(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2エフェクト処理が前記入力された楽音データに対して前記第2エフェクトを付与している間、前記第1エフェクト処理は前記入力された楽音データに対して前記第1エフェクトを付与しないことを特徴とする請求項1記載の効果付与装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
A.全体構成
図1は、本発明の一実施形態による電子楽器100の全体構成を示すブロック図である。この図において、鍵盤10は演奏入力操作(押離鍵操作)に応じたキーオン/キーオフ信号、鍵番号およびベロシティ等からなる演奏入力情報を発生する。鍵盤10が発生する演奏入力情報は、CPU13においてMIDI形式のノートオン/ノートオフイベントに変換された後、音源部16に供給される。
【0011】
操作部11は、装置電源をパワーオン/パワーオフする電源スイッチの他、例えば自動演奏する曲を選択する曲選択スイッチ、自動演奏の開始・停止を指示するスタート・ストップスイッチの他、
図1(b)に図示するAエフェクトスイッチASおよびBエフェクトスイッチBSを備え、これら各スイッチ操作に応じた種類のスイッチイベントを発生する。操作部11が発生する各種スイッチイベントはCPU13に取り込まれる。
【0012】
なお、
図1(b)に図示するAエフェクトスイッチASは、押下に応じてフィルタ処理と呼ばれるエフェクトの実行を指示する。フィルタ処理とは、AエフェクトスイッチASの押下時点からある程度の時間、周期性信号(LFO信号)の位相に応じてカットオフ周波数を経時変化させるローパスフィルタリングを発生楽音に施すものである。フィルタ処理が実行される期間は、例えばテンポ同期ならば実行期間に相当する拍数が予めROM14やRAM15に設定されているものとする。また、BエフェクトスイッチBSは、押下してから離されるまでの間、フランジャーと呼ばれるエフェクトの実行を指示する。フランジャーについては追って詳述する。
【0013】
表示部12は、液晶表示パネルおよび表示ドライバ等から構成され、CPU13から供給される表示制御信号に応じて、楽器各部の設定状態や動作状態などを画面表示する。CPU13は、操作部11から供給される各種スイッチイベントに基づき装置各部の動作状態を設定する他、鍵盤10から供給される演奏入力情報に基づき音源部16に楽音波形データWの発生を指示したり、スタート・ストップスイッチの押下操作に応じて音源部16に自動演奏の開始・停止を指示したりする。また、CPU13は、音源部16がシステムリソース上の制約から単一のエフェクトのみ付与し得る構成である場合に、後述するエフェクト処理を実行して当該音源部16において同時に付与可能なエフェクトの種類を見掛け上増やすようになっている。
【0014】
ROM14は、
図2(a)に図示するように、プログラムエリアPAおよび曲データエリアMDAを備える。ROM14のプログラムエリアPAには、CPU13にロードされる各種制御プログラムや、後述するエフェクト部161(
図3参照)に転送するDSPパラメータA,B等が格納される。各種制御プログラムとは、後述するエフェクト処理を含む。DSPパラメータA,Bが意図するところについては追って述べる。
【0015】
ROM14の曲データエリアMDAには、複数の曲のシーケンスデータSD(1)〜SD(N)が記憶される。これら複数の曲のシーケンスデータSD(1)〜SD(N)は、前述した曲選択スイッチ操作に応じて、自動演奏に供する曲データとしていずれかが選択される。
【0016】
RAM15は、
図2(b)に図示するように、シーケンスデータエリアSDAおよびワークエリアWAを備える。RAM15のシーケンスデータエリアSDAには、曲選択スイッチ操作で選択された番号nのシーケンスデータSD(n)が、ROM14の曲データエリアMDAから読み出されて格納される。
【0017】
なお、シーケンスデータSD(n)は、データ形式を示すフォーマットおよび分解能を表すタイムベース等を格納するヘッダと、曲名やテンポ(BPM)、拍子等を格納するシステムトラックと、各楽器パートに対応付けられ、該当する楽器パートを構成する各音符の音高や発音タイミングを表す演奏データを格納する複数の演奏トラックとから構成される。
【0018】
RAM15のワークエリアWAは、CPU13の制御の下にROM14から転送されるDSPパラメータA,Bを一時記憶する。なお、DSPパラメータA,Bは、システムイニシャライズ時にROM14のプログラムエリアPAから読み出されてRAM15のワークエリアWAに格納される。
【0019】
また、このワークエリアWAでは、CPU13の処理に用いられる各種レジスタ・フラグデータとして、例えばフィルタフラグFFやLFO情報DLを一時記憶する。フィルタフラグFFは、フィルタ処理の実行中に「1」、フィルタ処理の完了で「0」となるフラグである。LFO情報DLは、フィルタ処理のLFOの現在の位相や角速度、実行期間を含む。
【0020】
次に、再び
図1を参照して電子楽器100の構成について説明を進める。
図1において、音源部16は、波形演算する公知のDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)から構成される。この音源部16は、DSPにおいて実行されるマイクロプログラムの各機能をハードウェアイメージとして捉えた場合、
図3(a)に図示する通り、波形発生部160およびエフェクト部161を備える。こうした音源部16の構成については追って述べる。サウンドシステム17は、音源部16から出力される楽音データWをアナログ形式の楽音信号に変換し、当該楽音信号から不要ノイズを除去する等のフィルタリングを施した後、これを増幅してスピーカ(不図示)から発音させる。
【0021】
B.音源部16(波形発生部160およびエフェクト部161)の構成
次に、
図3(a)を参照して音源部16(波形発生部160およびエフェクト部161)の構成を説明する。なお、
図3(a)は、上述したように、DSPにおいて実行されるマイクロプログラムの各機能をハードウェアイメージとして捉えた機能的構成を示すブロック図である。
【0022】
波形発生部160は、公知の波形メモリ読み出し方式にて構成される複数の発音チャンネルを備える。波形発生部160は、CPU13から供給され、演奏入力情報に基づくノートオン/ノートオフイベントに応じた楽音データWを発生したり、自動演奏進行中であれば、CPU13がRAM15のシーケンスデータエリアSDAから読み出すシーケンスデータSDに基づき各演奏トラック(楽器パート)毎の楽音データWを再生する。
【0023】
エフェクト部161は、波形発生部160から出力される楽音データWにエフェクト(効果)を付与する。このエフェクト部161では、同時に複数種のエフェクトを付与することが出来ず、単一のエフェクトのみ付与する。すなわち、エフェクト部161は、CPU13から供給されるDSPパラメータに含まれるマイクロプログラムによって所定の機能的構成を形成する。
【0024】
具体的には、CPU13がRAM15のワークエリアWAから読み出したDSPパラメータAを音源部16(DSP)に供給した場合、エフェクト部161は、
図3(b)に図示する構成を形成する。
図3(b)において、LFO161aは、DSPパラメータAに含まれるレートおよび周期に従ったLFO信号を、フィルタ処理実行期間中発生する。
【0025】
DCF161bは、例えばFIRフィルタから構成され、上記LFO161aから出力されるLFO信号に応じてカットオフ周波数fcを経時変化させるローパス特性を有する。したがって、こうした構成のエフェクト部161では、入力端INから入力される楽音データWに対し、LFO信号に応じてカットオフ周波数fcが経時変化するローパスフィルタリングを施し、これにより楽音データWに音色変化を与えるエフェクト(フィルタ処理)を付与する。
【0026】
また、CPU13がRAM15のワークエリアWAから読み出したDSPパラメータBを音源部16(DSP)に供給した場合、エフェクト部161は、
図3(c)に図示する構成を形成する。
図3(c)において、加算器162aは、入力端INから入力される楽音データWと、Nサンプル遅延回路162cから出力されるNサンプル遅延信号とを加算して当該Nサンプル遅延回路162cに帰還入力する。
【0027】
LFO162bは、DSPパラメータBに含まれるレートおよび周期に従ったLFO信号を発生する。Nサンプル遅延回路162cは、加算器162aの出力に対してLFO信号に応じたNサンプル遅延を施したNサンプル遅延信号を出力する。加算器162dは、入力端INから入力される楽音データWと、Nサンプル遅延回路162cから出力されるNサンプル遅延信号とを加算して出力端OUTに供給する。上記構成によれば、LFO変調によりNサンプル遅延された楽音データWを原音(入力された楽音データW)に加算することでフランジャーと呼ばれるエフェクトを付与する。
【0028】
上述したように、エフェクト部161では、CPU13から供給されるDSPパラメータAに基づく「フィルタ処理」あるいはCPU13から供給されるDSPパラメータBに基づく「フランジャー」の何れか一方のみしか付与できず、同時に両エフェクトを付与することが叶わない。そこで、本実施形態では、CPU13が後述のエフェクト処理を実行することによって、見掛け上あたかも2種類のエフェクトを実行し得るようにする。
【0029】
C.動作
次に、上記構成による電子楽器100の動作として、CPU13が実行するエフェクト処理の動作について
図4〜
図7を参照して説明する。
図4〜
図5はCPU13が実行するエフェクト処理の動作を示すフローチャート、
図6はエフェクト処理の動作例を説明するためのグラフ、
図7はCPU13が実行するテンポ更新処理の動作を示すフローチャートである。なお、以下に述べるエフェクト処理は、ユーザにより選択された曲のシーケンスデータSDを自動演奏し、これにより音源部16の波形発生部160から出力される楽音データWに対し、エフェクト部161がエフェクトを付与する形態を前提としている。
【0030】
(1)エフェクト処理の動作
CPU13では、電子楽器100がパワーオンされると、図示されていないメインルーチンによって、操作部11に配設される各種操作スイッチのイベントを検出するスイッチ走査を行い、このスイッチ走査に応じてエフェクト処理を実行する。エフェクト処理が実行されると、CPU13は
図4に図示するステップSA1に処理を進め、前回押下されていないAエフェクトスイッチASが今回押下されたか否かを判断する。
【0031】
ここで、例えば
図6に図示するように、時刻t1においてユーザが前回押下されていないAエフェクトスイッチASを今回押下したとする。そうすると、上記ステップSA1の判断結果が「YES」になり、CPU13はステップSA2に処理を進め、フィルタフラグFFを「1」にセットし、フィルタ処理の開始を表す。そして、次のステップSA3に進むと、CPU13はフランジャー実行中であるか否かを判断する。
図6に図示する一例の場合、フランジャーは実行されていないので、判断結果が「NO」になり、ステップSA4に進む。
【0032】
ステップSA4に進むと、CPU13はRAM15のワークエリアWA(
図2参照)に格納されるDSPパラメータAを音源部16のエフェクト部161(
図3(a)参照)に転送する。これにより、エフェクト部161では、DSPパラメータAに含まれるマイクロプログラムに基づき
図3(b)に図示する構成、すなわちDSPパラメータAに含まれるレートおよび周期に従ったLFO信号を発生するLFO161aと、LFO信号に応じてカットオフ周波数fcが経時変化するローパス特性を有するDCF161bとを備えるエフェクタとして機能する。
【0033】
続いて、ステップSA5に進むと、CPU13はエフェクト部161にフィルタ処理の開始を指示した後、
図5に図示するステップSA6に処理を進める。なお、CPU13の指示に従ってフィルタ処理を開始したエフェクト部161では、LFO161aが発生したLFO信号に応じてDCF161bがカットオフ周波数fcを制御する。
【0034】
次にステップSA6(
図5参照)に進むと、CPU13はフィルタ処理を実行中であるか否かを判断する。エフェクト部161がフィルタ処理を実行中であると、判断結果は「YES」になり、ステップSA7に進み、CPU13はエフェクト部161にフィルタ処理の継続を指示する。そして、ステップSA15に進むと、CPU13はフィルタ処理が最後まで進行したか否かを判断する。予め設定される実行期間の最後まで進行していなければ、判断結果は「NO」になり、一旦本処理を終える。
【0035】
そして、再び本処理が起動して前述のステップSA1(
図4参照)に進むと、今回AエフェクトスイッチASは押下されてない為、判断結果は「NO」になり、ステップSA8に進む。ステップSA8に進むと、CPU13は前回押下されていないBエフェクトスイッチBSが今回押下されたか否かを判断する。いま例えば、
図6に図示する時刻t2においてユーザが前回押下されていないBエフェクトスイッチBSを今回押下したとする。
【0036】
そうすると、上記ステップSA8の判断結果が「YES」になり、CPU13はステップSA9に処理を進め、LFO161aの位相および角速度を取り込み、RAM15のワークエリアWA(
図2(b)参照)にLFO情報DLとしてストアし、その位相更新を継続する。つまり、1つのエフェクトしか付与することが出来ないエフェクト部161を「フィルタ処理」から「フランジャー」に切り替える為、見掛け上「フィルタ処理」を継続させる為にエフェクト部161に代わってCPU13がLFO情報DLの位相更新を続ける。
【0037】
次に、ステップSA10に進むと、CPU13はRAM15のワークエリアWA(
図2参照)に格納されるDSPパラメータBを音源部16のエフェクト部161に転送する。これにより、エフェクト部161では、DSPパラメータBに含まれるマイクロプログラムに基づき
図3(c)に図示する構成、すなわちフランジャーを付与するエフェクタとして機能する。続いて、ステップSA11に進むと、CPU13はエフェクト部161にフランジャーの開始を指示した後、
図5に図示するステップSA6に処理を進める。
【0038】
一方、CPU13の指示に従ってフランジャーを開始したエフェクト部161では、
図6に図示する時刻t2以降、LFO変調によりNサンプル遅延された楽音データWを原音(入力された楽音データW)に加算することでフランジャーと呼ばれるエフェクトを付与する。
【0039】
そして、CPU13がステップSA6(
図5参照)に進むと、フィルタ処理実行中であるか否かを判断するが、フランジャー実行中なので、判断結果は「NO」になり、次のステップSA12に進み、フランジャー処理実行中であるか否かを判断する。そして、フランジャー処理実行中なので、判断結果は「YES」になり、ステップSA13に進み、CPU13はエフェクト部161にフランジャーの継続を指示する。
【0040】
ステップSA14に進むと、CPU13はフィルタフラグFFが「1」であるか否かを判断する。
図6に図示する動作例の場合、判断結果は「YES」になり、ステップSA15に進む。ステップSA15に進むと、CPU13はフィルタ処理が最後まで進行したか否かを判断する。この場合、最後まで進行していないので、判断結果は「NO」になり、一旦本処理を終える。
【0041】
そして、再び本処理が起動して前述のステップSA1に進むと、今回AエフェクトスイッチASが押下されない為、判断結果は「NO」になり、ステップSA8に進む。ステップSA8に進むと、CPU13は前回押下されていないBエフェクトスイッチBSが今回押下されたか否かを判断する。押下中であると、判断結果は「NO」になり、ステップSA18に進み、CPU13は押下中のBエフェクトスイッチBSが今回離されたか否かを判断する。
【0042】
いま例えば、
図6に図示する時刻t3において、ユーザが押下中のBエフェクトスイッチBSを今回離したとする。そうすると、上記ステップSA18の判断結果が「YES」になり、ステップSA19に進み、CPU13はエフェクト部161にフランジャーの停止を指示する。これにより、エフェクト部161では、フランジャーの実行を停止する。
【0043】
そして、ステップSA20に進むと、CPU13はフィルタフラグFFが「1」であるか否か、つまりエフェクト部161がフィルタ処理を継続中であるかどうかを判断する。この場合、継続中なので、判断結果は「YES」になり、ステップSA21に進む。ステップSA21に進むと、CPU13はRAM15のワークエリアWA(
図2参照)に格納されるDSPパラメータAを音源部16のエフェクト部161(
図3(a)参照)に転送する。これにより、エフェクト部161では、その機能的構成を、
図3(c)に図示するフランジャーの構成に替えて、DSPパラメータAに含まれるマイクロプログラムに基づき
図3(b)に図示するフィルタ処理の構成に変更する。
【0044】
続いて、ステップSA22に進むと、CPU13は前述したステップSA9において更新継続しておいたLFO情報DLを、RAM15のワークエリアWA(
図2(b)参照)から読み出してエフェクト部161に転送する。これにより、エフェクト部161では、フランジャー実行期間中にCPU13が更新していたLFO情報DLを取り込むことで、あたかもフランジャー実行中もフィルタ処理を継続していたかのように、不連続にならないLFO位相を取得する。
【0045】
この後、ステップSA23に進むと、CPU13はエフェクト部161にフィルタ処理の開始を指示した後、
図5に図示するステップSA6に処理を進める。一方、CPU13の指示に従ってフィルタ処理を開始したエフェクト部161では、
図6に図示する時刻t3をフィルタ処理の再開時点とし、CPU13側から取得したLFO情報DLに基づいてLFO161aがLFO信号を発生し、これに応じてDCF161bがカットオフ周波数fcを制御する。
【0046】
ステップSA6に進むと、CPU13はフィルタ処理を実行中であるか否かを判断する。上述のように、エフェクト部161がフィルタ処理を再開すると、判断結果は「YES」になり、ステップSA7に進み、エフェクト部161のフィルタ処理を継続させる。そして、ステップSA15に進むと、CPU13はフィルタ処理が最後まで進行したか否かを判断する。フィルタ処理が最後まで進行すると、判断結果は「YES」になり、ステップSA16に進む。ステップSA16に進むと、CPU13はエフェクト部161にフィルタ処理の停止を指示する。この後、ステップSA17に進むと、CPU13はフィルタフラグFFをゼロリセットして本処理を終える。
【0047】
(2)テンポ更新処理の動作
次に、
図7を参照してCPU13が実行するテンポ更新処理の動作を説明する。以下では、エフェクトのLFO角速度が、テンポ情報、即ち、シーケンスデータSD(N)を再生する際のテンポ値に同期する場合について述べる。この場合、ユーザー操作等によってテンポ値が変更された場合、LFO角速度はリアルタイムに追従する。そのため、フィルタ処理実行中にBエフェクトスイッチBSが押されている間、即ち、フィルタ処理のLFO情報の更新をCPU13で行っている際にテンポ値が変更された場合も、それを受けてワークエリアWA内のLFO角速度を変更する。これらの動作のフローチャートを
図7に示す。
【0048】
ユーザー操作等によって再生テンポが変更されると、本処理が実行され、CPU13はまずステップSB1に処理を進め、変更された新たなテンポ値TEMPOがシステムにセットされる。次に、ステップSB2で、エフェクト部161でエフェクトを実行中かどうか判定する。実行中でなければ、判断結果は「NO」になり、テンポ更新処理を終了するが、実行中であれば、判断結果が「YES」になり、ステップSB3に進む。
【0049】
ステップSB3に進むと、CPU13は、新たなテンポ値TEMPOに基づいてLFO角速度ωを計算する。LFO角速度はテンポ同期するが、この同期タイミングについては予め設定されているものとする。例えばLFO角速度が拍BEATに同期する場合は、LFO角速度ωは下記(1)式で算出する。ただし、テンポ値TEMPOは、1秒あたりの拍数であるとする。
ω=TEMPO/(60×BEAT) [周/秒]…(1)
【0050】
次に、CPU13は、ステップSB4に進み、上記ステップSB3で算出したLFO角速度ωをエフェクト部161に通知する。エフェクトとして実行中のものが前述したフィルタ処理であってもフランジャーであっても、エフェクトの現在のLFO角速度ωを更新し、テンポ値TEMPOに同期した形でエフェクトを実行する。
【0051】
続いて、ステップSB5に進むと、CPU13は、フィルタフラグFFが「1」であって、且つエフェクト部161で実行中のエフェクトがフランジャーであるかどうかを判断する。この両者が満たされる場合、すなわちフィルターのLFO位相更新がCPU13において行われている場合には、判断結果が「YES」になり、ステップSB6に進み、RAM15のワークエリアWAに格納されるLFO情報に含まれるLFO角速度を、上記ステップSB3で算出したLFO角速度ωに更新することによって、CPU13によって更新されるLFO位相値もテンポ値TEMPOにBEAT拍で同期する。この同期処理を行った後、および、上記の条件が満たされない場合は、そこでテンポ更新処理を終了する。
【0052】
これらテンポ更新処理においてLFO角速度がテンポ同期する形で更新させるため、LFO角速度に応じて加算されるLFO位相はテンポ同期することができる。特に、ワークエリアWA内に持つLFO角速度も更新されるため、LFO位相の更新をCPU13で行っている場合でもテンポ同期することできるため、フランジャーの実行中にテンポ変更を行った後、フランジャーを終了しフィルターの実行が再開された場合でも、再開時のLFO初期位相として先のテンポ変更を織り込んだ値を設定することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、1つのエフェクトしか付与することができないエフェクト部161において、周期性信号(LFO信号)に応じた第1のエフェクト(フィルタ処理)を付与中に、この第1のエフェクト(フィルタ処理)とは異なる第2のエフェクト(フランジャー)に切り替えると、切り替え時点の位相から周期性信号を進行させておき、第2のエフェクト(フランジャー)を付与し終えた時点で進行中の周期性信号に応じて当該第1のエフェクト(フィルタ処理)を付与する。つまり、あたかも2種類のエフェクトを実行し得るので、同時に付与可能なエフェクトの種類を見掛け上増やすことが可能になっている。
【0054】
なお、上述した実施形態では、フィルタ処理を付与中にフランジャーに切り替える態様について言及したが、本発明の要旨はこれに限定されず、周期性信号に応じた第1のエフェクトを付与中に、第2のエフェクトに切り替えた時点の位相から周期性信号を進行させておき、第2のエフェクトを付与し終えた時点で進行中の周期性信号に応じて当該第1のエフェクトを付与する態様を具現できるならば、他の種類のエフェクトの組み合わせとしても構わない。
【0055】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0056】
以下では、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された各発明について付記する。
(付記)
[請求項1]
周期性信号を入力することにより楽音データを出力する第1のエフェクトを、前記第1のエフェクトとは異なる第2のエフェクトに切り替える切替部と、
前記切替部により前記第2のエフェクトに切り替える前に前記入力されている前記周期性信号の位相データを、前記第2のエフェクトに切り換えた後も更新する更新部と、
前記第2のエフェクトから前記第1のエフェクトに切り替える場合に、前記更新部により更新されている前記位相データの前記周期性信号を入力することにより前記第1のエフェクトを再開する再開部と、
を具備する効果付与装置。
[請求項2]
前記更新部は、前記第1のエフェクトを前記第2のエフェクトに切り替えた時点からの経過時間を計時して前記周期性信号の位相データを更新する請求項1記載の効果付与装置。
[請求項3]
前記更新部は、前記第1のエフェクトを前記第2のエフェクトに切り替える時点の前記周期性信号の角速度に基づいて前記周期性信号の位相データを更新する請求項1又は2のいずれかに記載の効果付与装置。
[請求項4]
効果付与装置に用いられる効果付与方法であって、
前記効果付与装置が、
周期性信号を入力することにより楽音データを出力する第1のエフェクトを、前記第1のエフェクトとは異なる第2のエフェクトに切り替え、
前記第2のエフェクトに切り替える前に前記入力されている前記周期性信号の位相データを、前記第2のエフェクトに切り換えた後も更新し、
前記第2のエフェクトから前記第1のエフェクトに切り替える場合に、更新されている前記位相データの前記周期性信号を入力することにより前記第1のエフェクトを再開する
ことを特徴とする効果付与方法。
[請求項5]
前記第1のエフェクトを前記第2のエフェクトに切り替えた時点からの経過時間を計時して前記周期性信号の位相データを更新する請求項4記載の効果付与方法。
[請求項6]
前記第1のエフェクトを前記第2のエフェクトに切り替える時点の前記周期性信号の角速度に基づいて前記周期性信号の位相データを更新する請求項4又は5のいずれかに記載の効果付与装置。
[請求項7]
効果付与装置に搭載されるコンピュータに、
周期性信号を入力することにより楽音データを出力する第1のエフェクトを、前記第1のエフェクトとは異なる第2のエフェクトに切り替える切替ステップと、
前記切替ステップで前記第2のエフェクトに切り替える前に前記入力されている前記周期性信号の位相データを、前記第2のエフェクトに切り換えた後も更新する更新ステップと、
前記第2のエフェクトから前記第1のエフェクトに切り替える場合に、前記更新ステップにより更新されている前記位相データの前記周期性信号を入力することにより前記第1のエフェクトを再開する再開ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
[請求項8]
前記更新ステップは、前記第1のエフェクトを前記第2のエフェクトに切り替えた時点からの経過時間を計時して前記周期性信号の位相データを更新する請求項7記載のプログラム。
[請求項9]
前記更新ステップは、前記第1のエフェクトを前記第2のエフェクトに切り替える時点の前記周期性信号の角速度に基づいて前記周期性信号の位相データを更新する請求項7又は8のいずれかに記載のプログラム。
[請求項10]
演奏入力情報を発生する演奏入力部と、
請求項1乃至3の何れかに記載の効果付与装置と
を備える電子楽器。