【実施例】
【0011】
図1〜
図11は、この発明の実施例を示すものである。
図1、
図2に示すように、耐震試験システム1は、管内壁形成工法によって構成された管体構造物(いわゆる更正管)2の耐震試験(漏れ試験)を行うものである。
管体構造物2は、
図5に示すように、例えば、直列に隣接する2つの既設管として、第1管体3と第2管体4とを同じ向きで接合して同一軸線上に直列に配置し、また、
図6に示すように、第1管体3及び第2管体4の内壁面に帯状部材(ストリップ)5を螺旋状で連続的に捲回し且つ充填材6を充填して構成される。帯状部材5は、例えば、硬質塩化ビニールなどの帯板(ストリップ)からなるものである。充填材6は、例えば、接着剤からなるものである。
【0012】
図5に示すように、第1管体3は、円筒形状の第1胴部7と、第1胴部7の一端で拡張形状の第1フランジ8とからなる。第2管体4は、第1管体3と同一形状であって、円筒形状の第2胴部9と、第2胴部9の一端で拡張形状の第2フランジ10とからなる。第1管体3と第2管体4との配置にあっては、第1管体3の第1胴部7の他端を第2管体4の一端の第2フランジ10内に所定の深さで挿着し、第1管体3と第2管体4とを同一軸線上で同じ向きで直列に配置する。
【0013】
図1、
図2に示すように、耐震試験システム1は、基台11と、基台11上で直列に配置された第1枠体12及び第2枠体13とを備える。
基台11は、
図2に示すように、平面視で長方形の四角枠状に形成され、長手方向Xに延びる2本の長手部14・14と、短手方向Yに延びる2本の短手部15・15とで構成される。
基台11の長手部14・14には、第1枠体12と第2枠体13との略中間部位の上面で、垂直支持部材16・16が立設される。垂直支持部材16・16の上部には、
図1に示すように、短手方向Yに延びる第1架渡部材17が取り付けられる。
また、
図1に示すように、垂直支持部材16・16の上部位で第1枠体12側の側面には、傾斜支持部材18・18の一端が連設される。傾斜支持部材18・18は、第1枠体12側で且つ下方へ傾斜し、他端が基台11の長手部14・14の上面に連設される。
第1枠体12及び第2枠体13には、管体構造物2が支持される。具体的には、第1枠体12には、管体構造物2の第1管体3が支持される。第2枠体13には、管体構造物2の第2管体4が支持される。
【0014】
図1、
図2に示すように、第1枠体12は、基台11よりも高い位置に配置されて長手方向Xに延びる第1台部材19・19と、第1台部材19・19の長手方向Xの両端で上方へ立ち上がる第1一側縦部材20・20及び第1他側縦部材21・21と、第1一側縦部材20・20と第1他側部枠材21・21間の上部に接続され且つ長手方向Xに延びる第1長手部材22・22とを備える。
第1台部材19・19には、短手方向Yに延びて長手方向Xへ所定の間隔に配置された第1下側支持部23・23が設けられる。第1下側支持部23・23は、第1管体3の下部の外周面を支持するように上方に向いた下側円弧状載置面を備え、第1台部材19・19に連結される。
第1長手部材22・22には、短手方向Yに向かって長手方向Xへ所定の間隔で配置される第1上側支持部24・24が設けられる。第1上側支持部24・24は、第1管体3の上部の外周面を支持するように下方に向いた上側円弧状載置面を備え、第1長手部材22・22に第1取付ボルト25・25、25・25で着脱可能に取り付けられる。
【0015】
図1、
図2に示すように、第2枠体13は、基台11よりも高い位置に配置されて長手方向Xへ延びる第2台部材26・26と、第2台部材26・26の長手方向Xの両端で上方へ立ち上がる第2一側縦部材27・27及び第2他側縦部材28・28と、第2一側縦部材27・27と第2他側縦部材28・28間の上部に接続され且つ長手方向Xへ延びる第2長手部材29・29とを備える。
第2一側縦部材27・27及び第2他側縦部材28・28は、第2管体4の第2胴部9の直径の長さよりも長く設定される。
第2一側縦部材27・27の外側面には、補助柱部30・30が連設される。第2一側縦部材27・27の上部には、
図1に示すように、短手方向Yに延びる第2架渡部材31が取り付けられる。
【0016】
第2台部材26・26には、短手方向Yに延びて長手方向Xへ所定の間隔で配置された第2下側支持部32・32が設けられる。第2下側支持部32・32は、第2管体4の下部の外周面を支持するように上方に向いた下側円弧状載置面を備え、第2台部材26・26に連結される。
第2長手部材29・29には、短手方向Yに延びて長手方向Xへ所定の間隔で配置された第2上側支持部33・33が設けられる。第2上側支持部33・33は、第2管体4の上部の外周面を支持するように下方に向いた上側円弧状載置面を備え、第2長手部材29・29に第2取付ボルト34・34、34・34で着脱可能に取り付けられる。
【0017】
図1、
図2に示すように、第1枠体12の第1一側縦部材20・20には、管体構造物2の内部を密封するように、管体構造物2の第1管体3側の一端の第1フランジ8の開口を閉塞する第1閉塞面部35を備える第1端面固定部材36が第1端側取付ボルト37で取り付けられる。
第2枠体13の第2他側縦部材28・28には、管体構造物2の内部を密封するように、管体構造物2の第2管体4側の他端の開口を閉塞する第2閉塞面部38を備える第2端面固定部材39が第2端側取付ボルト40で取り付けられる。
【0018】
また、
図4に示すように、第2枠体13の第2一側縦部材27・27には、第2管体4の第2フランジ10の外周縁の端面に接して第2管体4を第2一側縦部材27・27側へ押し付ける板状で円環形状の保持部材41が締結具42・42によって取り付けられる。締結具42は、一端が第2一側縦部材27に固定した固定ナット43に支持されるとともに他端が保持部材41の貫通孔44を貫通するネジ棒45と、ネジ棒45の他端に螺着される締結ナット46とからなる。
【0019】
更に、
図3に示すように、第1枠体12と第2枠体13との間には、枠体位置調整部材47が配設される。枠体位置調整部材47は、一端が第2枠体13の第2一側縦部材27に固定した固定ナット48に支持されるとともに他端が垂直柱部材16の貫通孔49に貫通するネジ棒50と、ネジ棒50の他端に球面ワッシャ51を介して螺着される一側締結ナット52Aと、ネジ棒50に螺着されて垂直柱部材16の側面に接する他側締結ナット52Bとからなる。枠体位置調整部材47は、第1枠体12と第2枠体13との間の距離を所定に調整するものである。
【0020】
図1、
図2に示すように、第1枠体12と第2枠体13との間には、第1枠体12の移動機構53・53が配置される。
移動機構53・53は、第1管体3の第1軸心線C1と第2管体4の第2軸心線C2とが同一軸線上で、第1枠体12を第2枠体13に対して離間又は接近するようにスライド移動するものである。
図1、
図2に示すように、移動機構53・53は、第1枠体12の第1他側縦部材21・21に固定された第1アクチュエータとしての第1油圧アクチュエータ(例えば油圧モータ)54・54と、第1油圧アクチュエータ54・54によって作動されて第1枠体12を長手方向Xへスライド移動させる第1作動軸(例えば、ネジ軸やピストン軸など)55・55とを備える。第1作動軸55・55の先端には、例えば、
図4に示すように、保持部材41に当接する第1作動軸支持部材56・56が取り付けられる。第1作動軸支持部材56は、例えば、第1作動軸55の先端を所定に支持し、且つ保持部材41を所定の傾き(例えば2度)に許容する構造である。
これに伴い、第1台部材19・19には、第1枠体12を長手方向Xへ移動案内するためのスライドユニット57・57が設けられる。スライドユニット57・57は、長手方向Xへ所定の間隔で第1台部材19・19の下部に取り付けられた摺動部58・58と、摺動部58・58の動きを案内するガイドレール59・59とからなる。
従って、移動機構53は、この実施例では、第1油圧アクチュエータ54と第1作動軸55とスライドユニット57とから構成される。
移動機構53においては、第1油圧アクチュエータ54が駆動して第1作動軸55が一方向へ作動すると、第1枠体12を第2枠体13から所定の距離(例えば36mm)だけ離れるようにスライド移動し、一方、第1油圧アクチュエータ54が駆動して第1作動軸55が他方向へ作動すると、第1枠体12を第2枠体13へ近づくようにスライド移動する。この場合、第1油圧アクチュエータ54は、第1枠体12に固定されていることから、第1枠体12と共に一体に移動する。
なお、移動機構53としては、油圧式のみならず、電動式や手動式の構造とすることも可能である。
【0021】
図1、
図2に示すように、第2枠体13の第2端面固定部材39と基台11の短手部15との間には、第2枠体13の傾斜機構60・60が設けられる。
傾斜機構60・60は、第2アクチュエータとしての第2油圧アクチュエータ(例えば油圧モータ)61・61と、第2油圧アクチュエータ61・61によって作動されて第2枠体13を傾斜させる第2作動軸(例えば、ネジ軸やピストン軸など)62・62とを備える。
傾斜機構60・60は、第2管体4の第2軸心線C2が第1管体3の第1軸心線C1に対して所定の角度(例えば2度)で傾くように、第2端面固定部材39の下部に固定された断面U字形状の介在部材63を介して第2枠体13を傾斜するものである。
これに伴い、
図1、
図3に示すように、垂直支持部材16・16と第2一側縦部材27・27との間には、回動支持機構64・64が設けられる。回動支持機構64・64は、垂直支持部材16・16に接続部材65・65を介して固定された一側ヒンジ66・66と、第2一側縦部材27・27に固定された他側ヒンジ67・67と、一側ヒンジ66・66と他側ヒンジ67・67とを回動自在に連結する回動支持ピン68・68とからなる。第2枠体13は、一側の回動支持ピン68・68を中心として他側が持ち上げられて回動される。
従って、傾斜機構60は、この実施例では、第2油圧アクチュエータ61と第2作動軸62と回動支持機構64とから構成される。
なお、傾斜機構60としては、油圧式のみならず、電動式や手動式の構造とすることも可能である。
【0022】
図7に示すように、第1油圧アクチュエータ54・第2油圧アクチュエータ61は、第1油圧供給管69・第2油圧供給管70を介してオイルポンプ71に接続する。オイルポンプ71は、オイル吸入管72を介してオイルタンク73に接続し、オイルタンク73内のオイルを吸入して第1油圧アクチュエータ54・第2油圧アクチュエータ61へ供給する。
オイルポンプ71は、第1電線74・第2電線75を介して制御盤76の制御手段77に接続し、制御手段77によって駆動制御される。
制御手段77は、第1油圧アクチュエータ54を駆動して第1枠体12をスライド移動し、また、第2油圧アクチュエータ61を駆動して第2枠体13を傾斜する。
【0023】
また、
図7に示すように、耐震試験システム1には、管体構造物2の内部に所定の水圧を作用させる水圧供給機構78が設けられる。
水圧供給機構78は、管体構造物2の内部に所定の水圧を作用させる水圧ポンプ79と、水圧ポンプ79に吸水管80を介して接続する水タンク81とを備える。
水圧ポンプ79は、例えば、第2端面固定部材39の第2閉塞面部38の略中央部位に接続した水圧管82を介して管体構造物2の内部に接続される。
水圧ポンプ79は、第3電線83を介して制御手段77に接続し、制御手段77によって駆動制御される。
【0024】
さらに、管体構造物2には、
図7に示すように、内部の水圧状態を検出する水圧検出手段(水圧センサ)84が取り付けられる。水圧検出手段84は、第4電線85を介して制御手段77に接続される。また、制御手段77には、制御盤76に設けられた警告手段86が接続される。
制御手段77は、水圧検出手段84で検出された管体構造物2の内部の水圧が判定値よりも低下した場合に、「漏れ状態」と判定する漏れ判定部77Aを備え、漏れ判定部77Aで漏れ状態を判定した場合には警告手段86を作動する。
【0025】
次いで、管体構造物2の耐震試験(漏れ試験)について説明する。
図1、
図2に示すように、先ず、管体構造物2を水平状態で第1枠体12及び第2枠体13内に上方から入れ、第1枠体12に第1管体3を配置するとともに、第2枠体13に第2管体4を配置する。
そして、第1管体3上に第1上側部材24・24を配置するとともに、第1上側部材24・24を第1取付ボルト25・25、25・25で取り付けて第1管体3を第1枠体3に固定する。また、第2管体4上に第2上側部材33・33を配置するとともに、第2上側部材33・33を第2取付ボルト34・34、34・34で取り付けて第2管体4を第2枠体4に固定する。これにより、
図9に示すように、第1管体3と第2管体4とは、同じ向きで接合し、且つ同一軸線上に配置される。
また、管体構造物2の両端部位には、第1端面固定部材36・第2端面固定部材39を取り付け、管体構造物2の内部を密封する。
さらに、枠体位置調整部材47で第1枠体12と第2枠体13との間の距離を調整し、また、回動支持機構64をセットする。
そして、終には、移動機構53と傾斜機構60と水圧供給機構78とを制御盤76に接続する。
【0026】
耐震試験(漏れ試験)を実行するために制御盤76を操作すると、制御手段77のプログラムがスタートし、先ず、水圧ポンプ79が駆動され、管体構造物2の内部が所定の水圧としての第1の水圧P1(例えば水柱10m程度)になるまで水圧ポンプ79が駆動し続ける。この第1の水圧P1は、
図8に示すように、水圧ポンプ79が駆動した時間t0から所定の時間t1に達したときの所要の圧力である。
そして、水圧供給機構78の駆動が停止され、
図8に示すように、第1の水圧P1を所定期間Tだけ保持して時間t2になった時に、オイルポンプ71が駆動され、オイルポンプ71からの油圧によって第1油圧アクチュエータ54を駆動して第1枠体12を第2枠体13から所定の距離L(例えば36mm)だけ離れるようにスライド移動させ、
図10に示すように、第1管体3を第2管体4から離れる方向へ所定の距離Lだけ同一軸線上で移動する。オイルポンプ71及び第1油圧アクチュエータ54の駆動は、第1枠体12が所定の距離Lだけスライド移動された時点で、停止される。
その後、オイルポンプ71の駆動が再始動され、オイルポンプ71からの油圧によって第2油圧アクチュエータ61が駆動され、
図11に示すように、第1管体3を第2管体4との所定の距離Lを維持しつつ、第2枠体13の他側を持ち上げ、一側の回動支持機構64・64を中心として第2枠体13を回動し、第2枠体13を傾斜させると、第2管体4の第2軸心線C2が第1管体3の第1軸心線C1に対して所定の角度θ(2度)だけ傾けられる。オイルポンプ71及び第2油圧アクチュエータ61の駆動は、第2枠体13が所定の角度θだけ傾斜した時点で、停止される。
このように、第1枠体12のスライド移動と第2枠体13の傾斜とにより、管体構造物2内の容積が所定量大きくなり、管体構造物2の内部では、
図8に示すように、上記の第1の水圧P1よりも所定に低い第2の水圧P2となる(時間t3)。この第2の水圧P2は、管体構造物2内の水圧の判定値となるものである。
そして、水圧検出手段84で検出された管体構造物2の内部の水圧が上記の第2の水圧P2(判定値)で一定に保持される場合には(
図8の実線PKで示す)、制御手段77の漏れ判定部77Aは、第1枠体12と第2枠体13との接続部位に「漏れがない」と判定する。
一方、管体構造物2の内部の水圧が上記の第2の水圧P2(判定値)から順次に低下する場合には(
図8の破線PDで示す)、制御手段77の漏れ判定部77Aは、第1管体3と第2管体4との接続部位に「漏れがある」と判定する。また、このとき、制御手段77は、その漏れ状態を警告手段86を作動して告知する。
なお、移動機構53と傾斜機構60と水圧供給機構78との駆動制御にあっては、全ての機構を自動的に行ったり、あるいは各機構毎に独立的に行うことも可能である。
【0027】
この結果、この実施例においては、第1枠体12に支持された第1管体3を第2枠体13に支持された第2管体4から離れる方向へスライド移動し、且つ第2管体4の第2軸心線C2を第1管体3の第1軸心線C1に対して傾けて第1管体3と第2管体4との接続部位の耐震試験(漏れ試験)を行うことから、つまり、地震などによる特異な状況を考慮して管体構造物2の耐震試験を行うことから、試験の信頼性を高くすることができる。
また、管体構造物2の耐震試験のために、単に、第1枠体12をスライド移動し且つ第2枠体13を傾けるだけなので、耐震試験システム1の構造を簡素化し、廉価とすることができる。