(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記挙動変化量が前記閾値以上である期間が所定長以上継続した場合に、前記挙動変化量が前記閾値以上である期間以外の期間中に検出した前記相対位置の物標位置データを選択して前記地図情報と照合し、
前記挙動変化量が前記閾値以上である期間が前記所定長以上継続しない場合に、前記挙動変化量が前記閾値以上である期間中に検出した前記相対位置の物標位置データを、前記地図情報と照合する物標位置データに含める、
ことを特徴とする請求項1に記載の自己位置推定方法。
前記挙動変化量が前記閾値未満である状態が現在まで継続する期間中に検出した前記相対位置の物標位置データを選択して、前記地図情報と照合することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の自己位置推定方法。
前記挙動変化量が前記閾値以上である第1期間以前の期間であって前記挙動変化量が前記閾値未満である第2期間中に検出した前記相対位置の物標位置データと前記地図情報とを照合することにより前記第1期間以前の前記移動体の第1位置を推定し、
前記第1期間以後の期間であって前記挙動変化量が前記閾値未満である第3期間中に検出した前記相対位置の物標位置データと前記地図情報とを照合することにより前記第1期間以後の前記移動体の第2位置を推定し、
前記第1位置と前記第2位置との相対位置に基づいて、前記第2期間中に検出した前記相対位置の物標位置データを補正する、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の自己位置推定方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
(構成)
図1を参照する。以下、移動体の一例として車両の現在位置を推定する場合について説明するが、本発明は車両に限らず様々な移動体の現在位置の推定に広く適用することができる。
車両1には、自己位置推定装置2と運転支援システム3が搭載される。自己位置推定装置2は、撮像装置10と、距離測定装置11と、車輪速センサ12と、操舵角センサ13と、ジャイロセンサ14と、加速度センサ15と、自己位置推定回路16を備える。
【0009】
撮像装置10は、車両1の車室内などに取り付けられ、例えば車両1の前方領域を撮像する。撮像装置10は、例えば広角カメラであってよい。撮像装置10は、車両1の前方領域の撮像画像を自己位置推定回路16へ出力する。
距離測定装置11は、車両1の車室外などに取り付けられ、車両1の前方領域に電磁波を照射しその反射波を検出する。距離測定装置11は、例えばレーザレンジファインダであってよい。また、距離測定装置11の取り付け位置は、例えば車両1のボンネット、バンパー、ナンバープレート、ヘッドライト、又はサイドミラーの周辺であってよい。距離測定装置11は、測定結果を自己位置推定回路16へ出力する。
【0010】
車輪速センサ12は、車両1の車輪が1回転する毎に予め設定した数の車輪速パルスを発生させる。車輪速センサ12は、車輪速パルスを自己位置推定回路16へ出力する。
操舵角センサ13は、例えば、車両1のステアリングホイールを回転可能に支持するステアリングコラムに設けられる。操舵角センサ13は、操舵操作子であるステアリングホイールの現在の回転角度(操舵操作量)である現在操舵角を検出する。操舵角センサ13は、検出した現在操舵角を自己位置推定回路16へ出力する。
【0011】
ジャイロセンサ14は、車両1に発生するヨーレート、ピッチ方向の変位量、及びロール方向の変位量を検出する。ジャイロセンサ14は、検出したヨーレート、ピッチ方向の変位量、及びロール方向の変位量を自己位置推定回路16へ出力する。
加速度センサ15は、車両1に発生する車幅方向の加減速度である横G、及び前後方向の加減速度を検出する。加速度センサ15は、検出した横G及び前後方向の加減速度を自己位置推定回路16へ出力する。
【0012】
自己位置推定回路16は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、記憶装置及び周辺部品を含む電子回路装置である。
自己位置推定回路16は、撮像装置10、距離測定装置11、車輪速センサ12、操舵角センサ13、ジャイロセンサ14、及び加速度センサ15から受信した信号と、既知の物標の地図上の位置を示す地図情報に基づいて、車両1の地図上の現在位置を推定する。以下、車両1の地図上の現在位置を「自己位置」と表記することがある。自己位置推定回路16は、自己位置を示す自己位置信号を運転支援システム3へ出力する。
【0013】
運転支援システム3は、自己位置推定回路16から受信した自己位置信号が示す自己位置を用いて、運転者による車両1の運転に対する運転支援を行う。
運転支援の一例は、例えば運転者に対する警報等の情報提供であってよい。運転支援システム3は、車両1の自己位置に応じて運転者に提示する警報の種類及び強度の少なくとも一方を制御してよい。
運転支援の一例は、車両1の制動制御、加速制御及び操舵制御の少なくとも1つを含む車両1の走行状態の制御であってもよい。例えば運転支援システム3は、車両1の自己位置に応じて車両1に制動力及び駆動力のいずれを発生させるのかを決定してよい。
【0014】
次に、自己位置推定回路16の構成を説明する。
図2を参照する。自己位置推定回路16は、物標位置検出部20と、移動量推定部21と、挙動検出部22と、物標位置蓄積部23と、記憶装置24と、選択部25と、位置推定部26と、地図情報取得部27を備える。
自己位置推定回路16が備えるプロセッサは、記憶装置24に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、物標位置検出部20、移動量推定部21、挙動検出部22、物標位置蓄積部23、選択部25、位置推定部26及び地図情報取得部27の機能を実現する。
【0015】
物標位置検出部20は、撮像装置10が生成した車両1の前方領域の撮像画像を受信する。また、物標位置検出部20は、距離測定装置11の測定結果を受信する。
物標位置検出部20は、車両1の前方領域の撮像画像と距離測定装置11の測定結果に基づいて、車両1の周囲に存在する物標を検出する。例えば物標位置検出部20は、車両1の前方に存在する物標を検出する。
さらに、物標位置検出部20は、車両1に対する物標の相対位置を検出する。物標位置検出部20は、検出した相対位置を示す相対位置信号を物標位置蓄積部23へ出力する。
ここで物標とは、例えば車両1が走行する走行路面上の線(車線区分線等)や、路肩の縁石、ガードレール等であってよい。
【0016】
移動量推定部21は、車輪速センサ12、操舵角センサ13及びジャイロセンサ14から、それぞれ車輪速パルス、現在操舵角及びヨーレートを受信する。移動量推定部21は、車輪速センサ12、操舵角センサ13及びジャイロセンサ14から受信したこれらの信号に基づいて、前回の処理周期で車両1の自己位置を推定してから現在までの車両1の移動量ΔPを推定する。移動量推定部21は、推定した移動量ΔPを示す移動量信号を物標位置蓄積部23へ出力する。
【0017】
挙動検出部22は、車両1に発生するヨーレート、ピッチ方向の変位量(すなわちピッチ方向の回転量)、及びロール方向の変位量(すなわちロール方向の回転量)をジャイロセンサ14から受信する。挙動検出部22は、横G及び前後方向の加減速度を加速度センサ15から受信する。
挙動検出部22は、ジャイロセンサ14及び加速度センサ15から受信したこれらの信号に基づいて、車両1の基準静止姿勢からのピッチ方向及びロール方向の変位量、ヨーレート、横G、並びに前後方向の加減速度の少なくとも1つを、車両1の挙動変化量として検出する。挙動検出部22は、操舵角センサ13が検出した操舵制御量に基づいてヨーレートもしくは横Gを推定してもよい。
【0018】
物標位置蓄積部23は、物標位置検出部20から相対位置信号を受信し、移動量推定部21から移動量信号を受信する。
物標位置蓄積部23は、相対位置信号が示す車両1の周囲の物標の相対位置を記憶装置24に蓄積する。
また、物標位置蓄積部23は、過去に蓄積した物標の相対位置を、現在までの経過時間と移動量信号が示す移動量ΔPを用いて、車両1の現在位置に対する相対位置へ補正する。すなわち、物標位置蓄積部23は、現在までの経過時間に車両が移動した移動量ΔPだけ車両1の移動方向と逆方向に相対位置を移動させる。
【0019】
物標位置蓄積部23は、補正した相対位置である物標位置のデータ(以下「物標位置データ」と記載する場合がある)を記憶装置24に蓄積する。このとき挙動検出部22は、物標位置データの相対位置の検出時に検出した挙動変化量を、物標位置データに付加して記憶装置24に記憶する。
既に物標位置データが記憶装置24に蓄積されている場合には、物標位置蓄積部23は、移動量信号が示す移動量ΔPを用いて蓄積された物標位置データを更新する。すなわち物標位置蓄積部23は、蓄積された物標位置データの相対位置を、移動量ΔP分だけ車両1の移動方向と逆方向に移動させる。その後、物標位置蓄積部23は、移動量ΔP分だけ相対移動させた相対位置を、蓄積していた物標位置データに上書きする。
【0020】
選択部25は、記憶装置24に蓄積されている物標位置データから、車両1の自己位置の推定に用いる物標位置データを選択する。自己位置の推定に用いるために選択される物標位置データを、以下「選択済物標位置データ」と記載する場合がある。
選択部25は、例えば車両1の現在位置の周囲の物標の物標位置データを選択してよい。例えば、車両1の現在位置から約20m以内の物標の物標位置データを選択する。車両1の現在位置の周囲の物標の物標位置データは、移動量ΔPを用いた補正による誤差の蓄積が少ないので位置精度が高い傾向にある。例えば、道路境界であるレーンや縁石の位置データは走路内の横位置の精度が高い。
【0021】
また、車両1の挙動変化量が大きい場合には、物標の相対位置を検出する物標検出センサである撮像装置10や距離測定装置11の向きが、車両1の姿勢変化により変化してしまい、センサが検出した物標の相対位置に誤差が生じる。
図3を参照する。上段は、車両1の姿勢が所定の基準静止姿勢にある状態を示す。例えば基準静止姿勢は、車両1の車体水平方向と路面とが平行になる姿勢であってよい。下段は、基準静止姿勢からピッチ方向に車両1が回転している状態を示す。
【0022】
車両1が基準静止姿勢にある場合、車両1から距離L1だけ離れた前方の物標は、車体水平方向より角度θ下方の方向に検出される。
車両1がピッチ方向に回転していると(すなわちピッチ方向に変位していると)、車両1から距離L2だけ離れた物標が、車体水平方向より同一角度θ下方の方向に検出される。すなわち、車両1がピッチ方向に回転していることにより、車両1から距離L2だけ離れた物標との相対距離を誤って距離L1と検出することになる。このため測定誤差(L1−L2)が発生する。
【0023】
ピッチ方向の変位量に関しては、加減速などにより車両1のピッチ方向の変位が変化し、停止線などの物標の検出位置が変化してしまうことがある。例えば、ブレーキによる減速でピッチ方向に1度程度の姿勢変化があった場合に、距離5m先の停止線までの距離を約30cm短く誤算出してしまう。そのような物標位置データに基づき自己位置を推定すると、正確な位置より停止線へ30cm近く自己位置を誤算出してしまうため、交差点の右左折時などで所望の走行経路から外れてしまうおそれがある。
【0024】
このため選択部25は、物標位置データに付加されて挙動変化量として記憶装置24に記憶されているピッチ方向の変位量を参照し、ピッチ方向の変位量が所定の閾値未満である物標位置データを選択済物標位置データとして選択する。すなわち選択部25は、ピッチ方向の変位量が閾値未満である期間中に検出した相対位置の物標位置データを、選択済物標位置データとして選択する。
なお、ピッチ方向の変化は、車両1が加減速した際に発生する。したがって、挙動変化量として記憶装置24に記憶されている加減速度が所定の閾値未満である物標位置データを選択済物標位置データとして選択してもよい。
【0025】
図4を参照する。上段は、車両1の姿勢が所定の基準静止姿勢にある状態を示す。下段は、基準静止姿勢からロール方向に車両1が回転している状態を示す。
車両1が基準静止姿勢にある場合、車両1から距離L1だけ離れた側方の物標は、車体水平方向より角度θ下方の方向に検出される。
車両1がロール方向に回転していると(すなわちロール方向に変位していると)、車両1から距離L2だけ離れた物標が、車体水平方向より同一角度θ下方の方向に検出される。すなわち、車両1がロール方向に回転していることにより、車両1から距離L2だけ離れた物標との相対距離を誤って距離L1と検出することになる。このため測定誤差(L1−L2)が発生する。
【0026】
ロール方向の変位量に関しては、カントなどの影響によりロール方向の変位が変化し、車両1の側方にある白線や縁石等の物標の位置を誤算出してしまうことがある。例えば、カント2%程度の道路においてロール方向に1度程度の姿勢変化があった場合に、距離5m横の白線までの距離が約30cm短く誤算出してしまう。そのような物標位置データに基づき自己位置を推定すると、横方向に30cmずれて自己位置を誤算出してしまうため、縁石などに乗り上げてしまう可能性もある。
【0027】
このため選択部25は、物標位置データに付加されて挙動変化量として記憶装置24に記憶されているロール方向の変位量を参照し、ロール方向の変位量が所定の閾値未満である物標位置データを選択済物標位置データとして選択する。すなわち選択部25は、ロール方向の変位量が閾値未満である期間中に検出した相対位置の物標位置データを、選択済物標位置データとして選択する。
なお、ロール方向の変位は、車両1の旋回時に発生する。したがって、挙動変化量として記憶装置24に記憶されているヨーレート又は横Gが所定の閾値未満である物標位置データを選択済物標位置データとして選択してもよい。
【0028】
このようにして選択部25は、記憶装置
24に蓄積した物標位置データのうち、挙動変化量が閾値未満である期間中に検出した相対位置の物標位置データを、選択済物標位置データとして選択する。
挙動変化量が所定の閾値未満である物標位置データを選択することにより、車両1の挙動変化による誤差の少ない物標位置データが、車両1の自己位置の推定に用いる選択済物標位置データとして選択される。言い換えれば、挙動変化量が所定の閾値以上である物標位置データを選択しないことにより、車両1の挙動変化による誤差の大きな物標位置データが、車両1の自己位置の推定に用いる選択済物標位置データから除外される。なお、挙動変化量が閾値未満である期間中に検出した相対位置の物標位置データを、選択済物標位置データとしてすべて選択する必要はなく、地図情報取得部27が取得した地図情報と照合して、車両1の自己位置を推定できるために必要な物標位置データのみ選択するようにしてもよい。
【0029】
図5を参照する。円形のプロットは物標位置データが示す物標の位置を、三角形のプロットは地図情報が示す物標の地図上の位置を模式的に示す。
挙動変化量が所定の閾値未満の物標位置データを選択することで、車両1の挙動変化による誤差が小さく地図上の位置に良好にマッチングする物標位置データを選択し、挙動変化による誤差が大きく地図上の位置にマッチングしにくいデータを除外できる。
【0030】
図2を参照する。位置推定部26は、選択済物標位置データを、地図情報取得部27が取得した地図情報と照合することにより、車両1の自己位置を推定する。
地図情報取得部27は、地図データと、地図データ上に存在する物標の地図上の位置を示す地図情報を取得する。例えば、地図情報取得部27は、カーナビゲーションシステムや地図データベース等である。なお、地図情報取得部27は、無線通信(路車間通信、または、車車間通信でも可)等の通信システムを介して外部から地図情報を取得してもよい。この場合、地図情報取得部27は、定期的に最新の地図情報を入手して、保有する地図情報を更新してもよい。また、地図情報取得部27は、車両1が実際に走行した走路で検出した物標の位置情報を、地図情報として蓄積してもよい。
【0031】
位置推定部26は、例えば以下のようなデータ照合処理によって、選択済物標位置データと地図情報とを照合して車両1の自己位置を推定してよい。
図6を参照する。参照符号S
iは選択済物標位置データを示す。インデックスiは1〜Nの整数であり、Nは選択済物標位置データの個数である。
位置推定部26は、前回の処理周期で推定した自己位置を移動量ΔPで補正して車両1の仮位置を決定する。
【0032】
位置推定部26は、車両1の地図上の位置が仮位置であると仮定して、選択済物標位置データS
iが示す物標の相対位置を地図上の絶対位置に変換する。位置推定部26は、選択済物標位置データS
iの絶対位置に最も近い地図情報中の物標の位置情報M
jを選択する。
図6の例では、位置情報M
xが選択済物標位置データS
1に最も近く、位置情報M
yが選択済物標位置データS
2に最も近く、位置情報M
zが選択済物標位置データS
3に最も近い。
位置推定部26は、選択済物標位置データS
iとこのデータに最も近い位置情報M
jとの距離D
ijを算出し、以下の式(1)を用いて距離D
ijの平均Sを算出する。
【0034】
位置推定部26は、数値解析により、平均Sが最小となる車両1の位置及び姿勢を算出して、車両1の自己位置の推定値として決定する。位置推定部26は、自己位置の推定値を運転支援システム3へ出力する。
【0035】
(動作)
次に、第1実施形態に係る自己位置推定装置2の動作について説明する。
図7を参照する。
ステップS1において撮像装置10、距離測定装置11、及び物標位置検出部20は、車両1の周囲に存在する物標の車両1に対する相対位置を検出する。物標位置検出部20は、検出した相対位置を示す相対位置信号を物標位置蓄積部23へ出力する。
ステップS2において移動量推定部21は、前回の処理周期で車両1の自己位置を推定してから現在までの車両1の移動量ΔPを推定する。
【0036】
ステップS3においてジャイロセンサ14、加速度センサ15、及び挙動検出部22は、車両1の挙動変化量を検出する。
ステップS4において物標位置蓄積部23は、相対位置信号が示す車両1の周囲の物標の相対位置を記憶装置24に蓄積する。また物標位置蓄積部23は、過去に蓄積した物標の相対位置を、現在までの経過時間と移動量信号が示す移動量ΔPを用いて車両1の現在位置に対する相対位置へ補正し、物標位置データとして記憶装置24に蓄積する。このとき挙動検出部22は、物標位置データの相対位置の検出時に検出した挙動変化量を、物標位置データに付加して記憶装置24に記憶する。
【0037】
ステップS5において選択部25は、記憶装置
24に蓄積した物標位置データのうち、挙動変化量が閾値未満である期間中に検出した相対位置の物標位置データを、選択済物標位置データとして選択する。
ステップS6において位置推定部26は、選択済物標位置データと地図情報とを照合して車両1の自己位置を推定する。
ステップS7において運転支援システム3は、位置推定部26が推定した車両1の自己位置を用いて、運転者による車両1の運転に対する運転支援を実施する。
【0038】
(第1実施形態の効果)
(1)物標検出センサとしての撮像装置10及び距離測定装置11と物標位置検出部20とは、車両1の周囲に存在する物標の車両1に対する相対位置を検出する。移動量推定部21は、車両1の移動量を推定する。物標位置蓄積部23は、車両1の移動量に基づき相対位置を補正して物標位置データとして蓄積する。挙動センサとしてのジャイロセンサ14及び加速度センサ15と挙動検出部22とは、車両1の挙動変化量を検出する。選択部25は、蓄積した物標位置データのうち、挙動変化量が閾値未満である期間中に検出した相対位置の物標位置データを選択する。位置推定部26は、選択した物標位置データと物標の地図上の位置を示す地図情報とを照合することで車両1の現在位置を推定する。
【0039】
挙動変化量が閾値未満である期間に検出した相対位置の物標位置データを選択して車両1の位置推定に用いるので、移動体の挙動変化による姿勢変化のために物標位置データに誤差が発生しても、誤差が大きい物標位置データを位置推定から除外できる。このため、移動体の挙動変化により物標位置データに発生する誤差による車両1の位置推定精度の低下を抑制できる。
【0040】
(2)選択部25は、車両1の現在位置の周囲の物標の物標位置データを選択し、位置推定部26は、選択した物標位置データと地図情報と照合する。車両1の現在位置の周囲の物標の物標位置データは、移動量ΔPを用いた補正による誤差の蓄積が少ないので位置精度が高い傾向にある。車両1の現在位置の周囲の物標の物標位置データを選択して車両1の位置推定に用いることにより、車両1の位置推定精度を向上することができる。
【0041】
(3)挙動変化量には、車両1のピッチ方向の回転量を含んでよい。すなわち、選択部25は、車両1のピッチ方向の回転量が閾値未満である期間中に検出した相対位置の物標位置データを、位置推定に用いる物標位置データとして選択してよい。このため、車両1のピッチ方向の回転により物標位置データに発生する誤差による車両1の位置推定精度の低下を抑制できる。
【0042】
(4)挙動変化量には、車両1のロール方向の回転量を含んでよい。すなわち、選択部25は、車両1のロール方向の回転量が閾値未満である期間中に検出した相対位置の物標位置データを、位置推定に用いる物標位置データとして選択してよい。このため、車両1のロール方向の回転により物標位置データに発生する誤差による車両1の位置推定精度の低下を抑制できる。
【0043】
(5)挙動変化量には、車両1の加減速度を含んでよい。すなわち、選択部25は、車両1の加減速度が閾値未満である期間中に検出した相対位置の物標位置データを、位置推定に用いる物標位置データとして選択してよい。車両1の加減速度は、前後方向の加減速度であってもよく横Gであってもよい。
車両1のピッチ方向の回転は前後方向の加減速度によって生じ、ロール方向の回転は
横方向の加減速度によって生じる。
車両1の加減速度が閾値未満である期間中に検出した相対位置の物標位置データを用いることにより、加減速度によりピッチ方向又はロール方向に生じた回転により物標位置データに発生する誤差による車両1の位置推定精度の低下を抑制できる。
【0044】
(変形例)
(1)選択部25は、挙動変化量が閾値以上である期間に検出した相対位置の物標位置データを記憶装置24から削除してもよい。すなわち、選択部25は、挙動変化量が閾値未満である期間に検出した相対位置の物標位置データを選択して記憶装置24に残してよい。位置推定部26は、記憶装置24に残っている物標位置データと物標の地図上の位置を示す地図情報とを照合することで車両1の現在位置を推定してよい。
挙動変化量が閾値以上である期間に検出した相対位置の物標位置データを記憶装置24から削除することにより、記憶装置24の記憶領域を有効に活用することができる。
【0045】
(2)選択部25は、車両1の挙動変化が一時的な変化であり自己位置の推定精度に影響しない場合には、挙動変化量が所定の閾値以上である期間の物標位置データであっても選択済物標位置データから除外しなくてもよい。
例えば、挙動変化量が閾値以上である期間が所定長以上継続しない場合には、選択部25は、挙動変化量が閾値未満である期間に加え、挙動変化量が閾値以上である期間中に検出した相対位置の物標位置データも、選択済物標位置データとして選択する。
一方で、選択部25は、挙動変化量が閾値以上である期間が所定長以上継続した場合に、挙動変化量が閾値未満である期間(すなわち挙動変化量が閾値以上である期間以外の期間)中に検出した相対位置の物標位置データを選択済物標位置データとして選択する。
例えば、選択部25は、閾値以上の挙動変化量を所定回数連続して検出した場合に、挙動変化量が閾値以上である期間が所定長以上継続すると判断してよい。
【0046】
また、選択部25は、閾値以上の挙動変化量が継続した後、挙動変化量が閾値未満の期間が所定長以上継続しない場合には、挙動変化量が閾値未満の状態が所定長以上継続しない期間中に検出した相対位置の物標位置データを選択済物標位置データから除外する。
例えば選択部25は、閾値以上の挙動変化量を所定回数連続して検出した期間の開始時点から、閾値未満の挙動変化量を所定回数連続して検出した期間の開始時点までの期間中に検出した相対位置の物標位置データを選択済物標位置データから除外する。
このように、挙動変化量が閾値以上である期間が所定長以上継続した場合に、この期間以外の期間に検出した相対位置の物標位置データを選択するので、自己位置の推定精度に影響を与える挙動変化が発生した期間の物標位置データを適切に除外できる。
【0047】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態の自己位置推定装置2を説明する。
渋滞などで車両が低速で加減速を繰返した場合や、交差点などで車両が旋回をした場合には、車輪速パルスの精度が悪化して車両1の進行方向の移動量ΔPの測定精度が低下する。このような移動量ΔPを用いて記憶装置24に蓄積した物標位置データを補正すると、物標位置データに誤差が蓄積する。車両1に大きなヨーレートや横Gが発生した場合も同様である。
【0048】
このため、閾値以上の挙動変化量が発生した場合に、選択部25はそれ以前に検出した相対位置の物標位置データを選択済物標位置データから除外し、挙動変化量が閾値未満になった後に検出した相対位置の物標位置データを選択済物標位置データとして選択する。すなわち選択部25は、挙動変化量が閾値未満である状態が現在まで継続する期間中に検出した相対位置の物標位置データを選択済物標位置データとして選択する。なお、挙動変化量が閾値未満である状態が現在まで継続する期間中に検出した相対位置の物標位置データを選択済物標位置データとしてすべて選択する必要はなく、地図情報取得部27が取得した地図情報と照合して、車両1の自己位置を推定できるために必要な物標位置データのみ選択するようにしてもよい。
【0049】
図8を参照する。
ステップS10及びS11の処理は、
図7のステップS1及びS2の処理と同様である。
ステップS12において物標位置蓄積部23は、相対位置信号が示す車両1の周囲の物標の相対位置を記憶装置24に蓄積する。また物標位置蓄積部23は、過去に蓄積した物標の相対位置を、現在までの経過時間と移動量信号が示す移動量ΔPを用いて車両1の現在位置に対する相対位置へ補正し、物標位置データとして記憶装置24に蓄積する。
ステップS13の処理は、
図7のステップS3の処理と同様である。
【0050】
ステップS14において選択部25は、挙動変化量が閾値以上になったか否かを判断する。挙動変化量が閾値以上になった場合(ステップS14:Y)に処理はステップS15へ進む。挙動変化量が閾値以上にならない場合(ステップS14:N)に処理はステップS17へ進む。
ステップS15において選択部25は、挙動変化量が閾値未満になったか否かを判断する。挙動変化量が閾値未満になった場合(ステップS15:Y)に処理はステップS16へ進む。挙動変化量が閾値未満にならない場合(ステップS
15:N)に処理はステップS17へ進む。
【0051】
ステップS16において選択部25は、挙動変化量が閾値未満になる前に検出した相対位置の物標位置データを記憶装置24から削除する。すなわち、選択部25は、挙動変化量が閾値未満である状態が現在まで継続する期間中に検出した相対位置の物標位置データを選択して記憶装置24に残す。
ステップS17において位置推定部26は、記憶装置24に残っている物標位置データと地図情報とを照合することで車両1の現在位置を推定する。
ステップS18の処理は、
図7のステップS7の処理と同様である。
【0052】
(第2実施形態の効果)
(1)選択部25は、挙動変化量が閾値未満である状態が現在まで継続する期間中に検出した相対位置の物標位置データを選択済物標位置データとして選択する。位置推定部26は、記憶装置24に残っている選択済物標位置データと物標の地図上の位置を示す地図情報とを照合することで車両1の現在位置を推定する。このため、車両1の挙動変化による誤差を含んだ移動量ΔPで補正され精度が低下した物標位置データを選択済物標位置データから除外できる。このため、挙動変化により移動量ΔPの測定誤差が発生しても、自己位置の推定精度の低下を抑制することができる。
【0053】
(2)挙動変化量には、車両1の加減速度を含んでよい。すなわち、選択部25は、車両1の加減速度が閾値未満である状態が現在まで継続する期間中に検出した相対位置の物標位置データを選択済物標位置データとして選択してよい。車両1の加減速度は、前後方向の加減速度、横G、ヨーレートであってよい。
このため、車両1に生じた加減速度によって移動量ΔPの測定誤差が発生しても、自己位置の推定精度の低下を抑制することができる。
【0054】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態の自己位置推定装置2を説明する。
挙動変化量が閾値未満である状態が継続している間に検出した相対位置の物標位置データを用いて自己推定を行うことで、物標との相対位置や移動量ΔPに生じる測定誤差を抑制して車両1の自己位置を推定できる。
したがって、ある第1期間で挙動変化量が閾値以上になった場合、第1期間以前の挙動変化量が閾値未満であった第2期間中と、第1期間以後に挙動変化量が閾値未満になる第3期間中では、それぞれ車両1の自己位置を高い精度で検出することができる。このため、第2期間中に推定した車両1の自己位置と第3期間中に推定した車両1の自己位置との間の相対位置を高い精度で算出することができる。
【0055】
したがって、第2期間に検出した相対位置の物標位置データが、挙動変化量が閾値以上である第1期間に誤差を含んだ移動量ΔPで補正されて精度が低下しても、第2期間で推定した自己位置と第3期間で推定した自己位置との間の相対位置を用いて補正できる。
第3実施形態の自己位置推定回路16は、第2期間中に推定した自己位置と第3期間中に推定した自己位置との間の相対位置を用いて第2期間に検出した相対位置の物標位置データを補正する。
【0056】
図9を参照する。自己位置推定回路16は、補正部28を備える。自己位置推定回路16が備えるプロセッサは、記憶装置24に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、補正部28の機能を実現する。
位置推定部26は、第1期間以前の挙動変化量が閾値未満であった第2期間において、第2期間中に検出した相対位置の物標位置データと地図情報とを照合することにより第1期間以前の車両1の第1位置を推定する。位置推定部26は、第1位置を運転支援システム3及び補正部28に出力する。
補正部28は、第2期間において推定した車両1の第1位置の情報を、第2期間中に検出した相対位置の物標位置データに付加して記憶装置24に記憶する。
【0057】
位置推定部26は、第1期間以後の挙動変化量が閾値未満であった第3期間において、第3期間中に検出した相対位置の物標位置データと地図情報とを照合することにより第1期間以後の車両1の第2位置を推定する。位置推定部26は、第2位置を補正部28に出力する。
補正部28は、第1位置と第2位置との相対位置に基づいて、第2期間中に検出した相対位置の物標位置データを補正する。
【0058】
第2期間中に検出した相対位置の物標位置データが補正された後、位置推定部26は、補正された物標位置データ及び第3期間中に検出した相対位置の物標位置データと地図情報とを照合することにより、第1期間以後の車両1の第2位置を推定する。なお、補正された物標位置データ及び第3期間中に検出した相対位置の物標位置データのすべての物標位置データと地図情報とを照合する必要はなく、車両1の自己位置を推定できるために必要な物標位置データのみと地図情報とを照合するようにしてもよい。
位置推定部26は、物標位置データの補正後に推定した第2位置を運転支援システム3に出力する。位置推定部26は、物標位置データの補正後に推定した第2位置の情報を、第3期間中に検出した相対位置の物標位置データに付加して記憶装置24に記憶する。
【0059】
図10を参照する。ステップS20〜S23の処理は、
図8のステップS10〜S13の処理と同様である。
ステップS24において選択部25は、挙動変化量が閾値以上になったか否かを判断する。挙動変化量が閾値以上になった場合(ステップS24:Y)に処理はステップS25へ進む。挙動変化量が閾値以上にならない場合(ステップS24:N)に処理はステップS32へ進む。
ステップS25において選択部25は、挙動変化量が閾値未満になったか否かを判断する。挙動変化量が閾値未満になった場合(ステップS25:Y)に処理はステップS26へ進む。挙動変化量が閾値未満にならない場合(ステップS25:N)に処理はステップS32へ進む。
【0060】
ステップS26において選択部25は、挙動変化量が閾値以上であった第1期間に検出した相対位置の物標位置データを記憶装置24から削除する。
ステップS27において選択部25は、第1期間以後に挙動変化量が閾値未満になった第3期間に検出した相対位置の物標位置データを選択する。
ステップS28において位置推定部26は、ステップS27で選択した物標位置データと地図情報とを照合して車両1の第2位置を推定する。
【0061】
ステップS29において補正部28は、第1期間以前の挙動変化量が閾値未満になった第2期間の物標位置データに付加して記憶された、第2期間に推定した車両1の第1位置の情報を記憶装置24から読み出す。補正部28は、第1位置と第2位置との相対位置に基づいて、第2期間中に検出した相対位置の物標位置データを補正する。
ステップS30において位置推定部26は、記憶装置24に残っている物標位置データ(すなわちステップS29で補正した物標位置データ及び第3期間に検出した相対位置の物標位置データ)と地図情報とを照合することで第1期間以後の第2位置を推定する。補正部28は、ステップS30において推定した車両1の第2位置の情報を、第3期間中に検出した相対位置の物標位置データに付加して記憶装置24に記憶する。
ステップS31の処理は、
図8のステップS18の処理と同様である。
ステップS32の処理は、
図8のステップS17の処理と同様である。ステップS32の後、処理はステップS31へ進む。
【0062】
(第3実施形態の効果)
位置推定部26は、挙動変化量が閾値以上である第1期間以前の期間であって挙動変化量が閾値未満である第2期間中に検出した相対位置の物標位置データと地図情報とを照合することにより第1期間以前の車両1の第1位置を推定する。また、位置推定部26は、第1期間以後の期間であって挙動変化量が閾値未満である第3期間中に検出した相対位置の物標位置データと地図情報とを照合することにより第1期間以後の車両1の第2位置を推定する。補正部28は、第1位置と第2位置との相対位置に基づいて、第2期間中に検出した相対位置の物標位置データを補正する。位置推定部26は、補正した物標位置データ及び第3期間中に検出した相対位置の物標位置データと地図情報とを照合することにより車両1の自己位置を推定する。
これにより、挙動変化量が閾値以上である第1期間以前に検出した相対位置の物標位置データを再度利用することができるので、自己位置推定の精度を向上できる。
【0063】
ここに記載されている全ての例及び条件的な用語は、読者が、本発明と技術の進展のために発明者により与えられる概念とを理解する際の助けとなるように、教育的な目的を意図したものであり、具体的に記載されている上記の例及び条件、並びに本発明の優位性及び劣等性を示すことに関する本明細書における例の構成に限定されることなく解釈されるべきものである。本発明の実施例は詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であると解すべきである。