【文献】
塩見 優子 他,「加速度計を用いた幼児の日常生活における身体活動量についての研究」,発育発達研究,2008年 8月31日,第39号,第1〜6頁
【文献】
田中 沙織 他,「幼児期の身体活動と生活リズムにおける関連性 −2軸加速度計を用いた測定結果から−」,発育発達研究,2008年11月30日,第40号,第1〜10頁
【文献】
齋藤 桂 他,「Android端末を利用した乳幼児見守りシステム」,インターネットと運用技術シンポジウム2014論文集,2014年12月 4日,第35〜42頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乳幼児が身体に装着して使用する複数の対象物品をそれぞれ示す物品情報を、使用が推奨される乳幼児の運動能力の発達度合いと対応づけて記憶しておく記憶部を更に備え、
前記記憶部を参照し、前記活動特性算出部が算出した前記運動能力の発達度合いに基づいて前記物品情報を抽出して出力することを特徴とする請求項5に記載の活動分析システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図面において同様の構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
<第一実施形態>
図1は、本発明の実施形態の活動分析システム100の構成図である。
【0014】
本実施形態の活動分析システム100は、乳幼児の活動を分析するためのコンピュータシステムであり、活動情報取得部10およびデータ集計部20を備えている。活動情報取得部10は、乳幼児Bに装着した加速度センサ12を用いて、乳幼児Bの運動強度を示す活動情報AIを時系列的に取得する手段である。データ集計部20は、活動情報取得部10が取得した活動情報AIを複数の強度段階に分類して集計する手段である。
【0015】
活動分析システム100は、活動情報取得部10、活動分析装置90および表示出力部80を組み合わせて構成されている。活動分析装置90は、いわゆるコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力インタフェースなどの汎用デバイスで構築されたハードウェア、所定の処理動作を実行するように構築された専用の論理回路、またはこれらの組み合わせにより構成されている。メモリには、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)または可搬式記憶媒体などを用いることができる。
活動分析装置90は、データ集計部20のほか、活動特性算出部30、記憶部40および判定部50を備えている。
データ集計部20、活動特性算出部30および判定部50はCPUにより実現され、記憶部40はメモリにより実現される。なお、記憶部40が情報を記憶するとは、記憶部40がデータを記憶する機能を有することを意味しており、当該データが常に格納されていることを必ずしも要しない。また、記憶部40は複数のメモリによって構成され、後述する各種の情報(関係情報MR、物品情報PIおよびリスク情報RIなど)を分散して記憶してもよい。
【0016】
活動情報取得部10は、加速度センサ12で取得した加速度信号を読み取り、以下に説明するように各種の演算処理によって運動強度を算出する。加速度センサ12は一軸センサでも三軸センサでもよい。活動情報取得部10は、加速度センサ12で取得した加速度信号から重力方向の加速度成分を抽出してもよい。加速度信号から運動強度を算出する演算処理はこれまで各種が提案されており特に限定されない。以下に例を示す。
はじめに、加速度センサ12から逐次出力される加速度信号を電圧信号に変換し、デジタル変換およびノイズ除去し、三軸加速度の合成または重力方向成分の抽出などの処理を行って加速度データを生成する。なお、本明細書において加速度とは、地球の重力加速度の影響を除去したものをいう。すなわち、立ち上がろうとする被験者(乳幼児B)には重力加速度と併せて1G(Gは重力加速度)を超える加速度(たとえば1.2G)が負荷されるが、本明細書でいう加速度とは、重力加速度の影響を排除した値(この場合、0.2G)をいう。
つぎに、活動情報取得部10は、加速度データを閾値と比較して加速度の大きさを判定し、その判定結果に基づいて運動強度を算出する。閾値は活動情報取得部10に予め記憶されている。ここで、活動情報取得部10は、加速度センサ12が装着された状態で活動する対象者(本実施形態では乳幼児B)から加速度を常時計測し、所定の時間間隔(以下、強度決定間隔という)ごとに時々刻々に運動強度を算出する。強度決定間隔は、1秒以上10秒以下、たとえば4秒間や6秒間などとすることができる。強度決定間隔を10秒以下とすることで、対象者(乳幼児B)の運動を詳細に解析することができる。
活動情報取得部10は、強度決定間隔ごとに加速度センサ12からの加速度信号に基づいて1個または複数個の加速度データを生成して加速度の大きさを判定する。好ましくは、強度決定間隔ごとに複数個の加速度データを生成してそれぞれ加速度の大きさを判定するとよい。この場合、加速度センサ12が加速度信号を取得するサンプリング間隔は、上記の強度決定間隔よりも短く設定し、より好ましくは強度決定間隔の時間内に加速度センサ12は加速度信号を複数回に亘って計測するように設定する。このため、強度決定間隔を1秒以上とすることで、加速度センサ12のサンプリング間隔を過度に短くすることなく、強度決定間隔の時間内に多くの加速度信号を加速度センサ12で計測することができる。活動情報取得部10は、判定された加速度の大きさごとの発生回数に基づいて、当該強度決定間隔の時間内における被験者(乳幼児B)の運動強度を決定するとよい。これにより、瞬間的に大きな加速度が検出されたことに起因して運動強度が過大に判定されることが抑制される。また、後述する運動強度2と運動強度3の場合のように、検出された加速度の大きさが同等であっても、当該加速度の発生頻度の大小に基づいて運動強度を異なる強度段階に区別することができる。
活動情報取得部10は、強度決定間隔の時間内にカウントされた加速度を平均して運動強度を決定してもよい。これにより、乳幼児Bが立ち上がったり倒れたりした瞬間に記録される大きな加速度によって過度に高い運動強度(たとえば4以上)と過って判定されることが防止される。
以上のようにして、活動情報取得部10は強度決定間隔ごとに、当該強度決定間隔の時間内に取得された複数個の加速度データに基づいて1個の活動情報AI(
図2参照)を生成することができる。以下、個々の活動情報AIをカウントと呼称し、また活動情報AIを生成することを、運動強度をカウントすると呼称する場合がある。
【0017】
活動情報取得部10には、加速度センサ12を内蔵する、いわゆる活動量計を用いることができるが、これに限られない。活動情報取得部10は、加速度センサ12と活動分析装置90とで分散して実現されてもよい。すなわち活動情報取得部10は対象者(乳幼児B)に着脱可能に装着される加速度センサ12と、活動分析装置90が備える強度算出部(図示せず)によって構成されてもよい。この場合、強度算出部は、加速度センサ12で計測されたアナログの加速度信号やデジタルの加速度データを、入力部60を介して取得し、各種の演算処理を行って運動強度を算出するとよい。
【0018】
図2は、活動情報AI、および活動情報AIを含むログデータLDの例を示す図である。活動情報AIは、加速度センサ12が装着された対象者(乳幼児B)の運動強度を表すかまたは運動強度に換算可能な個々のデータをいう。活動分析装置90は、活動情報取得部10が取得した多数の活動情報AIをデータ集計部20で集計し、また活動特性算出部30や判定部50により各種の処理を行う。
【0019】
活動情報取得部10は、
図2に示すように活動情報AIを時刻情報と対応付けて取得し、運動強度の時系列情報を含むログデータLDを生成してもよい。ログデータLDは、互いに対応付けられた複数組の時刻情報と活動情報AIの集合である。時刻情報は、加速度センサ12を取得した時刻、または活動情報取得部10が加速度信号から個々の活動情報AIを算出した各時刻を示す情報である。本実施形態では活動情報取得部10(
図1参照)における活動情報AIの強度決定間隔を4秒とし、ログデータLDでは4秒間隔で活動情報AIが取得されている場合を例示している。
ログデータLDは、活動情報取得部10で生成するほか、活動分析装置90が活動情報取得部10から活動情報AIと時刻情報とを互いに対応付けて取得し、データ集計部20にてログデータLDを生成してもよい。
ログデータLDの活用方法については第二実施形態にて後述する。
【0020】
活動分析装置90は、活動情報取得部10から各種の情報を取得する入力部60と、活動特性算出部30や判定部50からの各種出力や上記のログデータLDなどの情報を表示出力部80に出力する出力部70を更に備えている。入力部60および出力部70は入出力インタフェースにより実現される。入力部60は、活動情報取得部10から活動情報AIやログデータLDなどの情報を取得する受信部のほか、活動分析システム100の操作者からの各種操作入力を受け付けるためのキーボードやマウスなどの入力装置を、入出力インタフェースとして有している。活動分析装置90が備える強度算出部(図示せず)と加速度センサ12とで活動情報取得部10が実現される場合、入力部60は加速度センサ12からアナログの加速度信号やデジタルの加速度データを受信してもよい。表示出力部80は、たとえばディスプレイ装置であり、出力部70は出力信号の送信部である。
【0021】
本実施形態の活動分析システム100を用いることで、乳幼児Bの活動を分析する方法(活動分析方法:以下、本方法という)が実現される。本方法は、乳幼児Bに装着した加速度センサ12を用いて、活動中の乳幼児Bの運動強度を示す活動情報AIを時系列的に取得し、取得された活動情報AIを複数の強度段階に分類して集計するものである。
【0022】
強度段階の数は特に限定されないが、3段階以上、好ましくは5段階以上である。強度段階
の数は、運動強度の段階数と同数としてもよいが、これに限られない。活動情報取得部10が活動情報AIとしてカウントする2段階以上の運動強度を一つの強度段階として集計してもよい。
【0023】
本方法で活動を分析する乳幼児Bの日齢は90日以上720日以下が好ましく、180日以上480日以下が更に好ましい。乳幼児の成長には大きな個人差があるが、例として以下のような成長をみせる。日齢が90日程度になると乳幼児は首が据わり、自らの活動を開始する。その後、寝返り動作を開始し、日齢が180日程度になると座り遊びをし、物に掴まる動作が増えてくる。日齢が240日程度になると活発に腹ばいハイハイや四つん這いハイハイをする。そして、日齢が270日から300日程度になると、つかまり立ちや伝い歩きを積極的に行うようになり、360日程度になると一人で立つことができるようになる。その後、480日程度までは立った動作とハイハイ動作とが混合して顕れ、その後は徐々にハイハイ動作が消失し、十分に一人歩きをしたり走ったりすることが可能になる。
また、日齢が720日以下、特に480日以下の乳幼児は言語を通じた意思疎通を十分に行うことが困難であるため、自分がどの程度の時間に亘ってハイハイやつかまり立ちなどの活動をしたかを口頭で説明することは難しい。このため、本方法のように加速度センサ12を用いて活動情報AIを取得し、これを集計することで、乳幼児の活動を正確に分析することができる。
【0024】
下表1は、乳幼児の動きの種類と、動きごとの運動強度を示す。表1では、十分な一人歩きがまだ出来ない乳幼児を対象として、代表的な動きと、それぞれの運動強度を示している。この運動強度は、乳幼児の腰(背中側)に装着した加速度センサ12で取得した加速度信号から重力方向の加速度成分を演算して抽出し、この加速度の大きさを閾値判定して
複数の段階に分類したものである。
【0026】
乳幼児の運動強度が0であるとは、重力方向の加速度が実質的に発生していない状態であり、睡眠中または臥位で覚醒して静止している状態にあたる。具体的には、0.1G未満、好ましくは0.06G未満の重力方向の加速度である場合である。仮に成人を被験者とする場合、同様の加速度が活動情報取得部10で検出される状態は、たとえば睡眠中や静止中であり、酸素消費量や代謝効率を表すメッツ(METs:Metabolic equivalents)に換算すると1.5METs以下にあたる。以下、運動強度が0であることを、運動強度0と呼称する。0.5以上の運動強度に関してもこれに倣う。
【0027】
本明細書では、運動強度0の状態は、活動中ではなく静止中であるとして扱う。これは、たとえば0.1G未満や0.06G未満の微弱な加速度を更に弁別して、睡眠中であるか覚醒して臥位で静止している状態であるかを識別することが困難であることのほか、後述するように活動中すなわち運動強度が0.5以上である場合の活動情報AIの取得回数または取得頻度に基づいて乳幼児の活動特性を算出することが好適であることによる。
【0028】
以下、活動中の乳幼児の運動強度について説明する。
乳幼児の運動強度0.5は重力方向の加速度が僅かに発生している状態であり、上半身を上下動させている状態、すなわち座り遊びをしている状態にあたる。具体的には、0.06G以上、かつたとえば0.2G未満の重力方向の加速度が継続的に検出されている場合と設定することができる。成人を被験者とした場合、同様の加速度が検出されるのは、たとえば座位の業務中の状態であり、1.6METs程度にあたる。
乳幼児の運動強度1は、弱い重力方向の加速度が発生している状態であり、上下動のある状態、すなわちつかまり立ちや伝い歩きをしている状態にあたる。具体的には、たとえば0.2G以上かつ0.5G未満の重力方向の加速度が継続的に検出されている場合と設定することができる。成人を被験者とした場合、同様の加速度が検出されるのは、たとえば歩行中の状態であり、1.8METs程度にあたる。
乳幼児の運動強度2は、中程度の重力方向の加速度が断続的に発生している状態であり、比較的大きな上下動のある運動、たとえば低速でのハイハイや低速の歩行が行われている状態にあたる。睡眠中または覚醒中に寝返りを打っているときもこの運動強度に該当する場合がある。具体的には、たとえば0.5G以上かつ1.0G未満の重力方向の加速度が断続的に検出されている場合と設定することができる。成人を被験者とした場合、同様の加速度が検出されるのは、たとえば立位の業務中の状態であり、2.3METs程度にあたる。
乳幼児の運動強度3は、中程度の重力方向の加速度が頻発して発生している状態であり、たとえば高速でのハイハイが行われている状態にあたる。具体的には、たとえば運動強度2と同じく0.5G以上かつ1.0G未満の重力方向の加速度が、運動強度2よりも高い頻度で継続的に検出されている場合と設定することができる。成人を被験者とした場合、同様の加速度が検出されるのは、たとえば階段の昇降中の状態であり、2.9METs程度にあたる。
4以上の運動強度は、成人ではジョギング等の3.6METs以上の動作がこれに該当するが、十分な一人歩きがまだ出来ない乳幼児を対象とする場合は実質的に検出されない。
【0029】
本方法では、表1に示すように運動強度を0、0.5、1、2、3および4以上と6段階に分類し、順に強度段階を1から6と呼称する。強度段階=1の状態は乳幼児が静止している状態であり、強度段階が2以上の場合は乳幼児が活動している状態である。
本方法で乳幼児から取得すべき運動強度は、表1に示すように成人の比較的穏やかな活動のレベルに相当する。したがって、成人を使用対象とする市販の活動量計に内蔵された加速度センサを用いて、加速度データまたは活動情報AIを取得することができる。
【0030】
本方法では、活動中の乳幼児Bの運動強度を示す活動情報AIを時系列的に取得し、これを複数の強度段階に分類して集計する。集計結果は種々の目的に使用することができるが、本実施形態では少なくとも一つの強度段階に分類された活動情報AIの取得頻度に基づいて乳幼児Bの活動特性を取得する場合を例示する。
ここで、乳幼児Bの活動特性とは、乳幼児Bの活動の傾向を示す情報をいう。活動特性は、個々の乳幼児Bの活動の傾向を個別に示す情報のほか、複数人の乳幼児Bの平均的な活動の傾向を示す情報でもよい。活動特性の例としては、乳幼児Bの運動能力の発達度合い、所定時間内における乳幼児Bの活動内容の内訳、所定時間内で乳幼児Bが消費したエネルギー量などを挙げることができるが、これに限られない。
乳幼児Bの活動特性として運動能力の発達度合いを算出することにより、実齢・身長・体重などの一般的なパラメータでは把握しきれない当該乳幼児Bの運動能力を評価することができる。また、乳幼児Bの運動能力の発達度合いを把握することで、第三実施形態から第五実施形態にて後述するように種々の有用な情報を得ることができる。また、乳幼児Bの活動特性として所定時間(たとえば1日)内の乳幼児Bの活動内容の内訳を取得したり消費したエネルギー量を算出したりすることにより、親や保育士が乳幼児Bを常時監視していなくても乳幼児Bの健康状態や疲労状態を客観的に把握することができる。
【0031】
以下、本実施形態では乳幼児Bの活動特性として運動能力の発達度合いを算出する方法を説明する。
【0032】
本発明者らの検討によれば、乳幼児は1日の多くの時間を睡眠または臥位で静止して運動強度0の状態で過ごし、この長さは個人差が大きい。言い換えると、活動中すなわち運動強度が0.5以上である状態の時間の合計(以下、活動中時間という)の長さは個人差が大きい。これに対し、活動中時間の長さに占める、特定の運動強度の発生時間や各運動強度の発生時間の比率には個人差が小さく、特につかまり立ちや伝い歩きを示す運動強度1の活動の発生時間の比率は、実齢(日齢)と有意に相関するということを新たに見出した。
本発明者らは、多数の乳幼児から活動情報AIを時系列に取得することで、活動中の乳幼児に発生している運動強度を漏れなく抽出してカウントした。そして、運動強度と乳幼児の実齢(日齢)との相関関係を統計的に解析した。
【0033】
具体的には、実齢(日齢)が121日以上425日以下の31人の乳幼児を被験者として、各被験者の腰(背中側)に装着した活動情報取得部10にて重力方向の加速度を時系列的に計測し、上記の表1に示した運動強度および強度段階に分類した。各被験者からは、活動中の運動強度を示す活動情報AIをそれぞれ450カウント以上、好ましくは900カウント以上取得して複数の強度段階に分類して集計した。そして、取得された運動強度(すなわち運動強度0.5以上)の全カウントうち、運動強度1(強度段階=3)のカウントの取得頻度(以下、ある運動強度の活動情報AIの取得頻度を出現率という場合がある)を被験者ごとに算出した。
【0034】
図3(a)および(b)は、乳幼児ごとに集計された活動情報AIの集計結果の一例を示す図である。強度段階および運動強度は上記表1に対応している。
本実施形態の活動分析システム100においては、活動情報取得部10から取得した活動情報AIをデータ集計部20が運動強度に基づいて各強度段階に分類して集計することにより
図3(a)および(b)に示す集計結果を得ることができる。
【0035】
図3(a)は、乳幼児Xから合計2500カウントの活動情報AIを取得し、そのうち、たとえば運動強度0の活動情報AIが1000カウント取得されたことを表している。また、活動中であることを示す強度段階=2から6の合計1500カウントのうち、各強度段階の活動情報AIのカウント数および取得頻度(出現率)を併せて
図3に示している。この例では、強度段階=3(運動強度1)の活動情報AIの出現率は3.0%である。
図3(b)は、乳幼児Xとは異なる乳幼児Yから合計2170カウントの活動情報AIを取得し、そのうち、たとえば運動強度0の活動情報AIが800カウント取得されたことを表している。また、活動中であることを示す強度段階=2から6の合計1370カウントのうち、各強度段階の活動情報AIのカウント数および取得頻度(出現率)を併せて
図3に示している。この例では、強度段階=3(運動強度1)の活動情報AIの出現率は8.8%である。
このように、データ集計部20は、活動情報取得部10が時系列的に取得した多数の活動情報AIのうち、運動強度0.5以上の各強度段階の活動情報AIの取得頻度を、乳幼児の静止中に相当する運動強度0の活動情報AIを除いたカウント値で除することにより取得頻度(出現率)を算出することができる。
【0036】
なお、本実施形態に代えて、活動情報取得部10は、対象者(乳幼児)が静止中である場合の運動強度0の活動情報AIについては削除するなどして活動分析装置90に送信しないこととしてもよい。すなわち、活動分析装置90のデータ集計部20は、活動中の対象者(乳幼児)から取得された運動強度0.5以上の活動情報AIのみを選択して取得してもよい。
【0037】
図4は、運動強度1の出現率(縦軸y:単位は[%])と乳幼児の実齢(横軸x:単位は[日])との関係図である。
図4中に示すように、運動強度1の出現率は乳幼児の実齢と正の相関を示し、寄与率R
2=0.58と高い値となった。このことから、両者は良く相関していることが分かった。また
図4に示す回帰式は、
運動強度1の出現率=0.021×乳幼児の実齢−0.45 ・・・(1)
と表すことができる。
式(1)を変形すると、
乳幼児の実齢[日]=運動強度1の出現率[%]×48+23 ・・・(2)
となる。
すなわち本発明者らは、上記の運動強度1の出現率を説明変数とする単回帰式(2)によって、一般的な乳幼児の運動能力と実齢との相関関係を見出した。したがって本方法によれば、被験者となる乳幼児Bに関しても同様に活動情報AIを取得して運動強度1の出現率を算出することで、当該乳幼児Bの運動能力水準が一般的な乳幼児に比べて発達しているかまたは劣っているかを判定することが可能である。
すなわち本方法によれば、被験者となる乳幼児Bに関して、運動能力の観点から評価される相当実齢を算出することができる。相当実齢は、乳幼児の運動能力を示す活動特性の一つであり、当該乳幼児の運動能力が実齢に換算してどの程度発達しているかを表す運動発達ステージを示す指標である。
【0038】
また、本発明者らは更に検討を進め、上記の単回帰式(2)以外にも種々の回帰式により、活動情報AIに基づいて乳幼児の実齢を精度よく推定できることを明らかにした。
たとえば、運動強度0.5、1および2の各出現率を説明変数とする以下の重回帰式(3)により、乳幼児の相当実齢を更に精度よく推定することができる。
乳幼児の実齢[日]=運動強度0.5の出現率[%]×(−952)+運動強度1の出現率[%]×(−912)+運動強度2の出現率[%]×(−961)+95264 ・・・(3)
上記の重回帰式(3)における寄与率R
2は0.71に達し、単回帰式(2)よりも更に高い精度で乳幼児の実齢を推定できることが分かる。
【0039】
更に、本発明者らの検討によれば、運動強度0を除く、すなわち運動強度0.5以上の全カウントの平均運動強度と乳幼児の実齢との間にも相関があることが明らかとなった。この単回帰式は以下の式(4)で表すことができる。
乳幼児の実齢[日]=平均運動強度×705−216 ・・・(4)
上記の単回帰(4)における寄与率R
2は0.45であり、平均運動強度と乳幼児の実齢との間にも有意な相関があることが分かる。
【0040】
以上より、本方法のように活動中の乳幼児の運動強度を示す活動情報を時系列的に取得して複数の強度段階に分類して集計することにより、いずれかの強度段階に分類された活動情報の取得頻度や運動強度の平均値に基づいて乳幼児の実齢を推定することが可能である。
特に、つかまり立ちや伝い歩きのようにハイハイや歩行に比べて弱い加速度で行われる運動強度1に対応する強度段階=3に分類された活動情報の取得頻度に基づいて単回帰式(2)や重回帰式(3)に基づいて実齢を推定する場合、乳幼児ごとに個人差の大きな体力の影響を小さくすることができ、精度よい推定が可能となる。
すなわち本方法では、少なくとも一つの強度段階に分類された活動情報AIの取得頻度を回帰分析して、たとえば上記の回帰式(2)から(4)を参照して相当実齢を算出することにより、被験者となる乳幼児Bの活動特性として、当該乳幼児Bの運動能力の発達度合いを取得することが可能である。
【0041】
活動特性である運動能力の発達度合いは、上記のように相当実齢(日齢)として取得してもよく、または相当実齢を乳幼児Bの実齢で除した比率として取得してもよい。または、この比率を所定の閾値で大小判定して、たとえば優/良/可などの複数段階に区分して取得してもよい。
【0042】
図1に戻り本実施形態の活動分析システム100は記憶部40および活動特性算出部30を備えている。活動特性算出部30は、少なくとも一つの強度段階に分類された活動情報AIの取得頻度に基づいて乳幼児の運動能力の発達度合いを算出する手段である。
記憶部40は、複数のサンプル乳幼児の実齢と、これら複数のサンプル乳幼児から取得した上記活動情報AIの取得頻度(出現率)と、の相関関係を示す関係情報MRを記憶しておく。
そして活動特性算出部30は、記憶部40を参照し、被験者である乳幼児Bから取得した上記活動情報AIの取得頻度(出現率)と関係情報MRとに基づいて、当該乳幼児Bに関する運動能力の発達度合い(たとえば相当実齢)を算出する。
【0043】
関係情報MRは、たとえば上記回帰式(2)から(4)の係数や定数項の値を示す情報である。これにより、被験者である乳幼児Bから活動情報AIを取得してデータ集計部20にて一または複数の運動強度のカウントの取得頻度(出現率)を算出して活動特性算出部30に受け渡し、一方で活動特性算出部30は記憶部40を参照して関係情報MRを呼び出すことで、当該乳幼児Bの相当実齢を算出することができる。
【0044】
記憶部40は関係情報MRとして上記単回帰式(2)や(4)の係数や定数項の値を示す情報を記憶してもよく、または重回帰式(3)の複数個の係数や定数項の値を示す情報でもよい。上述したように重回帰式(3)における寄与率は単回帰式(2)や(4)における寄与率よりも高かったことから、記憶部40は重回帰式(3)の係数を含む関係情報MRを記憶しておくことが好ましい。言い換えると、関係情報MRは、ともに活動中であることを示し異なる複数の強度段階にそれぞれ分類された複数の活動情報AIの取得頻度を説明変数とする重回帰式の係数を含むことが好ましい。
【0045】
かかる活動分析システム100の動作の例について説明する。
活動情報取得部10は、活動中および静止中の乳幼児Bから活動情報AIを時系列的に取得して活動分析装置90に送信する。活動分析装置90のデータ集計部20は、活動情報取得部10で取得された活動情報AIを、静止中であることを示す第一の強度段階(運動強度0)と、ともに活動中であることを示し運動強度が互いに異なる少なくとも第二および第三の強度段階(たとえば、運動強度0.5、1、2、3)と、に分類する。ここでは、第二の強度段階を運動強度1とし、第三の強度段階を運動強度0.5などとする。
そして活動特性算出部30は、静止中の乳幼児Bの活動情報AI(運動強度0)を除き、活動中であることを示す第二の強度段階に分類された活動情報AI(運動強度1)の取得数(カウント数)に基づいて、取得頻度(出現率)を算出する。更に活動特性算出部30は、上述したように記憶部40を参照して関係情報MRを呼び出して当該乳幼児Bの相当実齢を算出する。ここでは、活動特性算出部30は、運動強度1を説明変数とする単回帰式(2)の係数や定数項の値を示す関係情報MRを呼び出すとよい。
【0046】
または、活動特性算出部30は、乳幼児Bが活動中であることを示す第二の強度段階(運動強度1)および第三の強度段階(運動強度0.5)を含む複数の強度段階の活動情報AIの取得頻度を算出してもよい。好ましくは、乳幼児Bが活動中であることを示す総ての強度段階の活動情報AIの取得頻度をそれぞれ算出してもよい。そして活動特性算出部30は、第二および第三の強度段階を含む複数の強度段階の活動情報AIの取得頻度を説明変数とする重回帰式(3)の複数個の係数や定数項の値を示す関係情報MRを呼び出すとよい。
これにより、本実施形態の活動分析システム100によれば、第二の強度段階(運動強度1)および第三の強度段階(運動強度0.5)といった複数の強度段階の活動情報AIにかかる取得頻度を説明変数に含む重回帰分析をして乳幼児Bの運動能力の発達度合い(相当実齢)を算出することができる。
【0047】
<第二実施形態>
第二実施形態では、
図2で示したログデータLDを活用する方法について説明する。本実施形態は、少なくとも一つの強度段階に分類された活動情報AIの取得回数に基づいて乳幼児の活動特性を算出するものである。
【0048】
図5は、乳幼児ごとの活動記録の例を示す図である。ここでは、
図3(a)に示した乳幼児Xに関して、運動強度ごとの活動情報AIのカウント値を行動時間に換算して「遊び時間」として表示したものである。かかるログデータLDは活動特性算出部30で生成されて出力部70を介して表示出力部80に送信され、表示出力部80にて表示出力することができる。
【0049】
上述したように、活動情報AIは活動情報取得部10にて所定の強度決定間隔ごとに算出されて活動分析装置90のデータ集計部20に送られる。データ集計部20は、
図3各図に示すように強度段階ごとに集計されたカウント値に強度決定間隔(たとえば4秒)を乗じることにより、当該乳幼児Xが活動情報AIの計測期間中における各運動強度の活動時間を算出して、活動時間情報TIを生成する。
活動時間情報TIは、一以上の運動強度にかかる強度段階に関して、当該運動強度で行われた活動時間にかかる時間情報である。データ集計部20は活動時間情報TIとして、一つの運動強度に関する活動時間の時間情報を生成してもよく、複数個、好ましくは全部の運動強度に関する活動時間の時間情報をそれぞれ生成してもよい。
【0050】
図2に示したように、本実施形態の活動情報取得部10は活動情報AIを時刻情報と対応付けて時系列的に取得する。したがって、取得される活動情報AIの強度段階には、当該乳幼児が活動中であることを示す複数の強度段階=2から6と、当該乳幼児が睡眠中などであることを示す他の強度段階=1(運動強度0)と、が含まれる。データ集計部20は、活動特性(活動時間情報TI)として、複数の強度段階=2から6にかかる活動時間と、他の強度段階=1として集計された合計時間の一部または全部である静止時間と、を算出する。
【0051】
データ集計部20が生成する活動時間情報TIは、上記の静止時間を含んでもよい。ここで、運動強度0として活動情報AIが記録された全カウント数に基づいて、睡眠または覚醒して静止している全時間を静止時間としてもよい。または、全カウント数の一部に基づいて静止時間を算出してもよい。
本実施形態のデータ集計部20は、ログデータLDに含まれる活動情報AIが示す運動強度0が所定時間(たとえば30分間)以上に亘って連続した場合に、当該乳幼児が睡眠中であると判定してもよい。データ集計部20は、運動強度0の活動情報AIが上記のように連続する所定時間に亘って発生したことを検出すると、当該所定時間の開始時刻および終了時刻をログデータLDから読み出し、当該連続している活動情報AIのカウント数に基づいて静止時間を算出する。データ集計部20は、
図5に示すように活動時間情報TIの一部として、「昼寝時間」などとして静止時間を出力してもよい。
【0052】
活動分析システム100は、各運動強度にかかる活動時間を示す活動時間情報TIを、対応する乳幼児(たとえば乳幼児X)を示す識別番号と対応付けて記憶部40に記録して保存してもよい。そして活動分析システム100は、新たに乳幼児Xの活動時間情報TIを生成して表示出力部80で出力する際に、
図5に示すように当該乳幼児Xに関する過去(直近)の一または複数の活動時間情報TIを記憶部40から呼び出して併せて出力してもよい。
【0053】
このように、本実施形態の活動分析システム100は、活動情報AIの取得回数に基づいて乳幼児の活動内容の内訳を活動特性として取得することができる。具体的には、本実施形態では活動特性として複数の強度段階ごとの活動時間をそれぞれ算出するものである。これにより、乳幼児の親や保育士は、直近の活動時間の内訳と対比して、当該乳幼児の健康状態や疲労状態を容易に把握することができる。
【0054】
<第三実施形態>
第一実施形態では、被験者となる乳幼児の活動特性として、運動能力の発達度合いを表す相当実齢を回帰分析の結果に基づいて算出することを説明した。第三実施形態では、この相当実齢を活用する第一の方法を説明する。第一の方法は、乳幼児の身体に装着して用いられる物品の機能評価を行うものである。
【0055】
第一の方法では、はじめに、評価対象物品PD(
図1参照)を身体に装着した乳幼児Bから活動情報AIを時系列的に取得して乳幼児Bの活動特性を算出する。その後またはそれ以前に、評価対象物品PDを身体に装着していない状態、または評価対象物品PDに代えて他の物品を当該乳幼児Bが身体に装着した状態で、同様に乳幼児Bの活動特性を算出する。
つぎに、算出された活動特性に基づいて、評価対象物品PDを装着した状態における乳幼児の身体の動かしやすさを評価する。
これにより、評価対象物品PDの装着の有無、または他の物品に代えて評価対象物品PDを装着した場合に、乳幼児Bの活動特性がどのように変化するかを把握することができる。
【0056】
評価対象物品PDは、乳幼児が身体に装着するものであれば特に限定されず、紙おむつ、衣服、玩具または装飾具などを例示することができる。特に紙おむつや衣服など身体に密着させて装着する物品の場合、乳幼児Bの本来の運動能力を妨げることがある。このため、評価対象物品PDを装着した状態での乳幼児Bの相当実齢と、他の物品を装着した状態での乳幼児Bの相当実齢とを対比することで、評価対象物品PDを身体に装着した状態における身体の動かしやすさを定量的に評価することができる。特に、乳幼児は言語によるコミュニケーションを十分にとることができないため、評価対象物品PDの装着感を言語で他者に伝えることができないことが多い。本実施形態によれば、評価対象物品PDの装着前後における当該乳幼児Bの相当実齢の変化を通じて、身体の動かしやすさという観点で評価対象物品PDの機能を客観的に評価することができる。
【0057】
<第四実施形態>
第四実施形態では、乳幼児の運動能力の発達度合いを表す相当実齢を活用する第二の方法を説明する。第二の方法は、乳幼児の相当実齢に基づいて、推奨される対象物品を提案するものである。
図6は物品情報PIの例を示す図である。
【0058】
第四実施形態の活動分析システム100は、
図1に示すように記憶部40および判定部50を備えている。本実施形態の記憶部40は、乳幼児Bが身体に装着して使用する複数の対象物品をそれぞれ示す物品情報PIを、使用が推奨される乳幼児Bの運動能力の発達度合いと対応づけて記憶しておく。
また、活動特性算出部30は、第一実施形態で説明したように、少なくとも一つの強度段階に分類された活動情報AIの取得頻度に基づいて乳幼児の運動能力の発達度合いを算出する。そして判定部50は、記憶部40を参照し、活動特性算出部30が算出した発達度合いに基づいて物品情報PIを抽出して出力する。
【0059】
これにより、実齢・身長・体重などの一般的なパラメータでは把握しきれない乳幼児Bの運動能力の発達度合いに応じて対象物品が出力される。たとえば紙おむつの場合、その商品パッケージにはユーザとして推奨される乳幼児の月齢や体重が表示(ユーザ表示)されることが一般的である。しかしながら、たとえば実齢(月齢)が低く体重が軽い割に活発に運動する乳幼児の場合などには、ユーザ表示に従って選択された商品では足の曲げ伸ばしが窮屈で不快感を覚える場合も想定される。これに対し、本実施形態のように乳幼児の運動能力の発達度合いに基づいて物品情報PIを抽出して出力することにより、当該乳幼児の親等は、かかる不快感を覚えさせることのない対象物品を知得することができる。
【0060】
物品情報PIにかかる対象物品としては、乳幼児が身体に装着するものであれば特に限定されず、上述した紙おむつのほか、衣服、玩具または装飾具などを挙げることができる。
【0061】
図6に示すように、物品情報PIは、乳幼児の運動能力の発達度合い(相当実齢)および当該乳幼児の実齢が共に関連づけられたテーブル形式で記憶部40に記憶されているとよい。ただし、乳幼児の実齢に代えて、または実齢に加えて、身長または体重が物品情報PIに関連づけられていてもよい。
【0062】
図6に示すテーブルのうち、対象物品AAA、BBB、CCC、DDDは、それぞれ、日齢0日以上119日以下、120日以上269日以下、270日以上359日以下、360日以上の乳幼児向けの標準物品の名称である。対象物品AAA+など末尾に+が付記されている名称の対象物品は、標準物品である対象物品AAAと同サイズであるが標準物品よりも耐久性に優れるように設計された物品である。+の個数はその傾向の強さを示している。また、対象物品BBB−など末尾に−が付記されている名称の対象物品は、標準物品である対象物品BBBと同サイズであるが標準物品よりも可動性や柔軟性に優れるなど乳幼児がより動きやすく設計された物品である。−の個数はその傾向の強さを示している。
【0063】
活動分析システム100の操作者は、対象者となる乳幼児の実齢(日齢)を示す実齢情報や、身長または体重を示す身体情報を、入力部60を通じて活動分析装置90に入力する(
図1参照)。判定部50は、入力された実齢情報や身体情報を取得する。一方で、第一実施形態で説明したように当該乳幼児から活動情報AIを取得し、活動特性算出部30で相当実齢を算出する。判定部50は、記憶部40に記憶された物品情報PIのテーブルを参照し、実齢情報や身体情報と相当実齢の算出結果とに基づいて、物品情報PIを抽出するとよい。
これにより、対象者である乳幼児の実齢と相当実齢の両者を考慮して、当該乳幼児に適合する物品情報PIにかかる対象物品を提示することができる。詳細には、たとえば実齢が220日で相当実齢が280日の乳幼児の場合、対象物品BBB+にかかる物品情報PIが抽出される。これにより、実齢に比べて運動能力が発達している当該乳幼児に対して、実齢220日に適合するサイズであり、かつ耐久性に優れる対象物品BBB+を出力して推奨することができる。また、たとえば実齢が280日で相当実齢が240日の乳幼児の場合、対象物品CCC−にかかる物品情報PIが抽出される。これにより、実齢に比べて運動能力が発達していない当該乳幼児に対しては、対象物品によって身体活動を妨げることがないように、実齢280日に適合するサイズであり、かつ可動性や柔軟性に優れる対象物品CCC−を出力して推奨することができる。
【0064】
<第五実施形態>
第五実施形態では、乳幼児の運動能力の発達度合いを表す相当実齢を活用する第三の方法を説明する。第三の方法は、乳幼児の相当実齢に基づいて、発生する事故のリスクを示す情報を提示するものである。
図7はリスク情報RIの例を示す図である。
【0065】
第五実施形態の活動分析システム100は、
図1に示すように記憶部40および判定部50を備えている。本実施形態の記憶部40は、乳幼児の運動に起因して発生する事故事象をそれぞれ示す複数のリスク情報RIを、乳幼児の運動能力の発達度合い(相当実齢)と対応づけて記憶しておく。
また、活動特性算出部30は、第一実施形態で説明したように、少なくとも一つの強度段階に分類された活動情報AIの取得頻度に基づいて乳幼児の運動能力の発達度合いを算出する。そして判定部50は、記憶部40を参照し、活動特性算出部30が算出した運動能力の発達度合い(相当実齢)に基づいてリスク情報RIを抽出して出力する。
【0066】
これにより、乳幼児の身長や実齢だけでは把握しきれない事故の発生リスクを提示することができる。たとえば
図7には、乳幼児の運動能力を示す相当実齢ごとに、一または複数のリスク情報RIが対応づけられて記録されている。これにより、たとえば実齢が200日であるとしても、相当実齢が210日以上239日以下と算出された乳幼児の親などに対して、「転倒」、「誤飲」、「やけど」などの事故事象の発生リスクも存在することを報知することができる。
【0067】
また、記憶部40は、
図7に示すように事故事象の予防方法を示す予防情報PRをリスク情報RIと対応づけて記憶している。判定部50は記憶部40を参照して相当実齢に基づいてリスク情報RIを抽出するにあたり、対応する予防情報PRも併せて抽出するとよい。そして、抽出されたリスク情報RIと併せて、当該対応づけられた予防情報PRを出力するとよい。これにより、単に事故の発生リスクを報知するだけでなく、その予防方法を併せて教示することができる。
【0068】
なお
図7では、相当実齢=119日、179日、209日および239日を境界にしてリスクマップと呼ばれるリスク段階が切り替わり、各段階のリスクマップに対応する相当実齢には重複が無い態様を例示したが、本発明はこれに限られない。リスクマップの各段階に対応する相当実齢の数値範囲は、一部同士が重複していてもよい。たとえば
図7に代えて、リスクマップ4に該当する相当実齢を210日以上259日以下とし、数値範囲の一部(240日から259日)を、隣接する他のリスクマップ(リスクマップ5)の数値範囲の一部と重複させてもよい。これにより、相当実齢が240日から259日である乳幼児に対しては、リスクマップ4および5のリスク情報RIや予防情報PRの両方を抽出して出力することで、より漏れのない注意を喚起してもよい。
【0069】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0070】
本発明の活動分析システム100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0071】
本発明は、上述した実施形態に関し、以下の活動分析方法および活動分析システムを開示する。
<1>乳幼児に装着した加速度センサを用いて活動中の前記乳幼児の運動強度を示す活動情報を時系列的に取得し、取得された前記活動情報を複数の強度段階に分類して集計することを特徴とする乳幼児の活動分析方法。
<2>少なくとも一つの前記強度段階に分類された前記活動情報の取得回数または取得頻度に基づいて前記乳幼児の活動特性を取得する<1>に記載の活動分析方法。
<3>前記活動特性として、複数の前記強度段階ごとの活動時間をそれぞれ算出する<2>に記載の活動分析方法。
<4>少なくとも一つの前記強度段階に分類された前記活動情報の取得頻度を回帰分析することにより、前記活動特性として前記乳幼児の運動能力の発達度合いを算出する<2>に記載の活動分析方法。
<5>評価対象物品を身体に装着した前記乳幼児から前記活動情報を時系列的に取得して前記乳幼児の前記活動特性を算出し、算出された前記活動特性に基づいて、前記評価対象物品を装着した状態における乳幼児の身体の動かしやすさを評価する<2>から<4>のいずれかに記載の活動分析方法。
<6>乳幼児に装着した加速度センサを用いて前記乳幼児の運動強度を示す活動情報を時系列的に取得する活動情報取得部と、前記活動情報取得部が取得した前記活動情報を複数の強度段階に分類して集計するデータ集計部と、を備える乳幼児の活動分析システム。
<7>少なくとも一つの前記強度段階に分類された前記活動情報の取得頻度に基づいて前記乳幼児の運動能力の発達度合いを算出する活動特性算出部を更に備える<6>に記載の活動分析システム。
<8>乳幼児が身体に装着して使用する複数の対象物品をそれぞれ示す物品情報を、使用が推奨される乳幼児の運動能力の発達度合いと対応づけて記憶しておく記憶部を更に備え、前記記憶部を参照し、前記活動特性算出部が算出した前記運動能力の発達度合いに基づいて前記物品情報を抽出して出力することを特徴とする<7>に記載の活動分析システム。
<9>乳幼児の運動に起因して発生する事故事象をそれぞれ示す複数のリスク情報を、乳幼児の運動能力の発達度合いと対応づけて記憶しておく記憶部を更に備え、前記記憶部を参照し、前記活動特性算出部が算出した前記発達度合いに基づいて前記リスク情報を抽出して出力することを特徴とする<7>に記載の活動分析システム。
<10>前記活動情報を時刻情報と対応付けて取得し、運動強度の時系列情報を含むログデータを生成する<1>から<5>のいずれかに記載の活動分析方法。
<11>前記乳幼児の日齢が、90日以上720日以下である<1>から<5>のいずれかに記載の活動分析方法。
<12>前記強度段階が、前記乳幼児が活動中であることを示す前記複数の強度段階と、前記乳幼児が静止中であることを示す他の強度段階と、を含み、前記活動特性として、複数の前記強度段階にかかる前記活動時間と、前記他の強度段階として集計された合計時間の一部または全部である静止時間と、を算出する<3>に記載の活動分析方法。
<13>活動中および静止中の前記乳幼児から前記活動情報を時系列的に取得し、取得された前記活動情報を、静止中であることを示す第一の強度段階と、ともに活動中であることを示し前記運動強度が互いに異なる少なくとも第二および第三の強度段階と、に分類し、第一の強度段階に分類された活動情報を除く総取得数における、第二の強度段階に分類された活動情報の取得数に基づいて前記取得頻度を算出する<4>に記載の活動分析方法。
<14>少なくとも第二および第三の強度段階の活動情報にかかる前記取得頻度をそれぞれ説明変数とする重回帰分析をすることにより前記運動能力の発達度合いを算出する<13>に記載の活動分析方法。
<15>複数のサンプル乳幼児の実齢と、前記複数のサンプル乳幼児から取得した前記活動情報の前記取得頻度と、の相関関係を示す関係情報を記憶しておく記憶部を更に備え、前記活動特性算出部は、前記記憶部を参照し、前記乳幼児から取得した前記取得頻度と前記関係情報とに基づいて前記乳幼児に関する運動能力の発達度合いを算出する<7>に記載の活動分析システム。
<16>前記記憶部は、ともに活動中であることを示し異なる複数の強度段階にそれぞれ分類された複数の前記活動情報の取得頻度を説明変数とする重回帰式の係数を含む前記関係情報を記憶する<15>に記載の活動分析システム。
<17>前記記憶部は、前記事故事象の予防方法を示す予防情報を前記リスク情報と対応づけて記憶しており、抽出された前記リスク情報と対応づけられた前記予防情報を更に出力する<9>に記載の活動分析システム。