(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐擦傷性に優れたポリプロピレン樹脂を用いた化粧シートを得る方法として、当該ポリプロピレン樹脂に対してフィラーを充填してシート材に用いるポリプロピレン樹脂の一部をフィラーに置換する方法が挙げられる。この方法によって、ポリプロピレン樹脂の摩擦による摩耗を抑制することが試みられてきたが、ポリプロピレン樹脂とフィラーとの界面における十分な接着強度が得られず、摩擦によってポリプロピレン樹脂からフィラーが脱落してしまうという問題があった。そこで、さらに分散剤を添加することにより、ポリプロピレン樹脂とフィラーとの界面における接着強度の向上も試みられたが、フィラーを多量に添加するとフィラーと分散剤との間の接着力が弱まるため、フィラーと分散剤との間の接着力を保持しようとすると、化粧シートの耐擦傷性が向上するほどフィラーを添加することができなかった。
【0005】
また、化粧シートの耐擦傷性を向上させるべくフィラーを添加する際に、当該フィラーの屈折率がポリプロピレン系樹脂の屈折率と近似していないと、フィラーの添加量を増加させるに従って白濁し、意匠性が損なわれるという課題を有していた。
【0006】
ここで、本発明者等は、特許文献2に開示している超臨界逆相蒸発法に
よってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと、フィラーとをポリプロピレン樹脂材料に添加することで、フィラーをポリプロピレン樹脂材料中に均一に分散させたポリオレフィン樹脂組成物を完成させた。
【0007】
本発明においては、前述の超臨界逆相蒸発法に
よってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルとフィラーとを結晶性ポリプロピレン樹脂材料に添加する方法を用いて、耐擦傷性および意匠性に優れた化粧シート
および化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するべく、本発明の第1の態様の化粧シートは、複数の樹脂層からなる化粧シートであって、前記樹脂層のうち少なくとも表面側の1層が、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、波長550nmの光の屈折率1.46〜1.52の無機フィラー5〜200重量部と超臨界逆相蒸発法によってベシクルに
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、シランカップリグ剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂、のいずれかである分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルとを添加した結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなる層として形成されており、前記樹脂層のうちの前記表面側の1層より裏面側の1層が、
アルミをフレーク状としたフレーク状の金属を含有する不透明な隠蔽層とされていることを特徴とする。
【0009】
このような、本発明の第1の態様の化粧シートにおいては、樹脂層のうち少なくとも表面側の1層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、シランカップリグ剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂、のいずれかである分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルが添加されていることにより、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物中において当該分散剤を均一に分散させるとともに、当該分散剤の分散力によって無機フィラーの2次凝集を防いで均一に分散させることができるので、無機フィラーを多量に添加しても結晶性ポリプロピレン樹脂と無機フィラーとの界面における十分な接着強度を得られため、耐擦傷性に優れた化粧シートを提供することができる。更に、樹脂層のうちの前記表面側の1層より裏面側の1層が、
アルミをフレーク状としたフレーク状の金属を含有する不透明な隠蔽層とされているので、当該隠蔽層より表面側の層に透明部分を有していても、当該隠蔽層によって、不透明性による隠蔽効果を発揮させるとともに、
アルミをフレーク状としたフレーク状の金属を含有していることにより通常の隠蔽素材を用いた場合よりも高い隠蔽性を発揮させて、意匠性に優れた化粧シートを提供することができる。
【0010】
本発明の第2の態様の化粧シートは、複数の樹脂層からなる化粧シートであって、前記樹脂層のうち
最も裏面側の層より表面側の少なくとも1層が、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、波長550nmの光の屈折率1.46〜1.52の無機フィラー5〜200重量部と超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルとを添加した結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなる層として形成されているとともに、前記ベシクルが、リン脂質およびノニオン系界面活性剤の混合物またはリン脂質およびノニオン系界面活性剤並びにコレステロール類およびトリアシルグリセロールの少なくとも一方との混合物からなる外膜を具備するリポソームであり、前記分散剤は
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、シランカップリグ剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂、のいずれかであり、前記結晶性ポリプロピレン樹脂は、アイソタクチックペンタット分率(mmmm分率)95%以上である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であることを特徴とする。
【0011】
このような、本発明の第2の態様の化粧シートにおいては、樹脂層のうち
最も裏面側の層より表面側の少なくとも1層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルが添加されていることにより、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物中において当該分散剤を均一に分散させるとともに、当該分散剤の分散力によって無機フィラーの2次凝集を防いで均一に分散させることができるので、無機フィラーを多量に添加しても結晶性ポリプロピレン樹脂と無機フィラーとの界面における十分な接着強度を得られため、耐擦傷性に優れた化粧シートを提供することができる。更に、前記ベシクルを、リン脂質およびノニオン系界面活性剤の混合物またはリン脂質およびノニオン系界面活性剤並びにコレステロール類およびトリアシルグリセロールの少なくとも一方との混合物からなる外膜を具備するリポソームとすることにより、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物とリポソームとの相溶性を向上させて、その結果、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物中への内包物としての無機フィラーを均一に分散させることができる。更に、前記分散剤は
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、シランカップリグ剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂、のいずれかであるので、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物と分散剤との相溶性が悪くなることを確実に阻止することができ、その結果、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物と無機フィラーとの界面において十分な接着強度を発揮させることができる。更に、前記結晶性ポリプロピレン樹脂が、アイソタクチックペンタット分率(mmmm分率)95%以上である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であるので、優れた耐擦傷性を備えた化粧シートを提供することができる。
【0012】
本発明の第3の態様の化粧シートは、基材に貼り合わせて使用される複数の樹脂層からなる化粧シートであって、前記樹脂層に含まれる原反層、透明樹脂層およびトップコート層がこの順に位置しており、前記透明樹脂層が、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、波長550nmの光の屈折率1.46〜1.52の無機フィラー5〜200重量部と超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルとを添加した結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなる層として形成されているとともに、前記分散剤は
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、シランカップリグ剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂、のいずれかであり、前記結晶性ポリプロピレン樹脂は、アイソタクチックペンタット分率(mmmm分率)95%以上である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であることを特徴とする。
【0013】
このような、本発明の第3の態様の化粧シートにおいては、原反層、透明樹脂層およびトップコート層がこの順に位置している複数の樹脂層からなる化粧シートであって、基材に貼り合わせて使用されるものであるので、例えば木質ボード類などの種々の基材に貼り合わせて用いることができる。更に、樹脂層中の透明樹脂層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルが添加されていることにより、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物中において当該分散剤を均一に分散させるとともに、当該分散剤の分散力によって無機フィラーの2次凝集を防いで均一に分散させることができるので、無機フィラーを多量に添加しても結晶性ポリプロピレン樹脂と無機フィラーとの界面における十分な接着強度を得られため、耐擦傷性に優れた化粧シートを提供することができる。更に、前記分散剤は
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、シランカップリグ剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂、のいずれかであるので、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物と分散剤との相溶性が悪くなることを確実に阻止することができ、その結果、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物と無機フィラーとの界面において十分な接着強度を発揮させることができる。更に、前記結晶性ポリプロピレン樹脂が、アイソタクチックペンタット分率(mmmm分率)95%以上である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であるので、優れた耐擦傷性を備えた化粧シートを提供することができる。
【0014】
本発明の第1の態様の化粧シートの製造方法は、複数の樹脂層からなる化粧シートの製造方法であって、前記樹脂層のうち少なくとも表面側の1層を、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、波長550nmの光の屈折率1.46〜1.52の無機フィラー5〜200重量部と超臨界逆相蒸発法によってベシクルに
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、シランカップリグ剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂、のいずれかである分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルとを添加した結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなる層として形成し、前記樹脂層のうちの前記表面側の1層より裏面側の1層となる隠蔽層を、樹脂中に
アルミをフレーク状としたフレーク状の金属を添加して形成していることを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の態様の化粧シートの製造方法は、複数の樹脂層からなる化粧シートの製造方法であって、前記樹脂層のうち少なくとも1層を、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、波長550nmの光の屈折率1.46〜1.52の無機フィラー5〜200重量部と超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルとを添加した結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなる層として形成されているとともに、前記ベシクルが、リン脂質およびノニオン系界面活性剤の混合物またはリン脂質およびノニオン系界面活性剤並びにコレステロール類およびトリアシルグリセロールの少なくとも一方との混合物からなる外膜を具備するリポソームであり、前記分散剤は
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、シランカップリグ剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂、のいずれかであり、前記結晶性ポリプロピレン樹脂は、アイソタクチックペンタット分率(mmmm分率)95%以上である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化粧シート
および化粧シートの製造方法によれば、超臨界逆相蒸発法に
よってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと無機フィラーとを結晶性ポリプロピレン樹脂材料に添加する方法を用いて、耐擦傷性および意匠性に優れた化粧シート
および化粧シートの製造方法を提供することを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の化粧シートは、複数の樹脂層からなる化粧シートであって、当該樹脂層のうち少なくとも1層が、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、波長550nmの光の屈折率1.46〜1.52の無機フィラー5〜200重量部
と超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルとを添加した結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなる層
として形成されているものである。
【0019】
結晶性ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンの他に、プロピレンとαオレフィン(例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどを)を2種類以上共重合させたものが挙げられ、さらにこれらの結晶性ポリプロピレン樹脂にエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体、各種ゴム成分などをアロイ化したものも含まれる。
【0020】
無機フィラーとしては、波長550nmの光の屈折率が1.45〜1.52の材料を用いることが重要である。特に、ガラスフィラーは、二酸化ケイ素を主成分として、二酸化ジルコニウム、酸化ホウ素、酸化ナトリウム、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、鉄などを適宜混合することによって比較的自由にその屈折率をコントロールできるため好適である。
【0021】
分散剤としては、高分子系の界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリグ剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂などが挙げられる。高分子系の界面活性剤としては、脂肪族多価ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アルキルアミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸、ラウリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、モンタン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ミリスチン酸などとリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウムなどが結合したものが挙げられる。シランカップリング剤としては、3−メタクリロキシポロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−イソシアネートポロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。チタネートカップリング剤としては、テトラキス[2,2−ビス(アリルオキシメチル)ブトキシ]チタン(IV)、ジ−i−ポロポキシチタンジオソステアレート、(2−nーブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタンなどが挙げられる。シリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、ワックスとしては、オレフィンを重合または、ポリオレフィンを熱分解したもので、それをさらに酸化またはマレイン酸、スルホン酸、カルボン酸、ロジン酸などによって変性したものが挙げられる。樹脂としては、ポリオレフィンをマレイン酸、スルホン酸、カルボン酸、ロジン酸などによって変性したものが挙げられる。
【0022】
本発明の化粧シートの結晶性ポリプロピレン樹脂組成物を調製する際においては、超臨界逆相蒸発法に
よってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルを用いることが特に重要である。ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞(カプセル)で内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質のような生体脂質から構成されるベシクルをリポソームと称する。このような、ベシクル化された状態の
分散剤内包ベシクルは極めて分散性に優れており、当該
分散剤内包ベシクル、無機フィラーおよび結晶性ポリプロピレン樹脂を混練した際に、これらの混合物中において当該
分散剤内包ベシクルが凝集することなく均一に分散するため、無機フィラーの粒子間にも当該
分散剤内包ベシクルが侵入して、無機フィラーが凝集することをも防止し、結晶性ポリプロピレン樹脂中に無機フィラーを均一に分散させることを可能とする。
【0023】
ここで、超臨界逆相蒸発法は、本発明者等が提案している再表02/032564号公報、特開2003−119120号公報、特開2005−298407号公報および特開2008−063274号公報(以下、「超臨界逆相蒸発法公報類」と称する)に開示されている超臨界逆相蒸発法および装置を用いて行うことができる。
【0024】
具体的に説明すると、超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態または臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を形成する物質を均一に溶解させた混合物中に、水溶性または親水性の封入物質としての分散剤を含む水相を加えて、一層の外膜で封入物質としての分散剤を内包するカプセル状のベシクルを得る方法である。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味するものである。この方法により、直径50〜800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。
【0025】
外膜を形成するリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質などが挙げられる。
【0026】
外膜を形成するその他の物質としては、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種または2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウムまたはコレカルシフェロール等を使用することができる。上記の物質から適宜選択して用いることにより、例えば、水溶性ではない内包物を水溶性の分散剤で包んだベシクルとすることにより、水溶性の溶媒などに水溶性ではない内包物を均一に分散させることができる。
【0027】
特に、本発明の化粧シートにおいては、ベシクルがリン脂質からなる外膜を具備したリポソームとされていることが重要である。
【0028】
以下に、本発明における結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなる層を備えた化粧シートの構成の具体例を図に従って詳細に説明する。
【0029】
図1は本発明の化粧シート1の具体的な実施形態を示し、自身が貼り合わせられる木質ボード類、無機質ボード類または金属板などの基材Bに面する側から、原反層2、絵柄模様層3、接着層7(接着性樹脂層、感熱接着層、アンカーコート層、ドライラミ接着材層)、透明樹脂層4、トップコート層5と積層された構成とされている。また、意匠性を向上させるためにトップコート層5側の透明樹脂層4面にエンボス模様4aを適宜設けてもよい。なお、原反層2と基材Bとの間の接着性に問題があれば、原反層2と基材Bとの間にプライマー層6を適宜設けてもよい。
【0030】
原反層2としては、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙等の紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀等の金属箔等から任意に選定可能である。
【0031】
絵柄模様層3としては、バインダーとしての硝化綿、セルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定して用いることができる。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、また一液タイプでも硬化剤を使用した二液タイプでもよい。さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させる方法を用いてもよい。中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いるもので、イソシアネートによって硬化させる方法である。これらのバインダー以外には、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤などが添加されている。汎用性の高い顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。これらの顔料を用いて、原反層2の表面に、直接グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、陰気ジェット印刷やインキの塗布とは別に各種金属の蒸着やスパッタリングによって意匠が施される。
【0032】
透明樹脂層4としては、アイソタクチックペンタット分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂が用いられていることが好ましい。そして、本発明の化粧シート1においては、当該高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に対して、波長550nmの光の屈折率1.46〜1.52の無機フィラー5〜200重量部および超臨界逆相蒸発法により
ベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルが添加されていることが重要である。ここで、アイソタクチックペンタット分率とは、質量13の炭素C(核種)を用いた13C−NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、上記透明樹脂層を構成する樹脂組成物を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂組成物中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。ポリプロピレン樹脂のペンタット分率とは、13C−NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられている。主に表面の耐擦傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはペンタット分率が高いほどシートの結晶化度が高くなるため、耐擦傷性に優れた透明樹脂層4とすることができる。
【0033】
なお、透明樹脂層4には、必要に応じて熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤を添加することもできる。熱安定剤としては、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等、難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としては、ヒンダードアミン系等を、任意の組み合わせで添加するのが一般的である。
【0034】
また、透明樹脂層4には、エンボス模様4aを設けてもよく、当該エンボス模様4aは、製膜された透明樹脂層4としての透明樹脂シートに熱および圧力をかけて凹凸模様を有するエンボス板を用いてエンボス模様を付与する方法や、押出機を用いて製膜する際に凹凸模様を有する冷却ロールを用いて冷却と同時にエンボス模様を付与する方法などを用いて形成することができる。また、当該エンボス模様4a対して、インキなどを埋め込んでさらに意匠性を向上させることもできる。
【0035】
トップコート層5としては、特に規定されるものではないが、ポリウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッソ系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等から適宜選択できる。形態も水性、エマルジョン、溶剤系いずれでも可能で、且つ硬化も1液タイプでも硬化剤を用いた2液タイプでもよい。中でもイソシアネート反応を利用したウレタン系のトップコートが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、メタジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等から適宜選定して用いることができる。
【0036】
また、化粧シート1の表面の硬度をさらに向上させるために、トップコート層5として紫外線や電子線照射で硬化する樹脂を使用することも可能である。さらに耐候性を向上させるためには、紫外線吸収材及び光安定材を適宜添加してもよい。そして、各種機能を付与するために抗菌材、防カビ材等の機能性添加材の添加も任意に行うことができる。さらに、表面の意匠性を向上させるために、艶の調整のための、あるいはさらに耐磨耗性を付与するための、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等を添加することもできる。
【0037】
プライマー層6としては、基本的には絵柄模様層3と同じ材料を用いることができるが、化粧シート1の裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。
【0038】
接着層7としては、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系などが挙げられ、一般的には、イソシアネートを用いたポリオールとの反応の2液効果タイプのウレタン系を用いることが好ましい。熱ラミネート、押し出しラミネート、ドライラミネートなどによって積層することができる。
【0039】
また、化粧シート1に隠蔽性を付与したい場合には、原反層2を着色シートとすることで隠蔽性を付与したり、原反層2は透明シートのままで、別途、不透明な隠蔽層8を設けることにより隠蔽性を付与することができる。
【0040】
隠蔽層8としては、基本的には絵柄模様層3と同じ材料から構成することができるが、隠蔽性を持たせることを目的としているので、顔料としては不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また隠蔽性を向上させるために金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。
【0041】
本発明の化粧シート1を形成するに当たり、積層方法は特に限定するものではなく、熱圧を応用した方法、押し出しラミネート方法およびドライラミネート方法などの一般的に用いられる方法から適宜選択して形成することができる。エンボス模様4aを形成する場合には、一旦、前記積層方法によってラミネートした後に熱圧によってエンボス模様4aを入れる方法または冷却ロールに凹凸模様を設けて押し出しラミネートと同時にエンボス模様4aを形成することができる。
【0042】
本実施形態の化粧シート1においては、原反層2は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm〜150μm、接着層7は1μm〜20μm、透明樹脂層4は20μm〜200μm、トップコート層5は3μm〜20μmとすることが望ましく、化粧シート1の総厚は45μm〜450μmの範囲内とすることが好適である。
【0043】
以上のように、本発明の化粧シート1においては、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなる層としての透明樹脂層4について、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、波長550nmの光の屈折率1.46〜1.52の無機フィラーを5〜200重量部という高い割合で充填した結晶性ポリプロピレン樹脂組成物に対して、さらに超臨界逆相蒸発法に
よってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルを添加しているため、結晶性ポリプロピレン樹脂中において、
分散剤内包ベシクルの高い分散性によって当該分散剤と無機フィラーとが均一に分散・混合されていることで、無機フィラーの凝集に伴う結晶性ポリプロピレン樹脂の白濁化が抑制されて意匠性に優れるとともに、硬い無機フィラーの添加によって耐擦傷性に優れた化粧シート1とすることができる。
【0044】
さらに、結晶性ポリプロピレン樹脂中において、
分散剤内包ベシクルの高い分散性によって当該
分散剤内包ベシクルと無機フィラーとが均一に分散・混合されていることで、結晶性ポリプロピレン樹脂と無機フィラーとの界面において優れた接着強度を実現し、摩擦を伴う使用状況においても無機フィラーの脱落を抑制することができるので、脱落した無機フィラーの粒子によって生じるアブレシブ摩耗の発生を防止することができる。その結果、長期の使用においても摩耗や傷の発生による意匠の低下の少ない化粧シート1を提供することを可能とする。
【0045】
以下に、本発明の化粧シート1の具体的な実施例について説明する。
【0046】
まずは、ベシクルの具体的な調製方法手順について説明する。ベシクルの調製は、60℃に保たれた高圧ステンレス容器にメタノールを100重量部、分散剤を70重量部、リン脂質としてのホスファチジルコリン5重量部の割合で入れて密閉し、容器内の圧力が20MPaになるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とし、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100重量部注入し、温度と圧力を保ちながら15分間攪拌混合後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻し、超臨界逆相蒸発法によりリン脂質からなる外膜を具備する分散剤リポソームを得た。
【0047】
<実施例>
実施例1においては、結晶性ポリプロピレン樹脂としてアイソタクチックペンタット分率97.8%の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂、分散剤として12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムをベシクル化した分散剤リポソーム、無機フィラーとして屈折率1.49のガラスビーズを50重量部添加した透明樹脂層4を具備する化粧シート1とした。
【0048】
具体的には、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶化ホモポリプロピレン樹脂100重量部に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)を0.05重量部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)を0.2重量部と、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:BASF社製)を0.2重量部、前述の分散剤リポソーム0.1重量部と、粒径5μm屈折率1.49のガラスビーズ50重量部とを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層4として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シート4を製膜した。続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れを40dyn/cm以上とした。なお、製膜された透明樹脂シート4の結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は、7.0%であった。
【0049】
他方、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に酸化鉄顔料15重量部を添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施して結晶性ポリプロピレン樹脂組成物のペレットを得た。この結晶性ポリプロピレン樹脂組成物のペレットを用いたカレンダー成形法により隠蔽性のある膜厚70μmの原反層2としての原反シート2を製膜した。当該原反シート2の一方の面に2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて絵柄印刷を施して絵柄印刷層3を形成し、また、その原反シート2の他方の面にプライマーコートを施してプライマー層6を形成した。しかる後、原反シート2の絵柄印刷層3が形成された一方の面側に対して、上記の透明樹脂シート4からなる透明樹脂層4をドライラミネート用接着剤(タケラックA540:三井化学工業製;塗布量2g/m2 )による接着層7を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。次に貼り合わせたシートの透明樹脂層4の上面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様4aを施した後、そのエンボス模様4a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:DICグラフィックス社製)を塗布量3g/m2にて塗布してトップコート層5を形成して
図1に示す総厚154μmの化粧シート1を得た。
【0050】
<比較例1>
比較例1においては、無機フィラーとして屈折率1.60のガラスビーズを50重量部添加した化粧シート1とした。その他の構成については、実施例と同様である。なお、成膜された透明樹脂シート4の結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は18.3%であった。
【0051】
<比較例2>
比較例2においては、無機フィラーとして屈折率1.49のガラスビーズを250重量部添加した化粧シート1とした。その他の構成については、実施例と同様である。
【0052】
<比較例3>
比較例3においては、ベシクル化していない分散剤としての12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを添加した化粧シート1とした。その他の構成については、実施例と同様である。
【0053】
<比較例4>
比較例4においては、無機フィラーとして粒径5μm屈折率1.58の炭酸カルシウムを50重量部添加した化粧シート1とした。その他の構成については、実施例と同様である。
【0054】
<比較例5>
比較例5においては、分散剤としてドデシル硫酸ナトリウムをベシクル化した分散剤リポソームを添加した化粧シート1とした。その他の構成については、実施例と同様である。
【0055】
<比較例6>
比較例6においては、結晶性ポリプロピレン樹脂としてアイソタクチックペンタット分率90%のホモポリプロピレン樹脂を用いた化粧シート1とした。その他の構成については、実施例と同様である。
【0056】
上記実施例および上記比較例1〜6で得られた各々化粧シートをウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせた後、鉛筆硬度試験にて耐擦傷性、JAS特殊合板に規定される摩耗A試験(テーバー摩耗)により耐摩耗性、目視により意匠性をそれぞれ判断する評価試験を行った。各試験方法について以下に簡単に説明する。また、得られた結果を表1に示す。
【0057】
<鉛筆硬度試験>
2B、B、HB、F、H、2H、3Hの鉛筆を用い、化粧シートに対して鉛筆の角度を45±1°に固定して、当該鉛筆に1kgの荷重を付加した状態でスライドさせて化粧シートに傷が形成されるか否かの判定を行う(旧JIS規格 JISK5400に準拠)。
【0058】
<摩耗A試験>
回転する水平円盤に化粧シートを取り付けて、S−42の研磨紙を取り付けた一対の摩擦輪
の各々に対して0.5kgの荷重を付加させながら化粧シートに接触させ、化粧シートがどの程度の水平円盤の回転数まで摩耗せずに耐えられるかの判定を行う。
【0059】
<意匠性試験>
トップコート層5と透明樹脂層4とからなる透明層の透明性を目視で確認し、白化が認められるか否かの判定を行う。
【0061】
各評価試験を実施した結果、表1に示すように、実施例においては、耐傷性・耐摩耗性・意匠性の全ての評価項目について非常に優れていた。これに対して、比較例1においては、透明樹脂シート4に白濁が認められた。これは、添加したガラスビーズと結晶性ポリプロピレンとの屈折率の相性が悪くガラスビーズによって光が散乱されてしまったためであると考えられる。比較例2においては、耐傷性および意匠性についてもやや劣っていたが、特に耐摩耗性に劣っていた。これは、ガラスビーズの添加量が多すぎたためにガラスビーズの脱落が生じてアブレシブ摩耗が生じたためであると考えられる。比較例3においては、耐傷性および意匠性には優れているものの、耐摩耗性に劣っていた。これは、分散剤をベシクル化していなかったために分散剤およびガラスビーズに2次凝集が生じてガラスビーズが脱落しアブレシブ摩耗が生じたためであると考えられる。比較例4においては、全般的な物性の低下が認められた。これは炭酸カルシウムのモース硬度が低いことによる耐傷性と耐摩耗性の低下。結晶性ポリプロピレンと炭酸カルシウムとの屈性率が異なることによる意匠性の悪化が原因であると考えられる。比較例5においては、耐傷性および意匠性については非常に優れているものの、耐摩耗性に劣っていた。これは、樹脂と分散剤との相溶性が悪かったために、結晶性ポリプロピレンとガラスビーズとの界面において十分な接着強度が得られずにガラスビーズが脱落してアブレシブ摩耗が生じたためであると考えられる。比較例6においては、耐摩耗性および意匠性については非常に優れているものの、耐傷性に劣っていた。これは、結晶性ポリプロピレン樹脂の硬度が低くひっかきに劣っていたためであると考えられる。
【0062】
以上の結果から、実施例における本発明の化粧シート1は、比較例1〜6の化粧シート1と比較して、優れた耐擦傷性、耐摩耗性および意匠性を備える化粧シートであることが明らかとなった。
【0063】
本発明の化粧シート1
および化粧シート1の製造方法は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。