特許第6575644号(P6575644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6575644-タブレット状封着材及びその製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575644
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】タブレット状封着材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 8/24 20060101AFI20190909BHJP
【FI】
   C03C8/24
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-132030(P2018-132030)
(22)【出願日】2018年7月12日
(62)【分割の表示】特願2014-241827(P2014-241827)の分割
【原出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-197187(P2018-197187A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2018年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 嘉朗
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−29330(JP,A)
【文献】 特開昭51−110982(JP,A)
【文献】 特開昭63−261128(JP,A)
【文献】 特開2006−12436(JP,A)
【文献】 特開2000−149772(JP,A)
【文献】 特開2013−49615(JP,A)
【文献】 特開2013−203627(JP,A)
【文献】 特開2014−96277(JP,A)
【文献】 特開平3−16746(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/055888(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0209813(US,A1)
【文献】 特開2010−80420(JP,A)
【文献】 特開2014−240344(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0342136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 8/00 − 8/24
C03C 27/04
B32B 7/00
C04B 37/00
H01J 11/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス及び無機フィラーを含む複数の層が積層されてなり、熱膨張係数の異なる材料の封着に用いられるタブレット状封着材であって、
前記複数の層が、第1の層と、前記第1の層より空隙率が小さい第2の層とを備え、
前記第1の層及び前記第2の層がそれぞれ熱膨張係数の異なる材料と接合される、タブレット状封着材。
【請求項2】
前記第2の層の熱膨張係数が、前記第1の層の熱膨張係数より大きい、請求項1に記載のタブレット状封着材。
【請求項3】
前記第2の層のガラス含有量が、前記第1の層のガラス含有量より多い、請求項1又は2に記載のタブレット状封着材。
【請求項4】
ガラス及び無機フィラーを含む複数の層が積層されてなり、熱膨張係数の異なる材料の封着に用いられるタブレット状封着材であって、前記複数の層が、第1の層と、前記第1の層より空隙率が小さい第2の層とを備える、タブレット状封着材の製造方法であって、
前記第1の層を形成するための第1のグリーンシートと、前記第2の層を形成するための第2のグリーンシートとを用意する工程と、
前記第2の層の空隙率を低下させるように、前記第2のグリーンシートに処理を施す工程と、
前記第1,第2のグリーンシートを含む積層体を作製する工程と、
前記積層体を金型で打ち抜いてタブレット状とする工程と、
を備える、タブレット状封着材の製造方法。
【請求項5】
前記積層体を前記タブレット状とする工程の後、前記タブレット状の前記積層体を仮焼成する工程をさらに備える、請求項4に記載のタブレット状封着材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス及び無機フィラーを含む封着材及び該封着材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品などを封着することを目的として、ガラス及び無機フィラーを含む封着材が広く用いられている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、ガラスと、アルミナなどの無機フィラーとを含む気密端子用の封着材が記載されている。特許文献1では、上記封着材は、ガラス及び無機フィラーの含有比率が異なる複数の層を積層して形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−20732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、特許文献1のように、ガラス及び無機フィラーの含有比率が異なる複数の層が積層されてなる封着材においては、被着体を封着する際の昇温により、ガラスの含有量が多い層の収縮が他の層の収縮より大きくなるという知見を得た。そして、この理由で被着体を封着する際の昇温により封着材に反りが生じ、被着体を十分に封着できないという課題があることを、本発明者は見出した。
【0006】
本発明の目的は、被着体を封着する際に発生する反りを抑制することができ、被着体を確実に封着することを可能とする、封着材及び該封着材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る封着材は、ガラス及び無機フィラーを含む複数の層が積層されてなる封着材であって、上記複数の層が、第1の層と、上記第1の層より上記ガラスの含有量が多い第2の層とを備え、上記第2の層の空隙率が、上記第1の層の空隙率より小さい。
【0008】
本発明に係る封着材は、上記第1の層が積層方向における一方側の最外層であり、上記第2の層が積層方向における他方側の最外層であってもよい。
【0009】
本発明に係る封着材は、好ましくは、上記第2の層の熱膨張係数が、上記第1の層の熱膨張係数より大きい。
【0010】
本発明に係る封着材は、上記第1の層と上記第2の層との間に、第3の層を設けてもよい。
【0011】
本発明に係る封着材は、好ましくは、上記第3の層のガラス含有量が、上記第1の層のガラス含有量より多く、上記第2の層のガラス含有量より少ない。
【0012】
本発明に係る封着材は、好ましくは、上記第3の層の空隙率が、上記第1の層の空隙率より小さく、上記第2の層の空隙率より大きい。
【0013】
本発明に係る封着材は、好ましくは、上記第3の層の熱膨張係数が、上記第1の層の熱膨張係数より大きく、第2の層の熱膨張係数より小さい。
【0014】
本発明に係る封着材の製造方法は、上記第1の層を形成するための第1のグリーンシートと、上記第2の層を形成するための第2のグリーンシートとを用意する工程と、上記第2の層の空隙率を低下させるように、上記第2のグリーンシートに処理を施す工程と、上記第1,第2のグリーンシートを含む積層体を作製する工程とを備える。
【0015】
本発明に係る封着材の製造方法は、上記第2のグリーンシートに処理を施す工程が、上記第2のグリーンシートを熱プレスにより加圧する工程であってもよい。
【0016】
本発明に係る封着材の製造方法は、上記第1,第2のグリーンシートを含む積層体を作製する工程が、上記熱プレスの圧力よりも低い圧力で圧着することにより上記積層体を作製する工程であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る封着材は、複数の層が積層されてなる封着材であって、複数の層が、第1の層と、第1の層よりガラスの含有量が多い第2の層とを備える。また、第2の層の空隙率は、第1の層の空隙率より小さい。そのため、第2の層は、第1の層よりガラスの含有量が多いにもかかわらず、収縮量を小さくすることができる。従って、被着体を封着する際に発生する反りが抑制され、被着体を確実に封着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る封着材を示す模式的斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る封着材を用いて互いに熱膨張係数が異なる異種材料を封着した構造を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0020】
(封着材)
図1は、本発明の一実施形態に係る封着材を示す模式的斜視図である。図1に示すように、封着材1はタブレット状である。より詳細には、封着材1は円板状である。封着材1は、リング状や矩形板状であってもよい。
【0021】
封着材1は、第1の層2、第2の層3及び第3の層4を備える。第2の層3上には、第3の層4が積層されている。第3の層4上には、第1の層2が積層されている。このように封着材1は、3層の積層構造を有している。なお、本発明においては、複数の層が積層される限り、積層数は特に限定されない。
【0022】
第1の層2は、積層方向における一方側の最外層である。第2の層3は、積層方向における他方側の最外層である。第1の層2と第2の層3との間に、第3の層4が設けられている。
【0023】
封着材1は、ガラスと、無機フィラーとを含む。より詳細には、第1〜第3の層2〜4の各層が、ガラスと無機フィラーとを含む。上記ガラスとしては、特に限定されないが、例えば、鉛やビスマスを多く含む低融点ガラスなどを用いることができる。
【0024】
上記無機フィラーとしても、特に限定されず、例えば、コージェライト、ムライト、シリカ、チタン酸鉛、ウィレマイト、β−スポジュメン、ジルコン、リン酸ジルコニウム、アルミナなどが挙げられる。
【0025】
第2の層3のガラスの含有量は、第1の層2のガラスの含有量より多い。また、第3の層4のガラスの含有量は、第1の層2のガラスの含有量より多く、第2の層3のガラスの含有量より少ない。
【0026】
本実施形態において、ガラスの熱膨張係数は、無機フィラーの熱膨張係数より大きい。そのため、ガラスの含有量がより多い第2の層3の熱膨張係数は、第1の層2の熱膨張係数より大きいこととなる。また、第3の層4の熱膨張係数は、第1の層2の熱膨張係数より大きく、第2の層3の熱膨張係数より小さいこととなる。もっとも、本発明においては、無機フィラーの熱膨張係数が、ガラスの熱膨張係数より大きくてもよい。
【0027】
第2の層3の空隙率は、第1の層2の空隙率より小さい。第2の層3の空隙率が第1の層2の空隙率より小さい場合、空隙率が同じ場合に比べ、第2の層3の収縮の量を小さくすることができる。その結果、被着体を封着する際に発生する反りを抑制することができる。これを以下、より詳細に説明する。
【0028】
ガラスは、無機フィラーと比較して、封着過程における昇温により溶融しやすく、しかも溶融したガラスは、粒子間の隙間を埋めるように流動する。そのため、ガラスの含有量が多い層は、封着過程における昇温により収縮しやすく、これが封着材の反りの原因となる。
【0029】
この収縮量を小さくするために、本実施形態においては、ガラスの含有量が多い第2の層3の空隙率を、ガラス含有量の少ない第1の層2の空隙率より小さくしている。空隙率が小さくなると、第2の層3の収縮量が小さくなり、封着過程における昇温により発生する反りを抑制することができる。従って、封着材1は、被着体を確実に封着することができる。第1の層2の空隙率と第2の層3の空隙率の差は、1体積%以上であることが好ましく、2体積%以上であることがさらに好ましく、4体積%以上であることが特に好ましい。これにより、さらに反りを抑制することができ、被着体をさらに確実に封着することができる。
【0030】
また、第3の層4の空隙率は、第1の層2の空隙率より小さく、第2の層3の空隙率より大きい。本実施形態のように、第3の層4の空隙率が、第1の層2の空隙率よりも小さい場合、第1の層2と第3の層4の間で発生する反り及び第2の層3と第3の層4の間で発生する反りを抑制することができる。従って、より一層効果的に封着材1の反りを抑制することができ、より一層確実に被着体を封着することができる。
【0031】
本実施形態のように、第1の層2と第2の層3の間に第3の層4を設ける場合、第1の層2の空隙率と第3の層4の空隙率の差、及び第3の層4の空隙率と第2の層3の空隙率の差は、それぞれ1体積%以上であることが好ましく、2体積%以上であることがさらに好ましい。これにより、さらに反りを抑制することができ、被着体をさらに確実に封着することができる。
【0032】
第1の層2、第2の層3及び第3の層4のそれぞれの空隙率は、25〜50体積%の範囲内であることが好ましく、27〜40体積%の範囲内であることがさらに好ましい。これらの範囲内で、上記のように各層間に空隙率の差を設けることにより、さらに反りを抑制することができ、被着体をさらに確実に封着することができる。
【0033】
封着材1の厚みとしては、特に限定されないが、好ましくは、200μm〜1mm以下である。封着材1の厚みが200μmより小さいと、被着体の熱膨張係数の差を吸収することが困難となり、いずれかの被着体との界面で剥離が生じ易くなる。封着材1の厚みが、1mmより大きいと、封着材内部で凝集破壊を生じ易くなり、異種材料間を封着することが困難となる場合がある。
【0034】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る封着材を用いて互いに熱膨張係数の異なる異種材料を封着した構造を示す模式的斜視図である。
【0035】
図2に示すように、熱膨張係数の小さい材料10と、熱膨張係数の大きい材料20との間に封着材1が設けられている。すなわち、熱膨張係数の小さい材料10と熱膨張係数の大きい材料20は、封着材1により封着されている。より詳細には、熱膨張係数の小さい材料10は、封着材1の第1の層2側に設けられており、熱膨張係数の大きい材料20は、封着材1の第2の層3側に設けられている。
【0036】
ここで、例えば、シリコン(熱膨張係数が40×10−7/℃程度)、アルミナ(熱膨張係数が70〜80×10−7/℃)、SUS(熱膨張係数が110〜150×10−7/℃)のいずれか2種を封着する場合、各材料間で熱膨張係数が大きく異なる。そのため、ガラス及び無機フィラーが均一に分散されている封着材を用いて封着しようとすると、熱膨張係数の小さい材料10と熱膨張係数の大きい材料20のいずれかとの界面で剥離が生じることとなる。
【0037】
しかしながら、本実施形態では、熱膨張係数の小さい封着材1の第1の層2側が、熱膨張係数の小さい材料10に接している。また、熱膨張係数の大きい封着材1の第2の層3が、熱膨張係数の大きい材料20に接している。すなわち、封着材1は、熱膨張係数の異なる異種材料10及び20のいずれと接する側の面においても、これらの材料10及び20との熱膨張係数の差が小さくなっている。従って、封着材1は、熱膨張係数の異なる異種材料10及び20のいずれと接する側の界面においても、剥離が生じ難い。よって、封着材1を用いることにより、互いに熱膨張係数の異なる異種材料間を封着することができる。
【0038】
本発明に係る封着材は、上記のように、互いに熱膨張係数の異なる異種材料を封着することができる。従って、本発明に係る封着材は、圧力センサー等の用途に好適に用いることができる。
【0039】
(封着材の製造方法)
本発明に係る封着材の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、第1の層を形成するための第1のグリーンシートと、第2の層を形成するための第2のグリーンシートとを用意する工程(工程1)と、第2の層の空隙率を低下させるように、第2のグリーンシートに処理を施す工程(工程2)と、第1,第2のグリーンシートを含む積層体を作製する工程(工程3)とを備える製造方法により製造することができる。以下、工程1〜工程3について、より詳細に説明する。
【0040】
(工程1)
まず、ガラス粉末及び無機フィラー粉末を、バインダー樹脂を含む溶剤に分散させスラリーを作製する。次に、得られたスラリーをシート形状となるように塗布し、乾燥させる。それによって、第1の層を形成するための第1のグリーンシートと、第2の層を形成するための第2のグリーンシートとを含む、複数枚のグリーンシートを用意する。
【0041】
上記スラリーを作製する際には、第2のグリーンシートのガラスの含有量が、第1のグリーンシートのガラスの含有量より多くなるように、第1,第2のグリーンシートで、それぞれ、ガラスと無機フィラーの配合比率(ガラス粉末/無機フィラー粉末)の異なるスラリーを作製する。それによって、第1の層及び第2の層を形成したときに、第2の層の熱膨張係数を第1の層の熱膨張係数より大きくすることができる。
【0042】
第1のグリーンシートを作製するためのガラス粉末と無機フィラー粉末の配合比率(ガラス粉末/無機フィラー粉末)としては、質量比で、45/55〜90/10の範囲にあることが好ましい。
【0043】
他方、第2のグリーンシートを作製するためのガラス粉末と無機フィラー粉末の配合比率(ガラス粉末/無機フィラー粉末)としては、質量比で、47/53〜95/5の範囲にあることが好ましい。
【0044】
第1のグリーンシートの配合比率(ガラス粉末/無機フィラー粉末)と、第2のグリーンシートの配合比率(ガラス粉末/無機フィラー粉末)が、それぞれ上記範囲内にある場合、第1,第2の層の熱膨張係数の差をより適切な範囲とすることができることから、互いに熱膨張係数の異なる異種材料間をより一層確実に封着することができる。
【0045】
また、用意するグリーンシートの枚数は、特に限定されない。例えば、上述した封着材1を作成する場合には、第3の層4を作製するための第3のグリーンシートを用意する。その場合においては、スラリーを作製する際に、第3のグリーンシートのガラスの含有量が、第1のグリーンシートのガラスの含有量より多く、第2のグリーンシートの含有量より少なくなるように、第3のグリーンシートの配合比率を調整することが好ましい。
【0046】
(工程2)
次に、第2のグリーンシートを仮焼成することにより形成される第2の層の空隙率を低下させるように、用意した第2のグリーンシートに処理を施す。第2のグリーンシートに処理を施す方法としては、特に限定されないが、例えば、第2のグリーンシートを熱プレスにより加圧することにより、第2のグリーンシートの空隙率を低下させることができる。
【0047】
上記熱プレスは、温度80〜100℃、圧力10〜300MPaで、60〜300秒間行うことが望ましい。上記の条件下で熱プレスを行う場合、より一層空隙率を低下させることができる。
【0048】
上記第2のグリーンシートに施す処理は、ガラスの含有量が最も少ないグリーンシートである第2のグリーンシート以外の他のグリーンシートに施してもよい。例えば、上述した第3のグリーンシートを仮焼成することにより形成される第3の層の空隙率を低下させるように、第3のグリーンシートに処理を施してもよい。
【0049】
(工程3)
次に、第1,第2のグリーンシートを含む複数枚のグリーンシートの積層体を作製する。より詳細には、上記処理を施していない第1のグリーンシートと、上記処理を施した第2のグリーンシートとを含む複数枚のグリーンシートの積層体を作製する。
【0050】
しかる後、得られた積層体に熱プレスを施す。この際、上記第2の層の空隙率を低下させるために、第2のグリーンシートに施す熱プレスの圧力よりも低い圧力で圧着することが好ましい。具体的には、温度80〜100℃、圧力5〜200MPaで、60〜300秒間行うことが望ましい。
【0051】
次に、圧着した積層体を金型で打ち抜き、所望の形状とする。最後に、打ち抜いた積層体をガラス粉末の軟化点より低い温度で仮焼成し、封着材を得る。
【0052】
本発明に係る製造方法においては、上記のように、第1の層と比較してガラスの含有量の多い第2の層を形成するための第2のグリーンシートに、空隙率を低下させる処理が施される。従って、第2の層の空隙率が、上記第1の層の空隙率より小さい封着材を得ることができる。そのため、得られた封着材では、第2の層の収縮量が小さくなり、被着体を封着する際に発生する反りを抑制することができる。従って、本発明に係る製造方法によれば、被着体を確実に封着することが可能な封着材を得ることができる。
【0053】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
ガラス粉末としてBi−B−ZnO系ガラス70質量%及び無機フィラー粉末としてコーディエライト30質量%を含む第1のグリーンシートと、ガラス粉末としてBi−B−ZnO系ガラス80質量%及び無機フィラー粉末としてコーディエライト20質量%を含む第2のグリーンシートとを用意した。
【0055】
次に、用意した第2のグリーンシートに温度90℃、圧力200MPaで、120秒間、第1の熱プレスを施した。しかる後、第1,第2のグリーンシートを積層させて積層体を作製し、得られた積層体に、温度90℃、圧力70MPaで、60秒間、第2の熱プレスを施した。圧着した積層体を、金型で打ち抜いて円板状とし、温度470℃で仮焼成することにより、直径10mmの円板状の封着材を得た。
【0056】
(実施例2)
第1,第2のグリーンシートのガラス粉末及び無機フィラー粉末の含有量を下記の表1に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様にして、直径10mmの円板状の封着材を得た。
【0057】
(実施例3)
ガラス粉末としてPbO−SiO−B系ガラス85質量%及び無機フィラー粉末として非晶質シリカ15質量%を含む第1のグリーンシートと、ガラス粉末としてPbO−SiO−B系ガラス93質量%及び無機フィラー粉末として非晶質シリカ7質量%を含む第2のグリーンシートと、ガラス粉末としてPbO−SiO−B系ガラス89質量%及び無機フィラー粉末として非晶質シリカ11質量%を含む第3のグリーンシートとを用意した。
【0058】
次に、用意した第2のグリーンシートに温度100℃、圧力120Mpaで、180秒間、また、第3のグリーンシートに温度100℃、圧力90MPaで、180秒間第1の熱プレスを施した。しかる後、第2のグリーンシート上に第3のグリーンシート及び第1のグリーンシートをこの順に積層させて積層体を作製し、得られた積層体に、温度85℃、圧力50MPaで、90秒間、第2の熱プレスを施した。圧着した積層体を、金型で打ち抜いて円板状とし、温度420℃で仮焼成することにより、直径10mmの円板状の封着材を得た。
【0059】
(実施例4)
第1〜第3のグリーンシートのガラス粉末及び無機フィラー粉末の含有量を下記の表1に示すように設定したこと以外は、実施例3と同様にして、直径10mmの円板状の封着材を得た。
【0060】
(比較例1)
第2のグリーンシートに、第1の熱プレスを施さなかったこと以外は、実施例1と同様にして、直径10mmの円板状の封着材を得た。
【0061】
(比較例2)
第2,第3のグリーンシートに、第1の熱プレスを施さなかったこと以外は、実施例3と同様にして、直径10mmの円板状の封着材を得た。
【0062】
(評価)
空隙率及び熱膨張係数;
まず、第2の熱プレスを行う前の第1,第2,第3の各グリーンシートを準備し、それぞれ50cmに切断する。切断した各グリーンシートを仮焼成することにより、上記の仮焼成温度で仮焼成体(第1,第2,第3の層)を作製する。作製した各仮焼成体の厚みおよび質量を測定し、体積Vおよび質量Mを求める。次に、ガラスと無機フィラーの配合比率に合わせた混合粉末の合成密度ρを計算により求め、ε=1−M/(V・ρ)より空隙率εを求めた。同様にして、第1,第2,第3の各グリーンシートの仮焼成体(第1,第2,第3の層)を作製し、熱膨張係数を測定した。
【0063】
反り量の評価;
実施例1〜4及び比較例1,2で得られた封着材を、仮焼成温度+20℃で、10分間焼成した。焼成後、封着材を2枚の平板で挟み込み、封着材が挟み込まれた2枚の平板間の距離を測定した。測定した2枚の平板間の距離と、封着材そのものの厚みの差を、反り量とした。
【0064】
【表1】
【0065】
表1より、ガラス粉末の含有量の多いグリーンシートに、第1の熱プレスを施した(ガラス粉末の含有量が多いグリーンシートの空隙率が小さい)実施例1〜4で得られた封着材の反り量は、比較例1,2の封着材の反り量より、小さいことが確認できた。
【符号の説明】
【0066】
1…封着材
2…第1の層
3…第2の層
4…第3の層
10…熱膨張係数の小さい材料
20…熱膨張係数の大きい材料
図1
図2