特許第6576254号(P6576254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576254
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】光レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/93 20060101AFI20190909BHJP
   G01S 17/08 20060101ALI20190909BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   G01S17/93
   G01S17/08
   G01S7/481 A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-11332(P2016-11332)
(22)【出願日】2016年1月25日
(65)【公開番号】特開2017-133843(P2017-133843A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】戸部田 雅一
【審査官】 東 治企
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−170269(JP,A)
【文献】 特開2010−091485(JP,A)
【文献】 特開平07−244154(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114815(WO,A1)
【文献】 特開2009−115628(JP,A)
【文献】 特開2007−240384(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0003041(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00−7/64
G01S 13/00−17/95
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の監視領域に測定光を投光する投光部と、
前記監視領域に存在する物体で反射した、前記測定光の反射光を受光して受光信号を出力する受光部と、
前記受光信号に基づいて前記物体との距離を検出する判定部と、を備えた光レーダ装置において、
前記投光部は、
前記測定光を投光する投光器と、
前記投光器から投光された前記測定光の強度が、前記監視領域の水平方向における左右両端から当該監視領域の中央に向かうに連れて強くなるように、前記測定光を拡散させる投光光学系と、を有し、
前記受光部は、
前記監視領域からの前記反射光を集光する受光光学系と、
前記受光光学系で集光された前記反射光を受光する受光器と、
前記受光器の受光状態に応じた前記受光信号を出力する信号処理部と、を有し、
前記受光器および前記信号処理部は、少なくとも一組設けられ、
前記判定部は、
一組の前記受光器および前記信号処理部より出力された前記受光信号に基づいて、前記物体との距離の前回値と今回値、および前記受光信号の強度の前回値と今回値とをそれぞれ検出し、
前記物体との距離の前回値と今回値との比である距離比の二乗値と、前記受光信号の強度の前回値と今回値との比である信号強度比とを比較した結果に基づいて、前記物体が前記監視領域の右側または左側から当該監視領域の中央に近づいているか否かを判定する、ことを特徴とする光レーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光レーダ装置において、
前記物体との距離の前回値をDn−1、今回値をDとし、前記受光信号の強度の前回値をVn−1、今回値をVとしたとき、
前記判定部は、
前記距離比として、距離の変化率D/Dn−1の逆数Dn−1/Dを算出するとともに、前記信号強度比として、信号強度の変化率V/Vn−1を算出し、
前記距離比の二乗値より前記信号強度比の方が大きい場合(V/Vn−1>(Dn−1/D)、前記物体が前記監視領域の右側または左側から中央に近づいていると判定し、
前記距離比の二乗値より前記信号強度比の方が小さい場合(V/Vn−1<(Dn−1/D)、前記物体が前記監視領域の中央から右側または左側へ離れていると判定する、ことを特徴とする光レーダ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光レーダ装置において、
前記判定部は、前記距離比の二乗値と前記信号強度比とが等しい場合(V/Vn−1=(Dn−1/D)、前記物体が前記監視領域の左右方向へ移動していないと判定する、ことを特徴とする光レーダ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光レーダ装置において、
前記物体との距離の前回値をDn−1、今回値をDとし、前記受光信号の強度の前回値をVn−1、今回値をVとしたとき、
前記判定部は、
前記距離比として、距離の変化率D/Dn−1を算出するとともに、前記信号強度比として、信号強度の変化率の逆数Vn−1/Vを算出し、
前記距離比の二乗値より前記信号強度比の方が小さい場合(Vn−1/V<(D/Dn−1)、前記物体が前記監視領域の右側または左側から中央に近づいていると判定し、
前記距離比の二乗値より前記信号強度比の方が大きい場合(Vn−1/V>(D/Dn−1)、前記物体が前記監視領域の中央から右側または左側へ離れていると判定する、ことを特徴とする光レーダ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光レーダ装置において、
前記判定部は、前記距離比の二乗値と前記信号強度比とが等しい場合(Vn−1/V=(D/Dn−1)、前記物体が前記監視領域の左右方向へ移動していないと判定する、ことを特徴とする光レーダ装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の光レーダ装置において、
前記判定部が検出した前記物体との距離と、前記判定部が判定した前記物体の動向とを外部へ通知する通知部をさらに備えた、ことを特徴とする光レーダ装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の光レーダ装置において、
前記受光器は、
前記監視領域の水平方向における左側領域からの前記反射光を受光する左側用受光器と、
前記監視領域の水平方向における右側領域からの前記反射光を受光する右側用受光器と、
前記左側用受光器と前記右側用受光器との間にある中央領域からの前記反射光を受光する中央用受光器と、から成り、
前記信号処理部は、
前記左側用受光器の受光状態に応じた前記受光信号を出力する左側用信号処理部と、
前記右側用受光器の受光状態に応じた前記受光信号を出力する右側用信号処理部と、
前記中央用受光器の受光状態に応じた前記受光信号を出力する中央用信号処理部と、から成る、ことを特徴とする光レーダ装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光レーダ装置において、
前記判定部は、前記左側用信号処理部と前記右側用信号処理部と前記中央用信号処理部の各信号処理部から出力された前記受光信号に基づいて、前記左側領域と前記右側領域と前記中央領域の各領域における前記物体の動向を判定する、ことを特徴とする光レーダ装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の光レーダ装置において、
当該光レーダ装置は、前記監視領域が車両の前方に拡がるように、当該車両に搭載されており、
前記車両から所定距離前方において、前記車両の車幅より側方へ拡がるように、前記監視領域が設定され、かつ前記測定光が前記投光部により投光される、ことを特徴とする光レーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光した測定光の物体による反射光を受光して、物体との距離を検出する光レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衝突被害を軽減または回避するために、光レーダ装置を搭載した車両が登場している。光レーダ装置は、たとえば車両のフロントガラスやダッシュボードなどに設置されていて、車両の前方に設けられた監視領域に対して、投光部により測定光を投光する。そして、測定光が監視領域に存在する物体で反射すると、光レーダ装置は、その反射光を受光部で受光して電気的な受光信号に変換し、該受光信号に基づいて物体との距離などを検出する。
【0003】
具体的には、光レーダ装置は、たとえば、自身が搭載された自車両の前方を走行する先行車両からの反射光を受光して、先行車両との距離を測定したり、自車両と先行車両との相対速度を算出したりする。
【0004】
さらに、接触事故を回避するため、自車両の進行方向の側方から、自車両の前方に飛び出したり、自車両の前方を横切ったりする歩行者や動物を検知することが望まれている。この場合、自車両から歩行者等までの距離だけでなく、自車両の前方における歩行者等の動向(特に、車幅方向への移動)を検出する必要がある。
【0005】
特許文献1に記載のレーザーレーダ装置では、車両前方の監視領域を水平方向に3分割して、分割領域毎に受光系(受光器、AMP、およびA/Dコンバータ)を設けて、独立して受光処理を行う。そして、その3つの受光系からの出力を時系列的に処理して、物体が一の分割領域から他の分割領域に移動したことを検出して、物体の車幅方向の動向を判断する。
【0006】
詳しくは、たとえば3つの監視領域のうち、右側監視領域で検出していた物体を、自車両の走行車線上にある中央監視領域で検出した場合は、物体が右側から自車両に近づいていると判断する。つまり、2つ以上の受光系より独立して出力される2つ以上の受光信号に基づいて、物体の動向を判断する。このため、信号処理が複雑になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−150045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、1つの受光系より出力される単一の受光信号に基づいて、物体の動向を判断することができる光レーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光レーダ装置は、所定の監視領域に測定光を投光する投光部と、監視領域に存在する物体で反射した、測定光の反射光を受光して受光信号を出力する受光部と、該受光信号に基づいて物体との距離を検出する判定部とを備える。投光部は、測定光を投光する投光器と、投光器から投光された測定光の強度が、監視領域の水平方向における左右両端から当該監視領域の中央に向かうに連れて強くなるように、測定光を拡散させる投光光学系とを有する。受光部は、監視領域からの反射光を集光する受光光学系と、受光光学系で集光された反射光を受光する受光器と、受光器の受光状態に応じた受光信号を出力する信号処理部とを有する。受光器および信号処理部は、少なくとも一組設けられている。判定部は、一組の受光器および信号処理部より出力された受光信号に基づいて、物体との距離の前回値と今回値、および受光信号の強度の前回値と今回値とをそれぞれ検出し、物体との距離の前回値と今回値との比である距離比の二乗値と、受光信号の強度の前回値と今回値との比である信号強度比とを比較した結果に基づいて、物体が監視領域の右側または左側から当該監視領域の中央に近づいているか否かを判定する。
【0010】
上記によると、測定光の強度が監視領域の水平方向における左右両端から中央に向かうに連れて強くなるように、投光器から照射された測定光が投光光学系により拡散される。そして、判定部が、一組の受光器および信号処理部により出力された受光信号に基づいて、物体との距離と受光信号の強度のそれぞれの前回値と今回値とを検出し、距離比の二乗値と信号強度比との比較結果から、物体が監視領域の右側または左側から中央に近づいているか否かを判定する。このため、1つの受光系(一組の受光器および信号処理部)より出力される単一の受光信号に基づいて、物体の動向を判断することができる。
【0011】
本発明では、上記光レーダ装置において、物体との距離の前回値をDn−1、今回値をDとし、受光信号の強度の前回値をVn−1、今回値をVとしたとき、判定部は、距離比として、距離の変化率D/Dn−1の逆数Dn−1/Dを算出するとともに、信号強度比として、信号強度の変化率V/Vn−1を算出し、距離比の二乗値より信号強度比の方が大きい場合(V/Vn−1>(Dn−1/D)、物体が監視領域の右側または左側から中央に近づいていると判定し、距離比の二乗値より信号強度比の方が小さい場合(V/Vn−1<(Dn−1/D)、物体が監視領域の中央から右側または左側へ離れていると判定してもよい。
【0012】
また、判定部は、距離比の二乗値と信号強度比とが等しい場合(V/Vn−1=(Dn−1/D)、物体が監視領域の左右方向へ移動していないと判定してもよい。
【0013】
また、他の判定方法として、判定部は、距離比として、距離の変化率D/Dn−1を算出するとともに、信号強度比として、信号強度の変化率の逆数Vn−1/Vを算出し、距離比の二乗値より信号強度比の方が小さい場合(Vn−1/V<(D/Dn−1)、物体が監視領域の右側または左側から中央に近づいていると判定し、距離比の二乗値より信号強度比の方が大きい場合(Vn−1/V>(D/Dn−1)、物体が監視領域の中央から右側または左側へ離れていると判定してもよい。
【0014】
また、判定部は、距離比の二乗値と信号強度比とが等しい場合(Vn−1/V=(D/Dn−1)、物体が監視領域の左右方向へ移動していないと判定してもよい。
【0015】
また、本発明では、上記光レーダ装置において、判定部が検出した物体との距離と、判定部が判定した物体の動向とを外部へ通知する通知部をさらに備えてもよい。
【0016】
また、本発明では、上記光レーダ装置において、受光器は、監視領域の水平方向における左側領域からの反射光を受光する左側用受光器と、監視領域の水平方向における右側領域からの反射光を受光する右側用受光器と、左側用受光器と右側用受光器との間にある中央領域からの反射光を受光する中央用受光器とから成り、信号処理部は、左側用受光器の受光状態に応じた受光信号を出力する左側用信号処理部と、右側用受光器の受光状態に応じた受光信号を出力する右側用信号処理部と、中央用受光器の受光状態に応じた受光信号を出力する中央用信号処理部とから構成されてもよい。
【0017】
また、本発明では、上記光レーダ装置において、判定部は、左側用信号処理部と右側用信号処理部と中央用信号処理部の各信号処理部から出力された受光信号に基づいて、左側領域と右側領域と中央領域の各領域における物体の動向を判定してもよい。
【0018】
さらに、本発明では、光レーダ装置は、監視領域が車両の前方に拡がるように、当該車両に搭載されており、車両から所定距離前方において、車両の車幅より側方へ拡がるように、監視領域が設定され、かつ測定光が投光部により投光されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、1つの受光系より出力される単一の受光信号に基づいて、物体の動向を判断することができる光レーダ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態による光レーダ装置の構成図である。
図2図1の光レーダ装置を搭載した車両と、該光レーダ装置の監視領域を示した図である。
図3図1の光レーダ装置の測定光の強度分布を示した図である。
図4図1の投光部の詳細の一例を示した図である。
図5図1の投光部の詳細の他例を示した図である。
図6A】車両の車幅方向に物体が移動していない状態を示した図である。
図6B図6Aの場合の受光信号の強度と物体との距離の変化を示した図である。
図7A】車両の走行車線に対して物体が近づいて行く状態を示した図である。
図7B図7Aの場合の受光信号の強度と物体との距離の変化を示した図である。
図8A】車両の走行車線に対して物体が離れて行く状態を示した図である。
図8B図8Aの場合の受光信号の強度と物体との距離の変化を示した図である。
図9A図1の光レーダ装置の動作を示したフローチャートである。
図9B図9Aの続きのフローチャートである。
図10図1の光レーダ装置の動作を示したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0022】
図1は、本発明の実施形態による光レーダ装置10の構成図である。図2は、光レーダ装置10を搭載した車両50と光レーダ装置10の監視領域Zを示した図である。
【0023】
光レーダ装置10は、レーザーレーダ装置から構成され、図2に示すように、車両50に搭載されている。車両50は自動四輪車から構成されている。光レーダ装置10は、その車両50のフロントガラスまたはダッシュボードなどに取り付けられている。
【0024】
図1に示すように、光レーダ装置10には、制御部1、投光部2、受光部3、判定部4、およびインタフェイス5が備わっている。
【0025】
制御部1は、CPUとメモリ等から構成され、光レーダ装置10の各部を制御する。制御部1は、車両50に設けられた他の車両制御装置(ECU)60と、インタフェイス5により通信を行う。
【0026】
投光部2は、投光光学系21、投光器22、および駆動回路23から構成されている。投光光学系21は、レンズまたは回折光学素子などから構成されている。投光器22は、レーザーダイオードから構成されている。駆動回路23は、投光器22を駆動するための回路である。
【0027】
駆動回路23により投光器22が駆動されると、投光器22はレーザー光を出射する。すると、そのレーザー光が、投光光学系21により拡散されて、車両50の前方にある監視領域Zに投光される(図2)。投光部2から監視領域Zに投光されたレーザー光は、監視領域Zで物体M(たとえば歩行者)との距離などを検出するための測定光となる。
【0028】
図2に示すように、監視領域Zは、車両50の前方で車両側からみて左右対称な扇形に拡がっている。車両50から所定距離前方では、監視領域Zおよび測定光の水平方向(図では上下方向)の拡がり幅は、車両50の車幅および走行車線(車幅と同等)Tより広くなっている。
【0029】
また、車両50から所定距離前方にある所定位置での測定光の強度は、図3に示すように、監視領域Zの水平方向(車幅方向)における左右両端から中央に向かうに連れて強くなるように分布する。監視領域Zの中央で測定光の強度を強く設定しているのは、車両50の前方の走行車線T上に存在する物体(たとえば先行車両)を長距離にわたって検出する等の理由による。
【0030】
また、投光光学系21のレンズなどの形状や構成を変えることにより、所望の測定光の強度分布を実現することができる。
【0031】
図4は、投光部2の詳細の一例を示した図である。図4(a)に示すように、投光光学系21は、コリメータレンズ21aと凹シリンドリカルレンズ21bとから構成されている。
【0032】
投光器22から投光されたレーザー光は、コリメータレンズ21aにより平行光にされて、さらに凹シリンドリカルレンズ21bにより水平方向に拡散される。凹シリンドリカルレンズ21bから出射されたレーザー光の水平方向の強度分布は、図4(b)に示すようなガウシアン(Gaussian)形状となる。つまり、水平方向において、監視領域Zの左右両端から中央に向かうに連れて強くなるように、レーザー光の強度が分布する。
【0033】
図5は、投光部2の詳細の他例を示した図である。図5(a)に示すように、投光光学系21は、コリメータレンズ21aと回折光学素子21cとから構成されている。
【0034】
投光器22から照射されたレーザー光は、コリメータレンズ21aにより平行光にされて、さらに回折光学素子21cにより水平方向に拡散される。回折光学素子21cから出射されたレーザー光の水平方向の強度分布は、図5(b)に示すようなトップハット(top hat)形状となる。つまり、水平方向において、監視領域Zの左右両端から中央に向かうに連れて強くなるように、レーザー光の強度が分布する。また、図4(b)に示したガウシアン形状より、レーザー光の強度の強い範囲が左右方向へ拡がる。
【0035】
図1に示すように、受光部3は、受光光学系31、受光器32r、32m、32、および信号処理部33r、33m、33から構成されている。受光光学系31は、監視領域Zに存在する物体Mで反射した、測定光の反射光を集光する。
【0036】
受光器としては、右側用受光器32r、中央用受光器32m、および左側用受光器32の3つが設けられ、これらはそれぞれフォトダイオードから構成されている。各受光器32r、32m、32は、受光光学系31で集光された反射光を受光する。
【0037】
詳しくは、図2に示すように監視領域Zを水平方向に3分割した場合において、車両50側から見て右側にある所定の右側領域Zrで物体により反射して受光光学系31により集光された反射光を、右側用受光器32rが受光する。また、車両50側から見て左側にある所定の左側領域Zで物体により反射して受光光学系31により集光された反射光を、左側用受光器32が受光する。さらに、右側領域Zrと左側領域Zの間にある中央領域Zmで物体により反射して受光光学系31により集光された反射光を、中央用受光器32mが受光する。
【0038】
信号処理部としては、受光器32r、32m、32のそれぞれと組を成すように、各受光器に対応して右側用信号処理部33r、中央用信号処理部33m、および左側用信号処理部33の3つが設けられている。つまり、信号処理を行う受光系は3組設けられている。
【0039】
各信号処理部33r、33m、33は、TIA(トランスインピーダンスアンプ)、AMP(増幅器)、およびADC(アナログデジタルコンバータ)から構成されている。各信号処理部33r、33m、33は、対応する受光器32r、32m、32の受光状態に応じた受光信号を出力する。
【0040】
詳しくは、右側用信号処理部33rは、右側用受光器32rが反射光の受光状態に応じて出力する電流出力をTIAにより電圧信号に変換した後、該電圧信号をAMPにより増幅して、さらにADCによりデジタル変換して、受光信号として出力する。左側用信号処理部33は、左側用受光器32Lが反射光の受光状態に応じて出力する電流出力をTIAにより電圧信号に変換した後、該電圧信号をAMPにより増幅して、さらにADCによりデジタル変換して、受光信号として出力する。中央用信号処理部33mは、中央用受光器32mが反射光の受光状態に応じて出力する電流出力をTIAにより電圧信号に変換した後、該電圧信号をAMPにより増幅して、さらにADCによりデジタル変換して、受光信号として出力する。
【0041】
判定部4は、CPUとメモリ等から構成されている。判定部4には、上記のように各信号処理部33r、33m、33から出力された3つの受光信号が入力される。判定部4は、信号処理部33r、33m、33Lから出力された受光信号に基づいて、監視領域Zに存在する物体Mとの距離、すなわち、車両50(光レーダ装置10)から物体Mまでの距離を検出する。
【0042】
また、判定部4は、信号処理部33r、33m、33から出力された受光信号の強度(即ち、受光した反射光の強度)を検出する。さらに、判定部4は、検出した物体Mとの距離と受光信号の強度とに基づいて、物体Mが監視領域Zの右側または左側から中央にある車両50の走行車線T(図2)に近づいているか否かを判定する。
【0043】
制御部1は、判定部4の判定結果をインタフェイス5により車両制御装置60に通知する。車両制御装置60は、判定部4の判定結果に基づいて、車両50と物体Mとの接触を回避するように、車両50や車載機器を制御する。制御部1とインタフェイス5は、本発明の「通知部」の一例である。
【0044】
図6A図7A、および図8Aは、光レーダ装置10を搭載した車両50と監視領域Zでの物体Mの動向を示した図である。図6B図7B、および図8Bは、光レーダ装置10で検出した受光信号の強度と物体Mとの距離の変化を示した図である。
【0045】
光レーダ装置10の投光部2から車両50の前方の監視領域Zに投光された測定光は、進行方向に進むに連れて、進行方向に対して側方へ拡散する。その測定光の拡散面積は、光源(投光器22)からの距離の二乗で変化する。また、測定光の強度は、光源からの距離の二乗に反比例するとともに、図3に示したように、監視領域Zの水平方向における左右両端から中央に向かうに連れて強くなる。そして、測定光の物体Mによる反射光の強度は、測定光の強度に比例する。
【0046】
上記のことから、車両50の走行中に光レーダ装置10により所定の周期で検出した、監視領域Zにおける前回の物体Mn−1との距離Dn−1(距離の前回値)および該物体Mn−1からの反射光に基づく前回の受信信号の強度Vn−1(信号強度の前回値)と、今回の物体Mとの距離D(距離の今回値)および該物体Mからの反射光に基づく今回の受信信号の強度V(信号強度の今回値)との間には、以下の3つの大小関係が成立する。なお、図6A図7A、および図8Aにおいて、前回の物体Mn−1と今回の物体Mは、便宜的に符号を変えているが、これは同一の物体Mの位置の変化を示している。
【0047】
まず、物体Mが監視領域Zで静止している場合は、走行中の車両50から見ると、図6Aに示すように物体Mの位置が変化する(Mn−1→M)。すなわち、物体Mが走行車線Tと平行に、相対的に車両50に接近して行く。そして、光レーダ装置10と物体Mとの距離が近づくに連れて(Dn−1→D)、図6Bに示すように、物体Mn−1、Mによる反射光に応じた受光信号の強度が強くなる(Vn−1→V)。ここで、D/Dn−1を物体Mとの距離の変化率、V/Vn−1を受光信号の強度の変化率とし、距離の変化率D/Dn−1の逆数Dn−1/Dを「距離比」と定義し、受光信号の強度の変化率V/Vn−1を「信号強度比」と定義すると、図6Aの場合は、信号強度比V/Vn−1と、距離比Dn−1/Dの二乗値とが等しくなる。すなわち、次式の関係が成立する。
/Vn−1=(Dn−1/D ・・・(1)
【0048】
また、監視領域Zで物体Mが側方から車両50の走行車線Tに近づいて行く場合は、走行中の車両50から見ると、図7Aに示すように物体Mの位置が変化する(Mn−1→M)。すなわち、物体Mが走行車線Tを横断するかのように、車幅方向に移動する。そして、光レーダ装置10と物体Mとの距離が近づくに連れて(Dn−1→D)、図7Bに示すように、物体Mn−1、Mによる反射光に応じた受光信号の強度が強くなる(Vn−1→V)。また、図6Bに示した物体Mの静止状態より、受光信号の強度の変化が大きくなる。この場合、信号強度比V/Vn−1が、距離比Dn−1/Dの二乗値より大きくなる。すなわち、次式の関係が成立する。
/Vn−1>(Dn−1/D ・・・(2)
【0049】
さらに、監視領域Zで物体Mが車両50の走行車線Tから離れて行く場合は、走行中の車両50から見ると、図8Aに示すように物体Mの位置が変化する(Mn−1→M)。すなわち、物体Mが走行車線Tと反対の車幅方向に移動する。そして、光レーダ装置10と物体Mとの距離が近づいても(Dn−1→D)、図8Bに示すように、物体Mn−1、Mによる反射光に応じた受光信号の強度が変わらないか、または弱くなる(Vn−1→V)。この場合、信号強度比V/Vn−1が、距離比Dn−1/Dの二乗値より小さくなる。すなわち、次式の関係が成立する。
/Vn−1<(Dn−1/D ・・・(3)
【0050】
上記のように、信号強度比V/Vn−1と、距離比の二乗値(Dn−1/Dとの大小関係は、監視領域Zにおける物体Mの動向に応じて異なったものとなる。そこで、判定部4は、信号強度比V/Vn−1と距離比の二乗値(Dn−1/Dとを比較し、この比較の結果、式(1)の関係が成立すれば、物体Mは移動していない(図6Aの場合)と判定し、式(2)の関係が成立すれば、物体Mは側方から走行車線Tに近づいている(図7Aの場合)と判定し、式(3)の関係が成立すれば、物体Mは走行車線Tから遠ざかっている(図8Aの場合)と判定する。
【0051】
図9Aおよび図9Bは、光レーダ装置10の動作を示したフローチャートである。図10は、光レーダ装置10の動作を示したタイムチャートである。
【0052】
まず、光レーダ装置10の制御部1は、投光部2により監視領域Zに対して測定光を投光する(図9AのステップS1、図10の(a))。それから、所定の受光待ち時間Tが経過すると(図10の(b))、判定部4が、受光部3の信号処理部33r、33m、33から入力された受光信号を所定の周期でサンプリングする(図9AのステップS2、図10の(b))。そして、受光信号を所定回数サンプリングすると(図9AのステップS3:YES)、判定部4は、そのサンプリング値の最大値を受光信号のピーク強度Vとして検出する(図9AのステップS4、図10の(c))。
【0053】
次に、検出した受光信号のピーク強度Vが所定の閾値未満であれば(図9AのステップS5:NO)、監視領域Zに物体Mが存在しないため、制御部1は、所定の投光待ち時間Tが経過するのを待つ(図9BのステップS18、図10の(a))。そして、所定の投光待ち時間Tが経過すると(図9BのステップS18:YES)、制御部1は、再び投光部2により監視領域Zに対して測定光を投光する(図9AのステップS1、図10の(a))。それから、図9AのステップS2以降の処理が繰り返される。
【0054】
図9AのステップS4で検出した受光信号のピーク強度Vが所定の閾値以上であれば(図9AのステップS5:YES)、監視領域Zに物体Mが存在するため、判定部4は物体Mとの距離Dを検出する(図9AのステップS6)。このとき、判定部4は、たとえば、受光信号のピーク強度V、測定光を投光してから受光信号のピーク強度Vをサンプリングしたときまでの時間T図10の(c))、測定光および反射光の光速、および車両50の走行速度などに基づいて、物体Mとの距離Dを算出する。
【0055】
また、判定部4は物体Mの位置を検出する(図9AのステップS7)。このとき、判定部4は、たとえば、受光信号のピーク強度Vや、該ピーク強度Vを含んだ受光信号の出力元の受光系(いずれか一組の信号処理部33r、33m、33および受光器32r、32m、32)などに基づいて、物体Mが監視領域Zのどの位置に存在するかを判断する。
【0056】
判定部4は、上記のように検出した受光信号のピーク強度Vと物体Mとの距離Dを内部メモリに記憶する(図9AのステップS8)。このとき、物体Mの位置も内部メモリに記憶してもよい。
【0057】
次に、判定部4の内部メモリに、前回の受光信号のピーク強度Vn−1と物体Mとの距離Dn−1が記憶されていなければ(図9AのステップS9:NO)、制御部1は、投光待ち時間Tが経過するのを待つ(図9BのステップS18)。そして、投光待ち時間Tが経過すると(図9BのステップS18:YES)、制御部1は、再び投光部2により監視領域Zに対して測定光を投光する(図9AのステップS1、図10の(a))。それから、図9AのステップS2以降の処理が繰り返される。
【0058】
対して、判定部4の内部メモリに、前回の受光信号のピーク強度Vn−1と物体Mとの距離Dn−1が記憶されていれば(図9AのステップS9:YES)、判定部4は、今回の受光信号のピーク強度Vと前回の受光信号のピーク強度Vn−1の変化率V/Vn−1(信号強度比)を算出する(図9AのステップS10)。また、判定部4は、今回の物体Mとの距離Dと前回の物体Mとの距離Dn−1の変化率の逆数Dn−1/D(距離比)の二乗(Dn−1/Dを算出する(図9AのステップS11)。
【0059】
図9AのステップS10およびステップS11の演算で用いられる今回の受光信号のピーク強度Vおよび物体Mとの距離Dと、前回の受光信号のピーク強度Vn−1および物体Mとの距離Dn−1とは、同一の受光系(いずれか一組の受光器および信号処理部)より出力された受光信号から検出されたデータである。
【0060】
つまり、物体Mが右側監視領域Zr(図2)に存在する場合は、右側用の受光器32rおよび信号処理部33rより出力された受光信号から検出されたデータ(ピーク強度V、Vn−1と距離D、Dn−1)を用いて、図9AのステップS10およびステップS11の演算が実行される。
【0061】
また、物体Mが左側監視領域Z図2)に存在する場合は、左側用の受光器32および信号処理部33より出力された受光信号から検出されたデータ(ピーク強度V、Vn−1と距離D、Dn−1)を用いて、図9AのステップS10およびステップS11の演算が実行される。
【0062】
さらに、物体Mが中央監視領域Zm(図2)に存在する場合は、中央用の受光器32mおよび信号処理部33mより出力された受光信号から検出されたデータ(ピーク強度V、Vn−1と距離D、Dn−1)を用いて、図9AのステップS10およびステップS11の演算が実行される。
【0063】
次に、判定部4は、ピーク強度の変化率(すなわち信号強度比)V/Vn−1と、距離の変化率の逆数(すなわち距離比)Dn−1/Dの二乗(Dn−1/Dとを比較する。そして、前記の式(2)のように、信号強度比が距離比の二乗より大きければ(図9BのステップS12:YES、V/Vn−1>(Dn−1/D)、判定部4は、図7Aのように、物体Mが監視領域Zの側方(右側または左側)から走行車線Tに近づいていると判定する(図9BのステップS14)。そして、制御部1が、その判定部4の判定結果と直近の物体Mとの距離Dとを、インタフェイス5により車両制御装置60へ通知する(図9BのステップS17、図10の(d))。このステップS17では、物体Mの位置も車両制御装置60へ通知してもよい。
【0064】
図10に示すように、投光部2により測定光を投光してから上記通知を行うまでの時間Tは、投光待ち時間Tより短くなっている。
【0065】
また、前記の式(1)のように、信号強度比と距離比の二乗とが等しければ(図9BのステップS12:NO、ステップS13:YES、V/Vn−1=(Dn−1/D)、判定部4は、図6Aのように、監視領域Zで物体Mが車幅方向へ移動していない(または静止している)と判定する(図9BのステップS15)。そして、制御部1が、その判定部4の判定結果と直近の物体Mとの距離Dとを、インタフェイス5により車両制御装置60へ通知する(図9BのステップS17、図10の(d))。
【0066】
また、前記の式(3)のように、信号強度比が距離比の二乗より小さければ(図9BのステップS12:NO、ステップS13:NO、V/Vn−1<(Dn−1/D)、判定部4は、図8Aのように、物体Mが走行車線Tから監視領域Zの側方(右側または左側)へ離れていると判定する(図9BのステップS16)。そして、制御部1が、その判定部4の判定結果と直近の物体Mとの距離Dとを、インタフェイス5により車両制御装置60へ通知する(図9BのステップS17、図10の(d))。
【0067】
その後、投光待ち時間Tが経過すると(図9BのステップS18:YES)、制御部1は、再び投光部2により監視領域Zに対して測定光を投光する(図9AのステップS1、図10の(a))。それから、図9AのステップS2以降の処理が繰り返される。
【0068】
上記実施形態によると、光レーダ装置10において、測定光の強度が監視領域Zの水平方向における左右両端から中央に向かうに連れて強くなるように、投光器22から投光された測定光が投光光学系21により拡散される(図3)。そして、判定部4が、受光器32r、32m、32および信号処理部33r、33m、33のうち、一組の受光器および信号処理部より出力された受光信号に基づいて、物体Mとの距離Dと受光信号のピーク強度Vとを検出する。そして、判定部4は、距離Dの変化率の逆数(距離比)の二乗値と、受光信号のピーク強度Vの変化率(信号強度比)との比較結果から、物体Mが監視領域Zの右側または左側から中央にある走行車線Tに近づいているか否かを判定する。このため、1つの受光系(一組の受光器および信号処理部)より出力される単一の受光信号に基づいて、監視領域Zでの物体Mの動向を判断することができる。その結果、特許文献1のように、2つ以上の受光系より独立して出力される2つ以上の受光信号に基づいて物体の動向を判断する場合と比較して、信号処理が簡単になる。
【0069】
また、上記実施形態では、判定部4は、距離比の二乗値(Dn−1/Dより信号強度比V/Vn−1の方が大きい場合、物体Mが監視領域Zの右側または左側から中央にある走行車線Tに近づいていると判定する。また、判定部4は、距離比の二乗値(Dn−1/Dより信号強度比V/Vn−1の方が小さい場合、物体Mが監視領域Zの中央にある走行車線Tから右側または左側へ離れていると判定する。さらに、判定部4は、距離比の二乗値(Dn−1/Dと信号強度比V/Vn−1とが等しい場合、物体Mが監視領域Zで車幅方向に移動していないと判定する。このため、1つの受光系より出力される単一の受光信号に基づいて、監視領域Zの中央にある走行車線Tに対して物体Mが近づいているか離れているか、または車幅方向に移動していないかを判断することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、判定部4が検出した物体Mとの距離Dと、物体Mの動向などを、制御部1が車両制御装置60へ通知する。このため、車両50側でその通知内容に基づいて、歩行者などとの接触事故を回避するような、適切な車両制御を実施することができる。また、その通知内容を車両50に搭載されたディスプレイに表示したり、警告音を鳴らしたりして、ドライバに適切な車両運転をするように促すことができる。
【0071】
また、上記実施形態では、監視領域Zのうち、右側監視領域Zrで物体Mにより反射した測定光の反射光を右側用受光器32rで受光して、該受光状態に応じた受光信号を右側用信号処理部33rから出力する。また、左側監視領域Zで物体Mにより反射した測定光の反射光を左側用受光器32で受光して、該受光状態に応じた受光信号を左側用信号処理部33から出力する。また、中央監視領域Zmで物体Mにより反射した測定光の反射光を中央用受光器32mで受光して、該受光状態に応じた受光信号を中央用信号処理部33mから出力する。このため、右側監視領域Zrでの物体Mの動向を、右側用の一組の受光器32rおよび信号処理部33rより出力される受光信号に基づいて検出することができる。また、左側監視領域Zでの物体Mの動向を、左側用の一組の受光器32および信号処理部33より出力される受光信号に基づいて検出することができる。さらに、中央監視領域Zmでの物体Mの動向を、中央用の一組の受光器32mおよび信号処理部33mより出力される受光信号に基づいて検出することができる。
【0072】
さらに、上記実施形態では、監視領域Zが車両50の前方に拡がるように、光レーダ装置10が車両50の前部に搭載される。然も、車両50から所定距離前方において、車両50の車幅より側方へ拡がるように、監視領域Zが設定され、かつ測定光が投光部2により投光される。このため、受光器32r、32m、32および信号処理部33r、33m、33のうち、一組の受光器および信号処理部より出力される受光信号に基づいて、車両50の前方の走行車線Tに対して物体Mが近づいているか否か、すなわち物体Mが前方の走行車線Tを横断中であるか否かを判断することができる。
【0073】
以上述べた実施形態では、「距離の変化率の逆数」Dn−1/Dを「距離比」とし、「信号強度の変化率」V/Vn−1を「信号強度比」としたが、本発明における「距離比」は、距離の前回値Dn−1と今回値Dとの比であり、この比は、D/Dn−1であってもよいし、その逆数のDn−1/Dであってもよい。同様に、本発明における「信号強度比」は、信号強度の前回値Vn−1と今回値Vとの比であり、この比は、V/Vn−1であってもよいし、その逆数のVn−1/Vであってもよい。
【0074】
したがって、本発明において、「距離の変化率」D/Dn−1を「距離比」とし、「信号強度の変化率の逆数」Vn−1/Vを「信号強度比」とすることもできる。距離比と信号強度比をこのように定義した場合、判定部4は、距離比として、距離の変化率D/Dn−1を算出するとともに、信号強度比として、信号強度の変化率の逆数Vn−1/Vを算出し、信号強度比と距離比の二乗値とを比較する。そして、距離比の二乗値より信号強度比の方が小さければ(Vn−1/V<(D/Dn−1)、図7Aのように、物体Mが監視領域Zの右側または左側から中央に近づいていると判定する。また、距離比の二乗値より信号強度比の方が大きければ(Vn−1/V>(D/Dn−1)、図8Aのように、物体Mが監視領域Zの中央から右側または左側へ離れていると判定する。さらに、距離比の二乗値と信号強度比とが等しければ(Vn−1/V=(D/Dn−1)、図6Aのように、物体Mが監視領域Zの左右方向へ移動していないと判定する。
【0075】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、受光部3に受光器32r、32m、32および信号処理部33r、33m、33の組を3つ設けた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、受光部3に設ける受光器および信号処理部の組を、1つ、2つ、または4つ以上としてもよい。つまり、信号処理用の受光系は、少なくとも1つ設ければよい。
【0076】
また、以上の実施形態では、自動四輪車用の光レーダ装置10に本発明を適用した例を挙げたが、たとえば自動二輪車や大型自動車などの他の車両用の光レーダ装置、または車両以外の用途の光レーダ装置に対しても、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 制御部(通知部)
2 投光部
3 受光部
4 判定部
5 インタフェイス(通知部)
10 光レーダ装置
21 投光光学系
22 投光器
31 受光光学系
32 左側用受光器
32m 中央用受光器
32r 右側用受光器
33 左側用信号処理部
33m 中央用信号処理部
33r 右側用信号処理部
50 車両
M 物体
Z 監視領域
左側監視領域
Zm 中央監視領域
Zr 右側監視領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10