(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記後端側部材には、頭部付きのボルトの軸部が挿通可能であり、かつその頭部が係止可能の貫通穴が設けられている一方、前記先端側部材には、前記ボルトの軸部の先端又は先端寄り部位に設けられた雄ネジが螺合する雌ネジが設けられており、
前記ボルトはその軸部が前記貫通穴に挿通されると共に、前記雄ネジが前記雌ネジに螺合され、この螺合によるネジ構造によって前記先端側部材と前記後端側部材とが連結されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎杭。
前記先端側部材には、後方に向けて延びる軸部を有するボルトが立設状に設けられており、前記後端側部材には、このボルトの軸部の後端又は後端寄り部位が挿通可能の貫通穴が設けられていると共に、該軸部の後端又は後端寄り部位がこの貫通穴を挿通されて後方に突出させられ、この後方に突出させられた該軸部における後端又は後端寄り部位に設けられた雄ネジに、該貫通穴に係止可能のナットが螺合され、この螺合によるネジ構造によって前記先端側部材と前記後端側部材とが連結されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎杭。
前記先後間の間隔が、前記ネジ締めによって小さくなり、該間隔が所定量になったときに、そのネジ締めにおける回転が空転となるように、前記雄ネジのネジ長が所定の長さとされていると共に、該雄ネジに連なる前記軸部における所定の長さ部分の外径が該雄ネジの谷の径以下とされていることを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載の基礎杭。
前記間隔保持部材が、自身の中空部に、前記ボルトの軸部を隙間嵌め状態で貫通させてなる中空部材であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の基礎杭。
前記変形容易手段が、前記杭本体部及び前記先細り部の横断面における周方向に間隔をおいて、前記先後間における前記先細り部と前記杭本体部とをなす壁に上下に連なって設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の基礎杭。
上下に連なって設けられている前記変形容易手段とは別に、前記変形容易手段が、前記先後間のうち、前記杭本体部と前記先細り部の境界部位、前記先端側部材寄り部位、及び前記後端側部材寄り部位の三つの部位の少なくともいずれか一つの部位において、横方向に延びるように設けられていることを特徴とする請求項6又は7のいずれか1項に記載の基礎杭。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したような2段圧縮変形方式の基礎杭では、その施工方式よりして、特殊な専用機(重機)も要せず、打ち込み後は、汎用工具であるレンチでのボルト締め作業のみで耐沈降性や耐引抜性を高められるというメリットがあるが、その構成が複雑であるといった課題があった。具体的には、この2段圧縮変形方式の基礎杭は、杭本体内に、ボルト挿通部材を上下に設け、この両部材間にボルトを通しておくと共に、この両部材の上下間に、上下に圧縮変形してパイプ壁を外側へ押し広げ得るパイプ壁変形部材を配置しておく一方、ボルトのうち、パイプ壁変形部材と、下のボルト挿通部材との間のネジに、回転しない第1のナット部材を螺合しておき、下のボルト挿通部材の下方のネジ部位にも、同様の第2のナット部材を螺合しておくという構成を有している。このような構成は、ボルトの回転による上下の圧縮力で、杭本体のパイプ壁を、土圧に抗して直接、押し広げることは困難である、との考えに基づいている。すなわち、この構成により、打ち込み後、ボルトを回して、第1のナット部材と上のボルト挿通部材の間で、パイプ壁変形部材を圧縮変形し、その変形を利用してパイプ壁を外側へ第1段階の押し広げをして座屈状に変形させる。続いてボルトを回して、第2のナット部材と上のボルト挿通部材の間で、座屈状の変形が始まっているパイプ壁を直接上下に圧縮することで、外側への第2段階の変形が得られるようにする、というものである。このような2段圧縮変形方式によれば、地盤強度に応じて大きな変形も得られるのであるが、構造が複雑であるという難点があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、構造の複雑化を招くことなく、単純くいと同様に、単に、打ち込むことで埋設を行い得ると共に、その打ち込み後においては、レンチ等の汎用な工具の使用により、簡易に、耐沈降性や耐引抜性にも優れる基礎杭を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、
横断面が先後に一定のパイプ状の杭本体部の先端から先方に先細りパイプ状に形成された先細り部を一体的に備えてなる基礎杭において、
前記杭本体部内であって該杭本体部の先端より後方には後端側部材を備えており、前記先細り部内であって該杭本体部の先端より先方又は該先細り部の先端には先端側部材を備えている一方、
該先端側部材と前記後端側部材とがその先後間において圧縮されて該先後間の間隔が小さくされたとき、該先後間における前記先細り部と前記杭本体部とをなす壁が、基礎杭自体の周方向において分割された状態で、外側に突出するか、張出す形で変形するように、該先後間
における前記先細り部と前記杭本体部とをなす壁には変形容易手段が設けられており、
前記先端側部材と前記後端側部材とが、前記杭本体部内に後方の開口から挿入される工具によるネジ締めによって、前記先後間の間隔を小さくできるネジ構造で連結されてなると共に、そのネジ締めによって該間隔を小さくした後に、該間隔が所定の寸法より小さくならないように、前記先端側部材と前記後端側部材との先後間に、所定の先後長を有する間隔保持部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、前記後端側部材には、頭部付きのボルトの軸部が挿通可能であり、かつその頭部が係止可能の貫通穴が設けられている一方、前記先端側部材には、前記ボルトの軸部の先端又は先端寄り部位に設けられた雄ネジが螺合する雌ネジが設けられており、
前記ボルトはその軸部が前記貫通穴に挿通されると共に、前記雄ネジが前記雌ネジに螺合され、この螺合によるネジ構造によって前記先端側部材と前記後端側部材とが連結されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎杭である。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、前記先端側部材には、後方に向けて延びる軸部を有するボルトが立設状に設けられており、前記後端側部材には、このボルトの軸部の後端又は後端寄り部位が挿通可能の貫通穴が設けられていると共に、該軸部の後端又は後端寄り部位がこの貫通穴を挿通されて後方に突出させられ、この後方に突出させられた該軸部における後端又は後端寄り部位に設けられた雄ネジに、該貫通穴に係止可能のナットが螺合され、この螺合によるネジ構造によって前記先端側部材と前記後端側部材とが連結されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎杭である。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、前記先後間の間隔が、前記ネジ締めによって小さくなり、該間隔が所定量になったときに、そのネジ締めにおける回転が空転となるように、前記雄ネジのネジ長が所定の長さとされていると共に、該雄ネジに連なる前記軸部における所定の長さ部分の外径が該雄ネジの谷の径以下とされていることを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載の基礎杭である。
請求項5に記載の本発明は、前記間隔保持部材が、自身の中空部に、前記ボルトの軸部を隙間嵌め状態で貫通させてなる中空部材であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の基礎杭である。
【0012】
請求項6に記載の本発明は、前記変形容易手段が、前記杭本体部及び前記先細り部の横断面における周方向に間隔をおいて、前記先後間における前記先細り部と前記杭本体部とをなす壁に上下に連なって設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の基礎杭である。
請求項7に記載の本発明は、前記杭本体部は、横断面が先後に一定の角パイプ構造を有しており、前記先細り部は、この角パイプの先端を基端とする角錐又は角錐台のパイプ構造に形成されており、
前記変形容易手段が、前記先後間における前記先細り部と前記杭本体部とをなす壁のコーナ又はそのコーナ近傍において上下に連なって設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の基礎杭である。
請求項8に記載の本発明は、上下に連なって設けられている前記変形容易手段とは別に、前記変形容易手段が、前記先後間のうち、前記杭本体部と前記先細り部の境界部位、前記先端側部材寄り部位、及び前記後端側部材寄り部位の三つの部位の少なくともいずれか一つの部位において、横方向に延びるように設けられていることを特徴とする請求項6又は7のいずれか1項に記載の基礎杭である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明の基礎杭においては、上記した構成を有することから、これを地中に埋設するのは、従来のパイプ製の単純杭と同様に打ち込みによって行うことができる。そして、その打ち込み後は、杭本体部の上方の開口から、挿入する工具(例えば、電動式インパクトレンチ等のねじ込み工具)によるネジ締めをすることによって、前記先後間の間隔を小さくでき、これによって、該先後間における前記先細り部と前記杭本体部とをなす各壁が、基礎杭自体の周方向において分割された状態で、外側に突出するか、張り出す形での変形が得られる。このように、本発明の基礎杭は、その構成より明らかなように、格別、構造の複雑化を招くこともない。そして、打ち込み後、ネジ締めをすることで、前記した変形が得られるので、簡易な作業で、耐沈降性や耐引抜性に優れる基礎杭となすことができる。なお、ネジ締めに使用する工具は、ネジ構造(ねじの種類、機構)に応じ、適宜の工具を用いればよい。
【0014】
すなわち、本発明では、前記杭本体部と該先細り部との境界部位(杭本体部の先端)より先方が、前記先細り部をなすことから、前記変形がなされる前の前記先後間における前記先細り部と前記杭本体部とをなす壁は、これを、基礎杭を縦断面視したとき、その境界部位を屈曲点又は屈曲部位として屈曲したものとなっている。このため、本発明の基礎杭においては、この境界部位、すなわち、屈曲点(又は屈曲部位)を先後に跨ぐ配置にある前記先端側部材と、前記後端側部材との先後間を、上記ネジ締めによって小さくするように圧縮することで、当初から、その境界部位を屈曲点として、その壁が外側に突出するか、張出す形で変形し易いものとなっているから、上記した2段圧縮変形方式の基礎杭のようにパイプ壁変形部材等のような別途の変形容易化のための構成を要しないことから、構造の複雑化も招かない。しかも、本発明では、該先端側部材と前記後端側部材とがその先後間において圧縮されて該先後間の間隔が小さくされたとき、該先後間における前記先細り部と前記杭本体部とをなす壁が、基礎杭自体の周方向において分割された状態で、外側に突出するか、外側に張出す形で変形(張り出し変形)するように、該先後間の壁には変形容易手段が設けられている。このため、本発明では、構造の複雑化を招くこともなく、そして、打ち込み後は、適度のトルクで、ネジ締めを行うことのみで、前記先後間の壁の外側への張り出し変形が得られる。なお、変形容易手段については後述する。
【0015】
すなわち、本発明と異なり、上記したような屈曲点(又は屈曲部位)がない、ストレートのパイプ(パイプ構造)の部分において、例え、パイプの周方向に間隔をおいて、先後(縦)に切れ目やスリット等の変形容易手段が設けられているとしても、これを先後に圧縮することのみで、その壁を外側に突出させ、又は張出す形で変形させることは、通常は地盤中では、土圧もあるから、実質的に不可能である。このため、そのような変形を得るには、上記した2段圧縮変形方式の基礎杭のように、別途、パイプの壁を外側(横方向外向き)に押す外力を付与できるパイプ壁変形部材等の機構、構造を、パイプ内等に設ける必要があり、それ故、構造が複雑になっていた。これに対して、本発明の基礎杭によれば、かかる問題もなく、ネジ締めによる先後間の圧縮のみで、その変形が得られる。なお、本発明において、「パイプ」又は「パイプ状」とは、液体を外部に漏れなく通すことのできる構造を有するパイプ(管、又は筒)に限られるものではなく、その壁(周壁)に、切れ目や貫通孔が設けられているなどの構成を有するパイプ状のものなど、基礎杭になり得る限り広くパイプ状(中空)の構成を有するもの(中空部材)であればよい。
【0016】
さらに、本発明では、前記間隔保持部材を含む構成を有することから、次のような課題を解決することができるという注目すべき効果が得られる。本発明の構成の基礎杭の施工においては、そのネジ締めで、前記先後間の間隔を小さくすることで前記壁の外側への張り出し変形が得られ、それによって耐沈降性や耐引抜性が高められる。一方、このネジ込作業を容易とするためには、変形させる壁の強度が低い方がよい。しかし、前記間隔保持部材を含む構成を有することなく、その壁の肉厚を薄くしたり、或いは、その強度が低い場合においては、そのネジ締め後において、すなわち、施工の完了後に、基礎杭が幾分、沈降することがある。原因は次のようである。施工後の基礎杭の上部に過大な重量(圧縮荷重)がかかる場合には、下方の地盤中において外側に突出し、又は張り出し変形している壁に、それより上にある杭本体部を介してその重量がかかることになる。これにより、その張り出し変形している壁が、その重量に抗しきれない場合には、下方に潰されるように変形する。すなわち、その潰され変形分、杭本体部が沈降する。これが基礎杭が沈降する原因である。
【0017】
これに対して、本発明では、ネジ締めによって前記先後間の間隔を小さくした後に、その間隔が所定の寸法より小さくならないように、前記先後間に、所定の先後長を有する間隔保持部材が設けられており、それが支柱となるから、上記したような過大な重量がかかるような場合にも、前記した課題を解消できる、という注目されるべき効果が得られる。なお、こうした問題を解消するために、基礎杭の打込み、ネジ締め後において、セメントやモルタル等の固結剤をスラリー等として基礎杭内に流し込んで、張り出し変形部位で、それを固結させることも考えられる。しかし、このようにすると、後々、基礎杭を引き抜き、廃棄等する際には、基礎杭(金属)から、それらの固結剤を分離する必要が生じるなど、その廃材処理が容易でない。これに対し、本発明ではかかる問題もない。
【0018】
本発明における前記間隔保持部材は、そのネジ締めによって前記間隔を小さくした後にその間隔が所定の寸法より小さくならないようにできるものであればよい。したがって、その部材の形状、構造は、前記先端側部材と前記後端側部材との先後間に設ける(組み込む)ことができものであればよく、限定されるものではない。間隔保持部材自身においてその先後間に適度の圧縮強度を有するもので、基礎杭内への組み付けの容易性等を考慮して設定すればよい。なお、本発明において、「ネジ締めによって該間隔を小さくした後に、該間隔が所定の寸法より小さくならないように、」というのは、ネジ締めによって小さくした間隔自体が、それより小さくならないように、という意味と、ネジ締めによって小さくした間隔が、設定した(又は許容される)所定の寸法分、小さくなることはある(又は許容される)としても、その小さくなった後の所定の寸法よりも小さくならないように、という意味を含む。
【0019】
請求項1の本発明において、前記先端側部材と前記後端側部材とを連結するネジ構造としては、請求項2又は3に記載の構成とするのが、基礎杭の構造の単純化の点からして好ましい。請求項2に記載の発明では、ボルトの頭部に嵌合する嵌合部を有する回螺工具(例えば、軸(柄)の長いボックスレンチ)を杭本体部の後端の開口から挿入して、それをそのボルトの頭部に嵌合させて、電動等のインパクトレンチなどのレンチでネジ締めすればよい。なお、本発明において「頭部付きのボルト」は、通常の例えば六角ボルトのように、軸部の端に頭部(六角部)を備えるボルトに限られず、ネジ締め用の工具が嵌合する部位を軸部の端、又は途中に備えたボルト(雄ねじ部材)でもよい。また、請求項3に記載の発明では、ナットを回動することでネジ締めできる嵌合部を有する回螺工具を用いればよい。
【0020】
そして、請求項2又は3に記載の発明においては、請求項4に記載の本発明のように、前記先後間の間隔が、前記ネジ締めによって小さくなり、該間隔が所定量になったときに、そのネジ締めにおける回転が空転となるように、前記雄ネジのネジ長が所定の長さとされていると共に、該雄ネジに連なる前記軸部における所定の長さ部分の外径が該雄ネジの谷の径以下とされていることとするのがよい。請求項4に記載の本発明においては、前記先後間の間隔が、前記ネジ締めによって小さくなり、該間隔が所定量になったときに、そのネジ締めにおける回転が空転となる。これにより、ネジ締め作業者においては、変形させるべき所定の変形量が確保できたことを、その空転の発生により簡易に知ることができるので、作業者による張り出し変形にバラツキのない適切かつ安定した施工が確保される。このため、その雄ネジ長等は、適度の変形が得られるように設定すればよい。なお、外径が該雄ネジの谷の径以下とされる軸部の長さは、雌ネジとの螺合が解除され、空転に必要な長さとして設定すればよい。もっとも、請求項2又は3に記載の発明において用いられるボルトは、軸部の全長にわたって雄ネジが形成されている全ネジボルトを用いてもよい。そして、その場合において、ネジ締めによって小さくする前記間隔は、前記間隔保持部材の先後長とするのがよい。すなわち、該先端側部材と前記後端側部材とが、前記間隔保持部材の先後の各端で規制される(ネジ締めできる範囲)まで、ネジ締めする設定としてもよい。このようにすれば、ネジ締めによって小さくした間隔は、前記間隔保持部材にて止められることで決められるから、それより小さくならないことになる。なお、請求項4に記載の本発明のように、ネジ締め後に空転が得られるようにする場合においては、例えば、間隔保持部材が、その後端が後端側部材に接しているとすると、その先端は先端側部材との間で、空転に必要な適度の空隙(間隙)Kが必要となる。そして、このような空隙(間隙)の大きさは、基礎杭の組立て上、その寸法誤差等の存在を考慮して設定される。一方、このような空隙の存在は、それが僅かであるとしても、ネジ締め後における上記した潰され変形ないし基礎杭の沈降の要因となる。このため、潰され変形ないし基礎杭の沈降を小さくするには、空転に必要なかかる空隙(間隙)がなるべく小さくなるように、前記間隔保持部材の先後長(高さ)を設定するのがよい。
【0021】
本発明における前記間隔保持部材は、ネジ締めによって前記間隔を小さくした後にその間隔が所定の寸法より小さくならないようにできるものであればよく、その部材の形状、構造についての限定はないが、請求項2〜4に記載の発明のようなボルトを用いるものでは、請求項5に記載の発明のように、中空部材を用い、ボルトがその中空部を貫通するように設けるのがよい。このようにすれば、間隔保持部材をなす中空部材の安定が図られるためである。なお、該中空部材は、前記間隔が所定の寸法に保持され、或いは上記潰され変形が防止され得る強度のある金属製のパイプ(円筒管)等の中空軸部材から選択すればよい。そして、その長さは、前記間隔が保持されるべき所定の寸法に応じて設定すればよい。
【0022】
前記先後間の各壁に設ける前記変形容易手段の配置や形状は、パイプの横断面形状等により、適宜に設定すればよく、特に限定されるものではない。また、前記変形容易手段には、切れ目(スリット)、貫通する穴、切欠き、溝又は薄肉部などがあり、それらの少なくともいずれか、又は、それらの1又は複数のものの組み合わせとしてもよい。そして、本発明における変形容易手段は、基礎杭の打ち込み時には容易に変形することなく、これを地盤中に打ち込むことができ、しかも、その後、変形をさせる時には、地盤の軟弱度や強度等に応じて、地盤中内で土圧に抗して上記した変形を、適度のネジ締めトルクで得られるように設定すればよい。すなわち、前記変形容易手段は上記変形を得るための強度低下手段であるから、基礎杭をなすパイプの材質、横断面サイズや、壁の肉厚等のパイプの強度等に応じて設定すればよい。
【0023】
そして、前記変形容易手段のうち、壁が、基礎杭自体の周方向において分割された状態にするには、請求項6に記載の本発明のように、変形容易手段を設けるのがよい。この変形容易手段は、上記したように、切れ目(スリット)、貫通する穴、切欠き、溝又は薄肉部などを用いればよいが、切れ目又はスリットとして、周方向において最初から分割されているものとしておくのがよく、しかも、この分割をしている切れ目又はスリットが上下に連なっているのがよい。そして、請求項7に記載の本発明のように、角パイプ構造を有するもの(例えば、一般構造用角形鋼管(横断面略正方形(等辺)の四角パイプ)。以下、単に角パイプともいう)では、 前記変形容易手段が、これらの横断面の壁(角パイプ)のコーナ(角部)、又はコーナ近傍において上下に連なって設けられているとよい。本願において角錐又は角錐台、或いは正方形は、数学(図学)的意味におけるそれらをいうものではなく、一般、構造物において使用される意味におけるそれらを指称する。
【0024】
なお、本発明において、角パイプには、鋼管からなるもの(例えば、一般構造用角形鋼管)の他、その全体、又は部分を例えば、平鋼のような帯状板材(又は板材)から溶接等により、形成したものも含まれる。ただし、前記変形をより容易に得られるようにするには、変形容易手段は、請求項8に記載の本発明のように、各部位の少なくともいずれか一つの部位において、横方向に延びるように設けるのがよいが、好ましくは三つの部位である。このように設けることで、その横方向に延びるように設けられた変形容易手段の各所で発生する応力集中により、先後方向において前記境界部位を頂部として挟む形で、前記先後間の壁を外側に突出させるか、張り出させる変形、すなわち、例えば、凸部が外方を向く「く」の字形等の屈曲となる変形が容易に得られる。なお、横方向に延びる変形容易手段としては、切れ目、又はスリットが、強度低下手段としてとくに有効であるが、溝として応力集中し易いものとしておいてもよい。
【0025】
本発明の基礎杭は、杭本体部を含め、通常、金属製のパイプであり、代表例としては横断面が等辺の薄肉の角パイプ(一般構造用角形鋼管)とするのがコスト面で好ましいといえるが、アルミニウム又はアルミニウム合金製としてもよいなど、その材質は、強度や耐食性に応じて適宜に選択すればよい。ただし、本発明の基礎杭、又はこれをなす杭本体部等は、材質に限られず、板材から溶接等によりパイプ構造に組立て又は製造されたものでもよいし、このようなパイプ構造のもの(パイプ)と、一般構造用角形鋼管等のパイプとをつないでなるパイプでもよいのは上記したとおりである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る基礎杭を具体化した実施の形態例1(第1実施例)について、
図1〜
図6を参照しながら説明する。本例の基礎杭100は、先後(図示上下)に横断面が一定の角(横断面、略正方形の四角)パイプ状の杭本体部20の先端(図示下端)23において、その先端23を基端として先方(図示下方)に、四角錐状で先細りパイプ状に形成された先細り部30を一体的に備えたものであり、いずれも鋼材からなっている。そして、杭本体部20内であって、その先端23より所定量後方(図示上方)には、その横断面を、外側に突出しないで横断するように形成された後端側部材(板材)40を備えている。本例では、この後端側部材40は、パイプ状の杭本体部20の壁(平板部分)25の外周に沿って溶接されている。すなわち、本例では、後端側部材40は、杭本体部20の先端寄り部位に配置されており、後端側部材40の先後において杭本体部20を突き合わせるようにして溶接した構成を有している。そして、この後端側部材40のうち、杭本体部(パイプ)20の中心に相当する位置には、頭部付きのボルト(例えば、六角ボルト)50の頭部53が係止され、かつボルト50の軸部54を挿通させるため、先後に貫通する貫通穴(円穴)43が設けられている。
【0028】
一方、先細り部30内であって、杭本体部20の先端23より所定量先方(図示下方。先細り部30の先後の中間)には、その横断面を、外側に突出しないで横断するように形成された先端側部材(板材)60を備えている。この先端側部材60は、四角錐で先細り状をなす先細り部(パイプ状の構造体)30の壁35の外周に沿って溶接されている。ただし、この先端側部材60のうち、先細り部(四角錐パイプ)30の中心に相当する位置には、ボルト50の軸部54を挿通できる貫通穴(円穴)63が設けられており、その先方向き面(下向き面)には、ボルト50の軸部54の先端側に設けられた雄ネジ57をねじ込むためナット(雌ネジ付き部材)65が溶接されており、本例ではこのナット65も含め、先端側部材60をなしている。なお、先端側部材60自体に直接、雄ネジ57をねじ込むネジ穴(雌ネジ)を形成してもよい。
【0029】
また本例では、上記した後端側部材40の先方向き面(下向き面)45のうち、杭本体部(パイプ)20の中央位置には、その中心と同心となるように、金属製の真っ直ぐな円筒管からなる中空部材(円筒管ともいう)70が垂れ下げ状(先方向き面45に略垂直)に設けられており、間隔保持部材をなすものとされている。この中空部材(円筒管)70は、その内径がボルト50の軸部54を挿通させ得る大きさとされ、上端(
図1,2における上端)において後端側部材40の先方向き面45に溶接されている。ただし、この溶接は、後述するように、例えば、ボルト50の軸部54を、後端側部材40の貫通穴(円穴)43に通すと共に、この円筒管70に通して、先端側部材60におけるナット65の雌ネジに螺合するまでの組み立て過程まで保持されればよく、したがって、組立て上のための、いわゆる仮止め的な溶接(仮溶接)である。そして、この中空部材(円筒管)70の内径(中空部の内径)は、本例では、貫通穴(円穴)43の内径と略同じとされ、ボルト50の回転(ネジ締め)に支障ない大きさとされている。なお、この円筒管70の先後長は、基礎杭100の打ち込み後、ボルト50による所定のネジ締めが終了することで、先端側部材60と後端側部材40との先後間の間隔が所定寸法まで小さくなったとき(変形施工の終了時)において、円筒管70の先端75と、先端側部材60の後方向き面(上向き面)67との間に隙間がない長さであってもよいが、本例では、
図5の右図に示したように、適度(例えば、1mm〜5mm)の微小な空隙Kが保持される長さとされている。
【0030】
このような本例の基礎杭100は、横断面一定のパイプ状の杭本体部20と、その先端(下端)23において、先細りパイプ状に形成された先細り部30とからなる1本のパイプ構造を呈しているが、この先細り部30のうちの、先端側部材60より後方の部位と、杭本体部20のうちの、後端側部材40より先方の部位とが、先後に一体のものとして構成されている。そして、後端側部材40より後方の部位は、本例では一般構造用角形鋼管を適寸法に切断したものからなっている。このため、このような本例の基礎杭100の要部の組み立ては次のようになされている(
図4参照)。
図4の左図に示したように、
図1,3における先細り部30のうちの、先端側部材60より後方の部位と、杭本体部20のうちの、後端側部材40より先方の部位とで先後に一体化された部位21の先端に対し、先端側部材60をあてがい、その後端に対し、後端側部材40をあてがい、先端側部材60と後端側部材40とで、その部位21を先後に挟む形として溶接等により一体化する。ただし、後端側部材40の先方向き面45には、あらかじめ、上記したように円筒管(直管)70を略垂直に溶接しておく。そして、その後端側部材40の貫通穴43に後方からボルト50の軸部54を通すと共に、円筒管70内を通し、その軸部54の先端側の雄ネジ57を先端側部材60におけるナット65の雌ネジに螺合し、両部材40,60をボルト50で連結する。その後、後端側部材40に、それより後方の前記鋼管からなる杭本体部20を突き合わせて溶接し、先端側部材60に、先細り部30のうち、先方の尖った部位を含む(キャップ状部位)37を、その後端において突き合わせて溶接する。こうすることで、
図4の右図に示したように組立てられる。この組立てからも理解されるが、後端側部材40の先方向き面45に円筒管70を溶接するのは、両部材40,60を連結するボルト50を通し易くするためであるから、その連結後は溶接が分離されていてもよい。
【0031】
このように、本例の基礎杭100では、後端側部材40に設けられた貫通穴43、及びその先方向き面45に設けられた円筒管(直管)70に、後方から六角ボルト50の軸部54が挿通され、その先端又は先端寄り部位に設けられた雄ネジ57が、先端側部材60をなすナット(雌ネジ)65に螺合されたネジ構造を有しており、このネジ構造によってその両部材40,60を連結している。また、本例では、後端側部材40と六角ボルト50の頭部53との間には、ワッシャ(座金。スリップ用のワッシャ)59が介在されており、その状態のもとで、六角ボルト50が螺進するように回転され、少なくともネジが、ねじ込み状態から外れない適度の螺合状態とされて、その連結が確保されている。
【0032】
これにより、本例の基礎杭100においては、その六角ボルト50の頭部53を、杭本体部20内にその後端側の開口から挿入される柄の長いボックスレンチ等の工具(図示せず)によるネジ締めをすることによって、先端側部材60と後端側部材40との先後間を圧縮でき、その先後間の間隔を小さくするようなネジ構造とされている。なお、このボルト50のネジ(雄ネジ57)は、その軸部54の先端寄り部位において、所定の長さL1とされている。そして、本例では、その長さL1分のネジ締め後は、ナット65の雌ネジから離脱して空転するように設定されている。すなわち、その雄ネジ57に連なる部位(雄ネジ57の図示上端の上部)の軸部54aは、その外径が、雄ネジ57の谷径以下に、小さくされ、かつ、その長さL2はナット65の高さ(ナットの雌ネジのネジ長)より大きくされている。
【0033】
このように本例では、長さL1分のネジ締め後、ボルト50のネジ(雄ネジ57)は、ナット65の雌ネジから離脱して空転するように設定されており、したがって、その段階で、ネジ締めによる先端側部材60と後端側部材40との先後間の間隔が小さくなるのが終了する。そして、本例では円筒管70は、上記もしたように、ネジ締め終了時(空転開始時)において、垂れ下げ状にある円筒管70の先端(下端)75と、先端側部材60の後方向き面67との間に、適度の空隙(例えば、1mm〜5mm程度)Kが保持されるように、該円筒管70の長さ(高さ)が設定されている。なお、円筒管70の上端における後端側部材40の先方向き面45との溶接(仮付け溶接)が分離しているときは、円筒管70の上端と先方向き面45との間でその空隙が保持されることになる。
【0034】
一方、本例においては、先端側部材60と後端側部材40とがその先後間において圧縮されて、この先後間の間隔が小さくされたとき、その先後間における先細り部30と杭本体部20とをなす各パイプ部位の壁25、35が、基礎杭100自体の周方向において分割された状態で、外側に突出するか、外側に張出す形で容易に変形できるように、その先後間の壁25,35には、変形容易手段(本例では、スリット)が設けられている。本例では、先端側部材60と後端側部材40との先後間における先細り部30と杭本体部20とをなす壁25,35のコーナ(角パイプのコーナ(角部)又はそのコーナ近傍)において変形容易手段として、スリット(縦スリット)Tsが上下に連なって設けられており、この先後間において、各壁25、35は、基礎杭100自体の周方向に当所から4つに分割されたものとされている(
図1〜
図3参照)。
【0035】
また、本例では、この変形容易手段に加え、その先後間のうち、後端側部材40寄り部位(後端側部材40の近傍)、杭本体部20と先細り部30との先後の境界部位である屈曲部位(杭本体部20の先端23)、及び先端側部材60寄り部位(先端側部材60の近傍)の各部位(先後の3箇所)において、コーナにおいて上下に連なって形成されているスリット(縦スリット)Tsから、各壁(周方向における4つの壁)とも、その両側から横方に部分的に切り込む(切断する)ようにスリット(横スリット)Ys1,Ys2,Ys3が設けられている。このように、本例では、上下に延びるスリットTsのほか、前記先後間をなす各壁(平板部分)25,35とも、その先後における3箇所において、横方向に延びるスリットYs1,Ys2,Ys3が設けられていることから、その各スリット(横スリット)の箇所(3箇所)は局所的に低強度とされている。
【0036】
これにより、上記のネジ構造において、その六角ボルト50を、頭部53を介してネジ締めする(ねじ込む)ことにより、先端側部材60と後端側部材40の先後間を締め上げるように圧縮して、その先後間の間隔が小さくなるようにすると、その圧縮状態に応じて、その先後間の周方向における4つの各壁25,35は、先端側部材60寄り部位、及び後端側部材40寄り部位のスリットYs1,Ys3を基点として、境界部位である屈曲部位、すなわち、杭本体部の先端23に設けられたスリットYs2の部位が頂部をなして横向き「V」字状に突出する(張り出す)形で変形するように形成されている(
図5参照)。なお、六角ボルト50が空転となるまでネジ締めしたときにおける、この「V」字の先後方向の角度α(
図5−B参照)は、耐沈降性や耐引抜性等を考慮して適宜のものとすればよいが、例えば、約90度が得られるように設定されている。すなわち、この角度αが得られるように、ネジの締め付けにおけるストロークが設定され、これに基づいてネジ長(雄ネジ57の長さL1)が設定されている。そして、本例では、六角ボルト50が空転となるまでネジ締めしたとき、円筒管70の先端75と、先端側部材60の後方向き面67との間に、適度(例えば、1mm〜5mm程度)の空隙Kが確保されることになる。
【0037】
しかして、このような本例の基礎杭100においては、これを従来の単純杭と同様に、地中(地盤中)に打ち込み、その上端部を適度に地面上に突出させる。そして、その打ち込み後は、杭本体部20の後端側(上端)の開口から、例えば、電動式のインパクトレンチ等のねじ込み工具(図示せず)を挿入して、そのレンチをなす軸部の先端(ボックス状の嵌合部)を六角ボルト50の頭部53に嵌合させてネジ締めをする。すると、先端側部材60と、後端側部材40との先後間の間隔が小さくなり、その先後の各壁25,35が圧縮されるようになる。そして、周方向における4つの各壁25、35は、基礎杭100自体の周方向において、そのコーナで分割された状態で、土圧に抗して、
図5−A(
図5の左図)に示したように、外側に突出するか張り出す形で変形(塑性変形)する。さらに、ネジ締めを進行することで、その変形が次第に大きくなる。そして、ボルト50における雄ネジ57に連なるその後方の軸部54aの外径が、ナット60の高さ寸法より大きい長さ部分(部位)L2にわたり、その雄ネジ57の谷径以下とされているため、最終的に、雄ネジ57はナット65のネジ(雌ネジ)から離脱して空転し、
図5−B(
図5の右図)に示したように所定の変形(角度αの「V」字状の変形)となって、その変形が止まり、ネジ締めが終了する。
【0038】
かくして本例の基礎杭100においては、その打ち込み後に、このネジ締めをし続けることで、作業者に関係なく一定の変形が得られることになるから、安定した耐沈降性や耐引抜性を有する基礎杭100となすことができる。とくに、本例では、四角パイプであり、その周方向における4つの壁において同様の変形が得られるため、これを先端から見たときは、
図6に示したように、変形が周囲において均等に突出したものとなる。このように、本発明の基礎杭100では、構造の複雑化を招くこともないし、地中への打ち込みは、従来の単純杭と同様に簡易に行うことができる上に、打ち込み後は、上記したようなネジ構造により、特殊の工具を要することもなく、そのネジ締めを行うだけでよい。よって、施工現場等に関係なく、簡易に耐沈降性や耐引抜性にも優れる基礎杭100が得られる。そしてこの施工後においては、基礎杭100の上部に設けた工作物の固定手段等の取付穴(図示せず)などを用いて、所望とする架台等を組付け、それに太陽光パネル等の工作物を設置することができるが、その安定し支持を得ることができる。
【0039】
すなわち、本例では、このネジ締め終了時には、後端側部材40の先方向き面45から垂れ下げ状に設けられている円筒管70の先端(下端)75と、先端側部材60の後方向き面67との間に、1mm〜5mm程度の微小な空隙Kがあるだけである。したがって、このネジ締め終了後、すなわち、例えば、太陽光パネルを傾斜して設置した場合において風圧により、基礎杭100の上端に過大な重量(圧縮力)が作用して、外側に突出するか張り出す形で変形している壁部位における変形角度αが小さくなるように潰され変形するような作用を受けるとしても、円筒管70の先端(下端)75が先端側部材60の後方向き面67に当たって止められるから、その潰され変形は、
図5−Bにおけるところの微小な空隙K分だけですむ。このため、そのような潰され変形があるとしても、
図7の左半断面に示したように、基礎杭100の実質的な沈降を防止できる。
【0040】
すなわち、
図7の右半断面に示したように、間隔保持部材をなす円筒管70が設けられていない場合において、そのネジ締め後(施工の完了後)に基礎杭100の上部に過大な重量(圧縮荷重)Fがかかる場合には、外側に突出し、又は張り出し変形している壁25,35にその重量がかかることになり、その張り出し変形している壁が下方に潰されるように変形し、その変形分、杭本体部20が沈降することがある。これに対して、本例では、間隔保持部材をなす円筒管70が設けられているから、同様の重量(圧縮荷重)Fがかかるとしても、そのような変形を防止できるため、施工後における基礎杭100の実質的な沈降を止められる。これにより、外側に突出するか、張り出す形で変形する壁の強度を、円筒管70を設けない場合に比べると小さくすることもできるため、ネジ締めによる壁25,35の張り出し変形のための作業の容易化も図られる。本例より理解されるが、ネジ締め後の空隙Kは、潰され変形や沈降防止のためには、できるだけ小さい方がよいが、その大きさは、基礎杭100の製造、組立て上の誤差を考慮して設定すればよい。
【0041】
なお、本例では、ネジ締めを空転となるまで行い、その後、空隙Kが保持される設定とされているが、
図1の基礎杭においては、
図8に示した変形例のように、そのネジ締め終了を、円筒管70の先端(下端)75が、先端側部材60の後方向き面67に当たったとき、とすることもできる。すなわち、
図8は、
図1の基礎杭(第1実施例)の変形例を説明するもので、
図5−Bに相当するネジ締め終了時(変形後)を示したもので、間隔保持部材である円筒管70の先端(下端)75にて、ネジ締めのストッパ作用を果たさせるようにしたものである。なお、このような変形例は、上記例と本質的な相違はないので、その相違点のみ説明し、同一又は対応する部位には同一の符号を付し、その説明を省略する。以下の各例でも同様とする。
【0042】
すなわち、本例では上記例におけるボルトに代えて、外径が、その雄ネジ57の谷径以下の部分(部位)54aを有せず、軸部54の略全長にわたり雄ネジ57が形成されている全ネジボルト51とした点のみが相違するだけである。このような本例では、打込み後、ネジ締めを進行し、壁25,35の変形を増大させるようにする過程で、円筒管70の先端(下端)75が、先端側部材60の後方向き面67に当たることで、それ以降のネジ締めができない。このような本例では、上記例と異なり、基本的に空隙Kはないから、その施工後、基礎杭100に過大な重量(圧縮力)が作用しても、このネジ締めで止められたときの、先端側部材60と、後端側部材40との先後の間隔(寸法)より小さくなる、ということを防止できる。これにより、壁25,35の潰され変形や基礎杭の沈降をより効果的に防止できる。なお、本例からも理解されるが、上記例では、円筒管70の基端(上端)を後端側部材40の先方向き面45に溶接した場合を説明したが、基礎杭100として組立てられているときにおいては、そのような溶接は解消されていてもよい。また、基礎杭100としての組立てに支障がなければ、円筒管70の先端75を、先端側部材60の後方向き面67に溶接しておいてもよいし、そのような溶接は、いずれも省略してもよい。
【0043】
上記例では、変形容易手段として、上記先後間における、先細り部30と杭本体部20とをなすパイプの壁25,35のうちそのコーナにおいて、上下に連なるようにスリットTsが設けられており、しかも、上記したように、その壁の先後の各部位では横方向に延びるスリットYs1,Ys2,Ys3も設けられている。このため、コーナに上下に連なるように設けられたスリットTsに挟まれる各壁(上下の平板部分)25、35ごと、上記境界部位(杭本体部の先端23)を屈曲点として、外側に突出するか、張出す形で容易に変形させることができる。なお、上記の変形は、先端側部材60と、後端側部材40との先後間における先細り部30と杭本体部20のなす壁25,35の肉厚や、その先後間の壁の先後長、幅、さらには材質等に基づく強度、そして、打ち込んだ地盤における基礎杭100に対する土圧等によって、その難易が異なる。このため、これらの難易を考慮し、適度のトルクで、上記ネジ締めを行うことのみで、その変形が得られるように、打ち込みをする現場の地盤(土壌)強度、軟弱性等を考慮して、変形容易手段を設けるようにすればよい。
【0044】
また、上記例においては、変形容易手段として、角パイプのコーナに上下に連なるようにスリットTsを設けた場合を例示したが、壁の肉厚次第、或いは、低強度材からなる基礎杭100であり、ネジ締めによる応力集中等によって容易に壁の破断(周方向の分割)が得られるような場合には、スリットに代えて溝(薄肉部)をコーナ(例えば、壁の外周面の角部)に上下に連なるように設けることとしてもよい。すなわち、本発明において、上記先後間におけるパイプの周方向に関しては、第1実施例におけるように、当初から分割したものとしてもよいし、ネジ締めによって分割状態が得られるように、適宜の変形容易手段(薄肉部、又は溝)を設けるものとしてもよい。また、上記例では、角パイプのコーナにおいて上下に連なるように変形容易手段を設けたものとして具体化したが、この上下に連なる変形容易手段は、横断面で隣接するコーナ相互に挟まれる壁(平板部)の中間において、上下に連なるように設けてもよいし、これを、上記例におけるようなコーナに設けるものに加えて設けてもよい。
【0045】
そして、上記例では、横方向に延びる変形容易手段として、横スリットYs1,Ys2,Ys3を設けたがこれについても、適宜の変形容易手段(切れ目、薄肉部、又は溝)を設けるものとしてもよい。さらに、壁の肉厚次第、或いは、低強度材からなる基礎杭100であり、ネジ締めによって容易に、外側に突出するか、張り出すような変形が得られる限り、変形容易手段は適宜の位置、又は部位に設ければよい。すなわち、変形容易手段は、上記ネジ締めにおける圧縮力の作用時に、このような変形が得られるように、適宜の位置に、適宜の形態で設ければよい。なお、上記例では、横向き「V」字状に変形する場合で説明したが、この変形の形態は、これに限定されるものではなく、外側に突出するか、張り出す(膨らむ)ような変形であればよく、その変形の仕方や量(突出量)も地盤等に応じて適宜のものとなるように設定すればよい。
【0046】
さらに、上記例では、杭本体部20は、横断面が先後に一定の四角パイプ構造を有しており、先細り部30は、この角パイプの先端を基端とする四角錐のパイプ構造で形成されたものとして具体化したが、本発明の基礎杭100をなす杭本体部20、及び先細り部30は、横断面が他の多角形(六角形、八角形等)のものとしても具体化できる。また、杭本体部20は、横断面が先後に一定の円形の円管(パイプ)構造を有しており、先細り部30は、円錐パイプ構造のものとしても具体化できる。このように、本発明の基礎杭100は、パイプ状のものにおいて広く適用できる。
【0047】
さて、次に第2実施例の基礎杭200について
図9に基づいて説明する。ただし、本例の基礎杭200は、上記第1実施例における先細り部30のうち、それに溶接されている先端側部材60より先方に位置する部位(キャップ状部位)37を除去した構成のものである。このように本例では、上記第1実施例における先細り部30のうち、先方の尖った部位を有する部位(キャップ状部位)37がないもの、すなわち、四角錐状の先細り部30位を先端側部材60より先方において、その頭を切った四角錐台形状として、先端側部材60の先方においてナット65を露出させると共に、ボルト50の軸部54の先端を露出させるようにした点のみが、上記第1実施例と相違するだけである。このように、本例では実質的に、先細り部30を、第1実施例よりも短めに形成し、先端側部材60をその先細り部30の先端に備えるものとした点のみが、前記例と相違するだけであるから、その相違点を中心として説明し、同一又は対応する部位には、同一の符号を付すに止める。
【0048】
すなわち、上記第1実施例では、先細り部30にキャップ状部位37があるため、先端側部材60を形成するナット65、及びボルト50の軸部54の先端を包囲し、それらを保護する作用と、先細り部30の先端形状を一定に保持できる効果が得られる。一方、このような作用、効果を得るため、キャップ状部位37を設ける場合には、その部品や取付工程(溶接工程)が増えるなど、製造工程のみならず、基礎杭200の構造もその分、複雑化する。これに対して、本第2実施例では、そのキャップ状部位37がない分、製造工程のみならず、構造の単純化が図られる。しかも、上記第1実施例では、ネジ締めにおいてボルト50の軸部54の先端を、ナット65から突出させたとき、先細り部30内に収まるようにする必要があるから、先細り部30の先細りを急先細りとすることができないため、先細り部30の長さが長くなりがちとなるが、本第2実施例ではかかる問題もない。なお、この第2実施例のものでは、先細り部30は、その先端が地盤中に打ち込まれ易くなるように、その先細り具合を設定する(テーパ角を付ける)か、その先端側部材60をなすナット65が、地盤中に打ち込まれ易くなるように、図中、2点鎖線で示したように、それを先後に長くし、かつ、先細り状にしておくなど、杭の先端に相応しい大きさ、形状のナット65構造としておくとよい。また、この場合、ボルト50の先端をネジ構造の当初から突出させておく場合には、その先端58も図中、2点鎖線で示したように、先細り状にしておくのがよい。
【0049】
次に
図10、
図11に基づき、第3実施例の基礎杭300について説明するが、このものは、上記第1実施例のものとは、ネジ構造、及び間隔保持部材をなす円筒管70の配置を、
図10に示したように変更した点のみが異なるだけであるから、この相違点についてのみ説明し、同一の部位には同一の符号を付すに止める。すなわち、このネジ構造等は次のようである。先端側部材60には、後方に向けて延びる軸部54を有するボルト50が立設状に設けられている。例えば、先端側部材60に貫通穴63をあけて六角ボルト50の軸部54を後方に向けて延ばす形として、その頭部53を先端側部材60に溶接等して固定する。ただし、このボルト50の軸部54には間隔保持部材をなす所定の先後長を有する円筒管70が、隙間嵌め状態で外嵌されている。この円筒管70の先端75は、先端側部材60の後方向き面(上向き面)67に溶接されていても、されていなくともよい。
【0050】
そして、後端側部材40には、このボルト50の軸部54の自由端である後端又は後端寄り部位(雄ネジ57)が挿通可能の貫通穴43が設けられており、この軸部54の後端又は後端寄り部位がこの貫通穴43を挿通されて後方に突出させられている。そして、この後方に突出させられた該軸部54における後端又は後端寄り部位に設けられた雄ネジ57に、後端側部材40の後方からナット65を螺合している。なお、本例でも、ボルト50における所定長さの雄ネジ57の部位に連なる軸部54aの外径は、その雄ネジ57の谷径以下とされており、ナット65を回転してネジ締めを所定量し続けることで、ナット65が、その細い軸部54aに至って空転するように、その軸部54aの長さも所定の長さ(ナット65の高さ以上)となるように設定されている。なお、円筒管70の先後長は、この空転に至ったとき、円筒管70の後端77と、後端側部材40の先方向き面45との間に、上記第1実施例におけるのと同様、適度の微小な空隙(例えば1mm〜5mm程度)Kが得られるように設定されている(
図11−B参照)。また、ナット65は、貫通穴43に係止可能である限り、ボルト50に直接螺合してもよいが、本例では、ワッシャ59を介して螺合されている。すなわち、本例では、このナット65の螺合によるネジ構造によって先端側部材60と後端側部材40とを連結している。
【0051】
このような第3実施例では、第1実施例と異なり、杭本体部20内にその後方(後端)の開口から挿入される工具により、このナット65を回転させることで、ネジ締めをし、このネジ締めにより、先端側部材60と後端側部材40との先後間の間隔が小さくなるようにしたものである。これにより、本例基礎杭300においても、打ち込み後、そのネジ締めをすることで、
図11−Aに示したように、先端側部材60と後端側部材40との先後間の間隔が小さくなる。そして、そのナット65の回転(ネジ締め)を進めることで、ボルト50における雄ネジ57に連なる軸部54aの外径が、所定長にわたり、その雄ネジ57の谷径以下とされているため、最終的に、ナット65は雄ネジ57から離脱して空転する。結果、
図11−Bに示したように所定の変形となって、その変形が止まる。そして、その変形停止時において、円筒管70の後端77と、後端側部材40の先方向き面45との間には、微小な空隙(例えば1mm〜5mm程度)Kが保持される。これにより、本例でも第1実施例と同様に、所望とする変形が簡易に得られる上に、その施工後における基礎杭300の沈降は、その微小な空隙K分に止められるから、実質的な沈降を防止できる。
【0052】
本例は、ねじ込みストロークが小さい場合、すなわち、ナット65の回転数が少なくても所望とする変形が得られる場合に好適である。というのは、第1実施例では、ネジ締めによってボルト50の先端が先端側部材60(ナット65)から先方に突出するため、これを収容できるスペースが必要となるのは上記したとおりである。これに対し、本例では、ネジ締めによるボルト50の端は、後端側部材40の後方への突出となるからこのスペースは不要となる。このため、先細り部30は、先細りを急先細りとしたり、短くしたりすることもできる。すなわち、第1実施例と異なり、ボルト50の先端の突出量を考慮する必要がなくなるから、その先細り部30の設計の自由度を高めることができる。先細り部30を、急先細りとする場合には、基礎杭200の打ち込み時における抵抗が増大するものの、軟弱地盤においてはそれによる問題もないから、好適である。なお、本例では、ネジ締めによるボルト50の端(
図11の上方の端)は、後端側部材40の後方への突出となるから、ネジ締めのための工具におけるナット65の嵌合部は、その分を許容する深いものを用いればよい。
【0053】
また、この第3実施例のものにおいても、第2実施例のものと同様にしてもよい。すなわち、
図12に示した第4実施例の基礎杭400のように、前記第3実施例における先細り部30のうち、先端側部材60よりも先方部位に位置するキャップ状部位37がないものとしてもよい。この場合も、先端側部材60を基礎杭200の先端に露出させることになるから、地盤への打ち込み性を高めるためには、
図12中、2点鎖線で示したように先端側部材60の先端向き面(ボルト50の頭部53)がなるべく、杭の先端に相応しい先細りとなるようにするのがよい。なお、第2実施例のものにおいて、ボルト50の先端をナット65の先端から突出させておくときは、打ち込み時に、ボルト50とナット65との螺合部のネジ(ネジ山)に大きな外力を直接受けることになる。これに対し、本例ではそれがないから、ネジ山の損傷が避けられるため、打ち込み後におけるネジ締めに支障が出ることを回避できる。
【0054】
本発明は、上記した各実施例のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜に変更して具体化できる。上記例では、上記先後間において、周方向に分割されたパイプの壁を、先後(上下)において、外方に横向き「V」字形に変形させるものとしたが、本発明においては、前記先端側部材と前記後端側部材とがその先後間において圧縮されて該先後間の間隔が小さくされたとき、該先後間における前記先細り部と前記杭本体部とをなす壁が、基礎杭自体の周方向において分割された状態で、外側に突出するか、外側に張出す形で変形することができれば十分である。したがって、このパイプの壁は、先後(上下)において、外方に円弧状に膨らむものであってもよい。すなわち、該先後間の壁に設ける変形容易手段は、前記先後間の間隔を小さくしたとき、このような変形が得られるものでありさえすればよい。
【0055】
また、本発明におけるネジ構造は、上記各実施例において例示したものに限定されるものではない。前記先端側部材と前記後端側部材とが、前記杭本体部内に後端側の開口から挿入される工具によるネジ締めによって、前記先後間の間隔を小さくできるネジ構造であればよい。そして、本発明における間隔保持部材は、前記ネジ締めによって該間隔を小さくした後に、該間隔が所定の寸法より小さくならないように、前記先端側部材と前記後端側部材との先後間に、所定の先後長を有するものとして設けられていればよい。さらに、これを中空部材とする場合でも、円筒管に限定されるものでもなく、角パイプでもよい。なお、パイプ状の杭本体部は、通常は、鋼製とされ、そのパイプの径(太さ)、壁の肉厚、長さ等の仕様は、基礎杭として支持すべき架台等の重量や使用する地盤の軟弱性に応じて適宜に選択すればよい。また、先細り部の先細り具合(テーパ)は、基礎杭の太さや、地盤の強度等に応じて適宜に設定すればよい。さらに、基礎杭は、打ち込みに支障がなく、上記ボルト締めにおいて、適度の締付け力で上記した変形(塑性変形)が得られるものから選択すればよく、その材質が限定されるものではないのは上記したとおりである。