(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記スライダーの軸方向の移動および回転動作を受ける口先部材は、一般に合成樹脂により成形されており、この口先部材は高級感を醸し出すために、樹脂素材の表面にメッキ処理が施される。
この場合、樹脂素材に対するメッキ処理は、口先部材の先端開口部内においてメッキが乗りにくいという問題があり、メッキ面がいわゆる梨地状になされる。このために口先部材の先端開口部内の表面粗さが大きく、スライダーとの間の摺動抵抗がより増大する。
【0008】
前記した摺動抵抗が増大した場合には、筆記動作に違和感が生じ、これが微妙に書き味の悪さとなって不快感と疲労を招く結果となる。
したがって、この種のシャープペンシルにおいては、回転部材としての前記スライダーもしくは回転部材を受ける固定部材としての例えば口先部材における先端開口部内の表面粗さを管理することは、商品の特性上において重要な課題となる。
【0009】
この発明は、前記した技術的な課題を解決するためになされたものであり、前記した摺動抵抗の増大に伴う筆記時における違和感を解消し、書き味を良好にすることにより、使用による不快感と疲労感の少ないシャープペンシルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係るシャープペンシルは、
筆記芯を軸心部分に収容し、筆記芯を支持して筆記芯と共に回転する
スライダーと、前記
スライダーを回転可能に受ける開口部を有する
口先部材とを備えたシャープペンシルであって
、前記
スライダーを受ける開口部の内周面が、JIS/B0601(1994)に規定する十点平均粗さで、5.5μm未満になされ、前記
スライダーを回転可能に受ける開口部は
、軸筒に取り付けられた口先部材の先端開口部であり
、前記先端開口部の内周
面には、メッキ処理が施され
、前記先端開口部の内周面は、軸方向に沿って同一内径になされた前端部側の第1パートと、前端部側の第1パートに続いて後端部側の内径が除々に拡大するテーパー状の第2パートとにより構成されていることを特徴とする。
【0014】
この場合、好ましい形態においては、前記筆記芯に加わる筆記圧を利用して、前記スライダーと共に筆記芯を一方向に回転させる回転駆動機構が備えられ
る。
【0015】
そして、前記回転駆動機構には、前記筆記芯に連結されて、筆記芯に加わる筆記圧に基づいて軸方向に移動すると共に、軸方向の上下にそれぞれ円環状に連続した多数のカムを形成した回転カムと、前記回転カムの上下のカムを挟むように対峙して配置された第1固定カムおよび第2固定カムとが備えられ、前記第1固定カムは、前記回転カムの軸方向の後退動作により当該回転カムの上側のカムに噛み合って、前記回転カムを一方向に回転駆動させると共に、前記第2固定カムは、前記回転カムの軸方向の前進動作により当該回転カムの下側のカムに噛み合って、前記回転カムを前記一方向に回転駆動させる
構成を好適に採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
前記したこの発明に係るシャープペンシルによると、筆記芯を支持して筆記芯と共に回転する例えば回転部材としてのスライダーの表面、もしくは前記回転部材を受ける開口部を備えた固定部材としての例えば口先部材の先端開口部内が、JIS/B0601(1994)に規定する十点平均粗さで、5.5μm未満となるように設定される。
この場合、好ましい一例として、合成樹脂素材により形成された口先部材はメッキ処理が施されて、口先部材に形成された先端開口部内のメッキ処理面が、十点平均粗さで前記した数値未満となるように管理される。
【0017】
これによると、口先部材の先端開口部と、これに軸支されるスライダーとの間の摺動抵抗が低減されて、スライダーの円滑な摺動動作を保証することができる。それ故、筆記時において違和感のない書き味に優れたシャープペンシルを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明に係るシャープペンシルについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、以下に示す各図においては同一部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により一部の図面については代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の図面に付した符号を引用して説明する場合もある。
【0020】
図1および
図2に示されているように、軸筒1の先端部には、軟質部材によるリング2が取り付けられた口先部材3が螺着されている。
そして、前記軸筒1の軸心に沿って筒状の芯ケース4が収容されており、この芯ケース4の先端部には短軸の芯ケース継手5が取り付けられ、前記芯ケース継手5を介して真ちゅう製のチャック6が連結されている。
【0021】
前記チャック6内には、その軸心に沿って図示せぬ筆記芯の通孔が形成され、またチャック6の先端部が周方向に複数(例えば3つ)に分割されて、分割された先端部は真ちゅうによりリング状に形成された締め具7内に遊嵌されている。またリング状の前記締め具7は前記チャック6の周囲を覆うようにして配置された回転駆動機構21の一部を構成する回転カム23の先端部内面に装着されている。
【0022】
前記回転カム23の前端部には、前記した口先部材3内に収容されて、その前端部が口先部材3の先端開口部より突出されるスライダー9が、回転カム23の外周面を覆うようにして嵌合されて取り付けられている。さらにスライダー9の前端部には、筆記芯を案内する先端パイプ10がパイプ保持具11を介して取り付けられている。これにより、前記スライダー9は筆記芯を軸心部分に収容して支持する機能を果たす。
そして、前記スライダー9の内周面における前記したパイプ保持具11の直後には、軸心部分に通孔を形成したゴム製の保持チャック12が装着されている。
【0023】
前記した構成により、芯ケース4に続くチャック6内に形成された通孔、および前記保持チャック12の軸心に形成された通孔を介して、先端パイプ10に至る直線状の芯挿通孔が形成されており、この直線状の芯挿通孔内に図示せぬ筆記芯が挿通される。
そして、前記した回転カム23と芯ケース継手5との間には、コイル状のチャックスプリング13が配置されている。
【0024】
すなわち、前記チャックスプリング13は、その前端部が回転カム22の内周面に形成された環状の段部に当接し、チャックスプリング13の後端部は前記芯ケース継手5の前端面に当接した状態で収容されている。したがって、前記チャックスプリング13の軸方向の拡開作用により、前記チャック6は回転カム22内を後退して、その先端部がリング状の締め具7内に収容される方向に、すなわち筆記芯を把持する方向に付勢されている。
【0025】
前記した回転カム23を含む筆記芯の回転駆動機構21は、その外郭がホルダー部材22により構成され、このホルダー部材22に円柱状に形成された前記回転カム23が回転可能に装着されている。また、前記ホルダー部材22にはゴム製のクッション部材24が装着されており、このクッション部材24に、前記回転カムとの間で滑り動作がなされる滑り部材(以下、これをトルクキャンセラーとも呼ぶ。)25が取り付けられている。
前記トルクキャンセラー25は、前記回転カム23の後端部に当接し、前記クッション部材24の弾性により、前記回転カム23を軸方向の前方に押し出す作用を与えている。
【0026】
なお、前記回転カム23、クッション部材24およびトルクキャンセラー25の内周面は、前記した芯ケース4を通す空間部になされており、これにより芯ケース4およびチャック6等は独立して軸方向に移動可能になされている。
そして、前記回転駆動機構21は、ホルダー部材22、回転カム23、クッション部材24およびトルクキャンセラー25等を備えてユニット化されており、このユニット化された回転駆動機構21の構成については、
図3〜
図8に基づいて後で説明する。
【0027】
前記回転駆動機構21を備えたシャープペンシルは、クッション部材24の作用により前記した回転カム23およびチャック6に把持された図示せぬ筆記芯を軸方向に前進した状態に保持している。
そして、筆記動作に伴い筆記芯に筆記圧が加わると、筆記芯およびこれを把持するチャック6ならびに前記回転カム23が僅かに後退して、前記クッション部材24が軸方向に圧縮される。また、筆記芯が筆記面(紙面)から放れた瞬間に、前記クッション部材24の復元作用により回転カム23およびチャック6は僅かに前進する。
【0028】
すなわち、前記回転駆動機構21は、筆記動作に伴う筆記芯の後退および前進動作(クッション動作)において、前記チャック6を介して受けて、前記した回転カム23を一方向に回転させるように作用し、その回転運動を前記チャック5に伝達させて、チャック5に把持された図示せぬ筆記芯を回転駆動するように機能する。
【0029】
ユニット化された前記回転駆動機構21は、軸筒の後端部側から挿入された消しゴム受け台31によって、軸筒1内の前方に向かって押し込まれて位置決めされている。
この消しゴム受け台31は、全体に長軸状の円筒体を構成し、その前端部付近に円環状のアンダーカット部31aが形成され、このアンダーカット部31aが軸筒1内において嵌合されて固定される。
【0030】
そして、前記アンダーカット部31aの前方は、周方向に沿って複数のスリットが施されることで蛇腹状に構成され、この蛇腹状の構成により第1スプリング体31bを構成している。また、前記アンダーカット部31aの後方は螺旋状に形成されており、この螺旋構造により第2スプリング体31cを構成している。さらに第2スプリング体31cの後方は円筒体31dを構成し、その端部には後述する消しゴムが装着されるように構成されている。
【0031】
前記消しゴム受け台31は、前述したとおりアンダーカット部31aが軸筒1内において嵌合されることで軸筒内に固定され、アンダーカット部31aの前方に形成された第1スプリング体31bがユニット化された回転駆動機構21を前方に押し込むように作用する。そして、前記回転駆動機構21の一部が軸筒1内の縮径により形成された
図1に示す段部1aに当接することにより、回転駆動機構21は軸筒1内に位置決めされて取り付けられている。
【0032】
図1に示されているように、軸筒1の後端部にはクリップ33aが一体に形成された円筒状のクリップ支持体33が、軸筒1の内周面に嵌合されて取り付けられている。そして、クリップ支持体33よりも僅かに後方に突出するようになされた前記消しゴム受け台31の後端部には、消しゴム34が着脱可能に装着されると共に、前記消しゴム34を覆うノックカバー35が、消しゴム受け台31の後端部の周面に着脱可能に取り付けられている。
【0033】
なお、前記消しゴム受け台31における消しゴム34の装着位置には、小口径になされた筆記芯の補給孔31eが形成され、その直前には軸に直交するようにして当接部31fが形成されている。
そして、消しゴム受け台31に形成された当接部31fと、前記した芯ケース4の後端部とは、軸方向に所定の間隔をもって対峙した構成にされている。
この構成によると、筆記に伴う前記したクッション動作によりチャック6および芯ケース4が若干後退しても、芯ケース4の後端部が前記消しゴム受け台の当接部31fに衝突することはなく、前記回転駆動機構21の回転動作に障害を与えるのを避けることができる。
【0034】
以上の構成において、前記したノックカバー35をノック操作することにより、前記消しゴム受け台31に形成された第2スプリング体31cは収縮し、消しゴム受け台31の当接部31fが芯ケース4を前方に押し出す。
これにより、チャック6が前進してスライダー9を若干前方に押し出す。しかしスライダー9の一部が口先部材3内に当接してその前進が阻まれるため、チャック6の先端部が締め具7から相対的に突出してチャック6による筆記芯の把持状態が解除される。
そして、前記ノック操作を解除することにより、消しゴム受け台31の第2スプリング体31cの作用により、ノックカバー35は後退すると共に、チャックスプリング13の作用によりチャック6および芯ケース4も軸筒内において後退する。
【0035】
この時、筆記芯は保持チャック12に形成された通孔内において摩擦により一時的に保持されており、この状態でチャック6が後退してその先端部が前記締め具7内に収容されることで、筆記芯を再び把持状態にする。
すなわち、ノックカバー35のノック操作の繰り返しによりチャック6が前後に移動し、これにより筆記芯の解除と把持が行われ、筆記芯はチャック6から順次前方に繰り出されるように作用する。
【0036】
図3〜
図8はユニット化された筆記芯の回転駆動機構21を示すものであり、
図3、
図5、
図7は回転カムを除いたユニットの半完成の状態で、
図4、
図6、
図8は回転カムを装着したユニットの完成状態で示している。
図に示すように、回転駆動機構21の外郭を構成するホルダー部材22は、その中央に円筒部22aが構成され、この円筒部22aの内周面が回転カム23を回転可能に、かつ軸方向に移動可能に支持する機能を果たす。
【0037】
前記円筒部22aの一端部側、すなわち回転駆動機構21を軸筒1内に装着した状態における前端部側には、軸方向に長い一対の弾性部材22bが、軸対称の位置にそれぞれ形成されている。この一対の弾性部材22bは前記した中央の円筒部22aに一体に樹脂成形により形成され、かつ細長く形成されることで弾性作用が付与されている。
そして、一対の弾性部材22bにおける円筒部22a側の基端部には、鋸歯状に形成された1つのカム(以下、第1固定カムともいう。)22cがそれぞれ一体に樹脂成形されており、この第1固定カム22cのカムの頂部は、前記弾性部材22bの先端部側に向かって成形されている。
【0038】
また、一対の弾性部材22bの先端部には、それぞれ鋸歯状に形成された1つのカム(以下、第2固定カムともいう。)22dが弾性部材22bと一体に樹脂成形されており、この第2固定カム22dのカムの頂部は、中央の円筒部22a側に向くように成形されている。
すなわち、前記した第1および第2固定カム22c,22dは軸方向に長い前記弾性部材22bの基端部および先端部において、互いに対向するように成形されている。
【0039】
前記した中央の円筒部22aの他端部側、すなわち回転駆動機構21が軸筒1内に装着された状態における後端部側には、軸方向に伸びる一対の柱状体22eが軸対称の位置に形成されており、この柱状体22eを介してリング部材22fが前記円筒部22aと一体に樹脂成形されている。
このリング部材22fを利用して、ゴム製のクッション部材24が装着されており、このクッション部材24を介して樹脂製のトルクキャンセラー25が取り付けられている。
【0040】
前記クッション部材24は円筒状に成形され、この円筒部には周方向に沿って複数のスリット24aが形成されて蛇腹状になされ、クッション部材24として軸方向の弾力性を高めている。
この実施の形態においてはゴム製のクッション部材24は、前記したリング部材22fとトルクキャンセラー25の間においてエラストマー等のゴム素材を用いて二色成形によりホルダー部材22と一体化されている。
【0041】
前記トルクキャンセラー25には、
図3に示されているように前記クッション部材24の反対面において複数の半球状の突起25aが面に沿って形成されており、この突起25aは、前記クッション部材24の弾性作用により、後述する回転カム23の後端部に当接して回転カム23を前方に押し出す作用を与えると共に、回転カム23の後端面との間で滑りが生ずるように機能する。
【0042】
図4、
図6、
図8は、前記した構成のホルダー部材22に、回転カム23を装着した状態を示している。この回転カム23は円筒状に形成されると共に、中央部が大径部になされ、その大径部の軸に直交する上下の端面には、円環状に連続した多数の鋸歯状のカム23a,23bがそれぞれ形成されている。なお、以下においては一方を上側のカム23aと称し、他方を下側のカム23bと称する場合もある。
【0043】
また、前記回転カム23の一方の小径部は、ホルダー部材22の中央の円筒部22a内に収容されて回転カム23の回転軸23cを構成している。
したがって、ホルダー部材22に回転カム23を組み付けるには、ホルダー部材22に形成された一対の弾性部材22b側から、回転カム23の回転軸23cをホルダー部材22の前記円筒部22a内に向かって押し込むことで、一対の弾性部材22bは互いに外側に押し広げられつつ回転軸23cが円筒部22a内に収容される。これにより回転駆動機構21を構成することができる。
【0044】
以上のように構成された筆記芯の回転駆動機構21によると、
図1および
図2に示すようにチャック6が筆記芯を把持した状態で、前記回転カム23はチャック6と共に軸心を中心にして回転可能になされている。そして、シャープペンシルが筆記状態以外の場合においては、回転駆動機構21内に配置された前記したゴム製のクッション部材24の作用により、前記トルクキャンセラー25を介して回転カム23は前方に付勢されている。
【0045】
一方、シャープペンシルを使用した場合、すなわち先端パイプ10から突出している筆記芯に筆記圧が加わった場合には、前記チャック6は前記クッション部材24の付勢力に抗して後退し、これに伴って回転カム23も軸方向に僅かに後退する。したがって、回転カム23に形成された鋸歯状の上側のカム23aは前記第1固定カム22cに接合して噛み合い状態になされる。
【0046】
この場合、対峙した状態の上側のカム23aと第1固定カム22cは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されており、前記したように上側カム23aが第1固定カム22cに接合して噛み合い状態になされることによって、回転カム23は上側カム23aの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
【0047】
そして、前記したように上側カム23aが第1固定カム22cに接合して噛み合い状態になされた状態においては、対峙した状態の鋸歯状の下側カム23bと第2固定カムのカム22dは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
【0048】
したがって一画の筆記が終わり、筆記芯に対する筆記圧が解かれた場合には、前記したクッション部材24の作用により回転カム23は軸方向に僅かに押し出されて前進し、回転カム23に形成された下側カム23bが、第2固定カム22dに噛み合う。これにより回転カム23は下側カム23bの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する同方向の回転駆動を再び受ける。
【0049】
以上のとおり、この実施の形態に係るシャープペンシルによると、筆記圧を受けることによる回転カム23の軸方向への往復運動に伴って、回転カム23は上側カム23aおよび下側カム23bの一歯(1ピッチ)に相当する回転駆動を受け、前記したチャック6を介してこれに把持された筆記芯も同様に一方向に回転駆動される。
したがって、筆記芯は自身が受ける回転運動と筆記による摩耗とにより、先端部が常に円錐形状になされる。それ故、書き進むにしたがって筆記芯が偏摩耗するのを防止させることができ、安定した線幅による筆記が可能となる。
【0050】
ところで、前記したシャープペンシルにおけるスライダー9は、筆記芯と共にクッション動作による軸方向の移動と、前記した回転駆動機構21による回転運動を受ける。そしてスライダー9は、軸筒1に取り付けられた口先部材3の先端開口部によって支承されるので、先端開口部内において、軸方向および回転方向に摺動抵抗を受けることになる。
この摺動抵抗は、先に説明したとおり、筆記動作に違和感を与え、これが微妙に書き味の悪さとなって不快感と疲労を招く結果となる。
【0051】
したがって、この種のシャープペンシルにおいては、前記した口先部材3の先端開口部内における表面粗さを管理することで、筆記時において違和感のない書き味に優れたシャープペンシルを提供することが可能となる。
そこで、合成樹脂を素材として、全体にメッキ処理を施した口先部材3について、その先端開口部内の表面粗さと筆記感(書き味)との関係について、評価した結果を表1に示す。なお、表1に示す口先部材3における先端開口部内の表面粗さは、十点平均粗さ〔JIS/B0601(1994)〕で示しており、測定機器として、三鷹光器株式会社製「非接触三次元測定装置NH3」を利用し、測定ピッチ10μm、先端開口部の両端から内部までの0.5mmを除いた区間を測定した。
【0053】
表1における実施例1〜3は、比較的滑らかで安定した筆記感が得られたシャープペンシルにおける前記した表面粗さの測定値であり、これに対して比較例1〜3は、筆記時の滑らかさが不足して若干不快な書き味が得られたシャープペンシルにおける前記した表面粗さの測定値を示す。
【0054】
表1に示した十点平均粗さの実測値で理解できるとおり、筆記芯の回転駆動機構を備えた前記したシャープペンシルによると、口先部材3の先端開口部の内周面における十点平均粗さが5.5μm未満の場合において、比較的滑らかで安定した筆記感が得られるシャープペンシルを提供することができる。
なお、前記表1に示す表面粗さの測定結果は、口先部材3の先端開口部の内周面を対象としたものであるが、口先部材3の先端開口部によって回動可能に支持されるスライダー9側における表面粗さについても、同様の範囲を選択することで、同様の作用効果を期待することができる。
【0055】
次に、
図9は樹脂素材により形成され、表面全体にメッキ処理が施された口先部材3の第2の実施の形態を示したものである。
冒頭において記載したとおり、表面全体にメッキ処理が施された口先部材3によると、口先部材3の先端開口部内、特に奥側の開口部内はメッキが乗りにくい。このために先端開口部内の特に奥側のメッキ面の表面粗さが大きくなり、スライダー9との間の摺動抵抗が増大するという問題が生ずる。そこで
図9に示す口先部材3は、前記したメッキが乗りにくい部分における摺動抵抗の増加を効果的に抑制させることができる好ましい例を示している。
【0056】
図9に示す口先部材3には、軸筒1の前端部に着脱可能に螺着されるための雌ねじ部3cが施されている。そして口先部材3の先端開口部hにおける内周面は、軸方向に沿って同一内径でストレートになされた前端部側の第1パート3aと、前端部側の第1パートに3a続いて、後端部側の内径が除々に拡大するテーパー状の第2パート3bとにより構成されている。そして
図9に示す例は、第2パート3bにおける後端部側へ向かった開き角度は5度、すなわち軸線に対して両側にそれぞれ2.5度の線形のテーパー角が形成されている。
【0057】
図10は、
図9に示す口先部材3を用いたシャープペンシルの前端部の構成を示した拡大断面図である。なお
図10においては、すでに説明した
図1および
図2に示す各部と同一の機能を果たす部分を同一符号で示している。したがってその詳細な説明は省略する。
図10に示したシャープペンシルによると、比較的メッキの乗りにくい先端開口部hの後端部側(第2パート3b)には、線形のテーパーが形成されてスライダー9との間に、より大きな隙間が形成されるように構成される。
これにより、スライダー9との間で生ずる摺動抵抗を効果的に低減させることができ、結果としてスライダーの円滑な摺動動作が保証され、筆記時において違和感のない書き味に優れたシャープペンシルを提供することが可能となる。
【0058】
なお、前記した実施の形態は、軸筒1の前端部に取り付けられた口先部材3によって、スライダー9を回動可能に支持した構成にされているが、この発明は、軸筒の前端部にスライダーを支持する先端開口部を設けたシャープペンシルにも採用することができ、この場合においても同様の作用効果を期待することができる。