特許第6576131号(P6576131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576131
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】車載用アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20190909BHJP
   H01Q 9/26 20060101ALI20190909BHJP
   H01Q 9/42 20060101ALI20190909BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   H01Q1/32 Z
   H01Q9/26
   H01Q9/42
   H01Q1/24 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-136915(P2015-136915)
(22)【出願日】2015年7月8日
(65)【公開番号】特開2017-22483(P2017-22483A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 隆二
【審査官】 倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−100011(JP,A)
【文献】 特表2003−531545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/24
H01Q 1/32
H01Q 9/26
H01Q 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ接続部材からボデーの表面方向に沿って伸びる第1素子本体部を有する第1アンテナ素子と、
前記アンテナ接続部材から前記ボデーの表面方向に沿って、前記第1素子本体部が伸びる方向とは異なる方向に伸びる第2素子本体部を有する第2アンテナ素子と、を備え、
前記第1アンテナ素子は、
前記アンテナ接続部材から前記第1素子本体部が伸びた先における先端部に設けられ、前記ボデーの方向に向かって伸び、その終端が前記ボデーに接触していない第1折り曲げ部を有し、
前記第2アンテナ素子は、
前記アンテナ接続部材から前記第2素子本体部が伸びた先における先端部に設けられ、前記ボデーの方向に向かって伸び、その終端が前記ボデーに接触していない第2折り曲げ部を有し、
前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子は、前記ボデーの表面に交わる面内に広がる薄膜状または板状に形成されており、
前記第1素子本体部および前記第2素子本体部のそれぞれは、前記ボデーの表面方向に沿って伸びる方向を横切る方向を幅方向とし、
前記第1折り曲げ部および前記第2折り曲げ部のそれぞれは、前記ボデーの方向に向かって伸びる方向を横切る方向を幅方向とし、
前記第1折り曲げ部の幅は、前記第1素子本体部の幅よりも狭く、
前記第2折り曲げ部の幅は、前記第2素子本体部の幅よりも狭い、ことを特徴とする車載用アンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用アンテナは、
前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子によって平衡アンテナを形成することを特徴とする車載用アンテナ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車載用アンテナにおいて、
前記アンテナ接続部材は、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子で受信された信号を増幅する増幅回路を備えることを特徴とする車載用アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用アンテナに関し、特に、ボデーに近接して配置されるアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、テレビ、ラジオ等の無線機器を自動車内で用いる機会が増えている。自動車内での無線性能を向上させるため、無線機器には自動車に取り付けられた車載用アンテナが用いられることが多い。受信周波数帯域が異なる複数の無線機器が用いられる場合、自動車には複数のアンテナが様々な位置に取り付けられることがある。例えば、アンテナは、窓ガラス、スポイラ、バンパ等における適切な領域に配置される。
【0003】
例えば、特許文献1には、スポイラに取り付けられる車載用アンテナが記載されている。特許文献2には、窓ガラスに取り付けられる車載用アンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−100011号公報
【特許文献2】特開2014−179858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車における空間を有効に利用するため、窓ガラスとルーフとの境界付近にアンテナが配置される等、ボデーに近接させてアンテナが配置される場合がある。しかし、ボデーが導体で形成されている場合、アンテナとボデーとの間の電磁気的な作用によって、アンテナの電磁気的性能が劣化する場合がある。さらに、自動車における空間を有効に利用するため、アンテナは小型であることが好ましい。
【0006】
本発明は、車載用アンテナの電磁気的性能を良好にすると共に、車載用アンテナを小型にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アンテナ接続部材からボデーの表面方向に沿って伸びる第1素子本体部を有する第1アンテナ素子と、前記アンテナ接続部材から前記ボデーの表面方向に沿って、前記第1素子本体部が伸びる方向とは異なる方向に伸びる第2素子本体部を有する第2アンテナ素子と、を備え、前記第1アンテナ素子は、前記アンテナ接続部材から前記第1素子本体部が伸びた先における先端部に設けられ、前記ボデーの方向に向かって伸び、その終端が前記ボデーに接触していない第1折り曲げ部を有し、前記第2アンテナ素子は、前記アンテナ接続部材から前記第2素子本体部が伸びた先における先端部に設けられ、前記ボデーの方向に向かって伸び、その終端が前記ボデーに接触していない第2折り曲げ部を有し、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子は、前記ボデーの表面に交わる面内に広がる薄膜状または板状に形成されており、前記第1素子本体部および前記第2素子本体部のそれぞれは、前記ボデーの表面方向に沿って伸びる方向を横切る方向を幅方向とし、前記第1折り曲げ部および前記第2折り曲げ部のそれぞれは、前記ボデーの方向に向かって伸びる方向を横切る方向を幅方向とし、前記第1折り曲げ部の幅は、前記第1素子本体部の幅よりも狭く、前記第2折り曲げ部の幅は、前記第2素子本体部の幅よりも狭い、ことを特徴とする。
【0008】
望ましくは、請求項1に記載の車載用アンテナは、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子によって平衡アンテナを形成する。
【0009】
望ましくは、前記アンテナ接続部材は、前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子で受信された信号を増幅する増幅回路を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車載用アンテナの電磁気的性能を良好にすると共に、車載用アンテナを小型にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車載用アンテナの構成を示す図である。
図2】車載用アンテナの各部の長さを説明するための図である。
図3】基板実装型アンテナユニットを示す図である。
図4】基板実装型アンテナユニットが取り付けられる位置を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1には、本発明の実施形態に係る車載用アンテナが模式的に示されている。以下の説明における上下左右の語は、構造を説明するための便宜上のものであり、車載用アンテナの取り付け姿勢を限定するものではない。
【0013】
車載用アンテナは、携帯電話、テレビ、ラジオ等の無線機器の受信アンテナとして用いられる。車載用アンテナは、第1アンテナ素子10および第2アンテナ素子12を備える。各アンテナ素子は、アンテナ接続部材としてのアンプ基板20に接続されている。アンプ基板20には、増幅回路が実装され、自動車に搭載された無線機器に至るケーブル22が接続されている。
【0014】
第1アンテナ素子10および第2アンテナ素子12は、薄膜状または板状に形成されている。第1アンテナ素子10は、給電部14−1、素子本体部16−1および折り曲げ部18−1から構成されている。各部は帯状に形成されている。給電部14−1は上下方向に伸び、一端がアンプ基板20に接続されている。給電部14−1の他端には、素子本体部16−1の一端が接続されている。素子本体部16−1は、ボデー24の表面方向に沿って左右に伸びる。素子本体部16−1の左の先端の下方からは、折り曲げ部18−1が下方に伸びる。折り曲げ部18−1はボデー24に接触しない位置に終端を有する。アンプ基板20から給電部14−1、素子本体部16−1を経て折り曲げ部18−1の終端に至るまでの長さは、受信する電波の波長の4分の1程度である。折り曲げ部18−1の幅(x軸方向の長さ)は、素子本体部16−1の幅(z軸方向の長さ)よりも狭い。
【0015】
第2アンテナ素子12は、第1アンテナ素子10と同様、給電部14−2、素子本体部16−2および折り曲げ部18−2から構成されている。給電部14−2は上下方向に伸び、一端がアンプ基板20に接続されている。給電部14−2の他端には、素子本体部16−2の一端が接続されている。素子本体部16−2は、ボデー24の表面方向に沿って左右に伸びる。素子本体部16−2の先端の下方からは、折り曲げ部18−2が下方に伸びる。折り曲げ部18−2はボデー24に接触しない位置に終端を有する。アンプ基板20から給電部14−2、素子本体部16−2を経て折り曲げ部18−2の終端に至るまでの長さは、受信する電波の波長の4分の1程度である。折り曲げ部18−2の幅は、素子本体部16−2の幅よりも狭い。
【0016】
本発明に係る車載用アンテナでは、各アンテナ素子の終端付近が折り曲げられた形状を有する。そのため、全体の幅(x軸方向の長さ)が狭くなり、車載用アンテナが小型となる。
【0017】
次に、車載用アンテナの電磁気学的な作用について説明する。第1アンテナ素子10および第2アンテナ素子12は半波長ダイポールを構成する。車載用アンテナで受信された信号はアンプ基板20に実装された増幅回路によって増幅され、その信号はケーブル22によって無線機器に伝送される。
【0018】
第1アンテナ素子10および第2アンテナ素子12に電流が流れると、その電流と空間的に対向する逆方向の電流、すなわち、逆極性の電流がボデー24に流れる。この逆極性電流は、アンテナ素子とボデー24とが近接している程大きくなる。そのため、逆極性電流は、各アンテナ素子の折り曲げ部の終端に対向する領域に集中する。逆極性電流は、車載用アンテナの受信信号レベル、定在波比、受信指向特性等のアンテナ特性を劣化させることがある。本発明に係る車載用アンテナでは、各アンテナ素子の折り曲げ部の幅が、素子本体部の幅よりも狭い。これによって、逆極性電流が広い範囲に及ぶことが回避され、折り曲げ部の幅を素子本体部の幅と同等とした場合に比べてアンテナ特性が良好となる。
【0019】
このように、本発明に係る車載用アンテナでは、各アンテナ素子の終端が折り曲げられることで折り曲げ部が形成され、さらには、各折り曲げ部の幅が素子本体部の幅よりも狭くなっている。これによって、車載用アンテナが小型になると共に、アンテナ特性が良好となる。
【0020】
図2に示されているように車載用アンテナの構造を左右対称とし、各アンテナ素子における素子本体部の長さをL1、素子本体部の幅をW1、折り曲げ部の長さをL2、折り曲げ部の幅をW2、第1アンテナ素子10と第2アンテナ素子12と隙間をdとした場合、例えば、L1=124mm、W2=10mm、L2=5mm、W2=2mm、d=2mmとすることで、450Hz〜750MHzの電波を受信するのに適した車載用アンテナが実現される。
【0021】
図3には、本発明の応用例に係る基板実装型アンテナユニット26が示されている。基板実装型アンテナユニット26は、図1に示されている車載用アンテナを樹脂基板32上に配置したものである。図1に示されている構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0022】
樹脂基板32の長手方向(x軸方向)は、第1アンテナ素子10および第2アンテナ素子12の長手方向と一致する。樹脂基板32は、長手方向に垂直な断面が弧形状を有しており、凸面側に第1アンテナ素子10および第2アンテナ素子12が配置されている。第1アンテナ素子10および第2アンテナ素子12は、樹脂基板32の表面に沿って変形した導体層によって形成されている。樹脂基板32の両端からは、z軸負方向に折り曲げ固定部30が伸びている。第1アンテナ素子10の折り曲げ部18−1は、図3の左側(奥側)の折り曲げ固定部30において下方向に伸び、第2アンテナ素子12の折り曲げ部18−2は、図3の右側(手前側)の折り曲げ固定部30において下方向に伸びている。各折り曲げ固定部30は、その板面がy軸負方向を臨んでいる。第1アンテナ素子10の給電部14−1および第2アンテナ素子12の給電部14−2のそれぞれの先端部は、樹脂基板32の表面から離れる方向に突出している。
【0023】
樹脂基板32の中央付近からは、z軸負方向に基板取り付け部28が伸びている。基板取り付け部28は、その板面がy軸負方向を臨んでいる。基板取り付け部28のy軸負方向側の板面にはアンプ基板20が固定されている。アンプ基板20には、第1アンテナ素子10の給電部14−1および第2アンテナ素子12の給電部14−2のそれぞれの先端部がy軸正方向側の板面から差し込まれ、各給電部がアンプ基板20に電気的に接続されている。また、アンプ基板20にはケーブル22の一端が接続されている。ケーブル22の他端は自動車に搭載された無線機器に接続されている。アンプ基板20はパターン導体を有し、第1アンテナ素子10の給電部14−1および第2アンテナ素子12の給電部14−2と、ケーブル22とを増幅回路を介して電気的に接続する。アンプ基板20には、基板実装型アンテナユニット26とケーブル22との間で平衡/不平衡モード変換を行うバランや、インピーダンスマッチング回路等が実装されてもよい。
【0024】
図4には、自動車100において基板実装型アンテナユニット26が取り付けられる位置が例示されている。基板実装型アンテナユニット26は、天井36の車室側における、フロントウィンドウ38と天井36との境界付近に固定されている。フロントウィンドウ38の外周付近には、フロントウィンドウ38の周囲の美観を高めるため、その車室側の面にセラミック等を原料とする装飾用塗料40が塗布されている。この装飾用塗料40には、フロントウィンドウ38の周囲を覆い隠すため、黒色のものが採用されることが多い。なお、基板実装型アンテナユニット26は、天井36からフロントウィンドウ38における装飾用塗料40が塗布された領域まで及んでいてもよい。
【0025】
基板実装型アンテナユニット26は、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子によって、平衡型アンテナである半波長ダイポールアンテナを形成する。一般に、平衡型アンテナの性能は、モノポールアンテナのような不平衡アンテナに比べて、近傍にある接地導体としてのボデーの影響を受け難い。さらに、上述のように、基板実装型アンテナユニット26が備える各アンテナ素子は、ボデーによるアンテナ性能の劣化が軽減される構造を有している。また、基板実装型アンテナユニット26は、フロントウィンドウ38のうち装飾用塗料40が塗布された領域に覆われるため、美観を損ねることが回避される。
【符号の説明】
【0026】
10 第1アンテナ素子、12 第2アンテナ素子、14−1,14−2 給電部、16−1,16−2 素子本体部、18−1,18−2 折り曲げ部、20 アンプ基板、22ケーブル、24 ボデー、26 基板実装型アンテナユニット、28 基板取り付け部、30 折り曲げ固定部、32 樹脂基板、36 天井、38 フロントウィンドウ、40 装飾用塗料、100 自動車。
図1
図2
図3
図4