(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
建物の外壁構造の構築に際しては、近年、雨水や湿気などの水分や結露の問題を解消するため、
図13に示すように、下地材(例えば、下地合板)aとモルタル外壁bとの間に通気胴縁cを介在させて通気層dを形成するモルタル塗りの外壁通気工法が多く採用されている。
この外壁通気工法では、モルタル外壁bの構築に使用するラスeに防水紙fを裏打ちして一体化された外壁通気工法用ラスgが多く使用されている。
前記通気胴縁cは、通常、455mm程度のピッチで立設された間柱hに、前記下地材aを介して取り付けられるが、モルタルb’を塗り込む際の外壁通気工法用ラスg(ラスeや防水紙f)のたわみを防ぐため、通気胴縁c以外にも、木材や樹脂材による補助胴縁iを配設するのが一般的であった。この補助胴縁iは、通常、前記通気胴縁c同士の間にバランスよく1本(又は複数本)配設される。
【0003】
ところで、前記外壁通気工法用ラスgについて、その重量を増大させることなく面外剛性を高めることができれば、当該ラスg(ラスeや防水紙f)のたわみを抑制できるので、モルタル塗り作業の施工性が向上し、より高品質のモルタル外壁bの構築に寄与することができる等、有益であることは明らかである。
【0004】
前記外壁通気工法用ラスの面外剛性を高めるためには、ラスを構成する線材(線径0.8mm程度)を従来品より太い力骨(線径1.6mm以上)に代替することが考えられる。しかし、この手段では、ラス重量が著しく増大するので取り扱いづらい等、作業者に負担がかかる。従来品より間隔をあけて力骨を配置すればラス重量の増大化を防げるものの、ラス網の密度が下がるのでモルタル塗り作業の施工性悪化、ひいてはモルタル外壁の品質低下を招く虞がある。その他、線径が1.6mmを超えると、手作業ではラスの裁断が困難となり、現場合わせの必要な開口部等へのラスの貼り付けが難しくなることも留意すべき事項である。
【0005】
例えば、特許文献1には、先行技術として、形態に工夫を施したエキスパンドメタル、複合ラスの2つの文献を挙げ、それぞれの課題を指摘した上で、剛性(面外剛性)を高めた外壁通気工法用ラスに関する発明が開示されている。
この特許文献1に記載された発明の特徴(構成及び効果)を箇条書きにすると以下のとおりである。
・防水シートに接合される接合部の網目を構成するラス材(エキスパンドメタル)の線材が、湾曲部の網目を構成する線材と比較して幅寸法が大きく形成されているので、接合部の剛性が大きくなる。
・そのため、剛性の大きい接合部で防水シートを支持することができるので、防水シートの支持力が向上し、撓みにくくなる。
・また、湾曲部についてはアーチ作用によって剛性が高められるので、湾曲部の網目を構成する線材の幅寸法を大きくしなくても防水シートから離間した状態を維持することができ、ラス材の重量を低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に係る外壁通気工法用ラスによれば、防水シートとラス材との接合部の面外剛性は確かに高まるが、当該接合部の剛性向上に偏重するあまり、ラス重量の増大化を懸念した結果、ラス材自体の剛性が蔑ろにされ、補剛バランスを欠いている。
すなわち、この外壁通気工法用ラスは、網目状に形成した接合部32(同文献1の
図3参照)の範囲内のすべての線材を、他の湾曲部31の線材と比し、厚みを2.5倍程度(同
図4参照)で実施している。これは過剰な補剛設計といえラス重量が著しく増大し、そのため接合部32以外の部位は一切補剛されていない。苦肉の策として、単に湾曲状に形成してアーチ効果を期待しているに過ぎない。
【0008】
しかし、ラス材(エキスパンドメタル)を何ら補強することなく湾曲状に形成したところで、アーチ効果による補剛は到底十分とはいえない。これは本出願人による解析結果からも明らかである。
すなわち、アーチ形状に形成した湾曲部31の耐力(断面係数)はさほど大きくはならず、よって、モルタル塗り作業時の押圧力に対して抵抗できる剛性を備えているとはいえず、接合部32の高い剛性も相まって当該湾曲部31が押し潰される等、変形する虞があった。
そのため、安定したモルタル塗り作業が行えず、施工性悪化、ひいてはモルタル外壁の品質低下を招く虞があった。また、湾曲部31の剛性(形状保持)が十分とは云えないので、運搬時や取り扱い時に慎重を期し煩わしいという問題もあった。もとより、運搬時に嵩張るという問題もある。
【0009】
本発明は、上述した背景技術の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、線径(線材)・重量を従来品とほとんど変えることなく、波付け加工や線材の配置を最適化することでバランスよく面外剛性を高め、モルタル塗り作業の施工性を向上させ、ひいては高強度・高剛性・高品質のモルタル外壁を構築することができる外壁通気工法用ラスを提供することにある。
具体的には、縦線材に0.8mm程度の細径の線材を配置してアーチ形状に形成してもアーチ効果はほとんど得られないという本出願人による解析結果に基づき、線材や力骨の配置、形状に工夫を施してバランスよく面外剛性を高めた結果、胴縁の長スパン化、言い換えると補助胴縁の無用化を実現できる外壁通気工法用ラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る外壁通気工法用ラスは、力骨と当該力骨よりも細径の線材とで構成したラスに防水紙を裏打ちしてなる外壁通気工法用ラスであって、
前記力骨は、縦方向に間隔をあけて横向き方向へ配置された横力骨と、横方向に間隔をあけて縦向き方向へ配置された縦力骨とからなること、
前記横力骨は前記防水紙と接合されていること、
前記縦力骨は前記横力骨同士の間に浮き上がり部を形成して当該横力骨と接合され、防水紙とは接合されていないこと、
前記線材は、
縦方向に間隔をあけて横向き方向へ配置された横線材のみで構成され、前記横力骨同士の間に配置されて前記縦力骨と接合され、横力骨とは接合されていないこと、をそれぞれ特徴とする。
【0011】
請求項
2に記載した発明は、請求項
1に記載した外壁通気工法用ラスにおいて、前記
浮き上がり部は、中間部が平坦なほぼ台形状、又は山形状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項
3に記載した発明は、請求項1
又は2に記載した外壁通気工法用ラスにおいて、前記浮き上がり部
の高低差は7〜8mmであることを特徴とする。
【0014】
請求項
4に記載した発明は、請求項1〜
3のいずれか一に記載した外壁通気工法用ラスにおいて、
水平材を構成する横力骨と横線材は、全体として、15mmのピッチで配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項
5に記載した発明は、請求項1〜
4のいずれか一に記載した外壁通気工法用ラスにおいて、前記横力骨は、30〜80
mmのピッチで配設され、前記縦力骨は、30〜100
mmのピッチで配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る外壁通気工法用ラスによれば、以下の効果を奏する。
(1)縦力骨は、前記横力骨同士の間に浮き上がり部を形成して当該横力骨と接合され、防水紙とは接合されていない構成である。よって、モルタル塗り作業時に発生する押圧力(面外荷重)の向きを勘案すると、横力骨が縦力骨の浮き上がり部をしっかり支持する土台となり、前記押圧力を終局的には横力骨が確実に負担するので、面外剛性を向上させる
ことができる。
具体的には、ラス面に掛かる押圧力は主として横線材が負担し、当該横線材から縦力骨の浮き上がり部を経由し、終局的には当該浮き上がり部の土台となる横力骨(特には間柱にステープル等で留め付けた横力骨)へと伝わり、当該横力骨が当該押圧力を効果的に吸収するので、外壁通気工法用ラスの面外剛性を確実に向上させることができる。
(2)従来
品の代表例として、
図9に示すラスと比較する。
本実施例に係る外壁通気工法用ラスは、この従来品と比し、単位面積当たりの縦横に配置する力骨の本数は増えるものの、縦線材が一切ないので、総重量はほとんど変わらない。それでいて、単位面積当たりの縦力骨の浮き上がり部の数量が2倍以上に増え、且つ、横力骨が当該浮き上がり部の土台となる構成なので、縦力骨の浮き上がり部によるアーチ効果が飛躍的に向上する。加えて、単位面積当たりの横力骨及び縦力骨の本数も増加するので相乗効果により更なる面外剛性の上昇が期待できる。
(3)すなわち、本発明にかかる外壁通気工法用ラスは、縦方向については、単位面積当たりの縦力骨の本数が増え、しかも、浮き上がり部の数量も2倍以上になるので、従来品よりも至極
合理的に面外剛性を向上させることができる。横方向については、単位面積当たりの横力骨1の本数が増え、しかも、前記縦力骨2の浮き上がり部2aの土台となる構成で実施するので、従来品ラスよりも至極合理的に面外剛性を向上させることができる。よって、本発明にかかる外壁通気工法用ラスは、縦横方向に実に合理的にバランスよく面外剛性向上させることができる。
(4)加えて、本発明にかかる外壁通気工法用ラスは、
図9に示す従来品ラスとは異なり、縦力骨に対して横力骨を胴縁側に配設した構成で実施しているので、前記面外荷重に対する縦力骨の回転による剛性の低下を防ぐことができる。本出願人による実験及び解析によると、
図9に示す従来品ラスのような横力骨に対して縦力骨を胴縁側に配設した構成と比し、スパン453mm、中央面外変位3〜4mm程度のスケールで面外剛性が約2割増になることが分かっている。
(5)まとめると、本発明に係る外壁通気工法用ラスによれば、線径(線材)・重量を従来品とほとんど変えることなく、波付け加工(浮き上がり部の形成)や線材の配置を最適化することで、モルタル層を補強、補剛する作用に縦力骨と横力骨の全長が有効に寄与してバランスよく面外剛性を高め、モルタル塗り作業の施工性を向上させ、ひいては、高強度・高剛性・高品質のモルタル外壁を構築することができる。
具体的には、縦線材に0.8mm程度の細径の線材を配置してアーチ形状に形成してもアーチ効果はほとんど得られないという本出願人による解析結果に基づき、線材や力骨の配置、形状に工夫を施してバランスよく面外剛性を高めた結果、胴縁の長スパン化、言い換えると補助胴縁の無用化を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る外壁通気工法用ラスの実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明に係る外壁通気工法用ラスは、
図1と
図2に示したように、力骨1、2と当該力骨1、2よりも細径の線材3とで構成したラス4に防水紙5を裏打ちしてなる外壁通気工法用ラス10であり、以下の構成を特徴としている。
前記力骨1、2は、縦方向に間隔をあけて横向き方向へ配置された横力骨1と、横方向に間隔をあけて縦向き方向へ配置された縦力骨2とからなる。
前記横力骨1は前記防水紙5と接合されている。
前記縦力骨2は前記横力骨1、1同士の間に浮き上がり部2aを形成して当該横力骨1、1と接合され、防水紙5とは接合されていない。
前記線材3は、
縦方向に間隔をあけて横向き方向へ配置された横線材3のみで構成され、前記横力骨1同士の間に配置されて前記縦力骨2と接合され、横力骨1とは接合されていない。
【0020】
要するに、この外壁通気工法用ラス10は、下記するような配置、形状等に工夫を施した横力骨1と縦力骨2とを接合することで当該ラス10の主骨格を形成し、横力骨1側には防水紙5を、縦力骨2側には線材3を接合した構成で実施されている。
以下、外壁通気工法用ラス10の構成要素を具体的に説明する。
【0021】
本実施例にかかる横力骨1は、線径(φ)1.6mm程度で、縦方向(図中のX方向)に75.5mm程度のピッチ(尺モジュール又はメーターモジュールに対応)でほぼ平行に配置されている。
横力骨1のピッチはこれに限定されず、50mm程度のピッチで実施してもよい。本出願人の実験及び解析によると、30〜80mm程度のピッチであれば良好な成果が得られることが分かっている。
なお、横力骨1の線径は1.6mmに限定されないが、これを超えると現場での裁断作業に支障を来たすほか、外壁通気工法用ラス10の重量が増大するので1.6mm程度が好適とされる。
【0022】
一方、本実施例にかかる縦力骨2は、線径(φ)1.6mm程度で、横方向(図中のY方向)に45.3mm程度のピッチ(尺モジュール又はメーターモジュールに対応)で平行に配置されている。
縦力骨2のピッチもこれに限定されない。本出願人の実験及び解析によると、30〜100mm程度のピッチであれば良好な成果が得られることが分かっている。
なお、縦力骨2の線径は、前記横力骨1と同様の理由から1.6mm程度が好適とされる。
【0023】
前記縦力骨2はさらに、前記ピッチで配置された横力骨1、1同士の間に浮き上がり部2aを連続的に形成し、当該横力骨1、1と溶接等の接合手段で接合されている。この実施例にかかる浮き上がり部2aは、中間部がほぼ平坦な台形状に形成されている。
この台形(浮き上がり部2a)の寸法は、一例として、上面(
図2Bの符号U参照)が45.3mm程度、下面(符号L参照)が75.5mm程度(=横力骨1、1のピッチ)、高さ(符号H参照)が、縦力骨2の線径を含む7〜8mm程度で実施されている。高さを7〜8mm程度で実施する意義は、主として良好なモルタル塗り厚を確保するためである。
また、前記台形(浮き上がり部2a)の傾斜部分(V字凹部)は、前記平坦部の両端縁から屈曲(又は湾曲)して形成され、当該傾斜部分の下端部と横力骨1(の天頂部)との当接部が溶接等の接合手段で接合されている。
なお、前記台形の形態は、横力骨1のピッチに応じて適宜設計変更される。
【0024】
すなわち、この外壁通気工法用ラス10は、等間隔で配置した複数の同形同大の横力骨1と、やはり等間隔で配置した複数の同形同大の縦力骨2とがほぼ直角格子状に配置され、各交点、即ち当該縦力骨2に連続的に形成した浮き上がり部2aの傾斜部分の各下端部と各横力骨1とを接合して主骨格を形成してなる。ちなみに本実施例では、剛性が高いスポット溶接で接合されている。
【0025】
前記横力骨1に接合する防水紙5は、汎用品(ターポリン紙、透湿防水紙等)が採用され、図示は省略するが、例えばホッチキス又はこれに類似の工具が打ち出す止め針により、若しくは接着剤などにより、横力骨1に留め付けて一体化した構成で実施されている。なお、防水紙5と縦力骨2とは接合されていない(
図2B参照)。
前記防水紙5は、
図1Aに示したように、ラス4の中心から左斜め上方へ若干ずれた位置関係で貼り合わせた構成で実施されている。もっとも、防水紙5は、ラス4の中心からいずれの方向へずらした配置でもよい。
【0026】
次に、本実施例1にかかる線材3は、縦方向(図中のX方向)に間隔をあけて横向き方向へ配置された横線材3のみで構成され、前記横力骨2、2同士の間にバランスよく配置され、前記縦力骨2との交点をスポット溶接等で接合して実施している。
具体的に、前記線材3は、線径(φ)0.8mm程度で実施され、縦方向に等間隔(75.5mm程度)で配置された横力骨1、1同士の間に、その約1/5に相当する15.1mm程度のピッチで平行に4本ずつ配置されている。当該4本の配置は、
図2Bに示したように、前記浮き上がり部2aの平坦部の両端縁部(両脇)に2本、その間にバランスよく2本設けられている。すなわち、外壁通気工法用ラス10の水平材を構成する横力骨2と横線材3は、全体として、4本置きに横力骨2を配置した15.1mm程度のピッチで規則的に配置されている。この配置は、面外剛性を高める上で合理的かつ効果的な配置といえる。
なお、前記横線材3のピッチはこれに限定されず、尺モジュール、メーターモジュールに対応する間隔であればよいが、ラス4が形成する網目(格子目)の大きさ(密度)、ひいてはモルタル塗り作業の施工性を考慮すると15.1mm程度が好ましい。また、線径は0.8mm程度に限定されるものではなく、0.6〜1.0mm程度の細い線材であれば、良好な成果が得られることが分かっている。
【0027】
要するに、本実施例にかかる外壁通気工法用ラス10は、
図1Aに示したように、15.1mm程度のピッチで規則的に配置された水平材(横力骨1および横線材3)を水平横向き方向とした天地の姿勢で、側面方向からみて横向き台形状(
図1B参照)の浮き上がり部2aを有する鉛直方向の縦力骨2が水平方向に45.3mm程度のピッチで配置され、各交点がスポット溶接により接合されて成るラス4に、防水紙5が左斜め上方へ若干ずれた位置関係で当該ラス4を構成する横力骨1とホッチキス等で貼り合わせて一体化した構成で実施されている。
【0028】
上記構成の外壁通気工法用ラス10によれば、以下の効果を奏する。
(1)前記縦力骨2は、前記横力骨1、1同士の間に浮き上がり部2aを形成して当該横力骨1、1と接合され、防水紙5とは接合されていない。
よって、この構成によれば、面外荷重、即ち、モルタル塗り作業時に発生する押圧力(応力)の向きを勘案すると、横力骨1が縦力骨2の浮き上がり部2aをしっかり支持する土台(基礎)となり、前記面外荷重を終局的には横力骨1が確実に負担するので、面外剛
性を向上させることができる。
具体的に、ラス4面に掛かる前記押圧力(面外荷重)は主として横線材3が負担し、当該横線材3から縦力骨2の浮き上がり部2aを経由し、終局的には当該浮き上がり部2aの土台となる横力骨1(特には間柱にステープル等で留め付けた横力骨1)へと伝わり、当該横力骨1が当該押圧力を効果的に吸収するので、外壁通気工法用ラス10の面外剛性を確実に向上させることができる。
(2)従来
品の代表例として、
図9に示すラスと比較する。ちなみに網目(格子目)の大きさは、15.1×15.1mm程度である。
本実施例に係る外壁通気工法用ラス10は、この従来品と比し、単位面積当たりの縦横に配置する力骨1、2の本数は増えるものの、縦線材が一切ないので、総重量はほとんど変わらない。
それでいて、単位面積当たりの縦力骨2の浮き上がり部2aの数量が2倍に増え、且つ、横力骨1が当該浮き上がり部2aの土台となる構成なので、縦力骨2の浮き上がり部2aによるによるアーチ効果が飛躍的に向上する。加えて、単位面積当たりの横力骨1及び縦力骨2の本数も増加するので相乗効果により更なる面外剛性の上昇が期待できる。本出願人による実験及び解析によると、力骨よりも細い縦線材のアーチ効果はほとんど期待できないことが分かっているので、当該アーチ効果が期待できず、重量が嵩む縦線材を省略化したことにより、至極合理的にラスの面外剛性を高めることができる。
これに対し、
図9に示す従来品ラスは、横力骨1’が縦力骨2’の浮き上がり部2a’の上側に添えるように設けられているので、前記面外荷重に対して浮き上がり部2a’の土台とはなりえず、アーチ効果はほとんど期待できない。よって、面外剛性を高める意味では、本発明にかかる外壁通気工法用ラス10と大きな隔たりがある。
(3)すなわち、本発明にかかる外壁通気工法用ラス10は、縦方向については、単位面積当たりの縦力骨2の本数が増え、しかも、浮き上がり部2aの数量も2倍になるので、従来品よりも至極
合理的に面外剛性を向上させることができる。横方向については、単位面積当たりの横力骨1の本数が増え、しかも、前記縦力骨2の浮き上がり部2aの土台となる構成で実施するので、従来品ラスよりも至極合理的に面外剛性を向上させることができる。よって、本発明にかかる外壁通気工法用ラス10は、縦横方向に実に合理的にバランスよく面外剛性向上させることができる。
(4)加えて、本発明にかかる外壁通気工法用ラス10は、
図9に示す従来品ラスとは異なり、縦力骨2に対して横力骨1を胴縁側に配設した構成で実施しているので、前記面外荷重に対する縦力骨2の回転による剛性の低下を防ぐことができる。本出願人による実験及び解析によると、
図9に示す従来品ラスのような横力骨に対して縦力骨を胴縁側に配設した構成と比し、スパン453mm、中央面外変位3?4mm程度のスケールで面外剛性が約2割増になることが分かっている。
【0029】
上記構成の外壁通気工法用ラス10を用いて構築する外壁通気構造は、大要、下記する工程により実施される。
先ず、建築物の躯体を構成する柱、間柱を建て、壁用断熱材を施工する手順等で構築を進める。そして、前記柱及び間柱の外側面へ下地材を取り付ける。
次に、間柱の配置間隔(455mm程度)と対応するように、通気胴縁11(
図1B参照)を下地材(図示省略)に留め付ける。前記外壁通気工法用ラス10は、上述したように面外剛性が大きく、胴縁の長スパン化を十分見込めるので、補助胴縁12は用いない。
次に、外壁通気工法用ラス10を、その横力骨2が水平横向き方向となる天地の姿勢を保って、縦力骨2が通気胴縁
11の中心線(罫書き)に沿うよう当接させて位置合わせを行い、縦力骨2と横力骨1との交点部分を、ステープル等の固定
具により通気胴縁
11に順次固定して当該ラス10を取り付け張設する。前記固定
具による固定作業は、構造設計に応じ、前記交点部分のすべてに行ってもよいし、1つ乃至複数おきに行ってもよい。
この張設作業は、後のモルタル塗着作業に必要な全範囲にわたり、特にラス4の断点(隙間)を生じさせないように、隣接する外壁通気工法用ラス10相互間の継ぎ足し処理を
順次に繰り返して行う。
ラス10の張設作業を終了した後は、通気胴縁11に張設した前記ラス10の表面側へ施工性よくモルタル塗着作業を行い、高強度・高剛性・高品質のモルタル外壁を構築することができる。モルタル層厚(15mm程度)の中央部には縦力骨2の浮き上がり部2aが配置されることとなる。そうして、防水紙5で背面を遮断されたラス10と下地材との隙間が通気層として形成される。
【実施例2】
【0030】
図3は、本発明に係る外壁通気工法用ラスの異なる実施例を示している。上記実施例1と同一の構成要素は同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0031】
この実施例2に係る外壁通気工法用ラスは、上記実施例1と比し、横力骨1が60.4mm程度のピッチで配設され、縦力骨2が68mm程度のピッチで配設され、横力骨1、1の間に横線材3が3本ずつ配設されていることが主に相違する。一方、縦線材がないこと、水平材(横力骨1及び横線材3)が15.1mmピッチで配設されていること等は同じである。
【0032】
要するに、この外壁通気工法用ラスもまた、上記実施例1と同様に、以下の構成を特徴とする。
前記力骨1、2は、縦方向に間隔をあけて横向き方向へ配置された横力骨1と、横方向に間隔をあけて縦向き方向へ配置された縦力骨2とからなる。
前記横力骨1は前記防水紙5と接合されている。
前記縦力骨2は前記横力骨1、1同士の間に浮き上がり部2aを形成して当該横力骨1、1と接合され、防水紙5とは接合されていない。
前記線材3は、縦力骨2と接合され、横力骨1とは接合されていない。
【0033】
本実施例にかかる横力骨1は、60.4mm程度のピッチで実施しているが、上述したように、30〜80mm程度のピッチの範囲内に収まっているので、良好な成果が得られることに変わりはない。
一方、本実施例にかかる縦力骨2は、68mm程度のピッチで実施しているが、上述したように、30〜100mm程度のピッチの範囲内に収まっているので、良好な成果が得られることに変わりはない。
【0034】
前記縦力骨2に形成した浮き上がり部2a(中央部が平坦なほぼ台形状)の寸法は、上面が30.2mm程度、下面が60.4mm程度(=横力骨1、1のピッチ)、高さが、縦力骨2の線径を含む7〜8mm程度で実施されている。
また、前記台形(浮き上がり部2a)の傾斜部分(V字凹部)は、前記平坦部の両端縁から屈曲(又は湾曲)して形成され、当該傾斜部分の下端部と横力骨1(の天頂部)との当接部が溶接等の接合手段で接合されている。
【0035】
要するに、この実施例2にかかる外壁通気工法用ラスも、上記実施例1と同様に、15.1mm程度のピッチで規則的に配置された水平材(横力骨1および横線材3)を水平横向き方向とした天地の姿勢で、側面方向からみて横向き台形状の浮き上がり部2aを有する鉛直方向の縦力骨2が水平方向に等間隔に配置され、各交点がスポット溶接により接合されて成るラス4に、防水紙5が左斜め上方へ若干ずれた位置関係で当該ラス4を構成する横力骨1とホッチキス等で貼り合わせて一体化した構成で実施されている。
【0036】
よって、この実施例2にかかる外壁通気工法用ラスによれば、上記実施例1にかかるラス10と同様に、前記縦力骨2は、前記横力骨1、1同士の間に浮き上がり部2aを形成して当該横力骨1、1と接合され、防水紙5とは接合されていないので、面外剛性を確実に向上させることができる(詳しくは、前記段落[0028]の(1)参照)。
また、
図9に示す従来品ラスと比し、単位面積当たりの縦横に配置する力骨1、2の本数は増えるものの、縦線材が一切ないので、総重量はほとんど変わらない。それでいて、単位面積当たりの縦力骨2の浮き上がり部2aの数量が3倍に増え、且つ、横力骨1が当該浮き上がり部2aの土台となる構成なので、縦力骨2の浮き上がり部2aによるアーチ効果が飛躍的に向上する等、至極合理的にラスの面外剛性を高めることができる(詳しくは、前記段落[0028]の(2)、(3)参照)。
さらに、縦力骨2に対して横力骨1を胴縁側に配設した構成で実施しているので、前記面外荷重に対する縦力骨2の回転による剛性の低下を防ぐこともできる(詳しくは、前記段落[0028]の(4)参照)。
したがって、この実施例2にかかる外壁通気工法用ラスも、面外剛性が大きく、胴縁の長スパン化を十分見込めるので、補助胴縁12を用いることなく、施工性よくモルタル塗着作業を行うことができ、高強度・高剛性・高品質のモルタル外壁を構築することができる。
【実施例3】
【0037】
図4は、本発明に係る外壁通気工法用ラスの異なる実施例を示している。上記実施例1と同一の構成要素は同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0038】
この実施例3に係る外壁通気工法用ラスは、上記実施例1と比し、横力骨1が30.2mm程度のピッチで配設され、横力骨1、1の間に横線材3が1本ずつ配設されていること、縦力骨2の浮き上がり部2aが山形状に形成していることが主に相違する。一方、縦線材がないこと、縦力骨2のピッチ、及び水平材(横力骨1及び横線材3)が15.1mmピッチで配設されていること等は同じである。
【0039】
要するに、この外壁通気工法用ラスもまた、上記実施例1と同様に、以下の構成を特徴とする。
前記力骨1、2は、縦方向に間隔をあけて横向き方向へ配置された横力骨1と、横方向に間隔をあけて縦向き方向へ配置された縦力骨2とからなる。
前記横力骨1は前記防水紙5と接合されている。
前記縦力骨2は前記横力骨1、1同士の間に浮き上がり部2aを形成して当該横力骨1、1と接合され、防水紙5とは接合されていない。
前記線材3は、縦力骨2と接合され、横力骨1とは接合されていない。
【0040】
本実施例にかかる横力骨1は、30.2mm程度のピッチで実施しているが、上述したように、30〜80mm程度のピッチの範囲内に収まっているので、良好な成果が得られることに変わりはない。
一方、本実施例にかかる縦力骨2は、上記実施例1と同様、45.3mm程度のピッチで実施しており、上述したように、30〜100mm程度のピッチの範囲内に収まっているので、良好な成果が得られることに変わりはない。
【0041】
前記縦力骨2に形成した山形状の浮き上がり部2aは、底面が30.3(=横力骨1、1のピッチ)で高さが、縦力骨2の線径を含む7〜8mm程度のほぼ二等辺三角形状で実施されている。
また、前記二等辺三角形状(浮き上がり部2a)の傾斜部分(V字凹部)の下端部と横力骨1(の天頂部)との当接部が溶接等の接合手段で接合されている。
【0042】
要するに、この実施例3にかかる外壁通気工法用ラスも、上記実施例1と同様に、15.1mm程度のピッチで規則的に配置された水平材(横力骨1および横線材3)を水平横向き方向とした天地の姿勢で、側面方向からみて横向き山形状の浮き上がり部2aを有する鉛直方向の縦力骨2が水平方向に等間隔に配置され、各交点がスポット溶接により接合されて成るラス4に、防水紙5が左斜め上方へ若干ずれた位置関係で当該ラス4を構成する横力骨1とホッチキス等で貼り合わせて一体化した構成で実施されている。
【0043】
よって、この実施例3にかかる外壁通気工法用ラスによれば、上記実施例1にかかるラス10と同様に、前記縦力骨2は、前記横力骨1、1同士の間に浮き上がり部2aを形成して当該横力骨1、1と接合され、防水紙5とは接合されていないので、面外剛性を確実に向上させることができる(詳しくは、前記段落[0028]の(1)参照)。
また、
図9に示す従来品ラスと比し、単位面積当たりの縦横に配置する力骨1、2の本数は増えるものの、縦線材が一切なく、横線材3の本数が大幅に低減するので、総重量はさほど増えない。それでいて、単位面積当たりの縦力骨2の浮き上がり部2aの数量が5倍に増え、且つ、横力骨1が当該浮き上がり部2aの土台となる構成なので、縦力骨2の浮き上がり部2aによるアーチ効果が飛躍的に向上する等、至極合理的にラスの面外剛性を高めることができる(詳しくは、前記段落[0028]の(2)、(3)参照)。
さらに、縦力骨2に対して横力骨1を胴縁側に配設した構成で実施しているので、前記面外荷重に対する縦力骨2の回転による剛性の低下を防ぐこともできる(詳しくは、前記段落[0028]の(4)参照)。
したがって、この実施例3にかかる外壁通気工法用ラスも、面外剛性が大きく、胴縁の長スパン化を十分見込めるので、補助胴縁12を用いることなく、施工性よくモルタル塗着作業を行うことができ、高強度・高剛性・高品質のモルタル外壁を構築することができる。
<参考例>
【実施例4】
【0044】
図5は、本発明に係る外壁通気工法用ラスの
参考例を示している。上記実施例1と同一の構成要素は同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0045】
この
参考例に係る外壁通気工法用ラスは、上記実施例1と比し、横線材3の代わりに、力骨1、2よりも細径の線材からなるエキスパンドメタル6を用いていることが主に相違する。一方、縦線材がないこと、横力骨1のピッチ、縦力骨2のピッチ及び浮き上がり部2aの形状等は同じである。
【0046】
要するに、この外壁通気工法用ラスもまた、上記実施例1と同様に、以下の構成を特徴とする。
前記力骨1、2は、縦方向に間隔をあけて横向き方向へ配置された横力骨1と、横方向に間隔をあけて縦向き方向へ配置された縦力骨2とからなる。
前記横力骨1は前記防水紙5と接合されている。
前記縦力骨2は前記横力骨1、1同士の間に浮き上がり部2aを形成して当該横力骨1、1と接合され、防水紙5とは接合されていない。
前記線材(エキスパンドメタル6)は、縦力骨2と交点部をスポット溶接で接合され、横力骨1とは接合されていない。
【0047】
よって、この
参考例にかかる外壁通気工法用ラスによれば、上記実施例1にかかるラス10と同様に、前記縦力骨2は、前記横力骨1、1同士の間に浮き上がり部2aを形成して当該横力骨1、1と接合され、防水紙5とは接合されていないので、面外剛性を確実に向上させることができる(詳しくは、前記段落[0028]の(1)参照)。
また、
図9に示す従来品ラスと比し、単位面積当たりの縦横に配置する力骨1、2の本数が増え、エキスパンドメタルラス6自体の重量は増えるものの、縦線材及び横線材3が一切ないので、総重量はさほど増えない。それでいて、単位面積当たりの縦力骨2の浮き上がり部2aの数量が2倍に増え、且つ、横力骨1が当該浮き上がり部2aの土台となる構成なので、縦力骨2の浮き上がり部2によるアーチ効果が飛躍的に向上する等、至極合
理的にラスの面外剛性を高めることができる(詳しくは、前記段落[0028]の(2)、(3)参照)。
さらに、縦力骨2に対して横力骨1を胴縁側に配設した構成で実施しているので、前記面外荷重に対する縦力骨2の回転による剛性の低下を防ぐこともできる(詳しくは、前記段落[0028]の(4)参照)。
したがって、この
参考例にかかる外壁通気工法用ラスも、面外剛性が大きく、胴縁の長スパン化を十分見込めるので、補助胴縁12を用いることなく、施工性よくモルタル塗着作業を行うことができ、高強度・高剛性・高品質のモルタル外壁を構築することができる。
なお、前記エキスパンドメタルラス6の代わりにワーヤーメッシュを用いても同様に実施でき、同様の作用効果を発揮することができる。
【0048】
上記実施例1〜
3に説明した本発明に係る外壁通気工法用ラスの面外剛性にかかる効果(向上)を確認するべく、上記実施例1に係る外壁通気工法用ラス10を例にとって以下に説明する。
【0049】
<上記実施例1にかかる外壁通気工法用ラス10が有する面外剛性の効果の確認>
本出願人は、上記実施例1にかかる外壁通気工法用ラス10が有する面外剛性について、解析ソフトを用いて解析した。また、従来品などの他のラスの面外剛性についても解析し、その違いを検討した。
(解析概要)
・使用する解析ソフト
FEMソルバー:Marc2012
プリポストプロセッサー:Mentat2012
・解析の種類
幾何学的非線形を考慮する大変形問題とした3次元応力解析
【0050】
(解析モデル)
解析モデル一覧を
図10に示す。
また、解析モデルにおける基本条件を以下に示す。
・モデル化の範囲は、755mm×1359mmとする。
・ラスの波付けによる高さは、線径を含め7mmとする。
・胴縁の間隔は453mmとし、水平方向のステープル間隔も同様とする。
・横せん断力を考慮しない3次元中実断面梁要素(要素番号52)を用いて、線材をモデル化する。
・梁同士の交差する節点のうち、実際に溶接されている箇所は剛体リンク(RBE2)で結合する。
(
図10に係る解析モデルの補足説明)
要するに、各解析モデルに係るラス(
図6〜
図9)の面外剛性を適正に評価するべく、使用する力骨1、2の線径、線材3の線径、配置ピッチ、及びステープルの留め付け部位は可能な限り一致させた。
なお、本発明に係る外壁通気工法用ラス10に係るモデルNo.4の
図6(その1)とNo.5の
図6(その2)との違いは、ステープルの留め付け部位の数量に基づく。前者は上下の2箇所留めの場合、後者は上中下の3箇所留めの場合である。
【0051】
(材料特性)
材料は、スチールの弾塑性体と仮定し、降伏点を235N/mm
2、ヤング率(E)を205000N/mm
2、ポアソン比を0.3、降伏後の二次剛性を2050N/mm
2(E/100)とする。
(境界条件)
境界条件の解析モデルの図は、出願図面上、クリアに表れないので割愛する。
・拘束条件:ステープルの留め付け部位(図中の○印参照)は、ピン支持(変位固定・回転自由)とする。通気胴縁上にあり、ステープルを留めない部位はZ方向(面外方向)固定とする。
・荷重条件:スパン(前記1359mm)を均等に3スパン(453mmずつ)に分け、その内の中央スパン部(453mm)の中心鉛直線上に面外方向全体荷重を与える。波付けによりラスに高低差がある場合は、最も背の高い線上にのみ荷重をかける。荷重の大きさは最大時で186N/mm
2とする。これは9mmのモルタル相当の重量である。
【0052】
(面外剛性評価方法および解析結果)
各ラスの面外剛性は、前記中央スパン部(453mm)の中心鉛直線、すなわち、ラス全体の中心に位置する鉛直線の中央平均面外変位(面外変位平均値)により評価する。
図11は、各解析モデルの中央平均面外変位(mm)の結果を示す。
図12は、各解析モデルの荷重−変位の関係をプロットしたグラフである。グラフ中の符号1〜5は、
図10と
図11のモデルNo.に対応している。
【0053】
(考察)
図9モデルと
図8モデルのラスの解析結果を対比検討すると、
図11、
図12から明らかなように、
図8モデルの方が面外剛性が高いことが分かる。これは、
図8モデルの方が、力骨の本数が多い(横力骨1が1本分、縦力骨2が2本分)ことによるものと判断される。また、縦線材3は、本数が多くても面外剛性の向上にほとんど寄与しないと判断される。
図8モデルと
図7モデルのラスの解析結果を対比検討すると、
図11、
図12から明らかなように、
図7モデルの方が面外剛性が高いことが分かる。これは、力骨1、2及び横線材3の配置、数量が同一なので、縦力骨2の波付け(浮き上がり部)によるアーチ効果が発揮されたことによるものと判断される。なお、
図7モデルのラスは、本出願人がこの解析のために新規に想定したものであり、市販品等ではない。
図7モデルと
図6モデル(その1)のラスの解析結果を対比検討すると、
図11、
図12から明らかなように、
図6モデル(その1)の方が面外剛性が高いことが分かる。これは、力骨1、2及び横線材3の配置、数量が同一なので、縦力骨2の波付け(浮き上がり部)の数量が2倍に増えた分だけ大きいアーチ効果が発揮されたことによるものと判断される。
図6モデル(その1)と(その2)のラスの解析結果を対比検討すると、
図11、
図12から明らかなように、
図6モデル(その2)の方が面外剛性が高いことが分かる。これは、ステープルの留め付け数量が増えると面外剛性が高くなると判断される。
【0054】
(まとめ)
本発明に係る
図6モデルのラス(本発明に係る外壁通気工法用ラス10)は、他のラス(
図7〜
図9参照)と比し、単位面積当たりの重量(g/m
2)をほとんど変えることなく(
図10参照)、主として縦力骨2に形成した浮き上がり部2aのアーチ効果が十分に発揮されることにより、至極合理的に面外剛性を向上させることができたと確信する。
【0055】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、縦力骨2に形成する浮き上がり部2aの形状は、中間部が平坦なほぼ台形状、又は山形状に限定されず、円弧形状でも同様に実施でき、同様の作用効果を発揮することができる。