特許第6575942号(P6575942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575942
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】プロジェクトQCD管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/00 20180101AFI20190909BHJP
   G06Q 10/06 20120101ALI20190909BHJP
【FI】
   G06F8/00
   G06Q10/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-153681(P2015-153681)
(22)【出願日】2015年7月15日
(65)【公開番号】特開2017-27564(P2017-27564A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年7月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年1月15日に日本品質管理学会「品質」第45巻 第1号にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】515213205
【氏名又は名称】株式会社筑波総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】打矢 隆司
【審査官】 坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−203228(JP,A)
【文献】 特開2013−257821(JP,A)
【文献】 江崎和博,ソフトウェア開発プロジェクトの成功度を推定する手法の研究,情報処理学会研究報告,日本,一般社団法人情報処理学会 [online],2015年 6月 6日,Vol.2015-IS-132, No.7,p.1−7,ISSN 2188-8809
【文献】 河村智行、高野研一,情報システム開発の成否に影響を与える組織文化の要因の研究,情報処理学会論文誌[CD−ROM],日本,一般社団法人情報処理学会,2012年12月15日,Vol.53,No.12,p.2854−2864,ISSN 1882-7837
【文献】 田村晃一、柿元 健、戸田航史、角田雅照、門田暁人、松本健一、大杉直樹,工数予測における類似性に基づく欠損値補完法の実験的評価,コンピュータソフトウェア,日本,日本ソフトウェア科学会,2009年 7月28日,Vol.26,No.3,p.44−55,ISSN 0289-6540
【文献】 出張純也、菊野 亨、菊地奈穂美、平山雅之,欠損を含むプロジェクトデータからのプロジェクト成否予測のための特徴抽出,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2010年10月 7日,Vol.110,No.227,p.43−48(SS2010-35),ISSN 0913-5685
【文献】 菊地奈穂美、飯泉純子、亀田康雄、細川宣啓、渡辺千恵子、大槻 繁,見積り法COCOMO II概説,SEC journal,日本,独立行政法人情報処理推進機構,2008年 1月15日,第3巻,第4号(通巻12号),p.34−43,ISSN 1349-8622
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/00
G06Q 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたプロジェクト管理実績データから、ソフトウェア開発の工数(C)、工期(D)及び欠陥率(Q)各々の見積りを推論するQCD見積モデルを生成するQCD見積機生成装置
力された、工数(C)、工期(D)及び欠陥率(Q)の見積りを行うためのプロジェクト変数と、前記QCD見積モデルから、工数(C)、工期(D)及び欠陥率(Q)の見積値を生成するQCD見積装
入力された、工数(C)、工期(D)及び欠陥率(Q)の目標値と、前記QCD見積モデルを用いたシミュレーションを行い、前記見積値を前記目標値とするための前記プロジェクト変数の改善巾を出力するシミュレーション装置と、
を備え
前記プロジェクト管理実績データは平均要員数及びピーク時要員数を変数として含み
前記QCD見積機生成装置は、
平均要員数、ピーク時要員数、工期(D)及び工数(C)を組み合わせて導出される専任率前記平均要員数、前記ピーク時要員数及び前記専任率から導出される、工数(C)、工期(D)及び欠陥率(Q)との相関が強いピーク要員比率とを指標として用いて、前記QCD見積モデルの精度を検証する
ことを特徴とするプロジェクトQCD管理システム。
【請求項2】
前記QCD見積機生成装置は、前記プロジェクト管理実績データに対して共分散構造分析を用いることで前記QCD見積モデルを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のプロジェクトQCD管理システム。
【請求項3】
前記共分散構造分析には、欠測値を補完する機能が設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載のプロジェクトQCD管理システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、共分散構造分析によるQCD見積モデルを使用して、ソフトウェア開発工数見積りなどのプロジェクト管理指標値(開発工数(C)、工期(D)、欠陥率(Q))を推論するプロジェクトQCD管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソフトウェア開発において、多くの場合、ソフトウェア開発にかかる工数を見積り、その見積を基準に開発を進めていくため、開発工数の見積り手法が必要となっている。
ソフトウェアの規模を測定する手法として、ソースコード行数を評価するSLOC(Source Line Of Code)やソフトウェアの機能数や複雑さを評価したFP(Function Point)法が広く知られている。また、規模を基に工数を見積る手法として、COCOMO(Constructive Cost Model)やCoBRA(Cost estimation,Benchmarking and Risk Assessment)法が著名である。
また工期の設定も必要であるが、必要な工期を見積る手法としてBoehmが考案した方法の簡略形で、工数だけを基に見積もる方法が著名である。
そして欠陥率の見積に関しては、COQUALMO(Constructive QUALity MOdel)があるが、複雑であり、一般には知られていない。
従来のソフトウェア開発工数見積支援システムでは、プロジェクトデータを回帰分析するなどして見積りを行なっている。(たとえば、特許文献1参照)
ソフトウェア開発工期の見積もり支援システムは、工数との関係を回帰分析した結果を用いるなどして見積を行っている。
欠陥率に関する見積支援システムは公になっているものは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−203228号広報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】打矢隆司,椿広計,木野泰信(2015):”ソフトウェア計量管理のためのQCD統合構造モデル″,「品質」45,[1],98−115.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のソフトウェア開発工期の見積り支援システムは、工数のみを見積のための変数としているため、見積もられる工期は現実のプロジェクトと乖離した見積り手法となる可能性が高いという問題点があった。
また欠陥率に対する見積り支援システムは無く、類似システムの平均値を用いるしかないため、欠陥率を目標以下にするために工数を幾ら増加すべきか、工期をどの程度伸ばすか等は、感に頼らざるを得ない状況であった。
【0006】
本発明は工期の見積精度を倍増させ、一般に使用されている方法での工数見積精度と同じ程度にたかめることで、現場で使用できる精度の見積を可能にすることを目的にするものである。
また従来見積もることが出来なかった欠陥率に関し、従来の工期の見積に近い精度の見積もりを可能にすることを目的にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係わるプロジェクトQCD管理システムにおいては、プロジェクト指標値の推論を行うための情報を蓄積したプロジェクト管理実績データ、このプロジェクト管理実績データの情報を基にしてプロジェクト指標値を見積るためのQCD見積モデルを生成し、検定したQCD見積モデルを見積機として出力するQCD見積機生成装置、及び見積機を用いて、ユーザにより入力されたデータに基づき、工数、工期、欠陥率を見積る見積装置を備え、QCD見積機生成装置は、共分散構造分析モデルの機械学習機を利用して、プロジェクト管理実績データの情報を基にしてQCD見積モデルを作成するモデル作成部と、このモデル作成部により生成されたQCD見積モデルを検定するモデル検定機とを有するものである。
また目標とする工数、工期、欠陥率とするためには、平均要員数、ピーク要員数、専任率などのプロジェクト管理指標をどれだけ改善すれば良いかのシミュレーションをシミュレーション装置によって実現する。
【発明の効果】
【0008】
工期に関しては、工数以外の説明変数を加えることにより、従来よりも見積精度を倍増させる。欠陥率に関しても、従来見積は難しかったが、基礎的は変数を説明変数にすることと、欠損値があっても補いロジックを備えた共分散構造分析を用いることで、見積もることを可能にしている。
また、QCD間のトレードオフ関係をモデル化することにより、欠陥率を幾ら改善するには工期を何日延長すればよいかなどのシミュレーションも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1によるプロジェクトQCD管理システムを示す構成図である。
図2】この発明の実施の形態1によるプロジェクトQCD管理システムのプロジェクト管理実績データの例を示す図である。
図3】この発明の実施の形態1によるプロジェクトQCG管理システムのQCD見積機生成装置の処理を示すフローチャートである。
図4】この発明の実施の形態1によるプロジェクトQCD管理システムのQCD見積装置の処理を示すフローチャートである。
図5】この発明の実施の形態1によるプロジェクトQCD管理システムのQシミュレーション装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1によるプロジェクトQCD管理システムを示す構成図である。
図1において、QCD見積機生成装置1は、与えられたプロジェクト管理実績データ6を入力とし、QCD見積機11とQCDシミュレーション機12を生成するための装置である。QCD見積装置2は、新規又は再構築プロジェクトの見積りを行うためのデータを入力とし、QCD見積機11を用いて、工数、工期そして欠陥率の見積りに必要な情報を推論する装置である。
なお、QCD見積機生成装置1とQCD見積装置2とシミュレーション機3は、それぞれ計算機によって構成される。
【0011】
QCD見積機生成装置1は、変数構築機7、QCD見積モデル構築機8、モデル検定機10を有している。
変数構築機7は、プロジェクト管理実績データ6のデータ項目を組み合わせ、出力値(工数、工期、欠陥率)や他変数と関連度の高い変数を構築する。
QCD見積モデル構築機8は、共分散構造分析モデルを利用して実現され、プロジェクト管理実績データ6の統計情報から工数、工期、欠陥率各々の見積りを推論するQCD見積モデル9を生成する。
モデル検定機10は、機械学習機によって生成されたQCD見積モデル9を検定し、その精度を検証する部分で、統計的有意が認められる変数間の相関だけを残す様、モデルをチューニングする。
【0012】
QCD見積装置2は、QCD見積機11とインターフェース13を有する。
QCD見積機11は、QCD見積機生成装置1によってチューニングされたQCD見積モデル9を元にQCD見積りを行う部分である。
【0013】
シミュレーション装置3は、QCDシミュレーション機12とインターフェース13を有する。
QCDシミュレーション機12は、QCD見積機生成装置1によってチューニングされたQCD見積モデル9を元にQCDのシミュレーションを行う部分である。
【0014】
ユーザインターフェース13は、プロジェクト変数14、見積値15、目標値16そして変数の改善巾17で構成される。ユーザインターフェース13は、ユーザ端末4からソフトウェア開発のQCDを見積るためのプロジェクト変数を受け取り、見積値を返すことや、ユーザ端末5からQCDの目標値を受取、目標を達するための変数の改善巾を返すインターフェースである。
QCD見積機11はユーザ端末からのユーザインターフェースの内のプロジェクト変数14を受けて、見積値15をユーザ端末に返す。
QCDシミュレーション機はユーザ端末5からQCDの目標値16を受けて、その改善値を達成するに必要なプロジェクト管理指標の変数の改善巾17を返す。
【0015】
図2は、この発明の実施の形態1によるプロジェクトQCD管理システムのプロジェクト管理実績データの例を示す図である。
図2において、プロジェクト管理実績データ6として、ソフトウェア開発QCD見積りのための指標を示し、各指標について単位、備考を示している。
【0016】
次に、動作について説明する。
まず、図3に従い、実施の形態1のQCD見積機生成装置1の動作について説明する。
処理310で、過去に蓄積されたプロジェクト管理実績データを変数構築機7に入力する。次に、処理311で平均要員数と工期及び工数を組み合わせて専任率を導出し、平均要員数、ピーク要員数そして専任率を掛け合わせた、ピーク要員比率という指標を設ける。この指標はQCDとの相関が非常に強く、工期と欠陥率の見積精度を上げている。
【0017】
次に、処理312から処理314のフローでQCD見積機11を生成する。
処理312では、変数間相互の因果関係をパス図モデルとして作成する。パス図モデル設定後、処理313で、プロジェクト管理実績データをQCD見積モデル構築機8に入力し、共分散構造分析を行うことで、有意な相関のパスのみを残したQCD見積モデル9を生成し、処理314で、QCD見積モデル9の推定精度検定を行う。
共分散構造分析ではデータの欠測値があってもそのデータを補完する機能を設定することで、欠測値があるプロジェクト管理実績データも生かすことで、見積精度の高いモデルを生成する。
処理316の検定で十分な見積り精度が出ると判定された場合、生成されたQCD見積モデル9をQCD見積機11として出力し、処理を終了する。
【0018】
次に、図4に従い、実施の形態1のQCD見積装置2の動作について説明する。
処理410では、QCDの見積を行いたいプロジェクト変数14をユーザ端末4から入力する。処理420では、変数をQCD見積機11に入力し、QCDの見積値15をユーザ端末4へ出力する。
【0019】
次に、図5に従い、実施の形態1のシミュレーション装置3の動作について説明する。
QCD見積モデルは、共分散構造分析を用いることで、変数及びQCD間の相互関係を定量的に表し、変数やQCDの一つが変動した時、他の変数やQCDがどの程度影響を受けるかの算定を可能にする。この機能を用いてシミュレーションを可能にする。
処理510では、QCDの目標値16をユーザ端末4から入力する。処理520では、目標値をQCDシミュレーション機12に入力し、目標値とするために必要な変数の改善巾17をユーザ端末4へ出力する
【符号の説明】
【0020】
1 QCD見積機生成装置
2 QCD見積装置
3 シミュレーション装置
4 ユーザ端末1
5 ユーザ端末2
6 プロジェクト管理実績データ
7 変数構築機
8 QCD見積モデル構築機
9 QCD見積モデル
10 モデル検定機
11 QCD見積機
12 QCDシミュレーション機
13 ユーザインターフェース
14 プロジェクト変数
15 見積値
16 目標値
17 変数の改善巾
図1
図2
図3
図4
図5