特許第6575686号(P6575686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575686
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】自己位置推定方法及び自己位置推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20190909BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   G01C21/30
   G05D1/02 H
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-530245(P2018-530245)
(86)(22)【出願日】2016年7月26日
(86)【国際出願番号】JP2016071922
(87)【国際公開番号】WO2018020589
(87)【国際公開日】20180201
【審査請求日】2018年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 博幸
(72)【発明者】
【氏名】佐野 泰仁
(72)【発明者】
【氏名】土谷 千加夫
(72)【発明者】
【氏名】南里 卓也
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−250906(JP,A)
【文献】 特開2012−103858(JP,A)
【文献】 特開2012−8706(JP,A)
【文献】 特開2003−252149(JP,A)
【文献】 特開2016−17758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/30
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周囲に存在する物標の前記移動体に対する相対位置を検出し、
前記移動体の移動量を推定し、
前記移動体の移動量に基づき前記相対位置を補正して物標位置データとして蓄積し、
前記移動体の走行路の勾配量を検出し、
蓄積した前記物標位置データのうち、勾配量が閾値未満である区間の物標の物標位置データを選択し、
選択した前記物標位置データと2次元地図上の前記物標の位置を示す地図情報とを照合することにより前記移動体の現在位置を推定する、
ことを特徴とする自己位置推定方法。
【請求項2】
前記閾値以上の勾配量を有する勾配区間を通過してから現在位置までの区間の物標の物標位置データを選択して、前記地図情報と照合することを特徴とする請求項1に記載の自己位置推定方法。
【請求項3】
前記勾配区間へ進入する前に前記閾値未満の勾配量を有する第1区間の物標の物標位置データと前記地図情報とを照合することにより前記勾配区間へ進入する前の前記移動体の第1位置を推定し、
前記勾配区間を通過した後に前記閾値未満の勾配量を有する第2区間の物標の物標位置データと前記地図情報とを照合することにより前記勾配区間を通過した後の前記移動体の第2位置を推定し、
前記第1位置と前記第2位置との相対位置に基づいて、前記第1区間の物標の前記物標位置データを補正する、
ことを特徴とする請求項2に記載の自己位置推定方法。
【請求項4】
前記閾値以上の勾配量を有する区間が所定長以上継続した場合に、前記閾値未満の勾配量を有する区間の物標の物標位置データを選択して前記地図情報と照合し、
前記閾値以上の勾配量を有する区間が前記所定長以上継続しない場合に、前記閾値以上の勾配量を有する区間の物標の物標位置データを、前記地図情報と照合する物標位置データに含める、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の自己位置推定方法。
【請求項5】
前記移動体の走行路の勾配量が大きいほど前記所定長を短く設定することを特徴とする請求項4に記載の自己位置推定方法。
【請求項6】
前記移動体の現在位置の周囲の物標の物標位置データを選択して前記地図情報と照合することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の自己位置推定方法。
【請求項7】
移動体の周囲に存在する物標の前記移動体に対する相対位置を検出する物標検出センサと、
前記移動体の車輪速を検出する車輪速センサと、
前記移動体の走行路の勾配量を検出する勾配検出センサと、
少なくとも前記車輪速センサの検出結果に応じて前記移動体の移動量を推定し、前記物標検出センサが検出した前記相対位置を前記移動量に基づき補正して物標位置データとして記憶装置に蓄積し、蓄積した前記物標位置データのうち、勾配量が閾値未満である区間の物標の物標位置データを選択し、選択した前記物標位置データと2次元地図上の前記物標の位置を示す地図情報とを照合することにより前記移動体の現在位置を推定する自己位置推定回路と、
を備えることを特徴とする自己位置推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己位置推定方法及び自己位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の物標と移動体との間の相対位置を検出して移動体の位置を推定する技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。
特許文献1に記載のロボットは、移動可能な領域を点集合データで示す点環境地図と、ロボットに搭載したレーザーレンジセンサの検出結果を点集合データで示す周囲環境情報との位置ずれ量に基づき、ロボットの自己位置の推定結果を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008‐250906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
勾配区間では斜距離と水平距離との間に差があるため、2次元地図上の移動体の位置の推定精度が低下するおそれがある。
本発明は、勾配区間における斜距離と水平距離との間の差に起因する2次元地図上の位置の推定精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る自己位置推定方法では、移動体の周囲に存在する物標の相対位置を検出し、移動体の移動量に基づき相対位置を補正して物標位置データとして蓄積する。蓄積した物標位置データのうち、勾配量が閾値未満である区間の物標の物標位置データと2次元地図上の物標の位置を示す地図情報とを照合することにより前記移動体の現在位置を推定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、勾配区間における斜距離と水平距離との間の差に起因する2次元地図上の位置の推定精度の低下を抑制できる。
本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に示した要素及びその組合せを用いて具現化され達成される。前述の一般的な記述及び以下の詳細な記述の両方は、単なる例示及び説明であり、特許請求の範囲のように本発明を限定するものでないと解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の自己位置推定装置を搭載した車両の概略構成の一例のブロック図である。
図2】自己位置推定回路の概略構成の一例のブロック図である。
図3】物標位置データと地図情報との照合による自己位置の推定方法の一例の説明図である。
図4】勾配に起因する物標位置データの誤差の説明図である。
図5】勾配に起因する車両の位置推定誤差の説明図である。
図6】選択済物標位置データの説明図である。
図7】第1実施形態の自己位置推定方法の一例を示すフローチャートである。
図8】勾配区間通過判定処理の一例を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態の自己位置推定回路の概略構成の一例のブロック図である。
図10】第2実施形態の自己位置推定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
(構成)
図1を参照する。以下、移動体の一例として車両の現在位置を推定する場合について説明するが、本発明は車両に限らず様々な移動体の現在位置の推定に広く適用することができる。
車両1には、自己位置推定装置2と運転支援システム3が搭載される。自己位置推定装置2は、撮像装置10と、距離測定装置11と、車輪速センサ12と、操舵角センサ13と、ジャイロセンサ14と、加速度センサ15と、自己位置推定回路16を備える。
【0009】
撮像装置10は、車両1の車室内などに取り付けられ、例えば車両1の前方領域を撮像する。撮像装置10は、例えば広角カメラであってよい。撮像装置10は、車両1の前方領域の撮像画像を自己位置推定回路16へ出力する。
距離測定装置11は、車両1の車室外などに取り付けられ、車両1の前方領域に電磁波を照射しその反射波を検出する。距離測定装置11は、例えばレーザレンジファインダであってよい。また、距離測定装置11の取り付け位置は、例えば車両1のボンネット、バンパー、ナンバープレート、ヘッドライト、又はサイドミラーの周辺であってよい。距離測定装置11は、測定結果を自己位置推定回路16へ出力する。
【0010】
車輪速センサ12は、車両1の車輪が1回転する毎に予め設定した数の車輪速パルスを発生させる。車輪速センサ12は、車輪速パルスを自己位置推定回路16へ出力する。
操舵角センサ13は、例えば、車両1のステアリングホイールを回転可能に支持するステアリングコラムに設けられる。操舵角センサ13は、操舵操作子であるステアリングホイールの現在の回転角度(操舵操作量)である現在操舵角を検出する。操舵角センサ13は、検出した現在操舵角を自己位置推定回路16へ出力する。
【0011】
ジャイロセンサ14は、車両1に発生するヨーレート、ピッチ方向の変位量、及びロール方向の変位量を検出する。ジャイロセンサ14は、検出したヨーレート、ピッチ方向の変位量、及びロール方向の変位量を自己位置推定回路16へ出力する。
加速度センサ15は、車両1に発生する車幅方向の加減速度である横G、及び前後方向の加減速度を検出する。加速度センサ15は、検出した横G及び前後方向の加減速度を自己位置推定回路16へ出力する。
【0012】
自己位置推定回路16は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、記憶装置及び周辺部品を含む電子回路装置である。
自己位置推定回路16は、撮像装置10、距離測定装置11、車輪速センサ12、操舵角センサ13、及びジャイロセンサ14から受信した信号と、既知の物標の2次元地図上の位置を示す2次元地図情報に基づいて、車両1の地図上の現在位置を推定する。以下、車両1の地図上の現在位置を「自己位置」と表記することがある。自己位置推定回路16は、自己位置を示す自己位置信号を運転支援システム3へ出力する。
【0013】
運転支援システム3は、自己位置推定回路16から受信した自己位置信号が示す自己位置を用いて、運転者による車両1の運転に対する運転支援を行う。
運転支援の一例は、例えば運転者に対する警報等の情報提供であってよい。運転支援システム3は、車両1の自己位置に応じて運転者に提示する警報の種類及び強度の少なくとも一方を制御してよい。
運転支援の一例は、車両1の制動制御、加速制御及び操舵制御の少なくとも1つを含む車両1の走行状態の制御であってもよい。例えば運転支援システム3は、車両1の自己位置に応じて車両1に制動力及び駆動力のいずれを発生させるのかを決定してよい。
【0014】
次に、自己位置推定回路16の構成を説明する。図2を参照する。自己位置推定回路16は、物標位置検出部20と、移動量推定部21と、勾配検出部22と、物標位置蓄積部23と、記憶装置24と、選択部25と、位置推定部26と、地図情報取得部27を備える。
自己位置推定回路16が備えるプロセッサは、記憶装置24に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、物標位置検出部20、移動量推定部21、勾配検出部22、物標位置蓄積部23、選択部25、位置推定部26、及び地図情報取得部27の機能を実現する。
【0015】
物標位置検出部20は、撮像装置10が生成した車両1の前方領域の撮像画像を受信する。また、物標位置検出部20は、距離測定装置11の測定結果を受信する。
物標位置検出部20は、車両1の前方領域の撮像画像と距離測定装置11の測定結果に基づいて、車両1の周囲に存在する物標を検出する。例えば物標位置検出部20は、車両1の前方に存在する物標を検出する。
さらに、物標位置検出部20は、車両1に対する物標の相対位置を検出する。物標位置検出部20は、検出した相対位置を示す相対位置信号を物標位置蓄積部23へ出力する。
ここで物標とは、例えば車両1が走行する走行路面上の線(車線区分線等)や、路肩の縁石、ガードレール等であってよい。
【0016】
移動量推定部21は、車輪速センサ12、操舵角センサ13及びジャイロセンサ14から、それぞれ車輪速パルス、現在操舵角及びヨーレートを受信する。移動量推定部21は、車輪速センサ12、操舵角センサ13及びジャイロセンサ14から受信したこれらの信号に基づいて、前回の処理周期で車両1の自己位置を推定してから現在までの車両1の移動量ΔPをオドメトリにより推定する。移動量推定部21は、推定した移動量ΔPを示す移動量信号を物標位置蓄積部23へ出力する。
【0017】
勾配検出部22は、ジャイロセンサ14からピッチ方向の変位量を受信する。勾配検出部22は、ジャイロセンサ14から受信したピッチ方向の変位量に基づいて車両1の走行路の勾配量、すなわち車両1の走行方向の傾斜を検出する。
また、勾配検出部22は、撮像装置10が生成した車両1の前方領域の撮像画像を受信してもよい。勾配検出部22は、撮像画像を解析することにより3D点群のフローに基づいて車両1の走行路の勾配量を検出してもよい。
勾配検出部22は、車両1の走行路が勾配区間であるか否かを判定する。例えば勾配検出部22は、車両1の走行路の勾配量が所定の閾値以上である場合に走行路が勾配区間であると判定してよい。勾配検出部22は、判定結果を示す判定結果信号を選択部25に出力する。
【0018】
物標位置蓄積部23は、物標位置検出部20から相対位置信号を受信し、移動量推定部21から移動量信号を受信する。
物標位置蓄積部23は、相対位置信号が示す車両1の周囲の物標の相対位置を記憶装置24に蓄積する。
また、物標位置蓄積部23は、過去に蓄積した物標の相対位置を、現在までの経過時間と移動量信号が示す移動量ΔPを用いて、車両1の現在位置に対する相対位置へ補正する。すなわち、物標位置蓄積部23は、現在までの経過時間に車両が移動した移動量ΔPだけ車両1の移動方向と逆方向に相対位置を移動させる。
【0019】
物標位置蓄積部23は、補正した相対位置である物標位置のデータ(以下「物標位置データ」と記載する場合がある)を記憶装置24に蓄積する。
既に物標位置データが記憶装置24に蓄積されている場合には、物標位置蓄積部23は、移動量信号が示す移動量ΔPを用いて蓄積された物標位置データを更新する。すなわち物標位置蓄積部23は、蓄積された物標位置データの相対位置を、移動量ΔP分だけ車両1の移動方向と逆方向に移動させる。その後、物標位置蓄積部23は、移動量ΔP分だけ相対移動させた相対位置を、蓄積していた物標位置データに上書きする。
【0020】
選択部25は、記憶装置24に蓄積されている物標位置データから、車両1の自己位置の推定に用いる物標位置データを選択する。自己位置の推定に用いるために選択される物標位置データを、以下「選択済物標位置データ」と記載する場合がある。
選択部25が選択済物標位置データを選択する処理については後述する。
【0021】
位置推定部26は、選択済物標位置データを、地図情報取得部27が取得した2次元地図情報と照合することにより、車両1の自己位置を推定する。
地図情報取得部27は、地図データと、地図データ上に存在する物標の2次元地図上の位置を示す2次元地図情報を取得する。例えば、地図情報取得部27は、カーナビゲーションシステムや地図データベース等である。なお、地図情報取得部27は、無線通信(路車間通信、または、車車間通信でも可)等の通信システムを介して外部から2次元地図情報を取得してもよい。この場合、地図情報取得部27は、定期的に最新の2次元地図情報を入手して、保有する2次元地図情報を更新してもよい。また、地図情報取得部27は、車両1が実際に走行した走路で検出した物標の位置情報を、2次元地図情報として蓄積してもよい。
【0022】
位置推定部26は、例えば以下のようなデータ照合処理によって、選択済物標位置データと2次元地図情報とを照合して車両1の自己位置を推定してよい。
図3を参照する。参照符号Sは選択済物標位置データを示す。インデックスiは1〜Nの整数であり、Nは選択済物標位置データの個数である。
位置推定部26は、前回の処理周期で推定した自己位置を移動量ΔPで補正して車両1の仮位置を決定する。
【0023】
位置推定部26は、車両1の2次元地図上の位置が仮位置であると仮定して、選択済物標位置データSが示す物標の相対位置を2次元地図上の絶対位置に変換する。位置推定部26は、選択済物標位置データSの絶対位置に最も近い2次元地図情報中の物標の位置情報Mを選択する。図3の例では、位置情報Mが選択済物標位置データSに最も近く、位置情報Mが選択済物標位置データSに最も近く、位置情報Mが選択済物標位置データSに最も近い。
位置推定部26は、選択済物標位置データSとこのデータに最も近い位置情報Mとの距離Dijを算出し、以下の式(1)を用いて距離Dijの平均Sを算出する。
【0024】
【数1】
【0025】
位置推定部26は、数値解析により、平均Sが最小となる車両1の位置及び姿勢を算出して、車両1の自己位置の推定値として決定する。位置推定部26は、自己位置の推定値を運転支援システム3へ出力する。
【0026】
(選択済物標位置データの選択方法)
次に、選択部25が選択済物標位置データを選択する処理を説明する。
上述の通り、勾配区間では斜距離と水平距離との間に差がある。このため、勾配区間通過前に検出した物標の物標位置データが示す物標と車両1との間の距離が、実際の水平距離より伸びることがある。図4を参照してその理由を説明する。
【0027】
上段は、勾配区間Ssを含む車両1の走行路と走行路上の物標との模式図である。四角形のプロットT1〜T7は走行路上の物標を示す。図4中の車両1の位置は、勾配区間通過後の時点の位置を示している。
中段は、勾配区間通過後の時点で記憶装置24に蓄積されている物標位置データが示す物標と車両1との間の距離の模式図である。円形プロットS1〜S7は、物標T1〜T7の物標位置データに対応する。
下段は、2次元地図上での物標T1〜T7と車両1との間の距離の模式図である。三角形のプロットM1〜M7は、物標T1〜T7の地図上の位置を示す。
【0028】
勾配区間Ssでは斜距離が水平距離より長くなる。このため、勾配区間Ssでの移動量を含んだ移動量ΔPを用いて図4中の勾配区間通過後の時点の車両1の位置で、過去蓄積されている物標T1〜T7の物標位置データが補正されるので、勾配区間Ssを通過する前の区間の物標T3〜T7の物標位置データS3〜S7が示す物標と車両1との距離が、2次元地図上の距離(すなわち水平距離)よりも長くなる。
例えば、勾配区間Ss内の物標T3及びT4について、物標位置データS3及びS4が示す物標T3及びT4と車両1との距離と、2次元地図上の距離と、の差はそれぞれe3及びe4であり、e4はe3より長い。
【0029】
勾配区間Ssに進入する前の平坦区間の物標T5〜T7について、物標位置データS5〜S7が示す物標T5〜T7の相対位置は、皆同様に、勾配区間Ssの斜距離と水平距離の差e5だけ後方にずれる。また、物標位置データS5〜S7同士の相対位置は変化しない。
一方で、勾配区間Ssを通過した後の平坦区間の物標T1〜T2の物標位置データS1〜S2は、勾配区間Ssで推定した移動量ΔPを用いて補正されていない。このため、物標位置データS1〜S2が示す物標T1及びT2と車両1との距離と、2次元地図上の距離と、の間に差は生じない。また、物標位置データS1〜S2同士の相対位置も変化しない。
【0030】
このような物標位置データS1〜S7を2次元地図情報と照合すると、物標間の相対位置が変化しない勾配区間通過後の平坦区間の物標位置データS1〜S2と、勾配区間進入前の平坦区間の物標位置データS5〜S7が、地図上の位置情報とよく一致する。
このため、物標位置データと地図上の位置情報との距離Dijの平均Sが最小となるよう自己位置を推定すると、勾配区間進入前の物標位置データS5〜S7と地図上の位置情報との距離も小さくする作用が働くため、推定誤差が小さくならない場合がある。
【0031】
また、勾配区間Ss通過後の物標位置データが蓄積されるまで暫くの間は、勾配区間Ss通過後の物標位置データよりも勾配区間Ss進入前の物標位置データの方が多い。このため、勾配区間Ss進入前の物標位置データが支配的に作用することになり推定誤差が大きくなってしまうことがある。この結果、勾配区間Ssを通過して交差点に進入した場合、停止線などの交差点周辺の物標を用いた自己位置推定で推定誤差が大きくなってしまう。
さらに、勾配区間通過後の物標位置データS1〜S2が支配的に作用して算出された推定位置と、勾配区間進入前の物標位置データS5〜S7が支配的に作用して算出された推定位置とが異なり、自己位置の推定位置の誤差が変動して不安定になるおそれがある。
【0032】
この様子を図5に示す。参照符号P1は、勾配区間通過後の物標位置データS1〜S2が支配的に作用して算出された推定位置を示し、参照符号P2は、勾配区間進入前の物標位置データS5〜S7が支配的に作用して算出された推定位置を示す。勾配区間通過後の物標位置データと勾配区間進入前の物標位置データのどちらが支配的に作用するかで、算出結果がP1とP2の間で不安定に振動するおそれがある。
【0033】
そこで選択部25は、勾配検出部22からの判定結果信号に基づいて、車両1が勾配区間Ssを通過したか否かを判定する。
車両1が勾配区間Ssを通過した場合、選択部25は、勾配区間通過後の物標位置データS1〜S2(すなわち、勾配区間を通過してから現在位置までの区間の物標の物標位置データ)を選択済物標位置データとして選択する。すなわち選択部25は、勾配区間通過前の物標位置データS3〜S7を選択済物標位置データから除外する。
そして、位置推定部26は、選択した勾配区間通過後の物標位置データS1〜S2を、物標T1〜T2の地図上の位置M1〜M2と照合することにより、車両1の自己位置を推定する。この様子を図6に示す。
【0034】
このため、車両1が勾配区間Ssを走行することにより勾配区間Ssの通過前に検出した物標の物標位置データS3〜S7が示す物標と車両1との間の距離が、実際の水平距離より長くなっても、物標位置データS3〜S7を位置推定から除外できる。この結果、勾配区間における斜距離と水平距離との間の差に起因する2次元地図上の位置推定精度の低下を抑制できる。
【0035】
なお、勾配区間通過後の物標位置データを、選択済物標位置データとしてすべて選択する必要はなく、地図情報取得部27が取得した地図情報と照合して、車両1の自己位置を推定できるために必要な物標位置データのみ選択するようにしてもよい。
また、選択部25は、選択済物標位置データ以外の物標位置データ(すなわち勾配区間通過前の物標位置データ)を記憶装置24から削除してもよい。例えば、選択部25は、勾配区間内の物標位置データS3〜S4と勾配区間進入前の物標位置データS5〜S7を記憶装置24から削除してもよい。位置推定部26は、記憶装置24に残っている物標位置データと物標の地図上の位置を示す地図情報とを照合することで車両1の現在位置を推定してよい。
勾配区間通過前の物標位置データを記憶装置24から削除することにより、記憶装置24の記憶領域を有効に活用することができる。
【0036】
また、選択部25は、勾配区間通過後に物標位置検出部20に検出され、検出してからの経過時間がより短い物標の物標位置データを、優先して選択済物標位置データとして選択してよい。例えば選択部25は、勾配区間通過後の車両1の現在位置の周囲の物標の物標位置データを選択してよい。例えば、車両1の現在位置から約20m以内の物標の物標位置データを選択する。車両1の現在位置の周囲の物標の物標位置データは、移動量ΔPを用いた補正による誤差の蓄積が少ないので位置精度が高い傾向にある。例えば、道路境界であるレーンや縁石の位置データは走路内の横位置の精度が高い。
【0037】
(動作)
次に、第1実施形態に係る自己位置推定装置2の動作について説明する。図7を参照する。
ステップS1において撮像装置10、距離測定装置11、及び物標位置検出部20は、車両1の周囲に存在する物標の車両1に対する相対位置を検出する。物標位置検出部20は、検出した相対位置を示す相対位置信号を物標位置蓄積部23へ出力する。
ステップS2において移動量推定部21は、前回の処理周期で車両1の自己位置を推定してから現在までの車両1の移動量ΔPを推定する。
ステップS3において物標位置蓄積部23は、相対位置信号が示す車両1の周囲の物標の相対位置を記憶装置24に蓄積する。また物標位置蓄積部23は、過去に蓄積した物標の相対位置を、現在までの経過時間と移動量信号が示す移動量ΔPを用いて車両1の現在位置に対する相対位置へ補正し、物標位置データとして記憶装置24に蓄積する。
【0038】
ステップS4において撮像装置10、ジャイロセンサ14及び勾配検出部22は、車両1の走行路の勾配量を検出する。
ステップS5において勾配検出部22及び選択部25は、勾配区間通過判定処理により、車両1が勾配区間内にいるのか、勾配区間進入前であるのか、勾配区間通過後であるのかを判定する。
【0039】
ステップS6において選択部25は、勾配区間通過判定処理にて車両1が勾配区間内にいると判定されたか否かを判断する。車両1が勾配区間内にいる場合(ステップS6:Y)に処理はステップS9へ進む。車両1が勾配区間内にいない場合(ステップS6:N)に処理はステップS7へ進む。
ステップS7において選択部25は、勾配区間通過判定処理にて車両1が勾配区間通過後であると判定されたか否かを判断する。車両1が勾配区間を通過した場合(ステップS7:Y)に処理はステップS8へ進む。
【0040】
車両1が勾配区間を通過していない場合(ステップS7:N)、すなわち車両1が勾配区間への進入前である場合、処理はステップS9へ進む。
ステップS8において選択部25は、勾配区間通過前の物標位置データS3〜S7を記憶装置24から削除する。すなわち選択部25は、勾配区間通過後の物標位置データS1〜S2を選択して、選択済物標位置データとして記憶装置24に残す。
【0041】
ステップS9において位置推定部26は、選択済物標位置データと地図情報とを照合して車両1の自己位置を推定する。すなわち記憶装置24に残っている物標位置データと地図情報とを照合することで車両1の現在位置を推定する。
ステップS10において運転支援システム3は、位置推定部26が推定した車両1の自己位置を用いて、運転者による車両1の運転に対する運転支援を実施する。
【0042】
図8を参照して、図7のステップS5で行われる勾配区間通過判定処理を説明する。ステップS20において選択部25は、前回の勾配区間通過判定処理で、車両1が勾配区間内だと判定されたか否かを判断する。車両1が勾配区間内だと判定された場合(ステップS20:Y)に処理はステップS24へ進む。車両1が勾配区間内だと判定されなかった場合(ステップS20:N)に処理はステップS21へ進む。
【0043】
ステップS21において勾配検出部22は、車両1の走行路の勾配量が閾値以上であるか否かを判断する。なお、この閾値は勾配による斜距離と水平距離との差が許容範囲内であるか否かに応じて設定してよい。閾値は例えば2度であってよい。勾配量が閾値以上である場合(ステップS21:Y)に処理はステップS23へ進む。勾配量が閾値未満である場合(ステップS21:N)に処理はステップS22へ進む。
ステップS22において選択部25は、車両1がまだ勾配区間に進入していないと判断する。その後処理は終了する。
【0044】
ステップS23において勾配検出部22は、車両1が勾配区間内にいると判断する。その後処理は終了する。
一方で、ステップS24において勾配検出部22は、車両1の走行路の勾配量が閾値以上であるか否かを判断する。勾配量が閾値以上である場合(ステップS24:Y)に処理はステップS23へ進む。勾配量が閾値未満である場合(ステップS24:N)に処理はステップS25へ進む。
ステップS25において選択部25は、車両1がまだ勾配区間を通過したと判断する。その後処理は終了する。
【0045】
(第1実施形態の効果)
(1)物標検出センサとしての撮像装置10及び距離測定装置11と物標位置検出部20とは、車両1の周囲に存在する物標の車両1に対する相対位置を検出する。移動量推定部21は、車両1の移動量を推定する。物標位置蓄積部23は、車両1の移動量に基づき相対位置を補正して物標位置データとして蓄積する。勾配検出センサとしての撮像装置10及びジャイロセンサ14と勾配検出部22とは、車両1の走行路の勾配を検出する。選択部25は、蓄積した物標位置データのうち、勾配区間を通過してから現在位置までの区間の物標の物標位置データを選択する。位置推定部26は、選択した物標位置データと物標の地図上の位置を示す地図情報とを照合することで車両1の現在位置を推定する。
【0046】
このため、車両1が勾配区間を走行することにより勾配区間通過前に検出した物標の物標位置データが示す物標と車両1との間の距離が、実際の水平距離より長くなっても、勾配区間通過前に検出した物標の物標位置データを位置推定から除外できる。この結果、勾配区間における斜距離と水平距離との間の差に起因する2次元地図上の位置の推定精度の低下を抑制できる。
例えば、勾配区間を通過して交差点に進入するような場合に、交差点周辺の距離差の無い正確な物標位置に基づき自己位置を推定できるため、推定精度が向上する。
【0047】
(2)選択部25は、車両1の現在位置の周囲の物標の物標位置データを選択し、位置推定部26は、選択した物標位置データと地図情報と照合する。車両1の現在位置の周囲の物標の物標位置データは、移動量ΔPを用いた補正による誤差の蓄積が少ないので位置精度が高い傾向にある。車両1の現在位置の周囲の物標の物標位置データを選択して車両1の位置推定に用いることにより、車両1の位置推定精度を向上することができる。
【0048】
(変形例)
推定位置の精度向上や処理時間の短縮のため、選択部25は、勾配区間通過後の物標のうちいずれかを優先的に選択済物標位置データとして選択し、残りを選択済物標位置データから除外してもよい。例えば選択部25は、車両1と物標とを結ぶ直線と車両1の進行方向とのなす角が大きくなる物標ほど、優先して選択済物標位置データとして選択してもよい。
また例えば選択部25は、車両1からの距離が所定の上限より長い物標を選択済物標位置データから除外してもよい。ここで、物標と車両1との間の距離が長いほど、物標と車両1との間に勾配区間が入りやすくなり、移動量ΔPの推定誤差が増加しやすくなる。したがって、物標と車両1との間の距離の上限は、移動量ΔPの推定誤差に起因する位置推定誤差の許容範囲に応じて調整してもよい。
【0049】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態の自己位置推定装置2を説明する。
勾配量が継続して閾値未満である区間を走行している間は、この区間の物標の物標位置データを用いて自己推定を行うことで、斜距離と水平距離との間の差に起因する2次元地図上の位置の推定精度を抑制することができる。
したがって、勾配区間進入前に車両1が走行した閾値未満の勾配量を有する第1区間と、勾配区間通過後に車両1が走行する閾値未満の勾配量を有する第2区間とでは、それぞれ車両1の自己位置を高い精度で検出することができる。このため、第1区間で推定した車両1の自己位置と第2区間で推定した車両1の自己位置との間の相対位置を高い精度で算出することができる。
【0050】
したがって、第1区間の物標の物標位置データが示す物標と車両1との距離が、勾配区間走行中に推定した移動量ΔPで物標位置データを補正することで実際の水平距離より長くなっても、第1及び第2区間で推定した自己位置間の相対位置を用いて補正できる。
第3実施形態の自己位置推定回路16は、第1区間で推定した自己位置と第2区間で推定した自己位置との間の相対位置を用いて第1区間の物標の物標位置データを補正する。
【0051】
図9を参照する。自己位置推定回路16は、補正部28を備える。自己位置推定回路16が備えるプロセッサは、記憶装置24に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、補正部28の機能を実現する。
位置推定部26は、勾配区間進入前に車両1が走行した閾値未満の勾配量を有する第1区間において、第1区間の物標の物標位置データと地図情報とを照合することにより勾配区間へ進入する前の車両1の第1位置を推定する。位置推定部26は、第1位置を運転支援システム3及び補正部28に出力する。
補正部28は、第1区間で推定した車両1の第1位置の情報を、第1区間の物標の物標位置データに付加して記憶装置24に記憶する。
【0052】
位置推定部26は、勾配区間通過後に車両1が走行する閾値未満の勾配量を有する第2区間において、第2区間の物標の物標位置データと地図情報とを照合することにより勾配区間通過後の車両1の第2位置を推定する。位置推定部26は、第2位置を補正部28に出力する。
補正部28は、第1位置と第2位置との相対位置に基づいて、第1区間の物標の物標位置データを補正する。
【0053】
第1区間の物標の物標位置データが補正された後、位置推定部26は、補正された物標位置データ及び第2区間の物標の物標位置データと地図情報とを照合することにより勾配区間通過後の車両1の第2位置を推定する。
物位置推定部26は、物標位置データの補正後に推定した第2位置を運転支援システム3に出力する。物位置推定部26は、物標位置データの補正後に推定した第2位置の情報を、第2区間の物標の物標位置データに付加して記憶装置24に記憶する。
【0054】
図10を参照する。ステップS30〜S34の処理は、図7のステップS1〜S5と同様である。
ステップS35において選択部25は、勾配区間通過判定処理にて車両1が勾配区間内にいると判定されたか否かを判断する。車両1が勾配区間内にいる場合(ステップS35:Y)に処理はステップS43へ進む。車両1が勾配区間内にいない場合(ステップ35:N)に処理はステップS36へ進む。
【0055】
ステップS36において選択部25は、勾配区間通過判定処理にて車両1が勾配区間通過後であると判定されたか否かを判断する。車両1が勾配区間を通過した場合(ステップS36:Y)に処理はステップS37へ進む。
車両1が勾配区間を通過していない場合(ステップS36:N)、すなわち車両1が勾配区間への進入前である場合、処理はステップS43へ進む。
【0056】
ステップS36において選択部25は、勾配区間の物標の物標位置データを記憶装置24から削除する。
すなわち選択部25は、勾配区間以外の物標(すなわち、勾配区間進入前の物標と勾配区間通過後の物標の物標位置データ)を選択済物標位置データとして選択する。
言い換えれば、選択部25は、勾配区間通過後の物標の物標位置データに限定せず、勾配区間以外の勾配量が閾値未満である区間の物標の物標位置データを選択済物標位置データとして選択する。なお、勾配区間以外の物標を、選択済物標位置データとしてすべて選択する必要はなく、地図情報取得部27が取得した地図情報と照合して、車両1の自己位置を推定できるために必要な物標位置データのみ選択するようにしてもよい。
【0057】
ステップS38において選択部25は、勾配区間通過後の第2区間の物標の物標位置データを選択する。
ステップS39において位置推定部26は、ステップS38で選択した物標位置データと2次元地図情報とを照合して車両1の第2位置を推定する。
ステップS40において補正部28は、勾配区間進入前の第1区間の物標の物標位置データに付加して記憶された、第1区間で推定した車両1の第1位置の情報を記憶装置24から読み出す。補正部28は、第1位置と第2位置との相対位置に基づいて、第1区間の物標の物標位置データを補正する。
ステップS41において位置推定部26は、記憶装置24に残っている物標位置データ(すなわちステップS40で補正した物標位置データ及び第2区間の物標の物標位置データ)と地図情報とを照合することで勾配区間通過後の車両1の第2位置を推定する。補正部28は、ステップS41において推定した車両1の第2位置の情報を、第2区間の物標の物標位置データに付加して記憶装置24に記憶する。
ステップS42の処理は、図7のステップS10の処理と同様である。
ステップS43の処理は、図7のステップS9の処理と同様である。ステップS43の後、処理はステップS42へ進む。
【0058】
(第2実施形態の効果)
位置推定部26は、勾配区間へ進入する前に閾値未満の勾配量を有する第1区間の物標の物標位置データと地図情報とを照合することにより勾配区間へ進入する前の車両1の第1位置を推定する。また、勾配区間を通過した後に閾値未満の勾配量を有する第2区間の物標の物標位置データと地図情報とを照合することにより勾配区間を通過した後の車両1の第2位置を推定する。補正部28は、第1位置と第2位置との相対位置に基づいて、第1区間の物標の前記物標位置データを補正する。
位置推定部26は、補正した物標位置データ及び第2区間の物標の物標位置データと地図情報とを照合することにより車両1の自己位置を推定する。
【0059】
すなわち、位置推定部26は、勾配区間通過後の第2区間の物標の物標位置データに限らず、勾配量が閾値未満である区間の物標の物標位置データと地図情報とを照合することにより車両1の自己位置を推定する。
これにより、勾配区間の物標同士の間の斜距離と水平距離との差に起因する2次元地図上の位置の推定精度の低下を抑制できる。
また、勾配区間進入前の物標の物標位置データを再度利用することができるので、自己位置推定の精度を向上できる。
【0060】
(変形例)
どこにでもあるような多少の起伏を通過した場合には、起伏にある物標の物標位置データを選択済物標位置データから除外しなくてもよい。
例えば、選択部25は、橋梁や高速道路への進入口等の勾配区間の物標の物標位置データを選択済物標位置データから除外し、例えば、勾配量が1〜2度で通過時間が2〜3秒程度の起伏にある物標の物標位置データを選択済物標位置データから除外しなくてもよい。
【0061】
例えば、選択部25は、閾値以上の勾配を有する区間が所定長以上継続しない場合には、この区間の物標の物標位置データも、選択済物標位置データとして選択してよい。
一方で、選択部25は、閾値以上の勾配を有する区間が所定長以上継続した場合には、この区間の物標の物標位置データを選択済物標位置データから除外してよい。すなわち、この区間以外の、閾値未満の勾配を有する区間の物標の物標位置データを選択済物標位置データとして選択する。第1実施形態でも同様である。
このように、閾値以上の勾配を有する区間が所定長以上継続した場合に、この区間の物標の物標位置データを選択するので、自己位置の推定精度に影響を与える勾配区間の物標位置データを適切に除外できる。
【0062】
所定長は、例えば閾値以上の勾配を有する区間を走行する走行時間に基づいて設定してよい。例えば所定長は3秒以上の長さに設定してよい。また所定長は、閾値以上の勾配を有する区間の距離に基づいて設定してよい。例えば所定長は30秒以上の長さに設定してよい。
車両1の走行路の勾配量が大きいほど短くなるように所定長を動的に設定してもよい。これにより、勾配量の大小に関わらず斜距離と水平距離との差に起因する測定誤差を所望の許容範囲内に抑えることができる。
【0063】
ここに記載されている全ての例及び条件的な用語は、読者が、本発明と技術の進展のために発明者により与えられる概念とを理解する際の助けとなるように、教育的な目的を意図したものであり、具体的に記載されている上記の例及び条件、並びに本発明の優位性及び劣等性を示すことに関する本明細書における例の構成に限定されることなく解釈されるべきものである。本発明の実施例は詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であると解すべきである。
【符号の説明】
【0064】
1…車両,2…自己位置推定装置,3…運転支援システム,10…撮像装置,11…距離測定装置,12…車輪速センサ,13…操舵角センサ,14…ジャイロセンサ,15…加速度センサ,16…自己位置推定回路,20…物標位置検出部,21…移動量推定部,22…勾配検出部,23…物標位置蓄積部,24…記憶装置,25…選択部,26…位置推定部,27…地図情報取得部,28…補正部
図1
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