【文献】
内田裕市,他3名,土木学会「超高強度繊維補強コンクリートの設計施工指針(案),コンクリート工学,日本,2005年 3月,第43巻,第3号,3−8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記(A)〜(D)工程を経た状態の円柱供試体に載荷して、荷重とひずみの関係を求め、該荷重とひずみの関係において線形弾性が不成立となる点の荷重に対応する引張応力を、ひび割れ発生強度と定めて測定する、超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度の測定方法。
(A)超高強度繊維補強コンクリートの円柱供試体の二つの端面における凹凸の高低差の平均値が、一端面あたり1.5mm以下になるように研磨する、円柱供試体の研磨工程
(B)平板の上に、前記研磨した円柱供試体を横向きに載置し、平板と該円柱供試体の側面が接触する部分に、隙間が生じていないか否か確認する第一の確認作業と、隙間が生じていないと確認した場合は、該円柱供試体の側面から180°回転した位置にある円柱供試体の側面を、再度、平板の上に載置して、平板と該円柱供試体の側面が接触する部分に、隙間が生じていないか否か確認する第二の確認作業を行い、いずれの確認作業においても隙間が生じていないことを確認できた円柱供試体を、ひび割れ発生強度の測定対象として選別する、測定対象の選別工程
(C)前記隙間が生じていないと確認した二つの側面を結ぶ面と直交するように、前記選別した円柱供試体の二つの端面の中心にひずみゲージを貼付する、ひずみゲージの貼付工程
(D)前記隙間が生じていないと確認した二つの側面が、圧縮試験機の上下の加圧板とそれぞれ接触するように、前記円柱供試体を圧縮試験機に載置する、円柱供試体の載置工程
ただし、
荷重が50kNまでの範囲内において、
(i)前記二つの端面のひずみが正と負の逆(非対称)になる場合、
(ii)一つの端面においてひずみが生じない場合、
(iii)一つの端面のひずみが、他の端面のひずみの1.5倍以上になる場合
のいずれかの場合が生じたとき、
下記(a)および(b)工程を経て選別された特性値が、閾値を超えたとき、
のいずれのときも、載荷を中断して除荷した後、前記(B)〜(D)工程を再実施して、再度、載荷を行う。
(a)ひずみが100×10−6までの範囲内において、荷重と二つの端面のひずみの実測値を用いて、各端面ごとに、荷重(説明変数)とひずみ(目的変数)の比例関係を表す二つの単回帰式を求める、単回帰分析工程
(b)前記二つの単回帰式中の傾きの値を比較して、大きい方の値を特性値として選別する、特性値の選別工程
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度を高い精度で測定する方法と、該方法に用いる超高強度繊維補強コンクリートの供試体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度のバラツキを小さくするための手段を種々検討した結果、(i)ひび割れ発生強度測定用供試体として用いる円柱供試体の両端面が平滑で、(ii)試験機の上下の加圧板と供試体との接触部分に隙間がなければ、ひび割れ発生強度の測定値のバラツキを小さくできることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の構成を有する超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度の測定方法と、超高強度繊維補強コンクリートの供試体である。
【0007】
[1]下記(A)〜(D)工程を経た状態の円柱供試体に載荷して、荷重とひずみの関係を求め、該荷重とひずみの関係において線形弾性が不成立となる点の荷重に対応する引張応力を、ひび割れ発生強度と定めて測定する、超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度の測定方法。
(A)超高強度繊維補強コンクリートの円柱供試体の二つの端面における凹凸の高低差の平均値が、一端面あたり1.5mm以下になるように研磨する、円柱供試体の研磨工程
(B)平板の上に、前記研磨した円柱供試体を横向きに載置し、平板と該円柱供試体の側面が接触する部分に、隙間が生じていないか否か確認する第一の確認作業と、隙間が生じていないと確認した場合は、該円柱供試体の側面から180°回転した位置にある円柱供試体の側面を、再度、平板の上に載置して、平板と該円柱供試体の側面が接触する部分に、隙間が生じていないか否か確認する第二の確認作業を行い、いずれの確認作業においても隙間が生じていないことを確認できた円柱供試体を、ひび割れ発生強度の測定対象として選別する、測定対象の選別工程
(C)前記隙間が生じていないと確認した二つの側面を結ぶ面と直交するように、前記選別した円柱供試体の二つの端面の中心にひずみゲージを貼付する、ひずみゲージの貼付工程
(D)前記隙間が生じていないと確認した二つの側面が、圧縮試験機の上下の加圧板とそれぞれ接触するように、前記円柱供試体を圧縮試験機に載置する、円柱供試体の載置工程
ただし、
荷重が50kNまでの範囲内において、
(i)前記二つの端面のひずみが正と負の逆(非対称)になる場合、
(ii)一つの端面においてひずみが生じない場合、
(iii)一つの端面のひずみが、他の端面のひずみの1.5倍以上になる場合
のいずれか
の場合が生じた
とき、
下記(a)および(b)工程を経て選別された特性値が、閾値を超えた
とき、
のいずれのときも、載荷を中断して除荷した後、前記(B)〜(D)工程を再実施して、再度、載荷を行う。
(a)ひずみが100×10
−6までの範囲内において、荷重と二つの端面のひずみの実測値を用いて、各端面ごとに、荷重(説明変数)とひずみ(目的変数)の比例関係を表す二つの単回帰式を求める、単回帰分析工程
(b)前記二つの単回帰式中の傾きの値を比較して、大きい方の値を特性値として選別する、特性値の選別工程
[2]ひび割れ発生強度が5N/mm
2以上の超高強度繊維補強コンクリートを、ひび割れ発生強度の測定対象とする、前記[1]に記載の超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度の測定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度の測定方法は、測定効率が高く、また、ひび割れ発生強度の測定値のバラツキを小さくできるため、測定精度が高い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度の測定方法
本発明の超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度の測定方法は、前記のとおり、(A)円柱供試体の研磨工程、(B)測定対象の選別工程、(C)ひずみゲージの貼付工程、および(D)円柱供試体の載置工程を経た状態の円柱供試体に載荷して、荷重とひずみの関係を求め、該荷重とひずみの関係において線形弾性が不成立となる点の荷重に対応する引張応力を、ひび割れ発生強度と定めて測定する方法である。なお、本発明において、超高強度繊維補強コンクリートは、コンクリートの他に超高強度繊維補強モルタルも含む概念である。
以下、本発明について、前記各工程に分け、
図2〜
図11を用いて詳細に説明する。
【0011】
(A)円柱供試体の研磨工程
該工程は、超高強度繊維補強コンクリートの円柱供試体の二つの端面における凹凸の高低差の平均値が、一端面あたり1.5mm以下になるように研磨する工程である。
超高強度繊維補強コンクリートの円柱供試体の上面(打ち込み面)および下面(底面)は、凹凸があるため荷重が不均一になり易く、ひび割れ発生強度のバラツキが大きくなる。したがって、該端面を平滑にするため、二つの端面を研磨する。上面の鋼繊維や余盛りがバリになっている場合があること、特に上面には気泡が多くみられること(
図2)、また下面は型枠底面付近に歪みがある場合があることを考慮すると、研磨する厚さ(長さ)は、一端面あたり、好ましくは5〜10mmである。また、該研磨した二つの端面における凹凸の高低差の平均値は、一端面あたり、好ましくは1.5mm以下である。なお、前記高低差の平均値は、一端面あたり、より好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。前記高低差はノギス等を用いて測定できる。また、研磨装置としてはコンクリート端面成形機が挙げられる。
なお、超高強度繊維補強コンクリートの円柱供試体の作製は、前記JIS A 1113「コンクリートの割裂引張強度試験方法」に準拠して行うとよい。該供試体の作製時において、型枠面のエントラップトエアの低減を目的として行う、木槌等を用いた型枠面の打撃や加振は、コンクリート中の繊維が沈降しないように最小限に留める。
【0012】
(B)測定対象の選別工程
該工程は、平板の上に、前記研磨した円柱供試体を横向きに載置し、平板と該円柱供試体の側面が線接触する部分(以下「接触線」という。)に隙間が生じないか否か確認する第一の確認作業と、隙間が生じていないと確認した場合は、該円柱供試体の側面から180°回転した位置にある円柱供試体の側面を、再度、平板の上に載置して、接触線に隙間が生じないか否か確認する第二の確認作業を行い、いずれの確認作業においても隙間が生じないことを確認できた円柱供試体を、ひび割れ発生強度の測定対象として選別する工程である。
平板の上に、前記研磨した円柱供試体を横向きに載置すると、接触線に隙間が生じている場合がある(
図3)。この隙間の存在は、平板と円柱供試体の側面との間に、光をあてるか(
図4)、隙間ゲージを挿入するか(
図5)、または、平板上に敷いた紙ヤスリの上に円柱供試体を横向きに置き、円柱供試体の長さ方向に沿って前後に移動したときに生じる紙ヤスリ上の擦過線の連続性の有無により確認できる。すなわち、光が漏れていないか、隙間ゲージが挿入できないか、紙ヤスリ上の擦過線に連続性があれば(
図6)、接触線に隙間がないことが確認できる(
図7)。
隙間が確認された場合は、隙間が確認されない側面を見い出すまで、円柱供試体を少し回転して、別の側面について前記隙間の確認作業(第一の確認作業)を繰り返し行う。
隙間が確認されない側面を見い出した場合は、円柱供試体を該側面から180°回転した位置にある側面について、前記隙間の確認作業(第二の確認作業)を行う。そして、第一および第二の確認作業のいずれにおいても、隙間が確認されない側面を見い出すまでは、前記第一および第二の確認作業を繰り返す。なお、継目が長さ方向にある型枠を用いて作製した円柱供試体では、該供試体の継目に当たる側面部分は隙間が大きくかつ多いため、好ましくは、該側面部分は前記確認作業の対象から除く。
そして、第一および第二の確認作業おいて、隙間が確認されない側面を見い出したときは、該円柱供試体をひび割れ発生強度の測定対象として選別し、例えば、後工程である(C)工程において、ひずみゲージを貼付する位置と方向を明確に表示するために、該円柱供試体の端面の中心を通って隙間が確認されない二つの側面(
図8)を結ぶ直線と、該直線に直交する直線の二つの直線を記入する(
図9)。
【0013】
(C)ひずみゲージの貼付工程
該工程は、前記隙間が生じていないと確認した二つの側面を結ぶ面と直交するように、前記選別した円柱供試体の二つの端面の中心にひずみゲージを貼付する工程である(
図10)。
【0014】
(D)円柱供試体の載置工程
該工程は、前記隙間が生じていないと確認した二つの側面が、圧縮試験機の上下の加圧板とそれぞれ接触するように、前記円柱供試体を圧縮試験機に載置する工程である(
図11)。
次に、本発明において、ひび割れ発生強度のバラツキを、さらに抑制する二種類の方法について詳細に説明する。
【0015】
2.ひび割れ発生強度のバラツキの抑制(その1)
前記(A)〜(D)工程を経た後に、前記円柱供試体に載荷して荷重とひずみを測定し、荷重が50kNまでの範囲内において、
(i)前記二つの端面のひずみが正と負の逆(非対称)になる場合、
(ii)一つの端面においてひずみが生じない場合、
(iii)一つの端面のひずみが、他の端面のひずみの1.5倍以上になる場合
のいずれかが生じたときは、ひび割れ発生強度の測定値のバラツキが大きくなるため、好ましくは、載荷を中断して除荷した後、前記(B)〜(D)工程を再実施して、再度、載荷を行う。荷重が50kNまでの範囲内では、載荷を繰り返しても、得られるひび割れ発生強度の値には影響しない。
なお、超高強度繊維補強コンクリートの円柱供試体への載荷は、JIS A 1113「コンクリートの割裂引張強度試験方法」に準拠して行うとよい。また、荷重とひずみを連続的に測定すれば、ひび割れの発生により線形弾性が不成立になる点が明確に把握できるから好ましい。
【0016】
3.ひび割れ発生強度のバラツキの抑制(その2)
さらに、本発明において、ひび割れ発生強度のバラツキを抑制するために、例えば、
図12の(1)に示すように、下記(a)および(b)工程を経て選別された特性値が、閾値を超えたときは、載荷を中断して除荷した後、前記(B)〜(D)工程を再実施して、再度、載荷を行う。
(a)ひずみが100×10
−6までの範囲内において、荷重と二つの端面のひずみの実測値を用いて、各端面ごとに、荷重(説明変数)とひずみ(目的変数)の比例関係を表す二つの単回帰式を求める、単回帰分析工程(
図12)
ここで、荷重を説明変数(横軸)に、ひずみを目的変数(縦軸)にとるのは、載荷しながらひずみを計測するため、荷重を横軸にとるとグラフが見やすくなるからである。
(b)前記二つの単回帰式中の傾きの値を比較して、大きい方の値を特性値として選別する、特性値の選別工程
ここで、傾きの大きい方の値を、特性値として選別する理由は、経験上、傾きが大きい(引張ヤング係数が小さい)方が、ひび割れ発生強度をより低く(すなわち、安全側で)評価できるからである。
なお、ひずみが100×10
−6までの範囲では、載荷を繰り返しても、得られるひび割れ発生強度の値には影響しない。
【0017】
次に、前記閾値について説明する。
(1)閾値の考え方
超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度は、すでに述べたように、荷重(引張応力)とひずみの関係において、線形弾性が不成立となる点の荷重(限界応力)である。
そもそも、十分な強度が発現したコンクリートは、弾性体に近い力学的挙動を示すため、鋼材と同様に、荷重とひずみの関係は線形になる。
ここで、コンクリートが完全な弾性体であれば、圧縮応力や引張応力に対するひずみの挙動は、いずれも同じになる。しかし、コンクリートは完全な弾性体ではないため、同一の応力に対し圧縮ひずみと引張ひずみは同じにならず、引張ヤング係数は圧縮ヤング係数より小さくなる(このことは、硬化して十分に強度が発現したコンクリートにおいて一般的に確認されている。ただし、若材齢時の現象は除く。)。例えば、水結合材比が19〜25%の高強度コンクリートでは、引張ヤング係数は圧縮ヤング係数の0.8倍程度である。
そこで、本発明で用いる閾値を定めるために、以下の仮定をする。
(i)標準熱養生を行なった超高強度繊維補強コンクリート(FM)および超高強度繊維補強コンクリート(FO)の圧縮ヤング係数(Ec)は、それぞれ、50kN/mm
2および45kN/mm
2と仮定する。なお、前記FMおよびFOは、後記する超強高度繊維補強コンクリート「ダクタル」(登録商標)の品番である。
(ii)引張ヤング係数(Et)は、圧縮ヤング係数の0.8倍と仮定する。
(iii)部材安全係数(γ)は1.3と仮定する。
【0018】
(c2)閾値の決定
これらの仮定に基づき、圧縮ヤング係数(Ec)と引張ヤング係数(Et)の関係式(1)を導出すると、
Et=0.8×Ec/γ=0.615×Ec ・・・(1)
一方、引張応力(σ)とひずみ(ε)の関係式(2)は、
σ=Et×ε ・・・(2)
また、引張応力(σ)と荷重(P)の関係式(3)は、
σ=2P/(π×d×L) ・・・(3)
ただし、(3)式中、dは円柱供試体の端面の直径、Lは研磨した二つの端面間の距離(長さ)を表す。
よって、前記(1)〜(3)式から、ひずみと荷重の関係式(4)が求まる。
ε=2/(0.615×Ec×π×d×L)×P ・・・(4)
前記(4)式の係数(傾き)である2/(0.615×Ec×π×d×L)に、Ec=50kN/mm
2または45kN/mm
2、d=100mm、およびL=200mmを代入すると、超高強度繊維補強コンクリート(FM)では1.04、超高強度繊維補強コンクリート(FO)では1.17となる。ここで、前記のとおり、経験上、傾きが大きい方が、ひび割れ発生強度をより低く(すなわち、安全側で)評価できるから、小数点以下第二位を切り上げて、それぞれ1.1および1.2を閾値として採用する。
【0019】
3.荷重とひずみの関係に基づくひび割れ発生強度の決定
そして、
図12の(2)に示すように、前記(a)および(b)工程を経て選別された特性値が閾値以下の場合には、該(a)工程でその一部を使用した荷重とひずみの全載荷期間の実測値を用いて、例えば、荷重を縦軸に、ひずみを横軸にしてグラフ(
図13)を作成し、該グラフから線形弾性が不成立になる点の荷重(P)の値を読み取り、前記(3)式に代入して、線形弾性が不成立となる点の荷重に対応する引張応力(σ)であるひび割れ発生強度を得る。
【0020】
2.超高強度繊維補強コンクリートの供試体
該供試体は、供試体の二つの端面における凹凸の高低差の平均値が、一端面あたり1.5mm以下である円柱供試体である。凹凸の高低差の平均値が1.5mm以下であれば、ひび割れ発生強度のバラツキを小さくできる。なお、前記高低差の平均値は、前記のとおり、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。
また、超高強度繊維補強コンクリートの円柱供試体は、打設時においてコンクリートの1層打ちを行う以外は、非特許文献1の80頁に記載の「参考資料2 強度試験用供試体の作り方」に従い作製する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用材料とコンクリート配合
使用した超強高度繊維補強コンクリートは、ダクタルFMとダクタルFO(登録商標、太平洋セメント社製)であり、単位水量はダクタルFMが180kg/m
3、ダクタルFOが185kg/m
3とした。
【0022】
2.超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度の測定
(1)ダクタルFMを用いた供試体の作製
該供試体は、打設時においてコンクリートの1層打ちを行なった以外は、非特許文献1の80頁に記載の「参考資料2 強度試験用供試体の作り方」に従い、鋼製型枠を用いて、直径100mm、長さ200mmの円柱供試体を作製した。
なお、エントラップトエアをできる限り巻き込まないように、コンクリートを1層で連続的に前記型枠へ流し込み、振動締固めは行わなかった。また、該コンクリートは、24時間、気中養生した後に脱型し、さらに90℃で48時間、蒸気養生して円柱供試体を作製した(
図2)。
【0023】
(2)円柱供試体の研磨
次に、該供試体の二つの端面を、コンクリート端面成形機を用いて、両端面ともに5mm程度研磨して、二つの端面における凹凸の高低差の平均値を、一端面あたり1mmにした。
【0024】
(3)測定対象の選別
該研磨した円柱供試体を横向きに載置し、反対側から光をあてて接触線に隙間が生じていないか否か確認した(
図4)。隙間が生じていないと確認した後は、該円柱供試体の側面から180°回転した位置にある円柱供試体の側面を、再度、平板の上に載置して、接触線に隙間が生じないか否か光をあてて確認した。そして、いずれの確認作業においても隙間が生じないことを確認した円柱供試体を、ひび割れ発生強度の測定対象として選別した(
図7)。
【0025】
(4)ひずみゲージの貼付
さらに、該円柱供試体の端面の中心を通って隙間が確認されない二つの側面を結ぶ直線と、該直線に直交する直線の二つの直線を記入した(
図9)。そして、前記選別した円柱供試体の二つの端面の中心において、前記直交する直線に平行に、ひずみゲージ1とひずみゲージ2を貼付した(
図10)。
【0026】
(5)円柱供試体の載置
前記隙間が生じていないと確認した二つの側面が、圧縮試験機の上下の加圧板とそれぞれ接触するように、前記円柱供試体を圧縮試験機(型番:ACA−100A、前川試験機製作所社製)に載置した(
図11)。
【0027】
(6)ひび割れ発生強度の測定
JIS A 1113「コンクリートの割裂引張強度試験方法」に準拠して、圧縮試験機に載置した円柱供試体に載荷して、荷重とひずみの関係を求め、該荷重とひずみの関係において線形弾性が不成立となる点の荷重に対応する引張応力からひび割れ発生強度を求めた。
なお、荷重が50kNまでの範囲内において、(i)二つの端面のひずみが正と負の逆(非対称)になった場合、(ii)一つの端面においてひずみが生じなかった場合、または(iii)一つの端面のひずみが、他の端面のひずみの1.5倍以上になった場合は、載荷を中断して除荷した後、前記(3)〜(5)の工程を再実施して、再度、載荷を行った(再実施1)。
また、100×10
−6までの範囲のひずみの測定において求めた特性値が、段落0018において採用した閾値(1.1)を超えた場合も、載荷を中断して除荷した後、前記(3)〜(5)の工程を再実施して、再度、載荷を行った(再実施2)。
ダクタルFMの各円柱供試体のひび割れ発生強度の値を表1に示す。また、前記再実施1または再実施2の実施の有無も表1に併記する。
【0028】
【表1】
【0029】
比較として、前記段落0022で作製した円柱供試体を非特許文献1に記載の方法(従来の方法)に準拠して、単回帰式の傾きとひび割れ発生強度を求めた。得られたひび割れ発生強度を表2に示す。また、荷重が50kNまでの範囲内において、下記(i)〜(iii)のうちのいずれかの発生の有無を表2に示す。
(i)二つの端面のひずみが正と負の逆(非対称)になった。
(ii)一つの端面においてひずみが生じなかった。
(iii)一つの端面のひずみが、他の端面のひずみの1.5倍以上になった。
さらに、100×10
−6までの範囲のひずみの測定において求めた特性値の値と再実施2の必要性の判定も表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
次に、表1と表2のデータに基づいて算出した、ひび割れ発生強度の平均値、標準偏差、および変動係数を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
ダクタルFMに代えて、ダクタルFOを用いた以外は、前記と同様の試験方法により、単回帰式の傾きとひび割れ発生強度を求めた。ひび割れ発生強度の測定結果を表4と表5に示す。また、表4と表5のデータに基づいて算出した、ひび割れ発生強度の平均値、標準偏差、および変動係数を表6に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
(7)ひび割れ発生強度のバラツキについて
表3と表6に示すように、ダクタルFMおよびダクタルFOともに、変動係数は、すべての実施例において、比較例と比べ1/7〜2/3と小さい。したがって、本発明のひび割れ発生強度の測定方法は、従来の方法と比べ、ひび割れ発生強度のバラツキが顕著に小さい。
以上のことから、本発明は、超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ発生強度を、高い精度で、効率よく測定することができる。