特許第6576075号(P6576075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6576075レーザーラベルおよびそれを用いたレーザーマーキング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576075
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】レーザーラベルおよびそれを用いたレーザーマーキング方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/26 20060101AFI20190909BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B41M5/26
   G09F3/02 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-72509(P2015-72509)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-190451(P2016-190451A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】片岡 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】塩見 恭子
(72)【発明者】
【氏名】京田 智
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−313876(JP,A)
【文献】 特開2011−126142(JP,A)
【文献】 特開2006−175720(JP,A)
【文献】 特開平10−315621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00 − 5/52
B32B 27/00 − 27/42
B23K 26/00 − 26/70
G09F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と、中間層と、発色層とがこの順に積層し、
前記中間層が、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体組成物であり、厚みが5μm以上80μm以下であり、
前記発色層が、(メタ)アクリル系共重合体と、発色層100質量%に対し0.2〜4.0質量%の発色剤を含む
レーザーラベル。
【請求項2】
前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体がアクリル酸である請求項1に記載のレーザーラベル。
【請求項3】
前記中間層が炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系エステル単量体を重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体を含む請求項1または請求項2に記載のレーザーラベル。
【請求項4】
前記中間層が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量%に対し、共重合体成分として6質量%以上14質量%以下のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を用いた(メタ)アクリル系共重合体を含む請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザーラベル。
【請求項5】
前記発色剤が、銅化合物、モリブデン化合物、ビスマス化合物およびアンチモン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つである請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザーラベル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のレーザーラベルに、YAGレーザー、YVO4レーザーおよびFAYbレーザーのいずれかのレーザー光を照射するレーザーマーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーラベルおよびそれを用いたレーザーマーキング方法に関する。
【0002】
各種製品の識別のために製造番号や製造日などの各種情報をマーキングする方法として、レーザー光を照射する方法が知られている。このようにレーザー光の照射で各種情報がマーキングされるラベルは、レーザーラベルと呼ばれる。また、レーザー光の照射による各種情報のマーキングは、レーザーマーキングと呼ばれる。
レーザーマーキングは、たとえば発色剤を含むラベルにレーザー光を照射し発色させてマーキングする方法が知られている。
【0003】
レーザーマーキングは、たとえばインクジェット印刷で各種情報を表記する方法と比べ、マーキングの耐油性や耐水性が優れるため広く用いられている。また、レーザーマーキングは、清浄度が要求される電子部品、衣料品、食料品の製造現場でも使用が求められつつある。
【0004】
さらに、レーザーマーキングは、バーコードを用いて各種製品の製造現場で生産管理をするために広く使用されている。このようなバーコードは、一次元コードから、情報量が大きいQRコード(登録商標)などのニ次元コードへと置き換わりつつある。このような二次元コード(二次元バーコード)のレーザーマーキングには、一次元コードと比べて高い情報の読み取り精度、つまりレーザーマーキング部に高い識別性が求められる。
【0005】
レーザーマーキング部の識別性を高める技術は広く知られている。
従来のレーザーマーキングは、高エネルギーのレーザー光を照射すると、発色剤の発色時(レーザーマーキング時)に発塵する。この発塵は、レーザーラベルの外観不良の原因となり、たとえば二次元コードをマーキングした際、識別性不良の原因となる。
このような発塵を抑えるため、レーザーラベルの表面に保護層を設ける技術が知られている。
【0006】
たとえば、特許文献1には、顔料等と、赤外波長領域に吸収を有するレーザー発色性インキ皮膜層と、表面保護層とを有し、耐摩耗性が優れるレーザーラベルが記載されている。
具体的には、特許文献1の実施例1には、ポリエチレン樹脂を溶融押し出しした表面保護層と、発色剤を15質量%含みバインダー樹脂がウレタン樹脂であるレーザー発色性インキ皮膜層とを備えたレーザーラベルが記載されている。また、実施例18には、実施例1と同じ保護層と、発色剤を0.04質量%含みバインダー樹脂がアクリル樹脂であるレーザー発色性インキ皮膜層とを備えたレーザーラベルが記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のレーザーラベルは、レーザーマーキング時の発塵を十分抑制できず、レーザーマーキング部の識別性に改善の余地がある。
【0008】
一方、レーザーラベルの発色層が含む発色剤の量を少なくすると、発塵は抑えられる。しかしながら、このようなレーザーラベルは、レーザー光を照射した際に発色層の発色が不十分でコントラストが不足するため、レーザーマーキング部の識別性が悪くなる不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−55110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、上記の不具合を改善するため検討した結果、表面層と発色層との間に特定の組成の層を設けたレーザーラベルが、従来のレーザーラベルと比べ発色剤の量が少なくても優れたレーザーマーキング部の識別性を示すことを見出した。
【0011】
本発明の課題は、レーザーマーキング時の発塵を抑制し、レーザーマーキング部の識別性を改善したレーザーラベルとそれを用いたレーザーマーキング方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
[1]表面層と、中間層と、発色層とがこの順に積層し、
前記中間層が、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体組成物であり、
前記発色層が、発色層100質量%に対し0.2〜4.0質量%の発色剤を含む
レーザーラベルである。
【0013】
[2]前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体がアクリル酸である[1]に記載のレーザーラベルである。
【0014】
[3]前記中間層が炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系エステル単量体を重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体を含む[1]または[2]に記載のレーザーラベルである。
【0015】
[4]前記中間層が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量%に対し、共重合体成分として6質量%以上14質量%以下のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を用いた(メタ)アクリル系共重合体を含む[1]から[3]のいずれか一つに記載のレーザーラベルである。
【0016】
[5]前記発色剤が、銅化合物、モリブデン化合物、ビスマス化合物、チタン化合物、マイカおよびアンチモン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する[1]から[4]のいずれか一つに記載のレーザーラベルである。
【0017】
[6][1]から[5]のいずれか一つに記載のレーザーラベルに、YAGレーザー、YVO4レーザーおよびFAYbレーザーのいずれかのレーザー光を照射するレーザーマーキング方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レーザーマーキング時の発塵を抑制し、レーザーマーキング部の識別性を改善したレーザーラベルとそれを用いたレーザーマーキング方法とを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態におけるレーザーラベルの断面の一例を示す図である。
図2】本実施形態におけるレーザーラベルの断面の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において(メタ)アクリル系共重合体とは、アクリル系単量体およびメタクリル系単量体の少なくとも一方を重合して得られる共重合体を意味する。また、(メタ)アクリル系樹脂とは、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂の少なくとも一方を意味する。
【0021】
以下、本発明のレーザーラベルとそれを用いたレーザーマーキング方法とを図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
<レーザーラベル>
本発明のレーザーラベルの第一の態様は、図1に示すように、表面層11と、中間層12と、発色層13とがこの順に積層した構成である。また、中間層12は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体組成物を含む。さらに、発色層13は、発色層100質量%に対し0.2〜4.0質量%の発色剤を含む。
レーザーラベル1は、表面層11側からレーザー光を照射すると、レーザー光が表面層11と中間層12とを透過し、次いで発色層13が含む発色剤にレーザー光が作用し発色して、所望の情報がマーキングされる。
レーザーラベル1は、表面層11と発色層13との間に特定の組成の中間層12を有し、かつ発色層13が含む発色剤の量が特定の範囲であるため、発色剤の量が少なくても発色が十分であり、コントラストが大きく、レーザーマーキング部の識別性が極めて良好となる。さらに、発色層13が含む発色剤の量が少ないため、レーザーマーキング時の発塵が抑えられ、より識別性が向上する。
【0023】
まず表面層11について説明する。
表面層11は、樹脂組成物を含む。前記樹脂組成物は、レーザー光を十分透過できるものであれば特に制約はない。
表面層11に用いられる樹脂組成物が含む樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。さらに、表面層11に用いられる樹脂組成物が含む樹脂は、たとえば(メタ)アクリル系共重合体、ビニルブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンである。
これらの樹脂は単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
特に、レーザー光を十分透過でき、製膜性が優れ、レーザーラベルの取扱性が良好であり、耐候性が良好であるため、(メタ)アクリル系共重合体が好適である。
【0024】
表面層11の厚さは、たとえばレーザーラベルの貼り合わせ時に作業性が良好になるため、10μm以上200μm以下の範囲が好ましい。
【0025】
さらに表面層11は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、各種添加剤を含んでもよい。このような添加剤は、たとえば分散剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、タッキファイヤー、フィラー、着色剤である。
【0026】
次に中間層12について説明する。
中間層12は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体の組成物である。中間層12が光透過性の高い(メタ)アクリル系共重合体組成物であるため、レーザーラベル1に照射されたレーザー光は、中間層12を十分透過し、発色層13まで到達することでレーザーマーキング部の識別性が向上する。
【0027】
中間層12が含む前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体は、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を重合して得られる共重合体である。
前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体がアクリル酸であれば、レーザーマーキング時に生じる熱に対してより安定であり、たとえば熱分解による揮発成分の発生量を抑え、層間の剥離や膨れが抑制できるため好ましい。また、後述する発色層13が含む発色剤との作用が十分であり、レーザーマーキング時に発色が顕著となることでレーザーマーキング部の識別性がより向上するため好ましい。
【0028】
また、中間層12は、前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体以外に、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系エステル単量体を重合して得られる共重合体を含有すれば、レーザーマーキング時に発色が顕著となり、レーザーマーキング部の識別性がより向上するため好ましい。
このような炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系エステル単量体は、たとえばアクリル酸ブチルである。
【0029】
さらに、中間層12は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量%に対し、共重合体成分として6質量%以上のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を用いれば、中間層12の凝集力が向上するため、レーザーマーキング時の層間の膨れをより抑制でき、また、14質量%以下であれば、中間層12の粘着力が十分であり、レーザーマーキング時の剥がれ等の外観不良が起きず、レーザーマーキング部の識別性がより向上する。
【0030】
中間層12は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体以外の樹脂組成物をさらに含んでもよい。このような樹脂組成物が含む樹脂は、たとえば前記(メタ)アクリル系共重合体とは異なる(メタ)アクリル系共重合体、ビニルブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂である。
【0031】
中間層12は、架橋剤を含むことが好ましい。前記架橋剤は、たとえばイソシアネート系架橋剤、アルミキレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤である。
中間層12が架橋剤を含むため、前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体が架橋し、たとえばレーザーマーキング時の耐膨れ性が優れる。
【0032】
さらに中間層12は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、各種添加剤を含んでもよい。このような添加剤は、たとえば分散剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、タッキファイヤー、フィラー、着色剤である。
【0033】
中間層12の厚さは、たとえばレーザーラベルの貼り合わせ時に作業性が良好になるため、5μm以上80μm以下の範囲が好ましい。
【0034】
なお、表面層11および中間層12は、いずれもレーザーラベル1にレーザー光を照射しマーキングした後も除去されず、レーザーラベルの一部として使用される。
【0035】
次に発色層13について説明する。
発色層13は、樹脂組成物と発色剤とを含む。また、発色層13は、発色層100質量%に対し0.2〜4.0質量%の発色剤を含む。発色層13は、より好ましくは、発色層100質量%に対し0.3〜3.0質量%の発色剤を、さらに好ましくは0.4〜0.6質量%の発色剤を含む。
前記発色剤の量が発色層100質量%に対し0.2質量%以上であるため、発色剤が十分であり、レーザーマーキング時に適切に発色し、レーザーマーキング部の識別性が良好となる。また、4.0質量%以下であるため、レーザーマーキング時の発塵が抑えられ、発色剤由来の望ましくない着色を抑制でき、レーザーラベルの外観が良好となるとともにレーザーマーキング部の識別性が良好となる。
なお、発色剤とは、レーザーマーキング時にレーザー光の作用で発色剤自身の酸化反応や還元反応により発色(変色)する物質および/または発色層が含む発色剤の周囲の樹脂組成物や中間層が含む樹脂組成物が炭化し発色(変色)させる物質である。
【0036】
本発明者は、レーザーラベル1の発色層13が含む発色剤の量が、従来のレーザーラベルの発色層と比べて少なくても、中間層12が特定の組成であることで、レーザーマーキングでの識別性が改善できることを見出した。
本発明者は、従来のレーザーマーキングでは、レーザー光の照射により、発色層が含む発色剤が拡散するため、十分発色できないという不具合を改善した。
本発明者は、発色層13と特定の組成の中間層12とを積層した構成であるため、レーザー光の照射時における発色層13中の発色剤および/または変色した樹脂組成物の拡散を抑えることで、レーザーラベル1が備える発色層13中の発色剤の量がたとえば発色層100質量%に対し0.2質量%程度と少なくても、本発明のレーザーラベルが優れた識別性を示すと考えている。
中間層を設けずに本発明の中間層に用いた(メタ)アクリル系共重合体組成物を発色層の樹脂組成物に用いた態様、つまり中間層と発色層とが積層されない態様では、レーザーマーキング時に発色剤および/または変色した樹脂組成物の拡散が起こり、レーザーラベルの外観が不良となり、レーザーマーキング部が本発明のような優れた識別性を示さない。
【0037】
発色層13が含む樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。さらに、発色層13に用いられる樹脂組成物が含む樹脂は、たとえば(メタ)アクリル系共重合体、ビニルブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンである。
これらの樹脂は単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
特に、製膜性が優れ、レーザーラベルの取扱性や、耐候性が良好であるため、たとえば(メタ)アクリル系共重合体が好適である。
なお、発色層13が含む樹脂組成物は、表面層11が含む樹脂組成物と同一であってもよい。
【0038】
発色層13が含む発色剤は、たとえば銅化合物、モリブデン化合物、ビスマス化合物、鉄化合物、ニッケル化合物、クロム化合物、ジルコニウム化合物、ネオジム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、マイカおよびスズ化合物である。特にレーザーマーキング時の発色が優れ、層間での膨れが起きず、レーザーマーキング部の識別性がより良好となるため、銅化合物、モリブデン化合物、ビスマス化合物およびアンチモン化合物が好ましい。
これらの化合物は、単独でも、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
前記発色剤は、たとえば東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製 商品名トマテック42−920A(ネオジム-ビスマス化合物)、商品名42−903A(銅‐モリブデン化合物)が市販されている。
【0040】
さらに発色層13は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、各種添加剤を含んでもよい。このような添加剤は、たとえば分散剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、タッキファイヤー、フィラー、着色剤である。
【0041】
発色層13の厚さは、レーザーマーキング部の識別性がより良好となるため、5μm以上100μm以下が好ましい。
【0042】
本発明のレーザーラベルの第二の態様は、第一の態様にさらに粘着剤層を有する。
図2に示すように、レーザーラベル2は、表面層21と、中間層22と、発色層23と、粘着剤層24とがこの順に積層した構成である。
【0043】
粘着剤層24に用いる粘着剤は、樹脂板、金属板、ガラス板などの基材と十分に固着できれば特に制限はない。
粘着剤層24に用いる樹脂組成物は、たとえば(メタ)アクリル系粘着剤である。
なお、粘着剤層24に用いる樹脂組成物は、中間層22が含む(メタ)アクリル系共重合体組成物と同一であってもよい。
【0044】
粘着剤層24の厚さは、特に制約はないが、レーザーラベルの貼り合わせ時に作業性が良好になるため5μm以上100μm以下の範囲が好ましい。
【0045】
本発明のレーザーラベルは、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、表面層、中間層、発色層、粘着剤層以外の層を設けてもよい。たとえば、表面層上、つまり表面層のレーザー光を照射する面側や、表面層と中間層との間に、スクリーン印刷やグラビア印刷による印刷層を設けてもよい。
【0046】
本発明のレーザーラベルが備える各層の製法は、特に制約はなく、たとえばキャスト法、カレンダー法、押し出し法が挙げられる。厚さが均一となりやすいため、キャスト法が好ましい。
【0047】
<レーザーマーキング方法>
本発明の別の態様は、レーザーラベルを用いたレーザーマーキング方法である。
本発明のレーザーマーキング方法は、前述したレーザーラベルに、たとえばYAGレーザー、YVO4レーザーおよびFAYbレーザーのいずれかのレーザー光を照射するレーザーマーキング方法である。
【0048】
本発明のレーザーマーキング方法に用いるレーザー光の波長は、表面層及び中間層が透過する波長であり、FAYbレーザーでは波長1064nmを例示できる。
【0049】
従来のレーザーラベルの構成では、発色層が含む発色剤の量を少なくしレーザー光の出力を低いと発色剤が十分発色せず、レーザーマーキング部の識別性が低下する不具合があった。
本発明のレーザーラベルは、中間層12が特定の組成であるため発色効率が高く、発色剤の量が少なくかつレーザー光の出力が低くても、識別性が優れ、発塵が起きず、外観が良好となる。そのため、本発明のレーザーラベルは、高い情報の読み取り精度が求められる二次元コードのレーザーマーキング部の識別性が良好となる。
【0050】
以上のように、本発明のレーザーラベルおよびそれを用いたレーザーマーキング方法は、レーザーマーキング部の識別性が優れるため、たとえば電子部品、衣料品、食料品の製造現場でも好適に用いられる。さらに、レーザーマーキング時の発塵が抑えられるため、たとえば従来使用が難しかったクリーンルーム内や食料品の製造現場等の清浄度が要求される環境でもレーザーマーキングが行える。
【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0052】
レーザーマーキング後の外観、レーザーマーキング部の識別性の各評価は、以下の方法で確認した。
【0053】
(1)外観
各実施例および比較例の試験片に後述する条件でレーザーマーキングした。
各試験片のレーザーマーキング後に、レーザーラベルの外観を、層間の膨れや発塵の有無を目視にて確認した。
【0054】
(2)識別性
レーザーマーキング部の識別性は、下記の手順で作製した後述する各実施例および比較例の試験片にレーザー光を照射後、判定した。
各試験片の識別性は、20mmの正方形内に、JIS X0510:2004の図1と同一のパターンである二次元バーコードをFAYbレーザー(パナソニック デバイスSUNX社製 製品名レーザーマーカーLP−Z130)を用いて波長1064nmにてレーザーマーキングし、その読み取り性能にて識別性を判定した。
各試験片のレーザーマーキング部に二次元バーコードリーダー(キーエンス社製 製品名SR−600)を用いて10回読み取りし、次の基準により判定した。○を合格とした。
○:10回とも読み取れる。
×:1回でも読み取れない。
【0055】
(製造例1)
製造例1のレーザーラベルの中間層に用いる(メタ)アクリル系共重合体組成物は以下の手順で作製した。
攪拌装置、滴下装置および温度計を備えた反応容器を用意した。次いでこの反応容器に、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体であるアクリル酸14質量部と、アクリル酸ブチル86質量部と、重合触媒であるアゾビスイソブチロニトリル0.4質量部と、溶媒である酢酸エチル100質量部との混合物を、まず混合物全体の1/4を入れて内温80〜85℃還流、攪拌下で重合を行った。次いで残り3/4の混合物を逐次反応容器内に滴下し、さらに重合を行った。溶媒である酢酸エチルを加えて希釈することで、(メタ)アクリル系共重合体100質量%に対し共重合体成分として14質量%のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を用いた(メタ)アクリル系共重合体である製造例1の樹脂組成物を得た。
【0056】
(製造例2)
製造例1で、アクリル酸の質量部を6質量部に、またアクリル酸ブチルの質量部を94質量部に変更した以外は、製造例1と同様にして製造例2の樹脂組成物を得た。
【0057】
(製造例3)
製造例1で、(メタ)アクリル系単量体としてアクリル酸エチル65質量部と、メタクリル酸メチル21質量部と、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル14質量部とを用いた以外は、製造例1と同様にして製造例3の樹脂組成物を得た。
【0058】
(実施例1)
実施例1のレーザーラベルは以下の手順で作製した。
アクリル系共重合体 商品名ニッセツ KP1876E(日本カーバイド工業社製)50質量部、アクリル系共重合体 商品名Hi−SSP 2100U7V4(日本カーバイド工業社製)50質量部、セルロース系樹脂 商品名CAB381‐0.1(イーストマンケミカル社製)4質量部、メラミン系架橋剤 商品名ニカラック MS−11(三和ケミカル社製)18質量部、リン酸エステル系硬化触媒 商品名CT−198(トクシキ社製)0.3質量部を混合し樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム 商品名エンブレットS−75(ユニチカ社製)に塗工後、加熱乾燥することで、厚みが40μmの表面層を得た。
得られた表面層は無色透明であった。
【0059】
次に製造例1で得た樹脂組成物100質量部にヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤であるコロネートHX(東ソー社製)0.4質量部を加えて攪拌した。次いで、塗工乾燥後に厚さが20μmとなるように塗料アプリケーターで剥離紙に塗工し、次いで上記の表面層と積層後加圧圧着し、表面層側のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して表面層と中間層との積層品を得た。
【0060】
次に発色層を以下の手順で作製した。
アクリル系共重合体 商品名ニッセツ KP1876E(日本カーバイド工業社製)50質量部、アクリル系共重合体 商品名Hi−SSP 2100U7V4(日本カーバイド工業社製)50質量部、セルロース系樹脂 商品名CAB381‐0.1(イーストマンケミカル社製)4質量部、白色顔料 商品名FPGS−5010W(大日精化工業社製)25質量部、ネオジム-ビスマス系の発色剤 商品名トマテック42−920A(東罐マテリアル・テクノロジー社製)1質量部、アジピン酸ポリエステル系可塑剤 商品名D663(ジェイ・プラス社製)1質量部、メラミン系架橋剤 商品名ニカラック MS−11(三和ケミカル社製)18質量部、リン酸エステル系硬化触媒 商品名CT−198(トクシキ社製)0.3質量部を混合し樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム 商品名エンブレットS−75(ユニチカ社製)に塗工後、加熱乾燥することで、厚みが60μmの発色層を得た。
得られた発色層は白色であった。
【0061】
次いで、上記の表面層と中間層との積層品に、上記の発色層を積層、加圧圧着して実施例1のレーザーラベルを得た。
【0062】
(実施例2〜5、比較例1〜4)
各実施例および各比較例のレーザーラベルは、発色層100質量%に対する発色剤の質量%および用いた発色剤の種類を、表1に示した組成にした以外を実施例1と同様の手順で作製した。
実施例4の発色層には、銅‐モリブデン系の発色剤である商品名トマテック42−903A(東罐マテリアル・テクノロジー社製)を用いた。実施例5の中間層には、製造例2の樹脂組成物を用いた。
比較例1の発色剤の量は、発色層100質量%に対して0.15質量%であり、また比較例2の発色剤の量は4.2質量%である。
比較例3の中間層は、製造例3の樹脂組成物を用いた。比較例3の中間層の組成は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を含まない。
比較例4は、中間層を有さず、発色層に表面層の樹脂組成物をスクリーン印刷法で積層した。
【0063】
(試験片の作製)
上記で得られた各実施例および各比較例のレーザーラベルを5センチ角に切断し、外観、識別性の評価の各試験片とした。
【0064】
各実施例および各比較例のレーザーラベルについて、発色層の組成と、評価結果とを表1に示した。
表1によれば、各実施例の試験片は、外観、識別性のいずれも良好であった。
【0065】
【表1】
【0066】
各実施例および比較例1〜2の試験片は、いずれもレーザーマーキング時に発塵がなかった。
また、中間層の組成にカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を含まない比較例3の試験片は、レーザーマーキング時に層間で膨れが発生し、レーザーマーキング部の識別性が劣った。
また、中間層を有さない比較例4は、外観、識別性とも不良であった。レーザーマーキング後の比較例4の試験片断面を顕微鏡観察したところ、表面層と発色層との界面で発色剤の拡散が一部見られた。そのため、精密なレーザーマーキングができず、識別性が劣ったと考えられる。
さらに、発色層が含む発色剤の量が少ない比較例1の試験片は、レーザーマーキング時に十分発色せず識別性が劣り、また、発色剤の量が多い比較例2は、レーザーマーキング時の発色剤および/または発色した樹脂組成物の拡散により識別性が劣ったと考えられる。
【0067】
以上の結果より、本発明によれば、レーザーマーキング時の発塵を抑制し、レーザーマーキング部の識別性を改善したレーザーラベルとそれを用いたレーザーマーキング方法とを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のレーザーラベルとそれを用いたレーザーマーキング方法は、レーザーマーキング部の識別性が優れるため、たとえば二次元バーコードのように精密なレーザーマーキングを好適に行える。
さらに、発色剤の量が少なく、レーザー光の照射時に発塵が抑えられるため、たとえば電子部品、衣料品、食料品の各製造現場で好適にレーザーマーキングが行える。
【符号の説明】
【0069】
1 レーザーラベル
11 表面層
12 中間層
13 発色層
2 レーザーラベル
21 表面層
22 中間層
23 発色層
24 粘着剤層
図1
図2