【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、少なくとも上杭や上杭の杭頭部の耐震補強を施すことが目的であれば、上記上杭等の杭径内部に充填するのはコンクリートでなくてもセメントミルクで良いこと、既製杭の埋設に用いる回転キャップにセメントミルクの吐出機能を付与すれば、従来の杭基礎構造の構築方法を大きく変えることなく上記上杭や上杭の杭頭部等に耐震補強が施せることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
本願の回転キャップに係る発明の一つは、中空既製杭を地盤に設けられた杭穴に埋設する際に用いる回転キャップであって、該回転キャップは、下底部は開放され上底部は中央にロッドが上下に昇降可能な開口部のある上底面を有するとともに、前記中空既製杭を保持するための保持手段が備わった円筒状の回転キャップ本体と、該回転キャップ本体の前記上底面から上方に向かって前記回転キャップ本体と一体的に立設された前記ロッドの外管となる管体とからなり、前記管体には前記ロッドと着脱自在に連結できる連結手段が備わっていることを特徴とする回転キャップである。
【0017】
本発明の回転キャップは、従来と同様、中空既製杭を保持するための保持手段が備わっているとともに、中空既製杭の杭径内部に吐出液を注入するためのロッド(吐出液供給ロッド)と組み合わせて用いることができるような構造になっている。
【0018】
本発明の上記回転キャップは、回転キャップ本体とロッドの外管となる管体とが一体化したものからなる。
【0019】
回転キャップ本体は、従来と同様の中空既製杭を保持するための保持手段を備えた円筒状のものであり、下底部は開放されている。前記保持とは、中空既製杭を把持したり吊り上げたりすることである。前記保持手段としては、例えば、前記中空既製杭の杭頭部の外周面に設けられた突起に係合し得る前記回転キャップ本体の円筒の外周側面に設けられた切欠き部が挙げられる。この切欠き部と前記突起とが係合(もしくは嵌合)することによって杭を把持し吊り込むことができる。
【0020】
回転キャップ本体は、前述のとおり、下底部は開放されているが上底部は上底面を有する。そして、上底面の中央にはロッドが上下に昇降可能な開口部が設けられている。この開口部があることによって、前記中空既製杭の杭径内部に吐出液を注入するためのロッド(吐出液供給ロッド)と組み合わせて用いることができるようになり、中空既製杭の保持機能と該中空既製杭の杭径内部への吐出液の注入機構とを併せ持った既製杭埋設装置が容易に得られる。
【0021】
なお、上記ロッド(吐出液供給ロッド)は、例えば、杭穴へ吐出液(洗浄水、セメントミルク等)を吐出(注入、噴射)できる吐出口を備えた掘削ロッドを先端部に備えたもの、前記吐出口を備えた注入管などである。
【0022】
管体は、上記回転キャップ本体の上記上底面から上方に向かって前記回転キャップ本体と一体的に立設される。回転キャップ本体と管体とがいずれも鋼製である場合、これらの一体化は、例えば、溶接によってなされる。
【0023】
管体は、前記回転キャップ本体の前記開口部にロッドが挿入された場合に、該ロッドの外管となるように設けられる。このような外管を設けることによって回転キャップとロッドとの同時回転、ロッド単独での回転がそれぞれ可能となるため、杭を保持した該杭の杭径内部にセメントミルクを充填できる、前記杭径内部に充填されていた杭周固定液と掘削土砂との混合物の排出が容易となりセメントミルク充填物の品質が良くなる、セメントミルク充填時に杭が掘削孔に落下することや水平方向に移動することを防止する、セメントミルク充填後に埋設した中空既製杭の位置調整ができるといった様々なメリットが生じる。
【0024】
管体の内径は管体の内面とロッド継手の外面が接触しないロッド継手(ジョイント部)の径以上であり、管体の管長は1m〜15m程度である。管体にはロッドと着脱自在に連結できる連結手段が備わっている。ここでいうロッドは、上述の吐出液供給ロッドもしくはヤットコのロッド(回転駆動装置からの中間ロッド)である。
【0025】
上記連結手段としては、例えば、「ピンを管体の孔に挿しロッドのピン固定部に連結させる」といった手段が挙げられる。連結することにより管体とロッドとが同軸回転するようになれば、連結手段は特に限定されない。
【0026】
この回転キャップは、中空既製杭による杭基礎の構築において、下杭や中杭を埋設する際に用いることもできるが、セメントミルク等の吐出液の吐出液供給ロッドと組み合わせることにより、特に上杭を埋設する際に該上杭の杭径内部にセメントミルクを充填して埋設するのに効果的に用いることができる。
【0027】
本願の発明の他の一つは、杭周固定液と掘削土砂との混合物が充填された杭穴に中空既製杭が埋設され、埋設された上杭としての前記中空既製杭の杭径内部にはセメントミルクが充填されている杭基礎構造を構築する際に用いる前記セメントミルクの吐出口を備えた既製杭埋設装置であって、上記の回転キャップと該回転キャップの上記開口部に挿通可能な吐出液供給ロッドとを有することを特徴とする既製杭埋設装置である。
【0028】
上述の本発明の目的に照らした杭基礎構造として、杭周固定液と掘削土砂との混合物が充填された杭穴に中空既製杭が埋設され、埋設された上杭としての前記中空既製杭の杭径内部にはセメントミルクが充填されている杭基礎構造が考えられる。
【0029】
この杭基礎構造は、建物やフーチング等の上部構造物の基礎として地盤中に構築される中空既製杭による杭基礎の構造である。
【0030】
中空既製杭が埋設される杭穴は、アースオーガ等の掘削機により従来の方法で形成される。杭穴の形状や寸法は特に限定されない。例えば、ストレート形状のもの、拡底部、または節形状を有するものなどである。
【0031】
前記杭穴には、従来と同様、杭周固定液と掘削土砂との混合物が充填され、該混合物が硬化しない前に杭径内部が中空の既製杭が埋設される。杭穴の底部は、該混合物に替えて根固め液もしくは根固め液と掘削土砂との混合物が充填されていてもよい。杭周固定液や根固め液は、従来から用いられているものであればよく、これらの種類は特に限定されない。
【0032】
上記杭穴に埋設される杭径内部が中空の既製杭の種類は特に限定されない。例えば、PC杭、PHC杭、PRC杭などのコンクリート製杭、RC杭等の合成杭、鋼管杭、節杭などである。本発明における杭基礎の杭は、多くの場合、上杭と下杭、上杭と中杭と下杭など、複数の杭が継手などにより接続されてなる。継手を設けず、単杭として使用する場合もある。上記上杭は、この単杭も含む。
【0033】
上記杭基礎構造は、杭周固定液と掘削土砂との混合物が充填された杭穴に杭径内部が中空の既製杭を埋設してなるものであり、完成した杭基礎では、杭穴の周壁と埋設された杭(上杭、中杭、下杭等)の外面との間及び中杭や下杭としての前記中空既製杭の杭径内部には前記混合物が充填されそれが硬化しており、埋設された前記既製杭の上杭の上端から20m以下における前記中空既製杭の杭径内部はセメントミルクが充填されそれが硬化した構造となっている。このような構造にすることによって、本発明の目的である上杭あるいは上杭の杭頭部の耐震補強が図れる。
【0034】
セメントミルクの充填範囲を埋設された前記既製杭の上杭の上端から20m以下とするのは、この範囲が地震時に杭を作用する主な曲げモーメントおよびせん断力の範囲だからである。セメントミルクの充填範囲は、埋設された前記既製杭の上杭の上端から20m以下における前記既製杭の杭径内部であるからして、必ずしも上杭部分に限定されるものではなく、上杭の杭長によっては充填範囲が中杭、あるいは下杭の杭径内部にまで渡ることもあり、このような杭基礎構造のものも本発明の範囲に含まれる。
【0035】
上記セメントミルクは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、高炉セメント等の混合セメント、エコセメントといった各種セメントのいずれかに水を加えて水セメント比50〜150%で混練してなるものである。
【0036】
必要に応じて、ブリーディグ防止剤、減水剤等の化学混和剤、活性シリカ粉、膨張材等のセメント混和材を添加してもよい。また、前記セメントミルクには、充填施工時に掘削土砂や杭周固定液が混入してしまうこともあるため、これらの混入物が入ったものも含めてセメントミルクと称す。
【0037】
前記セメントミルクの硬化物は、一軸圧縮強度が5〜65N/mm
2であるのが好ましい。強度をこの範囲にすることによって、中空既製杭における杭体内のコンクリートと杭径内部に充填したセメントミルクとの付着強度が良好となるため揺れ等の外力に対して杭体とセメントミルクが一体挙動し、十分な耐震性能を確保できる。65N/mm
2を超える強度は過剰品質であって、これを得ようとすると強度面ではよいが施工し難くなったりコスト高となったりすることがある。
【0038】
上記のような範囲の一軸圧縮強度にするには、例えば、所定の充填範囲に充填するのに必要な量以上のセメントミルクを該充填範囲に注入し、杭周固定液と掘削土砂との混合物を極力排除してセメントミルクと置き換えるようにするか、洗浄水により所定の充填範囲に存在する前記混合物を除去する前処理を施した後にセメントミルクを該充填範囲に注入すればよい。
【0039】
本発明の既製杭埋設装置は、上述の本発明の目的に照らし、上述の杭基礎構造を構築するのに効果的に用いることができる。
【0040】
本願の既製杭埋設装置に係る発明の一つは、杭周固定液と掘削土砂との混合物が充填された杭穴に中空既製杭が埋設され、埋設された上杭としての前記中空既製杭の杭径内部にはセメントミルクが充填されている杭基礎構造を構築する際に用いる前記セメントミルクの吐出口を備えた既製杭埋設装置であって、前述の回転キャップと該回転キャップの上記開口部に挿通可能な吐出液供給ロッドとを有することを特徴とする既製杭埋設装置である。
【0041】
この既製杭埋設装置は、上述の本発明の回転キャップと該回転キャップの前記開口部に挿通可能な吐出液供給ロッドとを有するものである。この回転キャップと吐出液供給ロッドは、常に一体的に存在するものではなく、上記杭基礎構造を構築する際に組み合わせて用いられる両者が着脱自在のものである。
【0042】
回転キャップは上述の通りである。吐出液供給ロッドは、アースオーガ等の掘削機で用いられるロッドと同様のものであり、ロッドの先端及び/又はロッドの側面にはセメントミルク、洗浄水等の吐出液が吐出(噴射)できる吐出口(ノズルを含む)が設けられている。吐出口は、吐出液が低圧〜高圧で噴射できる口径と形状を有するものであれば、特に限定されない。アースオーガのロッドに設けられた従来の吐出口と同様のものでもよい。
【0043】
吐出口をノズルとし、該ノズルの先端が吐出液をいろいろな方向に角度を変えてもしくは同時に噴出できる構造になっていれば、上述のセメントミルクの充填が効率よく行えるので好ましい。
【0044】
前記吐出液供給ロッドは内部が中空となっており、前記吐出口まで前記吐出液を供給するための供給管が配されている。この供給管も、アースオーガのロッドに設けられた従来の供給管と同様のものでもよい。
【0045】
なお、埋設する杭の杭径が小さい場合は杭径内部の径(内径)が小さくなるため前記ロッドに替えて先端部もしくは先端部と管の外側面部に上記吐出口を有する単なる注入管が好ましい。本発明では該注入管も含めて吐出液供給ロッドと称す。
【0046】
前記吐出液供給ロッドの長さは、1〜20mが好ましい。この範囲にすれば、杭打機の標準的な長さのリーダーに、キャップ、ロッドおよびヘッドを取り付けやすく、杭径内部へのヘッドおよびロッドの挿入が容易で、また、上下撹拌および吐出液の杭径内部への注入も容易である。前述のとおり、セメントミルクの充填範囲の長さが上杭の杭長より長くなる場合もあるので、その場合は前記吐出液供給ロッドの長さを上杭の杭長より長くして充填してもよい。上述の通り、本発明に係る杭基礎構造では、埋設された前記既製杭の上杭の上端から20m以下における前記既製杭の杭径内部にセメントミルクを充填するので、前記吐出液供給ロッドの全長(複数のロッドを連結したものも含む)を20mを超えて長くする必要はない。
【0047】
前記吐出液供給ロッド(前記注入管を除く)は、先端部にジョイント部を介して吐出液の吐出口を備えた掘削ヘッドもしくは該掘削ヘッドと撹拌翼と吐出液の吐出口を備えた掘削ロッドが取り付けられたものであるのが好ましい。撹拌翼があれば杭径内部の前記混合物を排除したり、該杭径内部に残存している前記混合物とセメントミルクとの撹拌が容易となり、充填したセメントミルクの品質確保や強度・出来栄え等のばらつきを少なくすることができる。本発明では、前記掘削ヘッドもしくは前記掘削ロッドが取り付けられたものも含めて吐出液供給ロッドと称す。
【0048】
前記撹拌翼は、羽根形状のもの、スクリュー式(スパイラルタイプ)のものなどである。中でも一部あるいは全部がスクリュー式(スパイラルタイプ)のものが好ましい。これであれば中空既製杭の杭径内部に充填された充填物(杭周固定液と掘削土砂との混合物)を地上に排出しやすいので、セメントミルクの注入が容易となる。撹拌翼の寸法は下記の掘削ヘッドの径と同じかそれ以下が望ましく、撹拌翼の設置位置は特に限定されず複数の翼が任意の位置にあればよいが、中でも一つが前記掘削ヘッド直上のジョイント部付近にあるのが望ましい。
【0049】
また、前記吐出液供給ロッド(前記注入管を除く)の先端には吐出液の吐出口を備えた掘削ヘッドが備わっているのが好ましい。掘削ヘッドが回転することにより前記杭径内部に充填されている未硬化の杭周固定液と掘削土砂の混合物が掘り起こされ上方に押し上げられることが容易となるので、該混合物の排除が容易となる。
【0050】
この掘削ヘッドは、アースオーガの先端に取り付けられるものと同様のものである。例えば、先端に掘削爪があり、半巻以上のスパイラル状の板が取り付けられているといったものである。
【0051】
上記掘削ロッドには、上記撹拌翼と上記掘削ヘッドの他に必要に応じて吐出液の吐出口が設けられている。吐出口の設置位置は、従来のアースオーガにおける掘削ヘッドや撹拌ロッドに設けられる位置と同様である。このように、掘削ヘッドや掘削ロッドに吐出口が設けられていれば、吐出液供給ロッドにおける該掘削ロッドより上方のロッドに必ずしも吐出口を設ける必要はない。
【0052】
上述の吐出液供給ロッド以外に、埋設する既製杭の杭径が小さい場合は、上記吐出液供給ロッドを、先端部もしくは先端部と管の外側面部に吐出液の吐出口を備えた注入管にすることもできる。注入管にすれば、吐出口の位置、セメントミルクの噴射圧、噴射角度等を考慮することにより、杭の杭径内部の径が小さくても前記セメントミルクの杭径内部への充填が可能となる。
【0053】
本発明の既製杭埋設装置を用いて上記杭基礎構造を構築する場合、杭穴への杭の落下防止、水平方向の杭芯ずれ防止のため上記管体(外管)を固定しておくのが好ましい。
【0054】
固定方法は特に限定されないが、作業性の観点からして、前記既製杭埋設装置に管体固定手段を備えておくのが好ましい。
【0055】
この管体固定手段は、上記回転キャップや上記吐出液供給ロッドとは別個に存在しており、前記既製杭埋設装置を用いて上記杭基礎構造を構築する際に上記回転キャップや上記吐出液供給ロッドと組み合わせて用いられる。
【0056】
この管体固定手段は、例えば、位置調整手段を備えた固定板と該固定板の受け台とからなるもの、リーダーに取り付けて用いられるワイヤー、リーダーに取り付けた固定用治具といったものである。
【0057】
中でも、位置調整手段を備えた固定板と該固定板の受け台とからなるものは、杭を水平に保持しやすく杭重量を地盤で保持できるため安定性が高いといった利点からして好ましい。受け台は、例えば2本のH型鋼からなるものであり、これらを地上に平行となるように設置して用いられる。位置調整手段を備えた固定板は板状でブラケットが任意の位置に取り付けられる仕様のものであり、位置調整手段は、例えば、ジャッキとブラケットにより、杭が水平になるようにして前記固定板の高さ調整を行うものである。位置調整手段があることにより、杭頭位置を計画された位置に固定することが容易になる。
【0058】
本願の杭基礎構造の構築方法に係る発明の一つは、杭周固定液と掘削土砂との混合物が充填された杭穴に中空既製杭が埋設され、少なくとも上杭の杭径内部の一部もしくは全部にセメントミルクが充填されている杭基礎構造を構築する杭基礎構造の構築方法であって、少なくとも上杭としての前記中空既製杭を埋設する際には上記請求項2〜7のいずれか一項に記載の既製杭埋設装置を用い、該既製杭埋設装置の上記吐出液供給ロッドを上記回転キャップ本体の上記開口部に挿通して前記吐出液供給ロッドと回転駆動装置からの中間ロッドとをジョイント部を介して連結し上記管体の上記連結手段により上記回転キャップと前記吐出液供給ロッドもしくは前記中間ロッドとを連結するとともに、上記回転キャップ本体に設けられた上記保持手段により前記中空既製杭を保持して該中空既製杭を自沈回転により埋設して上杭を前記杭穴に設置し、前記管体を上記管体固定手段により固定し、上杭設置完了後に前記連結手段による前記連結を解除して前記吐出液供給ロッドもしくは前記中間ロッドを前記管体から外し、前記吐出液供給ロッドを上杭としての前記中空既製杭の杭径内部に下杭に向かって所定位置までより深く挿入し、前記回転キャップ本体の前記保持手段により上杭としての前記中空既製杭を保持したまま前記吐出液供給ロッドを昇降させながら上記吐出口からセメントミルクを吐出して、前記中空既製杭の前記杭径内部の所定範囲をセメントミルクで充填して前記杭基礎構造を構築することを特徴とする杭基礎構造の構築方法である。
【0059】
この構築方法で構築しようとする杭基礎構造は、杭周固定液と掘削土砂との混合物が充填された杭穴に中空既製杭が埋設され、少なくとも上杭の杭径内部の一部もしくは全部にセメントミルクが充填されている杭基礎構造といった特定の杭基礎構造であり、その詳細は前述のとおりである。
【0060】
本発明の構築方法では、少なくとも上杭としての中空既製杭を埋設する際には、上記いずれかの本発明の既製杭埋設装置を用いる。これら既製杭埋設装置の詳細は、前述のとおりである。
【0061】
本発明の構築方法では、まず、アースオーガ等の掘削機により従来の方法で杭周固定液と掘削土砂との混合物が充填された杭穴を形成する。次に、前記混合物が硬化する前に従来の方法で上杭以外の中空既製杭を前記杭穴に埋設する。
【0062】
下杭や中杭としての中空既製杭を埋設する際には、従来の既製杭埋設装置(回転キャップ)を用いてもよいが、前述の本発明の回転キャップ、もしくは必要に応じて、前述の本発明の既製杭埋設装置を用いてもよい。埋設方法は、従来の方法あるいは後述の上杭としての前記中空既製杭を埋設する際に用いる本発明の埋設方法に準じて行う。
【0063】
上杭としての中空既製杭を埋設する際には、まず、上記本発明の既製杭埋設装置における上記吐出液供給ロッドを上記回転キャップ本体の上記開口部に挿通して前記吐出液供給ロッドと回転駆動装置からの中間ロッド(吐出液供給ロッドの直上に配されるロッド)とをジョイント部を介して連結するとともに上記管体に設けられている上記連結手段により上記回転キャップと前記吐出液供給ロッドもしくは前記中間ロッドとを連結し、本発明の既製杭埋設装置の組み立て及びロッドへの装着を行う。
【0064】
そして、上記本発明の既製杭埋設装置の上記回転キャップ本体に設けられた上記保持手段により前記中空既製杭を保持して該中空既製杭を自沈回転により埋設して上杭を前記杭穴に設置する。前記吐出液供給ロッドは、前記中空既製杭(上杭)の杭径内部に挿入された形となっている。
【0065】
次に、前記管体が杭穴への杭の落下、水平方向の杭芯ずれを防ぐべく、前記管体を前記管体固定手段によりブラケットをジャッキで保持し受台に固定する。
【0066】
上杭設置完了後に前記連結手段による前記連結を解除して前記吐出液供給ロッドもしくは前記中間ロッドを前記管体から外して前記吐出液供給ロッドを上杭〜下杭における中空既製杭の杭径内部を自在に上下できるようにする。
【0067】
その後、前記連結の解除により上下に自在に上げ下げできるようになった前記吐出液供給ロッドを上杭としての前記中空既製杭の杭径内部に下杭に向かって所定位置までより深く挿入し、前記回転キャップ本体の前記保持手段により上杭としての前記中空既製杭を保持したまま(埋設した基礎杭を保持したまま)前記吐出液供給ロッドを昇降させながら上記掘削ヘッド等に設けた上記吐出口からセメントミルクを吐出して、上杭等の前記中空既製杭の前記杭径内部の所定範囲をセメントミルクで充填する。
【0068】
上記のとおり、本発明の構築方法では、セメントミルクの該充填を前記回転キャップ本体の前記保持手段により上杭としての前記中空既製杭を保持したまま(埋設した基礎杭を保持したまま)行うので、杭穴への杭の落下防止、水平方向の杭芯ずれ防止といった効果が生まれる。
【0069】
なお、セメントミルクの前記充填は、上杭の杭径内部の一部もしくは全部だけに限定されるものではなく、上杭から中杭に渡る杭径内部、もしくは上杭から下杭に渡る杭径内部の所定範囲に行ってもよい。本発明の杭基礎構造の構築方法では、セメントミルクの前記充填の際、必要に応じて前記中間ロッドもしくは前記吐出液供給ロッドの長さを長くするか複数本の補助ロッド(補助中間ロッド、補助吐出液供給ロッド、補助掘削ロッド等)を接続するなどしてロッドの全長を長くすることにより、前記吐出液供給ロッドを中杭や下杭の杭径内部にまで届くようにして該充填ができる。
【0070】
また、このセメントミルクの充填は、前記吐出液供給ロッドを上下に一回もしくは複数回上げ下げし、その過程で行なう。該吐出液供給ロッドの先端部に前記掘削ヘッドや掘削ロッドが取り付けられていれば、該吐出液供給ロッドを上下に上げ下げしている間に杭径内部に充填している杭周固定液と掘削土砂との混合物が排除しやすくなる。
【0071】
また、前記吐出液供給ロッドの前記吐出口からのセメントミルクの吐出(中空既製杭の杭径内部への充填)は、前記中空既製杭の杭径内部を前処理した後に行ってもよい。
【0072】
例えば、前記吐出液供給ロッドとして、前記掘削ヘッドと撹拌翼が備わったものを用い、セメントミルクを吐出する前に前記掘削ヘッドと撹拌翼により前記杭径内部に充填されている前記混合物を地上に排出するといった前処理をし、その後、セメントミルクの充填作業を行ってもよい。
【0073】
あるいは、前記掘削ロッドが先端部に取り付けられている前記吐出液供給ロッドを上げ下げしながら高圧の洗浄水を噴出してセメントミルクを充填する所定範囲の杭径内部を洗浄するといった前処理をし、その後、セメントミルクの充填作業を行ってもよい。これらのような前処理を行うパターンも本発明の範囲に含まれる。
【0074】
セメントミルク等の前記吐出液の前記吐出口は、吐出液供給ロッドの先端、側面、先端と側面の両方のいずれかに設けられる。吐出液供給ロッドの先端部に掘削ヘッドが取り付けられている場合は、掘削ヘッドだけに吐出口を設けておくこともできる。また、吐出液供給ロッドの先端部に掘削ヘッドのある掘削ロッドが取り付けられている場合は、掘削ヘッド、掘削ヘッドと掘削ロッドの側面にだけ吐出口を設けておくこともできる。
【0075】
セメントミルク、洗浄水等の前記吐出液の吐出は、必要に応じて低圧〜高圧における適圧で噴射して行う。ここで言う低圧とは2MPa程度の圧力であり、高圧とは18MPa程度の圧力である。通常は、杭穴の形成時にアースオーガのヘッドやロッドからセメントミルクが吐出される際の2MPa程度の吐出圧(噴射圧)である。圧が低すぎるとセメントミルクの充填効率が悪くなったり前記混合物の混入が多くなって充填されたセメントミルクの品質が悪くなる。
【0076】
セメントミルクの噴射方向は、水平〜やや下向きが好ましい。この方向にすれば、セメントミルクを押し上げ易くなるので杭頭付近のまでの杭径内部にセメントミルクをスムーズに充填できる。
【0077】
本願の回転キャップに係る発明の他の一つは、中空既製杭を地盤に設けられた杭穴に埋設する際に用いる回転キャップであって、該回転キャップは、上底部と下底部は開放されており、上端部にはオーガジョイント部材との連結部を有するとともに、下端部には前記中空既製杭を保持するための保持手段が備わった縦長円筒状の回転キャップ本体と、下端部に前記回転キャップ本体の上端部に着脱自在に取り付けることができる連結部を有し、下底部は開放され上底部は中央にロッドをオーガに装着するためのオーガのロッド装着部の外径より大きい開口径の開口部がある、前記回転キャップ本体をオーガに連結するための筒状のオーガジョイント部材とを有することを特徴とする回転キャップである。
【0078】
この回転キャップは、上記中空既製杭の杭径が大きい場合(例えば、杭の外径が600mm以上)、上記回転キャップ本体内に挿通されるロッド(吐出液供給ロッドもしくは掘削ロッド)の先端部に大径の掘削ヘッドを有していたりロッド外面にスパイラルタイプの撹拌翼を有していたりして、ロッドの外径が大きくなる場合に用いられる。
【0079】
この回転キャップは、大別して、上底部と下底部が開放された縦長円筒状の回転キャップ本体と該回転キャップ本体の上端部に着脱自在に取り付けることができる筒状のオーガジョイント部材とからなる。
【0080】
この回転キャップ本体の形状は、例えば、横(筒の外径):縦(筒の長さ)=1:1〜1:50の寸法比の円筒状のものである。このような形状にするのは管体内にロッドを収納するためだからであり、上記寸法比の範囲であれば一般的な杭施工機械のリーダーに取り付けることができるので好ましい。回転キャップ本体の円筒の外径は埋設する中空既製杭の外径に応じて定まり限定されるものではないが、例えば、350〜1250mmである。
【0081】
この回転キャップ本体の上端部にはオーガジョイント部材を連結(装着)するための連結部を有する。連結部は、例えば、オーガジョイント部材を連結ピンで連結するための回転キャップ本体の外周に設けられた複数のピン孔からなるものである。
【0082】
また、下端部には中空既製杭を保持するための保持手段が備わっている。この保持手段は従来の円筒状回転キャップに設けられているものと同様のものであり、例えば、前記中空既製杭の杭頭部の外周面に設けられた突起に係合し得る前記回転キャップ本体の円筒の外周側面に設けられた切欠き部が挙げられる。この切欠き部と前記突起とが係合(もしくは嵌合)することによって杭を把持し吊り込むことができる。なお、前記保持とは、中空既製杭を把持したり吊り上げたりすることである。
【0083】
上記回転キャップ本体の上方に連結(装着)されるオーガジョイント部材は、上記回転キャップ本体をオーガに直接取り付けるための筒状の連結部材であり、下底部は開放され下端部には前記回転キャップ本体の上端に着脱自在に取り付けることができる連結部を有し、上底部は中央にロッドをオーガに装着するためのオーガのロッド装着部の外径より大きい開口径の開口部がある回転キャップ本体のキャップ(帽子)である。前記連結部は、前記回転キャップ本体の連結部の形態に対応する形態となっている。
【0084】
また、このオーガジョイント部材は上端がオーガに連結され下端は前記回転キャップ本体に連結されるため、その形状はオーガの連結部と前記回転キャップ本体の連結部の寸法・形態に対応したものとなっている。
【0085】
また、本発明のこの回転キャップは、吐出液供給ロッド等のロッドもオーガに装着し該ロッドと組み合わせることにより本発明の既製杭埋設装置となるため、オーガジョイント部材の上底部は中央にロッドをオーガに装着するためのオーガのロッド装着部の外径より大きい開口径の開口部を有する。オーガジョイント部材をこのような形態にすることによって、オーガジョイント部材のオーガへの取付が容易となる。
【0086】
本願の既製杭埋設装置に係る発明の他の一つは、杭周固定液と掘削土砂との混合物が充填された杭穴に中空既製杭が埋設され、埋設された上杭としての前記中空既製杭の杭径内部にはセメントミルクが充填されている杭基礎構造を構築する際に用いる前記セメントミルクの吐出口を備えた既製杭埋設装置であって、本願の回転キャップに係る発明の他の一つとして示した上記の回転キャップと該回転キャップの中央に縦軸方向に設置される吐出液供給ロッドとを有することを特徴とする既製杭埋設装置である。
【0087】
杭基礎構造については前述の通りである。既製杭埋設装置は、本願の回転キャップに係る発明の他の一つとして示した上記の回転キャップと該回転キャップの中央に縦軸方向に設置される吐出液供給ロッドとからなり、これらは施工時に組み合わせて用いられる。
【0088】
回転キャップについては上述の通りである。吐出液供給ロッドも前述の通りであるが、注入管タイプのものは用いない点で前述の既製杭埋設装置における吐出液供給ロッドとは異なる。また、吐出液供給ロッドはその最上部がオーガのロッド装着部に装着され、前記回転キャップ本体の中軸部に挿通される。
【0089】
この既製杭埋設装置の吐出液供給ロッドでは、先端部にジョイント部を介して吐出液の吐出口を備えた掘削ヘッドもしくは掘削ヘッドとスパイラルタイプの撹拌翼と吐出液の吐出口を備えた掘削ロッドが取り付けられているのが好ましい。このように、吐出液供給ロッドが掘削ヘッドやスパイラルタイプの撹拌翼のある掘削ロッドを備えていても、回転キャップ本体の円筒内空間が広いので挿通された吐出液供給ロッドの昇降が容易にできる。
【0090】
また、この既製杭埋設装置の前記吐出液供給ロッドでは、前記吐出液供給ロッドの外面にもスパイラルタイプの撹拌翼が設けられているのが好ましく、先端部に吐出液の吐出口を備えた掘削ヘッドが取り付けられていれば、この吐出液供給ロッドはスパイラルタイプの撹拌翼と吐出液の吐出口を備えた掘削ロッドと同様のものとなる。したがって、吐出液供給ロッドの外面にもスパイラルタイプの撹拌翼を設けることにより、吐出液供給ロッドを掘削ロッドの機能の一部を併せ持ったものに変えることができる。
【0091】
また、この既製杭埋設装置は、上記回転キャップにおける上記回転キャップ本体を固定するための回転キャップ本体固定手段を有しているのが好ましい。
【0092】
本発明のこの既製杭埋設装置を用いて上記杭基礎構造を構築する場合にも、杭穴への杭の落下防止、水平方向の杭芯ずれ防止のため上記回転キャップ本体を固定しておくのが好ましい。固定方法は特に限定されないが、作業性の観点からして、前記既製杭埋設装置に回転キャップ本体固定手段を備えておくのが好ましい。
【0093】
この回転キャップ本体固定手段は、前述の管体固定手段に対応するものであり、この固定手段も上記回転キャップや上記吐出液供給ロッドとは別個に存在しており、前記既製杭埋設装置を用いて上記杭基礎構造を構築する際に上記回転キャップや上記吐出液供給ロッドと組み合わせて用いられる。
【0094】
この回転キャップ本体固定手段も前述の管体固定手段と同様のものであり、例えば、位置調整手段を備えた固定板と該固定板の受け台とからなるもの、リーダーに取り付けて用いられるワイヤー、固定用治具といったものである。
【0095】
回転キャップ本体固定手段においても、前述の管体固定手段と同様、位置調整手段を備えた固定板と該固定板の受け台とからなるものが作業性の点からして好ましい。
【0096】
受け台は、例えば2本のH型鋼からなるものであり、これらを地上に杭を挟んで平行に設置して用いられる。位置調整手段を備えた固定板には孔が開いており、位置調整手段は、例えば、固定板に取り付けたブラケットをジャッキで保持することにより、前記固定板の高さ調整を行うものである。位置調整手段があることにより、杭頭位置を計画した位置へ固定することが容易となる。
【0097】
本願の杭基礎構造の構築方法に係る発明の他の一つは、杭周固定液と掘削土砂との混合物が充填された杭穴に中空既製杭が埋設され、少なくとも上杭の杭径内部の一部もしくは全部にセメントミルクが充填されている杭基礎構造を構築する杭基礎構造の構築方法であって、少なくとも上杭としての前記中空既製杭を埋設する際には、本願の既製杭埋設装置に係る発明の他の一つとして記載した前述の既製杭埋設装置を用い、該既製杭埋設装置の上記吐出液供給ロッドを上記オーガのロッド装着部に装着するとともに上記回転キャップ本体を上記オーガジョイント部材を介して前記オーガに連結し、前記回転キャップ本体に設けられた上記保持手段により前記中空既製杭を保持して該中空既製杭を自沈回転により埋設して上杭まで前記杭穴に設置し、前記回転キャップ本体を上記回転キャップ本体固定手段により固定し、上杭設置完了後に前記オーガにオーガジョイント部材を取り付けたまま該オーガジョイント部材と前記回転キャップ本体との連結を解除し、前記セメントミルクが前記中空既製杭の杭径内部の所定範囲に充填できるように前記吐出液供給ロッドの長さを調整し、この吐出液供給ロッドを上杭としての前記中空既製杭の杭径内部に下杭に向かって所定位置までより深く挿入し、前記回転キャップ本体の前記保持手段により上杭としての前記中空既製杭を保持したまま前記吐出液供給ロッドを昇降させながら上記吐出口からセメントミルクを吐出して、前記中空既製杭の前記杭径内部の所定範囲をセメントミルクで充填して前記杭基礎構造を構築することを特徴とする杭基礎構造の構築方法である。
【0098】
この構築方法は既製杭埋設装置の回転キャップとして円筒状の回転キャップ本体とオーガジョイント部材とからなるものを用い、前述の円筒状の回転キャップ本体と管体とからなる回転キャップによる既製杭埋設装置を用いた構築方法と異なるが、施工の基本的工程には大きな差はない。
【0099】
この構築方法において、杭基礎構造、既製杭埋設装置については前述の通りである。本発明の構築方法では、まず、アースオーガ等の掘削機により従来の方法で杭周固定液と掘削土砂との混合物が充填された杭穴を形成する。次に、前記混合物が硬化する前に従来の方法で上杭以外の中空既製杭を前記杭穴に埋設する。
【0100】
下杭や中杭としての中空既製杭を埋設する際には、従来の既製杭埋設装置(回転キャップ)を用いてもよいが、前述の本発明の回転キャップ、もしくは必要に応じて、前述の本発明の既製杭埋設装置を用いてもよい。埋設方法は、従来の方法あるいは後述の上杭としての前記中空既製杭を埋設する際に用いる本発明の埋設方法に準じて行う。
【0101】
上杭としての中空既製杭を埋設する際には、まず、前記既製杭埋設装置の上記吐出液供給ロッドを上記オーガのロッド装着部に装着するとともに上記回転キャップ本体を上記オーガジョイント部材を介して前記オーガに連結し、前記回転キャップ本体に設けられた上記保持手段により前記中空既製杭を保持することにより、前記中空既製杭の杭頭部にオーガに連結した状態で前記既製杭埋設装置を設置する。
【0102】
次に、オーガの駆動装置により前記中空既製杭を自沈回転させて所定の位置まで埋設し、下杭から上杭まで連結して杭穴に設置された基礎杭を得るとともに、前記回転キャップ本体を上記回転キャップ本体固定手段により固定し、回転キャップ本体により杭穴への杭の落下、水平方向の杭芯ずれを防ぐようにする。
【0103】
上杭設置完了後に前記オーガにオーガジョイント部材を取り付けたまま該オーガジョイント部材と前記回転キャップ本体との連結を解除し、吐出液供給ロッド等のロッドが回転キャップから独立して動作できるようにする。オーガにオーガジョイント部材を取り付けたままにするのは、ロッドの昇降・回転を容易にするとともにロッドや既製杭埋設装置の回収を容易にするためである。
【0104】
そして、セメントミルクが前記中空既製杭の杭径内部の所定範囲に充填できるように1本もしくは複数本の吐出液供給ロッドを連結するなどして前記吐出液供給ロッドの長さを調整する。
【0105】
その後、長さ調整した吐出液供給ロッドを上杭としての前記中空既製杭の杭径内部に下杭に向かって所定位置までより深く挿入し、前記回転キャップ本体の前記保持手段により上杭としての前記中空既製杭を保持(すなわち、上杭〜下杭までの基礎杭全体を保持)したまま前記吐出液供給ロッドを昇降させながら上記吐出口からセメントミルクを吐出して、前記中空既製杭の前記杭径内部の所定範囲をセメントミルクで充填して前記杭基礎構造を構築する。
【0106】
吐出液供給ロッドと回転キャップ本体とは分離しているので、埋設した杭の保持と吐出液供給ロッドの杭径内部での昇降をそれぞれ独立して行うことができる。前記保持手段により埋設した杭を保持したままにするのは杭穴への杭の落下防止、水平方向の杭芯ずれ防止のためである。
【0107】
杭径内部の所定範囲のセメントミルクによる充填が完了したら、長さを調整するために継ぎ足した吐出液供給ロッドを取り外し、再び、回転キャップ本体とオーガジョイント部材とを連結して、回転キャップ本体と吐出液供給ロッド(すなわち、既製杭埋設装置)を地上に引き上げる。
【0108】
上述のような杭基礎構造の構築方法によれば、大径の中空既製杭を用いて前記杭基礎構造を構築したり、スクリュータイプの撹拌翼等の幅広の撹拌翼を用いて前記杭基礎構造を構築したりすることが容易となる。
【0109】
なお、この杭基礎構造の構築方法でも、セメントミルクの充填範囲、セメントミルクの充填方法、杭径内部の前処理、吐出口の設置形態、セメントミルク等の吐出液の吐出方法については、前に示した杭基礎構造の構築方法のところで述べたことと同様である。