特許第6575983号(P6575983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575983
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20190909BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20190909BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   H01L21/304 643Z
   H01L21/30 569Z
   H01L21/30 572Z
   H01L21/68 N
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-189832(P2015-189832)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-69261(P2017-69261A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170324
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 昌秀
(72)【発明者】
【氏名】古川 正晃
(72)【発明者】
【氏名】帆角 良平
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−050213(JP,A)
【文献】 特開2000−156362(JP,A)
【文献】 特開平09−232276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のまわりに配置される把持部がそれぞれに設けられており、前記把持部と前記基板との接触により前記基板を水平に保持する複数のチャックピンと、
前記複数のチャックピンに保持されている前記基板の下面に平行に対向する上面と、前記上面の中央部で開口する中央穴を形成しており、前記複数のチャックピンに保持されている前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線を取り囲む筒状の内周面と、を含むスピンベースと、
前記複数のチャックピンと前記スピンベースとを前記回転軸線まわりに回転させるスピンモータと、
前記複数のチャックピンよりも上方に配置された洗浄液吐出口を含み、前記洗浄液吐出口から下方に洗浄液を吐出する洗浄液ノズルと、
前記洗浄液ノズルに供給される洗浄液の流量を変更することにより、前記洗浄液ノズルの洗浄液吐出口から吐出される洗浄液の流速を調整する洗浄液流量調整バルブと、
前記回転軸線に直交する直線に沿う方向である径方向における前記複数のチャックピンと前記中央穴との間の外周着液位置に、前記洗浄液ノズルから前記スピンベースの上面に向けて吐出された洗浄液が着液する外周位置と、前記径方向における前記外周着液位置と前記中央穴との間の中央着液位置に、前記洗浄液ノズルから前記スピンベースの上面に向けて吐出された洗浄液が着液する中央位置と、を含む複数の位置に前記洗浄液ノズルを移動させるノズル移動機構と、
前記スピンモータ、洗浄液流量調整バルブ、およびノズル移動機構を制御することにより、前記洗浄液ノズルから吐出された洗浄液で前記スピンベースの上面を洗浄するチャック洗浄処理を実行する制御装置とを、含み、
前記チャック洗浄処理は、
前記スピンベースの上面に向けて前記洗浄液ノズルに洗浄液を吐出させる洗浄液供給工程と、
前記洗浄液供給工程と並行して、前記外周位置から前記中央位置までの範囲内だけで前記ノズル移動機構に前記洗浄液ノズルを移動させるノズル移動工程と、
前記洗浄液供給工程と並行して、前記複数のチャックピンと前記スピンベースとを前記スピンモータに回転させるチャック回転工程と、
前記ノズル移動工程において前記洗浄液ノズルが前記中央位置に配置されているときに、前記スピンベースの上面に沿って前記中央着液位置から内方に広がる洗浄液が前記中央穴に到達しないように、前記スピンベースの回転速度と、前記洗浄液ノズルから吐出される洗浄液の流速と、前記回転軸線から前記中央着液位置までの距離と、を含む中央洗浄条件を設定する中央洗浄条件設定工程と、
前記ノズル移動工程において前記洗浄液ノズルが前記外周位置に配置されているときに、前記複数のチャックピンから内方に跳ね返った洗浄液が前記中央穴に到達しないように、前記スピンベースの回転速度と、前記洗浄液ノズルから吐出される洗浄液の流速と、前記回転軸線から前記外周着液位置までの距離と、を含む外周洗浄条件を設定する外周洗浄条件設定工程とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記基板処理装置は、前記スピンベースを取り囲む筒状のスプラッシュガードと、前記スプラッシュガードの上端が前記スピンベースの上面よりも上方に位置する上位置と、前記スプラッシュガードの上端が前記スピンベースの上面よりも下方に位置する下位置と、の間で前記スプラッシュガードを昇降させるガード昇降機構とをさらに含み、
前記チャック洗浄処理は、前記洗浄液供給工程と並行して、前記スプラッシュガードを上位置に位置させるガード洗浄工程を含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記外周着液位置から前記複数のチャックピンまでの前記径方向の距離は、前記中央穴の外径よりも小さい、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記中央着液位置から前記中央穴までの前記径方向の距離は、前記中央穴の外径よりも小さく、前記洗浄液吐出口の外径よりも大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記ノズル移動工程において前記洗浄液ノズルが前記外周位置に位置しているときの前記スピンベースの回転速度は、前記ノズル移動工程において前記洗浄液ノズルが前記中央位置に位置しているときの前記スピンベースの回転速度よりも小さい、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ノズル移動工程において前記洗浄液ノズルが前記外周位置に位置しているときの前記スピンベースの回転速度を表す一分あたりの前記スピンベースの回転数の数値は、1000以下である、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記径方向に間隔を空けて前記スピンベースの内周面に取り囲まれており、前記スピンベースと共に回転しない非回転部材と、
前記スピンベースの内周面と前記非回転部材の外周面との間の環状の隙間に配置された磁性流体シールと、をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記径方向に間隔を空けて前記スピンベースの内周面に取り囲まれており、前記スピンベースと共に回転しない非回転部材と、
前記スピンベースの内周面と前記非回転部材の外周面との間の環状の隙間に気体を供給することにより、前記中央穴から上方に気体を吐出させる下ガス配管と、をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記非回転部材は、前記複数のチャックピンに保持されている前記基板の下面に向けて処理液を上方に吐出する下ノズルを含む、請求項7または8に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が開示されている。
特許文献1に記載の基板処理装置は、スピンベースの外周部から上方に突出する複数のチャックピンで基板を水平に保持しながら当該基板を回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持されている基板の上面に向けて処理液を吐出するノズルユニットと、スピンチャックに保持されている基板の下面に向けて処理液を吐出する下ノズルとを備えている。
【0003】
特許文献1では、下ノズルが挿入された中央穴がスピンベースの中央部に形成されている。中央穴は、スピンベースの上面の中央部で開口している。特許文献2では、下ノズルを設ける代わりに、処理液を上方に吐出する中央穴(同文献では、流出口8a)がスピンベース(同文献では、処理部材11)の中央部に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−38978号公報
【特許文献2】特開平8−78368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板に処理液を供給すると、基板を汚染するパーティクルがスピンチャック等に発生する場合がある。
具体的には、特許文献1において、下ノズルから基板の下面に供給された処理液の一部は、スピンベースの上面に落下する。同様に、特許文献2において、スピンベースの中央穴から基板の下面に供給された処理液の一部は、スピンベースの上面に落下する。基板に供給された処理液は、チャックピンに付着する。このような液体がスピンベースやチャックピンで乾燥すると、パーティクルが発生する場合がある。
【0006】
さらにまた、ノズルユニットから基板の上面に供給された処理液の一部は、基板の外周面を伝って基板の下面側に移動し、スピンベースの上面に落下する場合がある。基板の上面に処理液を供給したときや、基板から外方に飛散した処理液が基板を取り囲むスプラッシュガードに衝突したときに、ミストが発生する。このミストが、スピンベースやチャックピンに付着する場合もある。
【0007】
本発明者らは、スピンチャック等で発生したパーティクルで基板が汚染されることを防止するために、基板を処理していないときに、スピンチャック等を自動で洗浄することを検討している。具体的には、回転しているスピンベースの上面に向けて洗浄液ノズルに洗浄液を下方に吐出させながら、スピンベースに対する洗浄液の着液位置を径方向に移動させることを検討している。しかしながら、この洗浄方法では、条件が適切でないと、次の2つの問題が発生することが分かった。
【0008】
具体的には、洗浄液でスピンベースの上面を洗浄する場合、スピンベースの広い範囲に洗浄液を直接当てるために、通常は、スピンベースに対する洗浄液の着液位置をスピンベースの上面の中央部付近まで移動させる。
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載のスピンベースのように、中央穴がスピンベースの上面の中央部で開口している場合、洗浄液の着液位置を中央穴に近づけすぎると、スピンベースの上面に沿って着液位置から内方に広がる洗浄液が中央穴に入る。この場合、中央穴内でパーティクルが発生したり、液体との接触を回避したい機械部分にまで洗浄液が到達したりするおそれがある。磁性流体シールなどの非接触式シールが中央穴内に配置されている場合は、シール機能が低下するおそれがある。
【0009】
2つ目の問題は、チャックピンから内方に跳ね返った洗浄液がスピンベースの中央穴に到達するおそれがあるということである。
洗浄液ノズルから回転しているスピンベースの上面に向けて吐出された洗浄液は、スピンベースの上面に沿って流れる。スピンベースの上面に沿って外方に流れる洗浄液の一部は、チャックピンに衝突し、中央穴の方に跳ね返る。スピンベースの回転速度が大きいと、チャックピンに衝突する洗浄液の勢いが増すので、洗浄液が遠くまで飛散する。また、チャックピンに衝突する洗浄液の流量が増加すると、多くの洗浄液が中央穴に向かって飛散する。洗浄液が中央穴に入ると、前述の問題が発生するおそれがある。
【0010】
そこで、本発明の目的の一つは、スピンベースの中央部に設けられた中央穴に洗浄液が入ることを抑制または防止しながら、チャックピンおよびスピンベースを含む複数の部材を洗浄することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板のまわりに配置される把持部がそれぞれに設けられており、前記把持部と前記基板との接触により前記基板を水平に保持する複数のチャックピンと、前記複数のチャックピンに保持されている前記基板の下面に平行に対向する上面と、前記上面の中央部で開口する中央穴を形成しており、前記複数のチャックピンに保持されている前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線を取り囲む筒状の内周面と、を含むスピンベースと、前記複数のチャックピンと前記スピンベースとを前記回転軸線まわりに回転させるスピンモータと、前記複数のチャックピンよりも上方に配置された洗浄液吐出口を含み、前記洗浄液吐出口から下方に洗浄液を吐出する洗浄液ノズルと、前記洗浄液ノズルに供給される洗浄液の流量を変更することにより、前記洗浄液ノズルの洗浄液吐出口から吐出される洗浄液の流速を調整する洗浄液流量調整バルブと、前記回転軸線に直交する直線に沿う方向である径方向における前記複数のチャックピンと前記中央穴との間の外周着液位置に、前記洗浄液ノズルから前記スピンベースの上面に向けて吐出された洗浄液が着液する外周位置と、前記径方向における前記外周着液位置と前記中央穴との間の中央着液位置に、前記洗浄液ノズルから前記スピンベースの上面に向けて吐出された洗浄液が着液する中央位置と、を含む複数の位置に前記洗浄液ノズルを移動させるノズル移動機構と、前記スピンモータ、洗浄液流量調整バルブ、およびノズル移動機構を制御することにより、前記洗浄液ノズルから吐出された洗浄液で前記スピンベースの上面を洗浄するチャック洗浄処理を実行する制御装置とを、含む、基板処理装置である。
【0012】
前記チャック洗浄処理は、前記スピンベースの上面に向けて前記洗浄液ノズルに洗浄液を吐出させる洗浄液供給工程と、前記洗浄液供給工程と並行して、前記外周位置から前記中央位置までの範囲内だけで前記ノズル移動機構に前記洗浄液ノズルを移動させるノズル移動工程と、前記洗浄液供給工程と並行して、前記複数のチャックピンと前記スピンベースとを前記スピンモータに回転させるチャック回転工程と、前記ノズル移動工程において前記洗浄液ノズルが前記中央位置に配置されているときに、前記スピンベースの上面に沿って前記中央着液位置から内方に広がる洗浄液が前記中央穴に到達しないように、前記スピンベースの回転速度と、前記洗浄液ノズルから吐出される洗浄液の流速と、前記回転軸線から前記中央着液位置までの距離と、を含む中央洗浄条件を設定する中央洗浄条件設定工程と、前記ノズル移動工程において前記洗浄液ノズルが前記外周位置に配置されているときに、前記複数のチャックピンから内方に跳ね返った洗浄液が前記中央穴に到達しないように、前記スピンベースの回転速度と、前記洗浄液ノズルから吐出される洗浄液の流速と、前記回転軸線から前記外周着液位置までの距離と、を含む外周洗浄条件を設定する外周洗浄条件設定工程とを含む。
【0013】
この構成によれば、回転しているスピンベースの上面に向けて洗浄液を吐出する。この状態で、スピンベースに対する洗浄液の着液位置を移動させる。これにより、洗浄液ノズルから吐出された洗浄液がスピンベースの広い範囲に直接当たり、スピンベースの上面が洗浄される。さらに、スピンベースの上面に沿って外方に流れる洗浄液がチャックピンに当たり、チャックピンが洗浄される。これにより、スピンベース等に付着しているパーティクルを減らすことができる。さらに、スピンベース等を自動で洗浄するので、手作業で洗浄する場合と比較して、清浄度のばらつきを低減できる。
【0014】
その一方で、洗浄液ノズルが中央位置に配置されているとき、スピンベースの上面に沿って中央着液位置から内方に広がる洗浄液が、スピンベースの中央部に設けられた中央穴に入るおそれがある。中央位置に位置する洗浄液ノズルから吐出された洗浄液が中央穴に入るか否かを決定する要因には、スピンベースの回転速度と、洗浄液ノズルから吐出される洗浄液の流速と、回転軸線から中央着液位置までの距離とが含まれる。これらを含む中央洗浄条件は、洗浄液が中央穴に到達しないように設定される。
【0015】
また、洗浄液ノズルが外周位置に配置されているとき、チャックピンに当たった洗浄液が中央穴まで跳ね返るおそれがある。外周位置に位置する洗浄液ノズルから吐出された洗浄液が中央穴に入るか否かを決定する要因には、スピンベースの回転速度と、洗浄液ノズルから吐出される洗浄液の流速と、回転軸線から外周着液位置までの距離とが含まれる。これらを含む外周洗浄条件は、洗浄液が中央穴に到達しないように設定される。
【0016】
このように、洗浄液ノズルから吐出された洗浄液が中央穴に入るか否かを決定する要因が適切に設定されるので、スピンベースの中央部に設けられた中央穴に洗浄液が入ることを抑制または防止しながら、チャックピンおよびスピンベースを含む複数の部材を洗浄することができる。これにより、スピンベース等から基板へのパーティクルの転移による基板の汚染を抑制または防止できる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記スピンベースを取り囲む筒状のスプラッシュガードと、前記スプラッシュガードの上端が前記スピンベースの上面よりも上方に位置する上位置と、前記スプラッシュガードの上端が前記スピンベースの上面よりも下方に位置する下位置と、の間で前記スプラッシュガードを昇降させるガード昇降機構とをさらに含み、前記チャック洗浄処理は、前記洗浄液供給工程と並行して、前記スプラッシュガードを上位置に位置させるガード洗浄工程を含む、請求項1に記載の基板処理装置である。
【0018】
この構成によれば、洗浄液ノズルが回転しているスピンベースの上面に向けて洗浄液を吐出しているときに、スプラッシュガードの上端がスピンベースの上面よりも上方に配置される。スピンベースの上面に供給された洗浄液は、スピンベースの上面に沿って外方に流れ、スピンベースから外方に飛散する。スピンベースから飛散した洗浄液は、上位置に位置するスプラッシュガードに当たる。したがって、チャックピンおよびスピンベースだけでなく、スプラッシュガードも洗浄することができる。さらに、スピンベースを洗浄した洗浄液でスプラッシュガードを洗浄するので、洗浄液の使用量を抑えることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記外周着液位置から前記複数のチャックピンまでの前記径方向の距離(たとえば、最短距離)は、前記中央穴の外径(たとえば、中央穴の上端の外径)よりも小さい、請求項1または2に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、外周着液位置がチャックピンに近いので、洗浄液が直接当たる範囲をさらに広げることができる。これにより、洗浄液が中央穴に浸入することを抑制または防止しながら、スピンベースに残留しているパーティクルの数をさらに減らすことができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記中央着液位置から前記中央穴までの前記径方向の距離(たとえば、最短距離)は、前記中央穴の外径(たとえば、中央穴の上端の外径)よりも小さく、前記洗浄液吐出口の外径よりも大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、中央着液位置がスピンベースの中央穴に近いので、洗浄液が直接当たる範囲をさらに広げることができる。これにより、洗浄液が中央穴に浸入することを抑制または防止しながら、スピンベースに残留しているパーティクルの数をさらに減らすことができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記ノズル移動工程において前記洗浄液ノズルが前記外周位置に位置しているときの前記スピンベースの回転速度は、前記ノズル移動工程において前記洗浄液ノズルが前記中央位置に位置しているときの前記スピンベースの回転速度よりも小さい、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
つまり、前記チャック回転工程は、前記洗浄液ノズルが前記外周位置に位置しているときに外周回転速度で前記複数のチャックピンと前記スピンベースとを前記スピンモータに回転させる外周回転工程と、前記洗浄液ノズルが前記中央位置に位置しているときに、前記外周回転速度よりも大きい中央回転速度で前記複数のチャックピンと前記スピンベースとを前記スピンモータに回転させる回転中央工程とを含んでいてもよい。
【0022】
中央位置に位置する洗浄液ノズルから吐出された洗浄液が中央穴に入るか否かを決定する要因の一つは、スピンベースの回転速度である。これは、スピンベースの回転速度が大きいと、大きい遠心力がスピンベース上の洗浄液に加わり、洗浄液が内方に広がる範囲が狭まるからである。この構成によれば、洗浄液ノズルが中央位置に位置しているときのスピンベースの回転速度が大きいので、中央着液位置から内方に広がる洗浄液の範囲を狭めることができる。これにより、洗浄液ノズルが中央位置に位置しているときに、洗浄液が中央穴に浸入することを抑制または防止できる。
【0023】
スピンベースの回転速度は、外周位置に位置する洗浄液ノズルから吐出された洗浄液が中央穴に入るか否かを決定する要因の一つでもある。これは、スピンベースの回転速度が大きいと、大きい遠心力がスピンベース上の洗浄液に加わり、チャックピンに衝突する洗浄液の勢いが強まるからである。この構成によれば、洗浄液ノズルが外周位置に位置しているときのスピンベースの回転速度が小さいので、チャックピンから内方に飛散する洗浄液の範囲を狭めることができる。これにより、洗浄液ノズルが外周位置に位置しているときに、洗浄液が中央穴に浸入することを抑制または防止できる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、前記ノズル移動工程において前記洗浄液ノズルが前記外周位置に位置しているときの前記スピンベースの回転速度を表す一分あたりの前記スピンベースの回転数の数値は、1000以下である、請求項5に記載の基板処理装置である。前記ノズル移動工程において前記洗浄液ノズルが前記外周位置に位置しているときの前記スピンベースの回転速度は、前記洗浄液供給工程において前記洗浄液ノズルが洗浄液を吐出している総秒数の数値よりも小さくてもよい。
この構成によれば、洗浄液ノズルが外周位置に位置しているときのスピンベースの回転速度、つまり、外周回転速度が極めて小さいので、スピンベース上の洗浄液に加わる遠心力が極めて小さい。そのため、チャックピンに衝突する洗浄液の勢いが弱まり、チャックピンから内方に飛散する洗浄液の範囲が狭まる。これにより、洗浄液ノズルが外周位置に位置しているときに、洗浄液が中央穴に浸入することを抑制または防止できる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、前記径方向に間隔を空けて前記スピンベースの内周面に取り囲まれており、前記スピンベースと共に回転しない非回転部材と、前記スピンベースの内周面と前記非回転部材の外周面との間の環状の隙間に配置された磁性流体シールと、をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、スピンベースの内周面と非回転部材の外周面との間の環状の隙間が、磁性流体シールによって密閉されている。したがって、パーティクルを含む流体が、環状の隙間を上方に通過することを防止できる。さらに、前述のように、スピンベースを洗浄するときのスピンベースの回転速度等は、洗浄液が中央穴に浸入しないように設定されるので、洗浄液が磁性流体シールに接触することを防止できる。これにより、磁性流体シールのシール機能の低下を防止できる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、前記径方向に間隔を空けて前記スピンベースの内周面に取り囲まれており、前記スピンベースと共に回転しない非回転部材と、前記スピンベースの内周面と前記非回転部材の外周面との間の環状の隙間に気体を供給することにより、前記中央穴から上方に気体を吐出させる下ガス配管と、をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0027】
この構成によれば、下ガス配管によって供給された気体が、スピンベースの内周面と非回転部材の外周面との間の環状の隙間を通過し、スピンベースの上面で開口する中央穴から上方に吐出される。前述のように、スピンベースを洗浄するときのスピンベースの回転速度等は、洗浄液が中央穴に浸入しないように設定されるので、洗浄液に起因するパーティクルが中央穴内に発生することを防止できる。したがって、中央穴内のパーティクルが気体と共に中央穴から上方に吐出されることを防止できる。
【0028】
請求項9に記載の発明は、前記非回転部材は、前記複数のチャックピンに保持されている前記基板の下面に向けて処理液を上方に吐出する下ノズルを含む、請求項7または8に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、下ノズルから上方に吐出された処理液が、複数のチャックピンに保持されている基板の下面に供給される。下ノズルから基板の下面に供給された処理液の一部は、スピンベースの上面に落下する。しかしながら、洗浄液ノズルから吐出された洗浄液でスピンベース等を洗浄するので、スピンベース等から基板へのパーティクルの転移による基板の汚染を抑制または防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
図2】処理ユニットに備えられたスピンチャックの鉛直断面を示す模式図である。
図3】スピンベースの上面等を洗浄するチャック洗浄処理の一例について説明するための工程図である。
図4図3に示すチャック洗浄処理の一例が行われているときの洗浄液ノズルの動作等を示すタイミングチャートである。
図5図3に示すチャック洗浄処理の一例が行われているときの洗浄液ノズルの動作を示す模式図である。
図6】中央位置に位置する洗浄液ノズルから回転しているスピンベースの上面に向けて吐出された洗浄液の流れについて説明するための模式図である。
図7】外周位置に位置する洗浄液ノズルから回転しているスピンベースの上面に向けて吐出された洗浄液の流れについて説明するための模式図である。
図8】本発明の他の実施形態に係るスピンチャックの鉛直断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。図2は、処理ユニット2に備えられたスピンチャック5の鉛直断面を示す模式図である。図1において、回転軸線A1の右側はチャックピン7が開位置に位置している状態を示しており、回転軸線A1の左側はチャックピン7が閉位置に位置している状態を示している。
【0031】
図1に示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理液や処理ガスなどの処理流体で基板Wを処理する処理ユニット2と、処理ユニット2に基板Wを搬送する搬送ロボット(図示せず)と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。制御装置3は、演算部と記憶部とを含むコンピュータである。
【0032】
処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー4と、チャンバー4内で基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック5とを含む。スピンチャック5は、水平に保持された円板状のスピンベース6と、スピンベース6の上方で基板Wを水平に保持する複数(3つ以上)のチャックピン7と、複数のチャックピン7を開閉するチャック開閉機構11とを含む。スピンチャック5は、さらに、スピンベース6の中央部から回転軸線A1に沿って下方に延びるスピン軸12と、スピン軸12を回転させることによりスピンベース6および複数のチャックピン7を回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ13とを含む。
【0033】
複数のチャックピン7は、スピンベース6の外周部から上方に突出している。複数のチャックピン7は、スピンベース6と共に回転軸線A1まわりに回転する。複数のチャックピン7は、中心が回転軸線A1上に配置された円周上に位置している。複数のチャックピン7は、間隔を空けて周方向(回転軸線A1まわりの方向)に並んでいる。チャックピン7は、基板Wの下面に接触する支持部8と、基板Wの外周面に接触する把持部9と、支持部8および把持部9を支持する土台部10とを含む。支持部8および把持部9は、スピンベース6の上面6aから上方に離れた位置に配置されている。支持部8は、基板Wの下方に配置される。把持部9は、基板Wのまわりに配置される。
【0034】
複数のチャックピン7の少なくとも一つは、スピンベース6に対して移動可能な可動ピンである。チャック開閉機構11は、可動ピンを開位置(図1の右側のチャックピン7の位置)と閉位置(図1の左側のチャックピン7の位置)との間で鉛直なピン回動軸線A2(図5参照)まわりに回動させることにより、複数のチャックピン7を開状態と閉状態との間で切り替える。開状態は、全ての把持部9が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが水平に把持される状態である。開状態は、複数の把持部9による基板Wの把持が解除される状態である。チャック開閉機構11は、機械式または磁石式であってもよいし、これら以外の形式であってもよい。
【0035】
搬送ロボットは、複数のチャックピン7が開状態のときに、基板Wを複数の支持部8の上に置く。基板Wは、各支持部8と基板Wの下面との接触により、複数のチャックピン7に支持される。この状態で、複数のチャックピン7が閉状態に切り替えられると、各把持部9が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが複数の把持部9によって水平に把持される。この状態で、複数のチャックピン7が閉状態に切り替えられると、各把持部9が基板Wの外周面から離れ、基板Wが複数の支持部8に支持される。
【0036】
スピンベース6は、複数のチャックピン7に保持されている基板Wの下面に平行に対向する円環状の上面6aと、スピンベース6の上面6aの中央部で開口する中央穴20を形成する筒状の内周面6bとを含む。後述する下ノズル26は、中央穴20に挿入されている。スピンベース6の上面6aのいずれの部分も、基板Wの下面に平行である。スピンベース6の上面6aの外径は、基板Wの直径よりも大きい。図2に示すように、スピンベース6の内周面6bは、スピンベース6の上面6aの内周縁6cから下方に延びている。スピンベース6の内周面6bは、回転軸線A1を取り囲んでいる。
【0037】
スピンベース6の中央穴20は、回転軸線A1に沿って上下方向に延びる円柱状である。中央穴20の上端は、スピンベース6の上面6aの内周縁6cと同じ高さに位置する円形の中央開口に相当する。中央開口は、スピンベース6の上面6aの内周縁6cによって区画されている。中央穴20の外径は、一定であってもよいし、連続的または段階的に変化していてもよい。つまり、スピンベース6の内周面6bは、鉛直な円筒面であってもよいし、鉛直方向に対して斜めに傾いたテーパー状の筒状面であってもよいし、鉛直な円筒部とテーパー状の筒状部とを含んでいてもよい。
【0038】
図1に示すように、処理ユニット2は、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に向けて洗浄液を下方に吐出する洗浄液ノズル14を含む。洗浄液ノズル14は、たとえば、その内部または外部で液体と気体とを衝突させることにより、基板Wに向かって飛散する複数の液滴を生成する二流体ノズルである。洗浄液ノズル14は、複数の微細孔から液体を同時に噴射することにより、基板Wに向かって飛散する複数の液滴を生成してもよい。
【0039】
洗浄液ノズル14は、洗浄液ノズル14に供給される液体を案内する洗浄液配管15と、洗浄液ノズル14に供給される気体を案内する気体配管18とに接続されている。洗浄液ノズル14に対する液体の供給および供給停止を切り替える洗浄液バルブ16と、洗浄液ノズル14に供給される液体の流量を調整する洗浄液流量調整バルブ17とは、洗浄液配管15に介装されている。同様に、洗浄液ノズル14に対する気体の供給および供給停止を切り替える気体バルブ19は、気体配管18に介装されている。
【0040】
洗浄液ノズル14に供給される液体、つまり洗浄液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionized water)である。洗浄液ノズル14に供給される気体は、たとえば、窒素ガスである。洗浄液は、薬液、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよいし、これら以外の液体であってもよい。洗浄液ノズル14に供給される気体は、窒素ガス以外の不活性ガスであってもよいし、不活性ガス以外の気体であってもよい。
【0041】
図示はしないが、洗浄液バルブ16は、流路を形成するバルブボディと、流路内に配置された弁体と、弁体を移動させるアクチュエータとを含む。洗浄液流量調整バルブ17および気体バルブ19も同様の構成を有している。後述のバルブ25、28、42も同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3は、アクチュエータを制御することにより、洗浄液バルブ16および気体バルブ19を開閉させる。また、制御装置3は、アクチュエータを制御することにより、洗浄液流量調整バルブ17の開度を変更する。
【0042】
洗浄液バルブ16が開かれると、液体が、洗浄液流量調整バルブ17の開度に対応する流量で洗浄液ノズル14に供給され、洗浄液ノズル14の洗浄液吐出口14aから下方に吐出される。同様に、気体バルブ19が開かれると、気体が、洗浄液ノズル14に供給され、洗浄液ノズル14の気体吐出口から下方に吐出される。洗浄液バルブ16および気体バルブ19の両方が開かれると、気体吐出口から吐出された気体が、洗浄液吐出口14aから吐出された液体に衝突し、基板Wの上面に向かって下方に飛散する複数の液滴が生成される。基板Wの上面に付着しているパーティクルなどの異物は、液滴と基板Wとの衝突により基板Wから剥がれる。
【0043】
洗浄液ノズル14は、チャンバー4内で移動可能なスキャンノズルである。処理ユニット2は、先端部に洗浄液ノズル14が取り付けられたノズルアーム21と、水平に延びるノズルアーム21を移動させることにより、洗浄液ノズル14を鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に移動させるノズル移動機構22とを含む。ノズル移動機構22は、スピンチャック5のまわりで鉛直に延びるノズル回動軸線A3まわりに洗浄液ノズル14を回動させる旋回機構である。ノズル移動機構22は、洗浄液ノズル14と共にノズルアーム21を水平に平行移動させるスライド機構であってもよい。
【0044】
ノズル移動機構22は、洗浄液ノズル14から吐出された洗浄液がスピンチャック5に保持されている基板Wの上面に着液する処理位置と、平面視で洗浄液ノズル14がスピンチャック5のまわりに位置する待機位置との間で、洗浄液ノズル14を移動させる。処理位置は、一つの位置ではなく、複数の位置を意味する。処理位置は、洗浄液ノズル14から吐出された洗浄液が基板Wの上面中央部に着液する中央処理位置と、洗浄液ノズル14から吐出された洗浄液が基板Wの上面外周部に着液する外周処理位置とを含む。
【0045】
処理ユニット2は、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に向けてリンス液を下方に吐出するリンス液ノズル23を含む。リンス液ノズル23は、チャンバー4内の所定位置に固定された固定ノズルである。リンス液ノズル23は、スキャンノズルであってもよい。リンス液ノズル23は、リンス液配管24に接続されている。リンス液ノズル23に対するリンス液の供給および供給停止を切り替えるリンス液バルブ25は、リンス液配管24に介装されている。リンス液バルブ25が開かれると、リンス液が、リンス液ノズル23から基板Wの上面中央部に向けて下方に吐出される。リンス液は、たとえば、純水である。リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0046】
処理ユニット2は、スピンチャック5に保持されている基板Wの下面に向けて上方に処理液を吐出する下ノズル26を含む。下ノズル26は、基板Wの下方に配置されている。図2に示すように、下ノズル26は、基板Wの下方に位置する下吐出口26aと、下吐出口26aから吐出される処理液を案内する下流路26bとを含む。下吐出口26aおよび下流路26bは、回転軸線A1上に位置している。下ノズル26は、下ノズル26に供給される処理液を案内する下処理液配管27に接続されている。下ノズル26に対する処理液の供給および供給停止を切り替える下処理液バルブ28は、下処理液配管27に介装されている。下処理液バルブ28が開かれると、処理液が、下流路26bを介して下吐出口26aに供給され、下吐出口26aから上方に吐出される。下ノズル26に供給される処理液は、たとえば、純水である。処理液は、純水以外の液体であってもよい。
【0047】
下ノズル26は、スピンベース6の中央穴20に挿入されている。スピンベース6の内周面6bは、径方向Dr(回転軸線A1に直交する直線に沿う方向)に間隔を空けて下ノズル26の外周面を取り囲んでいる。下ノズル26は、チャンバー4に対して固定されている。スピンベース6が回転したとしても、下ノズル26は回転しない。スピンベース6は、スピンベース6の内周面6bと下ノズル26の外周面とによって形成された環状の隙間29に配置されたベアリング30を介して下ノズル26に回転可能に支持されている。環状の隙間29を密閉する環状シール31は、ベアリング30の上方に配置されている。環状シール31は、たとえば、磁性流体シールである。環状シール31は、磁性流体シール以外の非接触式シールであってもよいし、オイルシールなどの接触式シールであってもよい。
【0048】
下ノズル26は、複数のチャックピン7に保持されている基板Wの下面中央部の下方に配置された円板部26cと、円板部26cから回転軸線A1に沿って下方に延びる円柱部26dとを含む。円板部26cおよび円柱部26dは、回転軸線A1と同軸である。下流路26bは、円板部26cおよび円柱部26d内で上下方向に延びている。下吐出口26aは、基板Wの下面に平行な円板部26cの上面で開口している。円板部26cの上面は、スピンベース6の上面6aから上方に離れた位置に配置されている。円板部26cの外径は、中央穴20の外径よりも大きい。円板部26cは、中央穴20の上方に配置されている。中央穴20は、平面視において円板部26cで覆われている。
【0049】
図1に示すように、処理ユニット2は、スピンチャック5の周囲を取り囲む筒状のカップ32を含む。カップ32は、基板Wから外方に排出された液体を受け止める筒状のスプラッシュガード33と、スプラッシュガード33によって下方に案内された液体を受け止める環状トレイ34とを含む。処理ユニット2は、上位置(図1に示す位置)と下位置との間でスプラッシュガード33を鉛直に昇降させるガード昇降機構35を含む。
【0050】
スプラッシュガード33および環状トレイ34は、回転軸線A1まわりにスピンチャック5を取り囲んでいる。スプラッシュガード33は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びる筒状の傾斜部33aと、傾斜部33aの下端部(外端部)から下方に延びる円筒状の案内部33bとを含む。カップ32およびスプラッシュガード33の上端に相当する傾斜部33aの上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース6を取り囲む円環状である。環状トレイ34は、上向きに開いた環状の溝を形成している。環状の溝は、案内部33bの下端の下方に位置している。
【0051】
ガード昇降機構35は、スプラッシュガード33の上端がスピンベース6の上面6aよりも上方に位置する上位置(図1に示す位置)と、スプラッシュガード33の上端がスピンベース6の上面6aよりも下方に位置する下位置との間で、スプラッシュガード33を昇降させる。基板Wから外方に飛散した処理液は、上位置に位置するスプラッシュガード33の傾斜部33aによって受け止められた後、スプラッシュガード33の案内部33bによって環状トレイ34に案内される。
【0052】
次に、処理ユニット2によって行われる基板Wの処理の一例について説明する。
処理ユニット2で基板Wを処理するときは、制御装置3が、搬送ロボットに基板Wをチャンバー4に搬入させる。その後、制御装置3は、スプラッシュガード33を下位置から上位置に上昇させ、スピンチャック5に基板Wを回転させる。その後、制御装置3は、洗浄液ノズル14を待機位置から処理位置に移動させる。さらに、制御装置3は、洗浄液バルブ16および気体バルブ19を開いて、洗浄液ノズル14に複数の純水の液滴を噴射させる。このとき、制御装置3は、下ノズル26に純水を吐出させてもよい。制御装置3は、回転している基板Wの上面に向けて洗浄液ノズル14に純水の液滴を吐出させながら、洗浄液ノズル14を中央処理位置と外周処理位置との間で移動させる。これにより、純水の液滴が基板Wの上面全域に衝突し、パーティクル等の異物が基板Wから除去される(基板洗浄工程)。
【0053】
制御装置3は、洗浄液バルブ16および気体バルブ19を閉じて、洗浄液ノズル14を待機位置に移動させた後、リンス液バルブ25および下処理液バルブ28を開いて、リンス液ノズル23および下ノズル26に純水を吐出させる。リンス液ノズル23から吐出された純水は、回転している基板Wの上面中央部に着液した後、基板Wの上面周縁部まで基板Wの上面に沿って外方に流れる。同様に、下ノズル26から吐出された純水は、回転している基板Wの下面中央部に着液した後、基板Wの下面周縁部まで基板Wの下面に沿って外方に流れる。これにより、純水が基板Wの上面および下面の全域に供給され、パーティクル等の異物が基板Wから洗い流される(上面リンス工程および下面リンス工程)。
【0054】
制御装置3は、リンス液バルブ25および下処理液バルブ28を閉じて、リンス液ノズル23および下ノズル26に純水の吐出を停止させた後、スピンチャック5に基板Wを高速回転させる。これにより、基板W上の純水が遠心力によって基板Wの周囲に振り切られ、液体が基板Wから除去される。そのため、基板Wが乾燥する(基板乾燥工程)。その後、制御装置3は、スピンチャック5に基板Wの回転を停止させ、スプラッシュガード33を上位置から下位置に下降させる。その後、制御装置3は、搬送ロボットに基板Wをチャンバー4から搬出させる。
【0055】
下ノズル26から基板Wの下面に供給された処理液の一部は、スピンベース6の上面6aに落下する。洗浄液ノズル14またはリンス液ノズル23から基板Wの上面に供給された処理液の一部は、基板Wの外周面を伝って基板Wの下面側に移動し、スピンベース6の上面6aに落下する場合がある。基板Wに供給された処理液は、チャックピン7に付着する。処理液のミストが、スピンベース6の上面6aと基板Wの下面との間に進入し、スピンベース6の上面6aに付着する場合がある。このような液体がスピンベース6の上面6aで乾燥すると、パーティクルがスピンベース6上に発生する場合がある。そのため、以下で説明するように、制御装置3は、基板Wがチャンバー4内に存在しない期間に、スピンチャック5等を洗浄するチャック洗浄処理を実行する。
【0056】
次に、スピンベース6の上面6a等を洗浄するチャック洗浄処理の一例について説明する。
図3は、チャック洗浄処理の一例について説明するための工程図である。図4は、図3に示すチャック洗浄処理の一例が行われているときの洗浄液ノズル14の動作等を示すタイミングチャートである。図5は、図3に示すチャック洗浄処理の一例が行われているときの洗浄液ノズル14の動作を示す模式図である。
【0057】
以下のチャック洗浄処理は、制御装置3に記憶されているチャック洗浄レシピにしたがって制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。チャック洗浄レシピは、洗浄手順および洗浄条件を含む、チャック洗浄処理に必要な情報である。制御装置3は、一枚または複数枚の基板Wの処理が完了する度にチャック洗浄処理を実施してもよいし、基板処理装置1のメンテナンスの際にチャック洗浄処理を実施してもよい。
【0058】
スピンチャック5等を洗浄するときは、チャンバー4の中に基板Wがない状態で、制御装置3が、スプラッシュガード33を下位置から上位置に上昇させ(ステップS1)、スピンチャック5に基板Wを外周回転速度で回転させる(ステップS2)。その後、制御装置3は、洗浄液ノズル14を待機位置から外周位置(図5において二点鎖線で示す位置)に移動させる(ステップS3)。その後、制御装置3は、洗浄液バルブ16および気体バルブ19を開いて、洗浄液ノズル14に複数の純水の液滴を噴射させる(ステップS4)。
【0059】
洗浄液ノズル14から噴射された純水の液滴は、回転しているスピンベース6の上面6aに衝突する。これにより、スピンベース6の上面6aが洗浄される。また、スピンベース6の上面6aに沿って外方に流れる純水の一部は、チャックピン7に供給される。これにより、チャックピン7が洗浄される。スピンベース6のまわりに排出された純水は、上位置に位置するスプラッシュガード33の内面によって受け止められる。これにより、スプラッシュガード33が洗浄される。
【0060】
制御装置3は、回転しているスピンベース6の上面6aに向けて洗浄液ノズル14に純水の液滴を噴射させながら、洗浄液ノズル14を外周位置に所定時間位置させる。その後、制御装置3は、洗浄液ノズル14を外周位置から中央位置(図5において実線で示す位置)に水平に移動させる(ステップS5)。このとき、制御装置3は、洗浄液ノズル14を中央位置まで一定の速度で移動させてもよいし(図4の実線L1参照)、洗浄液ノズル14を中央位置まで段階的に移動させてもよい(図4の二点鎖線L2参照)。洗浄液ノズル14の移動によりスピンベース6に対する液滴の衝突位置が径方向Drに移動するので、スピンベース6の広い範囲が洗浄される。
【0061】
図5に示すように、外周位置は、洗浄液ノズル14からスピンベース6の上面6aに向けて吐出された純水が、径方向Drにおける複数のチャックピン7と中央穴20との間の外周着液位置POに着液する位置である。中央位置は、洗浄液ノズル14からスピンベース6の上面6aに向けて吐出された純水が、径方向Drにおける外周着液位置POと中央穴20との間の中央着液位置PCに着液する位置である。洗浄液ノズル14からスピンベース6の上面6aに向けて噴射された複数の純水の液滴は、スピンベース6の上面6a内の概ね円形の領域に直接衝突する。外周着液位置POは、この円形の領域の中心を意味する。中央着液位置PCについても同様である。
【0062】
外周着液位置POおよび中央着液位置PCは、いずれのチャックピン7よりも内方の位置であり、中央穴20および下ノズル26よりも外方の位置である。外周着液位置POは、中央着液位置PCよりも外方の位置である。外周着液位置POから中央着液位置PCまでの径方向Drの距離は、外周着液位置POから複数のチャックピン7の内端までの径方向Drの距離DOよりも大きく、中央着液位置PCから中央穴20の縁(スピンベース6の上面6aの内周縁6c)までの径方向Drの距離DCよりも大きい。距離DOは、距離DCと等しくてもよいし、距離DCよりも大きいまたは小さくてもよい。
【0063】
距離DOは、中央穴20の外径φ1よりも小さく、洗浄液吐出口14aの外径φ2よりも大きい。同様に、距離DCは、中央穴20の外径φ1よりも小さく、洗浄液吐出口14aの外径φ2よりも大きい。つまり、外周着液位置POは、径方向Drに関してチャックピン7に近い位置であり、中央着液位置PCは、径方向Drに関して中央穴20に近い位置である。したがって、チャックピン7に近い位置と中央穴20に近い位置とに純水を直接供給することができ、チャックピン7と中央穴20との間の広い範囲を洗浄することができる。
【0064】
図4に示すように、制御装置3は、洗浄液ノズル14が外周位置から中央位置に移動する間に、スピンベース6の回転速度を外周回転速度から中央回転速度に上昇させる。制御装置3は、スピンベース6の回転速度を中央回転速度まで一定の加速度で上昇させてもよいし(図4の実線L3参照)、スピンベース6の回転速度を中央回転速度まで段階的に上昇させてもよい(図4の二点鎖線L4参照)。制御装置3は、洗浄液ノズル14を中央位置に所定時間位置させた後、洗浄液バルブ16および気体バルブ19を閉じて、洗浄液ノズル14に液滴の噴射を停止させる(ステップS6)。その後、制御装置3は、洗浄液ノズル14を中央位置から待機位置に移動させる(ステップS7)。
【0065】
制御装置3は、洗浄液ノズル14を退避させた後、スピンベース6の回転速度を中央回転速度から乾燥回転速度に上昇させる(ステップS8)。これにより、スピンベース6やチャックピン7に付着している純水が遠心力によってスピンチャック5の周囲に振り切られ、液体がスピンチャック5から除去される。そのため、スピンチャック5が乾燥する。制御装置3は、スピンチャック5を乾燥速度で所定時間回転させた後、スピンチャック5に基板Wの回転を停止させる(ステップS9)。その後、制御装置3は、スプラッシュガード33を上位置から下位置に下降させる(ステップS10)。
【0066】
乾燥回転速度は、外周回転速度および中央回転速度のいずれよりも大きい。中央回転速度は、外周回転速度よりも大きい。外周回転速度(rpm)は、洗浄液ノズル14がスピンベース6の上面6aに向けて洗浄液を吐出している総時間、つまり洗浄液バルブ16が開いている総秒数よりも小さい。外周回転速度は、たとえば、80(rpm)以下の値である。中央回転速度は、たとえば、1000(rpm)以下の値である。乾燥回転速度は、たとえば、1000(rpm)を超える値である。
【0067】
中央回転速度、外周回転速度、および乾燥回転速度の組み合わせの具体例は、外周回転速度が50rpmで、中央回転速度が1000rpmで、乾燥回転速度が2000rpmである。スピンベース6の回転速度を外周回転速度から中央回転速度に段階的に上昇させる場合、スピンベース6の回転速度は、たとえば、50rpm、200rpm、500rpm、1000rpmの順番で段階的に上昇する。
【0068】
これらの回転速度は、制御装置3に記憶されているチャック洗浄レシピに含まれる。洗浄液ノズル14がスピンベース6の上面6aに向けて洗浄液を吐出している総時間や、スピンベース6の上面6aに向けて洗浄液ノズル14から吐出される洗浄液の流量や、回転軸線A1から外周着液位置POおよび中央着液位置PCまでの径方向Drの距離も、チャック洗浄レシピに含まれる。
【0069】
このように、制御装置3は、回転しているスピンベース6の上面6aに向けて洗浄液ノズル14に純水の液滴を噴射させながら、外周位置から中央位置までの範囲だけで洗浄液ノズル14を移動させる。これにより、チャックピン7の近傍から中央穴20の近傍までの広い範囲に純水の液滴が直接衝突し、パーティクルがスピンベース6の上面6aから剥がれる。剥がれたパーティクルは、スピンベース6の上面6aに沿って外方に流れる純水と共にスピンベース6から外方に排出される。これにより、スピンチャック5から基板Wへのパーティクルの転移による基板Wの汚染を抑制または防止できる。
【0070】
図6は、中央位置に位置する洗浄液ノズル14から回転しているスピンベース6の上面6aに向けて吐出された洗浄液の流れについて説明するための模式図である。
スピンベース6の上面6a内の中央着液位置PCに着液した純水は、スピンベース6に着液した勢いでスピンベース6上を広がり、中央着液位置PCを覆う液膜を形成する。中央着液位置PCから液膜の内端までの径方向Drの距離D1は、主として、洗浄液ノズル14から吐出される洗浄液の流速と、スピンベース6の回転速度と、回転軸線A1から中央着液位置PCまでの径方向Drの距離とに依存する。
【0071】
つまり、洗浄液の流速が高いと、スピンベース6に着液する洗浄液の勢いが増すので、より大きな液膜が形成される。また、スピンベース6の回転速度を減少させると、スピンベース6に着液した洗浄液に加わる遠心力が減少するので、より大きな液膜が形成される。スピンベース6の回転速度が一定であったとしても、中央着液位置PCを回転軸線A1に近づけると、洗浄液に加わる遠心力が減少するので、より大きな液膜が形成される。
【0072】
洗浄液ノズル14が中央位置に位置しているとき、洗浄液ノズル14は、スピンベース6の上面6a内の中央着液位置PCに向けて洗浄液を吐出する。中央着液位置PCが中央穴20に近いので、中央着液位置PCから内方に流れた洗浄液が、中央穴20に到達するかもしれない。洗浄液が中央穴20内に入ると、中央穴20内に配置された環状シール31のシール性能が低下するおそれがある。
【0073】
回転軸線A1から中央着液位置PCまでの径方向Drの距離と、洗浄液ノズル14が中央位置に位置しているときのスピンベース6の回転速度(中央回転速度)と、洗浄液ノズル14が中央位置に位置しているときに洗浄液ノズル14に供給される洗浄液の流量とは、中央洗浄条件に含まれる。中央洗浄条件は、中央着液位置PCから内方に流れた洗浄液が中央穴20に到達しないように設定される。
【0074】
具体的には、洗浄液ノズル14が中央位置に位置しているときのスピンベース6の回転速度である中央回転速度は、洗浄液ノズル14が外周位置に位置しているときのスピンベース6の回転速度である外周回転速度よりも大きい。中央回転速度が大きいので、より大きな遠心力が中央着液位置PCに着液した洗浄液に加わる。そのため、中央着液位置PCから内方に広がる洗浄液の範囲を減少させることができる。これにより、洗浄液が中央穴20に到達することを抑制または防止しながら、中央穴20の近傍を洗浄することができる。
【0075】
図7は、外周位置に位置する洗浄液ノズル14から回転しているスピンベース6の上面6aに向けて吐出された洗浄液の流れについて説明するための模式図である。
洗浄液ノズル14から回転しているスピンベース6の上面6aに向けて吐出された洗浄液は、スピンベース6の上面6aに沿って流れる。スピンベース6の上面6aに沿って外方に流れる洗浄液の一部は、チャックピン7に衝突する。洗浄液ノズル14が外周位置に位置しているときにチャックピン7に衝突する洗浄液の流量は、洗浄液ノズル14が中央位置に位置しているときよりも大きい。これは、着液位置に着液した洗浄液が、着液位置から離れるにしたがって幅が広がる扇状の液膜をスピンベース6上に形成するからである。言い換えると、単位面積当たりの洗浄液の供給流量が着液位置から離れるにしたがって減少するからである。
【0076】
チャックピン7に衝突した洗浄液は、中央穴20に向かって内方に跳ね返る。チャックピン7に衝突する洗浄液の流量が増加すると、チャックピン7から内方に跳ね返る洗浄液の流量も増加する。さらに、スピンベース6の回転速度が大きいと、チャックピン7に衝突する洗浄液の勢いが増すので、洗浄液が遠くまで飛散する。そのため、洗浄液ノズル14が外周位置およびその近傍に位置しているときのスピンベース6の回転速度が大きいと、純水の液滴が中央穴20に到達するかもしれない。さらにまた、スピンベース6の回転速度が大きいと、スピンベース6から外方に飛散する洗浄液の勢いが増すので、洗浄液が、上位置に位置するスプラッシュガード33を飛び越え、スプラッシュガード33のまわりの部材に付着するかもしれない。
【0077】
回転軸線A1から外周着液位置POまでの径方向Drの距離と、洗浄液ノズル14が外周位置に位置しているときのスピンベース6の回転速度(外周回転速度)と、洗浄液ノズル14が外周位置に位置しているときに洗浄液ノズル14に供給される洗浄液の流量とは、外周洗浄条件に含まれる。外周洗浄条件は、チャックピン7から内方に跳ね返った洗浄液が中央穴20に到達しないように設定される。
【0078】
具体的には、洗浄液ノズル14が外周位置に位置しているときのスピンベース6の回転速度である外周回転速度は、洗浄液ノズル14が中央位置に位置しているときのスピンベース6の回転速度である中央回転速度よりも小さい。したがって、チャックピン7に衝突する洗浄液の勢いが小さく、チャックピン7から内方に跳ね返った純水の液滴が中央穴20に到達し難い。そのため、洗浄液が中央穴20に到達することを抑制または防止しながら、チャックピン7の近傍を洗浄することができる。
【0079】
以上のように本実施形態では、回転しているスピンベース6の上面6aに向けて洗浄液を吐出する。この状態で、スピンベース6に対する洗浄液の着液位置を移動させる。これにより、洗浄液ノズル14から吐出された洗浄液がスピンベース6の広い範囲に直接当たり、スピンベース6の上面6aが洗浄される。さらに、スピンベース6の上面6aに沿って外方に流れる洗浄液がチャックピン7に当たり、チャックピン7が洗浄される。これにより、スピンベース6等に付着しているパーティクルを減らすことができる。さらに、スピンベース6等を自動で洗浄するので、手作業で洗浄する場合と比較して、清浄度のばらつきを低減できる。
【0080】
その一方で、洗浄液ノズル14が中央位置に配置されているとき、スピンベース6の上面6aに沿って中央着液位置PCから内方に広がる洗浄液が、スピンベース6の中央部に設けられた中央穴20に入るおそれがある。中央位置に位置する洗浄液ノズル14から吐出された洗浄液が中央穴20に入るか否かを決定する要因には、スピンベース6の回転速度と、洗浄液ノズル14から吐出される洗浄液の流速と、回転軸線A1から中央着液位置PCまでの距離とが含まれる。これらを含む中央洗浄条件は、洗浄液が中央穴20に到達しないように設定される。
【0081】
また、洗浄液ノズル14が外周位置に配置されているとき、チャックピン7に当たった洗浄液が中央穴20まで跳ね返るおそれがある。外周位置に位置する洗浄液ノズル14から吐出された洗浄液が中央穴20に入るか否かを決定する要因には、スピンベース6の回転速度と、洗浄液ノズル14から吐出される洗浄液の流速と、回転軸線A1から外周着液位置POまでの距離とが含まれる。これらを含む外周洗浄条件は、洗浄液が中央穴20に到達しないように設定される。
【0082】
このように、洗浄液ノズル14から吐出された洗浄液が中央穴20に入るか否かを決定する要因が適切に設定されるので、スピンベース6の中央部に設けられた中央穴20に洗浄液が入ることを抑制または防止しながら、チャックピン7およびスピンベース6を含む複数の部材を洗浄することができる。これにより、スピンベース6等から基板Wへのパーティクルの転移による基板Wの汚染を抑制または防止できる。
【0083】
また本実施形態では、洗浄液ノズル14が回転しているスピンベース6の上面6aに向けて洗浄液を吐出しているときに、スプラッシュガード33の上端がスピンベース6の上面6aよりも上方に配置される。スピンベース6の上面6aに供給された洗浄液は、スピンベース6の上面6aに沿って外方に流れ、スピンベース6から外方に飛散する。スピンベース6から飛散した洗浄液は、上位置に位置するスプラッシュガード33に当たる。したがって、チャックピン7およびスピンベース6だけでなく、スプラッシュガード33も洗浄することができる。さらに、スピンベース6を洗浄した洗浄液でスプラッシュガード33を洗浄するので、洗浄液の使用量を抑えることができる。
【0084】
また本実施形態では、外周着液位置POから複数のチャックピン7の内端までの径方向Drの距離DOが、中央穴20の外径φ1よりも小さい。このように、外周着液位置POがチャックピン7に近いので、洗浄液が直接当たる範囲をさらに広げることができる。これにより、洗浄液が中央穴20に浸入することを抑制または防止しながら、スピンベース6に残留しているパーティクルの数をさらに減らすことができる。
【0085】
また本実施形態では、中央着液位置PCから中央穴20の縁までの径方向Drの距離DCが、中央穴20の外径φ1よりも小さい。このように、中央着液位置PCがスピンベース6の中央穴20に近いので、洗浄液が直接当たる範囲をさらに広げることができる。これにより、洗浄液が中央穴20に浸入することを抑制または防止しながら、スピンベース6に残留しているパーティクルの数をさらに減らすことができる。
【0086】
また本実施形態では、洗浄液ノズル14が中央位置に位置しているときのスピンベース6の回転速度(中央回転速度)が大きい。中央位置に位置する洗浄液ノズル14から吐出された洗浄液が中央穴20に入るか否かを決定する要因の一つは、スピンベース6の回転速度である。これは、スピンベース6の回転速度が大きいと、大きい遠心力がスピンベース6上の洗浄液に加わり、洗浄液が内方に広がる範囲が狭まるからである。本実施形態では、洗浄液ノズル14が中央位置に位置しているときのスピンベース6の回転速度が大きいので、中央着液位置PCから内方に広がる洗浄液の範囲を狭めることができる。これにより、洗浄液ノズル14が中央位置に位置しているときに、洗浄液が中央穴20に浸入することを抑制または防止できる。
【0087】
スピンベース6の回転速度は、外周位置に位置する洗浄液ノズル14から吐出された洗浄液が中央穴20に入るか否かを決定する要因の一つでもある。これは、スピンベース6の回転速度が大きいと、大きい遠心力がスピンベース6上の洗浄液に加わり、チャックピン7に衝突する洗浄液の勢いが強まるからである。本実施形態では、洗浄液ノズル14が外周位置に位置しているときのスピンベース6の回転速度(外周回転速度)が小さいので、チャックピン7から内方に飛散する洗浄液の範囲を狭めることができる。これにより、洗浄液ノズル14が外周位置に位置しているときに、洗浄液が中央穴20に浸入することを抑制または防止できる。
【0088】
また本実施形態では、洗浄液ノズル14が外周位置に位置しているときのスピンベース6の回転速度(rpm)が、洗浄液ノズル14がスピンベース6の上面6aに向けて洗浄液を吐出している総秒数よりも小さい。つまり、外周回転速度が極めて小さいので、スピンベース6上の洗浄液に加わる遠心力が極めて小さい。そのため、チャックピン7に衝突する洗浄液の勢いが弱まり、チャックピン7から内方に飛散する洗浄液の範囲が狭まる。これにより、洗浄液ノズル14が外周位置に位置しているときに、洗浄液が中央穴20に浸入することを抑制または防止できる。
【0089】
また本実施形態では、スピンベース6の内周面6bと下ノズル26の外周面との間の環状の隙間29が、環状シール31によって密閉されている。したがって、パーティクルを含む流体が、環状の隙間29を上方に通過することを防止できる。さらに、前述のように、スピンベース6を洗浄するときのスピンベース6の回転速度等は、洗浄液が中央穴20に浸入しないように設定されるので、洗浄液が環状シール31に接触することを防止できる。環状シール31は、たとえば、磁性流体シールである。したがって、磁性流体シールのシール機能の低下を防止できる。
【0090】
また本実施形態では、非回転部材の一例である下ノズル26から上方に吐出された処理液が、複数のチャックピン7に保持されている基板Wの下面に供給される。下ノズル26から基板Wの下面に供給された処理液の一部は、スピンベース6の上面6aに落下する。しかしながら、洗浄液ノズル14から吐出された洗浄液でスピンベース6等を洗浄するので、スピンベース6等から基板Wへのパーティクルの転移による基板Wの汚染を抑制または防止できる。
【0091】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前記実施形態では、洗浄液ノズル14が洗浄液の液滴を噴射するスプレーノズルである場合について説明したが、洗浄液ノズル14は、洗浄液吐出口14aから基板Wまたはスピンベース6まで連続した洗浄液の流れを形成するノズルであってもよい。
【0092】
前記実施形態では、スピンチャック5等を洗浄するときに、洗浄液ノズル14を外周位置から中央位置に移動させる場合について説明したが、中央位置から外周位置に洗浄液ノズル14を移動させてもよいし、中央位置と外周位置との間で洗浄液ノズル14を往復させてもよい。
前記実施形態では、チャック洗浄処理における洗浄液の吐出流量が一定である場合について説明したが(図4参照)、洗浄液の吐出流量は一定でなくてもよい。
【0093】
前記実施形態では、スピンチャック5だけでなく、スプラッシュガード33も洗浄するために、回転しているスピンベース6の上面6aに洗浄液を供給しながら、スプラッシュガード33を上位置に位置させる場合について説明した。しかし、回転しているスピンベース6の上面6aに洗浄液を供給している期間の全部また一部において、スプラッシュガード33を下位置に位置させてもよい。この場合、スピンベース6から外方に飛散した洗浄液が、チャンバー4の内壁面等に供給されるので、これらの部材を洗浄できる。
【0094】
前記実施形態では、外周着液位置POから複数のチャックピン7の内端までの径方向Drの距離DOが、中央穴20の外径φ1よりも小さく、中央着液位置PCから中央穴20の縁までの径方向Drの距離DCが、中央穴20の外径φ1よりも小さい場合について説明した。しかし、距離DOおよび距離DCは、中央穴20の外径φ1より大きくてもよい。
【0095】
前記実施形態では、洗浄液ノズル14が外周位置に位置しているときのスピンベース6の回転速度(rpm)が、洗浄液ノズル14がスピンベース6の上面6aに向けて洗浄液を吐出している総秒数よりも小さい場合について説明した。しかし、外周回転速度は、洗浄液ノズル14がスピンベース6の上面6aに向けて洗浄液を吐出している総秒数以上であってもよい。
【0096】
前記実施形態では、非回転部材の一例である下ノズル26が中央穴20に挿入されている場合について説明したが、下ノズル26を省略してもよい。この場合、スピンベース6の中央穴20から気体が上方に吐出されてもよい。
図8に示すように、下ノズル26を取り囲むベアリング30および環状シール31の代わりに、スピンベース6の内周面6bと下ノズル26の外周面との間の環状の隙間29に窒素ガスなどの気体を供給する下ガス配管41を設けてもよい。環状の隙間29に対する気体の供給および供給停止を切り替える下ガスバルブ42は、下ガス配管41に介装されている。
【0097】
この構成によれば、下ガス配管41によって供給された気体が、スピンベース6の内周面6bと下ノズル26の外周面との間の環状の隙間29を通過し、スピンベース6の上面6aで開口する中央穴20から上方に吐出される。前述のように、スピンベース6を洗浄するときのスピンベース6の回転速度等は、洗浄液が中央穴20に浸入しないように設定されるので、洗浄液に起因するパーティクルが中央穴20内に発生することを防止できる。したがって、中央穴20内のパーティクルが気体と共に中央穴20から上方に吐出されることを防止できる。
【0098】
前述の全ての構成の2つ以上が組み合わされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 :基板処理装置
3 :制御装置
5 :スピンチャック
6 :スピンベース
6a :上面
6b :内周面
6c :内周縁
7 :チャックピン
8 :支持部
9 :把持部
13 :スピンモータ
14 :洗浄液ノズル
14a :洗浄液吐出口
15 :洗浄液配管
16 :洗浄液バルブ
17 :洗浄液流量調整バルブ
18 :気体配管
19 :気体バルブ
20 :中央穴
22 :ノズル移動機構
26 :下ノズル
26a :下吐出口
26b :下流路
26c :円板部
26d :円柱部
27 :下処理液配管
28 :下処理液バルブ
29 :隙間
30 :ベアリング
31 :環状シール
32 :カップ
33 :スプラッシュガード
34 :環状トレイ
35 :ガード昇降機構
41 :下ガス配管
42 :下ガスバルブ
A1 :回転軸線
D1 :中央着液位置から液膜の内端までの径方向の距離
DC :中央着液位置から中央穴の縁までの径方向の距離
DO :外周着液位置から複数のチャックピンの内端までの径方向の距離
Dr :径方向
PC :中央着液位置
PO :外周着液位置
W :基板
φ1 :中央穴の外径
φ2 :洗浄液吐出口の外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8