、Li、Mg及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種である。0.1<x<0.5、0.05<y<0.3)。
【0091】
また、5V級活物質としては、下記(E)〜(G)で示されるリチウム金属複合酸化物を用いることができる。
【0092】
LiMPO
4 (E)
(式(E)中、Mは、Co及びNiからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)。
【0093】
式(E)で表されるオリビン型の5V活物質としては、例えば、LiCoPO
4、又はLiNiPO
4が挙げられる。
【0094】
Li(M
yMn
z)O
2 (F)
(式(F)中、0.1≦y≦0.67でありy≦0.5が好ましく、0.33≦z≦0.9でありz≦0.7が好ましく、y+z=1であって、Mは、Li、Co及びNiからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)。
【0095】
Li(Li
xM
yMn
z)O
2 (G)
(式(G)中、0.1≦x<0.3、0.1≦y≦0.4、0.33≦z≦0.7、x+y+z=1であって、Mは、Li、Co及びNiからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)。
【0096】
上記に記載した正極活物質はいずれも、1種を単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0097】
正極結着剤としては、負極結着剤で挙げた材料と同様のものを用いることができる。中でも、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。正極結着剤の量は、正極活物質100質量部に対して、2〜10質量部であることが好ましい。
【0098】
正極集電体としては、負極集電体で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
【0099】
正極活物質を含む正極活物質層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子等が挙げられる。
【0100】
[4]セパレータ
セパレータとしては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の多孔質フィルムや不織布を用いることができる。また、セパレータとしては、それらを積層したものを用いることもできる。
【0101】
一例として、セパレータとしては、有機材料からなるウェブおよびシート、例えば、ポリアミド、ポリイミド、セルロースなどの織布、不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリアミド、ポリイミド、多孔性ポリフッ化ビニリデン膜等の多孔性ポリマー膜、またはイオン伝導性ポリマー電解質膜等を用いることができる。これらは単独または組み合わせで使用することができる。
【0102】
また、セパレータとして、セラミックやガラスなどの無機材料からなるセパレータを使用することもできる。無機セパレータとしては、アルミナ、アルミナ−シリカ、チタン酸カリウム等のセラミック短繊維からなる不織布セパレータ、または、織物、不織布、多孔質のフィルムからなる基材と耐熱性含窒素芳香族重合体およびセラミック粉末を含む層とからなるセパレータ、または、表面の一部に耐熱層が設けられており、この耐熱層が、セラミック粉末を含有する多孔質薄膜層、耐熱性樹脂の多孔質薄膜層、またはセラミック粉末と耐熱性樹脂の複合体からなる多孔質薄膜層セパレータ、または、セラミック物質の1次粒子の一部が焼結もしくは溶解再結晶結合されてなる2次粒子がバインダーによって結合されてなる多孔膜の層を備えるセパレータ、または、ポリオレフィン多孔質膜から成る基材層と、この基材層の片面又は両面に形成された耐熱絶縁層を備え、この耐熱絶縁層が、耐酸化性セラミックス粒子と耐熱性樹脂を含むセパレータ、または、セラミックス物質とバインダーが結合して形成される多孔性膜を含み、セラミックス物質として、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコニウム酸化物(ZrO
2)、チタン酸化物(TiO
2)、シリコン(Si)の窒化物、アルミニウム(Al)の水酸化物、ジルコニウム(Zr)のアルコキシド化物、チタン(Ti)のケトン化合物を用いたセパレータ、または、ポリマー基材と、このポリマー基材に形成されたAl
2O
3、MgO、TiO
2、Al(OH)
3、Mg(OH)
2、Ti(OH)
4のセラミック含有コーティング層を含むセパレータなどが挙げられる。
【0103】
[5]外装体
外装体は、特に制限されるものではないが、例えば、ラミネートフィルムを用いることができる。例えば積層ラミネート型の二次電池の場合、アルミニウム、シリカをコーティングしたポリプロピレン、ポリエチレン等のラミネートフィルムを用いることができる。
【0104】
外装体としてラミネートフィルムを用いた二次電池の場合、外装体として金属缶を用いた二次電池に比べて、ガスが発生すると電極積層体の歪みが非常に大きくなる。これは、ラミネートフィルムが金属缶に比べて二次電池の内圧により変形しやすいためである。さらに、外装体としてラミネートフィルムを用いた二次電池を封止する際には、通常、電池内圧を大気圧より低くするため、内部に余分な空間がなく、ガスが発生した場合にそれが直ちに電池の体積変化や電極積層体の変形につながりやすい。しかし、本実施形態に係る二次電池は、本実施形態の化合物を含む電解液を用いることにより、このような問題を克服することができる。
【0105】
[6]二次電池
本実施形態の非水電解液を用いた二次電池(好ましくはリチウムイオン二次電池)は、たとえば
図1のような構造を有する。正極は、正極活物質を含有する層1が正極集電体3上に成膜されたものであり、負極は、負極活物質を含有する層2が負極集電体4上に成膜されたものである。これらの正極と負極は、多孔質セパレータ5を介して対向配置されている。多孔質セパレータ5は、負極活物質を含有する層2に対して略平行に配置されている。二次電池は、これら正極および負極が対向配置された電極素子(「電池要素」とも記載する)と、電解液とが外装体6および7に内包されている。正極集電体3には正極タブ9が接続され、負極集電体4には負極タブ8が接続され、これらのタブは容器の外に引き出されている。
図2に示すように、電極素子は、複数の正極及び複数の負極がセパレータを介して積層された構成であってもよい。また、正極活物質層1及び負極活物質層2は、それぞれ、集電体の両面に設けられていてもよい。本実施形態に係る非水電解液二次電池の形状としては、特に制限はないが、例えば、ラミネート外装型、円筒型、角型、コイン型などがあげられる。
【0106】
別の態様としては、
図3および
図4のような構造の二次電池としてもよい。この二次電池は、電池要素20と、それを電解質と一緒に収容するフィルム外装体10と、正極タブ51および負極タブ52(以下、これらを単に「電極タブ」ともいう)とを備えている。
【0107】
電池要素20は、
図4に示すように、複数の正極30と複数の負極40とがセパレータ25を間に挟んで交互に積層されたものである。正極30は、金属箔31の両面に電極材料32が塗布されており、負極40も、同様に、金属箔41の両面に電極材料42が塗布されている。なお、本発明は、必ずしも積層型の電池に限らず捲回型などの電池にも適用しうる。
【0108】
図1の二次電池は電極タブが外装体の両側に引き出されたものであったが、本発明を適用しうる二次電池は
図3のように電極タブが外装体の片側に引き出された構成であってもよい。詳細な図示は省略するが、正極および負極の金属箔は、それぞれ、外周の一部に延長部を有している。負極金属箔の延長部は一つに集められて負極タブ52と接続され、正極金属箔の延長部は一つに集められて正極タブ51と接続される(
図4参照)。このように延長部どうし積層方向に1つに集めた部分は「集電部」などとも呼ばれる。
【0109】
フィルム外装体10は、この例では、2枚のフィルム10−1、10−2で構成されている。フィルム10−1、10−2どうしは電池要素20の周辺部で互いに熱融着されて密閉される。
図3では、このように密閉されたフィルム外装体10の1つの短辺から、正極タブ51および負極タブ52が同じ方向に引き出されている。
【0110】
当然ながら、異なる2辺から電極タブがそれぞれ引き出されていてもよい。また、フィルムの構成に関し、
図3、
図4では、一方のフィルム10−1にカップ部が形成されるとともに他方のフィルム10−2にはカップ部が形成されていない例が示されているが、この他にも、両方のフィルムにカップ部を形成する構成(不図示)や、両方ともカップ部を形成しない構成(不図示)なども採用しうる。
【実施例】
【0111】
以下、本実施形態を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
(実施例1)
(電極の作製)
<負極>
負極活物質として、黒鉛を用いた。この負極活物質と、導電補助材としてのアセチレンブラックと、負極結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを、75:20:5の質量比で計量した。そして、これらをN−メチルピロリドンと混合して、負極スラリーを調製した。負極スラリーを厚さ10μmの銅箔に塗布した後に乾燥し、さらに窒素雰囲気下で120℃の熱処理を行うことで、負極を作製した。
【0113】
<正極>
正極活物質として、Li(Ni
0.5Co
0.2Mn
0.3)O
2を用いた。この正極活物質と、導電補助材としてのカーボンブラックと、正極結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを、90:5:5の質量比で計量した。そして、これらをN−メチルピロリドンと混合して、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミ箔に塗布した後に乾燥し、さらにプレスすることで、正極を作製した。
【0114】
<電極積層体>
得られた正極の3層と負極の4層を、セパレータとしてのポリプロピレン多孔質フィルムを挟みつつ交互に重ねた。正極活物質に覆われていない正極集電体および負極活物質に覆われていない負極集電体の端部をそれぞれ溶接した。さらに、その溶接箇所に、アルミニウム製の正極端子およびニッケル製の負極端子をそれぞれ溶接して、平面的な積層構造を有する電極積層体を得た。
【0115】
<電解液>
非水電解液の溶媒としてEC(エチレンカーボネート)とDEC(ジエチルカーボネート)の混合溶媒(体積比:EC/DEC=30/70)を用い、支持電解質としてLiPF
6を非水電解液中1Mとなるように溶解した。
【0116】
添加剤として、表1に記載の化合物No.11を非水電解液中1.0重量%加えて、非水電解液を調製した。この非水電解液を用いて非水二次電池を作製し、充放電サイクル試験を200サイクル行った。
【0117】
なお、No.11の化合物は以下の方法で合成した。窒素雰囲気下、L−乳酸リチウム76.23gの脱水テトラヒドロフラン(THF)560ml懸濁液を−8℃に冷却した。この懸濁液にトリホスゲン158.36gの脱水THF270ml溶液を滴下した。その後、室温で3時間撹拌した。テトラヒドロフランを減圧留去し、ジエチルエーテル1500mlを加えた。析出した固体をろ過で除き、ろ液を減圧留去した。残渣に種晶を加え固化させた後、t−ブチルメチルエーテル30mlを加え、氷水浴で冷やしながら撹拌した。析出した結晶をろ過し、得られた結晶をt−ブチルメチルエーテルに加熱溶解し、冷凍庫内で一晩放置した。析出した結晶をろ取し、冷却したt−ブチルメチルエーテルで洗浄、乾燥して目的物を得た。
【0118】
<二次電池>
電極積層体を外装体としてのアルミニウムラミネートフィルム内に収容し、外装体内部に電解液を注入した。その後、0.1気圧まで減圧しつつ外装体を封止し、二次電池を作製した。
【0119】
<評価>
(45℃における容量維持率)
作製した二次電池に対し、45℃に保った恒温槽中で、2.5Vから4.2Vの電圧範囲で充放電を繰り返す試験を行い、サイクル維持率(容量維持率)(%)について評価した。充電は、1Cで4.2Vまで充電した後、合計で2.5時間定電圧充電を行った。放電は、1Cで2.5Vまで定電流放電した。
【0120】
「容量維持率(%)」は、(200サイクル後の放電容量)/(1サイクル後の放電容量)×100(単位:%)で算出した。結果を表2に示す。
【0121】
(実施例2)
非水電解液に用いる添加剤としてNo.11の代わりに、表1に記載の化合物No.12を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0122】
なお、No.12の化合物は以下の方法で合成した。反応容器にエチレングリコール20.0g、ピリジン127.4g、脱水THF1600mlをしこみ、5℃以下に冷却した後、二塩化オキサリル45.0gを溶かした脱水THF溶液40mlを滴下し、2時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、ろ上物を脱水THFで洗浄し、ろ洗液を減圧濃縮した。残渣をクゲルロールで蒸留し、100℃〜160℃/20Paの留分を分取し、クロロホルム/ヘキサン(5ml/5ml)で洗浄、減圧乾燥して無色結晶の目的物を得た。
【0123】
(実施例3)
非水電解液に用いる添加剤としてNo.11の代わりに、表1に記載のNo.13を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0124】
(実施例4)
非水電解液に用いる添加剤としてNo.11の代わりに、表1に記載のNo.14を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0125】
(実施例5)
非水電解液に用いる添加剤としてNo.11の代わりに、表1に記載のNo.15を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0126】
(実施例6)
非水電解液に用いる添加剤としてNo.11の代わりに、表1に記載の化合物No.16を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0127】
(実施例7)
非水電解液に用いる添加剤としてNo.11の代わりに、表1に記載のNo.17を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0128】
(実施例8)
非水電解液に用いる添加剤としてNo.11の代わりに、表1に記載のNo.18を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0129】
(比較例1)
非水電解液に用いる添加剤としてNo.11の代わりに、γ−ブチロラクトン(γ−BL)を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0130】
(比較例2)
非水電解液に用いる添加剤としてNo.11の代わりに、コハク酸ジメチルを用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0131】
(比較例3)
非水電解液に添加剤を加えずに用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、充放電サイクル試験を200サイクル行った。結果を表2に示す。
【0132】
(比較例4)
非水電解液に用いる添加剤としてNo.11の代わりに、下記化合物No.19を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0133】
【化12】
【0134】
(比較例5)
非水電解液に用いる添加剤として、No.11の代わりに、1,4−ジオキサン−2,5−ジオンを電解液中1.0重量%加えた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0135】
(比較例6)
非水電解液に用いる添加剤として、No.11の代わりに、3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオンを電解液中1.0重量%加えた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0136】
【表2】
【0137】
(サイクル試験の評価結果)
上述のとおり、非水電解液の溶媒としてECとDECの混合溶媒(体積比:30/70)中に、支持電解質としてLiPF6を1mol/Lを加え、さらに、添加剤として化合物No.11〜No.18を添加した非水電解液を備えたリチウム二次電池を作製し、これを用いてサイクル試験を行った(実施例1〜8)。比較対象として非水電解液中にモノカルボン酸エステルであるγ−ブチロラクトンを添加した場合(比較例1)、鎖状ジカルボン酸エステルであるコハク酸ジメチルを添加した場合(比較例2)、いずれの添加剤も添加しない場合(比較例3)、環を構成する炭素原子として、水素と結合していない炭素原子を含むNo.19の化合物を添加した場合(比較例4)、式(2)のR
3とR
4が同じ基である化合物を添加した場合(比較例5、6)についても、同時にサイクル試験を行った。
【0138】
実施例1〜8の結果から、非水電解液に環状ジカルボン酸エステルを添加した場合は、比較例1〜6と比べて良好な容量維持率を示すことがわかった。特に実施例1および実施例2では、容量維持率が顕著に向上した。