【実施例】
【0029】
(実施例1)
本例は、本発明の実施例及び比較例にかかる複数のプレコートフィンを作製し、その性能を比較する例である。具体的には、これらのプレコートフィンをそれぞれ用いて、熱交換器用のコア部を作製し、親水性、ろう付け性を比較評価する。本例においては、コア部として試験用のミニコア(試料E1〜試料E25、試料C1〜試料C10)を作製する。
【0030】
図1及び
図2に示すごとく、ミニコア1は、プレコートフィン2と、アルミニウムチューブ3とを有し、コルゲート形状のプレコートフィン2がアルミニウムチューブ3に挟まれている。なお、
図1においては、プレコートフィン2のコルゲート形状を明示するために、プレコートフィン2を挟む2つのアルミニウムチューブ3の一方を破線にて示してある。
【0031】
プレコートフィン2は、
図3に示すごとく、コルゲート状に成形されたアルミニウム板よりなるフィン材21と、フィン材21の両面に形成された塗膜22とを有する。本例においては、後述の表1及び表2に示すごとく、付着量、組成等が異なる複数の塗膜を形成する。
【0032】
図1及び
図2に示すごとく、アルミニウムチューブ3は、アルミニウム合金製の扁平多穴管からなる心材31と、この心材31の表面に形成されたろう材層32とを有する。心材31は、冷媒を流通させるための多数の冷媒流路311を有している。ミニコア1においては、
図5(b)に示すごとく、プレコートフィン2とアルミニウムチューブ3とはろう付け接合されており、両者の間には接合部100が形成されている。
【0033】
以下、本例のミニコア1の製造方法について説明する。具体的には、まず、JIS規格のA1050組成の板状のフィン材21に対して、バーコーターを用いて、表1及び表2に示す原料配合組成の各塗料を所定量塗布し、温度200℃で乾燥させることにより塗膜22を形成した(
図3参照)。各表中に示すコロイダルシリカ(非晶質コロイダルシリカ)、ケイ酸リチウム及び/又はケイ酸ナトリウムを含む水ガラス、有機樹脂の配合量は、固形分量である。また、表中には、コロイダルシリカの1次粒子の平均粒子径、乾燥後の塗膜22の付着量、塗膜中のシリカ(非晶質シリカ粒子)の含有量、塗膜中のシリカ(非晶質シリカ粒子)の付着量を示す。次いで、塗膜22を形成した板状のフィン材21をコルゲート状に加工した。このようにして、フィン材21の表面に形成された塗膜22を有するコルゲート状のプレコートフィン2を得た(
図1〜
図3参照)。これらのプレコートフィン2は、表1における試料E1〜試料E21、試料E25、表2における試料C1〜試料C10のミニコア1の製造にそれぞれ用いられる。
【0034】
また、表1中の試料E22〜試料E24のミニコア1の製造に用いられるプレコートフィンの2作製においては、まず、下地処理を行うことにより、
図4に示すごとく板状のフィン材21の表面に、化成皮膜からなる下地処理層23を形成した。下地処理としては、リン酸クロメート処理、ジルコニウム処理、又はベーマイト処理を行った。下地処理層23の厚みは例えば1μm程度である。次いで、この下地処理層23上に表1に示す各塗料を所定量塗布し、温度200℃で乾燥させることにより塗膜22を形成した。次いで、下地処理層23及び塗膜22が形成されたフィン材21をコルゲート状に加工した。これにより、フィン材21と塗膜22との間に下地処理層23を有する、コルゲート状のプレコートフィン2を得た。
【0035】
次いで、押出加工により、3000系アルミニウム合金製の扁平多穴管からなる心材31を作製した(
図1及び
図2参照)。そして、心材31の表面にSi粉末からなるろう材を塗布することにより、ろう材層32を形成した。このようにして、アルミニウムチューブ3を得た。
【0036】
次に、2つのアルミニウムチューブ3の間に、コルゲート状のプレコートフィン2を挟み込んで組立品を作製した(
図1及び
図2参照)。このとき、各アルミニウムチューブ3のろう材層32を互いに対向させた状態で両者の間にプレコートフィン2を挟み込むことにより、コルゲート状のプレコートフィン2の各頂点20とろう材層32とを当接させた。次いで、
図5(a)に示すごとく、フラックスを水に分散させて作製した分散液101を、アルミニウムチューブ3とプレコートフィン2とからなる組立品の全体に噴霧した。その後、窒素ガス雰囲気で温度600℃の炉内に、組立品を3分間保持した後、室温(25℃)まで冷却した。この炉内での加熱時にろう材層32が溶融し、冷却時に溶融したろう材層32が硬化する。このろう材層32の溶融と硬化により、プレコートフィン2とアルミニウムチューブ3とが接合し、接合部100が形成される(
図5(b)参照)。このようにして、
図1及び
図2に示すごとく、ミニコア1を得た。なお、本例においては、上述のようにフラックスを用いたろう付け接合によって作製したミニコア(試料E1〜試料E24、試料C1〜試料C10)の他に、フラックスを用いずにろう付け接合を行ったミニコア(試料E25)も作製した。
【0037】
次に、上記のようにして得られた各試料について、以下のようにして親水性、その持続性の評価を行うと共に、ろう付け性の評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0038】
<親水性>
親水性の評価は、表1及び表2に示す各試料におけるプレコートフィンと同じ構成の平板状の試験板を用いて行った。試験板に対しては、塗膜形成の後に行われるろう付けを想定した加熱が行われている。具体的には、試験板を窒素ガス雰囲気で温度600℃の炉内で3分間加熱した。次いで、各試験板の塗膜上における水滴の接触角を測定することにより、親水性の評価を行った。接触角の測定は、協和界面化学株式会社製のFACE自動接触角計「CA−Z」を用いて行った。具体的には、室温で、塗膜上に水滴を滴下し、30秒後の水滴の接触角を測定した。接触角が20°以下の場合を「A」と評価し、20°を超え30°以下の場合を「B」と評価し、30°を超える場合を「C」と評価した。
【0039】
<親水性の持続性>
上述の試験板を純水に2分間浸漬した後、6分間風乾した。この純水への浸漬と風乾というサイクルを300回繰り返し実施した。その後、上述の親水性の評価と同様に塗膜と水滴との接触角を測定した。300サイクル後の接触角が25°以下の場合を「A」と評価し、25°を超え40°以下の場合を「B」と評価し、40°を超える場合を「C」と評価した。
【0040】
<ろう付け性>
ろう付け接合後の各試料のミニコアにおけるろう付け接合部をカッターナイフにより切断し、フィンの接合長さL
1をフィンの山部の長さL
2の総和で割算して100分率で表した値(L
1/L
2×100)を接合率(%)とした。接合率が80%以上の場合を「A」と評価し、接合率が60%以上かつ80%未満の場合を「B」と評価し、60%未満の場合を「C」と評価した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1及び表2より知られるように、試料E1〜試料E25は、親水性、持続性、及びろう付け性のいずれもが良好であった。これに対し、試料C1〜試料C10は、親水性、持続性、ろう付け性のいずれかが不十分であった。試料E1〜試料E24と試料C1〜試料C10との対比から、塗膜中に含まれるコロイダルシリカ由来の非晶質シリカ粒子は、1次粒子の平均粒子径が500nm以下であることが好ましく、塗膜中の非晶質シリカ粒子の含有量は20質量%以上であり、該非晶質シリカ粒子の付着量は100mg/m
2以上であることが好ましい。さらに、塗膜の付着量は100mg/m
2〜2000mg/m
2であることが好ましい。これらの条件を満足する塗膜を備えたプレコートフィン(試料E1〜試料E25参照)は、ろう付け後の親水性及びその持続性に優れ、さらにろう付け性にも優れる。また、これらの条件を満足する塗膜を備えるプレコートフィンは、ろう付け時にフラックスを用いても、フラックス作用が損なわれることなく、優れたろう付け性を発揮することができる。
【0044】
(実施例2)
次に、実施例1において示したプレコートフィンを用いたコア部を有する熱交換器の例について説明する。
図6に示すごとく、熱交換器4は、実施例1のミニコアと同様の構成を多数備えるコア部10を有する。具体的には、コア部1は、コルゲート状のプレコートフィン2と、アルミニウムチューブ3とを交互に多数積層してなり、プレコートフィン2とアルミニウムチューブ3とが実施例1のミニコアと同様にしてろう付け接合されている。
【0045】
チューブ3の両端には、ヘッダ5が組み付けられており、コア部1の積層方向における両端(最外側)には、サイドプレート6が組み付けられている。また、ヘッダ5には、タンク7が組み付けられている。これらのヘッダ5、サイドプレート6、及びタンク7は、上述のプレコートフィン2とアルミニウムチューブ3との接合と同様に、例えばろう付けにより接合を行うことができる。
【0046】
熱交換器4においては、実施例1における試料E1〜試料E25と同様の塗膜を有するプレコートフィン2を採用することができる。これにより、ろう付け後に得られる熱交換器4は、優れた親水性及びその持続性を発揮することができる。さらに、フィン2とチューブ3とのろう付け性にも優れる。また、熱交換器4において、少なくともプレコートフィン2とアルミニウムチューブ3とは、フラックスを用いたろう付けにより接合されていることが好ましい。この場合には、フラックス作用が充分に発揮され、プレコートフィン2とアルミニウムチューブ3とが優れた接合性を発揮することできる。これは、実施例1に示すように塗膜がフラックス作用の低下を防止できるためである。
【0047】
以上のように、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。