(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アンテナパターンが、前記RFICチップの第1の入出力端子に接続する第1のサブパターンと、前記第1のサブパターンから距離をあけて離れており、前記RFICチップの第2の入出力端子に接続し、且つ前記延長部を備える第2のサブパターンとを含み、
第1のサブパターンの面積が第2のサブパターンの面積に比べて小さく、
前記第1のサブパターンが、前記第1の入出力端子との接続点から見て、一方向に延在する第1の帯状部と、前記一方向とは反対方向に延在する第2の帯状部とを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様のRFIDタグは、物品の金属面に取り付けられた状態で使用可能なRFIDタグであって、前記金属面に対してスペースをあけて対向する裏面を備える天板部、および前記天板部から前記裏面側に立設して且つ前記金属面に取り付けられる先端面を備える天板支持部を含むタグ本体と、前記タグ本体の天板部の裏面に設けられたアンテナパターンと、前記タグ本体の天板部の裏面に設けられ、前記アンテナパターンに接続されたRFICチップと、を有し、前記アンテナパターンが、前記タグ本体の天板部の裏面から離れて前記金属面に向かって延在し、前記金属面に対して直流的にまたは容量的に接続する延長部を備える。
【0012】
この態様によれば、RFIDタグにおいて、シンプルな構造にすることで、RFIDタグ加工精度による特性バラツキを小さくしながら、物品の金属面に取り付けても無線通信を可能にしつつ、RFICチップおよびそれに接続される放射導体などの導体を外部環境から保護すること、及び誘電体ブロックを無くすことで、誘電体ブロックの温度変化によるRFIDタグのアンテナ特性変化を無くし、RFIDタグ使用環境での温度変化による読み取り距離の安定化を図ることができる。
【0013】
前記タグ本体が、前記天板支持部が前記天板部の外周縁から筒状に立設するキャップ状部材であって、前記天板支持部の先端面が、前記キャップ状部材の開口縁部であってもよい。
【0014】
前記アンテナパターンの延長部の先端部が、前記キャップ状部材の開口縁部上に位置してもよい。
【0015】
前記アンテナパターンの延長部が、前記開口縁部を越えて前記キャップ状部材の外部に向かって延在してもよい。
【0016】
前記キャップ状部材の開口縁部上に導体の環状パターンが設けられ、前記アンテナパターンの延長部が前記環状パターンに接続してもよい。
【0017】
前記キャップ状部材の内部を覆うように前記開口縁部に取り付けられ、前記環状パターンに接続する導体板をRFIDタグは有してもよい。これにより、防水・防塵仕様のRFIDタグを実現することができる。
【0018】
前記アンテナパターンが、前記RFICチップの第1の入出力端子に接続する第1のサブパターンと、前記第1のサブパターンから距離をあけて離れており、前記RFICチップの第2の入出力端子に接続し、且つ前記延長部を備える第2のサブパターンとを含み、第1のサブパターンの面積が第2のサブパターンの面積に比べて小さく、前記第1のサブパターンが、前記第1の入出力端子との接続点から見て、一方向に延在する第1の帯状部と、前記一方向とは反対方向に延在する第2の帯状部とを備えてもよい。
【0019】
前記アンテナパターンが逆Fアンテナであって、前記環状パターンに対して前記逆Fアンテナの給電線部と短絡線部とが接続することにより、前記アンテナパターンと前記環状パターンとが一部品として一体化してもよい。これにより、アンテナパターンと環状パターンを、例えば一枚の金属シートまたは金属板から作製することができる。
【0020】
RFIDタグが、前記RFICチップと、前記RFICチップと前記アンテナパターンとの整合をとる整合回路とを含むRFICモジュールを有し、前記RFICモジュールがさらに、前記キャップ状部材の外部温度を検出する温度センサおよび前記キャップ状部材の外部湿度を検出する湿度センサの少なくとも一つを備えてもよい。これにより、RFIDタグの温度および湿度の少なくとも一方を測定し、その測定結果を送信することができる。
【0021】
前記タグ本体が樹脂材料から作製されて可撓性を備えてもよい。これにより、平面のみならず、湾曲面にも、RFIDタグを取り付けることができる。
【0022】
前記タグ本体が、前記天板部の裏面から立設して且つ前記金属面に接触する補助支持部を含んでいてもよい。これにより、金属面に取り付けられた状態のとき、タグ本体の変形を抑制することができる。
【0023】
本発明の別態様の物品は、少なくとも一部に金属面を備え、前記金属面にRFIDタグが取り付けられた物品であって、前記RFIDタグが、前記金属面に対してスペースをあけて対向する裏面を備える天板部、および前記天板部から前記裏面側に立設して且つ前記金属面に取り付けられる先端面を備える天板支持部を含むタグ本体と、前記タグ本体の天板部の裏面に設けられたアンテナパターンと、前記タグ本体の天板部の裏面に設けられ、前記アンテナパターンに接続されたRFICチップと、を有し、前記アンテナパターンが、前記タグ本体の天板部の裏面から離れて前記金属面に向かって延在し、前記金属面に対して直流的にまたは容量的に接続する延長部を備える。
【0024】
この態様によれば、RFIDタグにおいて、シンプルな構造にすることで、RFIDタグ加工精度による特性バラツキを小さくしながら、物品の金属面に取り付けても無線通信を可能にしつつ、RFICチップおよびそれに接続される放射導体などの導体を外部環境から保護すること、及び誘電体ブロックを無くすことで、誘電体ブロックの温度変化によるRFIDタグのアンテナ特性変化を無くし、RFIDタグ使用環境での温度変化による読み取り距離の安定化を図ることができる。
【0025】
本発明のさらに別態様のRFIDタグの製造方法によれば、RFIDタグの製造方法であって、導電ペーストを用いて、平板の外周縁に環状パターンを印刷するとともに前記環状パターンに接続されたアンテナパターンを前記環状パターン内に印刷し、印刷後の平板をキャップ形状に成型することにより、天板部の裏面に前記アンテナパターンが存在して且つ開口縁部に前記環状パターンが存在するキャップ状部材を作製し、電解めっきによって前記環状パターンおよびアンテナパターン上にめっき層を形成し、RFICチップを前記キャップ状部材の天板部の裏面に設けるとともに前記アンテナパターンに接続し、前記キャップ状部材の内部を覆い且つ前記環状パターンに接続する導体板を、前記キャップ状部材の開口縁部に取り付ける。
【0026】
この態様によれば、RFIDタグにおいて、シンプルな構造にすることで、RFIDタグ加工精度による特性バラツキを小さくしながら、物品の金属面に取り付けても無線通信可能にしつつ、RFICチップおよびそれに接続される放射導体などの導体を外部環境から保護すること、及び誘電体ブロックを無くすことで、誘電体ブロックの温度変化によるRFIDタグのアンテナ特性変化を無くし、RFIDタグ使用環境での温度変化による読み取り距離の安定化を図ることができる。また、防水・防塵仕様のRFIDタグを作製することができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るRFID(Radio-Frequency IDentification)タグを示す斜視図であって、
図2は異なる方向から見たRFIDタグの斜視図である。
図3はRFIDタグの下面図であって、
図4はRFIDタグの断面図である。図中において、X−Y−Z座標系は、発明の理解を容易にするためのものであって、発明を限定するものではない。X軸方向はRFIDタグの長手方向を示し、Y軸方向は幅方向を示し、Z軸方向は厚さ方向を示している。
【0029】
図1は、例えば金属板などの物品W1の金属面W1aに取り付けられた状態のRFIDタグ10を示している。
図2は、RFIDタグ10を裏返した状態を示している。
【0030】
図1および
図2に示すように、RFIDタグ10は、タグ本体であるキャップ状部材12と、キャップ状部材12に設けられたアンテナパターン20と、キャップ状部材12に設けられたRFIC(Radio-Frequency Integrated Circuit)モジュール30とを有する。
【0031】
キャップ状部材12は、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂材料から作製されている。本実施の形態1の場合、キャップ状部材12は、平板状の天板部12aと、天板部12aの外周縁から立設する筒状の側壁部12bとを備える。
図1および
図4に示すように、RFIDタグ10は、側壁部12bの先端面12c、すなわちキャップ状部材12の開口縁部12cで、物品W1の金属面W1aに取り付けられる。例えば、接着剤や両面テープ(図示せず)などを介して、開口縁部12cが金属面W1aに貼り付けられる。なお、本実施の形態1の場合、金属面W1aへの接触面積を拡大するために、側壁部12bの先端がフランジ状に形成され、開口縁部12cの面積が大きくされている。
【0032】
このような側壁部12bを介してRFIDタグ10が物品W1の金属面W1aに取り付けられることにより、
図4に示すように、キャップ状部材12の天板部12aの裏面12dは、金属面W1aに対してスペースをあけて対向する。本実施の形態1の場合、天板部12aの裏面12dは、金属面W1aに対して平行である。すなわち、側壁部12bは、天板部12aから裏面12d側に立設し、その天板部12aを金属面W1aに対してスペースをあけた状態で支持する天板支持部として機能している。
【0033】
図2および
図3に示すように、本実施の形態1の場合、アンテナパターン20は、キャップ状部材12の裏側(
図1に示すように、金属面W1aにRFIDタグ10が取り付けられたときに見えない表面)に設けられている。
【0034】
アンテナパターン20は、アルミシートや銅シートなどの導体シートから作製され、例えば両面テープによってキャップ状部材12に貼り付けられている。具体的には、キャップ状部材12の天板部12aの裏面12d、側壁部12bの内壁面12e、および開口縁部12c上に、アンテナパターン20は設けられている。
【0035】
本実施の形態1の場合、
図3に示すように、アンテナパターン20は、第1のサブパターン22と、第2のサブパターン24とを含んでいる。
【0036】
図3に示すように、第1のサブパターン22は、その全体がキャップ状部材12の天板部12aの裏面12dに設けられた略「T」字形状のパターンである。したがって、第1のサブパターン22は、
図4に示すように、RFIDタグ10が物品W1の金属面W1aに取り付けられたとき、金属面W1aに対して間隔(距離D)をあけて、すなわち空気層を挟んで対向する。
【0037】
具体的には、
図3に示すように、第1のサブパターン22は、その全体がRFIDタグ10の幅方向(Y軸方向)に実質的に細長いパターンである。さらに具体的には、第1のサブパターン22は、RFICモジュール30の一方の外部接続端子(詳細は後述する)に接続されるランド部22aと、ランド部22aからRFIDタグ10の幅方向(Y軸方向)に一方に延在する第1の帯状部22bと、第1の帯状部22bとは反対方向にランド部22aから延在する第2の帯状部22cとを備える。なお、第1のサブパターン22がこの形状をとる理由については後述する。
【0038】
第2のサブパターン24は、第1のサブパターン22から距離をあけて離れており、RFIDタグ10の長手方向(X軸方向)に、第1のサブパターン22の幅(X軸方向サイズ)に比べて大きい幅(Y軸方向サイズ)で延在している帯状のパターンである。また、第2のサブパターン24は、第1のサブパターン22に比べて十分に大きい面積(RFIDタグ10の厚さ方向(Z軸方向)に直交する面積)を備える。
【0039】
具体的には、
図2に示すように、第2のサブパターン24は、キャップ状部材12の天板部12aの裏面12dに設けられる本体部24aと、側壁部12bの内壁面12eから開口縁部12cにかけて設けられる延長部24bとを備える。また、
図3に示すように、本体部24aは、第1のサブパターン22のランド部22aに対してRFIDタグ10の長手方向(X軸方向)に距離をあけて対向するランド部24cを備える。詳細は後述するが、このランド部24cにRFICモジュール30の他方の外部接続端子が接続される。
【0040】
第2のサブパターン24の延長部24bは、本実施の形態1の場合、
図4に示すように、本体部24aからRFIDタグ10の長手方向(X軸方向)に第1のサブパターン22から離れるように延在している。また、延長部24bは、キャップ状部材12の天板部12aの裏面12dから離れて物品W1の金属面W1aに向かって延在している。本実施の形態1の場合、延長部24bは、キャップ状部材12の側壁部12bの内壁面12eに沿って裏面12dから離れ、その先端部24dが開口縁部12c上に位置する。
【0041】
第2のサブパターン24の延長部24bにおける先端部24dは、
図4に示すように、RFIDタグ10が物品W1の金属面W1aに取り付けられたとき、その金属面W1aに電気的に接続される。
【0042】
具体的には、キャップ状部材12の開口縁部12cが導電性の接着剤や両面テープなどを介して物品W1の金属面W1aに取付けられる場合、その導電性の接着剤や両面テープなどを介して先端部24dは金属面W1aに接続される。すなわち、先端部24dは、金属面W1aに対して直流的に接続される。
【0043】
一方、キャップ状部材12の開口縁部12cが絶縁性の接着剤や両面テープなどを介して物品W1の金属面W1aに取り付けられる場合、その導電性の接着剤や両面テープなどを介して先端部24dは金属面W1aに接続される。すなわち、先端部24dは、金属面W1aに対して容量的に接続される(容量結合する)。
【0044】
このようなアンテナパターン20によれば、
図4に示すように、RFIDタグ10(キャップ状部材12)が物品W1の金属面W1aに取り付けられたとき、第1のサブパターン22と第2のサブパターン24の本体部24aが、金属面W1aに対して間隔(距離D)をあけて、すなわち空気層を介して配置される。それとともに、第2のサブパターン24の延長部24bにおける先端部24sが金属面W1aに対して直流的に接続するまたは容量的に接続する。
【0045】
なお、アンテナパターン20の第2のサブパターン24の先端部24dを除くキャップ状部材12の開口縁部12cの部分が金属面W1aに対して安定的に強固に固定されるのであれば、アンテナパターン20の先端部24dは、金属面W1aに対して固定されずに接触するだけでもよい。
【0046】
また、RFIDタグ10が物品W1の金属面W1aに取り付けられた後、キャップ状部材12の変形(天板部12aが金属面W1aに接近するような変形)を抑制するために、
図2に示すように、キャップ状部材12には少なくとも1つの柱状の補助支持部12fが設けられてもよい。補助支持部12fは、天板部12aの裏面12dから立設し、その先端が金属面W1aに接触する。
【0047】
このような補助支持部12fによって天板部12aが金属面W1aに接近するようなキャップ状部材12の変形が抑制される。それにより、その裏面12dに設けられたアンテナパターン20(第1のサブパターン22と第2のサブパターン24の本体部24a)と金属面W1aとの間の距離Dが安定的に維持される。さらに、天板部12aが金属面W1aに接近するように変形することによって生じるRFIDタグ10の破損やRFIDタグ10の金属面W1aからの脱落が抑制される。
【0048】
図2および
図3に示すように、RFICモジュール30は、例えば900MHz帯、すなわちUHF帯の通信周波数で無線通信を行う無線通信デバイスであって、キャップ状部材12の天板部12aの裏面12dに設けられている。また、RFICモジュール30は、無線通信を行うために、アンテナパターン20の第1のサブパターン22と第2のサブパターン24に対し、半田つけなどの直接接続や接着剤による容量結合で接続されている。このRFICモジュール30について、
図5および
図6を参照しながら説明する。
【0049】
図5は、RFICモジュール30の分解斜視図である。
図6は、物品W1の金属面W1aに取り付けた状態におけるRFIDタグ10の等価回路図である。
【0050】
図5に示すように、本実施の形態1の場合、RFICモジュール30は、三層からなる多層基板で構成されている。具体的には、RFICモジュール30は、ポリイミドや液晶ポリマなどの樹脂材料から作製されて可撓性を備える絶縁シート32A、32B、および32Cを積層して構成されている。なお、
図5は、
図2に示すRFICモジュール30を裏返して分解した状態を示している。
【0051】
図5に示すように、RFICモジュール30は、RFICチップ34と、複数のインダクタンス素子36A、36B、36C、および36Dと、外部接続端子38、40とを有する。本実施の形態1の場合、インダクタンス素子36A〜36Dと外部接続端子38、40は、絶縁シート32A〜32C上に形成され、銅などの導電材料から作製された導体パターンから構成されている。
【0052】
図5に示すように、RFICチップ34は、絶縁シート32C上の長手方向(X軸方向)の中央部に実装されている。RFICチップ34は、シリコン等の半導体を素材とする半導体基板に各種の素子を内蔵した構造を有する。また、RFICチップ34は、第1の入出力端子34aと第2の入出力端子34bとを備える。さらに、
図6に示すように、RFICチップ34は、内部容量(キャパシタンス:RFICチップ自身が持つ自己容量)C1を備える。
【0053】
図5に示すように、インダクタンス素子(第1のインダクタンス素子)36Aは、絶縁シート32Cの長手方向(X軸方向)の一方側で、絶縁シート32C上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、
図6に示すように、インダクタンス素子36Aは、インダクタンスL1を備える。インダクタンス素子36Aの一端(コイル外側の端)には、RFICチップ34の第1の入出力端子34aに接続されるランド36Aaが設けられている。なお、他端(コイル中心側の端)にも、ランド36Abが設けられている。
【0054】
図5に示すように、インダクタンス素子(第2のインダクタンス素子)36Bは、絶縁シート32Cの長手方向(X軸方向)の他方側で、絶縁シート32C上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、
図6に示すように、インダクタンス素子36Bは、インダクタンスL2を備える。インダクタンス素子36Aの一端(コイル外側の端)には、RFICチップ34の第2の入出力端子34bに接続されるランド36Baが設けられている。なお、他端(コイル中心側の端)にも、ランド36Bbが設けられている。
【0055】
図5に示すように、インダクタンス素子(第3のインダクタンス素子)36Cは、絶縁シート32Bの長手方向(X軸方向)の一方側で、絶縁シート32B上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、インダクタンス素子36Cは、積層方向(Z軸方向)にインダクタンス素子36Aに対して対向している。さらに、
図6に示すように、インダクタンス素子36Cは、インダクタンスL3を備える。インダクタンス素子36Cの一端(コイル中心側の端)には、ランド36Caが設けられている。このランド36Caは、絶縁シート32Bを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体42を介して、絶縁シート32C上のインダクタンス素子36Aのランド36Abに接続されている。
【0056】
図5に示すように、インダクタンス素子(第4のインダクタンス素子)36Dは、絶縁シート32Bの長手方向(X軸方向)の他方側で、絶縁シート32B上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、インダクタンス素子36Dは、積層方向(Z軸方向)にインダクタンス素子36Bに対して対向している。さらに、
図6に示すように、インダクタンス素子36Dは、インダクタンスL4を備える。インダクタンス素子36Dの一端(コイル中心側の端)には、ランド36Daが設けられている。このランド36Daは、絶縁シート32Bを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体44を介して、絶縁シート32C上のインダクタンス素子36Bのランド36Bbに接続されている。
【0057】
なお、絶縁シート32B上のインダクタンス素子36C、36Dは、1つの導体パターンとして一体化されている。すなわち、それぞれの他端(コイル外側の端)同士が接続されている。また、絶縁シート32Bには、絶縁シート32C上に実装されたRFICチップ34が収容される貫通穴32Baが形成されている。
【0058】
図5に示すように、外部接続端子38、40は、絶縁シート32A上に設けられた導体パターンから構成されている。また、外部接続端子32、40は、絶縁シート32Aの長手方向(X軸方向)に対向している。
【0059】
一方の外部接続端子38は、絶縁シート32Aを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体46を介して、絶縁シート32B上のインダクタンス素子36Cのランド36Caに接続されている。
【0060】
他方の外部接続端子40は、絶縁シート32Aを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体48を介して、絶縁シート32B上のインダクタンス素子36Dのランド36Daに接続されている。
【0061】
一方の外部接続端子38は、アンテナパターン20の第1のサブパターン22におけるランド部22aに、例えばはんだなどを介して接続される。同様に、他方の外部接続端子40は、第2のサブパターン24におけるランド部24cに、例えばはんだなどを介して接続される。
【0062】
なお、RFICチップ34は、半導体基板で構成されている。また、RFICチップ34は、インダクタンス素子36A、36Bの間と、インダクタンス素子36C、36Dの間に存在する。このRFICチップ34がシールドとして機能することにより、絶縁シート32C上に設けられた渦巻コイル状のインダクタンス素子36A、36Bの間での磁界結合および容量結合が抑制される。同様に、絶縁シート32B上に設けられた渦巻コイル状のインダクタンス素子36C、36Dの間での磁界結合および容量結合が抑制される。その結果、通信信号の通過帯域が狭くなることが抑制される。
【0063】
図6に示すように、容量C1(RFICチップ34の内部容量)とインダクタンスL1〜L4(4つのインダクタンス素子のインダクタンス)により、RFICチップ34とアンテナパターン20との間の整合をとる整合回路が構成されている。インダクタンスL5は、第2のサブパターン24のインダクタンスを示している。
【0064】
また、
図6は、第2のサブパターン24の延長部24bにおける先端部24dが、物品W1の金属面W1aに対して容量的に接続している状態を示している。例えば、厚さt(t<D)の絶縁性両面テープを介して先端部24dが金属面W1aに取り付けられることにより、先端部24dと金属面W1aとの間に容量C2が形成されている状態を示している。
【0065】
これまで説明してきた構成によれば、RFIDタグ10は、金属面W1aに取り付けられていない場合には実質的に第2のサブパターン24を介して、一方金属面W1aに取り付けられている場合には実質的に第2のサブパターン24と金属面W1aを介して、外部の無線通信装置(例えば、リーダ/ライタ装置)と電波をやりとりする。
【0066】
なお、第1のサブパターン22は、実質的に、第2のサブパターン24を励振させる(第2のサブパターン24から電波を放射させる)励振器として機能する。これは、第2のサブパターン24が、第1のサブパターン22に比べて十分に大きい面積(RFIDタグ10の厚さ方向(Z軸方向)に直交する面積)を備えることによる。
【0067】
例えば、第2のサブパターン24または金属面W1aを介して電波を受信すると、これらに起電力が生じ、その起電力によってRFICモジュール30のRFICチップ34が駆動する。駆動したRFICチップ34は、その記憶部に記憶されたデータを、第2のサブパターン24または金属面W1aを介して送信する。
【0068】
なお、
図6に示すように、第1のサブパターン22と金属面W1aとの間に容量C3が形成され、第2のサブパターン24の本体部24aと金属面W1aとの間にも容量C4が形成される。しかしながら、第1のサブパターン22および第2のサブパターン24の本体部24aに対して金属面W1aが空気層を介して対向するために、それらの間に形成される容量C3、C4は十分に小さく、通信特性、特に通信距離に実質的に影響しない。そのため、第1のサブパターン22および第2のサブパターン24の本体部24aと金属面W1aとの間の距離Dを、通信特性に実質的に影響しない範囲で可能な限り小さくすることができ、それによりRFIDタグ10を薄型化することができる。
【0069】
また、RFIDタグ10が金属面W1aに取り付けられている場合、第1のサブパターン22は、そこに流れる電流によって生じる磁界が第2のサブパターン24からの電波放射を妨害しないように構成されている。
【0070】
具体的に説明すると、第1のサブパターン22を拡大した
図7に示すように、第1のサブパターン22は、ランド部22aから一方向に延在する第1の帯状部22bと、その一方向とは反対方向にランド部22aから延在する第2の帯状部22cとを備える。そのため、一点鎖線で示すように、第1の帯状部22bに流れる電流と第2の帯状部22c流れる電流も互いに反対方向に流れる。
【0071】
第1の帯状部22bに着目した場合、その第1の帯状部22bに対向する金属面W1aの部分に、第1の帯状部22bに流れる電流と逆向きの電流が流れる。これにより、第1の帯状部22bから対向する金属面W1aの部分を経て再び第1の帯状部22bに戻る電流ループLP1が発生する。この電流ループLPによって磁界が発生し、その磁界が第2のサブパターン24の本体部24aからの電波放射を妨害する。
【0072】
この電流ループLP1によって生じる磁界を打ち消すための磁界が、第2の帯状部22cを流れる電流によって発生する。第1の帯状部22bに流れる電流と第2の帯状部22cに流れる電流が互いに反対方向に流れるために、第2の帯状部22cを流れる電流により、電流ループLP1とは反対方向の電流ループLP2が発生する。この電流ループLP2によって発生する磁界が、電流ループLP1によって発生した磁界を打ち消す。
【0073】
このような第1および第2の帯状部22b、22cを備えることにより、第1のサブパターン22によって生じた磁界によって第2のサブパターン24の電波放射が妨害されることが抑制される。なお、第1および第2の帯状部22b、22cは同一長さを備える(RFIDタグ10の幅方向(Y軸方向)のサイズが同一である)ことが好ましい。しかしながら、長さが異なっていても、第1のサブパターン22からの磁界発生を十分に抑制することが可能である(例えば、第1の帯状部または第2の帯状部がない第1のサブパターンに比べて)。また、第1および第2の帯状部22b、22cは直線状でなくてもよく、例えばミアンダ状であってもよい。
【0074】
以上のような本実施の形態1によれば、RFIDタグ10において、シンプルな構造にすることで、RFIDタグ加工精度による特性バラツキを小さくしながら、金属面W1aに取り付けても無線通信を可能にしつつ、RFICチップ34(RFICモジュール30)およびそれに接続されるアンテナパターン20を保護することができる。
【0075】
具体的には、RFICチップ34を備えるRFICモジュール30とそれに接続するアンテナパターン20が、これらを保護するためのキャップ状部材12に直接的に設けられる。すなわち、キャップ状部材12は、RFICモジュール30とアンテナパターン20とを外部環境から保護する部材であるとともに、これらをRFICモジュール30とアンテナパターン20と保持する部材でもある。そのため、例えば、RFICチップ34やアンテナパターン20を基板やブロックなどに設け、その基板やブロックなどを保護ケースで保護するなどの複雑な構成をとる必要がなくなる。また誘電体ブロックが無いので、誘電体ブロックの誘電率の温度特性により、アンテナパターン20の電気長が変化し、RFIDタグの共振周波数が変化することによる読み取り距離の温度変化を無くす事ができる。これにより広い温度範囲で、安定した読み取り距離をもつRFIDタグを作製することが出来る。
【0076】
(実施の形態2)
本実施の形態2は、上述の実施の形態1の改良形態であって、アンテナパターンにおける第2のサブパターンが実施の形態1と異なる。したがって、実施の形態1と異なる点を中心に、本実施の形態2について説明する。
【0077】
図8は本実施の形態2に係るRFIDタグの斜視図であり、
図9は断面図である。
【0078】
図8に示すように、本実施の形態2に係るRFIDタグ110のアンテナパターン120において、第1のサブパターン122は上述の実施の形態1における第1のサブパターン22と実質的に同一である。
【0079】
本実施の形態2の場合、アンテナパターン120における第2のサブパターン124の延長部124bは、キャップ状部材12の天板部12aの裏面12dから離れるように延在し、また開口縁部12cを越えて延在している。そのため、
図9に示すように、RFIDタグ110が物品W1の金属面W1aに取り付けられたとき、第2のサブパターン124の延長部124bにおける先端部124dは、キャップ状部材12の外部に位置する。
【0080】
上述の実施の形態1の場合、
図2に示すように、そのアンテナパターン20における第2のサブパターン24の延長部24bの先端部24dは、キャップ状部材12の開口縁部12c上に位置する。これに比べて、本実施の形態2の場合、
図8に示すように、第2のサブパターン124における延長部124bはキャップ状部材12の開口縁部12cを越えている。そのため、第2のサブパターン124の延長部124bは、上述の実施の形態1における第2のサブパターン24の延長部24bに比べて大きい面積で、物品W1の金属面W1aに直流的にまたは容量的に接続することができる。これにより、金属面W1aに対して、より確実に、第2のサブパターン124の延長部124bを、例えば導電性両面テープを介して直流的に接続することができる、または、例えば絶縁性両面テープを介して容量的に接続することができる。
【0081】
なお、
図9に示すようにキャップ状部材12の外部で延在する第2のサブパターン124の部分は、他の部分と別部材であってもよい。例えば、上述の実施の形態1と同様に、第2のサブパターン124の延長部124bおける先端部がキャップ状部材12の開口縁部12c上に位置し、その先端部に導体シートを接続してもよい。例えば、導体シートが導電性接着テープであって、接着層とは反対側のテープ表面が、キャップ状部材12の開口縁部12c上に位置する第2のサブパターン124の先端部に取り付けられる。
【0082】
以上のような本実施の形態2に係るRFIDタグ110においても、上述の実施の形態1と同様に、シンプルな構造により、金属面W1aに取り付けても無線通信可能にしつつ、RFICチップ34(RFICモジュール30)およびそれに接続されるアンテナパターン120を保護することができる。
【0083】
(実施の形態3)
本実施の形態3は、上述の実施の形態1と同様の構成を部分的に備えるが、降雨などの水分・塵・塩化物・硫化物などの液体や粉じんまたは紫外線に曝される過酷な環境で使用可能に構成されている点で実施の形態1と異なる。したがって、実施の形態1と異なる点を中心に、本実施の形態3について説明する。
【0084】
図10は本実施の形態3に係るRFIDタグの斜視図であり、
図11は断面図である。
【0085】
図10に示すように、本実施の形態3に係るRFIDタグ210のアンテナパターン220は、上述の実施の形態1のアンテナパターン20と構造的には実質的に同一である。アンテナパターン220における第2のサブパターン224の延長部224bは、本体部224aからキャップ状部材12の開口縁部12cまで延びている。
【0086】
しかし、本実施の形態3の場合、キャップ状部材12の環状の開口縁部12c上には、銅などの導体からなる環状パターン260が設けられている。この環状パターン260に、アンテナパターン220における第2のサブパターン224の延長部224bが接続している。
【0087】
また、RFIDタグ210が物品W1の金属面W1aに取り付けられていないとき、本実施の形態3の場合、上述の実施の形態1のアンテナパターン20と異なり、アンテナパターン220は(それに加えてRFICモジュール30も)、外部に露出していない。具体的には、
図10および
図11に示すように、本実施の形態3の場合、キャップ状部材12の内部を覆うように、金属板(導体板)262がキャップ状部材12の開口縁部12cに取り付けられている。
【0088】
金属板262は、例えば銅板であって、はんだを介して、キャップ状部材12の開口縁部12c上の環状パターン260に電気的に且つ機械的に接続されている。この金属板262とキャップ状部材12をはんだで接合することにより、キャップ状部材12の内部は密閉され、その内部のアンテナパターン220やRFICモジュール30が液体や粉じんから保護される。これにより耐水性と防塵性の高い金属対応タグが作れる。またキャップ状部材12をポリエーテルエテールケトン(PEEK)樹脂などの高耐熱な樹脂材料を用いる事で、高耐熱性のタグとする事ができる。
【0089】
RFIDタグ210が物品W1の金属面W1aに取り付けられるとき、金属板262の外側表面262a全体が、導電性の接着剤や両面テープまたは絶縁性の接着剤や両面テープを介して、金属面W1aに対して取り付けられる。これにより、アンテナパターン220における第2のサブパターン224の延長部224bは、環状パターン260と金属板262とを介して、金属面W1aに対して直流的に接続されるまたは容量的に接続される。また、金属板262の外側表面262a全体を介して取り付けられるために、RFIDタグ210を強固に金属面W1aに取り付けることができる(キャップ状部材12の開口縁部12cを介して取付けられる場合に比べて)。
【0090】
このような本実施の形態3に係るRFIDタグ210は、例えば以下のように作製される。
【0091】
図12A〜
図12Dは、本実施の形態3に係るRFIDタグ210の一例の製造方法を示している。
【0092】
図12Aに示すように、まず、例えば樹脂材料などから作製された平板264上に、例えば銀や銅などの金属系やカーボンなどの有機導電性などの導電ペーストを用いてアンテナパターン220と環状パターン260とを印刷する。例えば、平板264の外周縁に沿って銀ペーストを印刷して環状パターン260を印刷する。それととともに、その環状パターン260内に、第2のサブパターン224の延長部224bが環状パターン260に接続されている状態のアンテナパターン220を印刷する。
【0093】
次に、パターン印刷された平板264を、型を用いてキャップ形状に成型する。例えば平板264が樹脂材料から作製されている場合、真空成型によって平板264をキャップ形状に成型する。成型により、
図12Bに示すように、天板部12aの裏面12dにアンテナパターン220が存在して且つ開口縁部12cに環状パターン260が存在するキャップ状部材12が作製される。
【0094】
続いて、導電ペーストから作製されたアンテナパターン220と環状パターン260とを備えるキャップ状部材12に対して、めっきを行う。例えば、電解めっきにより、導電ペーストのパターン上に銅めっき層を形成する。その理由は、導電ペーストのパターンは、バインダー樹脂に導電性粒子を含有したものであるので、RFIDタグの電気特性を向上させるためにアンテナの高周波抵抗成分を小さくするためである。これにより、RFIDタグ210の通信特性、例えば受信感度や消費電力などの特性が向上する。
【0095】
銅のアンテナパターン220を作製した後、
図12Cに示すように、RFICモジュール30を、キャップ状部材12における天板部12aの裏面12dに取り付ける。すなわち、
図5に示すように、RFICモジュール30の一方の外部接続端子38を第1のサブパターン222にはんだ付けするとともに、他方の外部接続端子40を第2のサブパターン24にはんだ付けする。はんだの溶融温度付近やはんだ溶融温度以上で使用される金属対応タグの場合、この接合材料により高温で溶融する導電性接合材を用いてもよい。
【0096】
RFICモジュール30をキャップ状部材12に取り付けた後、
図12Dに示すように、金属板262をキャップ状部材12の開口縁部12cにはんだ付けして該キャップ状部材12の内部に蓋をする。これにより、防水・防塵仕様のRFIDタグ210が完成する。
【0097】
なお、金属板262は、RFIDタグ210の用途に応じてめっきされてもよい。例えば、銅や黄銅などの金属板262に、ニッケルやスズのメッキ層を形成してもよい。
【0098】
また、本実施の形態3に係るRFIDタグ210の作製は、他の方法でも可能である。例えば、キャップ状部材12に、導電ペーストのアンテナパターンと環状パターンとを転写印刷等の方法でパターン形成してもよい。その後、導電ペースト上に銅めっき層を形成し、RFICモジュール30を取り付け、そして、金属板262を取り付ける方法でもよい。
【0099】
メッキ層を形成しないでアンテナパターンを形成する方法として、銀や銅などの金属ペーストを厚塗りする方法やナノペーストを用いてアンテナパターンを印刷し、そのアンテナパターンを焼結することにより、めっきを行うことなく、最終的なアンテナパターンを作製してもよい。なお、本明細書では、「金属ナノペースト」は、有機溶剤などに、粒径がナノオーダの銀や銅などの金属ナノ粒子を含有させたものを言う。金属ナノ粒子の自己融着を抑制する液体が加熱や乾燥などによって蒸発すると、金属ナノ粒子同士が融着して金属膜を形成する。
【0100】
以上のような本実施の形態3に係るRFIDタグ210においても、上述の実施の形態1と同様に、シンプルな構造により、金属面W1aに取り付けても無線通信可能にしつつ、RFICチップ34(RFICモジュール30)およびそれに接続されるアンテナパターン220を保護することができる。
【0101】
以上、上述の複数の実施の形態1〜3を挙げて本発明を説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。
【0102】
例えば、RFICタグは、その周囲の温度および湿度の少なくとも一方を検出し、その検出結果を外部に出力するように構成されてもよい。例えば、RFICチップ内に温度センサや湿度センサが組み込まれる。あるいは、RFICチップとともに、温度センサや湿度センサがRFICモジュール内に設けられる。
【0103】
温度センサ付きRFICモジュールがキャップ状部材における天板部の裏面に設けられるため、温度センサは、キャップ状部材の外部の温度を高い精度で検出することができる。具体的に説明すると、温度センサは、外気に接触しているキャップ状部材の温度を実質的に検出することにより、間接的に外部温度を検出する。したがって、これと異なり、温度センサ付きモジュールがキャップ状部材から空間を介して離れた状態で設けられている場合に比べて、外部温度が短時間の間に激しく変化しても、温度センサは高精度にその外部温度を検出することができる。
【0104】
なお、湿度センサがRFICモジュールに設けられている場合、キャップ状部材には、内部空間と外部とを連通するための連通穴が設けられる。
【0105】
また、本発明の実施の形態に係るRFIDタグのアンテナパターンは、上述の実施の形態1〜3のアンテナパターン20、120、220に限らない。
【0106】
例えば、
図13に示す別の実施の形態に係るRFIDタグ310のアンテナパターン320は、上述の実施の形態1〜3と同様に、第1のサブパターン322と、第2のサブパターン324とを含んでいる。また、第2のサブパターン324は延長部324bを備えている。しかしながら、第2のサブパターン324がミアンダ状に形成されている点で、上述の実施の形態1〜3と異なる。具体的には、キャップ状部材12における天板部12aの裏面12d上に設けられた第2のサブパターン324の本体部324aに、2つの切り欠き部324eが形成されている。一方の切り欠き部324eは第2のサブパターン324の幅方向(Y軸方向)の一方の端に設けられ、他方の切り欠き部324eは幅方向の他方の端に設けられている。このような第2のサブパターン324によれば、RFIDタグの通信信号における周波数の帯域を拡げることができる。
【0107】
また、
図14に示す別の実施の形態に係るRFIDタグ410のアンテナパターン420のも、上述の実施の形態1〜3と同様に、第1のサブパターン422と、第2のサブパターン424とを含んでいる。また、第2のサブパターン424は延長部424bを備えている。さらに、キャップ状部材12における天板部12aの裏面12d上に設けられた第2のサブパターン424の本体部424aは、くびれ部424eを備える。このくびれ部424eでは他の部分に比べて電流が集中する。この電流集中により、第2のサブパターン424のインダクタンスが、くびれ部がない場合に比べて増加する。くびれ部の形状を適切に設定することにより、第2のサブパターン424のインダクタンスを所望に調節することができる。
【0108】
さらに、
図15に示す異なる実施の形態に係るRFIDタグ510のアンテナパターン520は、上述の実施の形態1〜3と異なり、2つの別々のパターンに分かれておらず、1つのパターンである。その1つのパターンに延長部520bが設けられている。また、キャップ状部材12における天板部12aの裏面12d上に設けられたアンテナパターン520の本体部520aは、ループ部520eを備えている。このループ部520eにRFICモジュール30が接続されている。これにより、アンテナパターン520は磁界アンテナとして機能する。
【0109】
さらにまた、
図16に示すさらに異なる実施の形態に係るRFIDタグ610のアンテナパターン620は、ループ状のループパターン622と、帯状の帯状パターン624とを含んでいる。帯状パターン624に延長部624bが設けられている。また、ループパターン622にRFICモジュール30が接続されている。さらに、ループパターン622は、帯状パターン624と接続するために、部分的に帯状パターン624に重ねられている。この重なり具合、すなわち、ループパターン622のループ開口622aを覆う帯状パターン624の面積を調節することにより、RFIDタグ610の通信特性、例えば周波数の帯域を調節することができる。
【0110】
このように、本発明に係る実施の形態は、アンテナパターン、特にキャップ状部材における天板部の裏面に設けられるアンテナパターンの部分の形状は問わない。この形状は、RFIDタグの用途や使用環境に応じて様々に変更可能である。
【0111】
加えて、
図1に示すようにRFIDタグ10が取り付けられている物品W1の金属面W1aは平面であるが、本発明に係る実施の形態はこれに限らない。例えば、
図17は、ガスボンベW2の湾曲面W2aに取り付けられたRFIDタグ710を示している。この場合、RFIDタグ710は、キャップ状部材712が樹脂材料から作製されて可撓性を備える。または、キャップ状部材712の開口縁部が、ガスボンベW2の湾曲面W2aに係合可能な形状を備える。
【0112】
すなわち、本発明の実施の形態に係るRFIDタグは、任意の形状の金属面を備える様々な物品、例えば事務机やドラム缶などの金属面に取り付けても使用可能であり、また、非金属面に取り付けても使用可能である。
【0113】
図18は、実施の形態4に係るRFIDタグの分解斜視図である。また、
図19は、実施の形態4に係るRFIDタグの断面図である。そして、
図20は、実施の形態4に係るRFIDタグの等価回路図である。
【0114】
図18に示すように、本実施の形態4に係るRFIDタグ810において、アンテナパターン820と環状パターン860は、例えば、一枚の金属シート(または金属板)から作製されている。アンテナパターン820は、金属シートの一部分を切り起こすことによって形成されている。これにより、アンテナパターン820と環状パターン860が一部品として一体化されている。なお、金属シートは、切り起こし加工が容易な、例えばニッケル/スズめっきが施された真鍮から作製されている。
【0115】
アンテナパターン820と環状パターン860とを一部品として一体化するために、アンテナパターン820は逆Fアンテナである。
【0116】
具体的には、アンテナパターン820は、
図19に示すように、キャップ状部材12の天板部12aの裏面12に取り付けられる本体部820aと、環状パターン860に接続する延長部820bとを備える。
【0117】
アンテナパターン820の本体部820aが、
図20に示すように、逆Fアンテナして機能する。そのために、
図18に示すように、本体部820aは、電波を放射する放射部820cと、放射部820cと環状パターン860(すなわち環状パターン860と接続する金属板862)とを接続する給電線部820dと、放射部820cと環状パターン860とを接続する短絡線部820eとを含んでいる。
【0118】
逆Fアンテナとしてのアンテナパターン820の本体部820aにおける給電線部820dは、RFICモジュール30と、そのRFICモジュール30の一方の外部接続端子38と接続するランド部820fと、そのRFICモジュール30の他方の外部接続端子40と接続するランド部820gと、ランド部820gと延長部820bとを接続する接続部820hから構成されている。
【0119】
短絡線部820eは、給電線部820dを挟んだ状態で、放射部820cと延長部820bとを接続する本体部820aにおける2つの部分である。短絡線部820eが2つ存在する理由は、アンテナパターン820を切り起こすときに、延長部820bと接続部820hとの間を適切に折り曲げるためである。具体的には、アンテナパターン820を切り起こす前は、延長部820bと接続部820hは、直線状に延在する細長い帯状である。2つの短絡線部820eの一方が存在しない場合、アンテナパターン820の切り起こし時に、延長部820bと接続部820hとの間が適切に曲がらずに、延長部820bに対して接続部820hがねじれる可能性がある。ねじれると、延長部820bと接続部820hとが分断する可能性がある。または、後工程で、ランド部820gとRFICモジュール30の他方の外部接続端子40が適切に電気的に接続しない可能性がある。その対処して、短絡線部820eが、給電線部820dを挟むように2つ設けられている。
【0120】
環状パターン860と接続する金属板862は、環状パターン860と同一の材料、例えばニッケル/スズめっきが施された真鍮から作製されているのが好ましい。スズ成分により、接触抵抗が低くなる。また、金属板862には、RFIDタグ810を物品に貼り付けるための両面テープ864が貼り付けられる。
【0121】
一枚の金属シートから作製されたアンテナパターン820および環状パターン860を樹脂材料のキャップ状部材12に取り付ける方法として、スナップ係合を用いてもよい。具体的には、金属であるアンテナパターン820および環状パターン860それぞれに複数の貫通穴を形成する。その複数の貫通穴に対してスナップ係合する複数の突起をキャップ状部材12に設ける。複数の突起それぞれと対応する貫通穴とがスナップ係合することにより、簡単にキャップ状部材12にアンテナパターン820と環状パターン860を設けることができる。なお、スナップ係合した後に突起の先端をつぶす(例えば溶かす)ことにより、キャップ状部材12に対してより強固にアンテナパターン820と環状パターン860を固定することができる。
【0122】
上述の実施の形態4の場合、実施の形態3に比べて、複数に分離するアンテナパターンを、一枚の金属シートから作製する必要がないため、RFIDタグの製造工程を簡素化することができる。例えば、実施の形態3において、アンテナパターン220を一枚の金属シートを打ち抜き加工して作製し、第1のサブパターン222と第2のサブパターン224が形成、すなわち2つのパーツが形成される場合には、この2つのパーツを互いに位置決めした状態でキャップ状部材12に取り付ける作業が必要となるのに対し、実施の形態4においては、アンテナパターン820を一枚の金属シートを打ち抜き加工して作製し、1つのパーツとして形成される場合には、前述のような位置決めが不要となる。
【0123】
図21は、実施の形態4の変形例に係るRFIDタグの分解斜視図である。
【0124】
図21に示すように、実施の形態4の変形例に係るRFIDタグ910は、アンテナパターン820と金属板862とを接続する環状パターン860を備える
図18に示すRFIDタグ810と異なる。環状パターンの代わりに、アンテナパターン920の一端に設けられた帯状の端子部920cが金属板962に直接的に接続する。その端子部920cには、アンテナパターン920の本体部920aにおける給電線部920dと短絡線部920eとが、延長部920bを介して接続されている。帯状の端子部920cと金属板962は半田着けなどにより接合することで接続信頼性を高くする。
【0125】
さらに、
図22は、実施の形態4の別の変形例に係るRFIDタグの分解斜視図である。
【0126】
図22に示すように、実施の形態4の別の変形例に係るRFIDタグ1010は、RFICチップと整合回路とを含むRFICモジュール30がアンテナパターン820に取り付けられている
図18に示すRFIDタグ810とは異なる。具体的には、RFICチップ34がアンテナパターン1020に直接的に取り付けられている。整合回路の代わりに、延長部1020bを介して端子部1020cに接続する給電線部1020dにおける接続側導線部1020fを適切な長さにすることにより、すなわち接続側導線部1020fのインダクタンスを調節することによってアンテナパターン1020とRFICチップ34との間の整合がとられている。ここで、RFICチップ34は半導体素子がパッケージングされた形態も含む。
【0127】
さらに加えて、本発明の実施の形態に係るRFIDタグにおいて、タグ本体であるキャップ状部材は、その開口縁部を介して物品の金属面に取り付けられると内部空間が密閉状態になるものに限らない。例えば、金属面に取り付けられた状態のときに内部空間と外部とを連通する穴をキャップ状部材は備えていてもよい。さらに、タグ本体は、天板部を支持する天板支持部が筒状の側壁部であるキャップ状に限らない。例えば、タグ本体の天板支持部は、互いに平行な2つの平板状の側壁部であってもよい。また例えば、天板支持部は、4本の柱部であってもよい(この場合、タグ本体はテーブル状である)。さらに例えば、極端に言えば、タグ本体は、天板部と、天板部からその裏面側に立設する1本の柱部とを備えてもよい。この極端な例の場合、タグ本体はパラソル状である。
【0128】
さらに加えて、上述の実施の形態1〜3の場合、
図5に示すように、RFICチップ34は整合回路(インダクタンス素子)とともにRFICモジュール30としてモジュール化されているが、本発明の実施の形態はこれに限らない。モジュール化することなく、RFICチップをキャップ状部材に直接的に設けてもよい。この場合、必要に応じて、整合回路もキャップ状部材に直接的に設けられる。
【0129】
また、ある実施の形態に対して別の少なくとも1つの実施の形態を全体としてまたは部分的に組み合わせて本発明に係るさらなる実施の形態とすることが可能であることは、当業者にとって明らかである。
【0130】
すなわち、本発明に係る実施の形態のRFIDタグは、広義には、物品の金属面に取り付けられた状態で使用可能なRFIDタグであって、前記金属面に対してスペースをあけて対向する裏面を備える天板部、および前記天板部から前記裏面側に立設して且つ前記金属面に取り付けられる先端面を備える天板支持部を含むタグ本体と、前記タグ本体の天板部の裏面に設けられたアンテナパターンと、前記タグ本体の天板部の裏面に設けられ、前記アンテナパターンに接続されたRFICチップと、を有し、前記アンテナパターンが、前記タグ本体の天板部の裏面から離れて前記金属面に向かって延在し、前記金属面に対して直流的にまたは容量的に接続する延長部を備える、RFIDタグである。