特許第6576146号(P6576146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576146
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】塗布装置および塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20190909BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20190909BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B05C11/10
   B05C5/02
   B05D1/26 Z
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-152583(P2015-152583)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-29922(P2017-29922A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸一
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−094356(JP,A)
【文献】 特開2011−092836(JP,A)
【文献】 特開2015−016454(JP,A)
【文献】 特開2014−008424(JP,A)
【文献】 特開2010−139973(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0072355(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B05C5/00−21/00
B05D1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体と、前記ノズル本体の下端部に設けられる吐出口と、前記ノズル本体の内部で塗布液を前記吐出口に流通する流路とを有するノズルを用いて基板に前記塗布液を塗布する塗布装置であって、
前記ノズルに前記塗布液を供給する塗布液供給部と、
前記吐出口を封止可能な封止部材を有する封止部と、
前記ノズルおよび前記封止部材のうちの少なくとも一方を移動させる移動機構部と、
前記移動機構部を制御することで前記封止部材を前記吐出口に当接させて前記吐出口を封止して前記ノズルに供給される塗布液を前記流路に貯留する貯留モードと、前記封止部材を前記吐出口から離間させて前記吐出口から前記塗布液を吐出可能とする吐出モードとを選択的に切り替える制御部と
前記ノズルの前記流路に気体を供給する気体供給部と、
前記塗布液と前記気体とを前記ノズルの前記流路に流通させる供給配管と、を備え、
前記供給配管の一方端部、中間部および他方端部はそれぞれ前記塗布液供給部、前記気体供給部および前記流路に接続され、
前記塗布液供給部は、互いに異なる第1の塗布液と第2の塗布液を前記供給配管を介して供給可能となっており、
前記制御部は、
前記供給配管および前記流路内に前記第1の塗布液が存在する状態において、前記吐出モードで前記気体供給部により前記気体を前記供給配管を介して供給して前記第1の塗布液を前記気体に置換する第1置換処理を行い、
下記の共洗い処理を行い、
前記貯留モードに切り替えるとともに前記塗布液供給部により前記第2の塗布液を前記供給配管を介して供給して前記供給配管および前記流路内に存在する前記気体を前記第2の塗布液に置換する第2置換処理を行った後で、
前記吐出モードに切り替えるとともに前記塗布液供給部により前記第2の塗布液を前記供給配管を介して供給して前記吐出口から前記第2の塗布液を吐出させる塗布処理を行う
ことを特徴とする塗布装置。
前記共洗い処理は、
前記貯留モードに切り替えるとともに前記塗布液供給部により前記第2の塗布液を前記供給配管を介して供給して前記一方端部と前記中間部との間に存在する前記第1の塗布液を少なくとも前記中間部よりも前記他方端部側に送液した後で、
前記吐出モードに切り替えるとともに前記気体供給部により前記気体を前記供給配管を介して供給することで少なくとも前記中間部よりも前記他方端部側に存在する前記第1の塗布液を前記吐出口から吐出させる
処理である。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置であって、
前記制御部は、
前記ノズルの前記流路が前記塗布液で充填されているか否かを判定する充填判定部と、 前記充填判定部により前記流路が前記塗布液で充填されたと判定されるときには前記吐出モードに切り替えるモード切替部と
を有する塗布装置。
【請求項3】
請求項に記載の塗布装置であって、
前記ノズルは、前記流路の上端部とノズル外部とを連通する気体抜き孔を有する塗布装置。
【請求項4】
請求項に記載の塗布装置であって、
前記気体抜き孔に接続されて前記流路とノズル外部とを連通する排出配管と、
前記貯留モードで前記塗布液を前記ノズルに供給している間に前記流路から前記排出配管に前記塗布液がオーバーフローするのを検知する検知部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記検知部によるオーバーフローの検知に基づいて前記ノズルの前記流路が前記塗布液で充填されたと判定する塗布装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の塗布装置であって、
前記吐出口はスリット形状を有する塗布装置。
【請求項6】
ノズル本体と、前記ノズル本体の下端部に設けられる吐出口と、前記ノズル本体の内部で塗布液を前記吐出口に流通する流路とを有するノズルを用いて基板に前記塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記吐出口に封止部材を当接させて前記吐出口を封止し前記ノズルに供給される前記塗布液を前記流路に貯留させる貯留モードと、
記封止部材を前記吐出口から離間させ前記吐出口から前記塗布液を吐出する吐出モードと、を備え、
供給配管の一方端部、中間部および他方端部はそれぞれ塗布液供給部、気体供給部および前記流路に接続され、前記塗布液供給部から互いに異なる第1の塗布液と第2の塗布液を前記供給配管を介して前記ノズルに供給可能で、かつ前記気体供給部から気体を前記供給配管を介して前記ノズルの前記流路に気体を供給可能となっており、
前記供給配管および前記流路内に前記第1の塗布液が存在する状態において、前記吐出モードで前記気体供給部により前記気体を前記供給配管を介して供給して前記第1の塗布液を前記気体に置換する第1置換処理を行い、
下記の共洗い処理を行い、
前記貯留モードに切り替えるとともに前記塗布液供給部により前記第2の塗布液を前記供給配管を介して供給して前記供給配管および前記流路内に存在する前記気体を前記第2の塗布液に置換する第2置換処理を行った後で、
前記吐出モードに切り替えるとともに前記塗布液供給部により前記第2の塗布液を前記供給配管を介して供給して前記吐出口から前記第2の塗布液を吐出させる塗布処理を行う
ことを特徴とする塗布方法。
前記共洗い処理は、
前記貯留モードに切り替えるとともに前記塗布液供給部により前記第2の塗布液を前記供給配管を介して供給して前記一方端部と前記中間部との間に存在する前記第1の塗布液を少なくとも前記中間部よりも前記他方端部側に送液した後で、
前記吐出モードに切り替えるとともに前記気体供給部により前記気体を前記供給配管を介して供給することで少なくとも前記中間部よりも前記他方端部側に存在する前記第1の塗布液を前記吐出口から吐出させる
処理である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置用ガラス基板、半導体ウェハ、PDP用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、カラーフィルター用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板などの精密電子装置用基板(以下、単に「基板」と称する)に塗布液を塗布する塗布装置および塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した精密電子装置用基板の製造工程では、基板の表面に塗布液を塗布する塗布装置が使用されている。例えば特許文献1に記載の塗布装置では、スリットノズルの下端部に形成したスリット状吐出口から塗布液を基板に向けて吐出して塗布している。このスリットノズルの内部には塗布液の流路が形成されており、スリットノズルに供給される塗布液は当該流路を介して吐出口に流通し、吐出口から吐出される。この塗布装置では、当該スリットノズルに対して2種類の塗布液が供給可能となっており、スリットノズルから吐出する塗布液を切替可能となっている。
【0003】
塗布液の切替を行う際には、先に塗布していた塗布液(先の塗布液)をスリットノズル内から除去した後で次に塗布する塗布液(次の塗布液)をスリットノズルに送り込む必要がある。上記従来装置では、スリットノズルの両端にポートが設けられている。これらのうち一方は供給専用ポートとして機能するのに対し、他方は供給兼排出ポートとして機能する。そして、塗布液の切替を行う際には、供給専用ポートを介して次の塗布液を供給するとともにスリットノズル内の流路および供給兼排出ポートを介して塗布液を取り出している。このような操作を行うことで、先の塗布液がスリットノズル内に残っていたとしても次の塗布液により押し流されてスリットノズルから除去される。そして、スリットノズル内の流路が次の塗布液に置き換わって次の塗布液で充填された後で、供給兼排出ポートからの塗布液の排出を停止するとともに供給兼排出ポートに次の塗布液を供給して吐出口からの次の塗布液を吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5041827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記スリットノズルを含む一般的なノズルでは流路と吐出口とは相互に連通しており、しかも切替作業中においてもノズルの吐出口は開放されている。このため、切替作業中にノズルの吐出口から塗布液が流出することがあった。このような現象は塗布液の切替作業での固有な問題ではなく、ノズルから特定の塗布液のみを吐出する場合にも発生する。例えばノズルの流路が上記塗布液で満たされていない場合には、塗布処理前に上記塗布液をノズルに供給して流路内に上記塗布液を貯留させる必要がある。この貯留処理中に吐出口が開放されていると、貯留処理の途中にもかかわらず、塗布液が吐出口から流出してしまう。
【0006】
このように従来技術では、ノズルの吐出口を常時開放したまま当該ノズルに塗布液を供給しているため、基板に塗布液を塗布する塗布処理中のみならず、塗布処理以外のタイミングでも塗布液が吐出口から流出することがあった。塗布液が比較的安価な場合には、塗布処理を行わない間、ノズルを基板から離れた位置に待機させ、流出する塗布液を回収して廃棄したとしても、問題視されることはなかった。しかしながら、塗布液が高価なものになると、塗布液の流出はランニングコストの増大の主要因のひとつになってしまう。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルの内部に設けられる流路を介して塗布液をノズルの下端部に設けられる吐出口から吐出して基板に塗布する塗布技術において、ノズルに塗布液が貯留される時に無駄な塗布液の流出を防止してランニングコストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一態様は、ノズル本体と、ノズル本体の下端部に設けられる吐出口と、ノズル本体の内部で塗布液を吐出口に流通する流路とを有するノズルを用いて基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、ノズルに塗布液を供給する塗布液供給部と、吐出口を封止可能な封止部材を有する封止部と、ノズルおよび封止部材のうちの少なくとも一方を移動させる移動機構部と、移動機構部を制御することで封止部材を吐出口に当接させて吐出口を封止してノズルに供給される塗布液を流路に貯留する貯留モードと、封止部材を吐出口から離間させて吐出口から塗布液を吐出可能とする吐出モードとを選択的に切り替える制御部と、ノズルの流路に気体を供給する気体供給部と、塗布液と気体とをノズルの流路に流通させる供給配管と、を備え、供給配管の一方端部、中間部および他方端部はそれぞれ塗布液供給部、気体供給部および流路に接続され、塗布液供給部は、互いに異なる第1の塗布液と第2の塗布液を供給配管を介して供給可能となっており、制御部は、供給配管および流路内に第1の塗布液が存在する状態において、吐出モードで気体供給部により気体を供給配管を介して供給して第1の塗布液を気体に置換する第1置換処理を行い、下記の共洗い処理を行い、貯留モードに切り替えるとともに塗布液供給部により第2の塗布液を供給配管を介して供給して供給配管および流路内に存在する気体を第2の塗布液に置換する第2置換処理を行った後で、吐出モードに切り替えるとともに塗布液供給部により第2の塗布液を供給配管を介して供給して吐出口から第2の塗布液を吐出させる塗布処理を行うことを特徴としている。共洗い処理は、貯留モードに切り替えるとともに塗布液供給部により第2の塗布液を供給配管を介して供給して一方端部と中間部との間に存在する第1の塗布液を少なくとも中間部よりも他方端部側に送液した後で、吐出モードに切り替えるとともに気体供給部により気体を供給配管を介して供給することで少なくとも中間部よりも他方端部側に存在する第1の塗布液を吐出口から吐出させる処理である。
【0009】
また、この発明の他の態様は、ノズル本体と、ノズル本体の下端部に設けられる吐出口と、ノズル本体の内部で塗布液を吐出口に流通する流路とを有するノズルを用いて基板に塗布液を塗布する塗布方法であって、吐出口に封止部材を当接させて吐出口を封止しノズルに供給される塗布液を流路に貯留させる貯留モードと、封止部材を吐出口から離間させ吐出口から塗布液を吐出する吐出モードと、を備え、供給配管の一方端部、中間部および他方端部はそれぞれ塗布液供給部、気体供給部および流路に接続され、塗布液供給部から互いに異なる第1の塗布液と第2の塗布液を供給配管を介してノズルに供給可能で、かつ気体供給部から気体を供給配管を介してノズルの流路に気体を供給可能となっており、供給配管および流路内に第1の塗布液が存在する状態において、吐出モードで気体供給部により気体を供給配管を介して供給して第1の塗布液を気体に置換する第1置換処理を行い、下記の共洗い処理を行い、貯留モードに切り替えるとともに塗布液供給部により第2の塗布液を供給配管を介して供給して供給配管および流路内に存在する気体を第2の塗布液に置換する第2置換処理を行った後で、吐出モードに切り替えるとともに塗布液供給部により第2の塗布液を供給配管を介して供給して吐出口から第2の塗布液を吐出させる塗布処理を行うことを特徴としている。共洗い処理は、貯留モードに切り替えるとともに塗布液供給部により第2の塗布液を供給配管を介して供給して一方端部と中間部との間に存在する第1の塗布液を少なくとも中間部よりも他方端部側に送液した後で、吐出モードに切り替えるとともに気体供給部により気体を供給配管を介して供給することで少なくとも中間部よりも他方端部側に存在する第1の塗布液を吐出口から吐出させる処理である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、ノズルの吐出口を封止可能な封止部材が設けられており、当該封止部材により吐出口を封止することで、塗布液をノズルに供給して流路に貯留している間における吐出口からの塗布液の吐出が阻止される。したがって、ノズルに塗布液が貯留される時に無駄な塗布液の流出が防止されてランニングコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明にかかる塗布装置の第1実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す塗布装置の構成を示す側面図である。
図3A】スリットノズルの斜視図である。
図3B図3Aに示すスリットノズルの内部の流路を示した図である。
図4】封止部の構成を示す図である。
図5A-5F】図1の塗布装置に装備される供給機構の構成および動作を模式的に示す図である。
図6図1に示す塗布装置を制御するための電気的構成を示すブロック図である。
図7A-7F】図7Aないし図7Fは本発明にかかる塗布装置の第2実施形態に装備される供給機構の構成および動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明にかかる塗布装置の第1実施形態を示す斜視図である。また、図2は、図1に示す塗布装置の構成を示す側面図である。なお、図1図2および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、図2では、ノズル支持体など一部の構成を省略している。
【0013】
塗布装置1は、スリットノズル2を用いて基板3の表面31に塗布液を塗布するスリットコータと呼ばれる塗布装置である。塗布装置1は、その塗布液として、レジスト液、カラーフィルター用液、ポリイミド、シリコン、ナノメタルインク、導電性材料を含むスラリーなど、種々の塗布液を用いることが可能である。また、塗布対象となる基板3についても、矩形ガラス基板、半導体基板、フィルム液晶用フレキシブル基板、フォトマスク用基板、カラーフィルター用基板、太陽電池用基板、有機EL用基板などの種々の基板に適用可能である。なお、本実施形態では、2種類の塗布液を準備しておき、1つのスリットノズル2から2種類の塗布液が切り替えて塗布される。これら2種類の塗布液を区別するために、一方の塗布液を「塗布液A」と呼ぶとともに他方の塗布液を「塗布液B」と呼ぶ。また、塗布液を区別しないときには、単に「塗布液」と呼ぶ。また、本明細書中で、「基板3の表面31」とは基板3の両主面のうち塗布液が塗布される側の主面を意味する。
【0014】
塗布装置1は、基板3を水平姿勢で吸着保持可能なステージ4と、ステージ4に保持される基板3にスリットノズル2を用いて塗布処理を施す塗布処理部5と、塗布液の切替時にスリットノズル2の吐出口を封止するための封止部6と、スリットノズル2からパージされる塗布液を回収するための回収部7と、塗布処理に先立ってスリットノズル2に対してプリディスペンス処理を施すプリディスペンス装置8と、これら各部を制御する制御部9と、を備えている。
【0015】
スリットノズル2はX方向に延びる長尺状の開口部である吐出口を有している。そして、スリットノズル2はステージ4に保持された基板3の表面31に向けて吐出口から塗布液を吐出可能となっている。なお、スリットノズル2の構成については後で詳述する。
【0016】
ステージ4は略直方体の形状を有する花崗岩等の石材で構成されており、その上面(+Z側)のうち−Y側には、略水平な平坦面に加工されて基板3を保持する保持面41を備える。保持面41には図示しない多数の真空吸着口が分散して形成されている。これらの真空吸着口により基板3が吸着されることで、塗布処理の際に基板3が所定の位置に略水平状態に保持される。なお、基板3の保持態様はこれに限定されるものではなく、例えば機械的に基板3を保持するように構成してもよい。
【0017】
また、ステージ4において保持面41の占有する領域より+Y側には、ノズル調整エリアAR1が設けられている。そして、ノズル調整エリアAR1のうち、+Y側から−Y側に封止部6、回収部7およびプリディスペンス装置8がこの順序で配置されている。
【0018】
本実施形態の塗布装置1では、スリットノズル2をY方向に移動させる移動機構部が塗布処理部5に設けられており、保持面41の上方とノズル調整エリアAR1の上方との間でスリットノズル2を往復移動させる。そして、スリットノズル2がノズル調整エリアAR1の上方に移動されている期間、すなわち、ステージ4において保持面41の占有する領域の上方にスリットノズル2がない期間に、ステージ4上で塗布処理後の先行基板3の搬出と塗布処理前の後続基板3の搬入とが行なわれる。一方、スリットノズル2が保持面41の上方を移動している間に当該保持面41上の基板3の表面31に塗布液が塗布される。
【0019】
塗布処理部5の移動機構部は、主としてステージ4の上方をX方向に横断しスリットノズル2を支持するブリッジ構造のノズル支持体51と、Y方向に延びる一対のガイドレール52に沿ってノズル支持体51およびこれに支持されるスリットノズル2を水平移動させるスリットノズル移動部53とを有している。このノズル支持体51は、スリットノズル2を固定する固定部材51aと、固定部材51aを支持するとともに昇降させる2つの昇降機構51bとを有している。なお、固定部材51aは、X軸方向を長手方向とするカーボンファイバ補強樹脂等の断面矩形の棒状部材で構成される。
【0020】
2つの昇降機構51bは固定部材51aの長手方向の両端部に連結されており、それぞれACサーボモータ及びボールネジ等を備えている。これらの昇降機構51bにより、固定部材51a及びそれに固定されたスリットノズル2が鉛直方向(Z軸方向)に昇降され、スリットノズル2の吐出口と基板3との間隔、すなわち、基板3に対する吐出口の相対的な高さが調整される。なお、固定部材51aの鉛直方向の位置は、例えば、昇降機構51bの側面に設けられた図示省略のスケール部と、当該スケール部に対向してスリットノズル2の側面などに設けられた図示省略の検出センサとを備えて構成される図示省略のリニアエンコーダにより検出される。
【0021】
このように構成されたノズル支持体51は、図1に示すように、ステージ4の左右両端部をX軸方向に沿って掛け渡し、保持面41を跨ぐ架橋構造を有している。スリットノズル移動部53は、この架橋構造体としてのノズル支持体51とそれに固定保持されたスリットノズル2とを、ステージ4上に保持される基板3に対してY軸方向に沿って相対移動させる相対的移動手段として機能する。
【0022】
スリットノズル移動部53は、±X側のそれぞれにおいて、スリットノズル2の移動をY軸方向に案内するガイドレール52と、駆動源であるリニアモータ54と、スリットノズル2の吐出口の位置を検出するためのリニアエンコーダ55とを備えている。
【0023】
2つのガイドレール52はそれぞれ、ステージ4のX軸方向の両端部にY軸方向に沿ってノズル封止位置(封止部6の配設位置)から塗布終了位置(保持面41の−Y側端部位置)までの区間を含むように延設されている。このため、スリットノズル移動部53によって2つの昇降機構51bの下端部が上記2つのガイドレール52に沿って案内されることで、スリットノズル2はノズル洗浄位置とステージ4上に保持される基板3に対向する位置との間を移動する。
【0024】
本実施形態では、各リニアモータ54は、固定子54aと移動子54bとを有するACコアレスリニアモータとして構成される。固定子54aは、ステージ4のX軸方向の両側面にY軸方向に沿って設けられている。一方、移動子54bは、昇降機構51bの外側に対して固設されている。リニアモータ54は、これら固定子54aと移動子54bとの間に生じる磁力によってスリットノズル移動部53の駆動源として機能する。
【0025】
また、各リニアエンコーダ55はそれぞれ、スケール部55aと検出部55bとを有している。スケール部55aはステージ4に固設されたリニアモータ54の固定子54aの下部にY軸方向に沿って設けられている。一方、検出部55bは、昇降機構51bに固設されたリニアモータ54の移動子54bのさらに外側に固設され、スケール部55aに対向配置される。リニアエンコーダ55は、スケール部55aと検出部55bとの相対的な位置関係に基づいて、Y軸方向におけるスリットノズル2の吐出口の位置を検出する。
【0026】
図3Aはスリットノズルの斜視図である。図3B図3Aに示すスリットノズルの内部の流路を示した図である。スリットノズル2は、一対のノズル部材211,212と、一対のサイドプレート213,214とを組み合わせてなる、ノズルボディ21を有している。より具体的には、図3Aに示すように、一対のノズル部材211,212を互いに固定するとともに、その左右の両端部に一対のサイドプレート213,214を取り付けることで、内部に流路210を有するノズルボディ21が形成される。なお、これらノズル部材211,212およびサイドプレート213,214の材料としては、例えばアルミニウム等の金属を用いることができる。
【0027】
また、各サイドプレート213,214には供給口22が設けられており、一対のノズル部材211,212への取付によって一対の供給口22が形成される。また、一対のノズル部材211,212を互いに固定すると、前方のノズル部材211の下端部と、後方のノズル部材212の下端部との間において、スリット状の開口がX方向に形成され、これがスリット状の吐出口23として機能する。そして、塗布装置1の稼働時には、一対の供給口22からノズルボディ21内の流路210へ、塗布液が後で説明する供給機構の供給配管を介して送液される。また、この塗布液は流路210を流通し、吐出口23からノズルボディ21の下方へ向けて、吐出される。なお、本実施形態では、塗布液の切替時における塗布液の供給タイミングでノズルボディ21の吐出口23は封止部6の封止部材61に当接して封止されることで吐出口23からの塗布液の流出が阻止される一方、それ以外のタイミングではノズルボディ21の吐出口23は封止部材61から離間して吐出口23から塗布液を吐出可能となっている。
【0028】
また、ノズルボディ21は図3A図3Bに示すように1つの排出口24を有する。排出口24は、ノズルボディ21の上面に設けられている。このため、例えば次に説明する封止部6により吐出口23を封止した状態で塗布液が送液されると、上記供給配管やスリットノズル2の流路210に存在している気体成分は吐出口23から吐出されることなく、排出口24からスリットノズル2の外部へ排出される。例えばスリットノズル2の流路210および供給配管の内部が窒素ガスなどの気体でパージされて塗布液が存在していない状態で塗布液の送液を開始すると、塗布液の送液によって上記気体成分は排出口24から排出されるとともに流路210に塗布液が貯留されていく(貯留処理)。これによって流路210に塗布液が充填され、気体成分の排出に続いてオーバーフローした塗布液が排出口24からスリットノズル2の外部へ排出される。なお、この実施形態では、排出口24からの塗布液の排出をセンサで検知して流路210への塗布液の充填を検出する。
【0029】
一方、封止部6による吐出口23の封止を行っていない状態で供給配管を介して塗布液をスリットノズル2に送液すると、当該スリットノズル2では塗布液が流路210を介して吐出口23に送液され、吐出口23から基板に向けて吐出される(塗布処理)。また、この状態で供給配管を介して窒素ガスなどの気体成分を送り込むと、供給配管およびスリットノズル2に残っている塗布液を吐出口23より除去することができる(パージ処理)。このように本実施形態では、封止部6は吐出口23や排出口24からの気体成分や塗布液の吐出/排出に重要な機能を果たす。
【0030】
図4は封止部の構成を示す図である。この封止部6は、封止部材61、回収ポット62およびドレイン配管63を有している。封止部材61は、ステンレス鋼板などの剛性を有するベース板611と、シリコンゴムなどの弾性を有する弾性板612とで構成されている。ベース板611は、図4に示すように、スリットノズル2の長手方向Xと並行に延設された矩形形状を有し、そのX方向長さはスリットノズル2のX方向長さより若干長くなっている。また、ベース板611の上面全体に弾性板612が固定されている。このため、塗布処理部5の移動機構部によってスリットノズル2を封止部材61の直上に位置させた後でスリットノズル2を封止高さ位置Z1まで下降させてスリットノズル2の下端部を弾性板612に押し付けると、スリットノズル2の吐出口23が封止部材61の弾性板612の表面で封止される。一方、移動機構部によってスリットノズル2を封止部材61から離れた位置に移動させることで弾性板612による吐出口23の封止が解除される。なお、上記封止処理によって、基本的には吐出口23からの塗布液の吐出/流出は阻止されるのであるが、吐出口23からの塗布液の漏出対策として、封止部材61を下方側から覆うように回収ポット62が配設されるとともに当該回収ポット62から下方側にドレイン配管63が延設されている。
【0031】
図2に戻って構成説明を続ける。封止部6の−Y側には回収部7が設けられている。この実施形態では、2種類の塗布液を適宜切り替えるとともに後で詳述する共洗い処理を行うために、回収部7では3種類の回収ポット7A〜7Cが設けられている。これらのうち回収ポット7Aは塗布液Aを専門的に回収するための回収ポットである。その流路210内に塗布液Aが残留しているスリットノズル2が回収ポット7Aの上方位置に移動された状態で、後述するように窒素ガスによるパージ処理によってスリットノズル2から塗布液Aが吐出されると、その塗布液Aは回収ポット7Aに回収される。回収ポット7Bは、塗布液Bを専門的に回収するための回収ポットであり、回収ポット7Aと同様にしてスリットノズル2に残留する塗布液Bを回収する。残りの回収ポット7Cは共洗い処理において生じる塗布液Aと塗布液Bの混合液を回収する回収ポットであり、回収ポット7Aと同様にしてスリットノズル2に残留する混合液(=塗布液A+塗布液B)を回収する。なお、回収ポット7Aで回収された塗布液Aおよび回収ポット7Bで回収された塗布液Bは再利用に供されるが、回収ポット7Cで回収された混合液は図示を省略する廃液処理機構に送られる。このように回収ポット7Cは廃液ポットとして機能する。また、回収ポット7A〜7Cの配列順序は図2に示す順序に限定されるものではない。
【0032】
また、図2に示すように、回収部7の−Y側にはプリディスペンス装置8が設けられている。プリディスペンス装置8は、図2に示すように、ノズル調整エリアAR1のうち−Y側に配される装置であって、その内部に溶剤84を貯留する貯留槽81と、その一部を溶剤84に浸漬しておりスリットノズル2からの塗布液の吐出対象となるプリディスペンスローラ82と、ドクターブレード83とを備えている。
【0033】
プリディスペンスローラ82は、図示省略の回転機構によって回転駆動されることにより、X軸方向に沿った軸心82a周りで矢印R1の向きに回転可能な円筒状のローラである。このプリディスペンスローラ82の下部には、貯留槽81が配置されており、プリディスペンスローラ82に塗布された塗布液を溶解可能なシンナーなどが溶剤84として貯留されている。また、シリコン製などのドクターブレード83が、プリディスペンスローラ82の外周面にその一端が接触するように設けられている。
【0034】
このように構成されたプリディスペンス装置8では、スリットノズル2がプリディスペンスローラ82の上方位置に移動された状態で、回転しているプリディスペンスローラ82に向けてスリットノズル2が塗布液を吐出することによりプリディスペンスローラ82に塗布液が塗布される。この結果、吐出口21(特に、リップ部24の先端面25)に当該塗布液の液溜りが形成される(プリディスペンス処理)。こうしてX軸方向に延びた直線状の吐出口21の全長にわたって液溜りが均一に形成されると、その後の塗布処理を高精度に遂行することが可能となる。また、プリディスペンス処理によって、吐出口21の周囲に付着した汚れた塗布液などの付着物が、吐出口21から新たに吐出される塗布液に結合してプリディスペンスローラ82の外周面に吐出され、吐出口21の周囲部分から除去される。
【0035】
次に、スリットノズル2に塗布液を供給する供給機構の構成について図5A図5Fを参照しつつ説明する。図5A図5F図1の塗布装置に装備される供給機構の構成および動作を模式的に示す図である。供給機構10は、塗布液Aの供給部101Aと、塗布液Bの供給部101Bとを有している。供給部101Aは、塗布液Aを貯留するタンクと、制御部9からの制御信号に応じて作動して当該タンクから塗布液Aを圧送するポンプ102A(図6参照)とを有している。供給部101Bは、塗布液Bを貯留するタンクと、制御部9からの制御信号に応じて作動して当該タンクから塗布液Bを圧送するポンプ102B(図6参照)とを有している。そして、供給部101Aから延設される配管103Aは三方弁104中の一のポートに接続されている。また、供給部101Bから延設される配管103Bは三方弁104中の他のポートに接続されている。三方弁104中の残りのポートは供給配管105によってスリットノズル2の流路210に接続されている。すなわち、供給配管105の一方端部は三方弁106および配管103A、103Bを介して供給部101A、101Bと接続され、制御部9からの制御信号に応じて供給配管105の接続先が供給部101A、101Bの間で切り替えられる。一方、供給配管105の他方端部は、スリットノズル2の供給口22を介して流路210と接続されている。
【0036】
この供給配管105の中間部には、別の三方弁106が介設されている。この三方弁106のうちの残りのポートには、配管107によって図略の窒素ガス供給源と接続されている。ここで、窒素ガス供給源として、塗布装置1が設置される工場の用力を用いることができる。また、塗布装置1に窒素ガスボンベを窒素ガス供給源として設け、当該窒素ガスボンベから窒素ガスを供給するように構成してもよい。
【0037】
このように三方弁106を設けることで、供給配管105を介して塗布液のみならず、窒素ガスをスリットノズル2に選択的に供給可能となっている。例えば塗布液の切替時に供給配管105およびスリットノズル2の流路210に残存する塗布液をパージする時、制御部9からの制御信号に応じて三方弁106は、スリットノズル2への塗布液の送液を規制する一方で、窒素ガスのスリットノズル2への供給を許可する。これによって、例えば図5Bに示すように、スリットノズル2が回収ポット7Aの上方位置に移動された状態で三方弁106の切替によって窒素ガスが供給配管105を介してスリットノズル2に与えられると、当該窒素ガス供給によって供給配管105に残存する塗布液Aが回収ポット7Aに回収される(パージ処理)。
【0038】
なお、上記したパージ処理を行うことで供給配管105やスリットノズル2の流路210内に窒素ガスが残留する。また、塗布液に溶存していた気体成分が気泡となって供給配管105やスリットノズル2の流路210内に存在することもある。そこで、本実施形態では、スリットノズル2の排出口24に排出配管11が接続されている。また、当該排出配管11には、排出用バルブ12が介設されている。このため、制御部9からの制御信号に応じて排出用バルブ12が開成すると、スリットノズル2の流路210が排出配管11と連通され、流路210から気体成分やオーバーフローした塗布液を排出配管11を介して外部に排出可能となっている。また、排出配管11のうち排出用バルブ12に対して下流側に位置する下流側端部にはセンサ13が設けられており、このセンサ13によってスリットノズル2の排出口24から排出される液体成分(塗布液A、塗布液B、混合液)が検知され、その検知信号が制御部9に与えられる。
【0039】
図6図1に示す塗布装置を制御するための電気的構成を示すブロック図である。本実施形態では、上記のように構成された塗布装置1の各部の動作を制御するために、制御部9が設けられている。この制御部9は、一般的なコンピュータと同様に、各種演算処理を行うCPU91、基本プログラムを記憶する読み出し専用のROM92、各種情報を記憶する読み書き自在のRAM93、および処理プログラムやデータなどを記憶しておく固定ディスク94などを有している。そして、制御部9は、固定ディスク94に格納されている処理プログラムをRAM93に展開し、これをCPU91によって実行することにより、塗布装置1の各部を制御して塗布液Aを用いた第1の塗布処理、塗布液Bを用いた第2の塗布処理、ならびに塗布液A(B)から塗布液B(A)に切り替えるための切替処理を行う。特に、本実施形態では、CPU91は、後で詳述するように、スリットノズル2の流路210が塗布液で充填されているか否かを判定する充填判定部911としての機能、ならびに流路の充填判定結果に基づいて処理内容を切り替えるモード切替部912としての機能を備えている。以下、図5A図5Fを参照しつつ塗布装置1で実行される塗布液の供給動作および塗布動作について説明する。なお、ここでは、発明の特徴の理解を容易とするために、塗布液Aによる第1の塗布処理から塗布液Bによる第2の塗布処理に切り替わる際に実行される主要動作の一例を図5A図5Fに示して説明する。また、これらの図面ならびに後で説明する図7A図7Fにおける(CL)、(OP)はそれぞれバルブ12の閉成および開成を示している。
【0040】
ステージ4の保持面41に基板3が搬入されると、制御部9は真空吸着口により基板3を吸着させた後、リニアモータ54を制御することによりスリットノズル2を吐出開始位置に移動させる。ここで、吐出開始位置とは、基板3の表面31に塗布液を塗布すべき塗布領域の一辺にスリットノズル2がほぼ沿う位置である。
【0041】
スリットノズル2が吐出開始位置まで移動すると、制御部9が制御信号をリニアモータ54に与える。その制御信号に基づいて、リニアモータ54がブリッジ構造のノズル支持体51をY方向に移動させることでスリットノズル2が基板3の表面31を走査する。このスリットノズル2の走査と並行して、制御部9は供給機構10の各部に制御信号を与え、この制御信号に応じて供給機構10のポンプ102Aを駆動する。この時点では、三方弁104が供給配管105の一方端部を配管103Aに接続する状態に切り替えられるとともに三方弁106が供給配管105への窒素ガスの流入を阻止して供給配管105を介しての塗布液の送液が可能な状態に切り替えられている。また、図5Aに示すように、排出用バルブ12が閉成された状態で供給配管105およびスリットノズル2の流路210に塗布液Aが充填されている。そのため、ポンプ102Aの駆動によって供給部101Aのタンク(図示省略)から塗布液Aが配管103A、三方弁104、106および供給配管105を介してスリットノズル2に向けて圧送され、スリットノズル2の吐出口23から基板3の表面31に向けて吐出される。なお、制御部9は、スリットノズル2から吐出される塗布液の流量を調整して表面31上に形成される塗布膜が所望膜厚を有するように、供給機構10を制御する。具体的には、ポンプ102Aの駆動速度を制御する。この点については、後の実施形態においても同様である。
【0042】
以上のような動作により、スリットノズル2が塗布領域に塗布液を吐出し、基板3の表面31上に塗布液の層(薄膜)が形成される。すなわち、スリットノズル2による第1の塗布処理が行われる。そして、スリットノズル2が塗布領域の終端位置の直上位置まで移動すると、制御部9はポンプ102Aの駆動を停止させて第1の塗布処理を終了させる。ここで、塗布液を「塗布液A」から「塗布液B」に切り替えて第2の塗布処理を続ける場合には、以下の処理を実行して供給配管105およびスリットノズル2の流路210に塗布液Bを充填する。
【0043】
まず、制御部9は制御信号をリニアモータ54に与え、ノズル支持体51をY方向に移動させて塗布液A専用の回収ポット7Aの上方位置に移動させ、停止させる(図5B参照)。これに続いて、制御部9は、三方弁104の接続状態および排出用バルブ12の閉成状態を維持したまま、配管107が供給配管105と接続されるように三方弁106を制御する。すると、窒素ガス供給源から圧送されてくる窒素ガスが配管107および三方弁106を介して供給配管105の中間部(三方弁106が介設された位置)に供給され、当該中間部よりスリットノズル2側に向けて送り込まれる。これにより、供給配管105の一部(中間部と他方端部との間の管内空間)およびスリットノズル2の流路23に残留している塗布液Aがスリットノズル2の吐出口23から回収ポット7Aに向けて吐出され、回収される。この回収処理が進むにしたがって上記中間部から吐出口23までの流通空間(以下「置換対象空間」という)内で塗布液Aから窒素ガスへの置換が進行する(第1置換処理)。そして、置換対象空間が完全に窒素ガスに置換されることで、置換対象空間に残留していた塗布液Aの全部が効率的に回収ポット7Aに回収される。なお、こうして回収された塗布液Aは再利用に供される。
【0044】
ここで、供給配管105では、図5Bに示すように、一方端部と中間部との間、つまり供給配管105のうち三方弁104、106で挟まれた管内空間(以下「残留空間」という)には塗布液Aが残留したままである。そこで、本実施形態では、制御部9は装置各部を制御して塗布液Bと窒素ガスとを用いた共洗い処理を実行して供給配管105から当該残留塗布液Aを回収する。この共洗い処理は、図5Cで示すステップと図5Dで示すステップとを実行するものである。すなわち、制御部9は制御信号をリニアモータ54に与え、ノズル支持体51をY方向に移動させて封止部6の上方位置に移動した後で、制御信号を昇降機構51bに与え、ノズル支持体51を下方に移動させる。これによって、スリットノズル2の下端部が弾性板612に押し付けられて吐出口23が封止される。また、制御部9は、三方弁104、106および排出用バルブ12の切替を行う。より具体的には、三方弁104は供給配管105の一方端部を配管103Bに接続する状態に切り替えられるとともに三方弁106は供給配管105への窒素ガスの流入を阻止する状態に切り替えられる。これによって、供給部101Bが配管103B、三方弁104、106および供給配管105を介してスリットノズル2と接続される。また、排出用バルブ12は開成状態に切り替えられ、スリットノズル2の排出口24から気体および流路210からオーバーフローする塗布液を排出配管11を介してノズル外部に排出可能となる。
【0045】
この状態で、制御部9は制御信号をポンプ102Bを与えて駆動する。これによって、供給部101Bのタンク(図示省略)から塗布液Bが配管103Bから圧送される。こうして圧送される塗布液Bは、図5Cに示すように、上記残留空間に残留している残留塗布液Aと混合されて混合液を形成するとともに供給配管105内に存在している窒素ガスをスリットノズル2側に押し遣る。一方、スリットノズル2の吐出口23は封止されているため、塗布液Bの送液に伴い流路210内の圧力が高まり、流路210に存在する窒素ガスは排出口24および排出配管11を介してノズル外部に排出されていくとともに混合液が流路210に貯留されていく。そして、供給配管105および流路210に存在していた窒素ガスが全部ノズル外部に排出されると、混合液がスリットノズル2からオーバーフローして排出配管11に流出する。すると、センサ13が当該混合液を検知し、その検知信号を制御部9に与える。これを受けて制御部9は、流路210が混合液(さらには塗布液B)で充填されたと判定する。こうした流路210への塗布液Bの充填判定は制御部9の充填判定部911により行われる。なお、この実施形態では、センサ13によるセンシングによって充填判定を行っているが、塗布液の供給量に基づいて行ってもよく、この場合、センサ13は不要となる。
【0046】
流路210の充填が判定されると、制御部9はポンプ102Bの駆動を停止して塗布液Bの供給を中断する。また、制御部9は制御信号を排出用バルブ12に与えて閉成させる。これによって混合液のノズル外部への排出が停止される。こうして、混合液が流路210に確実にトラップされる。
【0047】
次に、制御部9は制御信号を昇降機構51bに与え、ノズル支持体51を上方に移動させる。これによって、スリットノズル2の下端部が弾性板612から上方に離れ、封止状態が解除される。なお、この段階では、塗布液および窒素ガスのいずれも送られておらず、しかも排出用バルブ12も閉成されている。このため、流路210に貯留されている混合液に対して吐出口23を介して大気圧が作用し、吐出口23からの混合液の流出が規制されている。この状態のままスリットノズル2を回収ポット7Cの上方に移動させて廃液処理を行うために、制御部9は制御信号をリニアモータ54に与え、ノズル支持体51をY方向に移動させて回収ポット7Cの上方位置に移動させ、停止させる(図5D参照)。これに続いて、制御部9は、三方弁104の接続状態および排出用バルブ12の閉成状態を維持したまま、配管107が供給配管105と接続されるように三方弁106を制御する。これによって、塗布液Aの回収ポット7Aへの回収処理と同様に、窒素ガスが配管107および三方弁106を介して供給配管105の中間部(三方弁106が介設された位置)に供給され、当該中間部よりスリットノズル2側に向けて送り込まれる。これにより、供給配管105の一部(中間部と他方端部との間の管内空間)およびスリットノズル2の流路23に残留している混合液がスリットノズル2の吐出口23から回収ポット7Cに向けて吐出され、回収廃液される。こうした廃液処理は少なくとも混合液の全部を取り出すのに必要な時間だけ継続され、その時間は塗布液A、Bの成分や濃度などを考慮して予め設定することができる。なお、本実施形態では、制御部9は、混合液のみならず既に供給配管105に送り込まれた塗布液B(図5D中の破線矢印)についても全量、回収ポット7Cに回収しているが、塗布液Bの一部を残存させた状態で窒素ガスの供給を停止してもよい。
【0048】
上記のようにして共洗い処理が完了すると、制御部9は制御信号をリニアモータ54に与え、ノズル支持体51をY方向に移動させて封止部6の上方位置に移動した後で、制御信号を昇降機構51bに与え、ノズル支持体51を下方に移動させる。これによって、スリットノズル2の下端部が弾性板612に押し付けられて吐出口23が封止される(図5E参照)。また、制御部9は、三方弁104、106の接続状態を維持したまま排出用バルブ12を開成するとともに、制御信号をポンプ102Bを与えて駆動する。これによって、供給部101Bのタンク(図示省略)から塗布液Bが配管103B、三方弁104、106を介して供給配管105に圧送される。こうして圧送される塗布液Bは、図5Eに示すように、供給配管105内に存在している窒素ガスをスリットノズル2側に押し遣る。一方、スリットノズル2の吐出口23は封止されているため、塗布液Bの送液に伴い流路210内の圧力が高まり、流路210に存在する窒素ガスは排出口24および排出配管11を介してノズル外部に排出されていくとともに塗布液Bが流路210に貯留されていく。こうして、供給配管105および流路210に存在する窒素ガスが塗布液Bに置換される(第2置換処理)。
【0049】
塗布液Bの圧送をさらに継続して行っている間に、塗布液Bがスリットノズル2からオーバーフローして排出配管11に流出する。すると、センサ13が当該塗布液Bを検知し、その検知信号を制御部9に与える。これを受けて制御部9は流路210が塗布液で充填されたと判定する。こうした流路210の充填判定は制御部9の充填判定部911により行われる。なお、この実施形態では、センサ13によるセンシングによって充填判定を行っているが、塗布液の供給量に基づいて行ってもよく、この場合、センサ13は不要となる。これらの点については、後の実施形態においても同様である。
【0050】
流路210の充填が判定されると、図5Fに示すように、制御部9はポンプ102Bの駆動を停止して塗布液Bの供給を停止するとともに制御信号を排出用バルブ12に与えて閉成させる。これによって供給配管105および流路210に気体成分を存在させることなく、次の塗布処理に用いられる塗布液Bで充填させることができ、基板3の表面31に塗布液Bを吐出して塗布膜を形成する処理(第2の塗布処理)の準備が完了する。その後の適当なタイミングで、制御部9が制御信号を昇降機構51bに与え、ノズル支持体51を上方に移動させ、さらに制御信号をリニアモータ54に与え、ノズル支持体51をY方向に移動させて吐出開始位置に移動させる。そして、塗布液Aによる第1の塗布処理と同様にして、第2の塗布処理が実行される。
【0051】
なお、塗布液Bを塗布液Aに切り替えて塗布処理を行う場合も、上記したと同様にして、塗布液Bから塗布液Aへの切替を行うことができる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、1本のスリットノズル2で2種類の塗布液A、Bを選択的に吐出することができるため、塗布液毎に専用のスリットノズルを用いて塗布処理を行う塗布装置に比べ、装置コストを低減することができる。
【0053】
また、本実施形態では、スリットノズル2の吐出口23を封止可能な弾性板612が設けられており、当該弾性板612により吐出口23を封止するが可能となっている。そして、当該吐出口23を封止した状態でスリットノズル2に塗布液を供給して流路210に貯留させる。したがって、その貯留中に吐出口23から塗布液が無駄に流出するのを確実に阻止することができる。その結果、塗布処理に要するランニングコストの低減を図ることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、塗布液Aから塗布液Bへの切替時に、図5Bに示すように供給配管105および流路210に残存する塗布液Aの全量を回収ポット7Aに回収して再利用に供することができる。また、塗布液Bから塗布液Aへの切替時も同様である。そのため、塗布液の消費量を抑制し、ランニングコストをさらに低減させることができる。
【0055】
また、上記実施形態では、塗布液の切替時に、供給配管105のうち三方弁104、106で挟まれた管内空間、つまり残留空間に切替前に使用していた塗布液(図5Bに示す実施形態では、塗布液A)が残留し、切替後で使用する塗布液(図5Bに示す実施形態では、塗布液B)の供給時に塗布液が混合されて混合液が発生するが、上記共洗い処理(図5C図5D)を行うことで混合液を効率的に取り除くことができる。なお、共洗い処理では、混合液の発生に伴い塗布液A、Bを一定量だけ廃棄する必要があるが、三方弁104、106の設置間隔を極力縮めることで廃棄量を抑制することができる。また、次に説明する第2実施形態に示すようにリンス液を供給するリンス液供給系を追加することで塗布液の混合を発生させず、塗布液A、Bの廃棄を回避することも可能である。
【0056】
図7Aないし図7Fは本発明にかかる塗布装置の第2実施形態に装備される供給機構の構成および動作を模式的に示す図である。第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、供給配管105およびスリットノズル2の内部を洗浄するリンス(洗浄)液を供給するリンス液供給部が設けられている点と、供給配管105に対する、塗布液A、B、窒素ガス等の供給位置である。なお、その他の構成は基本的に第1実施形態(図5A図5F)と同一であるため、同一構成については同一符号を付して構成説明を省略する。
【0057】
第2実施形態では、例えば図7Aに示すように、供給配管105の一方端部は四方弁108、配管103A、103B、110を介して供給部101A、101Bおよび三方弁109と接続されている。また、当該三方弁109のうち残る2つのポートには、窒素ガス供給源およびリンス液供給源がそれぞれ接続されている。一方、供給配管105の他方端部は、第1実施形態と同様にスリットノズル2の供給口22を介して流路210と接続されている。このため、制御部9からの制御信号に応じて四方弁108および三方弁109での接続状態を切り替えることで供給配管105の接続先が供給部101A、101B、窒素ガス供給源(図示省略)およびリンス液供給源(図示省略)の間で切り替えられる。その結果、供給配管105の一方端部に対し、塗布液A、塗布液B、窒素ガスおよびリンス液が選択的に供給され、第2実施形態では残留空間の発生が回避される。なお、例えば純水やDIW(脱イオン水:deionized water)などをリンス液として用いる場合には、塗布装置1を設置する工場の用力をリンス液供給源として用いることができる。もちろん、塗布装置1にリンス液を貯留したタンクを装備させ、当該タンクからポンプによってリンス液を圧送するユニットをリンス液供給源として用いてもよい。
【0058】
この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、ステージ4の保持面41に基板3が搬入されると、制御部9は真空吸着口により基板3を吸着させた後、リニアモータ54を制御することによりスリットノズル2を吐出開始位置に移動させる。そして、制御部9が制御信号をリニアモータ54に与えてスリットノズル2を基板3の表面31に対して走査させる。このスリットノズル2の走査と並行して、制御部9は供給機構10の各部に制御信号を与え、この制御信号に応じて供給機構10のポンプ102Aを駆動する。この時点では、供給配管105の一方端部が配管103Aのみに接続される状態に四方弁108および三方弁109は切り替えられている。また、図7Aに示すように、排出用バルブ12が閉成された状態で供給配管105およびスリットノズル2の流路210に塗布液Aが充填されている。そのため、ポンプ102Aの駆動によって供給部101Aのタンク(図示省略)から塗布液Aが配管103A、四方弁108および供給配管105を介してスリットノズル2に向けて圧送され、スリットノズル2の吐出口23から基板3の表面31に向けて吐出される。これにより、基板3の表面31上に塗布液Aの層(薄膜)が形成される。そして、スリットノズル2が塗布領域の終端位置の直上位置まで移動すると、制御部9はポンプ102Aの駆動を停止させて第1の塗布処理を終了させる。ここで、塗布液を「塗布液A」から「塗布液B」に切り替えて第2の塗布処理を続ける場合には、以下の処理を実行して供給配管105およびスリットノズル2の流路210に塗布液Bを充填する。
【0059】
制御部9は制御信号をリニアモータ54に与え、ノズル支持体51をY方向に移動させて塗布液A専用の回収ポット7Aの上方位置に移動させ、停止させる(図7B参照)。これに続いて、制御部9は、排出用バルブ12の閉成状態を維持したまま、供給配管105の一方端部が窒素ガス供給部のみに接続される状態に四方弁108および三方弁109を切り替える。すると、窒素ガス供給源から圧送されてくる窒素ガスが三方弁109、配管110および四方弁108を介して供給配管105の一方端部に供給され、供給配管105およびスリットノズル2の流路23に残留している塗布液Aがスリットノズル2の吐出口23から回収ポット7Aに向けて吐出され、回収される。この回収処理が進むにしたがって供給配管105および流路210内で塗布液Aから窒素ガスへの置換が進行する(第1置換処理)。そして、供給配管105および流路210が完全に窒素ガスに置換されることで、供給配管105および流路210に残留していた塗布液Aの全部が効率的に回収ポット7Aに回収される。なお、こうして回収された塗布液Aは再利用に供される。
【0060】
次に、窒素ガスに置換された供給配管105およびスリットノズル2の内部を洗浄するために、制御部9は装置各部を次のように制御する。制御部9は制御信号をリニアモータ54に与え、ノズル支持体51をY方向に移動させて回収ポット7Cの上方位置に移動させ、停止させる(図7C照)。これに続いて、制御部9は、排出用バルブ12の閉成状態を維持したまま、供給配管105の一方端部がリンス液供給部のみに接続される状態に四方弁108および三方弁109を切り替える。すると、リンス液供給源から圧送されてくるリンス液が三方弁109、配管110および四方弁108を介して供給配管105の一方端部に供給され、供給配管105およびスリットノズル2の流路23に残留している窒素ガスがスリットノズル2の吐出口23から回収ポット7Cに向けて吐出され、回収廃棄される。この回収処理が進むにしたがって供給配管105および流路210内で窒素ガスからリンス液への置換が進行する。これによって、供給配管105およびスリットノズル2の流路23の内部がリンス液によって洗浄される(リンス処理)。
【0061】
このリンス処理後、スリットノズル2を回収ポット7Cの上方位置に維持するとともに排出用バルブ12の閉成状態を維持したまま、制御部9は再び供給配管105の一方端部が窒素ガス供給部のみに接続される状態に四方弁108および三方弁109を切り替える。すると、図7Dに示すように、窒素ガスが供給配管105およびスリットノズル2の流路23の内部に存在するリンス液を吐出口23側に押圧する。これによって、リンス液が
回収ポット7Cに回収廃棄されるとともに、供給配管105およびスリットノズル2の流路23の内部が乾燥される。
【0062】
この乾燥処理が完了した後、制御部9は制御信号をリニアモータ54に与え、ノズル支持体51をY方向に移動させて封止部6の上方位置に移動した後で、制御信号を昇降機構51bに与え、ノズル支持体51を下方に移動させる。これによって、スリットノズル2の下端部が弾性板612に押し付けられて吐出口23が封止される(図7E参照)。また、制御部9は、排出用バルブ12を開成するとともに供給配管105の一方端部が配管103Bのみに接続される状態に四方弁108および三方弁109を切り替える。それに続いて、制御部9は制御信号をポンプ102Bを与えて駆動する。これによって、供給部101Bのタンク(図示省略)から塗布液Bが配管103B、四方弁108を介して供給配管105に圧送される。こうして圧送される塗布液Bは、図7Eに示すように、供給配管105内に存在している窒素ガスをスリットノズル2側に押し遣る。一方、スリットノズル2の吐出口23は封止されているため、塗布液Bの送液に伴い流路210内の圧力が高まり、流路210に存在する窒素ガスは排出口24および排出配管11を介してノズル外部に排出されていくとともに塗布液Bが流路210に貯留されていく。こうして、供給配管105および流路210に存在する窒素ガスが塗布液Bに置換される(第2置換処理)。
【0063】
塗布液Bの圧送をさらに継続して行っている間に、塗布液Bがスリットノズル2からオーバーフローして排出配管11に流出する。すると、センサ13が当該塗布液Bを検知し、その検知信号を制御部9に与える。これを受けて制御部9は流路210が塗布液で充填されたと判定する。こうした流路210の充填判定は制御部9の充填判定部911により行われる。
【0064】
流路210の充填が判定されると、図7Fに示すように、制御部9はポンプ102Bの駆動を停止して塗布液Bの供給を停止するとともに制御信号を排出用バルブ12に与えて閉成させる。これによって供給配管105および流路210に気体成分を存在させることなく、次の塗布処理に用いられる塗布液Bで充填させることができ、基板3の表面31に塗布液Bを吐出して塗布膜を形成する処理(第2の塗布処理)の準備が完了する。その後の適当なタイミングで、制御部9が制御信号を昇降機構51bに与え、ノズル支持体51を上方に移動させ、さらに制御信号をリニアモータ54に与え、ノズル支持体51をY方向に移動させて吐出開始位置に移動させる。塗布液Aによる第1の塗布処理と同様にして、第2の塗布処理が実行される。
【0065】
なお、塗布液Bを塗布液Aに切り替えて塗布処理を行う場合も、上記したと同様にして、塗布液Bから塗布液Aへの切替を行うことができる。
【0066】
以上のように、第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果が得られるのみならず、次の作用効果が奏せられる。つまり、第2実施形態では混合液を発生させることなく、塗布液A(B)から塗布液B(A)の切替を行うことができる。そのため、混合液の発生に伴う塗布液A、Bの廃棄はなくなり、ランニングコストを高めることができる。また、塗布液A、Bの組み合わせによっては混合することで析出物やガスなどが発生することがあり、このような組み合わせでは実質的に第1実施形態を採用することができないことがある。これに対し、第2実施形態では常に供給配管105および流路210に存在する塗布液を窒素ガスで押し出しているため、塗布液の組み合わせを問わず、使用することができる。よって、第2実施形態にかかる塗布装置1は高い汎用性を有するといえる。
【0067】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、1つのスリットノズル2に対し、2種類の塗布液A、Bを選択的に供給して塗布液Aの塗布膜および塗布液Bの塗布膜を形成しているが、3種類以上の塗布液を選択的に供給して塗布する塗布装置にも本発明を適用可能である。つまり、塗布液毎に、供給部および専用の回収ポットを設けることで複数種の塗布液を使用することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、複数の塗布液を切り替えながらスリットノズル2から塗布液を吐出する塗布装置に本発明を適用しているが、スリットノズル2から1種類の塗布液を吐出させる塗布装置に対しても本発明を適用することができる。つまり、スリットノズル2の流路に塗布液を供給して貯留させる時に吐出口23を弾性板612で封止しておくことで吐出口23から塗布液の漏れを確実に防止することができる。その結果、ランニングコストを効果的に抑えることができる。
【0069】
また、上記実施形態では、封止部材61はベース板611の上面に弾性板612を取り付けた構造を有しているが、封止部材61の構造はこれに限定されるものではない。例えば、ブロック状の弾性体を封止部材61として用いてもよい。また、封止部材61の表面(上記実施形態では、弾性板612の表面)を平面形状に仕上げているが、吐出口23を封止することができる限り、如何なる形状に仕上げてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、スリットノズル2を用いて塗布液を塗布する塗布装置に本発明を適用しているが、ノズルはスリットタイプに限定されるものではなく、従来より周知のノズルを用いた塗布装置全般に適用可能である。
【0071】
また、上記実施形態では、封止部材61を固定配置する一方で、リニアモータ54および昇降機構51bを制御部9により制御することでスリットノズル2を移動させて「貯留モード」と「吐出モード」とを選択的に切り替えている。この「貯留モード」とは、スリットノズル2の下端部を弾性板612に押し付けた状態でスリットノズル2の流路210に塗布液を貯留する動作態様を意味しており、本発明の「貯留工程」の一例に相当している。また、「吐出モード」とは、スリットノズル2の下端部を弾性板612から離間させた状態で吐出口23から塗布液を吐出する動作態様を意味しており、本発明の「吐出工程」の一例に相当している。これら「貯留モード」、「吐出モード」の切替については、封止部材61の移動によって行ってもよい。要は、スリットノズル2および封止部材61のうちの少なくとも一方を移動させて上記切替を行えばよい。
【0072】
以上説明したように、上記実施形態においては、供給部101A、101Bが本発明の「塗布液供給部」の一例に相当している。また、窒素ガス供給源および配管107が本発明の「気体供給部」の一例に相当している。また、塗布液A、Bがそれぞれ本発明の「第1の塗布液」および「第2の塗布液」の一例に相当している。また、スリットノズル移動部53および昇降機構51bが本発明の「移動機構部」の一例に相当している。また、排出口24が本発明の「気体抜き孔」の一例に相当している。また、センサ13は本発明の「検知部」の一例に相当している。
【0073】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明は、例えば制御部が、貯留モードで流路に塗布液を充填させた後で、吐出モードに切り替えるとともに塗布液供給部により塗布液を供給して吐出口から基板に向けて吐出させるように構成してもよい。
【0074】
また、ノズルの流路に気体を供給する気体供給部と、塗布液と気体とをノズルの流路に流通させる供給配管と、を備え、塗布液供給部が、互いに異なる第1の塗布液と第2の塗布液を供給配管を介して供給可能となるように構成し、制御部が供給配管および流路内に第1の塗布液が存在する状態において、吐出モードで気体供給部により気体を供給配管を介して供給して第1の塗布液を気体に置換する第1置換処理を行い、貯留モードに切り替えるとともに塗布液供給部により第2の塗布液を供給配管を介して供給して供給配管および流路内に存在する気体を第2の塗布液に置換する第2置換処理を行った後で、吐出モードに切り替えるとともに塗布液供給部により第2の塗布液を供給配管を介して供給して吐出口から第2の塗布液を吐出させる塗布処理を行うように構成してもよい。
【0075】
また、供給配管の一方端部、中間部および他方端部はそれぞれ塗布液供給部、気体供給部および流路に接続され、制御部が、第1置換処理と第2置換処理との間で共洗い処理を行うように構成してもよい。なお、共洗い処理は、貯留モードに切り替えるとともに塗布液供給部により第2の塗布液を供給配管を介して供給して一方端部と中間部との間に存在する第1の塗布液を少なくとも中間部よりも他方端部側に送液した後で、吐出モードに切り替えるとともに気体供給部により気体を供給配管を介して供給することで少なくとも中間部よりも他方端部側に存在する第1の塗布液を吐出口から吐出させる処理である。
【0076】
また、制御部が、ノズルの流路が塗布液で充填されているか否かを判定する充填判定部と、充填判定部により流路が塗布液で充填されたと判定されるときには吐出モードに切り替えるモード切替部とを有するように構成してもよい。
【0077】
また、ノズルに流路の上端部とノズル外部とを連通する気体抜き孔を設けてもよい。
【0078】
また、気体抜き孔に接続されて流路とノズル外部とを連通する排出配管と、貯留モードで塗布液をノズルに供給している間に流路から排出配管に塗布液がオーバーフローするのを検知する検知部と、をさらに備え、制御部は、検知部によるオーバーフローの検知に基づいてノズルの流路が塗布液で充填されたと判定するように構成してもよい。
【0079】
さらに、吐出口の形状は任意であり、例えばスリット形状を有するノズルを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
この発明は、ノズルの内部に設けられる流路を介して塗布液をノズルの下端部に設けられる吐出口から吐出して基板に塗布する塗布技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…塗布装置
2…スリットノズル
3…基板
5…塗布処理部
6…封止部
9…制御部
10…供給機構
13…センサ(検知部)
21…ノズルボディ(ノズル本体)
23…吐出口
24…排出口(気体抜き孔)
31…(基板3の)表面
51b…昇降機構(移動機構部)
53…スリットノズル移動部(移動機構部)
54…リニアモータ(移動機構部)
61…封止部材
101A,101B…供給部(塗布液供給部)
105…供給配管
210…流路
612…弾性板(封止部材)
911…充填判定部
912…モード切替部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F