特許第6576081号(P6576081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576081
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】光学読取媒体
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/305 20140101AFI20190909BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B42D25/305
   G06K19/06 037
   G06K19/06 140
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-77830(P2015-77830)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-196164(P2016-196164A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳生
【審査官】 金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−296580(JP,A)
【文献】 特開平10−134138(JP,A)
【文献】 特開平01−128877(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0320099(US,A1)
【文献】 特開2004−181791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00 − 25/485
B41M 1/00 − 3/18
7/00 − 9/04
G06K 19/00 − 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分と第2の部分で構成されている光学読取情報を有する、光学読取媒体であって、
前記第1の部分及び第2の部分の少なくともいずれかが並置混色部分であり、
前記第1の部分を構成する単色又は複数の色の組合せと前記第2の部分を構成する単色又は複数の色の組合せとが互いに異なっており、かつ
前記第1の部分及び第2の部分のJIS Z 8781に準拠するL表色系における色差ΔEabの値が3.0以下であ
前記光学読取情報が識別コードであり、かつ
前記並置混色部分を構成する各色の配色に規則性があり、前記識別コードには、前記各色の配色の規則性を示す検証データが記録されている、
光学読取媒体。
【請求項2】
第1の部分と第2の部分で構成されている光学読取情報を有する、光学読取媒体であって、
前記第1の部分及び第2の部分の少なくともいずれかが並置混色部分であり、
前記第1の部分を構成する単色又は複数の色の組合せと前記第2の部分を構成する単色又は複数の色の組合せとが互いに異なっており、かつ
前記第1の部分及び第2の部分のJIS Z 8781に準拠するL表色系における色差ΔEabの値が3.0以下であ
前記光学読取情報が、1次元コード又は2次元コードから選択される識別コードである、
光学読取媒体。
【請求項3】
前記並置混色部分を構成する各色の配色に規則性があり、前記識別コードには、前記各色の配色の規則性を示す検証データが記録されている、請求項2に記載の光学読取媒体。
【請求項4】
前記光学読取情報が、バーコード、QRコード、PDF417、データマトリックス、CPコード、MaxiCodeからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学読取媒体。
【請求項5】
前記第1の部分及び第2の部分が、それぞれ単色部分及び並置混色部分である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学読取媒体。
【請求項6】
前記単色部分がブラックで構成されており、かつ前記並置混色部分がシアン、イエロー及びマゼンタの3色を少なくとも含む並置混色で構成されている、請求項に記載の光学読取媒体。
【請求項7】
前記光学読取情報が更に第3の部分を含み、
前記第1の部分、前記第2の部分、及び前記第3の部分の少なくともいずれかが並置混色部分であり、
前記第1の部分を構成する単色又は複数の色の組合せと、前記第2の部分を構成する単色又は複数の色の組合せと、前記第3の部分を構成する単色又は複数の色の組合せとが互いに異なっており、
前記第1の部分、前記第2の部分、及び前記第3の部分のうちの少なくとも2つのJIS Z 8781に準拠するL表色系における色差ΔEabの値が3.0以下である、
請求項1〜のいずれか一項に記載の光学読取媒体。
【請求項8】
前記第1及び第2の部分の上に保護層を更に有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学読取媒体。
【請求項9】
前記並置混色部分が、少なくとも3色の単位ドットから成り、かつ前記単位ドットが300dpi以上の密度で並置して集合している、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学読取媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学読取媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
光学読取媒体としては、QRコード(登録商標)等の2次元コードが付された光学読取媒体が広く知られている。このQRコードが付された光学読取媒体は、QRコードを、紙等の基材上に、トナー印字、サーマル印字、インキによる印刷等の方法により印刷することによって形成されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
ところが、このような方法で形成されたQRコードは、コピー機で複写することで容易に複製することができ、このため、正規のQRコードが付された光学読取媒体と同じものを簡単に複製することができるという問題があった。そのため、このようなQRコードは、電車の乗車券等の複製が許容されない分野では利用が難しかった。
【0004】
その対策として、特許文献2では、2次元コードをサーマルプリントされるサーマル紙上に2次元コードを隠蔽する黒い隠蔽ベタ層を設け、さらにその上にトップコート層(保護層)を設けている。2次元コードを含むこの光学読取媒体をコピー機で複製しようとすると、2次元コードはコピーされず、隠蔽ベタ層がコピーされて真っ黒のベタが印刷される。また、隠蔽ベタ層は、赤外光を透過する混色系の黒インキで形成しているためリーダーで用いる赤外光に対しては透過し、リーダーは隠蔽ベタ層が存在していてもサーマルプリントで形成された2次元コードを読み取ることができるとしている。
【0005】
また、特許文献3では、2次元コードを形成されるサーマル紙上に2次元コードを隠蔽する黒い隠蔽ベタ層を設け、さらにその上に、黒色の第1のカモフラージュ層と透明な第2のカモフラージュ層とから構成されたカモフラージュ層を設けている。この光学読取媒体もコピー機による複製はできず、また隠蔽ベタ層及び第1のカモフラージュ層は、混色系の黒インキで形成しているため、リーダーで用いる赤外光に対しては透過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−307154号公報
【特許文献2】特開2013−1077号公報
【特許文献3】特開2013−1078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2及び特許文献3では、隠蔽ベタ層の上から2次元コードをサーマルプリントすると、2次元コードがプリントされた箇所の隠蔽ベタ層の光沢が変化することで2次元コードが目視できてしまうという課題があり、これらの文献では、それぞれその課題を解決する手段を記載している。
【0008】
具体的には特許文献2に記載の光学読取媒体では、隠蔽ベタ層の上に光沢の変化を低くするためのトップコート層を与えることで、その課題を解決しようとしている。
【0009】
また、特許文献3に記載の光学読取媒体でも、隠蔽ベタ層の上に光沢の変化をカモフラージュするためのカモフラージュ層を設けることで、上記課題を解決しようとしている。
【0010】
しかし、特許文献2及び特許文献3に記載の光学読取媒体では、特殊なサーマル紙と赤外非吸収性の黒インキを用いて記録媒体を作成しているため、通常のプリンターでは製造することができず、かつ情報の読取時に近赤外線の光源が必要になるなどコストが掛かるものであった。
【0011】
そこで本発明では、一般的なコピー機を用いても識別コード等の情報を偽造することが困難であり、通常のプリンターで製造でき、かつ/又は近赤外線の光源を必要とすることなく情報を読み取ることができる光学読取媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記の通りである:
〈1〉 第1の部分と第2の部分で構成されている光学読取情報を有する、光学読取媒体であって、
上記第1の部分及び第2の部分の少なくともいずれかが並置混色部分であり、
上記第1の部分を構成する単色又は複数の色の組合せと、上記第2の部分を構成する単色又は複数の色の組合せとが互いに異なっており、かつ
上記第1の部分及び第2の部分のJIS Z 8781に準拠するL表色系における色差ΔEabの値が3.0以下である、
光学読取媒体。
〈2〉 上記第1の部分及び第2の部分が、それぞれ単色部分及び並置混色部分である、上記〈1〉項に記載の光学読取媒体。
〈3〉 上記単色部分がブラックで構成されており、かつ上記並置混色部分がシアン、イエロー及びマゼンタの3色を少なくとも含む並置混色で構成されている、上記〈1〉又は〈2〉項に記載の光学読取媒体。
〈4〉 上記光学読取情報が更に第3の部分を含み、
上記第1の部分、上記第2の部分、及び上記第3の部分の少なくともいずれかが並置混色部分であり、
上記第1の部分を構成する単色又は複数の色の組合せと、上記第2の部分を構成する単色又は複数の色の組合せと、上記第3の部分を構成する単色又は複数の色の組合せとが互いに異なっており、かつ
上記第1の部分、上記第2の部分、及び上記第3の部分のうちの少なくとも2つのJIS Z 8781に準拠するL表色系における色差ΔEabの値が3.0以下である、
上記〈1〉〜〈3〉項のいずれか一項に記載の光学読取媒体。
〈5〉 上記光学読取情報が識別コードである、上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載の光学読取媒体。
〈6〉 上記並置混色部分を構成する各色の配色に規則性があり、上記識別コードには、上記各色の配色の規則性を示す検証データが記録されている、上記〈5〉項に記載の光学読取媒体。
〈7〉 上記色パターンの上に保護層を更に有する、上記〈1〉〜〈6〉項のいずれか一項に記載の光学読取媒体。
〈8〉 上記並置混色部分が、少なくとも3色の単位ドットから成り、かつ上記単位ドットが300dpi以上の密度で並置して集合している、上記〈1〉〜〈7〉項のいずれか一項に記載の光学読取媒体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一般的なコピー機を用いても識別コード等の情報を偽造することが困難であり、通常のプリンターで製造でき、かつ/又は近赤外線の光源を必要とすることなく情報を読み取ることができる、光学読取媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の光学読取媒体の光学読取情報の模式図である。
図2図2(a)は、本発明の第1の実施態様の光学読取媒体の側面断面図を示しており、図2(b)は、本発明の第2の実施態様の光学読取媒体の側面断面図を示しており、図2(c)は、本発明の第3の実施態様の光学読取媒体の側面断面図を示しており、図2(d)は、本発明の第4の実施態様の光学読取媒体の側面断面図を示している。
図3図3は、本発明の光学読取媒体の光学顕微鏡画像である。
図4図4は、図2を拡大した光学顕微鏡画像である。
図5図5は、本発明の光学読取媒体をスキャナーによりスキャンして家庭用プリンターで出力したものの光学顕微鏡画像である。
図6図6は、本発明の光学読取媒体をカラーコピー機によりコピーして出力したものの光学顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《光学読取媒体》
本発明の光学読取媒体は、第1の部分と第2の部分で構成される光学読取情報を有する。
【0016】
この第1の部分及び第2の部分は、少なくともいずれかが並置混色部分である。また、第1の部分を構成する単色又は複数の色の組合せと第2の部分を構成する単色又は複数の色の組合せとが互いに異なっている。
【0017】
例えば、本発明の光学読取媒体は、図1に示すように、単色部分である第1の部分(10)と、並置混色部分である第2の部分(20)で構成される光学読取情報(50)を有することができる。なお、この図においては、同一の模様で塗りつぶしている箇所は同一の色を示していること、及び明確さのために第2の部分を構成する複数の色を大きく示してあるが、実際は目視によってはこの複数の色同士を識別することはできないことに留意されたい。
【0018】
また、例えば、本発明の光学読取媒体(100)は、図2(a)に示すように、基材(30)、第1の部分(10)及び第2の部分(20)で構成される光学読取情報(50)、並びに随意の保護層(40)を有することができる。ここで、第1の部分(10)及び第2の部分(20)は、基材(30)上で互いに相補的に形成されている。
【0019】
また、例えば、本発明の光学読取媒体(100)は、図2(b)に示すように、第1の部分(10)を具備している基材(30)、及び基材(30)上に第1の部分(10)と相補的に形成されている第2の部分(20)を有し、この第1の部分(10)及び第2の部分(20)で光学読取情報が構成されていてもよい。
【0020】
また、例えば、本発明の光学読取媒体(100)は、図2(c)に示すように、第1の部分(10)を具備している基材(30)、及び基材(30)上に第1の部分(10)を隠蔽するように形成されている第2の部分(20)を有し、この第1の部分(10)及び第2の部分(20)で光学読取情報が構成されていてもよい。
【0021】
例えば、本発明の光学読取媒体(100)は、図2(d)に示すように、第2の部分(20)を具備している基材(30)、及び基材(30)上に第2の部分(20)を背景として形成されている第1の部分(10)を有し、この第1の部分(10)及び第2の部分(20)で光学読取情報が構成されていてもよい。この場合、第1の部分(10)と重なる部分には第2の部分(20)が形成されなくても良い。
【0022】
以下では、本発明の光学読取媒体の各構成要素について説明する。
【0023】
〈基材〉
本発明において、基材は、第1の部分及び/又は第2の部分を形成するための基材である。この基材には、予め第1の部分及び/又は第2の部分が形成されていてもよい。
【0024】
基材に第1の部分及び/又は第2の部分が形成されていない場合、基材の色は、随意の色、例えば白色、赤色、青色等であってもよく、又は無色であってもよい。ただし、基材の色が第1の部分又は第2の部分と同色の場合は、基材の色と第1の部分又は第2の部分に真贋判定機で区別できる程度の輝度差がある必要がある。
【0025】
基材は、例えば紙類、樹脂等の有機物、金属、セラミック、ステンレス等の無機物で作られている基材であってよい。紙類としては、上質紙、再生紙、サーマル紙、熱転写用コート紙等が挙げられ、また樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等が挙げられる。
【0026】
また、予め第1の部分及び/又は第2の部分が形成されている基材としては、例えば下記の識別コードが縫い込まれている布帛、例えばポリエステル糸製の布ラベル等が挙げられる。
【0027】
〈光学読取情報〉
本発明において、光学読取情報は、第1の部分と第2の部分で構成されている。
【0028】
光学読取情報としては、例えば識別コード、文字等が挙げられ、この識別コードとしては、例えば1次元コード及び2次元コードが挙げられる。さらに1次元コードとしては、例えばCODE39、CODE128、JAN、ITF等のバーコードが挙げられ、2次元コードとしては、例えばQRコード、PDF417、データマトリックス、CPコード、MaxiCode等が挙げられる。
【0029】
{第1の部分及び第2の部分}
第1の部分及び第2の部分は、光学読取情報を構成するものである。特に、本発明においては、第1の部分及び第2の部分は、図2(a)及び(b)に示すように、互いに相補的に形成され、図2(c)に示すように、一方がもう一方を隠蔽するように形成され、又は図2(d)に示すように、一方がもう一方の背景に形成されていてよい。
【0030】
(人間の目による見え方)
第1の部分及び第2の部分のJIS Z 8781に準拠するL表色系における色差ΔEabの値は、3.0以下、2.8以下、又は2.5以下である。これにより、第1の部分及び第2の部分が、人間の目で見たときに略同色であると感じられることとなる。また、この色差ΔEabの値は、例えば0.0以上、0.2以上、又は0.5以上であることができる。
【0031】
ここで、JIS Z 8781において、L値は明度を示しており、a値及びb値は彩度を示している。
【0032】
ここで、第1の部分のL値、a値及びb値をそれぞれL、a及びbとし、かつ第2の部分のL値、a値及びb値をそれぞれL、a及びbとすると、第1の部分及び第2の部分の色差ΔEabの値は、以下の式で表される。
【数1】
【0033】
第1の部分及び第2の部分の少なくともいずれかは並置混色部分であることができる。すなわち、第1の部分及び第2の部分がそれぞれ単色部分及び並置混色部分であってもよく、又は第1の部分及び第2の部分の両方が並置混色部分であってもよい。ここで、並置混色部分は、二色以上の色を細かい点として並べることによって、新しい色を得る混色方法により得られる部分を言うものである。
【0034】
シアン、イエロー、マゼンタを適切な割合で混色すると人間の目にはブラックに見えることを考慮すると、例えば、第1の部分をブラックの単色部分とし、かつ第2の部分をシアン、イエロー、マゼンタの並置混色部分とすることができる。
【0035】
ここで、並置混色部分は、少なくとも3色の単位ドットから成ることができ、かつ単位ドットが300dpi以上、400dpi以上、500dpi以上、600dpi以上、又は700dpi以上の密度で並置して集合していることができる。
【0036】
特に、第1の部分をブラックの単色部分とし、かつ第2の部分をシアン、イエロー、マゼンタの並置混色部分とした場合、シアン、イエロー、マゼンタの3色の単位ドットを、300dpi以上、400dpi以上、500dpi以上、600dpi以上、又は700dpi以上の密度で並置して集合させることにより、第1の部分と第2の部分との間の色差ΔEabの値が、3.0以下、2.8以下、又は2.5以下であることとなり、その結果第1の部分と第2の部分とが人間の目で見たときに略同色であると感じられることとなる。
【0037】
(読み取り方)
本発明の光学読取情報は、並置混色部分を構成する色を取り除くフィルター付きリーダーを用いて読み取ることができる。
【0038】
この並置混色部分を構成する各色の配色は、規則的であってもよく、また不規則であってもよい。
【0039】
特に、並置混色部分を構成する各色の配色が規則性である場合、識別コードには、各色の配色の規則性を示す検証データを記録することができる。
【0040】
例えば、シアン(C)を1、イエロー(Y)を2、マゼンタ(M)を3とすると、CYMC、MCYM、YMCYの組合せは、1231、3123、2312で表現できる。これを、ハッシュ関数の1つである「MD5」を用いて表現すると、16進数表記では、MD5(123131232312)=bb261cc38ae21371b3c39efa37556b1fと表現することができる。CYMの組合せのデータを識別コードのデータに含ませることにより、読み取り時に全体のデータからCYMの組合せのデータを除いた形で識別コードを読み取ることができる。このデータを含めた識別コードの偽造を試みた場合、全てのCYMの組合せを正確に模倣する必要が生じることとなり、偽造がより困難になる。
【0041】
また、例えば、第1の部分をブラックの単色部分とし、第2の部分をシアン、イエロー、マゼンタの3色の並置混色部分として本発明の光学読取情報が構成されている場合、ブラックの部分は赤外光を吸収する一方で、シアン、イエロー、マゼンタの3色は赤外光を透過させる。従って、本発明の光学読取情報は、近赤外線の光源を有するリーダーを用いて読み取ることもできる。
【0042】
また、本発明の光学読取情報は、並置混色部分を構成する色を取り除く上記のフィルター、及び輝度の閾値によって色を白色又は黒色に変換する二値化処理機構を備えたリーダーによっても読み取ることができる。例えば、第1の部分を緑色の単色部分とし、第2の部分をシアン、イエロー、マゼンタの3色の並置混色部分として光学読取情報を構成した場合、緑色を黒色に変換できるように二値化処理機構の閾値を設定し、フィルターによりシアン、イエロー、マゼンタの3色を取り除いて読み取ることができる。これにより、この光学読取情報を、第1の部分を黒とし、第2の部分を白とした光学読取情報と同様にして読み取ることができる。
【0043】
(作成方法)
第1の部分及び/又は第2の部分は、随意の方法、例えばインクジェットプリンター、レーザープリンター、サーマルプリンター、熱転写プリンター等、各種印字方式のプリンター等を用いた印刷手段等により形成することができる。
【0044】
第1の部分及び/又は第2の部分の形成は、独立して行ってもよく、又は同時に行ってもよい。特に、第1の部分をブラックの単色部分とし、第2の部分をシアン、イエロー、及びマゼンタの並置混色部分とする場合、シアン、イエロー、マゼンタ及びブラックの4色で印刷するプリンターにより、第1の部分及び第2の部分を一度に形成することができる。
【0045】
(カラーコピー機等による複製防止)
本発明の光学読取媒体を、カラーコピー機等で複製した場合、例えば並置混色部分を構成する複数の色同士の境界部分を正確に再現することができないために、並置混色部分を忠実に再現することはできない。具体的には、この並置混色部分をカラーコピー機でスキャンした場合、この複数の色同士の境界部分の色が混色状態となり、この混色状態の色を作るためにブラックを入れて調整される等の現象が生じる。その結果、このスキャンした光学読取媒体を出力し、並置混色部分を構成する色を取り除くフィルター付きリーダーで読み取ったときに、このブラックを入れた部分がブラックと判断されるため、もとの光学読取媒体のブラック部分のみを正確に再現することができない。
【0046】
{第3の部分}
光学読取情報は、更に第3の部分を含むことができる。この場合、第1の部分、第2の部分、及び第3の部分の少なくともいずれかが並置混色部分であることができる。第1の部分を構成する単色又は複数の色の組合せと、第2の部分を構成する単色又は複数の色の組合せと、第3の部分を構成する単色又は複数の色の組合せとが互いに異なっていることができる。
【0047】
また、第1の部分、第2の部分、及び第3の部分のうちの少なくとも2つのJIS Z 8781に準拠するL表色系における色差ΔEabの値が3.0以下であることができる。
【0048】
この場合、例えば第1の部分が黒色で、第2の部分がシアン、イエロー、マゼンタの組合せで、第3の部分が緑色で構成された2次元コードを作成することができる。2次元コードの読取時には、並置混色部分である第2の部分の色はフィルターで取り除き、二値化処理時に第1の部分及び第3の部分を黒に置き換えるように閾値を予め設定しておけば、第1の部分及び第3の部分で構成された黒色部と、第2の部分で構成された白色部で構成された2次元コードとして取り扱うことができる。このような第3の部分を加えることで、2次元コードが形成された位置を第3の部分の緑色で示すことが可能となる。
【0049】
例えば、第1の部分をブラックの単色部分とし、第2の部分をイエロー、シアン、マゼンタの並置混色部分とし、第3の部分をグリーン、バイオレット、オレンジの並置混色部分として、光学読取情報を構成することができる。この場合、ブラックの部分は赤外光を吸収する一方で、シアン、イエロー、マゼンタ、グリーン、バイオレット、オレンジの6色は赤外光を透過させることから、この光学読取情報は、例えば近赤外線の光源を有するリーダーを用いて読み取ることができる。
【0050】
〈他の層〉
本発明の光学読取媒体には、随意の他の層を積層させることができる。例えば、光学読取媒体の表面には、摩擦等から光学読取媒体を保護するための保護層を形成することができる。保護層は、例えばマットインキ、耐擦過性インキ、クリアトナー等で構成してよい。
【実施例】
【0051】
実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0052】
基材としての上質紙上に、図1に示すような色パターンを、第1の部分をブラックの単色部分とし、かつ第2の部分をシアン、マゼンタ及びイエローの並置混色部分として、4色インクジェットプリンターにて印刷することにより、光学読取媒体を作製した。作製した光学読取媒体は、第1の部分と第2の部分をインクジェットプリンターで単位ドットが600dpiで形成し、第1の部分の網点濃度が70%、第2の部分のシアン、マゼンタ、イエローの網点濃度はそれぞれ、100%、100%、70%となるように設定した。
【0053】
第1の部分のL、a及びbは、それぞれ55.99、0.69、−2.73であり、第2の部分のL、a及びbは、それぞれ54.64、1.57、−4.96であり、第1の部分及び第2の部分の色差ΔEabの値は、2.75であった。この色パターンの第1の部分、及び第2の部分は、目視により略同色であると判断できるものであった。なお、第2の部分のL、a及びbは、直接測定できなかったので、この第2の部分と同色であると目視により判断できる色見本を用いて測定したものである。
【0054】
この光学読取媒体の色パターン部分を、光学顕微鏡に拡大して撮影した。この光学読取媒体の画像を図3に示す。また、図3の画像の右下の部分を更に拡大させた画像を図4に示す。
【0055】
この光学読取媒体をスキャナーによりスキャンして家庭用プリンターで出力したものを、光学顕微鏡に拡大して撮影した。この画像を図5に示す。
【0056】
また、この光学読取媒体をカラーコピー機によりコピーして出力したものを、光学顕微鏡に拡大して撮影した。この画像を図6に示す。
【0057】
図5及び6から、本発明の光学読取媒体をスキャン又はカラーコピーすると、主に並置混色の境界部にブラックが混ざってしまうことが認識されよう。従って、本発明の光学読取媒体は、偽造防止のために有用であることが理解されよう。
【符号の説明】
【0058】
10 第1の部分
20 第2の部分
30 基材
40 保護層
50 光学読取情報
100 光学読取媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6