特許第6575963号(P6575963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575963
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】液状栄養組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20190909BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20190909BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20190909BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20190909BHJP
   A23L 33/115 20160101ALI20190909BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20190909BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20190909BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20190909BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20190909BHJP
【FI】
   A61K47/36
   A61K9/10
   A61P3/02
   A23L33/18
   A23L33/115
   A23L33/125
   A23L33/15
   A23L33/21
   A23L29/256
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-57426(P2016-57426)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-171592(P2017-171592A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西谷 弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 博晶
【審査官】 渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/074670(WO,A1)
【文献】 特開2014−210717(JP,A)
【文献】 特開2011−147444(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/161253(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/081725(WO,A1)
【文献】 特開2008−069090(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/073675(WO,A1)
【文献】 特開2011−050278(JP,A)
【文献】 特開昭62−171644(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0040739(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0044290(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/203838(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 9/00
A23L 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル、および食物繊維を含む栄養素が配合されてなる液状栄養組成物であって、
液状栄養組成物全量に対して1〜5質量%のたんぱく質分解物を含み、
液状栄養組成物全量に対して0.5〜1.5質量%のアルギン酸塩を含み、
前記たんぱく質分解物の平均分子量が500〜10,000であり、
前記アルギン酸塩の25℃における粘度が、1質量%水溶液として20〜200mPa・sであり、
熱量が0.5〜1.0kcal/mLであり、25℃における粘度が10〜100mPa・sであり、pHが6.0〜7.5であり、
人工胃液20gと液状栄養組成物10gとを混和した場合の固形化物質量が5g以上である、液状栄養組成物。
【請求項2】
熱量が0.6〜0.9kcal/mLである、請求項1に記載の液状栄養組成物。
【請求項3】
25℃における粘度が10〜71mPa・sである、請求項1または2に記載の液状栄養組成物。
【請求項4】
前記アルギン酸の25℃における粘度が、1質量%水溶液として65〜200mPa・sである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状栄養組成物。
【請求項5】
予め殺菌されてなるものである、請求項1〜のいずれか1項に記載の液状栄養組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状栄養組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
経腸栄養は、経静脈栄養と比較して生理的に経口摂取に近く、消化管を正常に維持することができ、また合併症が少なく、安全に管理できる。咀嚼・嚥下機能の著しい低下や意識障害などによって、食物の経口摂取が困難な患者向けの重要な栄養投与法である。
【0003】
経腸栄養法には、投与経路によって経鼻経管栄養法や胃瘻経管栄養投与法などがある。これらの経腸栄養法に用いられる栄養組成物としては、液状、半固形状、とろみ状などがある。経鼻経管栄養法には、鼻腔を経由して胃内に挿入した細くかつ長いチューブを介して栄養組成物を投与するため、液状栄養組成物を用いる。この場合、急速な投与は下痢を起こすため、経腸栄養ポンプや栄養セットに付属しているローラークレンメで流量を調整する必要がある。そのため、結果として投与に数時間程度の長時間を要し、患者やその介護者への負担が大きい。また、経鼻経管栄養法により長期で経腸栄養を施行した場合では、液状栄養組成物の胃食道逆流に起因する誤嚥性肺炎などの呼吸器合併症に悩まされる症例も少なくない。
【0004】
胃瘻経管栄養投与法は、経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy、PEG)を施行して胃に接続した胃瘻チューブにより体外から直接、胃内部へ栄養を投与する栄養管理法である。従来行われてきた経鼻経管栄養法と比較し、管理が容易であること、患者の苦痛が少ないこと、摂食・嚥下リハビリテーションが容易であることから、最近では有用な経管栄養法の一つとして注目されている。
【0005】
ここで、半固形状栄養組成物によれば、液状栄養組成物に伴う合併症として大きな問題であった胃食道逆流による誤嚥性肺炎などの呼吸器合併症や、液状栄養組成物を胃に急速に投与した場合の胃壁の進展はみられず、胃から腸への排出により糖質が急速に吸収されて起こる高血糖や下痢の症状なども解消される。その結果として、褥瘡を防止したり、患者の負担を軽減し、患者のQOLの向上に貢献できる。一方、半固形状栄養組成物を投与する際には、チューブから栄養組成物を押し出す際の吐出抵抗が高いため、栄養組成物を押し出す際に大きな力が必要となり、介護者の身体的負担が大きい場合があった。
【0006】
一方、とろみ状栄養組成物は、半固形栄養組成物より粘度が低いため、患者の状態によっては胃食道逆流による誤嚥性肺炎などの呼吸器合併症の解消に寄与しないが、PEGチューブに接続して容器から栄養組成物を押し出す際の吐出抵抗が低いことから、栄養組成物を押し出す際に少ない力で実施でき、介護者の身体的負担が少ないという利点がある。近年、とろみ状栄養組成物の入った容器を直接PEGチューブに接続して容器を吊り下げ、とろみ状栄養組成物の粘度と落差によって速度調製する投与方法が普及し始め、医療従事者や介護者の負担が低減されている。
【0007】
ここで、液状またはとろみ状の栄養組成物を調製するにあたっては、増粘剤を使用して粘度を調整し、固形分の沈殿を防止することが試みられている。例えば、特許文献1には、胃内部で半固形化(ゲル化)させることを目的として液状または流体状(とろみ状)で投与される流動食に、カラギーナン等の増粘剤を添加する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−50278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、経管栄養法を実施する際の経管としては、患者への負担を考慮して極力細い(例えば、8フレンチ程度の)チューブを用いることが求められるが、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載された技術によってもなお、投与される栄養組成物の粘度が高すぎて、自然落差を利用して栄養組成物を投与することができなくなるという問題もある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、低粘度で調製が可能な、胃内部で半固形化(ゲル化)させる栄養組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。特に、全量に対して1〜5質量%のたんぱく質分解物を含む液状栄養組成物を対象として、さらに粘度を低下させるために検討を重ねた。その結果、1質量%水溶液としての粘度(25℃)が20〜200mPa・sであるアルギン酸塩を増粘剤として用いることにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)に示したものである。
(1)たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル、および食物繊維を含む栄養素が配合されてなる液状栄養組成物であって、液状栄養組成物全量に対して1〜5質量%の蛋白分解物を含み、液状栄養組成物全量に対して0.5〜1.5質量%のアルギン酸塩を含み、前記アルギン酸塩の25℃における粘度が、1質量%水溶液として20〜200mPa・sであり、熱量が0.5〜1.0kcal/mLである、液状栄養組成物;
(2)25℃における粘度が10〜100mPa・sである、上記(1)に記載の液状栄養組成物;
(3)人工胃液20gと液状栄養組成物10gとを混和した場合の固形化物質量が5g以上である、上記(1)または(2)に記載の液状栄養組成物;
(4)pHが6.0〜7.5である、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の液状栄養組成物。
(5)予め殺菌されてなるものである、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の液状栄養組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る液状栄養組成物によれば、経時的な固形分の沈殿を抑制することができる。また、低粘度で調製が可能であることから、細い(例えば、8フレンチ程度の)チューブを経管として用いる経管栄養法にも用いることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一形態によれば、たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル、および食物繊維を含む栄養素が配合されてなる液状栄養組成物であって、液状栄養組成物全量に対して1〜5質量%の蛋白分解物を含み、液状栄養組成物全量に対して0.5〜1.5質量%のアルギン酸塩を含み、前記アルギン酸塩の25℃における粘度が、1質量%水溶液として20〜200mPa・sであり、熱量が0.5〜1.0kcal/mLである、液状栄養組成物が提供される。以下、本発明に係る液状栄養組成物について、詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る液状栄養組成物に示される「液状」とは、10〜100mPa・sの粘度(25℃)を有することである。本明細書において、粘度は、第8版 食品添加物公定書「B.一般試験法、28.粘度測定法 第2法 回転粘度計法」に記載された方法に準じて測定される。例えば、B型回転粘度計DV−II+Pro(Brookfield社)、RB80L(東機産業株式会社)などを用いて測定した値をいう。
【0015】
[糖質]
本発明に係る液状栄養組成物に使用する糖質は、従来、栄養組成物で利用されている公知の多糖類、糖アルコール、糖類等のいずれも使用できる。例えば、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース等の単糖類、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、イソマルトース、トレハロース等の二糖類、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、デキストリン等の多糖類や水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、消化性オリゴ糖、粉飴、糖アルコール(マルチトール、ソルビトール、イソマルツロース、イソマルツロース還元物、キシリトール、ラクチトールなど)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。糖アルコールは、口内細菌によって酸に代謝されにくく、歯垢の形成を防止しうる。
【0016】
本発明に係る液状栄養組成物中の糖質の配合量は、適用する対象者によって適宜調節されうるが、液状栄養組成物全量に対して7〜12質量%であることが好ましい。
【0017】
[たんぱく質(アミノ酸、ペプチドを含む)]
本発明に係る液状栄養組成物に使用するたんぱく質としては、従来、栄養組成物で利用されてきている公知の各種のもの(アミノ酸、ペプチド、植物性たんぱく質、動物性たんぱく質)のいずれも使用できる。ただし、本発明に係る液状栄養組成物は、たんぱく質としてたんぱく質分解物を必須に含む。ここで、たんぱく質分解物としては、動物性たんぱく質分解物もしくは植物性たんぱく質分解物、または動物性たんぱく質分解物もしくは植物性たんぱく質分解物の一部をカゼインナトリウムもしくはカゼインカルシウムに置き換えたものが用いられうる。ここで、動物性たんぱく質分解物としては、全乳たんぱく質分解物、カゼイン分解物、乳清たんぱく質分解物、鶏卵たんぱく質分解物、魚たんぱく質分解物、肉たんぱく質分解物等が挙げられる。また、植物性たんぱく質分解物としては、大豆たんぱく質分解物、砂糖大根分解物等が挙げられる。これらの分解物は、常法により各たんぱく質を酵素または酸を用いて加水分解することにより、製造することができる。
【0018】
本発明に係る液状栄養組成物に使用するたんぱく質分解物の平均分子量は、好ましくは500〜10,000、より好ましくは500〜2,000である。また、平均分子量の異なるたんぱく質分解物を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明において平均分子量とは、重量平均分子量を意味する。たんぱく質分解物の平均分子量が500より小さいと、アミノ酸に近くなって消化吸収性が低下し、風味が悪くなる傾向にある。また、たんぱく質分解物の平均分子量が10,000より大きいと、摂取後に消化を必要として残渣が多くなるばかりでなく、製造時に酸添加後や加熱殺菌後に栄養組成物は澄明とならず、場合によっては不溶性の凝集物や沈殿物を生じて液状でなくなるので経管投与の際にチューブ閉塞の原因となり、投与が困難となる場合がある。
【0019】
本発明において、たんぱく質分解物の平均分子量を求める方法は、当該技術分野における慣用技術ならびに知識がそのまま、もしくは適宜変更を加えた形で適用され、代表的にはゲルろ過クロマトグラフィーが挙げられる。すなわち、高速液体クロマトグラフィー装置に紫外可視分光検出器を連結し、たんぱく質分解物をゲルろ過カラムに供し、溶離液を流すことによって溶離したたんぱく質分解物を分析する方法である。この方法を用いた場合、たんぱく質分解物の平均分子量は、紫外可視分光検出器の感度から高速液体クロマトグラフィー装置のデータ処理装置にしたがって計算することにより求めることができる。
【0020】
以下では、上述したたんぱく質分解物以外に用いられうる材料について、説明する。
【0021】
アミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン等の必須アミノ酸;およびグリシン、アラニン、セリン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン等の非必須アミノ酸が挙げられる。これらの他、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリジン、γ−カルボキシグルタミン酸、O−ホスホセリン、O−ホスホチロシン、N−アセチルセリン、ω−N−メチルアルギニン、ピログルタミン酸、M−ホルミルメチオニン等の修飾アミノ酸;オルニチン、シトルリン、γ−アミノ酪酸(GABA)、チロキシン、S−アデニルメチオニン等の特殊アミノ酸も包含されうる。また、前記アミノ酸は、それぞれ立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)であっても、位置異性体であってもよく、これらの混合物であってもよい。さらに、前記アミノ酸は、無機酸塩(塩酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩等)、生体内で加水分解可能なエステル体(メチルエステル等)、水和物等の形態であってもよい。
【0022】
ペプチドとしては、上記アミノ酸の2残基以上がペプチド結合(アミド結合)を介して重合したものが用いられうる。当該ペプチドは、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド(アミノ酸が約10個程度のもの)、ポリペプチド(アミノ酸が数十〜数百個のもの)のいずれであってもよい。なお、例えば、ラクトトリペプチド、カゼインドデカペプチド、バリルチロシンを含むサーデンペプチド等の降圧作用等の保健機能を有するペプチドを用いてもよい。
【0023】
植物性たんぱく質としては、米、とうもろこし、小麦等の穀類、大豆等の豆類等に含まれるたんぱく質が挙げられる。なお、大豆たんぱく質については、胆汁酸と結合してコレステロールの排泄を促進する等の保健機能を有しうる。
【0024】
動物性たんぱく質としては、卵、肉類、魚介類、牛乳等に含まれるたんぱく質が挙げられる。
【0025】
これらのうち、牛乳(乳清)を原料とするホエイたんぱく質、カゼインたんぱく質、大豆たんぱく質を用いることが好ましく、大豆たんぱく質を用いることがより好ましい。 上述のたんぱく質、アミノ酸またはペプチドは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
本発明に係る液状栄養組成物中のたんぱく質、アミノ酸またはペプチドの配合量は、適用する対象者によって適宜調節されうるが、液状栄養組成物全量に対して3〜15質量%であることが好ましい。ただし、上述したたんぱく質分解物の配合量は、液状栄養組成物全量に対して1〜5質量%であることが必須であり、好ましくは3〜10質量%である。
【0027】
[脂質]
本発明に係る液状栄養組成物に配合する脂質は、従来、栄養組成物で利用されてきている公知の各種のもののいずれも使用できる。脂質としては、例えば、アマニ油、エゴマ油、オリーブ油、ごま油、米油、サフラワー油、シソ油、大豆油、とうもろこし油、ナタネ油、胚芽油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油、やし油、落花生油等の植物性油脂;魚油、乳脂等の動物性油脂;シゾキトリウム等の微細藻、モルティエレラ等の糸状菌、酵母等に由来する微生物油;中鎖脂肪酸、高度不飽和脂肪酸(例えば、アラキドン酸、DHA、EPA)等の脂肪酸、などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。また、その他にジアシルグリセロールなどの加工製剤も添加することができる。
【0028】
液状栄養組成物中の脂質の配合量は、適用する対象者によって適宜調節されうるが、液状栄養組成物全量に対して1〜8質量%であることが好ましい。
【0029】
[ビタミン]
本発明に係る液状栄養組成物に配合するビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどが挙げられ、これら複数を組み合わせて配合するのが好ましい。ビタミンとしては、ビタミン誘導体(例えば、塩酸塩やカルシウム塩等の塩)を使用してもよい。
【0030】
本発明に係る液状栄養組成物中のビタミンの配合量は、液状栄養組成物100gあたり下記の範囲が適当である:
ビタミンA:好ましくは0〜3000μg、より好ましくは20〜200μg
ビタミンD:好ましくは0.1〜50μg、より好ましくは0.1〜5.0μg
ビタミンE:好ましくは1〜800mg、より好ましくは0.2〜10mg
ビタミンK:好ましくは0.5〜1000μg、より好ましくは2〜50μg
ビタミンB1:好ましくは0.01〜40mg、より好ましくは0.1〜10mg
ビタミンB2:好ましくは0.01〜20mg、より好ましくは0.05〜10mg
ナイアシン:好ましくは0.1〜300mgNE、より好ましくは0.5〜60mgNE
パントテン酸:好ましくは0.1〜55mg、より好ましくは0.2〜30mg
ビタミンB6:好ましくは0.01〜60mg、より好ましくは0.1〜30mg
ビオチン:好ましくは0.1〜1000μg、より好ましくは1〜100μg
葉酸:好ましくは1〜1000μg、より好ましくは10〜200μg
ビタミンB12:好ましくは0.01〜100μg、より好ましくは0.2〜60μg
ビタミンC:好ましくは1〜2000mg、より好ましくは5〜1000mg。
【0031】
[ミネラル]
本発明に係る液状栄養組成物に使用するミネラルは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン、ヨウ素、クロムおよびモリブデンなどが挙げられ、これら複数をできる限り組み合わせて配合するのが好ましい。これらは、無機電解質成分として配合されていても良いし、有機電解質成分として配合されていてもよい。無機電解質成分としては、例えば、塩化物、硫酸化物、炭酸化物、リン酸化物などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩類が挙げられる。また、有機電解質成分としては、有機酸、例えばクエン酸、乳酸、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸な ど)、リンゴ酸またはグルコン酸と、無機塩基、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩類が挙げられる。例えば、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、未焼成カルシウム、塩化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸第二鉄、硫酸第一鉄、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸銅、硫酸銅などが挙げられる。また、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、マンガンなどは、高濃度の微量元素化合物を含有する培地内で培養して得られる微量元素蓄積性を有する微生物由来の微量元素含有微生物菌体を用いても良い。さらに、海藻等に由来するミネラル混合物を用いることもできる。
【0032】
本発明に係る液状栄養組成物中のミネラルの配合量は、下記の範囲が適当である:
ナトリウム:好ましくは5〜6000mg、より好ましくは10〜3500mg
カリウム:好ましくは1〜3500mg、より好ましくは25〜1800mg
カルシウム:好ましくは10〜2300mg、より好ましくは30〜300mg
リン:好ましくは1〜3500mg、より好ましくは25〜1500mg
マグネシウム:好ましくは1〜740mg、より好ましくは10〜150mg
鉄:好ましくは0.1〜55mg、より好ましくは1〜10mg
亜鉛:好ましくは0.1〜30mg、より好ましくは1〜15mg
銅:好ましくは0.01〜10mg、より好ましくは0.06〜6mg
ヨウ素:好ましくは0.1〜3000μg、より好ましくは1〜150μg
マンガン:好ましくは0.01〜11mg、より好ましくは0.1〜4mg
セレン:好ましくは0.1〜450μg、より好ましくは1〜35μg
クロム:好ましくは0.1〜40μg、より好ましくは1〜35μg
モリブデン:好ましくは0.1〜320μg、より好ましくは1〜25μg。
【0033】
[食物繊維]
本発明に係る液状栄養組成物は、食物繊維を含む。そして、当該食物繊維は、アルギン酸塩を必須に含み、さらに、当該アルギン酸塩の25℃における粘度は、1質量%水溶液として20〜200mPa・sである点に特徴がある。なお、この粘度は、好ましくは20〜150mPa・sである。なお、この粘度が20mPa・s未満であると、後述する比較例6に示すように、組成物全体の粘度を低減することはできるものの、組成物を胃内において十分に固形化させることができないという問題がある。一方、この粘度が200mPa・sを超えると、組成物全体の粘度が上昇してしまい、細いチューブを用いた場合に自然落差によって投与することができなくなってしまうという問題がある。
【0034】
本発明に係る液状栄養組成物に使用するアルギン酸塩としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムなどの各種塩が挙げられ、上記の粘度の規定を満たす物である限り、特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。
【0035】
本発明に係る液状栄養組成物に使用するアルギン酸塩の配合量は、液状栄養組成物の全量に対して0.5〜1.5質量%であることが必須であり、好ましくは0.7〜1.3質量%である。アルギン酸塩の配合量が0.5質量%未満であると、液状栄養組成物の固形分が分散されずに沈澱し、外観上分離しているように見えるため、好ましくない。また、アルギン酸塩の配合量が1.5質量%を超えると、液状栄養組成物の粘度が上昇してしまい、細いチューブを用いた場合に自然落差によって投与することができなくなってしまうという問題がある。
【0036】
ここで、本発明に係る液状栄養組成物の粘度(25℃)は、特に制限されないが、通常は10〜100mPa・sであり、好ましくは10〜50mPa・sである。液状栄養組成物の粘度が10mPa・s以上であれば、市販で流通している液状栄養組成物と変わりなく操作できることから好ましい。一方、液状栄養組成物の粘度が100mPa・s以下であれば、細いチューブを用いた場合であっても自然落差によって投与することが可能であるという利点がある。
【0037】
なお、本発明に係る液状栄養組成物の主旨を逸脱しない範囲において、アルギン酸塩以外の、従来、栄養組成物で利用されてきている公知の食物繊維をさらに含んでもよい。具体的には、例えば、従来公知の不溶性食物繊維、および水溶性食物繊維を必要に応じて適宜組み合わせて使用することができ、より具体的には、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、水溶性ペクチン、不溶性ペクチン、キチン、キトサン、難消化性デキストリン、イヌリン、サイリウム種皮、グアーガム、グアーガム分解物、コンニャクマンナン、グルコマンナン、ポリデキストロース、寒天、カラギーナン、小麦ふすま、レジスタントスターチ、フコイダン、タマリンドシードガム、プルラン、ジェランガム、アラビアガム等が用いられうる。これらの食物繊維は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。本発明に係る液状栄養組成物に使用する食物繊維の配合量は、適用する対象者等によって適宜調節されうるが、アルギン酸塩を含む食物繊維全体として、例えば、0.5〜5質量である。
【0038】
[その他の成分]
本発明に係る液状栄養組成物中の水分は、好ましくは25〜130g/100kcalであり、より好ましくは30〜120g/100kcalである。水分が25g/100kcal以上であれば、水分不足とこれに起因する患者等における脱水状態の危険性が低減される。また、水分が130g/100kcal以下であれば、水分過剰とこれに起因する患者等における溢水状態の危険性が低減される。
【0039】
本発明に係る液状栄養組成物は、本発明の目的効果が達成される限りにおいて、さらにその他の公知の成分、例えば、保険機能成分、食品添加物を含んでいてもよい。
【0040】
保健機能成分とは、摂取することによって生体に対し一定の機能を発揮する成分である。例えば、クエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)、グァバ葉ポリフェノール、豆鼓エキス、植物性ステロール、大豆イソフラボン、難消化性オリゴ糖等が挙げられる。
【0041】
難消化性オリゴ糖とは、単糖類がグリコシド結合によって結合した化合物のうち、多糖類ほどは分子量が大きくない(300〜3000程度)炭水化物である。前記難消化性オリゴ糖はヒトの消化酵素では分解されず、ヒトの消化酵素で分解されるオリゴ糖は、上述の糖質に包含されうる。難消化性オリゴ糖を摂取することにより、整腸効果が得られうる。
【0042】
難消化性オリゴ糖としては、特に制限されないが、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラクチュロース、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。これらの難消化性オリゴ糖は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。液状栄養組成物中の難消化性オリゴ糖の配合量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
【0043】
食品添加物は、食品の加工もしくは保存の目的で、食品に添加、混和、湿潤その他の方法によって使用するものである。食品添加物としては、栄養強化の目的以外にも、例えば、保存料、防かび剤、酸化防止剤、着色料、甘味料、pH調整剤、酸味剤、乳化剤、香料、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0044】
酸化防止剤は、液状栄養組成物の酸化による変質を防止する機能を有する。酸化防止剤としては、特に制限されないが、エリソルビン酸およびそのナトリウム塩等が用いられうる。これらの酸化防止剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
着色料は、液状栄養組成物を着色する機能を有する。着色料としては、特に制限されないが、食用タール色素(食用赤色2号、3号、40号、102号、104号、105号、および106号、食用青色1号および2号、食用黄色4号および5号、食用緑色3号等)、β−カロテン、水溶性アナトー、クロロフィル誘導体(クロロフィルa、クロルフィルb、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、鉄クロロフィリンナトリウム等)、リボフラビン、三二酸化鉄、二酸化チタン、ベニバナ黄色素、コチニール色素、クチナシ黄色素、ウコン色素、赤キャベツ色素、ビートレッド、ブドウ果皮色素、パプリカ色素、カラメル等が用いられうる。これらの着色料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
甘味料は、液状栄養組成物に甘味を付与する機能を有する。甘味料としては、特に制限されないが、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(クリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、エリスリトール、チクロ(サイクラミン酸)、ソーマチン、クルクリン、グリチルリチン酸二ナトリウム等が用いられうる。これらの甘味料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
pH調整剤は、液状栄養組成物のpHを調整する機能を有する。pH調整剤としては、特に制限されないが、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アジピン酸、水酸化ナトリウム等が用いられうる。これらのpH調整剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
酸味料は、栄養組成物への酸味の付与、食品の酸化の防止、およびpHの調整等の機能を有する。酸味料としては、特に制限されないが、酢酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸等が用いられうる。これらの酸味料は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
乳化剤は、脂質等の油溶性成分の水への溶解性の向上等の機能を有する。乳化剤としては、特に制限されないが、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム等の天然乳化剤;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の合成乳化剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
香料は、液状栄養組成物を着香・嬌臭する機能を有する。香料としては、特に制限されないが、アセトフェノン、α−アミルシンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、デカナール、デカノール、アセト酢酸エチル、ケイ皮酸エチル、デカン酸エチル、エチルバニリン、オイゲノール、ゲラニオール、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、dl−メントール、l−メントール、サリチル酸メチル、ピペロナール、プロピオン酸、テルピネオール、バニリン、d−ボルネオール等が挙げられる。これらの香料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
シクロデキストリンとは、グルコースがグルコシド結合によって結合し、環状構造をとった環状オリゴ糖である。6個のグルコースからなるものをα−シクロデキストリン、7個のグルコースからなるものをβ−シクロデキストリン、8個のグルコースからなるものをγ−シクロデキストリンという。α−シクロデキストリンおよびβ−シクロデキストリンは、食物繊維に分類される。シクロデキストリンは、アレルギー抑制効果、血糖値上昇抑制効果、乳化作用等の機能を有しうる。当該シクロデキストリンは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。液状栄養組成物中のシクロデキストリンの配合量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
【0052】
さらに、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースイソメラーゼ、トレハロース生成酵素、トレハロース遊離酵素、グルタミナーゼ等の酵素や酵母等もまた、食品添加物として用いられうる。液状栄養組成物中の上記食品添加物の配合量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
【0053】
本発明に係る液状栄養組成物の熱量は、0.5〜1.0kcal/mLであり、好ましくは0.6〜0.9kcal/mLである。熱量が0.5kcal/mL未満であると、液状栄養組成物の水分が多くなり、患者に投与される栄養素が少なくなって栄養不足になる可能性があるため、好ましくない。また、熱量が1.0kcal/gを超えると、液状栄養組成物の水分が少なくなり、PEGチューブから水分を追加して投与する必要が生じるなど、細菌感染のリスクが大きくなるため、好ましくない。なお、熱量は、糖質、脂質、たんぱく質、および食物繊維等の添加量を適宜設定することで調節することができる。なお、本明細書において、「熱量」とは、Atwaterのエネルギー換算係数を参考にして算出された値である。具体的には、熱量=(4kcal×糖質含量)+(9kcal×脂質含量)+(4kcal×たんぱく質含量)+(2kcal×食物繊維含量)として計算し、試料mL当たりのkcalとして示す。
【0054】
本発明に係る液状栄養組成物のpHは、特に制限されないが、好ましくは6.0〜7.5であり、好ましくは6.0〜7.0である。pHが6.0以上であれば、酸味が強くなりすぎず、好ましい。また、pHが7.5以下であれば、液状栄養組成物が投与前は液状であり、かつ胃液の反応による固形化が十分に起こるという利点がある。なお、液状栄養組成物のpHは、pH調整剤や酸味料等の添加量を適宜設定することで調節することができる。また、本明細書において、pHは、第8版食品添加物公定書「B.一般試験法、31.pH測定法」に記載された方法に準じて測定された値である。
【0055】
本発明に係る液状栄養組成物に必須の成分以外に添加されうる成分については、特に制限されず、投与方法、液状栄養組成物を適用する高齢者や患者の状態等に応じて適宜設定されうる。
【0056】
本発明に係る液状栄養組成物は、公知の方法によって製造することができる。例えば、加温した水に栄養素およびその他所望とする成分を添加し、撹拌することにより製造することができる。
【0057】
本発明に係る液状栄養組成物は、予め殺菌されたもの(すなわち、即時使用可能な(殺菌済み)栄養組成物)であることが好ましい。すなわち、例えば、連続殺菌した後に容器に充填して、製品化されたものでありうる。当該連続殺菌の方法としては、特に制限されないが、超高温短時間(UHT)殺菌、熱水殺菌、バッチ式殺菌、およびこれらの組み合わせが挙げられる。前記殺菌は、短時間で行うことが好ましい。短時間で殺菌を行うことにより、液状栄養組成物に含まれる成分の劣化を抑制することができる。
【0058】
液状栄養組成物を充填する容器としては、特に限定されず、公知の容器が用いられうる。当該容器としては、テトラパック、カート缶、ガラス容器、金属缶、アルミパウチ、プラスチック容器等が挙げられる。これらのうち、プラスチック容器を用いることが好ましい。
【0059】
前記プラスチック容器の原料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン−酢酸 ビニル共重合体(EVA)、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリフルオロカーボン、ポリイミド等を用いることが好ましい。
【0060】
前記プラスチック容器には、さらにポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル等を含むガスバリア性樹脂層;アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、酸化ケイ素皮膜、酸化アルミ被膜等のガスバリア性無機層を適宜組み合わせて用いてもよい。当該ガスバリア層を設けることによって、酸素や水蒸気等による液状栄養組成物の劣化を防止しうる。
【0061】
また、前記容器はさらに遮光されていてもよい。当該遮光によって、例えば、液状栄養組成物に配合されうるビタミンA、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンK等の光による劣化が抑制されうる。
【0062】
上述の容器は市販されているものを用いてもよく、例えば、ソフトパウチ(株式会社フジシール)、ボトルドパウチ(凸版印刷株式会社)、スパウチ(大日本印刷株式会社)、チアーパック(株式会社細川洋行)等が用いられうる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
【0064】
(実施例1)
以下に調合方法を記す。各原料の配合量は、表1に示す通りである。8Lのステンレスビーカーに調合水2000gを計量し、湯浴にて70℃に加温した。次いで、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムを加え、十分に溶解させた後に、大豆加水分解物(平均分子量1233、分子量範囲10000以下)を添加した。レシチン、シュガーエステルを70℃で混合した分散液を混合した、さらに、糖質であるデキストリン、結晶セルロース、ポリデキストロースを添加した。当該溶液に混合した後、脂質である植物油、脂溶性ビタミンミックス(表2に示す。)、魚油を添加した。さらに、ビタミンとして、水溶性ビタミンミックス(表3に示す。)、アスコルビン酸、ミネラルとして、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩化カリウム、クエン酸鉄ナトリウム、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅、セレン酵母、モリブデン酵母、クロム酵母、およびマンガン酵母、アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液の粘度:65mPa・s)、香料を適宜添加して撹拌した。全量が6666gとなるまで水を添加し、均一な状態となるまで溶解分散させた。得られた溶液は、均質化及び連続殺菌し、1個当たり400mLとなるように口栓付きのバッグ容器に充填後、121℃で20分間の容器殺菌処理を行った。前記容器殺菌処理の後、冷却することで、アルギン酸ナトリウムの配合量1質量%、熱量0.75kcal/mLの液状栄養組成物を製造した。
【0065】
なお、熱量については、(4kcal×糖質含量)+(9kcal×脂質含量)+(4kcal×たんぱく質含量)+(2kcal×食物繊維含量)として計算し、試料g当たりのkcalとして下記の表4および表5に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
得られた液状栄養組成物について、pH、粘度および固形化物質量を測定したところ、pHは6.8であり、粘度は34mPa・sであり、固形化物質量は7.2gであった。これらの結果を下記の表4に示す。なお、各種の評価方法は以下の通りである。
(1)pH:pHメーター(メーカー:株式会社堀場製作所、型式:F−21)にて測定した。
(2)粘度:液状栄養組成物を25℃で24時静置後、B型回転粘度計(メーカー:BROOKFIELD、型式:DV−II+Pro、測定条件:回転速度30rpm、測定時間1分、ローターNo.63)を用いて測定した。この値が大きすぎると、細いチューブを用いて自然落差により投与することが困難となる。ここでは100mPa・s以下を合格とした。
(3)固形化物質量:50mL遠沈管に人工胃液を20g、サンプル(液状栄養組成物)を10g投入し、遠沈管を10秒間手動で転倒混和(1回/1秒)させ、静置した。混合した遠沈管内の溶液を目開き150μm金属メッシュ上に出し、メッシュ上に固形化したサンプルが残存していることを確認した。次いで、水切りした後、メッシュ質量を測定した。そして、この測定値から予め測定したメッシュ質量を差し引いて、ろ過後の固形化物質量(g)を算出した。この値が大きいほど、胃内へ投与された際のゲル化量が多いことを意味し、実用上は5g以上であることが必要である。
【0070】
(実施例2)
実施例1において、アルギン酸ナトリウムの配合量を0.75%に変更したこと以外は、実施例1と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0071】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、粘度は22mPa・sであり、固形化物質量は5.1gであった。これらの結果を下記の表4に示す。
【0072】
(実施例3)
実施例1において、アルギン酸ナトリウムの配合量を1.25%に変更したこと以外は、実施例1と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0073】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、粘度は45mPa・sであり、固形化物質量は8.6gであった。これらの結果を下記の表4に示す。
【0074】
(実施例4)
実施例1において、アルギン酸ナトリウムを1質量%水溶液の粘度が140mPa・sであるアルギン酸ナトリウムに変更したこと以外は、実施例1と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0075】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、粘度は71mPa・sであり、固形化物質量は7.3gであった。これらの結果を下記の表4に示す。
【0076】
(実施例5)
実施例4において、アルギン酸ナトリウムの配合量を0.75%に変更したこと以外は、実施例4と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0077】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、粘度は38mPa・sであり、固形化物質量は6.2gであった。これらの結果を下記の表4に示す。
(実施例6)
実施例3において、アルギン酸ナトリウムを1質量%水溶液の粘度が35mPa・sであるアルギン酸ナトリウムに変更したこと以外は、実施例1と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0078】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、粘度は47mPa・sであり、固形化物質量は5.8gであった。これらの結果を下記の表4に示す。
【0079】
(比較例1)
実施例1において、アルギン酸ナトリウムの配合量を0.25%に変更したこと以外は、実施例1と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0080】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、粘度は12mPa・sであったが、固形化物質量は0.8gであったことから、胃内ではほとんどゲル化しないと考えられる。これらの結果を下記の表5に示す。
【0081】
(比較例2)
実施例1において、アルギン酸ナトリウムの配合量を1.75%に変更したこと以外は、実施例1と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0082】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、固形化物質量は8.5gであったが、粘度は105mPa・sであった。これらの結果を下記の表5に示す。
【0083】
(比較例3)
比較例1において、アルギン酸ナトリウムを1質量%水溶液の粘度が140mPa・sであるアルギン酸ナトリウムに変更したこと以外は、比較例1と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0084】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、粘度は13mPa・sであったが、固形化物質量は1.0gであったことから、胃内ではほとんどゲル化しないと考えられる。これらの結果を下記の表5に示す。
【0085】
(比較例4)
比較例2において、アルギン酸ナトリウムを1質量%水溶液の粘度が140mPa・sであるアルギン酸ナトリウムに変更したこと以外は、比較例2と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0086】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、固形化物質量は9.5gであったが、粘度は150mPa・sであった。これらの結果を下記の表5に示す。
【0087】
(比較例5)
比較例1において、アルギン酸ナトリウムを1質量%水溶液の粘度が35mPa・sであるアルギン酸ナトリウムに変更したこと以外は、比較例1と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0088】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、粘度は7mPa・sであったが、固形化物質量は0.8gであったことから、胃内ではほとんどゲル化しないと考えられる。これらの結果を下記の表5に示す。
【0089】
(比較例6)
実施例1において、アルギン酸ナトリウムを1質量%水溶液の粘度が10mPa・sであるアルギン酸ナトリウムに変更したこと以外は、実施例1と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0090】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、粘度は11mPa・sであったが、固形化物質量は0.7gであったことから、胃内ではほとんどゲル化しないと考えられる。これらの結果を下記の表5に示す。
【0091】
(比較例7)
実施例1において、アルギン酸ナトリウムを1質量%水溶液の粘度が550mPa・sであるアルギン酸ナトリウムに変更したこと以外は、実施例1と同様に液状栄養組成物を製造した。
【0092】
得られた液状栄養組成物の熱量は0.75kcal/mLであり、固形化物質量は8.5gであったが、粘度は134mPa・sであった。これらの結果を下記の表5に示す。
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】