(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整部は、前記被加工部材に向かって伝搬する前記レーザビームを、前記被加工部材の前記加工領域に沿った方向に反射させつつ前記検出領域に向かって伝播させる請求項3に記載のレーザビームの強度分布測定装置。
レーザ発振器の側に設けられ前記レーザビームの光路を変更する変更部と電気的に接続され、前記計測部による前記レーザビームの強度分布の計測結果に基づき前記レーザビームの径が小さくなるように前記変更部を調整する操作部を、さらに有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザビームの強度分布測定装置。
前記レーザビームのビームウエストの位置を、集光された前記レーザビームを受光する光学素子の焦点位置と前記光軸の法線方向に沿って隣り合う基準台の位置に基づき検出する検出部を、さらに有する請求項1〜11のいずれか1項に記載のレーザビームの強度分布測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明に係る実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面における部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
【0011】
なお、光路は、ガルバノミラーのような光学素子によって走査されつつ伝搬する各々のレーザビームの経路を称する。光軸は、光源と検出領域の中心を結ぶ軸であって、特にガルバノミラーのような光学素子による走査がされない状態におけるレーザビームの中心軸を称す。レーザビームの光路が光軸から偏向した状態は、レーザビームが
光軸から所定の角度だけずれて伝搬する状態を称する。
【0012】
本実施形態において、強度分布測定装置100は、被加工部材(例えば微細な加工を要するワーク10)の加工領域に走査されて加工を施すレーザビームLの強度分布を製造ラインにおいて測定する装置である。強度分布測定装置100は、強度分布測定方法を具現化したものに相当する。強度分布測定装置100は、レーザビームLの強度分布を実験室等において測定する装置として用いることもできる。
【0013】
先ず、強度分布測定装置100の構成について、
図1〜
図6を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係るレーザビームLの強度分布測定装置100の要部を示す斜視図である。
図2は、強度分布測定装置100の調整部120等の光学系を示す図である。
図3は、強度分布測定装置100に加えてレーザ発振器200を示すブロック図である。
図4は、強度分布測定装置100の減衰部110と計測部130に加えてレーザ発振器200を示すブロック図である。
図5は、強度分布測定装置100を製造ラインに組み込んだ状態を示す側面図である。
図6は、強度分布測定装置100の検出部170によるレーザビームLのビームウエストの位置を検出する構成を模式的に示す図である。
【0015】
強度分布測定装置100は、減衰部110、調整部120、計測部130、表示部140、操作部150、筺体部160、検出部170、および制御部180を有している。
【0016】
減衰部110は、
図1、
図3、および
図4に示すように、計測部130よりも光軸Cに沿った上流側に配設され、レーザビームLの強度を減衰させる。
【0017】
減衰部110は、光軸Cの上流側(レーザ発振器200の側)から下流側(計測部130の検出器131の側)に向かって、第1サンプリングプリズム111、水冷ダンパ112、第2サンプリングプリズム113、空冷ダンパ114、第1反射ミラー115、第2反射ミラー116、第1減光フィルタ117A、第2減光フィルタ117B、第3減光フィルタ117C、および第4減光フィルタ117Dの順で、各々の構成部材を配設している。第1サンプリングプリズム111は、コリメート部120M
のレンズ121よりも上流側であって、コリメート部120M
のレンズ121と隣り合うように配設している。第2サンプリングプリズム113〜第4減光フィルタ117Dは、コリメート部120Mとコンデンサ部120Nの間の領域に配設している。
【0018】
第1サンプリングプリズム111は、レーザビームLの強度を減衰させるものである。第1サンプリングプリズム111には、レーザ発振器200から導出されたレーザビームLが入射される。第1サンプリングプリズム111は、レーザビームLの一部(例えば90%)を界面から外部に透過させつつ水冷ダンパ112に伝搬させ、レーザビームLの一部(例えば10%)を界面で反射させつつ第2サンプリングプリズム113に向かって伝搬させる。第1サンプリングプリズム111は、ワーク10に向かって伝搬するレーザビームLを、ワーク10の加工領域(溶接領域)に沿った方向に反射させる。第1サンプリングプリズム111は、プリズム形状のガラスから構成している。そのプリズム形状の斜面が、界面に相当する。
【0019】
水冷ダンパ112は、第1サンプリングプリズム111の界面から外部に透過したレーザビームLを、液体に照射させて減衰させるものである。水冷ダンパ112は、第1サンプリングプリズム111と隣接している。水冷ダンパ112は、例えば、金属からなり、内部に空洞を備えた箱状に形成されている。水冷ダンパ112は、内部に水を収納した状態において、レーザビームLの波長の光において透明な板状の窓材によって封止して構成している。水冷ダンパ112は、レーザビームLを窓材から導入しつつ内部に収納した水に照射させることによって、そのレーザビームLを水冷によって減衰させる。
【0020】
第2サンプリングプリズム113は、第1サンプリングプリズム111によって減衰されたレーザビームLの強度を、さらに減衰させるものである。第2サンプリングプリズム113は、ワーク10の加工領域(溶接領域)に沿った方向において、第1サンプリングプリズム111と対向して配置されている。第2サンプリングプリズム113には、第1サンプリングプリズム111の界面において反射したレーザビームL(第1サンプリングプリズム111によって約10%に減衰済み)が入射される。第2サンプリングプリズム113は、レーザビームLの一部(例えば90%)を界面から外部に透過させつつ空冷ダンパ114に伝搬させ、レーザビームLの一部(例えば10%)を界面で反射させつつ第1反射ミラー115に向かって伝搬させる。第2サンプリングプリズム113は、第1サンプリングプリズム111と同様に、プリズム形状のガラスから構成している。そのプリズム形状の斜面が、界面に相当する。
【0021】
空冷ダンパ114は、第2サンプリングプリズム113の界面から外部に透過したレーザビームLを、気体に照射させて減衰させるものである。空冷ダンパ114は、第2サンプリングプリズム113と隣接している。空冷ダンパ114は、例えば、金属からなり、内部に空洞を備えた箱状に形成されている。空冷ダンパ114は、特に、熱伝導性に優れた銅またはアルミや、一定の強度を有する銅合金またはアルミ合金から形成することができる。空冷ダンパ114は、第2サンプリングプリズム113との間の空洞によって、レーザビームLを多重反射させつつ、そのレーザビームLを減衰させる。
【0022】
第1反射ミラー115は、レーザビームLを反射させて、その光軸C
の方向を変更するものである。第1反射ミラー115は、ワーク10の加工領域(溶接領域)に沿った方向において、第2サンプリングプリズム113と対向して配置されている。第1反射ミラー115は、第2サンプリングプリズム113から伝搬されたレーザビームLを、ワーク10の面に沿った方向に向かって反射させつつ、第2反射ミラー116に向かって伝搬させる。第1反射ミラー115は、レーザビームLの光軸C
の方向を90°折り返している。第1反射ミラー115は、例えば、プリズム形状のガラスの一面に、アルミニウムのような金属を蒸着させて構成している。第1反射ミラー115において、金属を蒸着させた一面が、レーザビームLの反射面になる。第1反射ミラー115は、プリズム形状によって構成することによって、板状によって構成する場合と比較して、その形状(3つの角のうち1つの角が直角)を基準にして角度を調整し易い。
【0023】
第2反射ミラー116は、レーザビームLを反射させて、その光軸C
の方向を変更するものである。第2反射ミラー116は、ワーク10の加工領域(溶接領域)に沿った方向において、第1減光フィルタ117Aと対向して配置されている。第2反射ミラー116は、第1反射ミラー115から伝搬されたレーザビームLを、ワーク10の面に沿った方向に向かって反射させつつ、第1減光フィルタ117A〜第4減光フィルタ117Dに向かって伝搬させる。第2反射ミラー116は、レーザビームLの光軸C
の方向を90°折り返している。第2反射ミラー116は、第1反射ミラー115と同様の仕様からなる。
【0024】
第1減光フィルタ117A、第2減光フィルタ117B、第3減光フィルタ117C、および第4減光フィルタ117Dは、レーザビームLの強度を、検出器131の耐光特性に合わせて調整するものである。第1減光フィルタ117Aは、ワーク10の面内に沿った方向において、第2反射ミラー116と対向して配置されている。第1減光フィルタ117A〜第4減光フィルタ117Dは、第2反射ミラー116とコンデンサ部120Nの間に一定の間隔で配設している。第1減光フィルタ117A〜第4減光フィルタ117Dは、第1サンプリングプリズム111および第2サンプリングプリズム113によって大幅に減衰されたレーザビームLの強度を微調整する。
【0025】
第1減光フィルタ117A〜第4減光フィルタ117Dは、所謂反射型として構成する場合、一例として、レーザビームLの波長の光において透明な板状の窓材に、反射率が数十%〜数%の反射膜(例えば、クロムからなる薄膜)を蒸着したものを用いる。一方、第1減光フィルタ117A〜第4減光フィルタ117Dは、所謂吸収型として構成する場合、一例として、レーザビームLの波長の光を一定の割合で吸収する吸収材を含有させた窓材を用いる。第1減光フィルタ117A〜第4減光フィルタ117Dは、例えば、90%、50%、10%、1%のように、減光率が互いに異なるものを用いる。第1減光フィルタ117A〜第4減光フィルタ117Dは、光軸Cと直交するように、光軸Cと対向(正対)している。減光フィルタは、実施形態のように複数用いてもよいし、1枚のみ用いてもよい。減光フィルタは、減光率の異なるものを複数組み合わせて用いることによって、レーザビームLを任意の強度に減光し易い。すなわち、第1サンプリングプリズム111および第2サンプリングプリズム113の構成を変更することなく、第1減光フィルタ117A〜第4減光フィルタ117Dによって、レーザビームLの強度を微調整することができる。
【0026】
調整部120は、
図1〜
図3に示すように、光軸Cから偏向して伝搬するレーザビームLを検出領域131aに向かって伝搬するように光軸Cとの成す角を相対的に小さく調整する。
【0027】
調整部120は、第1調整部(例えばコリメート部120M)と第2調整部(例えばコンデンサ部120N)を備えている。
【0028】
コリメート部120Mは、レーザビームLを光軸Cに沿うような平行光の状態または平行光に近い状態で検出器131に向かって伝搬させる。コリメート部120Mによって、無限遠補正区間を実現する。コリメート部120Mは、レンズ121、122、123、および124からなる対物レンズによって構成している。このような対物レンズは、顕微鏡等に用いられているものを適用できる。コリメート部120Mは、例えば製造ラインの狭い空間に組み込み、ワーク10との干渉を防止するために、レーザビームLをワーク10の加工領域(溶接領域)に沿った方向に向かって伝播させる。対物レンズは、その開口数が例えばNA=0.3以上のものを選択することによって、ガルバノミラー211によって走査されるレーザビームLを十分に集光して、検出領域131aに伝播させることができる。
【0029】
コンデンサ部120Nは、レーザビームLを光軸Cに近接させつつ集光光の状態において、検出器131に向かって伝搬させる。コンデンサ部120Nは、コリメート部120Mよりも光軸Cに沿った下流側に配設されている。コンデンサ部120Nは、レンズ125、126、127、および128からなる結像レンズによって構成している。このような結像レンズは、顕微鏡等に用いられているものを適用できる。コンデンサ部120Nは、結像レンズによって、レーザビームLの角度を矯正可能に構成している。また、レンズ125、126、127、および128からなる結像レンズの焦点距離を、例えば製造ラインにおいて溶接台221に載置されたワーク10までのレーザビームLの焦点距離と同等になるように構成することによって、計測部130によるレーザビームLの計測を、レーザ溶接時のレーザビームLのプロファイラを精度良く再現した状態で行うことができる。
【0030】
計測部130は、
図1〜
図4に示すように、レーザビームLの光軸Cと対向して配設され、検出領域131aに照射されたレーザビームLの強度分布を計測する。
【0031】
計測部130は、検出器131を備えている。検出器131は、光軸Cに沿った最も下流側に配設されている。検出器131の検出領域131aは、CCDやCMOSからなり、光軸Cと直交するように光軸Cと対向(正対)している。検出器131には、カメラタイプを用いることができる。また、検出器131には、ナイフエッジ方式を用いたスキャナタイプ、スリット方式を用いたスキャナタイプ、またはピンホール方式を用いたスキャナタイプのものを用いることができる。検出器131に、例えば、スリット方式によるスキャナタイプを用いた場合、フォトディテクタの前方に設けたスリットが回転した状態で、レーザビームLを入射させる。検出器131において、スリットを通過したレーザビームLがディテクタに入射されると、起電力が発生して、レーザビームLの強度を電流値の大小として検出する。検出器131は、レーザビームLの分布をスリットの位置に基づいて検出する。
【0032】
ここで、検出器131の検出精度は、一般的にレーザビームLの入射角に依存する。検出器131は、レーザビームLが検出領域131aに垂直に入射した場合に、レーザビームLの強度分布を最も精度良く検出することができる。すなわち、光軸Cから偏向して伝搬するレーザビームLを調整部120によって光軸Cとの成す角を相対的に小さく調整しつつ、そのレーザビームLを検出領域131aに対して垂直に近い状態で入射させることによって、レーザビームLの強度分布を精度良く検出することができる。
【0033】
表示部140は、
図1および
図3に示すように、計測部130によって計測されたレーザビームLの強度分布を表示する。
【0034】
表示部140は、モニター141を備えている。モニター141は、計測部130の検出器131に接続されている。モニター141は、検出器131によって得られたレーザビームLの強度分布のデータを受信して表示する。例えば製造ラインの作業者は、モニター141によってレーザビームLの強度分布を目視しながら光学調整を行う。モニター141は、例えば、レーザビームLの強度を縦軸に表し、レーザビームLの分布を横軸(2軸)の面内に表す。モニター141は、レーザビームLの強度分布を立体的に表示させるたり、上方から下方に向かって鳥瞰図のように表示させたり、側方から表示させたりする。
【0035】
操作部150は、
図3および
図5に示すように、計測部130によるレーザビームLの強度分布の計測結果に基づき、レーザ発振器200の変更部210を調整し、レーザビームLの径を小さくする。
【0036】
操作部150は、制御回路151を備えている。制御回路151は、レーザ発振器200の変更部210の直進ステージ213と電気的に接続されている。ここで、変更部210は、レーザ発振器200側に設けられ、レーザビームLを反射させるガルバノミラー211の光軸Cに沿った位置を上流側または下流側に変更するものである。レーザ発振器200から導出されたレーザビームLは、ガルバノミラー211によって反射した後、fθレンズ212を透過して、第1サンプリングプリズム111に伝搬する。fθレンズ212は、ガルバノミラー211によるレーザビームLの走査速度を一定にする。制御回路151は、計測部130からレーザビームLの強度分布の計測結果を受信し、受信した計測結果に基づいて直進ステージ213を制御して、レーザビームLの径が最も小さくなるようにガルバノミラー211の光軸Cに沿った位置を調整する。
【0037】
筺体部160は、
図3および
図5に示すように、強度分布測定装置100の各構成部材を支持し、レーザ発振器200と連結した内部に不活性ガスを充填する。
【0038】
筺体部160は、支持台161、駆動ステージ162、およびノズル163を備えている。支持台161は、減衰部110、調整部120、および計測部130等の各構成部材を固定した状態で支持している。駆動ステージ162は、支持台161を搭載し、その支持台161を移動させる。駆動ステージ162は、レーザ発振器200から導出されるレーザビームLによってワーク10の溶接が行われている間、ワーク10に干渉しないように、支持台161をレーザビームLの光路Kから退避させる。一方、駆動ステージ162は、レーザ発振器200によるワーク10の溶接が行われず、レーザビームLの強度分布が測定される場合に、支持台161をレーザビームLの光路Kに侵入させる。ノズル163は、レーザビームLの光路Kの雰囲気を不活性ガス(アシストガス)によって置換しつつ酸素を除外することによって、その酸素に起因した光学部材の表面の焼け付きを防止する。ノズル163は、レーザ発振器200と、減衰部110の最初(光学系の最も上流側)の光学素子の間に配設している。ノズル163は、外部と隔離され密閉状態を満たすような形状にする必要はなく、少なくとも不活性ガスを流通させることによって、レーザ発振器200と強度分布測定装置100が隣接した領域に不活性ガスを充填する構成とすればよい。
【0039】
検出部170は、
図6に示すように、レーザビームLのビームウエストの位置を検出する。
【0040】
検出部170は、基準台171およびプローブ172を備えている。基準台171の上面の位置は、fθレンズ212の焦点位置と光軸Cに沿って一致するように予め微調整を行っている。すなわち、基準台171の上面の位置と、fθレンズ212の焦点位置は、光軸Cの法線方向に沿って隣り合っている
。プローブ172は、基準台171の上面に対して接近離間し、基準台171の上面に接触したときの位置を制御部180のコントローラに送信する。
【0041】
プローブ172は、
図6(A)に示すように通常は基準台171から離間している。プローブ172は、
図6(B)に示すように基準台171に接近して接触すると離間しつつ、その位置をコントローラ181に送信する。このように、レーザ発振器200から導出されたレーザビームLのビームウエストの位置を検出する場合、fθレンズ212の焦点位置と相関が取れている基準台171を用いることができる。したがって、光学部材であって取り扱いに注意を要し、かつ、狭所にあって位置検出が困難であ
る光学素子129に対して、プローブ172を接触させる必要がない。さらに
、光学素子129の表面に蒸着され剥離し易い反射防止膜に対して、プローブ172を接触させる必要がない。
【0042】
制御部180は、
図1および
図3に示すように、計測部130および表示部140の制御に加えて、操作部150を介してレーザ発振器200の変更部210を制御する。
【0043】
制御部180は、コントローラ181を備えている。コントローラ181は、ROM、CPU、およびRAMを含んでいる。ROM(Read Only Memory)は、強度分布測定装置100およびレーザ発振器200の変更部210の制御プログラムや、レーザビームLの基準となる理想的な強度分布のデータを格納している。制御プログラムは、ROMに複数格納され、例えば、計測部130によるレーザビームLの強度分布の計測結果に基づき、レーザビームLの径が小さくなるように変更部210を調整するためのプログラムである。CPU(Central Processing Unit)は、制御プログラムを実行する。RAM(Random Access Memory)は、検出器131によって計測されたレーザビームLの強度分布のデータ等を一時的に記憶する。
【0044】
次に、強度分布測定装置100の使用方法について、
図7および
図8を参照しながら説明する。
【0045】
図7は、強度分布測定装置100によってレーザビームLの強度分布(径)を自動で最適化する制御を示すフローチャートである。
図8は、強度分布測定装置100によってレーザビームLの強度分布(径)を量産前や量産中に自動で最適化する制御を示すフローチャートである。
【0046】
強度分布測定装置100によって、レーザビームLの径を自動で最適化する方法について、
図7を参照しながら説明する。
【0047】
ステップS111において、レーザビームLの径を測定するために、強度分布測定装置100の電源をONにして、制御部180の制御に基づき、レーザビームLの径の最適化を開始する。ステップS111からステップS112に進む。
【0048】
ステップS112において、制御部180は、先ず、筺体部160の駆動ステージ162によって支持台161をレーザビームLの光路Kに侵入させる。支持台161は、減衰部110、調整部120、および計測部130等の各構成部材を支持している。制御部180は、次に、レーザ発振器200にレーザビームLを導出させると共に、計測部130の検出器131にレーザビームLの径を検出させる。その後、ステップS112からステップS113に進む。
【0049】
ステップS113において、制御部180は、検出器131によって検出されたレーザビームLの径が、予め定めておいた基準値の径と同等かを、コントローラ181のCPUによって判定する。基準値のデータは、コントローラ181のROMに格納している。その後、ステップS113からステップS114(レーザビームLの径が基準値と同等の場合)またはステップS131(レーザビームLの径が基準値と同等ではない場合)に進む。
【0050】
ステップS114において、制御部180は、ステップS113におけるレーザビームLの径が基準値と同等である旨の判定に基づき、操作部150によって、ガルバノミラー211を光軸Cの上流側または下流側に向かって一定距離だけ移動させる。その後、ステップS114からステップS115に進む。
【0051】
ステップS115において、ステップS112と同様に、制御部180は、レーザ発振器200にレーザビームLを導出させると共に、計測部130の検出器131にレーザビームLの径を測定させる。その後、ステップS115からステップS116に進む。
【0052】
ステップS116において、ステップS113と同様に、制御部180は、検出器131によって検出されたレーザビームLの径が、予め定めておいた基準値の径と同等かを、コントローラ181のCPUによって判定する。その後、ステップS116からステップS117(レーザビームLの径が基準値と同等の場合)またはステップS121(レーザビームLの径が基準値と同等ではない場合)に進む。
【0053】
ステップS117において、制御部180は、操作部150によってガルバノミラー211を、光軸Cに沿って逆方向に一定距離の半分だけ戻すように移動させる。例えば製造ラインにおいて、移動後の位置を基準にして、ガルバノミラー211を走査(回転駆動)して、レーザ発振器200によるワーク10のレーザ溶接を行うことになる。その後、ステップS117からステップS118に進む。
【0054】
ステップS121において、ステップS116から引き続き、制御部180は、操作部150によって、ガルバノミラー211を光軸Cの上流側または下流側に向かって、ステップS114とは逆方向に一定距離の2倍だけ移動させる。すなわち、ガルバノミラー211を、ステップS113における位置を基準として、ステップS114における方向とは正反対の方向に光軸Cに沿って一定距離だけ移動させる。その後、ステップS121からステップS113に進む。
【0055】
ステップS131において、ステップS113から引き続き、制御部180は、操作部150によって、ガルバノミラー211を、光軸Cに沿って一定距離だけ移動させる。その後、ステップS131からステップS132に進む。
【0056】
ステップS132において、ステップS112と同様に、制御部180は、レーザ発振器200にレーザビームLを導出させると共に、計測部130の検出器131にレーザビームLの径を測定させる。その後、ステップS132からステップS133に進む。
【0057】
ステップS133において、制御部180は、検出器131によって検出されたレーザビームLの径が、直近の計測値以下かを、コントローラ181のCPUによって判定する。その後、ステップS133からステップS113(レーザビームLの径が直近の計測値以下の場合)またはステップS141(レーザビームLの径が直近の計測値よりも大きい場合)に進む。
【0058】
ステップS141において、ステップS133から引き続き、制御部180は、操作部150によって、ガルバノミラー211を光軸Cの上流側または下流側に向かって、ステップS131とは逆方向に一定距離の2倍だけ移動させる。その後、ステップS141からステップS132に進む。
【0059】
ステップS118において、ステップS117から引き続き、強度分布測定装置100の電源をOFFにして、制御部180によるレーザビームLの径を自動で最適化する制御を終了する。
【0060】
強度分布測定装置100によって、レーザビームLの径を量産中に自動で最適化する方法について、
図8を参照しながら説明する。
【0061】
ステップS201において、レーザビームLの径を測定するために、強度分布測定装置100の電源をONにして、制御部180によるレーザビームLの径を量産前や量産中に自動で最適化する制御を開始する。量産前とは、例えば、始業前に製造ラインの点検を行う場合に相当する。量産中とは、例えば、ワーク10の溶接加工において、基準に満たないものが連続して発生したような場合に相当する。
【0062】
ステップS202において、強度分布測定装置100の電源がONされたとき、制御部180は、レーザ発振器200によってワーク10の溶接が行われていた場合、そのワーク10の溶接が完了するまで待機する。すなわち、溶接のワンサイクルが完了するまで待機する。ローダによってワーク10および治具を所定の位置に配設する。ワーク10は、溶接台221に載置され、かつ、上方にスパッタ等の付着を防止するためのマスク222が配設された状態で、レーザ発振器200によってレーザ溶接が行われる。ワーク10を載置したテーブルがスライドした後、ガルバノミラー211によってレーザビームLが走査されて、ワーク10のレーザ溶接が行われる。レーザ溶接は、アノード側金属セパレータとカソード側金属セパレータを一体とするために、互いの外周縁やアクティブエリアと称される凹凸部分を溶接するものである。溶接を終えたワーク10の搬送中に、次のワーク10の溶接が行われる。制御部180は、上記のレーザ溶接のワンサイクルが完了すると、レーザ発振器200の動作を停止させ、筺体部160の駆動ステージ162によって支持台161をレーザビームLの光路Kに侵入させる。支持台161は、減衰部110、調整部120、および計測部130の各構成部材を支持している。
【0063】
ステップS203において、制御部180は、検出器131によるレーザビームLの計測結果に基づいて、ガルバノミラー211の光軸Cに沿った位置を調整する。制御部180による調整は、
図7を参照しながら前述したS112〜S141に相当する。
【0064】
ステップS204において、筺体部160の駆動ステージ162によって支持台161をレーザビームLの光路Kから離間させる。レーザ発振器200によってワーク10の溶接を再開する。
【0065】
ステップS205において、強度分布測定装置100の電源をOFFにして、制御部180によるレーザビームLの径を量産前や量産中に自動で最適化する制御を終了する。
【0066】
上述した実施形態に係るレーザビームLの強度分布測定装置100によれば、以下の構成によって作用効果を奏する。
【0067】
レーザビームLの強度分布測定装置100は、レーザビームLの強度分布を測定する装置である。強度分布測定装置100は、計測部130と調整部120を有している。計測部130は、レーザビームLの光軸Cと対向して配設され、検出領域131aに照射されたレーザビームLの強度分布を計測する。調整部120は、第1調整部(例えばコリメート部120M)と第2調整部(例えばコンデンサ部120N)を備えている。コリメート部120Mは、レーザビームLをコリメーションして伝搬させる。コンデンサ部120Nは、コリメート部120Mよりも光軸Cに沿った下流側に配設されレーザビームLを光軸Cに近接させつつ伝搬させる。調整部120は、光軸Cから偏向して伝搬するレーザビームLを検出領域131aに向かって伝搬するように光軸Cとの成す角を相対的に小さく調整する。
【0068】
レーザビームLの強度分布測定方法は、レーザビームLの強度分布を測定する方法である。レーザビームLの強度分布測定方法は、光軸から偏向して伝搬するレーザビームLをコリメーションしてから光軸に近接させつつ伝搬させることによって光軸Cとの成す角を相対的に小さくするように調整しつつ光軸Cと対向して設けられた検出領域131aに照射させて強度分布を計測する工程を有している。
【0069】
このように構成したレーザビームLの強度分布測定装置100およびレーザビームLの強度分布測定方法によれば、光路Kが光軸Cから偏向され斜入射によってワーク10に照射されるようなレーザビームLであっても、そのレーザビームLを光軸Cに沿うような平行光の状態または平行光に近い状態で伝搬できる。このようなことから、レーザビームLの強度分布測定装置100およびレーザビームLの強度分布測定方法は、レーザ発振器200から検出領域131aまでの距離を任意に設定しても、そのレーザビームLの強度分布を検出領域から外すことなく計測することができる。したがって、強度分布測定装置100は、レーザビームLの強度分布を十分に計測することができる。
【0070】
さらに、このように構成したレーザビームLの強度分布測定装置100およびレーザビームLの強度分布測定方法によれば、レーザビームLの強度分布の計測精度が検出領域131aに対する入射角度に依存するような場合であっても、精度良く計測することができる。一般的に、検出器131を光軸Cに対向(正対)するように配設して、検出器131の検出領域131aに対するレーザビームLの入射角度が光軸Cに平行となるような直入射に近い構成にすると、レーザビームLの強度分布の計測精度が高くなる。
【0071】
レーザビームLの強度分布測定装置100は、レーザビームLの強度分布を測定する装置である。強度分布測定装置100は、計測部130、調整部120、および減衰部110を有している。計測部130は、レーザビームLの光軸Cと対向して配設され、検出領域131aに照射されたレーザビームLの強度分布を計測する。調整部120は、光軸Cから偏向して伝搬するレーザビームLを検出領域131aに向かって伝搬するように光軸Cとの成す角を相対的に小さく調整する。減衰部110は、計測部130よりも光軸Cに沿った上流側に配設され、レーザビームLの強度を減衰させる。
【0072】
レーザビームLの強度分布測定方法は、レーザビームLの強度分布を測定する方法である。レーザビームLの強度分布測定方法は、光軸から偏向して伝搬するレーザビームLを減衰させ光軸Cとの成す角を相対的に小さくするように調整しつつ光軸Cと対向して設けられた検出領域131aに照射させて強度分布を計測する工程を有している。
【0073】
このように構成したレーザビームLの強度分布測定装置100およびレーザビームLの強度分布測定方法によれば、光路Kが光軸Cから偏向され斜入射によってワーク10に照射されるようなレーザビームLであっても、そのレーザビームLの実使用時の出力等における強度分布を精度良く計測でき、かつ、その強度分布を検出領域から外すことなく計測することができる。したがって、強度分布測定装置100は、レーザビームLの強度分布を十分に計測することができる。なお、レーザビームLは、出力を定格値から下げると不安定になって、その強度分布が変化する。したがって、計測部130の構成に制約されることなく、実使用時の出力におけるレーザビームLの強度分布を計測することが重要である。
【0074】
さらに、このように構成したレーザビームLの強度分布測定装置100およびレーザビームLの強度分布測定方法によれば、レーザビームLの強度分布の計測精度が検出領域131aに対する入射角度に依存するような場合であっても、精度良く計測することができる。一般的に、検出器131を光軸Cに対向(正対)するように配設して、検出器131の検出領域131aに対するレーザビームLの入射角度が光軸Cに平行となるような直入射に近い構成にすると、レーザビームLの強度分布の計測精度が高くなる。
【0075】
レーザビームLの強度分布測定装置100は、被加工部材(例えばワーク10)の加工領域に走査されて加工を施すレーザビームLの強度分布を製造ラインにおいて測定する装置である。強度分布測定装置100は、計測部130と調整部120を有している。計測部130は、レーザビームLの光軸Cと対向して配設され、検出領域131aに照射されたレーザビームLの強度分布を計測する。調整部120は、光軸Cから偏向して伝搬するレーザビームLを検出領域131aに向かって伝搬するように光軸Cとの成す角を相対的に小さく調整する。
【0076】
レーザビームLの強度分布測定方法は、被加工部材(例えばワーク10)の加工領域に走査されて加工を施すレーザビームLの強度分布を製造ラインにおいて測定する方法である。レーザビームLの強度分布測定方法は、光軸から偏向して伝搬するレーザビームLを光軸Cとの成す角を相対的に小さくするように調整しつつ光軸Cと対向して設けられた検出領域131aに照射させて強度分布を計測する工程を有している。
【0077】
このように構成したレーザビームLの強度分布測定装置100およびレーザビームLの強度分布測定方法によれば、光路Kが光軸Cから偏向され斜入射によってワーク10に照射されるようなレーザビームLであっても、そのレーザビームLの強度分布を検出領域から外すことなく計測することができる。したがって、強度分布測定装置100は、製造ラインに組み込んだ状態において、レーザビームLの強度分布を十分に計測することができる。
【0078】
さらに、このように構成したレーザビームLの強度分布測定装置100およびレーザビームLの強度分布測定方法によれば、レーザビームLの強度分布の計測精度が検出領域131aに対する入射角度に依存するような場合であっても、精度良く計測することができる。一般的に、検出器131を光軸Cに対向(正対)するように配設して、検出器131の検出領域131aに対するレーザビームLの入射角度が光軸Cに平行となるような直入射に近い構成にすると、レーザビームLの強度分布の計測精度が高くなる。
【0079】
さらに、調整部120は、第1調整部(コリメート部120M)と第2調整部(コンデンサ部120N)を備えた構成とすることができる。第1調整部(コリメート部120M)は、レーザビームLをコリメーションして伝搬させる。第2調整部(コンデンサ部120N)は、コリメート部120Mよりも光軸Cに沿った下流側に配設され、レーザビームLを光軸Cに近接させつつ伝搬させる。
【0080】
このように構成した強度分布測定装置100によれば、コリメート部120Mによって、レーザビームLを光軸Cに沿うような平行光の状態または平行光に近い状態で伝搬できることから、調整部120をレーザ発振器200から検出領域131aまでの距離に依存することなく構成することができる。すなわち、強度分布測定装置100は、レーザ発振器200から検出領域131aまでの距離を十分に短くする必要がなく、調整部120の光軸Cに沿った全長を、任意に設定することができる。さらに、コンデンサ部120Nによって、光軸Cから偏向して伝搬するレーザビームLと光軸Cとの成す角を相対的に小さくすることができる。
【0081】
さらに、強度分布測定装置100は、減衰部110を設ける構成とすることができる。減衰部110は、計測部130よりも光軸Cに沿った上流側に配設され、レーザビームLの強度を減衰させる。
【0082】
このように構成した強度分布測定装置100によれば、減衰部110によって、計測部130がレーザビームLの出力に起因して損傷することなくレーザビームLの強度分布を十分に計測できることから、出力を下げる必要がなく実使用時の出力等におけるレーザビームLの強度分布を精度良く計測することができる。なお、レーザビームLは、出力を定格値から下げると不安定になって、その強度分布が変化する。したがって、計測部130の構成に制約されることなく、実使用時の出力におけるレーザビームLの強度分布を計測することが重要である。
【0083】
さらに、減衰部110は、少なくともレーザビームLの波長の光において透明な光学部材を備える構成とすることができる。光学部材は、レーザビームLの一部を界面から外部に透過させつつ減衰させ、レーザビームLの一部を界面で反射させつつ検出領域131aに向かって伝搬させる。
【0084】
このように構成した強度分布測定装置100によれば、簡便な仕様からなる光学部材によって、レーザビームLを十分に減衰させつつ、検出領域131aに向かって伝搬させることができる。したがって、レーザビームLの出力を下げる必要が無く、実使用時の出力におけるレーザビームLの強度分布を精度良く計測することができる。
【0085】
さらに、減衰部110は、光学部材の界面から外部に透過したレーザビームLを液体および気体の少なくとも一方に照射させて減衰させる構成とすることができる。
【0086】
このように構成した強度分布測定装置100によれば、検出領域131aに伝搬させないレーザビームLを液体および気体の少なくとも一方に照射させて減衰させる簡便な構成によって、そのレーザビームLを効果的かつ十分に減衰させることができる。
【0087】
さらに、調整部120は、レーザビームLを反射させつつ検出領域131aに向かって伝搬させる構成とすることができる。
【0088】
このように構成した強度分布測定装置100によれば、レーザビームLを折り返すように反射させて構成することによって、レーザ発振器200から検出領域131aまでの構成を一直線状に設ける必要がなく、製造ラインや実験室等のレイアウトに合わせて、十分に配置することができる。調整部120によるレーザビームLの反射方向は、製造ラインや実験室等において、設備との干渉を避けるため、水平方向に加えて垂直方向に沿った方向であってもよい。
【0089】
さらに、調整部120は、ワーク10に向かって伝搬するレーザビームLを、ワーク10の加工領域(溶接領域)に沿った方向に反射させつつ検出領域131aに向かって伝播させる構成とすることができる。
【0090】
このように構成した強度分布測定装置100によれば、レーザビームLをワーク10に沿った方向に反射させることによって、レーザビームLの強度分布の調整をワーク10に干渉することなく実施することができる。すなわち、強度分布測定装置100は、製造ラインや実験室等の構成を大幅に変更することなく、製造ラインや実験室等の空きスペースを用いて、レーザビームLの強度分布を測定することができる。
【0091】
特に、このように構成した強度分布測定装置100によれば、例えば、ワーク10の加工(レーザ溶接)のように、比較的狭い空間に配置するが困難として断念していた領域についても、十分に配置して用いることができる。
【0092】
さらに、強度分布測定装置100は、操作部150を設ける構成とすることができる。操作部150は、レーザ発振器200の側に設けられレーザビームLの光路Kを変更する変更部210と電気的に接続されている。操作部150は、計測部130によるレーザビームLの強度分布の計測結果に基づき、レーザビームLの径が小さくなるように変更部210を調整する。
【0093】
このように構成した強度分布測定装置100によれば、操作部150による変更部の調整によって、レーザ発振器200を操作する作業者の熟練度に依存することなく、レーザビームLの調整を短時間かつ一定の精度において実施することができる。すなわち、強度分布測定装置100は、量産工程を長時間停止させることなくレーザビームLの強度分布を調整することができる。すなわち、操作部150は、レーザ発振器200による被加工部材(ワーク10)に対する加工精度を一定に維持させることができる。
【0094】
特に、このように構成した強度分布測定装置100によれば、製造ラインや実験室等でワーク10を加工(レーザ溶接)する状態において、レーザビームLの強度分布をリアルタイムで計測して、その強度分布を調整することによって、その計測結果をワーク10のレーザ溶接に速やかにフィードバックすることができる。
【0095】
さらに、レーザ発振器200の変更部210がレーザビームLを反射させる反射部材(ガルバノミラー211)を備えた上で、操作部150は、ガルバノミラー211の光軸Cに沿った位置を調整する構成とすることができる。
【0096】
このように構成した強度分布測定装置100によれば、操作部150によるガルバノミラー211の光軸Cに沿った位置の調整によって、レーザビームLの強度分布の調整を効率良くかつ確実に実施することができる。
【0097】
さらに、強度分布測定装置100は、筺体部160を設ける構成とすることができる。筺体部160は、レーザビームLの光路Kの雰囲気を不活性ガスによって置換する。
【0098】
このように構成した強度分布測定装置100によれば、筺体部160の不活性ガス(アシストガス)によって、レーザビームLに起因した構成部材の焼け付き等を十分に防止することができる。特に、強度分布測定装置100は、走査を伴い広範囲にわたるレーザビームLの光路において、不活性ガスを導入しつつ例えば酸素を除外することによって、その酸素に起因した光学部材の表面の焼け付きを効果的に防止することができる。したがって、強度分布測定装置100は、レーザビームLの強度分布を精度良く計測することができる。
【0099】
さらに、強度分布測定装置100は、表示部140を設ける構成とすることができる。表示部140は、計測部130によって計測されたレーザビームLの強度分布を表示する。
【0100】
このように構成した強度分布測定装置100によれば、表示部140によって、作業者がレーザビームLの強度分布を目視しながら光学調整を行うことができることから、その調整を容易かつ一定の精度で行うことができる。
【0101】
さらに、強度分布測定装置100は、レーザビームLのビームウエストの位置を、集光されたレーザビームを受光する光学素子
129の焦点位置と光軸Cの法線方向に沿って隣り合う基準台171の位置に基づき検出する検出部170を設ける構成とすることができる。
【0102】
このように構成した強度分布測定装置100によれば、光学部材であって取り扱いに注意を要し、かつ、狭所にあって位置検出が困難であ
る光学素子129に接触することなく、基準台171を介してレーザビームLのビームウエストの位置を非常に精度良く検出することができる。
【0103】
そのほか、本発明は、特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
【0104】
例えば、本実施形態では、強度分布測定装置100を、被加工部材の溶接に用いるレーザビームLの強度分布を測定する構成として説明した。しかしながら、このような構成に限定されることはなく、強度分布測定装置100は、一例として、被加工部材の表面に製造番号等をマーキングするような印字用のレーザビームLの強度分布を測定する構成してもよい。すなわち、強度分布測定装置100は、被加工部材に対して何らかの加工を施すレーザビームLの強度分布を測定するものであれば、その用途に限定されない。
【0105】
また、本実施形態では、強度分布測定装置100の調整部120を、第1調整部(コリメート部120M)によってレーザビームLを光軸Cに沿って平行光の状態で伝搬させ、かつ、第2調整部(コンデンサ部120N)によってレーザビームLを光軸Cに近接させつつ伝搬させる構成として説明した。しかしながら、このような構成に限定されることはなく、強度分布測定装置100は、一例として、光軸Cと一定の角度を成して伝搬するレーザビームLを、光軸Cに沿わせるような平行光にすることなく、光軸との成す角が小さくなるようにダイレクトに調整する構成としてもよい。
【0106】
また、本実施形態では、強度分布測定装置100の減衰部110を、断面が3角形状からなるプリズム等の光学部材を用いた構成として説明した。しかしながら、このような構成に限定されることはなく、減衰部110は、様々な構成によって、レーザビームLの強度分布を減衰させることができる。
【0107】
特に、減衰部110は、本実施形態において説明した所謂反射型として構成する場合、一例として、レーザビームLの波長の光において透明な板状の窓材を光学部材に用いる構成とすることができる。すなわち、光学部材は、プリズムに限定されることなく、板状のバルクであってもよい。このような構成の場合、光学部材は、レーザビームLの大部分を透過させつつ減衰させ、レーザビームLの極一部を反射させつつ計測部130に向かって伝搬させる。このような構成(一例)の場合、光学部材を廉価にすることができる。
【0108】
同様に、減衰部110は、他の例として、レーザビームLの波長の光において透明な板状の窓材に、反射率が数%の反射膜(例えば、クロムからなる薄膜)を蒸着して用いる構成とすることができる。このような構成(他の例)の場合、光学部材の反射率を精度よく規定することができる。反射型の減衰部110は、レーザビームLの波長の光において透明な光学材料の耐熱性等を考慮した上で、レーザビームLの強度が比較的大きい場合に適用する。
【0109】
さらに、減衰部110は、所謂吸収型として構成する場合、一例として、レーザビームLの波長の光を一定の割合で吸収する吸収材を含有させた窓材を光学部材に用いる構成とすることができる。このような構成の場合、光学部材は、レーザビームLの大部分を吸収しつつ減衰させ、レーザビームLの極一部を反射させつつ計測部130に向かって伝搬させる。透過型の減衰部110は、レーザビームLの波長の光において透明な光学材料の耐熱性等を考慮した上で、レーザビームLの強度が比較的小さい場合に適用する。
【0110】
また、本実施形態では、減衰部110において、計測部130に向かって伝搬させないレーザビームLを減衰させるために、そのレーザビームLを水冷および空冷する構成として説明した。しかしながら、このような構成に限定されることはなく、減衰部110は、一例として計測部130に向かって伝搬させないレーザビームLを水冷のみによって減衰させてもよい。減衰部110は、他の例として計測部130に向かって伝搬させないレーザビームLを空冷および水冷の順で減衰させてもよい。
【0111】
また、本実施形態では、調整部120に加えて減衰部110も、レーザビームLを折り曲げるように反射させつつ、そのレーザビームLを検出領域131aに向かって伝搬させている。このように構成していることから、強度分布測定装置100は、製造ラインや実験室等のレイアウトに合わせて、十分に配置することができる。