(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プログラムは、当該グループの参加者又は当該グループに係る事項に協力する程度を表す「協力」、及び当該グループの参加者又は当該グループに係る事項に協力しない程度を表す「非協力」を含む複数の当該特性を採用し、
前記グループ状態決定手段は、「協力」及び「非協力」の各々に対応付けられた特性語の出現数又は出現比率に基づいて、当該推定対象グループにおける「協力」の度合い又は割合と、「非協力」の度合い又は割合との重み付けを含む差又は比を算出し、算出された当該差又は比に係る情報を、当該推定対象グループの協力に関する状態とする
ことを特徴とする請求項1に記載のグループ状態推定プログラム。
前記プログラムは、当該グループの参加者又は当該グループに係る事項に協力しない程度を表す「非協力」、及び当該グループの参加者に対するいじめ、強制又は脅しを表す「威圧」を含む複数の当該特性を採用し、
前記グループ状態決定手段は、「非協力」及び「威圧」の各々に対応付けられた特性語の出現数又は出現比率に基づいて、当該推定対象グループにおける「非協力」の度合い又は割合と、「威圧」の度合い又は割合との重み付けを含む和又は積を算出し、算出された当該和又は積に係る情報を、当該推定対象グループの非協力に関する状態とする
ことを特徴とする請求項3に記載のグループ状態推定プログラム。
前記プログラムは、当該グループの参加者又は当該グループに係る事項について指導する力を表す「指導」、及び当該グループに関係する分野についての学習度又は専門度を表す「学習性又は専門性」を含む複数の当該特性を採用し、
前記グループ状態決定手段は、「指導」及び「学習性又は専門性」の各々に対応付けられた特性語の出現数又は出現比率に基づいて、当該推定対象グループにおける「指導」の度合い又は割合と、「学習性又は専門性」の度合い又は割合との重み付けを含む和又は積を算出し、算出された当該和又は積に係る情報を、当該推定対象グループの指導に関する状態とする
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のグループ状態推定プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明によるグループ状態推定装置を含むグループ状態推定システムの一実施形態を示す模式図である。
【0032】
図1に示した本実施形態では、その内部状態を推定すべき対象であるグループが複数(
図1ではグループ1〜3の3つ)形成されていて、各グループの構成員である各参加者は、発話によって情報を交換し合っている。本グループ状態推定システム1は、
(a)参加者毎に取り付けられた、当該参加者の発する音声を個別に収集可能な無線マイク3と、
(b)無線マイク3から送信され、通信ネットワークを介して取得される音声情報を取りまとめて保存する音声情報データベース4と、
(c)音声情報データベース4から各グループを構成する参加者毎の音声情報を取得し、これらの音声情報に基づいて、グループ1〜3の各々の内部状態を推定するクループ状態推定装置2と
を備えている。
【0033】
ここで、無線マイク3は、発話の音声を収集する通常のマイクであってもよいが、個々の参加者の音声に限定して収音すべく、近接マイク、声帯マイク、咽頭マイクや、位相を用いる方向検知アレイマイク等であることも好ましい。また、無線マイクではなく有線によって装置2又は通信ネットワークと接続された有線マイクであってもよい。
【0034】
また、通信ネットワークは、ローカルな(プライベートな)ネットワークであってもよく、Wi−Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信網、携帯電話網等の事業者通信網(アクセスネットワーク)や、さらにはインターネット等を介して無線マイク3と音声情報データベース4及びクループ状態推定装置2とを通信接続するネットワークであってもよい。
【0035】
さらに、変更態様として、音声情報データベース4は設置されておらず、クループ状態推定装置2がその機能を包含していてもよい。また、音声情報データベース4は通常、装置2とは接続されておらず、無線マイク3からの音声情報を収集した後、適宜、装置2に接続され、収集した音声情報を装置2に出力するものとすることも可能である。
【0036】
同じく
図1に示すように、グループ1〜3の各々では、参加者が互いに発話による音声をもって、情報を提供し合っている(話し合っている)。この音声情報は、公知の音声認識技術によってテキスト化可能な情報であり、実際、後に説明するように、本実施形態ではグループ状態推定装置2においてテキストに変換される。
【0037】
この変更態様として、参加者が電話機能やテレビ会議機能を利用して、発話による音声情報を交換するものであってもよい。この場合も、無線マイク3やマイク付き端末によって収集された音声情報は後にテキストに変換される。さらに、参加者が電子メール、チャット機能や、SNS(Social Networking Service)を利用してテキスト情報を交換し合ってグループを構成してもよい。この場合、参加者が端末のキーボードやタッチパネル等の入力インタフェースを用いて提供情報を入力するならば、無線マイク3は不要となる。いずれにしても、本発明がその状態を推定する対象は、参加者がテキスト情報又はテキスト化可能な情報を提供し合うようなグループとなっている。
【0038】
ここで、本発明によるグループ状態推定装置2は、このようなグループの状態を推定するため、具体的に、
(A)参加者についての特性であってグループの状態に関わる少なくとも1つの「特性」毎に、当該特性に対応付けられた語、句、節又は文である予め設定された「特性語」を取得し、
(B)推定対象グループで提供された情報に係るテキストから「特性語」を抽出し、
(C)抽出された「特性語」の出現数又は出現比率に基づいて、推定対象グループにおける「特性」の度合い又は割合を算出し、算出された「特性」の度合い又は割合に係る情報を、推定対象グループの状態とする。
【0039】
このように、グループ状態推定装置2によれば、推定対象グループで提供された情報に係るテキストから、予め設定された「特性語」を抽出して、推定対象グループの状態を計算処理によって決定する。これにより、推定対象グループの状態を、評価者等の主観に依らずに、客観的に推定することが可能となるのである。
【0040】
実際、グループの参加者を教育したり管理したりすべき立場にある教師や管理者等にとって、グループの内部状態を把握することは大事となる。例えば、グループにおいて誰が進行・調整役を行っているのか、誰が指導的な立場で課題を解説し解決手段を提示しているのか、誰がグループに協力しているか、あるいは非協力的であって進行を妨げているのか、さらに、グループでの話し合いは活性化しているのかどうか等の内部状態を把握することは、授業を運営したり業務を管理したりする上で非常に重要となる。
【0041】
この点、グループ状態推定装置2によれば、教師や管理者等の立場の者が従来十分に観察することが困難であるようなグループの内部状態を、客観的なデータとして、教師や管理者等に提示することが可能となる。
【0042】
また、現在、教育の現場において、21世紀型教育スキルとしての批評的思考力や課題解決力を養成するべく、数人でグループを構成し、知識を交換し合ったり教え合ったり、創造的な話し合いを行ったりする協働学習が取り入れられている。しかしながら、教師が直接、教室内に形成された全ての協働学習グループに参加し、その内部状態を観察することは、実際上不可能である。これに対し、グループ状態推定装置2によれば、例えば多数の協働学習グループの1つ1つについてその内部状態、例えば協働学習への貢献の度合いや指導性の度合い、を客観的に評価した結果を、教師に提供することが可能となる。
【0043】
因みに、グループ状態推定装置2の上記構成(A)にある「特性」及び「特性語」については、後に詳細に説明するが、例えば、
(a)グループでの話し合いにおける参加者の指導性、調整性、協力性又は非協力性を「特性」とし、
(b)このような「特性」を表す発話に登場する単語等、例えば「正解です」、「してみよう」、「なるほど」及び「つまらない」を「特性語」とすることができる。
【0044】
図2は、本発明によるグループ状態推定装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
【0045】
図2によれば、グループ状態推定装置2は、通信インタフェース201と、音声情報データベース部202と、特性語蓄積部203と、タッチパネル・ディスプレイ(TP・DP)204と、キーボード(KB)205と、プロセッサ・メモリとを有する。ここで、プロセッサ・メモリは、グループ状態推定装置2に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって、グループ状態推定機能を実現させる。即ち、グループ状態推定装置2は、本発明によるグループ状態推定プログラムを搭載した、例えばパーソナル・コンピュータ(PC)、スマートフォン、又はタブレット型若しくはノート型コンピュータであってもよい。
【0046】
さらに、このプロセッサ・メモリは、機能構成部として、特性語取得部211と、テキスト分解部212と、特性語抽出部213と、グループ状態決定部214と、レコメンド情報生成部215と、主観評価値取得部216と、推定精度調整部217と、通信制御部221と、音声認識部222と、入出力制御部223とを有する。ここで、テキスト分解部212は、形態素解析部212aと、単語合成部212bとを有することも好ましい。また、グループ状態決定部214は、参加者評価部214aを有することも好ましい。尚、
図2によれは、各機能構成部を矢印で接続した処理の流れは、本発明によるグループ状態推定方法の一実施形態としても理解される。
【0047】
図2において、通信インタフェース201は、音声情報データベース4から音声情報を受信し、通信制御部221を介して音声認識部222に出力する。但し、装置2が音声情報データベース部202を備えている場合、各グループの各参加者に取り付けられた無線マイク3から出力された音声情報を直接、受信し、通信制御部221を介して音声情報データベース部202に格納することも好ましい。この際、受信される音声情報には、無線マイク3の物理アドレスや参加者によって設定された識別子情報等、参加者を特定可能な識別情報が付与されていることも好ましい。また、音声情報データベース部202は、この識別情報と登録された参加者又はグループに係る情報とを対応付けたテーブルを有し、参加者又はグループを特定可能な情報を付与した音声情報を格納することも好ましい。
【0048】
通信インタフェース201は、さらに、外部の通信ネットワーク上に設置された特性語蓄積装置5から、後述する処理に使用する特性語を受信し、通信制御部221を介して特性語取得部211に出力してもよい。但し、装置2が、所定の特性語を予め蓄積した特性語蓄積部203を備えている場合、特性語蓄積装置5から特性語を取得する必要はない。
【0049】
[特性語蓄積部]
特性語蓄積部203は、少なくとも1つの「特性」毎に、当該特性に対応付けられた語、句、節又は文である予め設定された「特性語」を蓄積している。ここで、「特性」は、参加者についての特性であってグループの状態に関わる性質・特徴を指す。このように、特性語蓄積部203は、グループの状態を推定するのに使用される特性語を収納・記録した辞書手段となっている。
【0050】
図3は、本発明に係る「特性」の一実施例を示すテーブルである。尚、このテーブルは、特性語蓄積部203(又は特性語蓄積装置5)に蓄積されたものである。
【0051】
図3に示した実施例によれば、「特性」は、グループでの話し合いに対する貢献の態様を示す貢献タイプの側面から捉えられた特性であり、具体的には、
(a)グループの参加者又はグループに係る事項について調整する力を表す「調整」、
(b)グループの参加者又はグループに係る事項について指導する力を表す「指導」、
(c)グループの参加者又はグループに係る事項に協力する程度を表す「協力」、及び
(d)グループの参加者又はグループに係る事項に協力しない程度を表す「非協力」
が「特性」として挙げられている。尚、「特性」は、当然にこの4つに限定されるものではない。例えば、貢献タイプ以外の観点から「特性」を設定してもよい。また、上記の4つのうち少なくとも1つを「特性」として採用することもできる。
【0052】
同じく
図3によれば、貢献タイプとしての各「特性」について、対応する評価観点が挙げられているが、この評価観点に基づいて、当該「特性」を適切に表す「特性語」を選択することも可能となる。
【0053】
図4は、本発明に係る「特性語」の一実施例を示すテーブルである。尚、このテーブルも、特性語蓄積部203(又は特性語蓄積装置5)に蓄積されたものである。
【0054】
図4によれば、
図3に示した各「特性」(貢献タイプ)毎に、(相当する言語特性と共に)対応する「特性語」が列挙されている。例えば、特性としての「指導」に対し、(言語特性「説明」に対応する)「するんだ」、「解いて」、・・・等の「特性語」が対応付けられている。このように、「特性語」は、参加者についての特性であってグループの状態に関わる特性に対応付けられた、予め設定された語、句、節又は文となっている。
【0055】
図5は、本発明に係る「特性語」の他の実施例を示すテーブルである。尚、このテーブルも、特性語蓄積部203(又は特性語蓄積装置5)に蓄積されたものである。
【0056】
図5によれば、数学の各単元における学習語である特性語、ICT(Information and Communication Technology)分野での専門語である特性語、及び(負の)人間関係を表すいじめ語、脅し語及び服従語に対応する特性語が列挙されている。このように、グループの内部状態を把握する目的に応じて、種々の特性語辞書を用意することが考えられる。
【0057】
このうち、学習語である特性語は、特性としての「学習性」に対応するものであり、習得された知識の質や量を示唆する語として捉えられる。例えば、数学では様々な単元が存在するが、図形、確率統計、数列等の小単元毎に、又は難易度毎に、対応する特性語を予め設定しておけば、様々な単元の問題を解く話し合いの中で、小単元毎や難易度毎に、学習による知識が十分であるか否か、又は習得された知識の質・レベルが高いか否かを推定するのに使用可能となる。
【0058】
また、専門語である特性語も、特性としての「専門性」に対応するものであるが、この特性語を用いることによって、専門分野毎に、知識の質や量を推定することが可能となる。例えば、
図4に示すように、ICT分野では通信、コンピュータ、プログラミングといった小分野毎に、対応する特性語辞書を作成しておくことも好ましい。
【0059】
さらに、話し合いを妨げる人間関係の問題を把握するため、いじめ語、脅し語、服従語等の問題のある発言を表す特性語を予め設定することも好ましい。これらの特性語の属する特性は「威圧(性)」となる。このような特性語を用いることによって、グループの参加者の性向を把握し、グループにおける適切な構成員を調整することができる。
【0060】
[特性語取得部]
図2に戻って、特性語取得部211は、特性語蓄積部203から、又は外部から通信制御部221を介して特性語を取得し、テキスト分解部212に出力する。
【0061】
[音声認識部]
音声認識部222は、参加者毎に収音された音声情報を、音声情報データベース部202から、又は外部から通信制御部221を介して取得し、当該音声情報をテキストに変換する。音声認識部222でのテキストへの変換は、周知の技術を用いて行うことができる。例えば、音声認識技術として、推定対象のグループ内で用いられる話し言葉に適した言語モデルと、当該グループの音響環境に応じた音響モデルとを設定し、音声に最も近似した語彙を推定してテキストに変換する技術を使用することができる。
【0062】
[テキスト分解部]
テキスト分解部212は、音声認識部222で変換されたテキストを、語、句、節及び/又は文に分解する。ここで、本実施形態のテキスト分解部212は、形態素解析部212aと、単語合成部212bとを有する。形態素解析部212aは、変換されたテキストを、公知の形態素解析手法によって単語に分解する。
【0063】
また、単語合成部212bは、分解されたテキストにおける単語群の幾つかを、特性語としての句、節及び/又は文に合成する。特性語は、各種特性のニュアンスや性向を表す言葉である場合が少なくなく、その表現として1つの単語に限定されるものではなく、複数の単語が繋がった言葉やフレーズ、さらには文である場合も多い。そこで、単語合成部212bは、テキストに対し形態素解析を行って得られた単語を、特性語取得部211から取得した特性語(の辞書)に合わせて連結し、抽出単位としての特性語の形にまで合成する。
【0064】
ここで、単語合成部212bは、単語を特性語相当の句、節及び/又は文に合成した結果としての合成辞書を生成し、この合成辞書を利用して、形態素解析によって得られた単語を、特性語単位に連結・合成することも好ましい。例えば下記のように、形態素解析ではテキストが単語単位に分断されているが、合成辞書では、1つの言葉に連結された結果としての特性語が登録されている。
<形態素解析結果> <特性語>
(例1) 「答え_合わせ_しよ_う」 → 「答え合わせしよう」
(例2) 「説明_でき_ない_と」 → 「説明できないと」
【0065】
[特性語抽出部]
特性語抽出部213は、分解・合成されたテキストから特性語を抽出するが、本実施形態では、分解・合成されたテキストの結果から、より具体的には、当該テキストにおける合成されていない単語並びに合成された句、節及び/又は文から、特性語を抽出する。この場合、テキストを形態素解析して得られた単語群、又は当該単語群を合成した語句等が、上述した合成辞書に登録された特性語と一致した場合に、この特性語を抽出することも好ましい。
【0066】
また、特性語抽出部213は、推定対象のグループにおける参加者毎に、当該参加者より提供された情報に係るテキスト(本実施形態では音声情報を変換して得られたテキスト)から特性語を抽出し、参加者を特定した参加者毎の特性語抽出結果を、グループ状態決定部214に出力することも好ましい。
【0067】
ここで、本実施形態における特性語の抽出処理における、音声認識部222での音声認識処理の影響について説明する。
【0068】
上述したように、音声認識部222は音声情報をテキストに変換するが、本実施形態では、通常の音声認識技術に求められるような、例えば90%以上の高い再現率(認識率)は必要とされない。即ち、一般的な音声認識技術では、例えばスピーチ等の発話の内容をできるだけ漏らすことなくテキスト化することを求められるので、音声認識における再現率をより高くしなければならない。しかしながら、本実施形態でのグループ状態の推定処理では、話し合いの発話の全てを正確且つ完全にテキスト化する必要はなく、むしろ所定の適合率を確保した上で、音声認識を行った範囲において特性語が適切に抽出されればそれでよい。言い換えれば、本実施形態では、音声認識部222での音声認識の再現率は、グループ状態の推定結果にほとんど影響しないので、高い値を要求されずに済むのである。
【0069】
図6は、特性語の抽出処理における再現率の影響を説明するためのグラフである。
【0070】
図6によれば、音声認識での再現率が100%未満の所定値である場合では、再現率が100%である場合よりも、特徴語の抽出数の絶対値は、当然に小さくなっている。しかしながら、話し合いの累計時間(又は累計のテキスト長)のいずれの時点においても、再現率が100%未満の場合の特性語抽出数は、再現率が100%の場合の抽出数の一定の割合分となっている。即ち、前者の場合での音声認識の適合率は、話し合いの時間長(又はテキスト長)の積分(累積)効果によって、再現率100%の後者の場合での適合率に匹敵する高い値を維持していると推定される。ここで、グループ状態を各特性語の抽出数(出現数)の割合(比率)で表現する場合、この特性語間の割合(比率)は、再現率が100%未満の場合でも、再現率が100%の場合と同様の概ね正確な値として算出されることになるのである。
【0071】
[グループ状態決定部]
グループ状態決定部214は、抽出された特性語の出現数(総計値)又は出現比率に基づいて、推定対象のグループにおける、対応する特性の度合い又は割合を算出し、算出された特性の度合い又は割合に係る情報を、この推定対象のグループの内部状態とする。
【0072】
ここで、グループ状態決定部214は、参加者評価部214aを有することも好ましい。この参加者評価部214aは、参加者毎に抽出された特性語の出現数(総計値)又は出現比率に基づいて、推定対象のグループにおける、参加者毎の対応する特性の度合い又は割合を算出し、算出された参加者毎の特性の度合い又は割合に係る情報を、各参加者の評価結果とする。これにより、参加者毎の評価結果を得ることもできる。また、グループ状態決定部214は、この各参加者の評価結果を集計して、グループの状態を決定することができる。
【0073】
図7は、グループ状態決定部214での処理の一実施形態を示すフローチャートである。
【0074】
(S101)推定対象のグループの参加者を1人ずつ特定する。
(S102)特定された参加者の発話による音声情報を変換したテキスト情報から抽出された、予め設定された各特性に属する特性語を収集する。
ここで、この特定された参加者について、予め設定された特性毎に、当該特性に属する抽出された特性語を記録することになる。
【0075】
(S103)収集された各特性語の重み係数を勘案して、収集された各特性語の語数を総計し、各特性のレベルを算出する。
ここで、上記の重み係数は、例えば特性語蓄積部203に蓄積された各特性語に、紐づけられた形で予め付与されていてもよい。尚、変更態様として、収集された各特性語の語数を、重み付けした上で総計し、各特性のレベルを算出することも可能である。
【0076】
また、各特性に属する特性語の語数を総計した結果を、そのまま特性レベルとすることもできる。しかしながら、個々の特性語は、当該特性語によって表現される特性にとっての重要度が異なっている。従って、以下に説明するように、特性語の語数を総計する際に、特性語蓄積部203に登録されている個々の特性語に紐づけられた重み係数を掛け算して足し合わせ、特性レベルとすることも好ましい。
【0077】
具体的に、特性Aの特性レベルCL
Aは、次式
(1) CL
A=Σ
i=1na
Wi・A
Wi
によって算出される。ここで、A
Wiは、特性Aに属する、抽出された1つの特性語の総計数(出現数)であり、iは特性Aに属する特性語を区別するパラメータであり、nは特性Aに属する特性語の語数(種類数)であり、a
Wiは、特性語A
Wiの重み係数である。また、Σ
i=1nは、パラメータiについての1からnまでの総和(summation)である。
【0078】
ここで、各特性の重み係数a
Wiは、以下に示すように蓄積されたデータから算出することができる。例えば、次式
(2) a
Wi=(Σ
j=1mA
Wij−Σ
j=1mA
Wij’)/Σ
j=1mA
Wij
に示すように、1つの特性Aについて高い評価を得ている参加者(後述する主観評価において、例えば5段階評価で4又は5であると評価された参加者)の発話においてその特性語が出現する数から、特性Aについての評価が低い参加者においてその特性語が出現する数を差し引き、さらに前者の出現数で割り算した結果を重み係数a
Wiとする。尚、このように重み係数a
Wiを規定すると、その値は通常0〜1に正規化されるが、値がマイナスとなる場合、特性としての効果は無いものと判断する。
【0079】
尚、上式(2)において、mは評価対象のグループの数であり、Σ
j=1mA
Wijは、特性Aについて評価の高い参加者における特性語の、評価対象の全てのグループでの出現数である。また、Σ
j=1mA
Wij’は、特性Aについて評価の低い参加者における特性語の、評価対象の全てのグループでの出現数である。
【0080】
図7に戻って、
(S104)この段階で、グループ参加者の全員についての処理が終了したが否かを判定する。ここで、偽の判定、即ち終了していないとの判定を行った場合、ステップS101に戻って参加者毎の処理を再開する。
【0081】
(S105)一方、ステップS104で真の判定、即ち終了したとの判定を行った場合、参加者全員の各特性レベルから偏差値を算出する。
ここで、1つの特性Aに属する全ての特性語についての総計数(総出現数)における偏差値を算出してもよい。または、1つの特性Aに属する各特性語についての総計数(出現数)における偏差値を算出することも好ましい。
【0082】
(S106)算出された偏差値をn段階評価値へ変換する。
(S107)各特性についてのn段階評価結果としての客観推定値を出力する。
ここで、n段階のnは任意に設定可能であり、例えば一般に成績評価に用いられる5段階評価としてもよい。具体的に、例えば、偏差値が35未満の場合、段階評価値を1とし、偏差値が35以上であって45未満の場合、段階評価値を2とし、偏差値が45以上であって55未満の場合、段階評価値を3とし、偏差値が55以上であって65未満の場合、段階評価値を4とし、偏差値が65以上の場合、段階評価値を5とすることができる。
【0083】
尚、当然に、この段階を決める偏差値の閾値は任意に設定可能である。実際、この段階評価値から得られる後述の客観推定値は、教師や管理者等による主観評価値の代わりとして利用されることが想定されている。従って、出力される客観推定値を、主観評価値と同じ傾向を示す値となるように調整する余地として、偏差値閾値の設定を変更可能にしておくことが好ましい。
【0084】
また、
図7に示すように、上述したステップS105〜S107と並行して、又はこれらのステップの代わりとして、以下のステップが実行されることも好ましい。
(S111)参加者全員における各特性レベルの割合を算出する。
(S112)算出された割合をグラフ表示の形で出力する。
この場合、特性レベルは、例えば、そのまま割合として視認されるように表示されてもよい。
【0085】
図8は、グループ状態決定部214で決定されたグループ状態の表示の一実施例を示すグラフである。
【0086】
図8に示すように、状態推定対象であるグループ1〜3の各々について、特性として貢献タイプを示す「調整」、「指導」、「協力」及び「非協力」の4つを採用して導出したグループの内部状態が、円グラフで表示されている。また、併せて各グループの参加者の状態(貢献度)も、レーダーチャートで表示されている。尚、本実施形態において、各参加者の状態(レーダーチャート)における「協力」は、貢献タイプの「協力」の特性語総計数から、貢献タイプの「非協力」の特性語総計数を差し引いた値に基づいて決定されている。
【0087】
例えば、グループ2の内部状態(円グラフ)を見ると、グループ1〜3の中で、また、4つの特性の中で「非協力」の割合が最も高いので、グループ2内での話し合いは良好に進行していないことが推定される。この場合、教師や管理者等は、グループ2の参加者に対し、例えば、より積極的に話し合うように指示することができる。
【0088】
また、グループ1の内部状態(円グラフ)を見ると、グループ1〜3の中で、「調整」の割合が最も低く、参加者に調整役となる人物がいないことが推定される。この点、グループ1の参加者の状態(レーダーチャート)を見ても、「調整」の十分に高い参加者が存在しない。これに対し、グループ3の参加者の状態(レーダーチャート)を見ると、グループ3には「調整度」の十分に高いKさん及びJさんが存在する。この場合、教師や管理者等は、Kさん及びJさんのいずれかをグループ1の参加者と入れ替える、という人事管理を行うことも可能となる。
【0089】
さらに、各グループの参加者の状態(レーダーチャート)を見ると、グループ1のBさん、グループ2のEさん、及びグループ3のHさんは「指導」が十分に高い。この3人は、例えば話し合いにおける課題をよく理解しているということが推定されるので、各グループの状態・評価に貢献する重要人物として認識することができる。また、これらの3人には、個人的に高い評価結果を与えることも可能となる。
【0090】
図9は、グループ状態決定部214で決定されたグループ状態の表示の他の実施例を示すグラフである。
【0091】
図9には、特性としての「学習性」及び「専門性」に属する特性語(学習語及び専門語)の出現数に基づく、グループ状態の推定結果(客観評価値)が、円グラフで表示されている。ここで、この推定対象のグループは、Aさん、Bさん、Cさん及びDさんの4人の参加者で構成されているものとする。
【0092】
図9に示すように、この円グラフには、各参加者の「学習性」及び「専門性」の度合い、即ち、学習・専門分野における知識量や理解度が明確に表されている。これにより、このグループの内部状態、例えば参加者の間での「学習性」及び「専門性」の偏り具合等を認識することができる。また、同じくこの円グラフから、例えば、4人の中でDさんが特に優れており、一方、Aさんは、尚、学習・研さんが必要であることが分かり、個々の参加者の状態を評価することも可能となる。
【0093】
尚、
図8や
図9に示されたグループ状態の推定結果(客観推定値)は、例えば、グループ状態決定部214から入出力制御部223(
図2)を介してTP・DP204へ出力され、TP・DP204の画面に表示されることも好ましい。また、通信インタフェース201を介して、外部に設置された表示装置へ送信され、そこで表示されてもよい。
【0094】
次に、グループ状態決定部214でのグループ状態決定処理の他の幾つかの実施形態を説明する。これらの実施形態は、特性語の組合せによるグループ状態の推定処理となっている。実際、特性語は、グループでの話し合いの目的に応じ、1つの特性に関連するものとしても種々のものが設定可能である。それ故に、設定された1つの特性語の出現と、他の設定された特性語の出現とが相互に関連する場合も少なくない。そこで、以下に示す実施形態では、1つの特性を、複数の特性語の出現数を勘案して推定している。
【0095】
最初に、特性として「協力」及び「非協力」を含む複数の特性が採用されている場合の実施形態を説明する。ここで、グループ内部状態としての「協力」の度合い(レベル)は、特性としての「協力」に属する特性語の出現だけでなく、これと正反対の特性である「非協力」に属する特性語の出現にも関係する。グループ状態決定部214は、特性としての「協力」及び「非協力」の各々に対応付けられた特性語の出現数又は出現比率に基づいて、推定対象のグループにおける「協力」の度合い又は割合と、「非協力」の度合い又は割合との重み付けを含む差又は比を算出し、算出された当該差又は比に係る情報を、推定対象グループの「協力」に関する状態とする。
【0096】
具体的には、グループ状態としての協力レベルCOLは、次式
(3) COL=c
a・N
CO−c
b・N
NCO
で算出することができる。ここで、N
COは特性「協力」に属する特性語の総計数(総出現数)であり、N
NCOは特性「非協力」に属する特性語の総計数(総出現数)である。また、c
a及びc
bは重み係数であり、例えばグループ状態の推定目的に合わせて値が調整される。
【0097】
次に、特性として「非協力」と、推定対象グループの参加者に対するいじめ、強制又は脅しを表す「威圧」とを含む複数の特性が採用されている場合の実施形態を説明する。ここで、グループ内部状態としての「非協力」の度合い(レベル)は、特性としての「非協力」に属する特性語の出現だけでなく、これと類似する特性である「威圧」に属する特性語(いじめ語や脅し語)の出現にも関係する。特に、この「非協力」レベルについては、話し合いを妨げるという性質を拡大して解釈すると、人間関係を悪化させる発話、即ち、その典型としていじめ語や脅し語を含む発話をも考慮する必要が生じる。グループ状態決定部214は、「非協力」及び「威圧」の各々に対応付けられた特性語の出現数又は出現比率に基づいて、推定対象グループにおける「非協力」の度合い又は割合と、「威圧」の度合い又は割合との重み付けを含む和又は積を算出し、算出された当該和又は積に係る情報を、推定対象グループの「非協力」に関する状態とする
【0098】
具体的には、グループ状態としての非協力レベルNCLは、次式
(4) NCL=c
c・N
NCO+c
d・N
CE
で算出することができる。ここで、N
NCOは特性「非協力」に属する特性語の総計数(総出現数)であり、N
CEは特性「威圧」に属する特性語の総計数(総出現数)である。また、c
c及びc
dは重み係数であり、例えばグループ状態の推定目的に合わせて値が調整される。
【0099】
次いで、特性として「指導」及び「学習性又は専門性」を含む複数の特性が採用されている場合の実施形態を説明する。ここで、グループ内部状態としての「指導」の度合い(レベル)は、特性としての「指導」に属する特性語の出現だけでなく、これと関連する特性である「学習性又は専門性」に属する特性語の出現にも関係する。実際、指導を行っている参加者は、話し合いに係る分野における習得すべき学習語や専門語を頻繁に発話することが多い。グループ状態決定部214は、特性としての「指導」及び「学習性又は専門性」の各々に対応付けられた特性語の出現数又は出現比率に基づいて、推定対象のグループにおける「指導」の度合い又は割合と、「学習性又は専門性」の度合い又は割合との重み付けを含む和又は積を算出し、算出された当該和又は積に係る情報を、推定対象グループの「指導」に関する状態とする。
【0100】
具体的には、グループ状態としての指導レベルLELは、次式
(5) LEL=c
e・N
LE+c
f・N
SP
で算出することができる。ここで、N
LEは特性「指導」に属する特性語の総計数(総出現数)であり、N
SPは特性「学習性又は専門性」に属する特性語の総計数(総出現数)である。また、c
e及びc
fは重み係数であり、例えばグループ状態の推定目的に合わせて値が調整される。
【0101】
グループの「指導」に関する状態を算出する上記の実施形態のより具体的な適用例として、新技術について話し合う会合(グループ)内で考案された発明について、特許出願に係る発明者としての個々の参加者における、当該発明への貢献度を管理者が決定する場合が挙げられる。この個々の参加者(発明者)の発明への貢献度は、この参加者の業務評価や特許報奨金額を決定するのに必要となる情報である。この場合、管理者がこの会合に出席していない状況では、参加者の発明への貢献度を判断するための適切な情報は、非常に得難い。
【0102】
これに対し、グループ状態推定装置2によれば、各参加者の発話から、「指導」に属する特性語と、この発明の技術分野に属する専門語である(「専門性」に属する)特性語とを抽出し、上式(5)を用いて、各参加者の指導レベルLELを算出し、この算出された指導レベルLELを、発明への貢献度を導出するための客観的情報とすることが可能となる。また、このケースの変更態様として、この会合に参加するに際し各参加者から提出された資料から、「指導」に属する特性語と、この発明の技術分野に属する専門語である特性語とを抽出することも可能である。この場合、各参加者の発話による音声情報を取得する必要がなくなる。
【0103】
[レコメンド情報生成部]
図2に戻って、レコメンド情報生成部215は、グループ状態決定部214で決定されたグループ状態の推定結果(客観評価値)に基づいて、教師や管理者等のグループの評価者に対し、例えばグループの活性化のための方策を生成し、推奨する形で提示する。
【0104】
例えば、
図8に示した実施例において、グループ2の内部状態(円グラフ)では、「非協力」の割合が所定の判断閾値を超えているとする。この場合、レコメンド情報生成部215は、自動的に、例えば「積極的に話し合いを行うように」との内容の指示を、TP・DP204や、グループ2内に設置されたディスプレイに表示させることも好ましい。
【0105】
また、例えば、同じく
図8に示した実施例において、既に述べたように、グループ1及び3における内部状態(円グラフ)及び参加者の状態(レーダーチャート)から、教師や管理者等は、グループ3のKさん及びJさんのいずれかをグループ1の参加者と入れ替える、という人事管理を行うことも可能である。この場合、レコメンド情報生成部215は、このようなグループ間の人事トレードを自動的に推奨するコメントを表示させてもよい。
【0106】
即ち、レコメンド情報生成部215は、少なくとも2つの推定対象グループについてグループの状態が決定されている場合に、
(a)状態の決定された2つの推定対象グループのうちで、注目する「特性」の度合い又は割合がより高い一方のグループにおける、当該「特性」の度合い又は割合が最も高い又は所定閾値以上である参加者と、
(b)当該「特性」の度合い又は割合がより低い他方のグループにおける、当該「特性」の度合い又は割合が最も低い又は所定閾値未満である参加者と
を入れ替える旨のレコメンド情報を生成することも好ましい。
【0107】
さらに、レコメンド情報生成部215は、例えば
図8に示した各参加者の状態の推定結果に基づいて、教師や管理者等に、参加者個人の評価についてのレコメンド、例えば表彰対象として推奨すること、を自動的に行うことも可能である。
【0108】
[主観評価値取得部・推定精度調整部]
次に、客観推定値における推定精度の向上化処理について説明する。以上に説明してきたグループ状態の客観推定値は、グループ状態の推定目的に対して適用可能な値となっている否かを確認されることが好ましい。ここで、実際のグループ評価現場では、グループ状態の正解はあくまで、教師や管理者といった評価者の主観評価であり、客観推定値は、それに代わる指標との位置づけとなる。従って、本実施形態では、「客観推定値」を「主観評価値」と比較し、互いの相関が高ければ正しい推定ができていると判断する。ここで、「主観評価値」は、教師や管理者等が実際にグループでの話し合いの様子を観察し、グループの内部状態を判定した結果のデータを取得して生成される。
【0109】
具体的に、
図2において、主観評価値取得部216は、教師や管理者等のグループ評価者による推定対象のグループの評価を複数段階で表現した「主観評価値」を取得する。ここで、「主観評価値」は、例えば、推定対象のグループでの話し合いを実際に観察したグループ評価者が、装置2のTP・DP204やKB205を介して、例えば「指導」、「調整」及び「協力」の各々について5段階評価結果を入力したものとすることができる。入力された「主観評価値」は、入出力制御部223を介して主観評価値取得部216に出力される。
【0110】
また、この場合、グループ状態決定部214は、抽出された特性語の出現数又は出現比率の偏差に基づいて、推定対象グループにおける、当該特性語に係る特性の度合い又は割合を、複数段階をもって表現する「客観推定値」を算出する。
【0111】
推定精度調整部217は、複数のグループにおける「客観推定値」と「主観評価値」との間の相関の度合いをより高くするように、
(a)推定に使用される特性語、及び/又は(b)複数段階を規定する閾値
を変更する。
【0112】
図10は、客観推定値と主観評価値との間の相関を調べた一実施例を示すグラフである。
【0113】
図10によれば、共に5段階評価で出力された客観推定値及び主観評価値の間の相関係数は、0.82となっている。一般に、相関係数が40%以上であれば相関が認められるとされ、相関係数が70%以上であれば強い相関があるとされる。従って、この実施例では、グループ状態推定装置2によって生成された客観推定値の推定精度が十分に高いことが理解される。
【0114】
次に、主観評価値を利用して客観推定値の推定精度を向上させる処理について説明する。
【0115】
図11は、客観推定値の推定精度向上処理の一実施形態を概略的に示すフローチャートである。ここでは、特性語蓄積部203に登録された特性語を変更して推定精度の向上を図っている。
【0116】
(S201)特性語蓄積部203に登録された特性語群について、予め設定された所定の規則に従って一部の特性語を変更する。
(S202)グループ状態決定部214で決定された、複数のグループについての複数の客観推定値と、グループ管理者から取得されたこれらのグループについての複数の客観評価値との相関係数(推定精度)を算出する。
【0117】
(S203)推定精度が、前回に算出された値と比較して向上したか否かを判定する。ここで、偽の判定(向上していないとの判定)を行った場合、ステップS201に戻って、特性語の変更を再度行う。尚、この判定の初回においては、予め推定精度(相関係数)の初期値を設定しておき、算出された推定精度がこの初期値を上回っているか否かを判定する。
【0118】
(S204)一方、ステップS203で真の判定(向上したとの判定)を行った場合、ステップS201での特性語の変更を確定し、即ち特性語の登録をこの変更した形に更新して、本処理を終了する。
【0119】
図12は、客観推定値の推定精度向上処理の他の実施形態を概略的に示すフローチャートである。ここでは、偏差値からn段階評価値へ変換する際に使用される偏差値閾値を変更して推定精度の向上を図っている。
【0120】
(S301)グループ状態決定部214で算出された特性レベルの偏差値をn段階評価値に変換する際に使用される1つ以上の偏差値閾値を、予め設定された所定の規則に従って変更する。
(S302)グループ状態決定部214で決定された、複数のグループについての複数の客観推定値と、グループ管理者から取得されたこれらのグループについての複数の客観評価値との相関係数(推定精度)を算出する。
【0121】
(S303)推定精度が、前回に算出された値と比較して向上したか否かを判定する。ここで、偽の判定(向上していないとの判定)を行った場合、ステップS301に戻って、偏差値閾値の変更を再度行う。尚、この判定の初回においては、予め推定精度(相関係数)の初期値を設定しておき、算出された推定精度がこの初期値を上回っているか否かを判定する。
【0122】
(S304)一方、ステップS303で真の判定(向上したとの判定)を行った場合、ステップS301での偏差値閾値の変更を確定し、即ち偏差値閾値の設定をこの変更した形に更新して、本処理を終了する。
【0123】
以上、
図11及び
図12に示したような処理によって、グループ状態決定部214で決定された客観推定値を、本来基準となるグループ管理者による主観評価値と同傾向となるように調整し、クループ状態の推定精度を向上させることが可能となる。
【0124】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、推定対象のグループで提供された情報に係るテキストから、予め設定された「特性語」を抽出して、推定対象グループの状態を計算処理によって決定する。その結果、参加者が発話等によって情報を提供し合うようなグループの状態を、人間の主観的な判断ではなく、客観的に推定することができる。
【0125】
これにより、例えば、教師や管理者等の立場の者が従来十分に観察することが困難であったようなグループの内部状態を、客観的なデータとして、教師や管理者等に提示することが可能となる。また、提示されたグループの内部状態の情報に基づいて、例えば、グループでの話し合いを活性化させたり、適切な授業運営や業務管理を効率的に行ったりすることも可能となる。
【0126】
さらに、教育の現場においては現在、21世紀型教育スキルを習得する切り札として協働学習が注目されているが、本発明によれば、例えば多数の協働学習グループの1つ1つについてその内部状態を客観的に評価した結果を、教師に提供することも可能となる。
【0127】
以上に述べた本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。