(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記干渉部は、前記移動軌跡上であって、前記ディテントプレートがインヒビタスイッチの検出範囲内で回転する際の移動範囲外に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインヒビタスイッチ。
前記回転軸の径方向における前記固定接点の両側には、当該固定接点が設けられた領域と、前記径方向で隣接する他の固定接点が設けられた領域とを区画する区画壁が設けられており、前記接触片の各々は、前記区画壁の間の溝内に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のインヒビタスイッチ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施の形態にかかるインヒビタスイッチの分解斜視図である。
図2は、実施の形態にかかるインヒビタスイッチの極盤2を説明する図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、(A)におけるA−A断面図である。
図3は、実施の形態にかかるインヒビタスイッチ1の干渉部8(膨出部81)を説明する図であり、(A)は、ディテントプレ−ト6の一部を切り欠いて、ディテントプレ−ト6に支持された可動接点7の当接部721(721a〜721f)が、極盤2側の膨出部81(81a〜81c)上に位置している状態を示した図であり、(B)は、膨出部81(81a〜81c)に当接部721(721a〜721f)を当接させた可動接点7を説明する図であり、(C)は、(B)におけるA−A断面図であって、膨出部81の形状を説明する図である。
【0015】
なお、
図2および
図3では、極盤2における主要な構成要素の位置を理解しやすくするために、周壁211と仕切壁212とにハッチングを付して示すと共に、固定接点3(3a〜3f)における極盤2の表面に露出した領域にハッチングを付して示している。後記する
図4においても同様である。
【0016】
インヒビタスイッチ1は、車両用の自動変速機の変速機ケース内に設置されて、シフトレバーの選択レンジに応じた信号を、自動変速機の制御装置などに出力するものである。
このインヒビタスイッチ1は、表面に固定接点3(3a〜3f)が設けられた極盤2と、極盤2との対向面に可動接点7が固定されたディテントプレ−ト6と、を有している。
ディテントプレ−ト6は、シフトレバー(図示せず)の操作に連動して回転軸X回りに回転するようになっており、ディテントプレ−ト6が回転軸X回りに回転すると、可動接点7と固定接点3(3a〜3f)との接触位置が変化して、シフトレバーの選択レンジに応じた信号が出力されるようになっている。
【0017】
図2に示すように、極盤2では、平面視において扇状を成す基部21の扇頂に相当する位置に、挿通孔22aを有する連結部22が設けられており、連結部22において挿通孔22aは、連結部22を極盤2の厚み方向に貫通して設けられている。
【0018】
この挿通孔22aには、マニュアルシャフト(図示せず)とディテントプレ−ト6とを相対回転不能に連結する筒状の連結部材65(
図1参照)が挿入されるようになっており、連結部22において連結部材65は、挿通孔22aの中心軸(回転軸X)回りに回転可能に支持されるようになっている。
【0019】
この状態においてディテントプレ−ト6は、回転軸Xの軸方向で、極盤2との間に間隔をあけて設けられており、シフトレバー(図示せず)の操作によりマニュアルシャフト(図示せず)が回転すると、ディテントプレ−ト6と極盤2とが、回転軸X回りに相対的に回転するようになっている。
【0020】
扇状の基部21の扇端に相当する外周部には、周方向に沿って周壁211が設けられており、平面視において周壁211は、回転軸X周りの周方向に沿う弧状を成している。
回転軸Xの径方向における周壁211の外側には、後記するサポート部材4を支持する支持部23が設けられていると共に、ハーネス付きのコネクタ5(
図1参照)から伸びる配線51と、極盤2にインサート成形された固定接点3(3a〜3f)とを接続するコネクタ接続部24が設けられている。
【0021】
これら支持部23とコネクタ接続部24は、周壁211の外周から回転軸Xの径方向外側に延出して設けられていると共に、回転軸X周りの周方向で隣接して配置されており、実施の形態では、これら基部21と、連結部22と、支持部23と、コネクタ接続部24とが、樹脂成型により一体に形成されて極盤2を構成している。
【0022】
基部21において周壁211よりも回転軸X側には、平面視において弧状を成す複数の固定接点3(3a〜3f)が設けられており、これら固定接点3(3a〜3f)は、回転軸Xの径方向に所定間隔をあけて配置されている。
なお、以下の説明では、固定接点3a〜3fを区別しない場合には、単純に固定接点3と標記する。
【0023】
回転軸Xの径方向における最も内径側(回転軸X側)に位置する固定接点3aは、回転軸X周りの周方向の長さが最も短くなっており、最も外径側に位置する固定接点3fは、回転軸X周りの周方向の長さが最も長くなっている。これら固定接点3aと固定接点3fの間に位置する固定接点3b〜3eは、固定接点3b、固定接点3c、固定接点3d、固定接点3eの順番で、回転軸X周りの周方向の長さが長くなっている。
【0024】
回転軸Xの径方向で隣接する固定接点3、3の間には、平面視において弧状を成す仕切壁212が設けられており、固定接点3(3a〜3f)のうち、固定接点3aは、仕切壁212と前記した連結部22の外周22bとの間の溝213a内に位置していると共に、固定接点3b〜3fの各々は、仕切壁212、212の間に形成された溝213b〜213f内に位置している。
【0025】
固定接点3aは、回転軸X周りの周方向の全長に亘る総ての領域(図中、ハッチングされた領域a参照)が、基部21の表面21aに露出しており、残りの固定接点3b〜3fは、それぞれ回転軸X周りの周方向の一部の領域(図中、ハッチングされた領域b〜e、参照)のみが、基部21の表面21aに露出している。
【0026】
固定接点3a〜3fの長手方向の一端は、平面視において回転軸Xを通る線分Lm上に揃えられており、
図2の(A)における線分Lmよりも右側(基部21の一方の側縁21b側)の領域が、インヒビタスイッチ1でシフトレバーの選択レンジを検出する際に、可動接点7(
図3参照)の当接部721(721a〜721f)が摺動する領域となっている。
【0027】
図3に示すように、固定接点3と対を成す可動接点7では、板状の基部71の一側から同方向に伸びる複数の可動接片72(72a〜72f)が、所定間隔をあけて設けられている。
可動接片72(72a〜72f)の各々は、基部71で片持ち支持されており、これら可動接片72(72a〜72f)の先端側の当接部721(721a〜721f)は、回転軸Xの軸方向で、基部71よりも極盤2側に位置すると共に、回転軸Xの軸方向に弾性的に変位可能となっている。
なお、以下の説明では、可動接片72(72a〜72f)、当接部721(721a〜721f)を区別しない場合には、単純に可動接片72、当接部721と標記する。
【0028】
図1に示すように可動接点7は、当該可動接点7の基部71を支持する支持台75を介して、ディテントプレ−ト6の極盤2との対向面に固定されている。
支持台75には、当該支持台75両側部から極盤2側に延出する延出壁76、77が設けられており、支持台75において可動接点7は、これら延出壁76、77の間に位置している。
【0029】
図3に示すように、インヒビタスイッチ1では、各可動接片72(72a〜72f)の当接部721(721a〜721f)が、基部21において固定接点3a〜3fを収容する溝213(213a〜213f)の各々に挿入されており、当接部721(721a〜721f)の各々は、対応する固定接点3a〜3fまたは固定接点3b〜3fの表面(ディテントプレ−ト6との対向面)を覆う樹脂に弾発的に圧接している。
【0030】
そのため、シフトレバー(図示せず)の操作に連動して、ディテントプレ−ト6が回転軸X回りに回転すると、ディテントプレ−ト6に固定された可動接点7が回転軸X周りの周方向に変位して、当接部721(721a〜721f)が当接する位置が変位するようになっている。
これにより、ディテントプレ−ト6の回転軸X回りの角度位置に応じて、可動接点7が電気的に接続される固定接点3(3a〜3f)の組合せが切り替わるので、インヒビタスイッチ1では、可動接点7が電気的に接続される固定接点3(3a〜3f)に応じた異なる出力信号が、コネクタ5に接続された外部装置に出力されるようになっている。
【0031】
ここで、可動接点7の当接部721(721a〜721f)は、基部21側に弾発的に圧接しており、可動接点7を保持するディテントプレ−ト6には、基部21から可動接点7に作用する反力が入力されている。
そのため、ディテントプレ−ト6には、当該ディテントプレ−ト6を極盤2から離す方向に移動させる付勢力が作用している。
ここで、ディテントプレ−ト6が、極盤2側から作用する反力で、極盤2から離れる方向に移動すると、可動接点7が極盤2の基部21から離れて、可動接点7と固定接点3とが電気的に接触できなくなってしまう。
【0032】
そのため、基部21に付設された支持部23には、サポート部材4が固定されており、ディテントプレ−ト6は、このサポート部材4により、回転軸X方向への移動が規制されつつ回転軸X回りに回転可能とされた状態で、可動接点7の当接部721(721a〜721f)を固定接点3に弾性的に接触させた位置で保持されている。
【0033】
サポート部材4は、ディテントプレ−ト6との当接部41と、この当接部41を極盤2の周壁211よりも回転軸X側に位置させる保持腕部42と、を有している。
平面視において当接部41は、周壁211に沿う弧状を成しており、回転軸X周りの周方向の所定範囲に亘って、ディテントプレ−ト6の板状の基部61の極盤2とは反対側の面61c(
図1参照)に接触できるようになっている。
【0034】
当接部41におけるディテントプレ−ト6が接触する領域には、ディテントプレ−ト6が回転軸X回りに回転する際の摺動抵抗を低減するための弾性部材41aが取り付けられている。
【0035】
サポート部材4の保持腕部42は、回転軸Xの径方向から極盤2の支持部23に圧入されて、極盤2で強固に支持されており、ディテントプレ−ト6との当接部41を、極盤2の基部21の表面21aから離間した所定位置に確実に保持できるようになっている。
【0036】
かかる構成のインヒビタスイッチ1の組立てを説明する。
図4は、インヒビタスイッチの組立てを説明する図であり、(A)は、ディテントプレ−ト6を、極盤2への組付け開始位置に配置した状態を示す図であり、(B)は、ディテントプレ−ト6を、(A)の状態から回転軸X回りの時計回り方向に回転させて、極盤2に組付けた状態を示す図であり、(C)は、ディテントプレ−ト6を、(B)の状態から回転軸X回りの時計回り方向にさらに回転させて、ディテントプレ−ト6の回転規制部63を、極盤2側のストッパ223に当接させた状態を示す図である。
【0037】
なお、インヒビタスイッチ1では、自動変速機に組付けられた状態でのディテントプレ−ト6の回転範囲が設定されており、
図4の(B)は、ディテントプレ−ト6が、図中反時計回り方向に回転する場合の回転範囲の境界(以下、非組付け方向の境界とも標記する)に位置している状態を示しており、
図4の(C)は、ディテントプレ−ト6が、図中時計回り方向に回転する場合の回転範囲の境界(以下、組付け方向の境界とも標記する)に位置している状態を示している。
【0038】
図2に示すように、極盤2の連結部22の外周部には、ディテントプレ−ト6の組付け開始位置の指標となる突出部222と、ディテントプレ−ト6の組付け方向の境界を規制するストッパ223とが、ディテントプレ−ト6側に突出して設けられている。
突出部222の先端には、挿通孔22a側に突出した係合突起222aが設けられておいる。回転軸X方向から見て、この係合突起222aの突出長さLは、ディテントプレ−ト6の極盤2への組付けが完了した状態で、ディテントプレ−ト6のリング状の係合部62に重なる長さに設定されている(
図4の(B)参照)。
【0039】
ディテントプレ−ト6の係合部62では、基部61との境界部に連結部材65(挿通孔62a)側に窪んだ凹部621が設けられており、回転軸X方向から見て、この凹部621は、ディテントプレ−ト6を極盤2への組付け開始位置に配置した際に、係合突起222aと整合する位置に設けられている(
図4の(A)参照)。
【0040】
そのため、ディテントプレ−ト6を組付け開始位置に配置したのち、ディテントプレ−ト6を極盤2に近付ける方向(図中、回転軸Xの軸方向)に移動させると、ディテントプレ−ト6の係合部62が、極盤2の連結部22に当接する位置まで、ディテントプレ−ト6の連結部材65を極盤2側の挿通孔22a(
図2の(A)参照)に挿入できるようになっている。
【0041】
そして、この状態で、ディテントプレ−ト6を、回転軸X回りに時計回り方向に回転させながら、ディテントプレ−ト6の外周部611をサポート部材4の当接部41の極盤2側の下方に潜り込ませることで、ディテントプレ−ト6の外周部611と係合部62が、極盤2側のサポート部材4の当接部41と連結部22の係合突起222aとにより、回転軸X方向の移動が規制された状態で、ディテントプレ−ト6が極盤2に組付けられるようになっている。
【0042】
ここで、ディテントプレ−ト6は、ディテントプレ−ト6の回転規制部63が、極盤2側のストッパ223に当接する位置まで、回転軸X回りの時計回り方向に回転できるようになっている。
【0043】
なお、組付け開始位置に配置したディテントプレ−トを回転軸X回りに回転させて、極盤に組付けることで組立てられる従来のインヒビタスイッチでは、ディテントプレ−トの組付けができなくなることを防止するために、ディテントプレ−トの非組付け方向の回転が規制されていない。
そのため、従来のインヒビタスイッチでは、変速機ケース内に実装する前のインヒビタスイッチに、運搬などに起因する振動が作用すると、振動によりディテントプレ−トが非組付け方向に回転して、ディテントプレ−トが、極盤から脱落してしまうことがあった。
【0044】
実施の形態にかかるインヒビタスイッチ1では、組付け後のインヒビタスイッチ1の極盤2からディテントプレ−ト6が簡単に脱落しないようにするために、極盤2の基部21の表面に、ディテントプレ−ト6の非組付け方向の回転に抵抗を与える干渉部8(
図2参照)が設けられている。
【0045】
図5は、実施の形態にかかる干渉部8(膨出部81b、81c)を説明する図であり、(A)は、膨出部81(81b、81c)の作用を説明する図であり、(B)は、膨出部81(81b、81c)の配置を説明する図である。なお、この
図5では、説明の都合で、膨出部81aの図示を省略している。
【0046】
実施の形態では、
図3の(C)に示すように、基部21の表面21aから、ディテントプレ−ト6側に所定高さh膨出させて形成した樹脂製の膨出部81a〜81cを、干渉部8として用いている。
膨出部81は、ディテントプレ−ト6が回転軸X回りに回転する際の可動接点7の当接部721(721a〜721f)の移動軌跡上であって、シフトレバーの選択レンジの検出をする際の当接部721(721a〜721f)の移動範囲外である
図2の(A)における線分Lmよりも左側(基部21の他方の側縁21c側)の領域に設けられている。
【0047】
膨出部81は、基部21の表面21aに平行な平坦面811と、この平坦面811のディテントプレ−ト6の組付け方向側に隣接する第1傾斜面812と、ディテントプレ−トの非組付け方向側に隣接する第2傾斜面813と、を有している。
回転軸X周りの周方向において第1傾斜面812と第2傾斜面813は、平坦面811から離れるにつれて基部21からの高さが低くなる向きで傾斜しており、基部21の表面21aに対する第1傾斜面812の傾斜角θ1は、基部21の表面21aに対する第2傾斜面813の傾斜角θ2よりも大きい角度に設定されている。
【0048】
ここで、ディテントプレ−ト6が非組付け方向に回転する際には、可動接点7の可動接片72は、先端側の当接部721を極盤2から離れる方向(
図3の(C)における上方向)に弾性的に変形させながら第1傾斜面812を平坦面811に向けて摺動することになる。
そして、この可動接片72の弾性変形により生じた応力は、ディテントプレ−ト6に伝達されて、ディテントプレ−ト6をサポート部材4の当接部41に押し付ける方向に作用することになる(
図5の(A)、矢印F1、F2、F3参照)。
そうすると、ディテントプレ−ト6をサポート部材4の当接部41に押し付ける方向に作用する応力F3が、ディテントプレ−ト6の回転軸X回りの回転に対する抵抗力を発生させる結果、ディテントプレ−ト6は、この抵抗力よりも大きい回転トルクが入力されないと、可動接点7の可動接片72を膨出部81を乗り越えさせて、非組付け方向に回転できないことになる。
【0049】
ここで、ディテントプレ−ト6の回転軸X回りの回転に対する抵抗力は、第1傾斜面812の傾斜角θ1が大きくなるほど大きくなる。
実施の形態では、振動などによりディテントプレ−ト6に作用する回転トルクAを考慮して、可動接点7の可動接片72を膨出部81を乗り越えさせてディテントプレ−ト6を非組付け方向に回転させるのに必要な回転トルクBが、回転トルクAよりも大きくなるように、第1傾斜面812の傾斜角θ1を設定している。
【0050】
ちなみに、傾斜角θ1が大きくなりすぎると、可動接片72の当接部721が、第1傾斜面812を乗り越えて平坦面811まで移動する途中で、可動切片72が屈曲(座屈)してしまうことがある。可動接片72が屈曲すると、ディテントプレ−ト6を極盤2に再度組付けた際に、可動接片72の当接部721が、対応する固定接点3に適切に接触できなくなってしまう。
【0051】
また、傾斜角θ1が小さいと、ディテントプレ−ト6の非組付け方向への回転を阻止できなくなってしまう。
そうすると、組付けが完了したインヒビタスイッチ1を運搬する際に、運搬時の振動により、ディテントプレ−ト6が極盤2から取り外す方向に回転して、極盤2から外れてしまう場合があり、かかる場合には、ディテントプレ−ト6に取り付けられた可動接片72の当接部721などの破損が生じてしまう場合がある。
【0052】
そのため、本願発明者は、傾斜角θ1を種々変更して検討したところ、傾斜角θ1を、40°から70°の範囲に設定することで、ディテントプレ−ト6の非組付け方向への回転の阻止と、可動接片72が屈曲の阻止の両方を両立しつつ、運搬時の振動により当接部721が回転軸X周りの周方向に変位して、可動接片72の当接部721bが、第1傾斜面812との接触と第1傾斜面812からの離脱を繰り返しても、当接部721に屈曲を生じさせないようにすることができることを見いだした。
そのため、実施の形態では、傾斜角θ1は、40°から70°の範囲に設定されていることが好ましい。
【0053】
また、ディテントプレ−ト6が組付け方向に回転する際には、可動接点7の可動接片72は、先端側の当接部721を極盤2から離れる方向に弾性的に変形させながら第2傾斜面813を平坦面811に向けて摺動することになる。
ここで、実施の形態では、この第2傾斜面813の傾斜角θ2を、第1傾斜面812の傾斜角θ1よりも小さくして、ディテントプレ−ト6を組付け方向に回転させるのに必要な回転トルクCが、ディテントプレ−ト6を非組付け方向に回転させるのに必要な回転トルクBよりも小さくなるようにしている。
【0054】
これは、ディテントプレ−ト6を組付け方向に回転させる際に、可動接点7の当接部721が、膨出部81を第2傾斜面813側から第1傾斜面812側に大きな抵抗を受けることなく横断できるようにすることで、ディテントプレ−ト6の極盤2への組付けをスムーズに行えるようにする必要があるからである。
【0055】
ディテントプレ−ト6の極盤2から離れる方向への変位が完全に規制されていると、この可動接片72の弾性変形により生じた応力の総てが、ディテントプレ−ト6の回転軸X回りの回転に対する抵抗力となるが、ディテントプレ−ト6の膨出部81を覆う領域が、極盤2から離れる方向に僅かに変位可能である場合には、この変位量の分だけ、ディテントプレ−ト6の回転軸X回りの回転に対する抵抗力が低減されることになる。
【0056】
そして、この抵抗力の低減の程度は、可動接点7の可動接片72の当接部721が、膨出部81の第2傾斜面813を摺動しているときの方が、第1傾斜面812を摺動しているときよりも大きくなる。
これにより、膨出部81を有する極盤2にディテントプレ−ト6を組付ける際に、ディテントプレ−ト6を組付け方向に回転させるのに必要な回転トルクCをより低下させることができるので、膨出部81を設けたことによって、極盤2にディテントプレ−ト6を組付ける通常の組付け作業の作業性が大きく阻害されることがないようにしている。
【0057】
実施の形態では、膨出部81は、固定接点3b、3d、3fが位置する溝213b、213d、213f内にのみ設けられており、外径側に位置する膨出部81ほど、回転軸X周りの周方向の長さWが長くなっている。
ここで、インヒビタスイッチ1は、図示しない変速機ケースの内部に設置されて使用されるものであり、インヒビタスイッチ1は、変速機ケース内の金属粉など(以下、夾雑物と標記する)を含んだ潤滑油が常時作用する環境下で使用される。
そのため、潤滑油に含まれた夾雑物が、固定接点3が位置する溝213(213a〜213f)内に滞留すると、滞留した溝213(213a〜213f)内の固定接点と隣接する他の溝213(213a〜213f)内の固定接点とを、滞留した夾雑物が短絡させる虞がある。
【0058】
図5の(B)に示すように、可動接点7を支持する支持台75では、溝213(213a〜213f)内に挿入される突起部761が延出壁76に設けられており、ディテントプレ−ト6が回転軸X周りに回転する際に、溝213(213a〜213f)内に滞留した夾雑物を、溝213(213a〜213f)内に挿入された突起部761により外部に押し出すようにしている。
【0059】
ここで、溝213(213a〜213f)の総てに膨出部81が設けられていると、突起部761により押された夾雑物の押し出しが、阻害されてしまう可能性がある。そのため、実施の形態では、極盤2で回転軸Xの径方向で隣接する複数の溝に、膨出部を設けるにあたり、膨出部81が設けられている溝と、設けられていない溝とが交互になるようにして、溝内に滞留した夾雑物が、隣接する他の溝内の夾雑物と接触して短絡しないようにしている。
特に、極盤2において最も内径側に位置する溝213aの固定接点3aは、周方向の全周に亘って、極盤2の表面に露出したグランド電極であるので、この溝213aに膨出部81を設けないようにすることで、短絡の発生をより好適に抑制できるようにしている。
【0060】
以上の通り、実施の形態では、
(1)表面21aに固定接点3が設けられた極盤2と、
極盤2で回転可能に支持されたディテントプレ−ト6と、
ディテントプレ−ト6における表面21aとの対向部に固定されていると共に、固定接点3との可動接片72(接触片)を有する可動接点7と、
極盤2に組付けられたディテントプレ−ト6に接触して、ディテントプレ−ト6の回転軸回りの回転を許容しつつ回転軸X方向の移動を規制すると共に、可動接点7の可動接片72を固定接点3に弾発的に係合させた状態でディテントプレ−ト6を保持するサポート部材4(保持部材)と、を有し、
ディテントプレ−ト6が、回転軸X回りの一方側に回転させて極盤2に組付けられるように構成されると共に、極盤2にディテントプレ−ト6の一方側の回転範囲を規定するストッパ223が設けられたインヒビタスイッチ1において、
ディテントプレ−ト6が回転軸X回りに回転する際の可動接片72の移動軌跡上に、可動接片72に干渉して、ディテントプレ−ト6の回転軸X回りの他方側への回転の抵抗となる干渉部8を設けた構成のインヒビタスイッチ1とした。
【0061】
このように構成すると、ディテントプレ−ト6が、当該ディテントプレ−ト6を極盤2から取り外す方向である回転軸X回りの他方側(非組付け方向)に回転すると、極盤2に設けた干渉部8が、ディテントプレ−ト6に固定された可動接点7の可動接片72に干渉して、ディテントプレ−ト6の極盤2から取り外す方向への回転の抵抗となる。
そのため、干渉部8から作用する抵抗力よりも大きい回転トルクがディテントプレ−ト6に作用しないと、ディテントプレ−ト6は、回転軸X回りの他方側に回転して、極盤2から外れることがない。
よって、ディテントプレ−ト6の組付けが完了したインヒビタスイッチ1の極盤2から、ディテントプレ−ト6が簡単に外れないようにすることができる。
また、干渉部8は、ディテントプレ−ト6の回転軸X回りの回転を規制しないので、極盤2へのディテントプレ−ト6の組付け作業や、極盤2に組付けられたディテントプレ−ト6を極盤2から取り外す作業が、干渉部8により大きく阻害されることもない。
【0062】
また、組付けが完了したインヒビタスイッチ1において不良が発見された場合には、極盤2からディテントプレ−ト6を取り外して、不良のある方を交換することができるので、組み付けが完了したディテントプレ−ト6をそのまま廃棄する必要が無い。
これにより、歩留まりが向上すると共に、廃棄する部品数の低減も可能となり、廃棄品の処理コストの負担の低減が期待できる。さらに、廃棄に伴って追加生産が必要となることもない。
【0063】
(2)干渉部8は、可動接片72の当接部721の移動軌跡上であって、ディテントプレ−ト6がインヒビタスイッチ1の検出範囲内で回転する際の移動範囲外(
図2の(A)における線分Lmよりも左側)に設けられている構成とした。
【0064】
このように構成すると、シフトレバー(図示せず)の選択レンジを検出する際に移動する可動接片72の当接部721の移動範囲外に、干渉部8が設けられているので、干渉部8がシフトレバーの操作に対する抵抗となることを好適に防止できる。
【0065】
(3)干渉部8は、極盤2の表面21aからディテントプレ−ト6側に膨出する膨出部81であり、
膨出部81は、回転軸X周りの周方向で一方側(ディテントプレ−ト6を極盤2に組付ける方向側:組付け方向側)に位置する第1傾斜面812と、他方側(ディテントプレ−ト6を極盤2から取り外す方向側:非組付け方向側)に位置する第2傾斜面813と、を有しており、
第1傾斜面812の表面21aに対する傾斜角θ1は、第2傾斜面813の表面21aに対する傾斜角θ2よりも大きい角度に設定されている構成とした。
【0066】
このように構成すると、ディテントプレ−ト6を極盤2に組付ける方向である組付け方向側に回転させて、可動接片72の当接部721が、膨出部81を通過する際に膨出部81から作用する抵抗力の方が、ディテントプレ−ト6を極盤から取り外す方向である非組付け方向に回転させて、可動接片72の当接部721が、膨出部81を通過する際に膨出部81から作用する抵抗力よりも小さくなる。
よって、ディテントプレ−ト6の極盤2への組付け作業が膨出部81により大きく阻害されることがない。
また、組付け作業を行う作業者が、極盤2へのディテントプレ−ト6の組付け作業に違和感を持つことや、組付け作業が難航することもない。
【0067】
(4)固定接点3(3a〜3f)は、回転軸Xの径方向に所定間隔で複数設けられており、
可動接点7は、固定接点3(3a〜3f)に一対一で対応する複数の可動接片72(72a〜72f)を有しており、
干渉部8(膨出部81)は、ディテントプレ−ト6が回転軸X回りに回転する際の可動接片72の当接部721各々の移動軌跡のうち、少なくともひとつの移動軌跡上に設けられている構成とした。
【0068】
このように構成すると、干渉部8(膨出部81)の数を調整することで、ディテントプレ−ト6に作用する抵抗力を、適切な大きさに調整できる。
【0069】
(5)回転軸Xの径方向における固定接点3(3a〜3f)の両側には、固定接点3が設けられた領域と、径方向で隣接する他の固定接点3が設けられた領域とを区画する仕切壁212(区画壁)が設けられており、可動接片72の当接部721の各々は、仕切壁212の間の溝213(213a〜213f)内に配置されている構成とした。
【0070】
このように構成すると、可動接片72の当接部721の各々を、対応する固定接点3(3a〜3f)に確実に接触させることができる。
【0071】
(6)変速機ケース内においてインヒビタスイッチ1は、夾雑物(金属粉など)を含む潤滑油が作用する位置に設けられており、
極盤2では、可動接片72の当接部721の移動軌跡上に干渉部8(膨出部81)が設けられた固定接点3(3b、3d、3f)と、干渉部8(膨出部81)が設けられていない固定接点3(3a、3c、3e)とが、回転軸Xの径方向で交互に設けられている構成とした。
【0072】
固定接点3(3a〜3f)が設けられた溝213(213a〜213f)のうち干渉部8(膨出部81)が設けられている溝213(213b、213d、213f)では、侵入した潤滑油の溝213の外部への排出が、干渉部8(膨出部81)により阻害される可能性がある。
そうすると、潤滑油に含まれる夾雑物が溝213の内部に滞留しやすくなり、径方向で隣接するふたつの溝213、213の両方で夾雑物の滞留が発生すると、滞留した夾雑物が隣接する他の溝213に滞留した夾雑物に接触して、径方向で隣接する溝213,213内の固定接点3、3が夾雑物を介して短絡する場合がある。
上記のように構成すると、干渉部8(膨出部81)が設けられた溝213(213b、213d、213f)と、設けられていない溝213(213a、213c、213e)とが、径方向で交互に位置することになるので、隣接する溝213(213a〜213f)の各々に干渉部8が設けられている場合に比べて、短絡が発生する可能性を低減できる。
【0073】
(7)極盤2に設けられた複数の固定接点3(3a〜3f)は、回転軸Xの径方向で最も内径側に位置する固定接点3aが、回転軸X周りの周方向の全長に亘って極盤2の表面21aに露出したグランド接点であり、
他の固定接点3(3b〜3f)は、回転軸X周りの周方向の一部が極盤2の表面21aに露出した接点であり、
干渉部8(膨出部81)は、他の固定接点3(3b〜3f)の移動軌跡上に設けられている構成とした。
【0074】
このように構成すると、グランド接点が設けられた溝内に夾雑物が滞留する可能性が低くなるので、短絡が発生する可能性を低減できる。
【0075】
前記した実施の形態では、極盤2の基部21の表面21aからディテントプレ−ト6側に膨出する膨出部81を、干渉部8として採用している場合を例示したが、干渉部8は、この態様のみに限定されるものではない。
【0076】
例えば、
図6に示すように、基部21の表面21aから基部21の内部に窪んだ凹溝部85を干渉部8として採用しても良い。
【0077】
凹溝部85は、基部21の表面21aに平行な平坦面851と、この平坦面811のディテントプレ−ト6の組付け方向側に隣接する第1傾斜面852と、ディテントプレ−トの非組付け方向側に隣接する第2傾斜面853と、を有している。
回転軸X周りの周方向において第1傾斜面852と第2傾斜面853は、平坦面851から離れるにつれて基部21の表面21aからの深さが浅くなる向きで傾斜しており、基部21の表面21aに対する第1傾斜面852の傾斜角θ1は、基部21の表面21aに対する第2傾斜面853の傾斜角θ2よりも小さい角度に設定されている。
【0078】
このように構成すると、ディテントプレ−ト6が非組付け方向に回転する際には、可動接点7の可動接片72は、先端側の当接部721を極盤2から離れる方向(
図6における上方向)に弾性的に変形させながら第2傾斜面853を平坦面851から離れる方向に摺動することになるので、この際に可動接片72の弾性変形により生じた応力が、ディテントプレ−ト6の非組付け方向への回転に対する抵抗となる。
この変形例においても、振動などによりディテントプレ−ト6に作用する回転トルクAを考慮して、可動接点7の可動接片72が第2傾斜面853を乗り越えさせてディテントプレ−ト6を非組付け方向に回転させるのに必要な回転トルクBが、回転トルクAよりも大きくなるように、第2傾斜面853の傾斜角θ2を設定している。
【0079】
また、ディテントプレ−ト6が組付け方向に回転する際には、可動接点7の可動接片72は、基部21の表面21aから窪んだ凹溝部85を摺動することになる。
この際に、可動接点7からディテントプレ−ト6に作用する押圧力は、凹溝部85の深さの分だけ低減されて、ディテントプレ−ト6を組付け方向に回転させる際の抵抗が小さくなるので、ディテントプレ−ト6の極盤2への組付けが、抵抗を受けることなくスムーズに行えるようになっている。
【0080】
このように、変形例にかかるインヒビタスイッチ1では、
(8)干渉部8は、極盤2の表面21aから極盤2の基部21の内部に窪んだ凹溝部85であり、
凹溝部88は、回転軸X周りの周方向で一方側(ディテントプレ−ト6を極盤2に組付ける方向側:組付け方向側)に位置する第1傾斜面852と、他方側(ディテントプレ−ト6を極盤2から取り外す方向側:非組付け方向側)に位置する第2傾斜面853と、を有しており、
第1傾斜面852の表面21aに対する傾斜角θ1は、第2傾斜面853の表面21aに対する傾斜角θ2よりも小さい角度に設定されている構成とした。
【0081】
このように構成することによっても、ディテントプレ−ト6の組付けが完了したインヒビタスイッチ1の極盤2から、ディテントプレ−ト6が簡単に外れないようにすることができる。
また、組付け作業を行う作業者が、極盤2へのディテントプレ−ト6の組付け作業に違和感を持つことや、組付け作業が難航することもない。