(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1配信装置において第1コンテンツデータを配信する場合に設定される第1遅延時間と、第2配信装置において第2コンテンツデータを配信する場合に設定される第2遅延時間と、を取得する取得部と、
前記第1配信装置、前記第2配信装置、または、前記第1配信装置に前記第1コンテンツデータを付与しかつ前記第2配信装置に前記第2コンテンツデータを付与する再生装置、に対して、前記第1遅延時間および前記第2遅延時間を出力する出力部と、
を備え、
前記第1配信装置および前記第2配信装置は、それぞれ、前記第1コンテンツデータおよび前記第2コンテンツデータの配信方法として設定可能な複数の配信モードを有し、
前記取得部は、前記第1配信装置および前記第2配信装置に設定される前記配信モードごとに、その配信モードで設定される第1遅延時間および第2遅延時間を取得する、同期設定装置。
第1配信装置において第1コンテンツデータを配信する場合に設定される第1遅延時間と、第2配信装置において第2コンテンツデータを配信する場合に設定される第2遅延時間と、を取得し、
前記第1配信装置、前記第2配信装置、または、前記第1配信装置に前記第1コンテンツデータを付与しかつ前記第2配信装置に前記第2コンテンツデータを付与する再生装置、に対して、前記第1遅延時間および前記第2遅延時間を出力し、
前記第1配信装置および前記第2配信装置は、それぞれ、前記第1コンテンツデータおよび前記第2コンテンツデータの配信方法として設定可能な複数の配信モードを有し、
前記第1遅延時間および前記第2遅延時間を取得する場合、前記第1配信装置および前記第2配信装置に設定される前記配信モードごとに、その配信モードで設定される第1遅延時間および第2遅延時間を取得する、同期設定方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]第1実施形態
第1実施形態は、以下の課題を解決する。すなわち、近年、コンテンツデータの配信元となる再生装置を配信装置に接続し、再生装置が、コンテンツデータを配信装置に付与すると共に、そのコンテンツデータに関連した別のコンテンツデータを自装置で再生する新たな配信システムが提案されている。
【0010】
しかしながら、新たな配信システムでは、次の様な問題がある。即ち、新たな配信システムでは、配信元の再生装置は、殆ど遅延を生じることなくコンテンツデータを再生して音声等のコンテンツを出力する。一方、配信先(スピーカ等の出力装置など)から出力されるコンテンツについては、互いに同期してはいるものの、上述した様に出力までに遅延が生じる。このため、コンテンツの出力タイミングが配信元(再生装置)と配信先とでずれることになる。この様に、新たな配信システムでは、配信時に生じる遅延が大きな問題となってしまう。
【0011】
そこで第1実施形態の目的は、コンテンツの出力タイミングを配信元と配信先とで同期させることが可能な同期設定装置、配信システム、同期設定方法、及びプログラムを提供することである。
【0012】
第1の実施形態に係る同期設定装置は、ネットワークを通じた第1コンテンツデータの配信を同期させるために配信装置に設定される遅延時間を取得する取得部と、前記第1コンテンツデータに関連する第2コンテンツデータを再生する再生装置に向けて、前記遅延時間を出力する出力部と、を備える。
【0013】
また、前記配信装置は、前記第1コンテンツデータの配信方法として設定可能な複数の配信モードを有し、前記取得部は、前記配信装置に設定される前記配信モードごとに、その配信モードで設定される遅延時間を取得する。
【0014】
また、前記複数の配信モードには、前記第1コンテンツデータが配信される複数の配信先を同期させる同期モードと、前記複数の配信先の同期を解除する解除モードと、が含まれており、前記解除モードへの設定時に前記取得部が取得する遅延時間が、ゼロに設定される。
【0015】
また、前記取得部は、前記遅延時間の変化に応じて当該遅延時間を取得し直し、前記出力部は、前記取得部が取得し直した前記遅延時間を、前記再生装置に向けて再出力する。
【0016】
また、前記第1コンテンツデータと前記第2コンテンツデータとは互いに同期して再生されるべきデータである。
【0017】
また、前記再生装置は、前記配信装置を含むネットワークオーディオシステムに対して外部に接続される装置であり、前記遅延時間は、前記ネットワークオーディオシステムでの同期再生のために必要な時間である。
【0018】
また、前記第1コンテンツデータは、前記ネットワークオーディオシステムで再生されるコンテンツを含んだデータであり、前記第2コンテンツデータは、前記再生装置自体が発するコンテンツを含んだデータである。
【0019】
また、前記ネットワークオーディオシステムの親機である前記配信装置に含まれる。
【0020】
また、第1実施形態に係る配信システムは、ネットワークを通じて第1コンテンツデータを配信する配信装置と、前記第1コンテンツデータに関連する第2コンテンツデータを再生する再生装置と、前記第1コンテンツデータの配信を同期させるために前記配信装置に設定される遅延時間の取得及び出力に使用される、請求項1〜8の何れか1つに記載の同期設定装置と、を備え、前記再生装置は、前記同期設定装置から出力される前記遅延時間に応じて、前記第2コンテンツデータの再生のタイミングを調整する。
【0021】
また、前記再生装置は、自動演奏装置であり、前記同期設定装置から出力される前記遅延時間に応じて、前記第2コンテンツデータに基づく演奏のタイミングを調整する。
【0022】
また、前記同期設定装置は、前記配信装置又は当該配信装置のコントローラに含まれている。
【0023】
[1−1]配信システムの構成
図1は、第1実施形態に係る配信システムを示した概念図である。
図1に示される様に、配信システムは、配信装置1と、自動演奏装置2と、同期設定装置3と、を備える。
【0024】
配信装置1は、例えばAV(Audio-Visual)レシーバであり、複数の配信先11(スピーカ等の出力装置など)に対し、LAN(Local Area Network)等のデジタル通信方式のネットワークを通じて第1コンテンツデータd1を配信することが可能である。本実施形態では、第1コンテンツデータd1は、自動演奏装置2が演奏する楽曲の伴奏パートをコンテンツとするものであり、後述する様に自動演奏装置2から付与される。尚、配信装置1には、AVレシーバに限らず、コンテンツデータの配信が可能な種々の装置を用いることができる。又、ネットワークは、有線又は無線の何れで構築されていてもよい。
【0025】
この様にネットワークを通じてオーディオコンテンツを配信するシステムは、通常、ネットワークオーディオシステムと呼ばれている。ネットワークオーディオシステムは、親機(配信装置1)から子機(スピーカ等の配信先11)へオーディオコンテンツを配信し、親機と子機、更には複数の子機を同期させてオーディオコンテンツを再生させる(同期再生)。そして、配信時に生じる遅延を考慮して、親機(配信装置1)には、同期再生に必要な遅延時間Tdが設定される。尚、第1コンテンツデータd1は、一例として、この様なネットワークオーディオシステムで再生されるコンテンツを含んだデータであってもよい。
【0026】
配信装置1は、第1コンテンツデータd1の配信方法として設定可能な複数の配信モードを有している。そして、配信装置1には、配信モードごとに、ネットワークを通じた第1コンテンツデータd1の配信を同期させるための(即ち、同期再生のための)遅延時間Tdが予め設定されている。配信モードには、第1コンテンツデータd1の配信時に複数の配信先11を同期させる同期モードと、配信先11の同期を解除する解除モードと、が少なくとも含まれている。
【0027】
自動演奏装置2は、自動演奏が可能なピアノ等の楽器であり、「再生装置」に相当するものである。
図1においては、再生装置は、自装置がコンテンツを出力する(演奏する)とともに、別系統でコンテンツを出力する態様である。ただし、再生装置は、自装置がコンテンツを出力しないで、他装置にコンテンツを出力するだけであってもよい。
【0028】
自動演奏装置2は、演奏を行う演奏機構部21と、演奏機構部21を動作させる駆動部22と、駆動部22を制御する制御部23とを有する。一例として、自動演奏装置2がピアノである場合、鍵盤の動きをハンマーに伝える伝達機構が演奏機構部21に相当し、鍵盤の動きを機械的に実現してハンマーを駆動させるものが駆動部22に相当する。
【0029】
制御部23は、マイクロコンピュータ等の制御処理装置であり、第1コンテンツデータd1を配信装置1に付与すると共に、第1コンテンツデータd1に関連する第2コンテンツデータd2に基づく自動演奏処理を実行する。具体的には、制御部23は、駆動部22を制御するための制御信号Scを第2コンテンツデータd2から生成し、その制御信号Scを駆動部22に出力する。そして、駆動部22は、制御部23からの制御信号Scに基づき、演奏機構部21を動作させる。これにより、自動演奏装置2において第2コンテンツデータd2が再生され、ピアノ演奏音として出力される。この場合、第2コンテンツデータd2は、自動演奏装置2自体が発するコンテンツ(ピアノ演奏音)を含んだMIDI(Musical Instrument Digital Interface)データである。尚、第2コンテンツデータd2は、MIDIデータに限定されるものではない。例えば、第2コンテンツデータが日本語音声に係るオーディオデータであり、第1コンテンツデータが英語音声に係るオーディオデータであってもよい。
【0030】
制御部23には、上記MIDIデータが入力される。制御部23は、MIDIデータに含まれる自動演奏装置2の演奏パート(ピアノパート)のデータを第2コンテンツデータd2として、制御信号Scを生成する。更に、制御部23は、MIDIデータに含まれる他の演奏パート(例えば、伴奏パート)のデータに基づいて音源(不図示)を駆動させ、当該音源から得られたデジタルオーディオ信号を、第1コンテンツデータd1として配信装置1に付与する。
【0031】
この様に、第1コンテンツデータd1と第2コンテンツデータd2とは、それらのコンテンツが互いに関連したものである。即ち、第1コンテンツデータd1と第2コンテンツデータd2とは互いに同期して再生されるべきデータである。
【0032】
自動演奏装置2は、ケーブルやネットワークを介して配信装置1に接続されている。即ち、自動演奏装置2は、上述したネットワークオーディオシステムに対して外部に接続されている。そして、制御部23は、自動演奏処理を実行する際、第1コンテンツデータd1を配信装置1に付与する。このとき、第1コンテンツデータd1は、デジタルオーディオ信号のままで配信装置1に付与されてもよいし、アナログオーディオ信号に変換されて配信装置1に付与されてもよい。何れの場合であっても、自動演奏装置2と配信装置1との間では、エンコードやデコードを含むデータ処理が不要であるため遅延は殆ど生じない。
【0033】
図2(A)は、同期設定装置3を示したブロック図である。
図2(A)に示される様に、同期設定装置3は、取得部31と、出力部32と、を含む。本実施形態では、同期設定装置3は、
図1に示される様に配信装置1にて実現されている。具体的には、以下の通りである。
【0034】
図2(B)は、配信装置1のハードウェア構成を示したブロック図である。
図2(B)に示される様に、配信装置1は、そのハードウェア構成として、通信インターフェース101と、入力インターフェース102と、CPU(Central Processing Unit)103と、RAM(Random Access Memory)104と、ROM(Read Only Memory)105と、を有する。そして、RAM104やROM105に記憶されるプログラムをCPU103が実行することにより、同期設定装置3がソフトウェアで実現される。同期設定装置3をソフトウェアで実現するためのプログラムは、配信装置1での読取りが可能な記録媒体(フラッシュメモリ、光学ディスク、磁気ディスク等)に記録されていてもよい。
【0035】
取得部31は、第1コンテンツデータd1の配信を同期させるために(即ち、同期再生させるために)配信装置1に設定される遅延時間Tdを取得する。具体的には、遅延時間Tdは、上述した配信モード(同期モード及び解除モード)ごとに設定されている。そして、取得部31は、配信装置1に設定される配信モードごとに、対応する遅延時間Tdを取得する。
【0036】
本実施形態では、遅延時間Tdは、配信装置1において配信モードごとに予め設定されており、取得部31は、対応する遅延時間Tdを配信装置1から取得する。尚、遅延時間Tdは、同期設定装置3内の記憶部(不図示)に記憶されていてもよい。この場合、取得部31は、対応する遅延時間Tdを記憶部から取得することになる。又、取得部31は、遅延時間Tdの取得時に遅延時間Tdを実際に測定してもよい。遅延時間Tdの測定は、配信装置1が行ってもよいし、別に設けられた計測部で行われてもよい。
【0037】
一例として、遅延時間Tdは、次の様に設定される。即ち、無線のネットワークを通じた配信では、同期モードに対応させて、遅延時間Tdが500msに設定される。有線のネットワークを通じた配信では、同期モードに対応させて、遅延時間Tdが100msに設定される。又、解除モードに対応させて、遅延時間Tdが0(ゼロ)msに設定される。尚、遅延時間Tdは、これらに限定されるものではなく、通信環境に応じて適宜変更することが可能である。
【0038】
出力部32は、取得部31が取得した遅延時間Tdを出力する。具体的には、出力部32は、自動演奏装置2に向けて遅延時間Tdを出力する。このとき、同期設定装置3は、IP(Internet Protocol)アドレス等、遅延時間Tdの出力先に関する宛先情報を有しており、出力部32は、宛先情報に基づいて遅延時間Tdを出力する。尚、同期設定装置3は、ネットワーク上に存在する自動演奏装置2を検索することによりその宛先情報を取得してもよい。
【0039】
自動演奏装置2は、出力部32から出力される遅延時間Tdに応じて、第2コンテンツデータd2に基づく演奏のタイミングを調整する。即ち、自動演奏装置2は、遅延時間Tdに応じて、第2コンテンツデータd2の再生のタイミングを調整する。具体的には、遅延時間Tdが0(ゼロ)msでない場合、自動演奏装置2は、遅延時間Tdに応じて第2コンテンツデータd2の再生を遅延させ、これにより、コンテンツの出力タイミングを自動演奏装置2(配信元)と配信先11とで同期させる。一方、遅延時間Tdが0(ゼロ)msである場合、自動演奏装置2は、遅延させることなく第2コンテンツデータd2を再生する。これにより、自動演奏装置2における再生のタイミングが、元に(遅延のない状態に)戻る。
【0040】
具体的には、自動演奏装置2において、制御部23が、駆動部22に向けて制御信号Scを出力するタイミングを調整する。第2コンテンツデータd2の再生を遅延させる場合、制御部23は、制御信号Scの出力タイミングを遅らせる。このとき、自動演奏装置2での再生を遅らせる時間は、遅延時間Tdと同じであってもよいし、配信先11と同期させるべく補正されてもよい。
【0041】
尚、第2コンテンツデータd2の再生を遅らせる方法として、制御信号Scの出力タイミングを遅らせることに代えて、制御部23がMIDIデータをシーケンスするタイミングを遅らせてもよし、自動演奏装置2の演奏のタイミング(駆動部22が駆動してから演奏機構部21による演奏が実行されるまで時間)を機械的に遅らせてもよい。
【0042】
[1−2]配信システムの制御
図3は、自動演奏装置2及び同期設定装置3が行う制御を示したフローチャートである。先ず、MIDIデータ等の演奏データが自動演奏装置2に入力されると、自動演奏装置2は、自動演奏処理を開始する。これに伴って、同期設定装置3は、同期設定処理を開始する。ただし、同期設定処理の開始タイミングは、自動演奏が開始される時ではなく、配信装置1の遅延時間が変化するタイミングであってもよい。
【0043】
同期設定処理が開始されると、同期設定装置3は、配信装置1にどの配信モードが設定されているかを判断する(ステップS31)。配信モードの設定は、ユーザにより、配信装置1又は当該配信装置1をリモートで制御するコントローラ12で行われる。本実施形態では、同期設定装置3は、配信モードが同期モード及び解除モードの何れであるかを判断する。尚、配信装置1が、設定可能な配信モードを3つ以上有する場合であっても、同様である。
【0044】
ステップS31での判断の後、同期設定装置3の取得部31が、配信装置1に設定されている配信モードに対応する遅延時間Tdを取得する(ステップS32及びS33)。尚、遅延時間Tdの取得方法には、上述した様々な方法(配信装置1や記憶部からの取得、或いは計測など)を用いることができる。
【0045】
遅延時間Tdの取得後、同期設定装置3の出力部32が、自動演奏装置2に向けて遅延時間Tdを出力する(ステップ34)。このとき、同期設定装置3は、IP(Internet Protocol)アドレス等、遅延時間Tdの出力先に関する宛先情報を有しており、その宛先情報に基づいて遅延時間Tdを出力する。尚、同期設定装置3は、ネットワーク上に存在する自動演奏装置2を検索することによりその宛先情報を取得してもよい。
【0046】
自動演奏装置2は、自動演奏処理の開始後、遅延時間Tdを受け取ったか否かを判断する(ステップS21)。この判断は、例えば、制御部23で実行される。そして、ステップS21にて自動演奏装置2が遅延時間Tdを受け取ったと判断するまで、ステップS22が繰り返し実行される。
【0047】
ステップS21にて自動演奏装置2が遅延時間Tdを受け取ったと判断した場合、自動演奏装置2は、受け取った遅延時間Tdに応じて、第2コンテンツデータd2に基づく演奏のタイミングを調整する(ステップS22)。即ち、自動演奏装置2は、遅延時間Tdに応じて第2コンテンツデータd2の再生のタイミングを調整し、これにより、コンテンツの出力タイミングを自動演奏装置2(配信元)と配信先11とで同期させる。尚、再生のタイミングを調整する方法には、上述した様々な方法(制御信号Scの出力タイミングの遅延や機械的な遅延)を用いることができる。
【0048】
その後、自動演奏装置2は、ステップS23にて自動演奏が完了したと判断するまで、ステップS21及びS22を繰り返し実行する。
【0049】
第1実施形態に係る配信システム及びその制御によれば、コンテンツの出力タイミングを自動演奏装置2(配信元)と配信先11とで同期させることができるので、配信先11に滞在するユーザに対し、ずれのない快適な演奏を提供することができる。又、配信装置1に設定される配信モードごとに遅延時間Tdが設定されているので、自動演奏装置2での再生のタイミングに関する調整の自由度が大きくなる。
【0050】
(変形例1)
上述した配信システムは、自動演奏装置2による演奏の途中又は次の演奏の開始時において、遅延時間Tdに変化が生じるものであってもよい。この場合、同期設定装置3において、取得部31は、遅延時間Tdの変化に応じて当該遅延時間Tdを取得し直すことが好ましい。即ち、取得部31は、遅延時間Tdの変化に応じて当該遅延時間Tdを動的に取得することが好ましい。又、出力部32は、取得部31が取得し直した遅延時間Tdを、自動演奏装置2に向けて再出力することが好ましい。遅延時間Tdの取得方法及び出力方法には、第1実施形態と同様の方法を用いることができる。
【0051】
変形例1に係る配信システム及びその制御によれば、自動演奏装置2における演奏の全期間を通じて、コンテンツの出力タイミングを自動演奏装置2(配信元)と配信先11とで同期させることができる。よって、配信先11に滞在するユーザに対し、より快適な演奏を提供することができる。又、同期設定装置3において遅延時間Tdの取得及び出力がリアルタイムで実行されることにより、更なる快適な演奏が実現される。
【0052】
(変形例2)
図4は、変形例2に係る配信システムを示した概念図である。
図4に示される様に、第1実施形態で説明した配信システムにおいて、同期設定装置3は、配信装置1をリモートで制御するコントローラ12にて実現されてもよい。
【0053】
コントローラ12のハードウェア構成は、配信装置1と同様であってもよいが、例えば
図5に示すような、スマートフォン等の携帯電話機(情報処理装置)からなる態様であってもよい。コントローラ12は、タッチパネル301、制御部302、ROM303、RAM304、表示部305、および通信I/F306を備えている。
【0054】
タッチパネル301は、利用者からの操作を受け付ける。表示部305は、利用者に各種情報を提示する。制御部302は、ROM303に記憶されているOSおよびアプリケーションプログラムをRAM304に読み出すことで、各種の動作を行なう。例えば、制御部302は、ユーザからタッチパネル301を介してアプリケーションプログラムの起動を指示されると、指示されたアプリケーションプログラムを起動し、表示部305に該アプリケーションプログラムの画面を表示する。この場合、配信システムの制御は、アプリケーションプログラムを通じて実行される。
【0055】
応用例2に係る配信システムにおいても、第1実施形態及び第2実施形態と同様の制御を実行することができる。
【0056】
尚、第1コンテンツデータd1と第2コンテンツデータd2とは、同じコンテンツに係るデータであってもよいし、それらのコンテンツが互いに関連したものであれば、上述したピアノパート(旋律パート)と伴奏パートの様にコンテンツが異なるものであってもよい。
【0057】
又、配信装置1は、自動演奏装置2と同じ空間(部屋など)に設置された配信先11には第1コンテンツデータd1(伴奏パートのデジタルオーディオ信号)のみを配信し、別の空間に設置された配信先11には、旋律パートと伴奏パートの全てのデータに基づいて音源(不図示)から得られるデジタルオーディオ信号を配信してもよい。
【0058】
[2]第2実施形態
第2実施形態は、上述のように、自動演奏装置2と同じ空間に設置された配信装置(第1配信装置)1Aには、伴奏パートのデジタルオーディオ信号が第1コンテンツデータd1として付与され、別の空間に設置された配信装置(第2配信装置)1Bには、全パート(旋律パートと伴奏パート)のデジタルオーディオ信号(第2コンテンツデータd2)が付与される。自動演奏装置2は、旋律パートのMIDIデータ(第3コンテンツデータd3)に基づいて、自動演奏を行なう。第2コンテンツデータd2は、伴奏パートである第1コンテンツデータと、旋律パートである第3コンテンツデータと、の両方が含まれている。
【0059】
図6は、第2実施形態に係る配信システムの構成を示した図である。
図1と共通する構成は、同一の符号を付し、説明を省略する。第1配信装置1Aおよび第2配信装置1Bは、いずれも
図1で示した配信装置1と同じ構成を有する。
図6の例では、第1コンテンツデータが付与される第1配信装置1Aに、同期設定装置3が内蔵されている。
【0060】
図7は、自動演奏装置2及び同期設定装置3が行う制御を示したフローチャートである。先ず、MIDIデータ等の演奏データが自動演奏装置2に入力されると、自動演奏装置2は、自動演奏処理を開始する。これに伴って、同期設定装置3は、同期設定処理を開始する。
【0061】
同期設定処理が開始されると、同期設定装置3は、全ての配信装置について、どの配信モードが設定されているか、監視する(S41)。
図6の様に自装置が、同期設定装置3と配信装置とを兼ねている場合には、同期設定装置3は、自装置(第1配信装置1A)の配信モードを判断する。また、同期設定装置3は、ネットワーク等を介して、第2配信装置1Bの配信モードを判断する。上述したように、同期設定装置3は、IP(Internet Protocol)アドレスまたはMACアドレス等、ネットワーク接続されている他装置の識別情報を有している。
【0062】
同期設定装置3は、自装置または他装置の配信状態が変化した場合、または初期設定時には(S42のYES)、第1遅延時間Td1および第2遅延時間Td2を取得する。
【0063】
遅延時間は、各装置から直接取得してもよいが、各装置からは配信モードを示す情報を取得して、取得した配信モードから、各装置の遅延時間を推定してもよい。各配信装置から各子機へ配信を行なう場合、子機では、親機からの配信および再生等の処理により、親機よりも音が出力されるタイミングが遅れることになる。特に、無線ネットワークにおける配信では、フレームが正しく受信されない場合のフレーム再送等の処理を行う場合や、パケット欠損によるデータ再送等の処理を行なう場合等があり、子機における音の出力タイミングの遅れがより大きくなる。そこで、親機である第1配信装置1Aおよび第2配信装置1Bは、それぞれ子機との同期再生を行なうために、オーディオコンテンツを所定時間分だけバッファして、音の出力を遅らせる。したがって、遅延時間は、子機との同期再生を行なうために必要なバッファ容量に応じて設定される。また、配信装置1Aまたは配信装置1Bは、親機と子機とのネットワーク遅延を考慮して、配信の開始タイミングおよび親機の再生開始タイミングを調整することで、同期再生を行なってもよい。この場合、遅延時間は、配信の開始タイミングおよび親機の再生開始タイミングの時間差に相当する。上述のように、無線ネットワークを通じた配信では、遅延時間が500msに設定され、有線のネットワークを通じた配信では、遅延時間が100msに設定される。又、解除モードに対応させて、遅延時間Tdが0(ゼロ)msに設定される。
図6の例では、第1配信装置1Aは、有線による配信が行なわれるため、第1遅延時間Td1は、100msとして取得される。第2配信装置1Bは、無線による配信が行なわれるため、第2遅延時間Td2は、500msとして取得される。
【0064】
同期設定装置3は、取得した第1遅延時間Td1および第2遅延時間Td2を自動演奏装置2(再生装置)に出力して、自動演奏装置2に対して同期処理を実行させる(S44)。すなわち、自動演奏装置2は、遅延時間を取得した場合に(S21)、第1遅延時間および第2遅延時間に基づいて、同期処理を行なう(s22)。
【0065】
自動演奏装置2は、第1遅延時間Td1および第2遅延時間Td2に基づいて、第3コンテンツデータd3の再生のタイミングを調整する。この例では、最も遅延時間の大きい、第2配信装置1Bにおける500msに合わせて、ピアノパートの再生を、制御信号Scの出力タイミングを遅らせるまたはハンマーを動かすタイミングを機械的に遅らせることにより、500ms遅らせる。さらに、自動演奏装置2は、第1遅延時間Td1および第2遅延時間Td2に基づいて、第1コンテンツデータd1を第1配信装置1Aに付与するタイミングを調整する。第1配信装置1Aの第1遅延時間Td1は、第2遅延時間Td2よりも400ms短い(第2遅延時間Td2−第1遅延時間Td1)。したがって、自動演奏装置2は、第1コンテンツデータd1を400ms遅らせて付与する。一方で、自動演奏装置2は、第2配信装置に対しては、遅延時間ゼロで第2コンテンツデータ(d1+d3)を付与する。ただし、第3コンテンツデータd3は、旋律パートのMIDIデータである。したがって、実際に第2配信装置に対して付与される第2コンテンツデータは、MIDIデータである第3コンテンツデータd3がピアノ音のデジタルオーディオ信号に変換されたものと、伴奏パートのデジタルオーディオ信号である第1コンテンツデータd1とが合成されたものである。
【0066】
これにより、自動演奏装置2は、複数の配信装置に対してコンテンツデータを付与する場合であっても、全コンテンツの出力タイミングを同期させることができる。
【0067】
尚、同期設定装置3は、
図8に示すように、コントローラ12で実現されてもよい。この場合、コントローラ12は、第1配信装置1Aおよび第2配信装置1Bから、それぞれ第1遅延時間Td1および第2遅延時間Td2を取得して、自動演奏装置2に対して、第1遅延時間Td1および第2遅延時間Td2を出力して同期処理を実行させる。
【0068】
又、同期設定装置3は、
図9に示すように、自動演奏装置2に内蔵されていてもよい。この場合、自動演奏装置2は、第1配信装置1Aおよび第2配信装置1Bから、それぞれ第1遅延時間Td1および第2遅延時間Td2を取得して、自装置に対して、第1遅延時間Td1および第2遅延時間Td2を出力して同期処理を実行させる。
【0069】
尚、上述した配信システムは、再生装置である自動演奏装置2が、第1遅延時間Td1および第2遅延時間Td2に基づいて、第1コンテンツデータd1を第1配信装置1Aに付与するタイミングを調整することで同期処理を行う態様であった。しかし、第1配信装置1Aが、第2配信装置1Bの遅延時間を考慮して、第1配信装置1Aの遅延時間を調整することで同期処理を行なってもよい。すなわち、複数の配信装置のうちいずれか1つの配信装置が、配信システムのうち最も遅延時間が大きい配信装置を基準として、自装置の遅延時間を調整することで同期処理を行なってもよい。例えば、仮に第1配信装置1Aの遅延時間が最も大きい場合には、第2配信装置1Bが、第1配信装置1Aの遅延時間を考慮して、自装置(第2配信装置1B)の遅延時間を調整してもよい。
【0070】
尚、上述した実施形態では、再生装置が自動演奏装置2である場合について説明したが、再生装置は、自動演奏装置2に限らず、CD(Compact Disk)プレーヤ、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤ、テレビジョンなどの装置であってもよい。第1実施形態においては、再生装置は、再生したコンテンツデータを配信装置1に付与する。第2実施形態においては、再生装置は、再生したコンテンツデータのうち、第1コンテンツデータ(例えば英語音声)を第1配信装置1Aに付与し、第2コンテンツデータ(例えば日本語音声)を第2配信装置1Bに付与する。
【0071】
更に、上述した実施形態では、自動演奏装置2にMIDIデータ等の演奏データが入力される場合について説明したが、演奏データは、配信装置に入力されてもよい。第1実施形態においては、演奏データに含まれる自動演奏装置2の旋律パートのデータが、第2コンテンツデータd2として、配信装置1から自動演奏装置2に付与されることになる。この場合、伴奏パートの第1コンテンツデータd1は、配信装置1に設けられた音源(不図示)でデジタルオーディオ信号に変換されて、配信される。第2実施形態においては、例えば第2配信装置1Bに演奏データが入力された場合、伴奏パートのデータが、第1コンテンツデータd1として、第2配信装置1Bから第1配信装置1Aに付与される。あるいは、伴奏パートのデータは、第2配信装置1Bに設けられた音源(不図示)でデジタルオーディオ信号に変換されて、第1配信装置1Aに付与される。旋律パートのデータは、第3コンテンツデータd3として、第2配信装置1Bから自動演奏装置2に付与される。旋律パートおよび伴奏パートのデータは、第2配信装置1Bに設けられた音源(不図示)でデジタルオーディオ信号に変換された第2コンテンツデータとして、配信される。
【0072】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、配信装置の数は、3つ以上であってもよい。この場合、同期設定装置は、第3配信装置の第3遅延時間をさらに取得して、第1配信装置、第2配信装置、再生装置、または第3配信装置に対して、前記第1遅延時間、前記第2遅延時間、および第3遅延時間を出力する。同期処理は、第1配信装置、第2配信装置、再生装置、または第3配信装置のいずれかにおいて実行される。