特許第6576097号(P6576097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576097
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】補強層先端部の加工方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/08 20060101AFI20190909BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20190909BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20190909BHJP
【FI】
   F16L11/08 B
   B23K26/38 A
   B23K26/21 L
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-103129(P2015-103129)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-217455(P2016-217455A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊池 英樹
(72)【発明者】
【氏名】野々山 俊男
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−023811(JP,A)
【文献】 特開2014−144163(JP,A)
【文献】 特開2005−230318(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0081243(US,A1)
【文献】 特開2005−155842(JP,A)
【文献】 実開昭51−096067(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0125752(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/08
B23K 26/21
B23K 26/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属属線の編組体からなる補強層を有する管状部材における、編組体先端部の加工方法であって、
管状部材長尺体の任意の場所において、編組体を構成する第1素線及び第2素線の交差部上の端部のうち、管状部材先端側の1箇所に、レーザー光を照射し、第1素線及び第2素線を互いに溶接すると同時に、第1素線又は第2素線のうち1本を切断する第1の工程と、
第1の工程にて溶接及び切断した交差部の、軸方向に隣の交差部上の端部のうち、管状部材先端側の1箇所に、レーザー光を照射し、第1素線及び第2素線を互いに溶接すると同時に、第1素線又は第2素線のうち1本を切断する第2の工程と、
第2の工程と同じ交差部内において、円周方向に隣の交差端部箇所に、レーザー光を照射し、第2の工程で切断した素線とは別のもう1本の素線を切断する第3の工程と、
第1の工程と同じ交差部内において、円周方向に隣の交差端部箇所に、レーザー光を照射し、第1の工程で切断した素線とは別のもう1本の素線を切断する第4の工程と、
を有する管状部材補強層における編組体先端部の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線の編組体からなる補強層を有する管状部材について、補強層における編組体先端部の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前より、食品、製薬、化学、医療、分析機器、等の分野において、配管や狭所へガスや液体、器具類等を搬送するために、強度に優れる長尺の管状部材が広く用いられる。
一般的に、細管内への挿入に用いられる管状部材は、長手方向に伸びる内芯坑が穿設された樹脂製チューブと、これを覆う補強層、外層等とを備える。管状部材は、細い配管や狭所へガスや液体、器具類等を搬送するために、予め挿入されるものであり、そのため、機械的強度を補う補強層は、重要な構成要素の1つと言える。配管等の細い部位に、管状部材を繰り返し挿入したり、引き抜いたりする場合、被挿入体の管壁への影響が大きい管状部材の先端部、特に、補強層における編組体先端部の加工については、様々な方法が知られている。
【0003】
とりわけ、医療用途に用いられる管状部材は、内層と外層との間に、金属線の編組体からなる補強層を有する構造が一般的に知られており、編組体先端部の加工方法として、レーザー光を用いた溶接・切断方法が知られている。(特許文献1参照)
このような加工方法は、まず始めに管状部材の全周方向の編組素線の交差部に対し溶接を施した後、最後に再び管状部材の全周方向に渡って、素線を切断する加工手段を取っており、生産性が悪いという問題がある。
【0004】
また、補強層の構造として、編組体に沿って抗張力繊維を縦添えする仕様(軸方向部材)が広く知られている。(例えば、特許文献2参照)
このような構成を有する編組体先端部、編組素線の交差部に対して、特許文献1のようにレーザー光を用いた溶接・切断を行う工程において、抗張力繊維が障害となり編組素線同士の溶接を阻害する、加工不良の問題も指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−230318号公報
【特許文献2】特開2013−162807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、金属線の編組体からなる補強層を有する管状部材において、補強層先端部の加工生産性に優れ、かつ、先端部の加工不良の問題を解決した管状部材、及び、補強層先端部の加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の編組体先端部の加工方法を使用する管状部材として、参考までに以下にいくつか例示する。
金属線の編組体からなる補強層を有する管状部材において、
編組体先端部は、編組体を構成する第1素線及び第2素線の交差部が、交差部上の端部、かつ、管状部材先端側で溶接され、それと同時に切断される_。
【0008】
補強層の先端部がのこぎり歯状に切断面が形成されるとともに、
のこぎり歯状凸部を起点とする管状部材の軸上にのみ溶接及び切断箇所を有し、かつ、その他の軸上には、溶接及び切断箇所を有しない_。
【0009】
交差部の溶接及び切断箇所が、管状部材の軸方向に2箇所以上連続している_。
【0010】
のこぎり歯状凸部を起点とする管状部材の軸方向以外において、軸方向の少なくとも一部に、軸方向部材を有する_。
【0011】
本発明の編組体先端部の加工方法としては、
金属線の編組体からなる補強層を有する管状部材における、編組体先端部の加工方法であって、
管状部材長尺体の任意の場所において、編組体を構成する第1素線及び第2素線の交差部上の端部のうち、管状部材先端側の1箇所に、レーザー光を照射し、第1素線及び第2素線を互いに溶接すると同時に、第1素線又は第2素線のうち1本を切断する第1の工程と、
第1の工程にて溶接及び切断した交差部の、軸方向に隣の交差部上の端部のうち、管状部材先端側の1箇所に、レーザー光を照射し、 第1素線及び第2素線を互いに溶接すると同時に、第1素線又は第2素線のうち1本を切断する第2の工程と、
第2の工程と同じ交差部内において、円周方向に隣の交差端部箇所に、レーザー光を照射し、第2の工程で切断した素線とは別のもう1本の素線を切断する第3の工程と、
第1の工程と同じ交差部内において、円周方向に隣の交差端部箇所に、レーザー光を照射し、第1の工程で切断した素線とは別のもう1本の素線を切断する第4の工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の_補強層先端部の加工方法にあっては、以下の優れた効果が期待できる。
(1)編組体を構成する第1素線及び第2素線の交差部上の端部にレーザー光を照射することで、溶接と同時に切断されるため、格段に加工効率が向上する。
(2)のこぎり歯状凸部を起点とする管状部材の軸方向にのみ溶接及び切断箇所を有し、かつ、その他の軸上には、溶接及び切断箇所を有しない構造のため、管状部材円周方向における溶接及び切断箇所が減少、すなわち、溶接及び切断箇所を有さない軸が増加する。
(3)交差部の溶接及び切断箇所が、管状部材の軸方向に2箇所以上連続している構造のため、管状部材円周方向における溶接及び切断箇所が減少、すなわち、溶接及び切断箇所を有さない軸が増加する。
(4)のこぎり歯状凸部を起点とする管状部材の軸方向以外において、軸方向の少なくとも一部に、軸方向部材を有する場合、レーザー光を用いた溶接・切断を行う工程において、軸方向部材を起因とする、編組素線同士の溶接を阻害する加工不良の発生を防ぐことができる。
(5)本発明の編組体先端部の加工方法を使用する管状部材の補強層先端部は、編組目の形状が従来技術のような菱形ではなく、くの字型となることから、柔軟性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の編組体先端部の加工方法を使用する管状部材における全体図の一例である。
図2】_管状部材における編組体先端部の一例である。
図3】_管状部材における編組体先端部の別の態様の一例である。
図4】_管状部材における編組体先端部の別の態様の一例である。
図5】_管状部材における編組体先端部の別の態様の一例である。
図6】本発明の管状部材における編組体先端部の加工方法の一例を示す図である。
図7】従来の管状部材における、編組体先端部の一例である。
図8】従来の管状部材における、編組体先端部の別の態様の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の_補強層先端部の加工方法について、図1〜8を参照にしながら説明する。
【0015】
本発明の編組体先端部の加工方法を使用する管状部材の一例として、全体図を図1に示す。1は管状部材、2は内層、3は補強層、4は外層を示す。管状部材の各層の構成はこれに限定されず、例えば、内層2と補強層3間に接着層や中間層を施す他、先端部にマーカーが施されるなど、用途に応じて適宜設けられる。
【0016】
_管状部材1の補強層3は、少なくとも、金属線の編組体を有する。
【0017】
編組体に用いられる金属線の材質は、ステンレスやタングステンが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0018】
編組体の構成は、16打(金属線を8本ずつ、管状部材軸方向に対して異なる方向に編み込む構成)、24打(同12本ずつ)、32打(同16本ずつ)が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0019】
補強層3の一部として、管状部材1の伸長を防止する目的等で、管状部材軸方向の少なくとも一部に、軸方向部材8を用いても良い。
【0020】
軸方向部材8の材質は、ナイロンヤーンやポリエステルヤーン等の抗張力繊維等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。寸法等についても、特に限定されず、用途に応じて、適宜決められる。
【0021】
軸方向部材8の構成は、編組体の内又は外に沿わせる、編組体に編み込む等挙げられるが、特に限定されない。また、軸方向部材8が必ずしも軸方向に平行である必要はなく、溶接及び切断部と重ならない点以外は、特に限定されない。
_管状部材1の補強層3において、軸方向部材8を用いる場合、軸方向部材8は、編組体交差部の溶接及び切断部と重ならない場所に配置される。
【0022】
補強層3以外の構成要素、すなわち、内層1、接着層又は中間層、外層4等の材質、寸法等については特に限定されず、用途に応じて、適宜決められる。
【0023】
次に、_管状部材1の補強層3の先端部について、図2〜5を例に説明する。
【0024】
_管状部材1の補強層3における編組体先端部は、編組体を構成する第1素線及び第2素線(5、6)の交差部上の端部のうち、管状部材先端側の1箇所が、溶接と同時に切断される。
なお、第1素線及び第2素線は、管状部材軸方向に対して異なる方向に編まれた素線を示すものであり、符号5及び6は、第1素線及び第2素線のいずれか一方を示すこととする。
第1素線及び第2素線(5、6)の交差部上の端部(例えば、図6(a)(b))にレーザー光を照射することで、素線同士が互いに溶接すると同時に、第1素線及び第2素線(5、6)のうち、下側の素線のみ切断されるため、第1素線及び第2素線(5、6)の交差部の溶接と切断が同時に可能となる。結果、溶接と切断を別々に行う工法と異なり、生産性が格段に向上する。
さらに、第1素線及び第2素線(5、6)の両方の素線同士が互いに溶接されるため、片方の素線のみにレーザーを照射し溶接される場合と比べ、より強固に溶接されるとともに、溶接部の大きさ(厚さや幅、素線方向の突出長さ等)を小さくできるという利点がある。
また、第1素線及び第2素線(5、6)の交差部における溶接及び切断箇所7は、管状部材1の先端側である。
【0025】
また、_管状部材1の補強層3における編組体先端部は、のこぎり歯状に切断面が形成されるとともに、のこぎり歯状凸部を起点とする管状部材の軸方向にのみ溶接及び切断箇所7を有し、かつ、その他の軸方向には、溶接及び切断箇所7を有さない。また、交差部の溶接及び切断箇所7が、管状部材の軸方向に2箇所以上連続している。(図2及び図3
図2は、交差部の溶接及び切断箇所7が、管状部材1の軸方向に2箇所連続し、図3は4箇所連続する管状部材1の一例である。
以上より、管状部材円周方向における溶接及び切断箇所7が減少、すなわち、溶接及び切断箇所7を有さない軸が増加する。
【0026】
上述のように、補強層3において軸方向部材8を用いる場合、軸方向部材8は、編組体交差部の溶接及び切断箇所7と重ならない場所に配置される。すなわち、のこぎり歯状凸部を起点とする管状部材1の軸方向以外において、軸方向の少なくとも一部に施される。(図4及び図5
図4及び図5は、図2及び図3の_管状部材1において、編組体先端部の溶接及び切断箇所7以外に、軸方向部材8を編組体に編み込むように施す管状部材1の一例である。
【0027】
さらに、本発明の管状部材1の補強層先端部の加工方法について、図6を例に詳細を説明する。
【0028】
(1)第1の工程
管状部材長尺体の任意の場所において、編組体を構成する第1素線及び第2素線(5、6)の交差部上の端部のうち、管状部材先端側の1箇所(図6a)にレーザー光を照射し、第1素線及び第2素線(5、6)を互いに溶接すると同時に、第1素線又は第2素線(5、6)のうち1本を切断する。
図6aは、溶接及び切断箇所7に当たる。
(2)第2の工程
第1の工程にて溶接及び切断した交差部の、軸方向に隣の交差部上の端部のうち、管状部材先端側の1箇所(図6b)に、レーザー光を照射し、第1素線及び第2素線(5、6)を互いに溶接すると同時に、第1素線又は第2素線(5、6)のうち1本を切断する。
図6bは、溶接及び切断箇所7に当たる。
(3)第3の工程
第2の工程と同じ交差部内において、円周方向に隣の交差端部箇所(図6c)に、レーザー光を照射し、第2の工程で切断した素線とは別のもう1本の素線を切断する。
(4)第4の工程
第1の工程と同じ交差部内において、円周方向に隣の交差端部箇所(図6d)に、レーザー光を照射し、第1の工程で切断した素線とは別のもう1本の素線を切断する。
【0029】
以上のように得られる管状部材1の編組体先端部においては、素線に囲まれた部分の形状が菱形のような方形状(図7)ではなく、くの字形状(図2図5)となることが特徴であり、菱形の場合と比較し、柔軟性に優れるという効果をも有する。
【0030】
一方、図7は従来技術の管状部材の一例であり、交差部の溶接及び切断箇所7が、管状部材の円周方向全体に施され、かつ、軸方向においては1箇所のみ施される。
図7の場合、交差部の溶接及び切断箇所7が円周方向全体に渡るため、溶接及び/又は切断する作業や、レーザーを照射する位置調整の工程が多くなるが、本発明の管状部材の場合は、交差部の溶接及び切断箇所や位置調整の工程が、従来技術に比べて少ないため、生産性が格段に向上する。
【0031】
図8は、図7に軸方向部材8を施す従来技術の管状部材の一例であり、交差部の溶接及び切断箇所7が円周方向全体に渡るため、軸方向部材が、溶接及び切断箇所7と重なり易く、編組素線同士の溶接を阻害する問題が発生する。
【0032】
以上より、本願発明の管状部材及び補強層先端部の加工方法は、従来技術と比較して、生産性、柔軟性に優れ、かつ、軸方向部材を有する場合の先端部の加工性に特に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の_補強層先端部の加工方法は編組体の先端加工に関し、管状部材等の医療用途に限らず、編組体からなる補強層を有する電線・ケーブル等、あらゆる技術分野において有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 管状部材
2 内層
3 補強層(編組体)
4 外層
5、6 第1素線、第2素線
7 溶接及び切断箇所
8 軸方向部材
以上
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8